説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置のエリア制御において、エリア間のバックライト照明光の漏れ込みに起因する輝度不足と黒浮きを防止すること。
【解決手段】ピーク輝度検出部4は、輝度レベルが第1の閾値以上となるピーク輝度エリアを検出し、周辺輝度検出部5は、ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出し、ピーク輝度補正部7は、周辺エリアの輝度レベルが第2の閾値以下の場合、ピーク輝度エリアのバックライトの光源輝度を増加させる。あるいはピーク輝度検出部4は、エリア内の輝度レベルが第4の閾値以下となるピーク輝度エリアを検出し、周辺輝度検出部5は、ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出し、ピーク輝度補正部7は、周辺エリアの輝度レベルが第5の閾値以上の場合、ピーク輝度エリアのバックライトの光源輝度を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する液晶パネルを背面から照射するバックライトを備え、表示する画像信号に応じてバックライトの輝度調整を行う液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、CRTやプラズマディスプレイパネルなどの自発光型の表示装置とは異なり、非発光の液晶パネル(光透過型の光変調素子)と、その裏面にパネルを照射するバックライトを備える構成となっている。通常、バックライトは画像信号に係わらず一定の明るさで発光させ、液晶パネルの光透過率を画像信号の明るさに応じて制御することで所望の明るさの画像を表示する。そのため、暗い画像であってもバックライト光源の電力は減少せず一定で消費されることになり、電力効率が良くない。この対策として、バックライトの明るさ(以下、バックライト輝度とも表現する)を可変とし、入力画像信号の振幅レベルに応じてバックライトの明るさと液晶パネルの信号振幅(光透過率)の両方を制御することで消費電力を低減し、画質を向上させる技術が提案されている。また、表示画面及びバックライトを複数の領域(エリア)に分割し、領域毎に画像信号に応じてバックライトの明るさを制御する技術も知られている(エリア制御、あるいはローカルディミングと呼ばれる)。
【0003】
エリア制御における問題として、最大輝度のバックライト光源の隣に無点灯の光源が存在する場合、液晶パネルのコントラスト(光透過率の可変範囲)が無限大でなないため、不自然な黒浮きが生じるという現象がある。例えば特許文献1では、黒浮きの発生を防止することを目的に、画像信号に基づいて点灯された分割領域に隣接する非点灯領域の一定幅の隣接領域に対して、点灯された分割領域の輝度よりも小さい輝度にてバックライトを点灯させる隣接領域点灯手段を有する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−51905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エリア制御の課題として、上記黒浮きの他に白ピーク輝度不足の現象がある。これは、黒背景(低輝度)の中に一部分だけ白画像(高輝度ピーク部分)が存在するとき、白画像に対するバックライトの輝度が不足して、白画像の鮮鋭感が不足する問題である。その原因は、エリア制御においては各エリア間で互いに照明光が漏れ込み、エリア間で相互に照明光を供給する構成となっているからである。この漏れ込み量は、画面内の輝度分布が均一な場合(例えば全画面白表示時)には、エリア間で相互に約5%程度の光を共有している。これに対し画面内の輝度分布が不均一な場合には、エリア間での漏れ込みは高輝度エリアから低輝度エリアへの一方向のみとなる。その結果、白画像と黒画像が隣接している場合には、白画像(高輝度エリア)に対し黒画像(低輝度エリア)から漏れ込む照明光が少なくなるので、白画像の輝度が不足するという問題が生じる。例えば1個の白画像エリアの周囲が全て黒画像である場合、隣接する4個の黒画像エリアからの漏れ光の供給がなくなるので、全白表示時と比較して白画像エリアではトータル20%(4×5%)だけ輝度が低下することになる。
【0006】
上述したエリア間での漏れ光の作用は、黒画像にとっては前記黒浮き現象を助長することにもなる。黒画像と白画像が隣接している場合には、黒画像の低輝度エリアに対し白画像の高輝度エリアから漏れ込む照明光が加算されるので、黒画像の輝度が十分下がらないからである。これは、黒画像が白背景に囲まれているとき特に顕著になり、隣接する4個の白画像エリアからトータル20%の漏れ光が進入する。その結果、前記した液晶パネルのコントラスト特性と相まって、黒画像の浮きがより目立つようになる。
【0007】
前記特許文献1の技術は、液晶パネルのコントラスト特性に起因する問題には有効であるが、エリア間の照明光の漏れ込みに起因する問題に対しては考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、エリア間の照明光の漏れ込みに起因する輝度不足と黒浮きを防止する液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、画像を表示する液晶パネルと、液晶パネルに光を照射するバックライトを有する液晶表示装置において、液晶パネルは表示画面を複数のエリアに分割され、バックライトはエリアに対応した複数のバックライトセルで構成されており、各エリアにおける画像信号の輝度レベルに基づいて対応するバックライトセルの光源輝度を個別に設定するエリア制御部と、エリア内の輝度レベルが第1の閾値以上となるピーク輝度エリアを検出するピーク輝度検出部と、ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出する周辺輝度検出部と、エリア制御部が設定するバックライトセルの光源輝度を補正するピーク輝度補正部を備え、ピーク輝度補正部は、周辺エリアの輝度レベルの平均値が第2の閾値以下の場合、ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を増加させるよう補正する。
【0010】
また本発明は、画像を表示する液晶パネルと、液晶パネルに光を照射するバックライトを有する液晶表示装置において、液晶パネルは表示画面を複数のエリアに分割され、バックライトはエリアに対応した複数のバックライトセルで構成されており、各エリアにおける画像信号の輝度レベルに基づいて対応するバックライトセルの光源輝度を個別に設定するエリア制御部と、エリア内の輝度レベルが第4の閾値以下となるピーク輝度エリアを検出するピーク輝度検出部と、ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出する周辺輝度検出部と、エリア制御部が設定するバックライトセルの光源輝度を補正するピーク輝度補正部を備え、ピーク輝度補正部は、周辺エリアの輝度レベルの平均値が第5の閾値以上の場合、ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を減少させるよう補正する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エリア間の照明光の漏れ込みに起因する輝度不足と黒浮きを防止する液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による液晶表示装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】液晶パネルとバックライトの構成例を示す図。
【図3】実施例1の輝度制御を示す表示画面の一例を示す図。
【図4】実施例1の輝度制御を示す表示画面の他の例を示す図。
【図5】実施例1における表示画面の改善効果を示す図。
【図6】図5における高輝度エリアのバックライト輝度を比較した図。
【図7】実施例1の輝度制御を示すフローチャート。
【図8】実施例2の輝度制御を示す表示画面の一例を示す図。
【図9】実施例2の輝度制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明による液晶表示装置の一実施例を示すブロック図である。液晶表示装置は入力する画像信号に従い画像を表示する液晶パネル15と、液晶パネル15を背面から照射するバックライト11を備える。入力部には、画像信号が入力する画像信号入力部1と、入力した画像信号のエリア内の輝度レベルを検出するエリア内輝度検出部2と、画面全体の輝度レベルAPL(Average Picture Level)を算出するAPL算出部3、画面内でピーク輝度となるエリアを検出するピーク輝度検出部4、ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出する周辺輝度検出部5を有する。バックライト11の制御信号系として、バックライト11へエリア毎の制御信号を生成するエリア制御部6と、バックライト12を駆動するバックライト駆動部10を有する。エリア制御部6には、ピーク輝度エリアの輝度信号を補正するピーク輝度補正部7、エリア間の輝度信号にフィルタ処理を施す空間フィルタ8を有する。また液晶パネル15の画像信号系として、エリア毎の制御信号に基づきバックライト輝度(エリア毎の照明光の明るさ)を算出するバックライト輝度算出部12と、バックライト輝度に応じて画像信号を補正する画像信号補正部13を有し、液晶パネル制御部14により液晶パネル15を駆動する。コントローラとしてのマイコン16は、ピーク輝度タイマー9を用いながら各部の動作を制御する。
【0014】
本実施例におけるバックライト11は、LED光源を有する複数の光源ブロック(バックライトセル)で構成し、それぞれのバックライトセルを異なる明るさ(バックライト輝度)で点灯させることが可能なエリア制御方式としている。そのためエリア制御部6は、エリア内輝度検出部2で検出したエリア毎の輝度レベルに基づき、対応するバックライトセルに対する照明強度を設定する。その際ピーク輝度補正部7は、ピーク輝度検出部4と周辺輝度検出部5の検出結果に基づき、周辺エリアとの輝度差の大きいエリア(ピーク輝度エリア)を検出する。なお、ピーク輝度エリアは高輝度エリア(白画像)と低輝度エリア(黒画像)の両方を対象とする。そして、ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルについては、照明強度を増加または減少するよう補正し、ピーク輝度エリアの白画像または黒画像が本来の輝度で表示されるように調整する。
【0015】
図2は、液晶パネルとバックライトの構成例を示す図であり、(a)は表示画面を、(b)はバックライトを、(c)はバックライトセルの断面を示す。
液晶パネルの表示画面は、複数の画素群からなるエリア20に分割される。この例では、画面水平方向に6分割、画面垂直方向に5分割し、30個の矩形状のエリア20に分割している。
【0016】
これに対応するバックライトは、バックライトセル21をマトリクス状に画面水平方向に6個、垂直方向に5個配列させ、表示画面の対応するエリア20を照射するように構成している。各バックライトセル21の下部にはLED光源22(ここでは2個を1組としている)を有し、バックライトセル単位で光の強度を独立に制御している。
【0017】
バックライトセル21は、LED光源22と導光板23及び反射板24を備える。LED光源22から出射された光は導光板23に入射し、反射板24で反射されながら図面左方に(矢印25で示す)出射して液晶パネルの照明光となる。LED光源22の出射光の強度は、バックライト駆動部10から供給するLED駆動電流を変えることで制御する。
以下、本発明によるバックライトの輝度制御について、2つの実施例で説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1では、低輝度背景画像内の高輝度画像表示における高輝度エリアの輝度制御について述べる。
【0019】
図3は、本実施例の輝度制御を示す表示画面の一例を示す図であり、1個の高輝度エリアが孤立して存在する場合である。
表示画面は12×6のエリアに分割され、低輝度背景画像(黒画像)の中に高輝度画像(白画像)が表示されている。高輝度画像は1個のエリアBに存在するものとし、このエリアBを、「ピーク輝度エリア」と呼ぶことにする。また、ピーク輝度エリアBに隣接する周辺の低輝度画像のエリアCを、「周辺エリア」と呼ぶことにする。この画面例では4個の周辺エリアCが存在する。なお、ピーク輝度エリアBの斜め方向対角位置にあるエリアは、互いに光漏れはない(無視できる)ので周辺エリアには含めない。
【0020】
この表示画面では、従来のエリア制御によれば、エリアBのバックライト輝度は明るく、エリアCのバックライト輝度は暗く点灯される。その結果、エリアCからエリアBへの漏れ光が少なくなり、エリアBにおける本来のバックライトの輝度(明るさ)が得られない。1個のエリアBに対し隣接する周辺エリアCは4個存在するから、1個の隣接エリア当り5%低下するものとすれば、エリアBの輝度は約80%に低下する。そこで本実施例では、エリアBにおけるバックライト輝度(LED光源の電流値)を従来よりも増加させ、輝度不足を補うようにする。すなわち、画像信号から決まるバックライト輝度の設定値に対して、光源輝度を約20%増加させるように補正する。この補正により、エリアBにおけるバックライト輝度を所望の明るさ100%に近付けることができる。
【0021】
図4は、本実施例の輝度制御を示す表示画面の他の例を示す図であり、複数個の高輝度エリアが連結して存在する場合である。
この場合も低輝度背景画像(黒画像)の中に高輝度画像(白画像)が表示されているが、高輝度画像は複数個(ここでは4個)のピーク輝度エリアBに渡って存在するものとする。この4個のエリアBは連結しており、これらをまとめて「連結エリアB’」と呼ぶことにする。この場合の周辺エリアは、連結エリアB’に隣接する周辺の低輝度エリアCが該当する。この画面例では8個の周辺エリアが存在する。
【0022】
この表示画面においても、従来のエリア制御によればエリアCから連結エリアB’への漏れ光が少なくなり、エリアB’における輝度が低下する。ただしこの場合は本来の輝度の約90%に低下する程度である。これは、1個のエリアBに対し隣接する周辺エリアCは2個に減少するからで、図3のように1個のエリアBに対し周辺エリアCが4個存在する場合よりも低下量は小さくなる。そこでこの例では、連結エリアB’におけるバックライト輝度(LED光源の電流値)を約10%増加させるように補正する。この補正により、連結エリアB’におけるバックライト輝度を所望の明るさ100%に近付けることができる。
【0023】
図5は、本実施例における表示画面の改善効果を示す図であり、(a)は従来のエリア制御の場合、(b)は本実施例の場合である。ここでは高輝度エリアが孤立している場合を示すが、高輝度エリアが連結している場合も同様である。
従来の制御では、低輝度背景に囲まれた高輝度エリア51のバックライト輝度が不足して、本来の明るさの高輝度画像を表示できなかった。これに対し本実施例では、高輝度エリア52のバックライト輝度(LED光源の電流値)を増加する補正を施すことで、高輝度画像を本来の明るさで鮮明に表示することができる。
【0024】
図6は、図5における高輝度エリアのバックライト輝度を比較した図である。横軸は周辺エリアの画像信号の輝度レベルを、縦軸は高輝度エリアのバックライト輝度を示す。従来の制御では高輝度エリアのバックライト輝度が所望値よりも20%低下したものを、本実施例の制御(光源輝度の増加補正)により所望の輝度まで回復させることができる。なお、本実施例の制御は、高輝度エリアと周辺エリアとの輝度レベルの差が大きい場合、すなわち周辺エリアの画像信号の輝度レベルが低い範囲にて、例えば20%以下の範囲で適用すべきである。輝度レベルの差が小さい場合にも適用すると、高輝度エリアのバックライト輝度が過剰に補正されてしまうからである。これにより、周辺エリアの画像信号の輝度レベルの大きさに係わらず、高輝度エリアのバックライト輝度を常に所望のレベルに保つことができる。また、高輝度画像の輝度不足は、視覚的には画面全体の輝度レベルAPLが関係する。すなわち、画面全体の輝度レベルAPLが低くなるにつれて高輝度画像の輝度不足が目立つことから、本実施例の制御は画面全体の輝度レベルAPLがあるレベル以下となる場合に適用するのが効果的である。
【0025】
上記した例では、高輝度エリアが孤立している場合と4個連結している場合とを示したが、任意の複数個連結している場合も同様であり、連結数に応じてバックライト輝度の増加量を調整すればよい。
【0026】
なお、輝度制御において高輝度エリアのバックライト輝度を増加させる際、次の点に注意する。バックライト光源LEDの電流値を増加させるとき、通常全白表示時の値を基準に20〜30%の増加を限度とする。これは、ピーク輝度を上げることでその分周辺エリアへのハローも広がるため、これを防止するためである。なお、全白表示時のバックライトの輝度(LED電流値)は、表示装置の消費電力やLEDの温度仕様によって決まっているので、LEDの電流値の増加量はこれらの条件を考慮して決定する。また、LEDの電流値を増加し上限値近くで長時間使用する場合には、LEDの温度仕様や装置の温度仕様の許容範囲を超えてしまう恐れがある。よって、ピーク輝度タイマー9により継続使用時間を計測し、輝度増加状態が所定時間以上継続した場合にはLED電流値を元の設定値に戻すようにする。
【0027】
図7は、本実施例の輝度制御を示すフローチャートである。マイコン16は、表示画面が切り替わる毎に以下の制御を行う。
【0028】
S101では、画像信号入力部1に画像信号を入力する。
S102では、エリア内輝度検出部2はエリアi毎に画像信号の輝度レベルx(i)を検出する。そして全てのエリアについて輝度レベルx(i)を取得する。
S103では、APL算出部3は画面全体の輝度レベルx(i)の平均値APLを算出する。
【0029】
S104では、エリア制御部6はバックライトのエリア制御として、エリアi毎の輝度レベルx(i)に応じてバックライト光源の輝度を設定する。例えば、各エリアの輝度レベルx(i)に比例させてバックライト光源の輝度を設定する。これを「通常設定」と呼ぶことにする。
S105では、エリア制御部6は画面全体の平均輝度レベルAPLを閾値aと比較する。APL≦aであればS106へ進む。APL>aであればS101へ戻り、次の画面の制御を行う。閾値aは例えば20%とする(なお、画像信号の最大輝度レベルを100%とする)。
【0030】
S106では、ピーク輝度検出部4は各エリアの輝度レベルx(i)を閾値bと比較する。画面内にx(i)≧bとなるエリアが存在すればS107へ進む。画面内にx(i)≧bとなるエリアが存在しなければS101へ戻る。閾値bは例えば80%とする。
S107では、ピーク輝度検出部4はx(i)≧bとなるエリアiをピーク輝度エリアBとして決定する。また複数のエリアBが画面内で連結していれば、連結エリアB’として扱う。連結しているエリア数をn個とする。これより、エリアB(またはエリアB’)における輝度レベルx(B)≧b、x(B’)≧bとなる。
【0031】
S108では、周辺輝度検出部5はエリアB(またはエリアB’)に隣接するエリアを周辺エリアCとして決定する。周辺エリアCは複数個存在し、孤立したエリアBに対する周辺エリアCは4個となる。
S109では、周辺輝度検出部5は複数個の周辺エリアCの輝度レベルx(i)の平均値x’(C)を算出する。
【0032】
S110では、エリア制御部6は周辺エリアCの輝度レベル平均値x’(C)を閾値cと比較する。x’(C)≦cであればS111へ進む。x’(C)>cであればS101へ戻る。閾値cは例えば10%とする。
S111では、ピーク輝度補正部7はピーク輝度エリアB(またはエリアB’)のバックライト輝度、すなわちLED光源の電流値を増加させる。増加量は連結数nに応じて決定し、n=1であれば通常設定よりも20%程度増加させ、n=4であれば通常設定よりも10%程度増加させる。
【0033】
S112では、ピーク輝度タイマー9は光源輝度を増加して点灯させた継続時間tを計測し、所定時間tmaxと比較する。t≧tmaxであればS113へ進む。t<tmaxであればS101へ戻る。tmaxは例えば1分程度とするが、光源輝度の増加量に応じて決定しても良い。
S113では、エリア制御部6は増加させた光源輝度を通常設定に戻し、S101へ戻る。
【0034】
上記したフローチャートによれば、低輝度背景に囲まれた高輝度エリアのバックライト輝度を通常値よりも増加させるように輝度制御を行うことで、高輝度画像の輝度不足を解消することができる。その際の条件として、高輝度エリアの輝度レベルが閾値b以上、周辺エリアの輝度レベルが閾値c以下として両エリア境界での輝度差が大きい場合に実施する。また、画面全体の輝度平均値APLが閾値a以下となる視覚的に画像の輝度不足が目立ちやすい場合に実施する。上記した各閾値a,b,cの値は一例であり、表示装置の性能に合わせて適宜設定すればよい。
【実施例2】
【0035】
実施例2では、高輝度背景画像内の低輝度画像表示における低輝度エリアの輝度制御について述べる。
【0036】
図8は、本実施例の輝度制御を示す表示画面の一例を示す図であり、1個の低輝度エリアが孤立して存在する場合である。
画面は12×6のエリアに分割され、高輝度背景画像(白画像)の中に低輝度画像(黒画像)が表示されている。低輝度画像は1個のエリアEに存在するものとし、このエリアEを、「ピーク輝度エリア」と呼ぶことにする。また、ピーク輝度エリアEに隣接する周辺の高輝度画像のエリアFを、「周辺エリア」と呼ぶことにする。この画面例では4個の周辺エリアFが存在する。
【0037】
この表示画面では、従来のエリア制御によれば、エリアEのバックライト輝度は暗く、エリアFのバックライト輝度は明るく点灯される。その結果、エリアFからエリアEへの漏れ光が多くなり、エリアEの画像が本来よりも明るくなる黒浮き現象が生じる。エリアEに対し隣接する周辺エリアFは4個存在するから、1個の隣接エリア当り5%漏れ込むものとすれば、エリアEの輝度は約20%増加する。そこで本実施例では、エリアEにおけるバックライト輝度(LED光源の電流値)を従来よりも減少させ、エリアEの画像の黒浮きをなくすようにする。すなわち、画像信号から決まるバックライト輝度の設定値に対して、輝度レベルを約20%減少させるように補正する。ただし、エリアEに対するバックライト輝度の設定値が既に0%に近い場合は、エリアEの光源輝度をさらに減少させることができない。その場合には、周辺エリアFのバックライト輝度について従来よりも減少させる。この補正により、エリアEにおけるバックライト輝度を所望の明るさ0%に近付けることができる。
【0038】
上記した例では、低輝度エリアEが孤立している場合を示したが、任意の複数個連結している場合も同様であり、連結数に応じてバックライト輝度の減少量を調整すればよい。
なお、本実施例の輝度制御においてはバックライト輝度(光源LEDの電流値)を減少させるものであるから、LEDの温度仕様や装置の温度仕様の許容範囲を新たに考慮する必要がない。よって、使用継続時間に制限を設ける必要がない。
【0039】
図9は、本実施例の輝度制御を示すフローチャートである。マイコン16は、表示画面が切り替わる毎に以下の制御を行う。
【0040】
S201では、画像信号入力部1に画像信号を入力する。
S202では、エリア内輝度検出部2はエリアi毎に画像信号の輝度レベルx(i)を検出する。そして全てのエリアについて輝度レベルx(i)を取得する。
S203では、APL算出部3は画面全体の輝度レベルx(i)の平均値APLを算出する。
【0041】
S204では、エリア制御部6はバックライトのエリア制御として、エリアi毎の輝度レベルx(i)に応じてバックライト光源の輝度を設定する。例えば、各エリアの輝度レベルx(i)に比例させてバックライト光源の輝度を設定する。これを「通常設定」と呼ぶことにする。
S205では、エリア制御部6は画面全体の平均輝度レベルAPLを閾値dと比較する。APL≧dであればS206へ進む。APL<dであればS201へ戻り、次の画面の制御を行う。閾値dは例えば80%とする。
【0042】
S206では、ピーク輝度検出部4は各エリアの輝度レベルx(i)を閾値eと比較する。画面内にx(i)≦eとなるエリアが存在すればS207へ進む。画面内にx(i)≦eとなるエリアが存在しなければS201へ戻る。閾値eは例えば20%とする。
S207では、ピーク輝度検出部4はx(i)≦eとなるエリアiをピーク輝度エリアEとして決定する。また複数のエリアEが画面内で連結していれば、連結エリアE’として扱う。連結しているエリア数をn個とする。これより、エリアE(またはエリアE’)における輝度レベルx(E)≦e、x(E’)≦eとなる。
【0043】
S208では、周辺輝度検出部5はエリアE(またはエリアE’)に隣接するエリアを周辺エリアFとして決定する。周辺エリアFは複数個存在し、孤立したエリアEに対する周辺エリアFは4個となる。
S209では、周辺輝度検出部5は複数個の周辺エリアFの輝度レベルx(i)の平均値x’(F)を算出する。
【0044】
S210では、エリア制御部6は周辺エリアFの輝度レベル平均値x’(F)を閾値fと比較する。x’(F)≧fであればS211へ進む。x’(F)<fであればS201へ戻る。閾値fは例えば90%とする。
S211では、ピーク輝度補正部7はピーク輝度エリアB(またはエリアB’)のバックライト輝度の低減が可能かどうか判定する。すなわち、S204での通常設定が0%程度であれば低減不可能である。可能であればS212へ進む。不可能であればS213へ進む。
【0045】
S212では、ピーク輝度エリアB(またはエリアB’)のバックライト輝度、すなわちLED光源の電流値を減少させる。減少量は連結数nに応じて決定し、n=1であれば通常設定よりも20%程度減少させる、n=4であれば通常設定よりも10%程度減少させる。そしてS201へ戻る。
S213では、周辺エリアFのバックライト輝度、すなわちLED光源の電流値を減少させる。減少量は連結数nに応じて決定し、n=1であれば通常設定よりも20%程度減少させる、n=4であれば通常設定よりも10%程度減少させる。そしてS201へ戻る。
【0046】
上記したフローチャートによれば、高輝度背景に囲まれた低輝度エリア、または低輝度エリアに隣接する周辺エリアのバックライト輝度を通常値よりも減少させるように輝度制御を行うことで、低輝度画像の黒浮きを解消することができる。その際の条件として、低輝度エリアの輝度レベルが閾値e以下、周辺エリアの輝度レベルが閾値f以上として両エリア境界での輝度差が大きい場合に実施する。また、画面全体の輝度平均値APLが閾値d以上となる視覚的に画像の黒浮きが目立ちやすい場合に実施する。上記した各閾値d,e,fの値は一例であり、表示装置の性能に合わせて適宜設定すればよい。
【0047】
以上の説明では、本発明によるバックライトの輝度制御を、低輝度背景画像内の高輝度画像表示と、高輝度背景画像内の低輝度画像表示の2つの実施例に分けて説明したが、これらの2つの輝度制御は単独でもあるいは組み合わせても可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1…画像信号入力部、
2…エリア内輝度検出部、
3…APL検出部、
4…ピーク輝度検出部、
5…周辺輝度検出部、
6…エリア制御部、
7…ピーク輝度補正部、
8…空間フィルタ、
9…ピーク輝度タイマー、
10…バックライト駆動部、
11…バックライト、
12…バックライト輝度算出部、
13…画像信号補正部、
14…液晶パネル制御部、
15…液晶パネル、
16…マイコン(コントローラ)、
20…エリア、
21…バックライトセル、
22…LED光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルに光を照射するバックライトを有する液晶表示装置において、
前記液晶パネルは表示画面を複数のエリアに分割され、前記バックライトは該エリアに対応した複数のバックライトセルで構成されており、
前記各エリアにおける画像信号の輝度レベルに基づいて対応するバックライトセルの光源輝度を個別に設定するエリア制御部と、
エリア内の輝度レベルが第1の閾値以上となるピーク輝度エリアを検出するピーク輝度検出部と、
前記ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出する周辺輝度検出部と、
前記エリア制御部が設定するバックライトセルの光源輝度を補正するピーク輝度補正部を備え、
該ピーク輝度補正部は、前記周辺エリアの輝度レベルの平均値が第2の閾値以下の場合、前記ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を増加させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
表示画面全体の画像信号の輝度レベル(APL)を検出するAPL検出部を備え、
前記ピーク輝度補正部は、前記APLが第3の閾値以下の場合に、前記ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を増加させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶表示装置において、
前記ピーク輝度検出部は、検出した前記ピーク輝度エリアがn個連結して存在するときこれを連結エリアとして扱い、
前記周辺輝度検出部は、前記連結エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出し、
前記ピーク輝度補正部は、前記連結エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を連結数nに応じて増加させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記バックライトセルの光源輝度を増加させて継続使用した時間を計測するタイマーを備え、
前記エリア制御部は、前記バックライトセルの輝度増加状態が所定時間以上継続した場合、該バックライトセルの光源輝度を元の設定値に戻すことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
画像を表示する液晶パネルと、該液晶パネルに光を照射するバックライトを有する液晶表示装置において、
前記液晶パネルは表示画面を複数のエリアに分割され、前記バックライトは該エリアに対応した複数のバックライトセルで構成されており、
前記各エリアにおける画像信号の輝度レベルに基づいて対応するバックライトセルの光源輝度を個別に設定するエリア制御部と、
エリア内の輝度レベルが第4の閾値以下となるピーク輝度エリアを検出するピーク輝度検出部と、
前記ピーク輝度エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出する周辺輝度検出部と、
前記エリア制御部が設定するバックライトセルの光源輝度を補正するピーク輝度補正部を備え、
該ピーク輝度補正部は、前記周辺エリアの輝度レベルの平均値が第5の閾値以上の場合、前記ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を減少させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶表示装置において、
表示画面全体の画像信号の輝度レベル(APL)を検出するAPL検出部を備え、
前記ピーク輝度補正部は、前記APLが第6の閾値以上の場合に、前記ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を減少させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の液晶表示装置において、
前記ピーク輝度検出部は、検出した前記ピーク輝度エリアがn個連結して存在するときこれを連結エリアとして扱い、
前記周辺輝度検出部は、前記連結エリアに隣接する周辺エリアの輝度レベルを検出し、
前記ピーク輝度補正部は、前記連結エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を連結数nに応じて減少させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記ピーク輝度補正部は、前記ピーク輝度エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を減少できないとき、前記周辺エリアに対応するバックライトセルの光源輝度を減少させるよう補正することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−123100(P2012−123100A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272586(P2010−272586)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】