説明

液晶表示装置

【課題】表示性能が改善された液晶表示装置の提供。
【解決手段】黒表示時に正面から観察した際の色味u’on axis、v’on axis、及び極角60°方向から観察した際の色味(u’,v’)において、方位角0°から360°まで観察した際のu’,v’の最大値u’max、v’max、最小値u’min,v’minが、下記式(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直配向モード(VA型)液晶表示装置の表示性能改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の総合的な表示品位を高めるためには、見る方向によってコントラスト変化や色変化がないことが好ましい。特に、黒表示時における観察方向による色変化を小さくすること、及び様々な方向から観察した際のコントラスト比を向上させることが重要である。
【0003】
従来、液晶表示装置の黒表示時に斜め方向から観察した際の色変化を少なくするために、光学フィルムのレターデーションの波長分散を制御する方法が提案されていた(特許文献1)。しかしながら、近年の大画面化によってディスプレイの観察位置による差が顕著に識別できるようになり、ディスプレイを正面から観察した際と、斜め方向から観察した際の色味が異なるという問題が認識され始めている。
【0004】
正面から観察した際の色味と、斜めから観察した際の色味を近づけるため、カラーフィルタの厚み方向位相差を調整する方法が知られている(特許文献2)。しかしながら、この方法では観察方向による色味変化は小さいものの、全体的に青味がかってしまうという問題があった。
【0005】
一方で、近年、液晶表示装置の高コントラスト(CR)化が進んでいる。特に、VA型液晶表示装置は、他のモードと比較して画面法線方向のCR(以下、「正面CR」という)が高いという長所があり、その長所をより改善するための研究開発が種々行われている。その結果、この6年間で、VA型液晶表示装置の正面CRは、400程度から8000程度に、約20倍高くなっている。
【0006】
また、斜め方向から観察した際のコントラスト比(以下、「視野角CR」という)を高めるために、光学フィルムの位相差を制御する方法が知られている(たとえば、特許文献3)。
【0007】
また、色味以外にも表示品位を高めるためには、さらに水平方向から観察した際のコントラスト比(以下、「水平CR」という)を向上させることも求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−221622号公報
【特許文献2】特開2009−181070号公報
【特許文献3】特開2006−184640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来の液晶表示装置では、正面方向と斜め方向から観察した際の色味が異なるか、どの観察方向から見た際も青味がかってしまうという問題があった。
従って、本発明は黒表示時に正面及び斜め方向から観察した際の色味の差が小さく、かつ色味がニュートラルである液晶表示装置を提供することを課題とする。
【0010】
本発明のさらなる課題は、正面CR、視野角CRに加え水平CRを向上させた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]黒表示時に正面から観察した際の色味u’on axis、v’on axis、及び極角60°方向から観察した際の色味(u’,v’)において、方位角0°から360°まで観察した際のu’,v’の最大値u’max、v’max、最小値u’min,v’minが、下記式(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする液晶表示装置。
【数1】

【0012】
[2] 下記式(4)を満たす[1]の液晶表示装置。
【数2】

【0013】
[3] 直交配置したときの色相u’_pol、v’_polが下記式(5)および(6)を満たす偏光板を少なくとも一枚有することを特徴とする[1]又は[2]の液晶表示装置。
式(5) 0.16≦u’_pol≦0.24
式(6) 0.38≦v’_pol≦0.50
[4] 波長410nmにおける直交透過率が0.03%以下である偏光板を少なくとも一枚有する[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] 液晶セルと、吸収軸が互いに直交する一対の偏光板と、該一対の偏光板のそれぞれと液晶セルとの間に配置される光学フィルムを有し、液晶セル、及び光学フィルムの正面から観察した際のD.I.(0°)、及び水平方向30°方向から観察した際のD.I.(30°)が、下記式(7)及び(8)を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
式(7) D.I.(30°)/D.I.(0°)<4.0
式(8) D.I.(0°)<0.04%
[6] 液晶セルと、吸収軸が互いに直交する一対の偏光板と、該一通の偏光板のそれぞれと液晶セルとの間に配置される光学フィルムを有し、液晶セルの光学フィルムの正面から観察した際のD.I.(0°)、及び水平方向30°方向から観察した際のD.I.(30°)が、下記式(9)及び(10)を満たす[1]〜[5]のいずれかの液晶表示装置。
式(9) D.I.(30°)/D.I.(0°) <4.0
式(10) D.I.(0°)<0.03%
[7] 少なくとも、液晶セルと、該液晶セルの外側の少なくとも一方に配置された偏光板(第1の偏光板)とを有し、前記液晶セルが、少なくとも、電極を一方に有する対向配置された一対の基板と、該基板間に挟持された液晶層とを有するとともに、少なくとも3つの絵素領域を含み、前記3つの絵素領域上に、透過率に波長選択性を有するカラーフィルタが配置され、それぞれの絵素領域に設けられたカラーフィルタの最大透過率をとる主波長を小さい方から順にλ1、λ2、及びλ3(単位nm)、これらそれぞれの絵素領域における前記液晶層の厚さを順にd1、d2、及びd3(単位:nm)とした時、下記式(11)を満足することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
式(11) d2<d3
[8] さらに、下記式(12)を満足することを特徴とする[7]の液晶表示装置。
式(12) d1<d2<d3
[9] 前記光学フィルムが、下記式(13)及び(14)を満足することを特徴とする[5]〜[8]のいずれかの液晶表示装置。
式(13) 20nm≦Re≦100nm
式(14) 70nm≦Rth≦300nm
[10] 前記光学フィルムの波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)、及び波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)、650nmにおける面内レターデーションをRe(650)としたときに、下記式(15)及び式(16)を満たすことを特徴とする[5]〜[9]のいずれかの液晶表示装置。
式(15) 0.75≦Re(450)/Re(550)≦1.00
式(16) 1.00≦Re(650)/Re(550)≦1.25
[11] 前記光学フィルムの内部ヘイズが、0.05%以下であることを特徴とする[5]〜[10]のいずれかの液晶表示装置。
[12] 垂直配向モードであることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、黒表示時の正面及び斜め方向から観察した際の色変化が小さく、かつ色味がニュートラルな液晶表示装置を提供でき、正面CRのほかに、視野角CRや、水平方向CRにも優れた総合的な表示品位に優れる垂直配向モード(VA型)液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例で利用した液晶セルの電極構成を示す上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語およびその測定方法について、説明する。
【0017】
(色味u’,v’)
u’,v’は、CIE L*u*v*表色系における色度座標である。
詳細な定義及び測定方法については、JIS Z8729に記載されている。例えば、具体例として、偏光板色相u’及びv’では、光源にJIS Z8720に規定される標準光源(C光源)を用い、積分球ありの条件下で、380〜780nmの測定波長領域に対して、分光光度計V7070(日本分光株式会社製)で偏光板の可視域における分光透過率を測定し、測定した分光透過率に等色関数を乗じ積分することで三刺激値X、Y、Zを求め、CIE1976 u’、v’色空間の定義から求めることができる。
【0018】
なお、本発明においては、各条件で測定される色度座標u‘,v’を以下の様に表現する。
u’on axis、v’on axis: 黒表示時に正面から観察した際のu‘,v’の値。
u’max、v’max: 黒表示時に極角60°方向から観察した際の色味(u’,v’)において、方位角0°から360°まで観察した際のu’,v’の最大値。
u’min、v’min: 黒表示時に極角60°方向から観察した際の色味(u’,v’)において、方位角0°から360°まで観察した際のu’,v’の最小値。
u’_pol,v’_pol: 偏光板を直交配置した際のu‘,v’の値。
【0019】
(色変化 Δu’v’)
Δu’v’ave-on axis: u’v’空間における、正面から観察した際の色相と、極角60°方位角0°〜360°における色変化の平均値の距離を表し、以下の式で算出される。
【0020】
【数3】

Δu’v’60°: 極角60°方向、方位角0°〜360°方向から観察した際のu’、v’空間における最大距離を表し、即ち、以下の式で算出される。
【0021】
【数4】

【0022】
(コントラスト)
液晶表示装置のコントラストは、各観察方向における白表示時における輝度を黒表示時における輝度で除した値で定義される。
測定法としては、測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、暗室内で黒表示および白表示の輝度および色度を測定し、黒表示における色相、カラーシフトおよびコントラスト比を算出することができる。
【0023】
(D.I.)
各構成部材が有する透過する偏光の消失の程度を示す値であり、低いほど偏光状態を維持している成分が多いことを示す。
D.I.は、Y.Utsumi et al.: "Improved contrast ratio in IPS-Pro LCD TV by using quantitative analysis of depolarized light leakage from component materials?", SID International Symposium Digest 39, p129 (2008);及びY.Utsumi et al: "Reduced Light Scattering Intensity from Liquid Crystal for Higher Contrast Ratio in IPS-Pro LCDs" IDW'07, p.1749,2007.2;に記載の方法に沿って測定することができる。
【0024】
偏光解消(偏光の消失)は基板上に設けられた回路などの構造物によって、その構造物や近傍を透過する光が屈折、散乱、回折、反射等により発生することがある。
また、液晶層においても、視野角特性を一様とするためのMVA方式やPVA方式に見られる様に、極小領域においては様々な方向へ配向させており、その領域の境界などで偏光解消(偏光の消失)が発生することがある。
さらに、理想的には一様と見なしている構成部材である(ガラス)基板、カラーフィルタ、光学フィルムなども表面形状や内部の欠陥や不均一性によって多少の偏光解消が発生する。
構成部材単体以外に各構成部材の組み合わせにおいても、その界面状態によっては測定されるD.I.は変化する。
なお、本発明において、特に構成部材を特定して表記しない場合は偏光板に挟持された構成全体のD.I.であることを示す。
【0025】
(レターデーション、Re及びRth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルム等のサンプルが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
【0026】
【数5】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0027】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0028】
また、本明細書では、Re(450)、Re(550)、Re(630)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(630)等のRe(λ)及びRth(λ)の値は、測定装置により、3以上の異なる波長(例としてλ=479.2、546.3、632.8、745.3nm)についてRe及びRthをそれぞれ測定し、それらの値から算出するものとする。具体的には、それらの測定値をコーシーの式(第3項まで、Re=A+B/λ2+C/λ4)にて近似して、値A、B及びCをそれぞれ求める。以上より波長λにおけるRe、Rthをプロットし直し、そこから各波長λのRe(λ)およびRth(λ)をそれぞれ求めることができる。
【0029】
本明細書において、位相差フィルム等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、位相差領域、位相差フィルム、及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
また、本明細書で「正面」とは、表示面に対する法線方向を意味し、「正面コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいい、「視野角コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向から傾斜した斜め方向(例えば、表示面に対して、極角方向60度で定義される方向)において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいうものとする。
【0030】
(内部ヘイズ)
以下の測定により、得られたフィルムの全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘイズ(Hs)を測定した。
1)得られたフィルムの全ヘイズ(H)をJIS K−7136に従って,ヘイズメーターNDH2000(日本電色工業(株))を用いて測定した。
2)得られたフィルムの表面及び裏面に流動パラフィンを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
3)上記1)で測定した全ヘイズ(H)から上記2)で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
【0031】
本発明について、以下に詳述する。
本発明の液晶表示装置の一実施形態は、対向する少なくとも一方に電極を設けた基板間に液晶層を挟持した液晶セルを有し、この液晶セルは2枚の偏光板の間に配置して構成される。さらに必要に応じて偏光板保護フィルムや光学補償を行う光学補償部材、接着層などの付随する機能層を有する。
【0032】
<液晶セル>
液晶表示装置に用いられる駆動モードは、さまざまな構成が提案されている。本発明は、どの様な駆動モードによっても好ましい効果を提供することができるが、下記の偏光解消との観点において垂直配向モードにおいて、特に好ましい効果を得ることができる。
【0033】
液晶表示装置の構成部材のD.I.が液晶表示装置全体としてのD.I.に影響を与える。たとえば、IPSモード(水平配向)液晶表示装置における液晶層、カラーフィルタ、偏光板、電子基板の偏光解消性を切り分けた結果がY. Utsumi et al: "Reduced Light Scattering Intensity from Liquid Crystal for Higher Contrast Ratio in IPS-Pro LCDs", IDW '07, p. 1749, 2007. 2 に記載されている。また、"Depolarized light scattering from liquid crystals as a factor for black level light leakage in liquid-crystal displays," . JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 98, 016106, 2005に、ホメオトロピック配向液晶とホモジニアス配向液晶の散乱強度の角度依存性に関する記載がある。ホモジニアス配向液晶は、ホメオトロピック配向液晶と比べて、正面から視認した際の散乱強度は小さいが、斜めから視認した際の散乱強度が大きいことが分かる。
【0034】
そのため、垂直配向モード液晶表示装置は正面から視認した際のD.Iは低くコントラストが高いが、斜め方向から視認した際のD.Iが高くなることが予想される。表示品位を高めるためには、斜め方向、特にディスプレイを視認する機会が多い水平方向のD.Iを低くし水平方向のコントラストを高めることが必要となる。
垂直配向モード液晶表示装置のD.I.を低減するには、カラーフィルタ、液晶層を含めた液晶セル、光学フィルムを含めた表示装置を構成する各部材のD.I.を低減することが重要である。例えば、基板の回路パターンによるD.I.を低減するには開口率を上げるなど散乱成分を低減する方法などが考えられる
【0035】
IPS液晶層のD.I.を低減する方法として、散乱因子Skの低減が有効であり、Skの低減には液晶の弾性定数を上げること、液晶の屈折率異方性を低減すること、液晶の屈折率を低減すること、液晶層のセル厚みを低減することが有効であると、Y. Utsumi et al: "Reduced Light Scattering Intensity from Liquid Crystal for Higher Contrast Ratio in IPS-Pro LCDs", IDW '07, p. 1749, 2007. 2 に記載されている。上記の概念はVAモードにおける液晶にも適応可能であると類推される。
【0036】
<偏光板>
次に、偏光板について説明する。
本発明の液晶表示装置が有する偏光板は、通常、液晶表示装置に用いられる偏光板と同様、偏光フィルムおよびその両側に配置された二枚の透明保護フィルムからなる。本発明においては、二枚の保護フィルムの内、液晶セル側に配置される保護フィルムとして、本発明に係わる光学フィルムが用いられる。
【0037】
前記偏光フィルムとしては、ポリマーフィルムにヨウ素が吸着配向されたものを用いることが好ましい。前記ポリマーフィルムとしては、特に限定されず各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルムや、これらの部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルムに、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、偏光フィルムとしてのヨウ素による染色性に優れたポリビニルアルコール系フィルムを用いることが好ましい。
【0038】
前記ポリビニルアルコール系フィルムの材料には、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。
【0039】
前記ポリマーフィルムの材料であるポリマーの重合度は、一般に500〜10,000であり、1000〜6000の範囲であることが好ましく、1400〜4000の範囲にあることがより好ましい。更に、ケン化フィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、75モル%以上が好ましく、より好ましくは98モル%以上であり、98.3〜99.8モル%の範囲にあることがより好ましい。
【0040】
前記ポリマーフィルム(未延伸フィルム)は、常法に従って、一軸延伸処理、ヨウ素染色処理が少なくとも施される。さらには、ホウ酸処理、洗浄処理、を施すことができる。また前記処理の施されたポリマーフィルム(延伸フィルム)は、常法に従って乾燥処理されて偏光フィルムとなる。
【0041】
一軸延伸処理における延伸方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。乾式延伸法の延伸手段としては、たとえば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等があげられる。延伸は多段で行うこともできる。前記延伸手段において、未延伸フィルムは、通常、加熱状態とされる。延伸フィルムの延伸倍率は目的に応じて適宜に設定できるが、延伸倍率(総延伸倍率)は2〜8倍程度、好ましくは3〜7倍、さらに好ましくは3.5〜6.5倍とするのが望ましい。
【0042】
ヨウ素染色処理は、例えば、ポリマーフィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムを含有するヨウ素溶液に浸漬することにより行われる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であり、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化カリウムを含有する。ヨウ素濃度は0.01〜1質量%程度、好ましくは0.02〜0.5質量%であり、ヨウ化カリウム濃度は0.01〜10質量%程度、さらには0.02〜8質量%で用いるのが好ましい。
【0043】
ヨウ素染色処理にあたり、ヨウ素溶液の温度は、通常20〜50℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常10〜300秒間程度、好ましくは20〜240秒間の範囲である。ヨウ素染色処理にあたっては、ヨウ素溶液の濃度、ポリマーフィルムのヨウ素溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調整することによりポリマーフィルムにおけるヨウ素含有量およびカリウム含有量が前記範囲になるように調整する。ヨウ素染色処理は、一軸延伸処理前、一軸延伸処理中、一軸延伸処理後の何れの段階で行ってもよい。
【0044】
前記偏光フィルムのヨウ素含有量は、光学特性を考慮すると、例えば、2〜5質量%の範囲であり、好ましくは、2〜4質量%の範囲である。
【0045】
前記偏光フィルムは、カリウムを含有するのが好ましい。カリウム含有量は、好ましくは0.2〜0.9質量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜0.8質量%の範囲である。偏光フィルムが、カリウムを含有することによって、好ましい複合弾性率 (Er)を有し、偏光度の高い偏光フィルムを得ることができる。カリウムの含有は、例えば、偏光フィルムの形成材料であるポリマーフィルムを、カリウムを含む溶液に浸漬することにより可能である。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねていてもよい。
【0046】
乾燥処理工程としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。例えば加熱乾燥では、加熱温度は20〜80℃程度であり、乾燥時間は1〜10分間程度である。また、この乾燥処理工程においても適宜延伸することができる。
【0047】
偏光フィルムの厚さとしては特に限定されず、通常は5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは、20〜100μmである。
【0048】
<偏光板保護フィルムおよび光学補償フィルム>
前記保護フィルムのうち、液晶セルと反対側に配置される保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。この様な熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピルセルロース、ジプロピルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV80」、「SH80」、「TD80U」、「TDTAC」、「UZTAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等が挙げられる。
【0050】
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1240517号公報、特開平314882号公報、特開平3122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のαオレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及び、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物等が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0051】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品律「APEL」が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂等)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチルメタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸C16アルキルが挙げられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開200470296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0055】
保護フィルムの厚さは適宜に設定し得るが、一般には強度や取扱い等の作業性、薄層性等の点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0056】
<接着層>
前記偏光フィルムと保護フィルムの貼り合わせには、偏光フィルムならびに保護フィルムに応じて、接着剤や粘着剤等を適宜採用することができる。この接着剤および接着処理方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマーからなる接着剤、あるいは、少なくともホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤からなる接着剤などを介して行うことができる。このような接着剤からなる接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。特に偏光フィルムとしてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。さらには、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。
【0057】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されるものではないが、接着性の点から平均重合度100〜3000程度、平均ケン化度は85〜100モル%程度が好ましい。また、接着剤水溶液の濃度としては特に限定されるものではないが、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。前記接着層の厚みとしては、乾燥後の厚みにおいて30〜1000nm程度が好ましく、50〜300nmがより好ましい。この厚みが薄すぎると接着力が不十分となり、厚すぎると外観に問題が発生する確率が高くなる。
【0058】
その他の接着剤として、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
【0059】
偏光フィルムの光学特性としては、偏光フィルム単体で測定したときの単体透過率が43%以上であることが好ましく、43.3〜45.0%の範囲にあることがより好ましい。また、前記偏光フィルムを2枚用意し、2枚の偏光フィルムの吸収軸が互いに90°になるように重ね合わせて測定する直交透過率は、より小さいことが好ましく、実用上、0.00%以上0.050%以下が好ましく、0.030%以下であることがより好ましい。偏光度としては、実用上、99.90%以上100%以下であることが好ましく、99.93%以上100%以下であることが特に好ましい。偏光板として測定した際にもほぼこれと同等の光学特性が得られるものが好ましい。
【0060】
以上の構成からなる本発明の態様において、黒表示時の色味はいずれの観察点からもニュートラルであることが好ましく、まず良好な態様として正面から観察した際の色味はニュートラルに近いことが好ましい。そのため、v’on axisは0.35〜0.55であることが好ましい。0.37〜0.53であることがより好ましく、さらに0.39〜0.51であることが特に好ましい。
また、正面以外の観察点以外においても同様に良好な色味であるためには正面と斜め方向からの色味の差である
【0061】
【数6】

【0062】
が、0.04より小さく制御されていることが好ましい。さらに、0.03以下であることがより好ましく、特に0.02以下に制御されていることが好ましい。Δu'v'ave-on axisgが小さい液晶表示装置は、正面から観察した時と、斜め方向から観察した時の色味が近くなり表示品位に優れる。
【0063】
また、同じ斜め方向における色味の変化を考慮した場合、例えば極角を60°で固定し方位角を0〜360°で変化させた場合の色味である
【0064】
【数7】

【0065】
が、0.04より小さく制御されていることが好ましい。さらに、0.03以下であることがより好ましく、特に0.02以下に制御されていることが好ましい。Δu'v'60°が小さいほど斜めのいずれの方向から見た時の色味変化が小さくなり好ましい。
【0066】
さらに、Δu’v’ave-on_axisとΔu’v’60°が、
Δu’v’ave-on_axis<Δu’v’60°
を満足すると、正面と斜め方向の色味の差といずれの斜め方向の色味の差が小さく制御されているため、観測点全方位による色味の差が認識されにくくなり特に好ましい。
【0067】
上記の斜め方向の色味の差を改善することについては、光学補償を行う光学フィルムのRe、Rthの制御での対応が1つの手法として挙げられ、このとき、好ましいRe、Rthとして20nm≦Re≦100nm、70nm≦Rth≦300nmであると好ましい改善効果が得られる。さらに、30nm≦Re≦90nm、80nm≦Rth≦280nmであることがより好ましく、40nm≦Re≦80nm、90nm≦Rth≦260nmであることが特に好ましい。
さらに、本発明に用いられる光学フィルムは透過する光の波長に対して、その波長分散が
0.75≦Re(450)/Re(550)≦1.00、
1.00≦Re(650)/Re(550)≦1.15
を満たすことが好ましい。
上記の範囲にすることで視野角CRが高まり表示品位に優れた液晶表示装置となる。
【0068】
また他の手法としては、以下の色味範囲である偏光板を用いることが好ましい。
式(5) 0.16≦u’_pol≦0.24
式(6) 0.38≦v'_pol≦0.50
【0069】
さらに、波長410nmにおける偏光板の直交透過率Tc(410)が0.03%以下とすることで、表示品質の改善の効果を得ることができる。
【0070】
なお、偏光板の色味の範囲としては、0.17≦u’pol≦0.23、0.40≦v’pol≦0.50がより好ましく、0.18≦u’pol≦0.22、0.43≦v’pol≦0.50であることが特に好ましい。色味がこの範囲となる偏光板を用いることで、液晶表示装置が黒表示時に正面から観察した際の色味がニュートラルであり、斜め方向の観察においても色味の変化がとなるために、直交配置した際の色味が下記の範囲を満たす偏光板が用いられる。偏光板の色味を上記範囲にするためには主に偏光フィルムの作成条件である延伸倍率、染色液中の各成分濃度、染色温度/時間、染色後の乾燥温度/時間、接着後の乾燥温度/時間等を最適化することで達成できる。
【0071】
また、Tc(410)は0.015%以下であることがより好ましく、0.003%以下であることが更に好ましい。Tc(410)が小さい偏光板は液晶表示装置に具備されたときに、表示装置の色味をニュートラルにすることに加え、湿熱耐久試験に対する耐性が高まるため好ましく用いることができる。
【0072】
液晶ディスプレイの観測点によらない表示品質の向上のためには色味の変化の抑制以外に、斜め方向からの観察においても高コントラストとする必要がある。そのためには、偏光子から検光子に至るまで透過光が偏光状態を維持していることが必要である。すなわち、液晶表示装置を構成する各部材、および部材間の界面で発生する偏光解消性(D.I)を小さくして、偏光解消を抑制することが必要となる。しかし、偏光解消を抑制してコントラストを高くする場合、それまでは様々な波長の光が偏光解消されて重なり合うため、ディスプレイを視認する際の色変化は比較的小さなものであった。コントラストを高めるためにD.Iを小さくすると、上記の偏光解消した光の重ね合わせ効果が減少するため、前述の観察点による色味変化が視認されやすくなる。
【0073】
したがって、液晶ディスプレイの全方位の表示品位を高めるためには、前述の構成部材の最適化を行って色味変化の低減を行うとともに、正面、及び斜め方向(例えば水平方向)の液晶表示装置のD.I.、特に液晶セルのD.Iを低減して高コントラスト化の実現を両立させることが重要となる。
【0074】
二枚の光学フィルムを具備した液晶セルを正面から観察した際の偏光解消性D.I.(0°)、水平方向30°方向から観察した際の偏光解消性D.I.(30°)において、D.I.(30°)/D.I.(0°)<4.0を満たすことが好ましい。D.I. (30°)/D.I.(0°)<3.0であることがより好ましくは、D.I.(30°)/D.I.(0°)<2.5であることがさらに好ましい。D.I.(30°)/D.I.(0°)が小さいほど、正面CRと水平CRの差が小さくなり、観察方向によらず良好な表示品位が保たれるため好ましい。
【0075】
液晶表示装置の偏光子、検光子間に配置される様な、光学フィルム等の各構成部材を具備した液晶セルを正面から観察した際の偏光解消性D.I.(0°)は0.04%以下であることが好ましい。0.03%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがさらに好ましい。D.I.(0°)が小さいほど正面CRが高まる。
【0076】
液晶セルを単独で正面から観察した際の偏光解消性D.I.(0°)、水平方向30°方向から観察した際の偏光解消性D.I.(30°)において、D.I.(30°)/D.I.(0°)<4.0を満たすことが好ましい。D.I.(30°)/D.I.(0°)<3.0であることがより好ましくは、D.I.(30°)/D.I.(0°)<2.5であることがさらに好ましい。D.I.(30°)/D.I.(0°)が小さいほど、正面CRと水平CRの差が小さくなり、観察方向によらず良好な表示品位が保たれるため好ましい。
【0077】
液晶セルを単独で正面から観察した際の偏光解消性D.I.(0°)は0.03%以下であることが好ましい。0.02%以下であることがより好ましく、0.01%以下であることが特に好ましい。D.I.(0°)が小さい液晶セルほど正面CRが高まる。
【0078】
本発明に用いられる透明支持体、特に光学補償に用いる光学フィルムの内部ヘイズは、0.05%以下であることが好ましい。より好ましくは0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。光学フィルムのD.I.を低減するには、ヘイズを低減することが有効である。フィルムのヘイズは表面の凹凸などに起因する散乱による表面ヘイズ、及び内部散乱などによる内部ヘイズに分類される。液晶表示装置に用いる際には、フィルム表面は光学フィルムの屈折率と近い屈折率を有する接着剤、及び粘着剤と接するため、表面ヘイズは液晶表示装置のD.I.にほとんど寄与しないので、内部ヘイズを低減することが有効である。
以上の様に、特性を規定した各構成部材を組合わせる事で、観察点によらずに高い表示品位を提供できる液晶表示装置が得られる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例に制限されるものではない。
<光学フィルムの作製>
[光学フィルム103の作製]
下記表中に記載の割合で、各成分を混合して、セルロースアシレート溶液をそれぞれ調製した。各セルロースアシレート溶液を、バンド流延機を用いて流延し、得られたウェブをバンドから剥離し、その後、下記表に記載の条件でそれぞれ延伸した。なお、表1中、TD方向とは、搬送方向に対して垂直な方向(即ち幅方向)を意味する。延伸後、乾燥して、下記表中に記載の厚みのセルロースアシレート系フィルムをそれぞれ作製し、位相差膜B、C、D及びFとして用いた。
【0080】
特開2010−58331号公報中に記載の実施例9の光学フィルムを光学フィルム101として用いた。
富士フイルム社製「TD−80U」を光学フィルム102として用いた。
各光学フィルムのRe、Rth、波長分散、内部ヘイズを計測した結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
<偏光板の作製>
染色液中の各成分濃度、染色温度/時間、染色後の乾燥温度/時間、接着後の乾燥温度/時間等を調整して、下記表に記載の偏光板それぞれを作製した。使用した光学フィルム、及び色相、透過率を評価した結果を下記表に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
(VA型液晶表示装置の作製及び評価)
VA型液晶セルの準備
図1に示すような透明電極(ITO)構造を形成したガラス基板を基板洗浄後、垂直配向膜(JSR社製JALS684:ポリイミド樹脂)をスピンコートし、プリベイク80℃ホットプレート3分、ポストベイク180℃オーブン1時間で焼成し、垂直配向膜を形成した基板A、Bを形成し、一方の基板にセル厚を制御するスペーサとしてポリマー球(積水化学社製ミクロパール3.0um)を散布して、もう一方の基板にはシール剤(スリーボンド社製)を形成し、基板A,Bの電極スリットが相互に配置されるように位置合わせしてシールし、熱処理(135℃90分)後に液晶空セルが形成される。次いで液晶セル中に、負の誘電率異方性を有する液晶、例えばメルクジャパン社製液晶MLC−7026−100(Δn=0.1091@589.3nm,Δε=−3.9)を真空注入法により封入し、液晶セル(Δnd=327nm)を形成した。かかる構成では、液晶層の厚さdは、ポリマーのスペーサ球の径により制御できる。また、前記ポリマー球の変わりに、感光性樹脂によりITO膜上の隔壁上部に相当する部分に形成した柱上スペーサーパターン(直径16μm、平均高さ3.0μm)のものを使用することでさらにCRを改善したPVAパネルを実現できた。
【0085】
前記、作製の液晶セルの上下に偏光板(構成:表面保護TAC/PVA偏光層/位相差フィルム/粘着剤)の吸収軸が直交するように配置してVAモード液晶パネルを形成した。概液晶パネルをBL光源(CCFL又はLED)に配置し、ITO電極に電圧(矩形波)を印加する事で黒表示(電圧0Vで液晶分子は略垂直配向)から白表示(電圧5Vで液晶分子は基板面に平行な方向に4方向に傾斜配向する)まで電圧により透過率(明るさ)を制御できる。また、前記液晶層の厚さdが減少するに伴って、応答速度は向上し、液晶層のΔndの減少に伴いコントラスト比10以上の視野角範囲の拡大するが、透過率も減少する。このため、液晶層のリタデーションΔn・dが約150〜約400nmの範囲に納まるように設定することが好ましく、Δn・dが約250〜約360nmの範囲がより好ましい条件である。
【0086】
(PVA液晶セルの作製)
本発明には、ソニー社製の液晶パネル「KDL−40V5 」等に使われているPVA構造(特開2006−201771開示技術により製造できる)のVA型液晶パネル等を用いることができる。
具体的な製造方法としては、一方のガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。続いて、保護膜にコンタクトホールを形成した後、上記保護膜上に、TFT素子と電気的に接続したITOの透明電極を形成し、アレイ基板を作製した。
もう一方のガラス基板に着色感光性組成物として特開2009−144126号公報の実施例3、8及び10に記載の通り組成物をそれぞれ調製し、それぞれを用い、及び特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ基板を作製した。
但し、各画素の着色感光性樹脂組成物における顔料の濃度は半分にし、さらに塗布量を調整し、ブラック画素が4.2μmとなるようにした。青、緑、赤のカラーフィルタの厚みを変えることによって、青色画素の液晶層厚み(d_B)、緑色画素の液晶層厚み(d_G)、赤色画素の液晶層厚み(d_R)を調整した。
【0087】
上記作製したカラーフィルタ基板の上に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
別途、対向基板としてITOの透明電極を形成したガラス基板を用意し、カラーフィルタ基板及び対向基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に配向膜としてポリイミド(又はポリアミック酸)よりなる垂直配向膜をスピンコートにより設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、負の屈折率異方性のPVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
【0088】
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が295nmであるものを選別し、COA型PVA液晶セルとして使用し、これを液晶セル101及び102を得た。
液晶セル101の液晶層の厚みは青色画素(d_B)が3.3μm、緑色画素(d_G)が3.5μm、赤色画素(d_R)が3.7μmであった。
液晶セル102の液晶層の厚みは青色画素(d_B)、緑色画素(d_G)、赤色画素(d_R)いずれも3.5μmであった。
【0089】
(MVA液晶セルの作製)
SHARP社製の液晶パネル「LC−GX3W」等に使われているMVA構造(特許2947350開示技術により製造できる)のVA型液晶パネルを用いることができる。
体的な製造方法としては、一方のガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。続いて、保護膜にコンタクトホールを形成した後、上記保護膜上に、TFT素子と電気的に接続したITOの透明電極を形成し、アレイ基板を作製した。上記と同様にカラーフィルタを作製した。
【0090】
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
【0091】
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が295nmであるものを選別し、COA型PVA液晶セルとして使用し、これを液晶セル103とした。
液晶セル103の液晶層の厚みは青色画素(d_B)が3.3μm、緑色画素(d_G)が3.5μm、赤色画素(d_R)が3.7μmであった。
【0092】
続いて、作製した液晶セルのΔnd(590)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(590)が295nmであるものを選別し、COA型PVA液晶セルとして使用した。
【0093】
<D.I.の測定>
作製した液晶セルを「Y. Utsumi et al: "Reduced Light Scattering Intensity from Liquid Crystal for Higher Contrast Ratio in IPS-Pro LCDs,". IDW '07, p. 1749, 2007. 2 」記載の方法で正面、及び水平方向30°におけるD.Iを計測した。結果を下記表に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
さらに、液晶セルの両側に光学フィルムを遅相軸が直交するように貼合し、D.Iを計測した。結果を下記表に示す。
【0096】
【表4】

【0097】
作製した液晶セルのその両基板の外側表面に、偏光板101〜105をSK2057(綜研化学)を介して貼合した。この際、光学フィルム101〜103がガラス基板側になるように配置して液晶表示装置を作製した。液晶表示装置の作製に使用した光学フィルム、偏光板、液晶セルの組み合わせを下記表に示す。
液晶セル101および102の光源には、前記「KDL−40V5 」に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
液晶セル103の光源には、前記「LC−GX3W 」に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
【0098】
【表5】

【0099】
<液晶表示装置の評価>
作製した液晶表示装置を、測定機(EZ−Contrast XL88、ELDIM社製)を用いて、暗室内で黒表示および白表示の輝度および色度を評価した。結果を下記表に示す。
【0100】
【表6】

【0101】
上記表に示す結果から、本発明の液晶表示装置は色変化が小さく、正面CR及び、CR(30°)/正面CRが高く表示品位に優れることが分かる。
【0102】
また、COA型液晶セルでも同様の効果を確認した。
COA型液晶表示セルは特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aを参考に作製した。
【0103】
正面、及び斜めのD.I.が低いセルであれば、光配向型VA液晶やPSAでも本発明の効果は、実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒表示時に正面から観察した際の色味u’on axis、v’on axis、及び極角60°方向から観察した際の色味(u’,v’)において、方位角0°から360°まで観察した際のu’,v’の最大値u’max、v’max、最小値u’min,v’minが、下記式(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする液晶表示装置。
【数1】

【請求項2】
下記式(4)を満たす請求項1に記載の液晶表示装置。
【数2】

【請求項3】
直交配置したときの色相u’#pol、v’#polが下記式(5)および(6)を満たす偏光板を少なくとも一枚有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
式(5) 0.16≦u’#pol≦0.24
式(6) 0.38≦v’#pol≦0.50
【請求項4】
波長410nmにおける直交透過率が0.03%以下である偏光板を少なくとも一枚有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
液晶セルと、吸収軸が互いに直交する一対の偏光板と、該一対の偏光板のそれぞれと液晶セルとの間に配置される光学フィルムを有し、液晶セル、及び光学フィルムの正面から観察した際のD.I.(0°)、及び水平方向30°方向から観察した際のD.I.(30°)が、下記式(7)及び(8)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
式(7) D.I.(30°)/D.I.(0°)<4.0
式(8) D.I.(0°)<0.04%
【請求項6】
液晶セルと、吸収軸が互いに直交する一対の偏光板と、該一通の偏光板のそれぞれと液晶セルとの間に配置される光学フィルムを有し、液晶セルの光学フィルムの正面から観察した際のD.I.(0°)、及び水平方向30°方向から観察した際のD.I.(30°)が、下記式(9)及び(10)を満たす請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
式(9) D.I.(30°)/D.I.(0°) <4.0
式(10) D.I.(0°)<0.03%
【請求項7】
少なくとも、液晶セルと、該液晶セルの外側の少なくとも一方に配置された偏光板(第1の偏光板)とを有し、前記液晶セルが、少なくとも、電極を一方に有する対向配置された一対の基板と、該基板間に挟持された液晶層とを有するとともに、少なくとも3つの絵素領域を含み、前記3つの絵素領域上に、透過率に波長選択性を有するカラーフィルタが配置され、それぞれの絵素領域に設けられたカラーフィルタの最大透過率をとる主波長を小さい方から順にλ1、λ2、及びλ3(単位nm)、これらそれぞれの絵素領域における前記液晶層の厚さを順にd1、d2、及びd3(単位:nm)とした時、下記式(11)を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
式(11) d2<d3
【請求項8】
さらに、下記式(12)を満足することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
式(12) d1<d2<d3
【請求項9】
前記光学フィルムが、下記式(13)及び(14)を満足することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
式(13) 20nm≦Re≦100nm
式(14) 70nm≦Rth≦300nm
【請求項10】
前記光学フィルムの波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)、及び波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)、650nmにおける面内レターデーションをRe(650)としたときに、下記式(15)及び式(16)を満たすことを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
式(15) 0.75≦Re(450)/Re(550)≦1.00
式(16) 1.00≦Re(650)/Re(550)≦1.25
【請求項11】
前記光学フィルムの内部ヘイズが、0.05%以下であることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
垂直配向モードであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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