説明

液晶表示装置

【課題】白色バックライトにおいて、光源の駆動制御により表示映像の色度を可変することができる液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】液晶表示装置100は、映像を表示する液晶パネル101と、半導体光源106を有し、液晶パネル101を照明するバックライト102と、半導体光源106を駆動する駆動部103と、複数の色度を切り替え時間ごとに切り替えて時間平均的に所望の色度を実現するように駆動部103を制御する制御部104とを有する。複数の色度は、電流値が異なる複数のパルスを組み合わせて構成される駆動パルスにより半導体光源106を駆動することによって実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の一種に、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を配列してなるLEDバックライトを用いて液晶パネルを照明するものがある。
【0003】
液晶パネルは、一般に、液晶や偏光板、カラーフィルタなどの影響により光の波長に応じて透過率が異なるという性質を有する。よって、入力映像信号の輝度レベルが低い場合に、液晶パネルの表示映像において黒が青みを帯びて見えることがある。
【0004】
この問題に対処するために、液晶表示装置において表示映像の色温度制御が行われることがある。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された従来の液晶表示装置は、入力映像信号の輝度レベルに応じてLEDバックライトの色温度を制御する。より具体的には、入力映像信号の輝度レベルが低下した場合には、例えば、B光源としての青色LEDの輝度レベルが他色の光源の輝度レベルよりも低減される。これにより、表示映像において青みがかった黒が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−152008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の液晶表示装置において、制御されるLEDバックライトは、異なる色の光源を有する構成を採っている。LEDバックライトには、複数色のLED(例えば、R(赤)、G(緑)及びB(青)の3色のLED)を配列してなるもののほか、白色LEDを配列してなるもの(白色LEDバックライト)もある。しかしながら、白色LEDバックライトの使用を前提とした場合に、色温度(又は色度)を如何にして制御するかについての提案は、従来、あまり盛んには行われていない。このことは、バックライトの光源としてLED以外の光源、例えば、レーザや有機EL(OLE:Organic Electro-Luminescence)などの光源を用いる場合についても同様である。
【0008】
本発明の目的は、白色バックライトにおいて、光源の駆動制御により表示映像の色度を可変することができる液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、映像を表示する液晶パネルと、半導体光源を有し、前記液晶パネルを照明するバックライトと、前記半導体光源を駆動する駆動部と、複数の色度を切り替え時間ごとに切り替えて時間平均的に所望の色度を実現するように前記駆動部を制御する制御部と、を有する構成を採る。好ましくは、前記複数の色度は、電流値が異なる複数のパルスを組み合わせて構成される駆動パルスにより前記半導体光源を駆動することによって実現される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、白色バックライトにおいて、光源の駆動制御により表示映像の色度を可変することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施の形態における白色LEDバックライトの白色LED配列を示す図
【図3】本実施の形態におけるLED駆動パルスの一例を示す図
【図4】本実施の形態におけるLED駆動パルス制御の一例を示すフロー図
【図5】図4のステップS200の処理の内容を示すフロー図
【図6】本実施の形態におけるLEDの色度調整範囲と黒体軌跡を示す色度図
【図7】本実施の形態におけるLED駆動パルス電流値と色度との関係の一例を示す色度図
【図8】本実施の形態におけるLED駆動パルス制御の具体例を説明するための図であって各構成パルスの電流値とデューティ比の双方が可変されたLED駆動パルスの一例を示す図
【図9】本実施の形態におけるLED駆動パルスの他の例を示す図
【図10】本実施の形態におけるLED駆動パルスのさらに他の例を示す図
【図11】液晶パネルにおける入力映像信号と色度点との関係を示す色度図
【図12】本実施の形態におけるルックアップテーブルの決め方を説明するための色度図
【図13】本実施の形態におけるルックアップテーブルの決め方を説明するための線分図
【図14】本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図
【図15】本発明の実施の形態3に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
ここでは、まず、一部の用語について説明しておく。「色温度」は、正確には、黒体軌跡上の色度に対して定義されている。しかし、例えば、液晶表示装置においては、バックライト光源が白色光を放射し又は液晶表示パネルが白を表示したときの等色温度線上の色度を、色温度9000Kなどと表現することが一般的である(厳密には「相関色温度」という)。したがって、同じ色温度9000Kの光源であっても色度が同じであるとは限らない。色度が異なると、見た目の色、つまり、色味(映像などの媒体における微細な色合い)が異なる。本発明では、後で詳述するように、色度図上の2次元の範囲で白色光の色度を調整可能である。以下、「色度」は、特に、白色光の色度を指すことにする。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す液晶表示装置100は、液晶パネル101、白色LEDバックライト102、白色LED駆動部103、制御データ演算部104及び信号輝度レベル検出部105を有する。
【0016】
液晶パネル101は、透過型又は半透過型の液晶パネルである。液晶パネル101は、白色LEDバックライト102から発せられた光を透過し、この透過光を、表示画面たる前面から出射する。このとき、液晶駆動部(図示せず)は、液晶パネル101を駆動する駆動電圧を、映像信号に基づいて制御する。映像信号は、液晶パネル101の表示画面に表示されるべき映像を示すディジタル信号である。これにより、液晶パネル101の透過率が制御される。この制御の結果として、液晶パネル101は映像を表示する。
【0017】
白色LEDバックライト102は、例えば、図2に示すように、多数の白色LED106を有する。白色LEDバックライト102は、これら多数の白色LED106を基板上に略平面状に液晶パネル101の背面に向けて配列してなる直下型のバックライト装置である。白色LEDバックライト102は、液晶パネル101の背面側に配置され、白色LED106から発せられた白色光により液晶パネル101を照明する。
【0018】
なお、白色LEDバックライト102は、直下型に限定されるわけではなく、エッジライト型のバックライト装置であってもよい。
【0019】
一般に、LEDは、駆動電流値によって、その発光スペクトルが変化する。よって、発光スペクトルつまり発光色を保ちながら輝度を変化させる場合には、通常、PWM(Pulse Width Modulation)駆動方式を用いて、駆動電流のデューティ比を変化させることによって、対応する。
【0020】
赤色や緑色、青色など複数の色のLEDを混色させて白色を実現する場合、白色の色度は、混色させるLEDの輝度比率を変化させることによって、調整可能である。この場合には、各色のLEDに対するデューティ比を調整するだけで、全体の輝度を変化させずに、白色光の色度を調整することが可能である。
【0021】
一方、白色LED106は、単色(例えば、青色)LEDと蛍光体とを主として有するLED装置である。白色LED106は、白色LED駆動部103から印加される駆動パルスにより駆動されて白色光を発光する。すなわち、白色LED106は、駆動パルスが印加されたときに単色のLEDから発せられた光が蛍光体に透過されこの蛍光体の作用により白色化されるように、構成されている。
【0022】
しかし、このような白色LED106では、種々の発光スペクトルを持つLEDの混色比率調整による色度調整を行うことができない。なぜなら、単色励起光に対するデューティ比を変更したとしても、観測される平均輝度が変化するだけだからである。
【0023】
本出願人は、別の出願において、このような白色LEDにおいて色温度(色度)を調整する場合、逆に電流値(パルスの波高値)を変化させて色温度(色度)を調整し、これによる輝度変化を、デューティ比の調整によって吸収する手法を提案した。また、本出願人は、上記別出願において、電流値を変化させることによる輝度変化を、映像信号や環境光などの状態によっては、積極的に利用できることを示した。
【0024】
本発明の液晶表示装置では、上記別出願に示す色温度調整範囲に加え、より広範囲な色度調整が可能であり、かつ、デューティ比を調整することなく色度調整時の輝度変化を抑えることも可能である。また、本発明の液晶表示装置は、後述するように、映像信号に対する輝度調整の分解能の面でも、優位性を有している。
【0025】
なお、本実施の形態では、白色LED106は、単色LEDと蛍光体とを有する構成により白色光を発光するLED装置であるが、これに限定されるわけではなく、他の構成により白色光を発光するLED装置であってもよい。また、白色以外のLEDにも本発明は適用可能である。
【0026】
信号輝度レベル検出部105は、検出部として機能する。信号輝度レベル検出部105は、映像信号の特徴量として、例えば、平均輝度レベル(APL)を検出する回路である。
【0027】
なお、信号輝度レベル検出部105は、平均輝度レベルに加えて又は平均輝度レベルの代わりに、最大輝度レベル(MAX)や最小輝度レベル(MIN)などの輝度レベルを特徴量として検出してもよい。この場合、信号輝度レベル検出部105は、映像において輝度レベルが最大又は最小となる部分の面積又は位置を併せて検出してもよい。
【0028】
制御データ演算部104は、制御部として機能する。制御データ演算部104は、白色LEDバックライト102の色度を制御するために、白色LED106の駆動パルス(後述する)を構成する複数のパルスの電流値、パルス幅及びパルス切り替え時間を、信号輝度レベル検出部105によって検出された特徴量に基づいて演算する演算処理回路である。制御データ演算部104は、演算して得られた電流値、パルス幅及びパルス切り替え時間を示す制御データを生成し、生成した制御データを白色LED駆動部103に出力する。
【0029】
白色LED駆動部103は、駆動部として機能する。白色LED駆動部103は、白色LED106を駆動する駆動パルスを、制御データ演算部104から出力された制御データに従って生成し、生成した駆動パルスを白色LED106に印加する回路である。
【0030】
図3は、白色LED駆動部103によって生成される白色LEDの駆動パルスの一例を示す図である。
【0031】
本実施の形態では、白色LEDの駆動パルスは、電流値が異なる複数のパルス(以下「構成パルス」ともいう)を組み合わせて構成されている。例えば、図3に示す駆動パルス110は、構成パルスとして2つの矩形パルス110a、110bを組み合わせて構成されている。矩形パルス110a、110bは、それぞれ、電流値I及びデューティ比D(%)(=パルス幅tON/パルス切り替え時間tSW)の波形を有する。2つの矩形パルス110a、110bは、少なくとも電流値Iが異なっている。具体的には、矩形パルス110aは、電流値I及びデューティ比D(%)(=パルス幅tON1/パルス切り替え時間tSW1)を有し、矩形パルス110bは、電流値I及びデューティ比D(%)(=パルス幅tON2/パルス切り替え時間tSW2)を有する(I≠I)。図3に示す例では、2つの矩形パルス110a、110bは周期的に交互に繰り返され、全体としての周期はt(=tSW1+tSW2)となっている。
【0032】
なお、2つの矩形パルス110a、110bのうち片方の電流値Iをゼロ(0)としてもよい。また一方で、制御の結果として2つとも同一のパルスとなる可能性も存在し、図3に示すように必ず異なるわけではない。さらには、3つ以上の矩形パルスを組み合わせて白色LEDの駆動パルスを構成してもよい。
【0033】
以上、液晶表示装置100の構成について説明した。
【0034】
次いで、上記構成を有する液晶表示装置100におけるLED駆動パルス制御の動作について説明する。ここでは、検出される特徴量が映像信号の平均輝度レベルであり、かつ、制御される白色LED106の駆動パルスが図3に示す駆動パルス110である場合を例にとって説明する。
【0035】
図4は、液晶表示装置100におけるLED駆動パルス制御の一例を示すフロー図である。
【0036】
まず、ステップS100では、信号輝度レベル検出部105が、液晶パネル101の液晶駆動部(図示せず)に入力される映像信号を取得し、取得した映像信号の平均輝度レベル(APL)を検出する。
【0037】
そして、ステップS200では、制御データ演算部104が、ステップS100で検出した平均輝度レベルに基づいて、駆動パルス110を構成する複数のパルス(矩形パルス110a、110b)の電流値I(I、I)、パルス幅tON(tON1、tON2)及びパルス切り替え時間tSW(tSW1、tSW2)を決定する。詳細は後述する。
【0038】
そして、ステップS300では、制御データ演算部104が、ステップS200で決定した複数のパルス(矩形パルス110a、110b)の電流値I(I、I)、パルス幅tON(tON1、tON2)及びパルス切り替え時間tSW(tSW1、tSW2)を示す制御データを生成し、生成した制御データを白色LED駆動部103に出力する。
【0039】
これにより、白色LED駆動部103は、制御データ演算部104から出力された制御データに従って、少なくとも電流値Iが異なる(ただし、APLの状態によっては過渡的に同じ電流値Iになることもある)複数のパルス(矩形パルス110a、110b)からなる駆動パルス110を生成する。
【0040】
このようにして、駆動パルス110を構成する複数のパルスの電流値I及びデューティ比D(=パルス幅tON/パルス切り替え時間tSW)を制御することにより、白色LEDバックライト102の色度及び輝度を同時にかつ自在に制御することができる。
【0041】
ここで、図4のステップS200の処理について、図5を用いてより詳しく説明する。図5は、図4のステップS200の処理の内容を示すフロー図である。
【0042】
ステップS201では、制御データ演算部104は、ステップS100で検出した平均輝度レベルに基づいて、白色LEDバックライト102の色度と輝度を決定する。白色LEDバックライト102の色度は、平均輝度レベルが高いほど色温度が高くなり、平均輝度レベルが低いほど色温度が低くなるように、色味も勘案して決定される。具体的には、色味の情報から等色温度線上の色度が指定される。
【0043】
そして、ステップS202では、制御データ演算部104は、ステップS201で決定した色度といくつかの条件とに基づいて、駆動パルス110の各電流値I(つまり、電流値Iの組み合わせ)及び混合比を決定する。混合比は、駆動パルス110を構成する各パルスの電流値Iとパルス切り替え時間tSWとの積の比として定義される。図3に示す駆動パルス110は、上記のように、2つの異なる矩形パルス110a、110bから構成されている。この場合、駆動パルス110の混合比は、LEDの駆動電流と発光効率との関係を無視すれば、近似的に、(I×tSW1):(I×tSW2)の比で表される。
【0044】
図6は、白色LEDの色度調整範囲と黒体軌跡を示す色度図である。特に、図6(A)は、xy色度図における黒体軌跡と等色温度線を示す図であり、図6(B)は、白色LEDの色度調整範囲である。図6(A)に示すように、xy色度図において、黒体軌跡120と各等色温度線121とは交差している。
【0045】
一般的な白色LEDは、例えば、図6(B)に示す範囲(具体的には、実線の曲線部を含んだ斜線で示す塗りつぶしの範囲)において、駆動電流に応じて色度が変化する。ここでは、白色LEDとして、蛍光体がYAG系蛍光体である白色LEDを想定している。このような白色LEDは、駆動電流値Iが低くなるにつれて色温度が低くなり(つまり、色度点が赤の領域に近づく)、駆動電流値Iが高くなるにつれて色温度が高くなる(つまり、色度点が青の領域に近づく)という性質を有する。
【0046】
一方、蛍光体がシリケート系蛍光体(例えば、Eu2+付活アルカリ土類金属正珪酸塩蛍光体)である白色LEDの場合には、駆動電流値Iが高くなるにつれて色温度が低くなり(つまり、色度点が赤の領域に近づく)、駆動電流値Iが低くなるにつれて色温度が高くなる(つまり、色度点が青の領域に近づく)という性質を有する。
【0047】
このとき、単一の電流値を持つ駆動パルスにより白色LEDを駆動する場合には、上記別出願に示すように、白色LEDの色度は、図6(B)に示す実線の軌跡122をたどる。すなわち、図6(B)に示す実線の軌跡122は、単一の電流値を持つ駆動パルスが取り得る色度の軌跡である。しかし、本実施の形態のように、複数の電流値を持つ駆動パルスにより白色LEDを駆動する場合には、白色LEDは、図6(B)に示す塗りつぶしの範囲123内の色度を取り得る。すなわち、図6(B)に示す塗りつぶしの範囲123は、複数の電流値を持つ駆動パルスが取り得る色度の軌跡の領域である。
【0048】
図7は、LED駆動パルス電流値と色度との関係の一例を示す色度図である。具体的には、図7は、例えば、3mAと80mAの電流値を持つ駆動パルスによりYAG蛍光体を用いた白色LEDを駆動した場合の色度変化を示している。
【0049】
図7に示す例では、3mAのパルスと80mAのパルスのデューティ比の相対値を変化させることにより、色度が図7中の点線124上を移動する。人間の目に観測される色度点は、異なる電流値を交互に繰り返す周期中における、それら異なる電流値(3mAと80mA)をそれぞれ印加した時の白色LEDの発光輝度の比によって、一意的に求められる。具体的には、2つの電流値における発光輝度比を加重値として計算した、2つの色度座標の重心が、観測される色度点となる。なぜなら、このとき、現実には2つの色度点において異なる輝度で発光していることになるが、早い周期でこれが発生した場合には、人間の目には輝度及び色度の平均値がそれぞれ観測されるためである。なお、図7に示す例では、2つの異なるパルスを組み合わせているが、もちろん、3つ以上の異なるパルスを組み合わせてもよい。
【0050】
本実施の形態では、異なる電流値を持つ複数のパルスを組み合わせた駆動パルスを、周期的に繰り返す。近似としてLED発光効率の駆動電流依存性を無視した場合、LEDの輝度は、電流値Iとパルス幅tONの積に基づいて決まる。したがって、電流値が異なるということは、輝度及び色度が各電流値の切り替え時間ごとに変化するということである。駆動パルスが2つの異なるパルスから構成される場合には(図3参照)、この駆動パルスを周期的に繰り返すことにより、ある輝度及び色度から別の輝度及び色度に変化して、また元の輝度及び色度に戻ることになる。
【0051】
一般的には、この周期が長いと、時間平均の効果が薄れる。したがって、この周期が長い場合、人間の目には、輝度及び色度の周期的変化がフリッカとして観測され、健康面などで悪影響がある。そこで、周期内での輝度差及び色度差にもよるが、構成パルスの数分の切り替え時間tSWの合計(つまり、駆動パルスの周期t)は20ms以下であるのが望ましい。なぜなら、周波数に換算して50Hz以上であれば、フリッカは観測されにくい傾向があるためである。これを図3に示す例に即して言えば、tSW1+tSW2=t≦20msということである。
【0052】
なお、フリッカ防止策として今述べた駆動パルス周期tは、白色LEDバックライト102をある所望の輝度及び色度に保って駆動する場合を前提としている。実際には、映像信号などに基づいて所望の色度、さらには輝度(これについては後述する)が時間的に変化するため、駆動パルスの周期なども時々刻々と変化することになる。この場合には、通常、状況に応じて最適な輝度及び色度に変化させているため、フリッカとは切り離して考えることができる。
【0053】
ここで再びステップS202の説明に戻ると、例えば、白色LED106における蛍光体がYAG系蛍光体である場合には、各電流値Iとパルス幅tONは、決定された白色LEDバックライト102の色度が高いほど平均としての色度が高く、決定された白色LEDバックライト102の色度が低いほど平均としての色度が低くなるように、色味も勘案した上で決定される。図3に示す駆動パルス110の場合、混合比は、上記のように、(I×tSW1):(I×tSW2)の比で表される。
【0054】
ただし、厳密には、電流値とパルス幅の値とによってLEDの電気−光変換効率が変化するため、その分を考慮した補正を行う必要がある。ここでは、簡単化のため、LEDの電気−光変換効率の変化分の補正を省略して説明を行う。
【0055】
そして、ステップS203では、制御データ演算部104は、ステップS202で決定した各電流値I及び混合比に応じて、決定された輝度が実現されるよう、駆動パルス110のパルス幅tONを決定する。
【0056】
図8は、LED駆動パルス制御の具体例を説明するための図である。具体的には、図8は、LED駆動パルス制御により各構成パルスの電流値Iとデューティ比D(=パルス幅tON/パルス切り替え時間tSW)の双方が可変された駆動パルスの一例を示している。図8(A)と図8(B)は、例えば、平均色度は異なるが、平均輝度は同じとなるように制御された場合のイメージである。ここで、「平均輝度」とは、人間の目に積分されて観測される輝度のことであり、上記の平均輝度レベルとは別物である。。なお、図8に示す例では、各構成パルスのパルス切り替え時間tSW及び駆動パルスの周期tは、図8(A)と図8(B)とで同じである。
【0057】
ここで、上記ステップS202における実用的な制御法(制御の基準)の具体例について説明する。
【0058】
ここで、ある色度を実現する駆動パルス波形があったとする。実現される色度に変化を与えることなく輝度を制御するには、各パルスのデューティ比を同じ割合で変化させればよい。なぜなら、混合比に影響を与えなければ色度は変化しないためである。すなわち、PWM駆動方式によるデューティ制御による輝度制御を行うことになる。1周期中の平均輝度(平均電流に比例)は、デューティ比を大きくすれば当然大きくなるが、デューティ比100%で飽和する。したがって、例えば、電流値が低いパルスの組み合わせにより所望の色度が実現できたとしても、所望の輝度レベルに未達となるケースが考えられる。これは、上記別出願でも同様である。すなわち、色度を変更するために駆動パルスの波形を決定する際には、所望の輝度が実現できるように、あらかじめ輝度に関する制約を与えておくのが好ましい。
【0059】
輝度に関する制約としては、2通りの与え方がある。一般的に、液晶ディスプレイのバックライトの輝度は、映像信号、環境光及びユーザ設定により変更される。実現したい最低輝度及び最高輝度をそれぞれPMIN、PMAXとし、今現在実現したい所望輝度をPNOWとする。このとき、輝度に関する制約として、「PNOWが実現できる範囲で」(制約1)とする選択肢と、「常にPMAXが実現できる範囲で」(制約2)とする選択肢とがある。輝度が低い前者(制約1)の方が、制約が緩くなる分、駆動パルスが取れる概形の選択肢は多くなる。しかし、後者(制約2)は、制約が厳しくなるが、制御性は良くなる。この理由は次の通りである。
【0060】
ここでは、色度を保持したままPWM制御により輝度を変化させることを考える。このとき、前者(制約1)では、新たな輝度が以前のPNOWよりも大きい場合に、駆動パルスの概形を変化させる必要が出てくる(ただし、駆動パルスを構成するすべてのパルスがtON≠tSWであれば、この限りではない)。このため、前者では、所望の色度を計算する頻度が高くなり、負荷が増す。また、特性上、以前と全く同じ色度を実現できるとは限らないため、色度の違いが色フリッカになる可能性もある。一方、後者(制約2)では、どの輝度に変更しようとも、駆動波形は変化させずにデューティ比のみを変更することにより、PMINからPMAXまでのすべての輝度を実現可能である。すなわち、後者では、演算負荷を軽減し、かつ、色フリッカの発生も防止できることになる。
【0061】
したがって、これら制約にいくつかの条件を加えて、駆動パルスの波形を選択するのが現実的である。上記のように、説明の便宜上、1周期(t)の駆動パルスを構成する各パルスを「構成パルス」と呼ぶことにする。追加する条件としては、同一駆動パルス内における条件として、「構成パルスの切り替え時間tSWが異なってもよい」(条件1)という条件と、「構成パルスの切り替え時間tSWが同じ」(条件2)という条件とが考えられる。また、同じ輝度であるが異なる色度を実現する駆動パルス間における条件として、「異なる駆動パルス間であらゆるパラメータが異なってよい」(条件3)という条件と、「異なる駆動パルス間で電流値のみが異なる」(条件4)という条件とが考えられる。
【0062】
条件2は、条件1よりも、採ることができる駆動波形の選択肢に関する制約が強いが、駆動回路としては常に一定時間ごとに電流値を切り替える制御となるため、制御性が良くなる。加えて、各構成パルスのデューティ比が同一になるようにできれば、電流のON/OFFのタイミングも同一にすることができるため、さらに、構成パルスの情報格納レジスタなどを削減することもできる。
【0063】
これをさらに推し進めると、条件4を追加採用することになる。条件3のように色度ごとに構成パルスの切り替え時間が異なれば、このような状態でPWM制御によって輝度を変化させた場合、色度ごとに構成パルスのダイナミックレンジが異なるという課題が生じる。駆動パルスがディジタル制御される場合、パルス幅は、ある決まった幅ごとでしか調整することができない。したがって、色度が変化すると、輝度調整の分解能も変化することになる。例えば、あるパルス幅の駆動信号に対して、パルス幅が1/4の駆動信号では、パルス幅制御の分解能は1/4となる。よって、ある色度では輝度諧調が荒いという問題が出てくる。しかし、条件2と条件4を満たしていれば、色度が変化しても、変化するのは各構成パルスの電流値のみとなり、この問題を解決することができる。
【0064】
条件2は、さらに具体化することができる。例えば、上記フリッカを防止するため、t≦20msの範囲内において周期tを決定し、tをN分割し、N種類のパルスによって1周期の駆動パルスを生成するようにする。また、各パルスの切り替え時間tSWはすべて同一であるため、N×tSW=tが成り立つ。ここで、更なる条件として、N個のパルスの電流値の中には同一のものがあってもよいし、0のものがあってもよいとする。これにより、この制約条件下における色度変化範囲を広く取ることができ、かつ、ダイナミックレンジについても一定のまま制御可能となる。後者の恩恵については、例えば、白色LEDの電流値に対する色度変化が直線的であった場合(つまり、単一の電流値を持つ駆動パルスによる制御において取ることができる色度範囲と一致する場合)であっても、この恩恵を受けることができる。
【0065】
図9は、LED駆動パルスの他の例を示す図である。
【0066】
図9に示す例では、駆動パルス130の周期tを5分割して制御を行っている。すなわち、駆動パルス130は、均等に5分割された各切り替え時間tSWに対応して5つのパルス130a、130b、130c、130d、130eから構成されている。このうち、駆動パルス130を構成する2つのパルス130c、130dの電流値は同じであり、また、パルス130eの電流値は0である。また、電流値が0よりも大きいすべてのパルス130a〜130dは、同じデューティD(例えば、70%)で駆動されている。これは、4つのパルス130a〜130dすべてについて、パルス幅tON及び切り替え時間tSWが同じであることを意味する。
【0067】
図10は、LED駆動パルスのさらに他の例を示す図である。具体的には、図10は、図9に示す駆動パルスにおいて一部のパルスの生成順序を入れ替えた場合を示している。
【0068】
図10に示す駆動パルス140では、図9に示す駆動パルス130における2つのパルス130bとパルス130cを入れ替えている。図10に示すように、駆動パルスを構成する複数のパルス(130a〜130d)を、電流値の大きさが似通ったパルスの組(パルス130a、130bの組と、パルス130c、130dの組)でグループ化し、各グループに属するパルスを、例えば、交互に配置することによって、擬似的に駆動パルスの周期を短くすることができる。このようにして擬似的に駆動パルスの周期を短く目に錯覚させることにより、フリッカを軽減することができる。なお、グループ分けは3つ以上でもよい。また、各グループに属するパルスの配置については、駆動パルスにローパスフィルターを掛けた場合に、リップルの低領域周波数成分が近似的に高周波側へシフトするように、各グループに属するパルスを配置すればよい。
【0069】
ここで、図11を用いて、液晶パネル101の黒表示時における青み改善について説明する。図11は、液晶パネルにおける入力映像信号と色度点との関係を示す色度図である。
【0070】
一般に、色温度が高いほど色度点は青の領域に近づき、色温度が低いほど色度点は赤の領域に近づく。液晶パネル101が黒表示時に青みがかるという現象は、図11から分かるように、映像信号の輝度レベルが低くなるにつれて色温度が高くなり、映像信号の輝度レベルが高くなるにつれて色温度が低くなることを意味する。したがって、例えば、映像信号の輝度が低いほど白色LEDの色温度を低く制御し、逆に、映像信号の輝度が高いほど白色LEDの色温度を高く制御することにより、液晶パネル101に起因する色温度変化を解消することが可能である。
【0071】
また、映像信号の輝度に応じてバックライトの色度を変化させる際には、映像信号の輝度が高いほどバックライトの輝度を高く制御し、逆に、映像信号の輝度が低いほどバックライトの輝度も低く制御することにより、液晶パネル101に表示される映像のコントラストを上昇させることができる。この制御を用いない場合には、白色LEDバックライト102は、映像信号の平均輝度レベルによって輝度を変化させることなく、その色度が変化するように制御されることとなる。この点は、ユーザの設定値を読み込んで、単に色度を変化させる場合にも同様である。
【0072】
なお、白色LEDバックライト102が直下型のバックライト装置である場合には、配列された多数の白色LED106をエリアごとに分け、分けられた白色LED106のグループごとに、本実施の形態のLED駆動パルス制御を実行すると、より有利である。これは、エリアごとに輝度制御と色温度制御とを行うことによって、エリアごとに表示映像の色度と輝度を最適化することができるからである。
【0073】
さらに、これを推し進めて、映像信号の色度も勘案して、液晶パネル101の色再現能力を拡大することも可能である。また、映像以外に、温度変化又は経年変化による白色LED自体の特性変動による色度又は輝度の変化に対しても、本実施の形態の制御を適用することにより、解消することが可能である。この場合、液晶バックライト装置内に温度センサやカラーセンサなどを設けることになる。
【0074】
また、図示しないが、信号輝度レベル検出部105又は制御データ演算部104の出力に基づいて映像信号を調整して、液晶パネル101に入力するようにしてもよい。
【0075】
さて、上記のようなアルゴリズムを実装する際には、例えば、ルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)に、あらかじめ、平均輝度レベルごとに実現する色度と、その色度を再現するための駆動パルスに関するパラメータとを持たせておく。そして、離散的に存在するそのデータのうち、所望の値に近いものを選択又は都度補間しながら、色度及び駆動パルスのパラメータを決めていくのが現実的である。
【0076】
以下、具体的に説明する。
【0077】
まず、基本構成について説明する。
【0078】
本方式では、ルックアップテーブル(図示せず)が設けられている。そして、平均輝度レベルごとに、あらかじめ、実現する色度を決めておき、また、その色度を再現するための駆動パルスに関するパラメータ(例えば、電流値と切り替え時間の繰り返しパルス群のパラメータ)も、あらかじめ計算しておく。なお、ルックアップテーブルは、液晶表示装置100の図示しないメモリに記憶されている。
【0079】
このとき、実際に使用するパラメータの決め方として、(1)ルックアップテーブルはX段階の輝度レベルごとのデータを持ち、実際に使用するパラメータは、離散的にX段階で調整する、(2)ルックアップテーブルはX段階の輝度レベルごとのデータを持ち、実際に使用するパラメータは、各段階間の輝度レベルを観測した場合には線形補間やスプライン補間などで補間する、という2つの選択肢がある。前者は、コストは安いが、滑らかに色温度を調整することができない。一方、後者は、コストはかかるが、滑らかに色温度を調整可能である。
【0080】
前者(決め方(1))の場合には、図5のフロー図において、上記の処理内容に加えて又はより具体的に、次のような処理を行う。
【0081】
ステップS201では、内部に持っている平均輝度−所望色度関数から、ステップS100で観測した平均輝度レベルに基づいて所望色度を求める。そして、ルックアップテーブル上の色度から、一番所望色度に近い色度を選択する。輝度に関しては、平均輝度レベルとユーザ設定の少なくとも1つに基づいて決定する。上記したように、暗い映像の場合には、さらにバックライトの輝度を下げてコントラストを稼ぐことができるように輝度を決定してもよいし、ユーザ設定のバックライト輝度設定値に基づくだけでもよい。
【0082】
そして、ステップS202では、選択した色度に対応する電流値と切り替え時間に関するパラメータは既にメモリ(ルックアップテーブル)上に持っているため、そのパラメータをメモリから読み出す。
【0083】
そして、ステップS203では、色度を保持したまま、つまり、各構成パルスのパルス幅の比と電流値とを保持したまま、所望輝度を実現するように各構成パルスのパルス幅を決定する。すなわち、混合比を決定する。
【0084】
一方、後者の場合(決め方(2))には、図5のフロー図において、上記の処理内容に加えて又はより具体的に、次のような処理を行う。
【0085】
ステップS201では、内部に持っている平均輝度−所望色度関数から、ステップS100で検出した平均輝度レベルに基づいて所望色度を求める。そして、ルックアップテーブル上の色度点を連続的につないだ補間曲面から、最も所望色度に近い色度を選択する。また、決め方(1)と同様にバックライトの所望輝度を決定する。
【0086】
そして、ステップS202では、選択した色度に対応する電流値と切り替え時間に関するパラメータを、メモリ(ルックアップテーブル)上に保持している「色度−パラメータ」データを補間することによって算出する。
【0087】
そして、ステップS203では、色度を保持したまま、つまり、各構成パルスのパルス幅の比と電流値とを保持したまま、所望輝度を実現するように各構成パルスのパルス幅を決定する。すなわち、混合比を決定する。
【0088】
なお、上記において、「平均輝度-所望色度関数」とは、平均輝度と色度とが1対1に対応した入出力関数である。また、ステップS202の処理は、平均輝度から直接求めるように1つの処理にまとめてもよい。また、補間によってパラメータを得る場合、ある色度の範囲と別の色度の範囲の境界とでは、電流値とパルスが不連続に変化する場合があるため、この点に留意して補間することになる。
【0089】
次に、ルックアップテーブルの決め方を説明する。
【0090】
ここでは、図12及び図13を用いて、ルックアップテーブルのある色度に対応したパラメータの決め方について、一例を挙げて説明する。図12は、ルックアップテーブルの決め方を説明するための色度図、図13は、ルックアップテーブルの決め方を説明するための線分図である。
【0091】
本例では、上記の制約2、条件1及び条件3を採用し、これらに加えて、「2種類の波高値のパルスの組み合わせで実現する」(条件5)、「2つのパルス幅が近接した組み合わせを優先する」(条件6)、「t≦20ms」(条件7)という3つの条件を設定する。条件6は、パルス幅が近接するほどPWM制御時に分解能の差が出にくいなどの理由から採用する。
【0092】
本例では、図12に示すある色度Aを実現したいとする。このとき、条件5から、色度Aを通り、かつ始点と終点を、単一の電流値を持つ駆動パルスが取り得る色度の軌跡122(実線の曲線)上に持つ線分を、図12に示すように複数引くことができる(例えば、線分1と線分2)。ここで、条件6から、線分1と線分2とでは、線分2の方が好ましい。この理由は、次の通りである。
【0093】
図13(A)は、線分1を、図13(B)は、線分2を、図12からそれぞれ抜き出したものである。各電流値が実現する色度に対し、実現したい色度Aは、図13(A)では1:1、図13(B)では1:2という位置にある。これは、数学的に明らかなように、その逆比である1:1に100mAと4mAの輝度比を、2:1に80mAと2mAの輝度比を、それぞれ設定すればよいことを意味する。このとき、電流値が高い側のパルス幅を1とすれば、低い側は、図13(A)では25、図13(B)では20という結果となる。したがって、条件6から、図13(B)、つまり、線分2の方が好ましいことになる。
【0094】
次に、制約2と条件7から、2つの構成パルスのパルス幅の比を保ったままそのパルス幅を増加させていったときに、周期tが20msに達する前に、PMAXという輝度を達成できるか否かをチェックする。このチェックをクリアできれば、そのまま80mAと2mAの構成パルス(そのパルス幅比1:20)を採用する。そして、PMAXを達したときの各パルス幅を各パルス切り替え時間とし、所望の輝度が実現できるように、パルス幅の比を保持したまま、パルス幅をPWM制御する。一方、そのチェックをクリアできなければ、再度新たな組み合わせを模索する。これは、あらかじめ条件及び制約に優先度を設けておき、例えば、この場合では線分1の組み合わせが制約2と条件7を満たしていれば、そちらを採用する、などとすればよい。
【0095】
このようにしてルックアップテーブルを決めていく。
【0096】
以上のように、本実施の形態によれば、白色LEDバックライト102における白色LED106の駆動パルスの複数の電流値Iを増大又は低減させることにより、白色LEDバックライトの色度を可変する。これにより、光源が白色LEDバックライトである場合に、光源の駆動制御により表示映像の色度を可変することができる。また、その色度を保ったまま、輝度を制御することが可能である。
【0097】
一般に、白色LEDバックライトは、蛍光管とは異なり、その駆動を制御することにより色度を制御することができる。しかし、バックライトの色度を可変することは、表示映像への影響を考慮すると必ずしも望ましいことではない。よって、白色LEDバックライトを有する液晶表示装置においては、バックライトの輝度を可変するには駆動パルスのデューティ比Dのみが可変され、駆動パルスの電流値はバックライトの色度が変わらないよう固定又は制御されるのが一般的である。これに対し、本実施の形態では、白色LEDバックライトの駆動制御における従来の常識を覆し、駆動パルスの電流値を積極的に可変する。したがって、従来と同様に光源の輝度を制御することができるのはもちろんのこと、表示映像における黒の青み補正などの有効な色度制御を、輝度制御と一緒に実行することができるという顕著な効果をもたらすことができる。
【0098】
また、これまで述べたのは光源が白色LEDの場合についてであるが、電流値によってその色度が変化する光源すべてに本実施の形態は適用可能である。このような光源として、例えば、赤色や青色、緑色などの単色LED又はレーザ光源がある。また、複数の波長(色)を混合して白色を実現する形態であっても、本実施の形態によれば、その白色を実現する各光源自体の色度をある範囲にわたって調整可能となる。したがって、それらを混合した結果である白色光の色度も調整可能となり、混合比の変化による白色光の色度調整範囲をさらに拡大することができる。
【0099】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図14に示す液晶表示装置200において、図1に示す液晶表示装置100と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0100】
液晶表示装置200は、信号輝度レベル検出部105を有せず、代わりに環境輝度レベル検出部205を有する点で、図1に示す液晶表示装置100と構成上相違する。
【0101】
環境輝度レベル検出部205は、液晶表示装置200が設置された環境における環境光の輝度レベルを、環境光の特徴量として検出するセンサである。このようなセンサとしては、例えば、フォトセンサがある。このフォトセンサは、例えば、液晶表示装置200の液晶パネル側に設置される。
【0102】
実施の形態1では、映像信号の特徴量に基づいてLED駆動パルス制御を行うのに対し、本実施の形態では、環境光の特徴量に基づいてLED駆動パルス制御を行う。その他の詳細については、本実施の形態と実施の形態1とは同様であるため、詳細な説明を省略する。ただ、輝度の決定に関して補足すると、検出された環境光の強弱に比例するように(線形、非線形は問わず)バックライトの輝度も制御するのが好ましい。なぜなら、例えば、暗い場所で液晶表示装置を見る場合には、バックライトの輝度を低くし、表示される映像の輝度も低くなる方が、人間の目の特性として見やすいためである。
【0103】
また、実施の形態1と同様に、図示しないが、環境輝度レベル検出部205又は制御データ演算部104の出力に基づいて映像信号を調整して、液晶パネル101に入力するようにしてもよい。
【0104】
以上のように、本実施の形態によれば、環境光の特徴量に基づいてLED駆動パルス制御を行う。例えば、環境光の輝度レベルが低い場合には、環境光に紛れていた黒の青みが目立ちやすくなるところ、本実施の形態では、白色LEDバックライト102の色温度を低下させるようなLED駆動パルス制御が行われる。また、環境光の輝度レベルが高い場合には、白色LEDバックライト102の色温度が上昇するようなLED駆動パルス制御が行われる。よって、本実施の形態では、環境光の輝度レベルが高いときには、一般的に好まれる傾向にある青く輝く白を表示画面に表示することができ、環境光の輝度レベルが低いときには、青みが抑えられた黒を表示画面に表示することができる。
【0105】
なお、液晶表示装置200の構成に、実施の形態1の液晶表示装置100の構成を適宜組み合わせることができる。
【0106】
(実施の形態3)
図15は、本発明の実施の形態3に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図15に示す液晶表示装置300において、図1に示す液晶表示装置100と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0107】
液晶表示装置300は、信号輝度レベル検出部105を有せず、代わりに環境光色度検出部305を有する点で、図1に示す液晶表示装置100と構成上相違する。
【0108】
環境光色度検出部305は、液晶表示装置300が設置された環境における環境光の色度を、環境光の特徴量として検出するセンサである。このようなセンサとしては、例えば、カラーセンサがある。このカラーセンサは、例えば、液晶表示装置300の液晶パネル101側に設置される。カラーセンサにおいては、例えば、赤、青、緑の色ごとの輝度レベルが検出され、結果として混合光の輝度と色度を得ることができる。
【0109】
実施の形態1では、映像信号の特徴量に基づいてLED駆動パルス制御を行うのに対し、本実施の形態では、環境光の特徴量に基づいてLED駆動パルス制御を行う。その他の詳細については、本実施の形態と実施の形態1とは同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0110】
また、実施の形態1と同様に、図示しないが、環境光色度検出部305又は制御データ演算部104の出力に基づいて映像信号を調整して、液晶パネル101に入力するようにしてもよい。
【0111】
以上のように、本実施の形態によれば、環境光の特徴量に基づいてLED駆動パルス制御を行う。例えば、環境光の輝度レベルが低い場合には、黒の青みが目立ちやすくなるところ、本実施の形態では、白色LEDバックライト102の色温度を低下させるようなLED駆動パルス制御が行われる。また、環境光の輝度レベルが高い場合には、白色LEDバックライト102の色温度が上昇するようなLED駆動パルス制御が行われる。これに加え、検出された環境光の色度によって、白色LEDバックライトの色度調整が入り、最終的な目標色度が決定される。
【0112】
物体の色の見え方は、その物体を照射する光の色度によって異なることが知られている。同様に、環境光の色度によっても、液晶表示装置300の映像の見え方は異なってくる。これは、環境光と、環境光の液晶パネル101表面での反射光と、液晶表示装置300からの映像光との混色の結果による。したがって、検出された環境光の色度に応じて、白色LEDバックライトの色度を調整することにより、最適な映像表示が可能となる。
【0113】
なお、液晶表示装置300の構成に、実施の形態1の液晶表示装置100の構成を適宜組み合わせることができる。
【0114】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0115】
なお、以上の説明は、本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。すなわち、上記装置の構成及び使用時の動作についての説明は単なる例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更及び追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶テレビや液晶モニタなどの液晶表示装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
100、200、300 液晶表示装置
101 液晶パネル
102 白色LEDバックライト
103 白色LED駆動部
104 制御データ演算部
105 信号輝度レベル検出部
205 環境輝度レベル検出部
305 環境光色度検出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する液晶パネルと、
半導体光源を有し、前記液晶パネルを照明するバックライトと、
前記半導体光源を駆動する駆動部と、
複数の色度を切り替え時間ごとに切り替えて時間平均的に所望の色度を実現するように前記駆動部を制御する制御部と、
を有する液晶表示装置。
【請求項2】
前記半導体光源は、発光ダイオードである、
請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記半導体光源は、半導体レーザである、
請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記発光ダイオードは、白色発光ダイオードである、
請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記複数の色度は、電流値が異なる複数のパルスを組み合わせて構成される駆動パルスにより前記半導体光源を駆動することによって実現される、
請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記切り替え時間は、前記複数のパルスにおいてすべて等しい、
請求項5記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記複数のパルスのデューティ比は、電流値が0のパルスを除いて、すべて等しい、
請求項6記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記複数の色度の数分の切り替え時間の合計は、20ms以下である、
請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記所望の色度を変更する際に、前記バックライトの平均輝度を一定に保つ輝度保持制御を行う、
請求項5記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記輝度保持制御は、前記複数のパルスの各電流値のみを変化させる、
請求項9記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記制御部は、
輝度を変更する際に、色度を一定に保つ色度保持制御を行う、
請求項5記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記色度保持制御は、PWM方式の制御により、前記複数のパルスのデューティ比をすべて同じ割合で変化させる、
請求項11記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記映像、前記半導体光源及び環境光の少なくともいずれか1つの特徴量を検出する検出部を、さらに有し、
前記制御部は、
前記検出部によって検出された特徴量に応じて、色度と輝度の少なくとも一方を制御する、
請求項1から請求項12のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記映像の平均輝度レベルが低いほど前記バックライトの色温度を低く制御し、前記映像の平均輝度レベルが高いほど前記バックライトの色温度を高く制御する、
請求項13記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記映像の平均輝度レベルが低いほど前記バックライトの輝度を低く制御し、前記映像の平均輝度レベルが高いほど前記バックライトの輝度を高く制御する、
請求項13記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記環境光の輝度レベルが低いほど前記バックライトの色温度を低く制御し、前記環境光の輝度レベルが高いほど前記バックライトの色温度を高く制御する、
請求項13記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−22481(P2011−22481A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169122(P2009−169122)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】