説明

液晶表示装置

【課題】柱状スペーサを用いてTFT基板と対向基板の間隔を規定する液晶表示装置において、柱状スペーサと配向膜の摩擦によって配向膜が削れて輝点が発生することを防止する。
【解決手段】TFT基板100は、有機パッシベーション膜を有しておらず、無機パッシベーション膜104の上に柱状スペーサ150を形成している。対向基板200にはブラックマトリクス201、カラーフィルタ202を覆って、オーバーコート膜203が形成されており、オーバーコート膜203には、凹凸台座130が形成され、柱状スペーサ150の先端が接している。柱状スペーサ150の先端および凹凸台座130の凸部には配向膜106が付着していないので、TFT基板100あるいは対向基板200が横ズレを生じても配向膜106が削れることは無い。これによって、配向膜削れに起因する輝点を防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に配向膜の削れ屑に起因する輝点を対策した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置では、対向基板とTFT基板における液晶層との界面に配向膜を形成し、配向膜にラビング処理あるいは光配向処理を施すことによって液晶分子を初期配向させている。そして、この初期配向からの液晶分子を電界によって捩るあるいは、回転させることによって、液晶層を透過する光の量を制御している。
【0004】
一方、液晶層の厚さを制御するために、対向基板とTFT基板との間にスペーサを形成する必要がある。従来は、スペーサとしてビーズ等を液晶層内に分散していたが、近年、TFT基板と対向基板間の、より正確なギャップ(液晶層)の制御のために、対向基板に柱状スペーサを形成し、柱状スペーサによって、TFT基板と対向基板のギャップを制御することが行われている。
【0005】
一方、柱状スペーサを用いることによって新たな問題も生ずる。例えば、「特許文献1」には、対向基板を外部から押した場合に柱状スペーサがずれる場合の摩擦力を低減し、外部からの圧力が無くなった場合に、柱状スペーサがもとの場所に容易に復帰できる構成が記載されている。「特許文献1」には、このために、TFT基板に形成する台座として、柱状スペーサの先端の面積よりも小さな面積を有する台座を形成することが開示されている。また、柱状スペーサが横ずれした場合に、配向膜削れが発生する問題も生じている。配向膜削れ、あるいは、柱状スペーサについてのその他の文献として「特許文献2」〜「特許文献6」が挙げられる。
【0006】
「特許文献7では、サブ柱状スペーサを形成し、サブ柱状スペーサに対応する台座には凹凸が形成されているが、通常は、サブ柱状スペーサは台座には接触せず、基板に荷重がかかったときにのみ、サブ柱状スペーサが、凹凸が形成された台座に接触する構成が記載されている。「特許文献7」の目的は、台座に凹凸を形成することによって、サブ柱状スペーサに荷重がかかった場合に、荷重を和らげ、サブ柱状スペーサが破壊することを防止することである。
【0007】
尚、特許文献1には対応米国特許として7,684,003号が、特許文献4には対応米国公開として2009/0059155が、特許文献5には、対応米国公開として2011/0080548が、特許文献7には、対応米国公開として、2011/0013131存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−164134号公報
【特許文献2】特開2007−328247号公報
【特許文献3】特開2008−170690号公報
【特許文献4】特開2009−58618号公報
【特許文献5】特開2009−282262号公報
【特許文献6】特開2010−8616号公報
【特許文献7】特開2011−22232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般には柱状スペーサは対向基板に設けられる。一方、TFT基板には、柱状スペーサと対向する部分に台座が設けられる。ここで、台座とは、TFT基板側に形成された突起状のもののみでなく、柱状スペーサと対向する部分が平坦、あるいは、凹部が形成されている場合も含むものとする。すなわち、本明細書では、台座とは、柱状スペーサと対向するTFT基板側の構造をいう。
【0010】
液晶表示装置においては、対向基板とTFT基板における液晶層と接する面には、配向膜が形成されている。対向基板においては、柱状スペーサは、比較的高いので、柱状スペーサの先端に配向膜が形成されることは少ない。一方、TFT基板においては、台座は柱状スペーサに比べて低いので、台座の表面にも配向膜が形成される。配向膜が形成された台座の表面に柱状スペーサが接すると、台座表面の配向膜が削れる。
【0011】
つまり、液晶表示装置が温度サイクル等を受けTFT基板と対向基板とが異なる割合で伸縮したり、対向基板が外部から圧力を受けたりすると、柱状スペーサが横ズレを生じ、このとき、台座上の配向膜を削る。この削られた配向膜の削り屑が液晶層に混入すると、輝点が発生し、画質を劣化させる。
【0012】
本発明の課題は、柱状スペーサに起因する配向膜の削れを対策して、輝点の発生を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を克服するものであり、代表的な手段は次のとおりである。すなわち、画素電極とTFT基板を有する画素がマトリクス状に形成された表示領域とその周辺領域を含むTFT基板と、ブラックマトリクスとカラーフィルタの上にオーバーコート膜が配置された対向基板の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、前記対向基板は、前記TFT基板の表示領域に対応した表示領域と、前記TFT基板の周辺領域に対応した周辺領域を有し、前記TFT基板と前記対向基板との間隔は、前記TFT基板に形成された柱状スペーサによって間隔が規定され、前記対向基板の前記オーバーコート膜には表示領域において、前記柱状スペーサと対向する凹凸台座が形成され、前記凹凸台座の底面は、凸部と凹部が形成され、前記凸部の先端は、前記平坦部よりも低く、前記凸部に存在する配向膜の膜厚は、前記凹部に存在する配向膜の膜厚よりも小さく、前記柱状スペーサの先端は前記凹凸台座の底面に形成された2個以上の凸部と接触し、前記凹凸台座の底面の径は、前記柱状スペーサの先端の径よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置である。
【0014】
本発明の別な態様によれば、TFT基板の前記周辺領域に形成された柱状スペーサは、前記対向基板の周辺領域においては、前記オーバーコート膜の平坦台座と接することを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置である。
【0015】
本発明のさらに別な態様によれば、前記TFT基板には有機パッシベーション膜は存在しないことを特徴とする(1)または(2)に記載の液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柱状スペーサを有し、光配向膜を用いた液晶表示装置において、柱状スペーサによる配向膜の削れを防止することが出来るので、液晶表示装置の製造歩留まりを向上させることが出来る。また、出荷後の温度サイクル、あるいは対向基板に対する外部からの圧力に起因して、柱状スペーサが横ずれすることによる配向膜削れを防止することが出来るので、市場不良の発生を防止することが出来る。
【0017】
滴下方式によって、液晶を注入する方式の液晶表示装置では、柱状スペーサの数が少なく、1個当たりの柱状スペーサと台座との間に対するストレスが大きいが、本発明によれば、このような、柱状スペーサと接する台座には、配向膜が存在しないか、他の部分よりも薄いので、配向膜削れの発生を防止することが出来、輝点の発生を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における、液晶表示装置の断面図である。
【図2】凹凸台座に柱状スペーサが接触している状態を示す詳細断面図である。
【図3】本発明による液晶表示装置の模式断面図である。
【図4】従来技術における液晶表示装置の問題点を示す模式図である。
【図5】凹凸台座の底面に形成された凸部の例を示す斜視図である。
【図6】凹凸台座の底面に形成された凸部の傾斜角度を定義する断面模式図である。
【図7】柱状スペーサの配置位置を示す平面図である。
【図8】柱状スペーサの他の配置位置を示す平面図である。
【図9】TFT基板の本発明に関連する製造プロセスである。
【図10】対向基板の本発明に関連する製造プロセスである。
【図11】実施例2による凹凸台座と柱状スペーサの関係を示す斜視図である。
【図12】凹台座が形成された液晶表示装置の断面図である。
【図13】凹凸台座が形成された液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を説明する前に、比較例を図を用いて説明する。図12は、比較例としての液晶表示装置の模式断面図である。図12において、DIは表示領域を示し、PEは表示領域以外の周辺部を示す。図12において、PEではシール材140の外側において、柱状スペーサ150が形成されているが、品種によっては、柱状スペーサ150はシール材140の外側ではなく、シール材140の内側にのみ存在する場合もある。本発明は、このような構成に対しても適用することが出来る。
【0020】
図12において、TFT基板100の上に有機パッシベーション膜107が形成されている。有機パッシベーション膜107は平坦化膜としての役割も有しているので、1.5〜2μm程度と、厚く形成される。図12において、実際は、ガラスで形成されたTFT基板100と有機パッシベーション膜107との間には、配線、電極、半導体膜、ゲート絶縁膜、無機パッシベーション膜等が形成されているが、図12は模式図なので、これらの層は省略されている。
【0021】
有機パッシベーション膜107には、露光、ハーフ露光等を用いて、穴あるいは、凹部が形成されている。TFT基板100と対向基板200とを貼り合わせるシール材140が形成される部分からは、有機パッシベーション膜107は除去されている。また、対向基板200に形成された柱状スペーサ150が対向する部分において、TFT基板100には凹台座120が形成されている。凹台座120は、TFT基板100において、柱状スペーサ150が接する部分では凹となっており、他の部分に比較して低くなっている。
【0022】
このように凹台座120を形成する理由は、後で説明する図3に示すように、通常状態においては、TFT基板100あるいは対向基板200を内側に凸の状態に保つためである。図12に戻り、通常は、TFT基板100の有機パッシベーション膜101の上には、対向電極、層間絶縁膜、画素電極等が形成されているが、図12は模式図なので、これらの層は省略されている。したがって、図12では、有機パッシベーション膜107の上に配向膜106が形成されている。配向膜106は、塗布した時点では液体であるので、レベリング効果によって、低い部分に厚くたまる。つまり、図12に示す凹台座120にも配向膜106は比較的厚く形成されている。
【0023】
図12において、対向基板200側には、オーバーコート膜203が形成され、柱状スペーサ150はオーバーコート膜203に形成されている。一般には、オーバーコート膜203と対向基板200の間にはカラーフィルタおよびブラックマトリクスが形成されているが、図2は、模式図なので、これらの膜は省略されている。オーバーコート膜203の上に配向膜105が形成されている。図12においては、柱状スペーサ150の先端には、配向膜105は形成されていない。柱状スペーサ150は比較的高いので、先端には塗布時は液体である配向膜105がたまりにくいからである。対向基板200側においても、シール部140には、配向膜105が形成されていないことは、TFT基板100と同様である。
【0024】
図12において、TFT基板100の凹台座120の部分に対向基板200の柱状スペーサ150が対向して配置しているが、凹台座120には、配向膜105が存在している。このために、柱状スペーサ150が横ズレ等を起こすと配向膜105が削れ、配向膜屑が発生し、輝点の原因となる。
【0025】
図13は、この問題を解決するものであり、凹台座の底部に凹凸を形成している。このような台座を以後凹凸台座130と呼ぶ。図13に示す凹凸台座130において、液状の配向膜は、凹部に溜まるが、柱状スペーサが接触する凸部には存在しない。したがって、配向膜焼成後、凹凸台座130において、配向膜が削れて、配向膜屑が発生するという問題は生じない。なお、図13の構成は、凹凸台座130を除いては図12と同様なので、詳しい説明は省略する。図13の構成は、本発明者と同一の発明者によるものであり、現在特許出願中である。
【0026】
このように、図13によれば、配向膜屑の発生は防止することが出来るが、図13の構成では、凹凸台座130は、有機パッシベーション膜107に形成される必要がある。有機パッシベーション膜107は、液晶表示装置の品種によって、存在する場合と、存在しない場合がある。つまり、図13の構成は、有機パッシベーション膜107を有していない液晶表示装置には適用できない。
【0027】
以下の実施例で示す本発明では、柱状スペーサ150をTFT基板100側に形成し、凹凸台座130を対向基板200側のオーバーコート膜203に形成することによって、有機パッシベーション膜107を有さない液晶表示装置においても、柱状スペーサ150による配向膜削れを防止することが出来る。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明を示す液晶表示装置の端部付近の断面図である。図1はIPS方式の液晶表示装置の断面図であり、有機パッシベーション膜107を使用していない。図1において、対向基板200にカラーフィルタ202が形成されている領域が表示領域であり、シール材140に近い部分が周辺領域である。図1のTFT基板100には、ゲート絶縁膜101が形成され、その上にパッシベーション膜102が形成されている。パッシベーション膜102は図示しないTFTを保護するものである。
【0029】
パッシベーション膜102の上には、画素毎に平面ベタで形成された画素電極103が形成されている。また、パッシベーション膜102の上には映像信号線20も形成されている。画素電極103および映像信号線20を覆って、層間絶縁膜104が形成されている。層間絶縁膜104を挟んで、画素電極103の上には櫛歯状の対向電極105が形成されている。画素電極103と対向電極105との間に電圧が印加されると、矢印のような電気力線が発生し、液晶分子211が回転して光の透過を制御する。
【0030】
映像信号線20の上には、層間絶縁膜104を挟んで柱状スペーサ150が形成されている。このように、柱状スペーサ150がTFT基板100側に形成されていることが本発明の特徴である。パッシベーション膜102および櫛歯状の対向電極105を覆って配向膜106が形成されている。液状の配向膜は柱状スペーサ150の上にも塗布されるが、柱状スペーサ150は高さが高いので、レベリング効果によって、柱状スペーサ150の上には、配向膜106は形成されていない。
【0031】
対向基板200側には、カラーフィルタ202とブラックマトリクス201が形成されている。カラーフィルタ202が形成されている領域が表示領域である。画素電極103に対応してカラーフィルタ202が形成され、柱状スペーサ150および映像信号線20が形成されている部分対応してブラックマトリクス201が形成されている。図1では、ブラックマトリクス201とカラーフィルタ202が並列して形成されているが、ブラックマトリクス201の上にカラーフィルタ202が重畳されて形成されている場合もある。本発明はこのような構成の液晶表示装置に対しても適用することが出来る。
【0032】
カラーフィルタ202およびブラックマトリクス201を覆ってオーバーコート膜203が形成され、オーバーコート膜203の上に配向膜106が形成されている。液晶層210はTFT基板100と対向基板200の間に挟持されており、周辺に形成されたシール材140によってシールされている。シール材140が形成されている部分には配向膜106は塗布されていない。シール部140に配向膜106が存在すると、シール材140と基板との接着力が低下するから、ストッパー等を用いて、配向膜106のシール材140への付着を防止している。
【0033】
図1において、柱状スペーサ150は表示領域において、オーバーコート膜203に形成された凹凸台座130と接触し、周辺部においては、凹凸台座130が形成されていない平坦なオーバーコート膜203に接触している。すなわち、周辺部は平坦台座110となっている。したがって、TFT基板100と対向基板200の間隔は周辺において大きい。この状態を誇張して示す断面図が図3である。
【0034】
図3のような構造において、温度が上昇してTFT基板100あるいは対向基板200が熱膨張した場合であっても、熱膨張によるストレスは、図3のFで示すような方向であり、TFT基板100と対向基板200との間に隙間を生ずるような方向ではない。したがって、TFT基板100あるいは対向基板200が熱膨張した場合に、図4に示すように、液晶表示装置の上側の間隔d1よりも下側の間隔d2のほうが大きくなるという現象を防止することが出来る。
【0035】
図2は図1における凹凸台座130部分の断面図である。図2において、オーバーコート膜203の表面から凹凸台座130の凹部の底面までの距離h1は例えば、0.6〜0.7μmである。凹凸台座130の底部における凹凸の高さは、例えば、0.35μm程度である。オーバーコート膜203の厚さは例えば、1.5μmである。配向膜106のオーバーコート膜203における平坦部の膜厚は例えば、80nmである。凹凸台座130においては、配向膜106は凹部に溜まるので、凹部における配向膜106の厚さは80nmよりも大きいが、凹凸の高さ0.35μmよりも小さいので、配向膜焼成後、凹凸台座130の底面における凸部に配向膜106は存在しない。
【0036】
図1および図2では、柱状スペーサ150の先端は、凹凸台座130における3個の凸部131と接触しているが、2個以上の凸部接触することによって、柱状スペーサを安定して接触させることが出来る。ただし、柱状スペーサ150の先端は、3個以上の凸部131と接触していることが好ましい。また、凹凸台座130において、凹凸が形成されている底部の径DBは、柱状スペーサの先端の径よりも大きいことが必要である。なお、図2においては、凸部131の先端において、また、柱状スペーサ150の先端において、配向膜106は存在しない状態となっているが、配向膜が完全に無い状態でなく、薄く形成されていた場合であっても、配向膜削れの影響を軽減することが出来る。
【0037】
したがって、図2に示すように、柱状スペーサ150と凹凸台座130の接触部には配向膜106は存在しないか存在しても極めて薄く存在しているのみである。このような構造であれば、柱状スペーサ150が横ズレしたような場合であっても、配向膜削れが生ずることはない。
【0038】
図5は、凹凸台座130の底辺の形状の模式図であり、凸部131が、底面が円形状である突起の場合の斜視図である。凸部131と凸部131の間が凹部132である。凹凸台座130の底辺には、通常もっと多くの凸部131が形成される場合もあるが、図5は底面の1部を示している。図5において、凸部131の径Dは例えば6μmである。ここで、径Dは、凸部131の下端における径を示している。
【0039】
図6は、図5のA−A断面図であり、凹凸台座130の底面に形成された凸部131の傾斜角度θの定義を示すものである。図6において、傾斜角度θは、凸部131の頂点と、平坦である凹部132の始まり部分とを結ぶ線と、平坦である凹部132とのなす角度をいう。なお、凹部132が平坦か否かが不明な場合は、凸部131を挟む2個の凹部132を結ぶ線を平坦な線と定義すればよい。
【0040】
凸部131はハーフ露光を用いることによって形成する。すなわち、凸部131は露光量を少なくし、凹部132は露光量を多くすることによって、凹凸台座130の底面に凹凸を形成する。このような、形成方法においては、図6に示すような傾斜角度θを大きく形成することは難しい。一方、θがあまり小さいと、凸部131に配向膜105を形成しないように、十分な凹凸を形成することが困難になる。
【0041】
凹凸の形成プロセスと凹凸のレベリング効果によって、凸部に配向膜105を形成しないようにする条件は、実験によれば、図6のθは3度以上、45度以下が望ましい。θが3度よりも小さい場合は、凸部おいて、配向膜105を薄くする効果は得られなかった。なお、本発明の効果としては、凸部131に配向膜105が完全に無くなる場合のみならず、凸部131において、配向膜が凹部におけるよりも薄くなっていれば、所定の効果を得ることが出来る。θの値は、より好ましくは、6度以上、25度以下である。
【0042】
図7は表示領域の一部を示す平面図である。図7において、映像信号線20が縦方向に延在し、横方向に所定のピッチで配列している。走査線10は横方向に延在し、縦方向に所定のピッチで配列している。なお、図7では走査線10は1本のみ記載されている。映像信号線20の一部が分岐してTFTのドレイン電極21となり、ドレイン電極21と対向して画素電極と接続するソース電極22が配置している。TFTのゲートは走査線10が兼ねている。
【0043】
映像信号線20の上に柱状スペーサ150が形成されている。本発明においては、柱状スペーサ150はTFT基板100に形成されている。対向基板200には、柱状スペーサ150、TFT、映像信号線20、走査線10等を覆うようにして、図7に点線で示すように、ブラックマトリクス201が形成されている。柱状スペーサ150が形成されている部分では、液晶の配向がみだれるので、光漏れ等が生ずるが、これを対向基板200に形成されたブラックマトリクス201によって防止している。
【0044】
図8は図7と同じ構成で、柱状スペーサ150を映像信号線20の上でなく、走査線10の上に配置したものである。走査線10は映像信号線20比べて幅が広いので、柱状スペーサ150による液晶の配向乱れに起因する光漏れをより効果的に防止することが出来る。なお、柱状スペーサ150は、映像信号線20上、走査線10上のみでなく、映像信号線20と走査線10の交差部、TFTの上等にも形成することが出来る。
【0045】
図9は、TFT基板100における本発明に関係する部分の製造フローである。図9において、図1に示す層間絶縁膜104の上にITO(Indium Tin Oxide)によって対向電極105を形成する。その後柱状スペーサ150を形成するためのスペーサ材を塗布する。スペーサ材の厚さは、柱状スペーサ150の高さと同じ、例えば、3〜4μmである。その後、塗布したスペーサ材を露光し、現像し、乾燥させることによって柱状スペーサ150を形成する。その後、配向膜106を塗布する。配向膜106は、レベリング効果によって、柱状スペーサ150の先端には形成されない。
【0046】
図10は、対向基板200における本発明に関係する部分の製造フローである。図10において、カラーフィルタ202を形成した後、オーバーコート材203を塗布する。塗布されたオーバーコート材203に対して、凹凸台座130部分に対し、ハーフ露光を行い、現像、乾燥することによって、凹凸台座130を形成する。その後、配向膜106を塗布する。配向膜106は、凹凸台座130部分にも塗布されるが、凹凸台座130部分の凸部131には、レベリング効果によって、配向膜は塗布されない。
【0047】
その後、例えば、対向基板200の周辺にシール材140を形成し、対向基板200の内部に液晶を滴下する。これをODF(One Drop Fill)という。その後対向基板200とTFT基板100を貼り合わせ、液晶表示装置を形成する。このようにして形成した、液晶表示装置では、柱状スペーサ150の上にも凹凸台座130における凸部にも配向膜は形成されていないので、TFT基板100あるいは対向基板200に横ずれ等が生じても、配向膜削れによる輝点が生ずることはない。
【実施例2】
【0048】
図11は、本発明の第2の実施例による凹凸台座130の底面の形状を示す斜視図である。この凹凸台座130は対向基板200のオーバーコート膜203に形成されている。図11において、凹凸台座130の底面の凹凸が1方向(x方向)にのみ形成されている。つまり、図11においては、横方向(x方向)には凹凸が所定のピッチPによって連続して形成され、縦方向(y方向)には凸部131の尾根が形成されている。図11の形状においても、凸部131には配向膜105は存在せず、配向膜105は、凹部132に厚く形成されている状態である。
【0049】
図11において、柱状スペーサ150は、凸部131に接触しているが、凸部131には、配向膜105が存在していないので、仮に柱状スペーサ150が横ずれを起こしても配向膜105が削れるということは無い。図11において、柱状スペーサ150が傾いて、配向膜が厚く形成されている凹部132に接触しないようにするためには、柱状スペーサ150は、少なくとも2個の凸部131と接触する必要がある。つまり、図11において、柱状スペーサ150の先端部の径は、x方向に少なくとも2個の凸部131と接触するだけの幅が必要である。好ましくは、柱状スペーサ150の先端部の径は、x方向に3個以上の凸部131と接触することが好ましい。
【0050】
図11における凸部131の断面の形状における傾斜角θは、図6に示した、断面が円形の場合の凸部131の場合と同様である。すなわち、図11におけるx方向の断面が図6の断面となる。つまり、本実施例においても、凹凸の形成プロセスと、凹凸のレベリング効果によって、凸部131に配向膜105を形成しないようにすることを勘案した条件は、図6のθは3度以上、45度以下が望ましい。θが3度よりも小さい場合は、凸部131おいて、配向膜105を薄くする効果は得られなかった。なお、本発明の効果としては、凸部131に配向膜105が完全に無くなる場合のみならず、凸部131において、配向膜105が凹部132におけるよりも薄くなっていれば、所定の効果を得ることが出来る。θの値は、より好ましくは、6度以上、25度以下である。
【0051】
図11において、凹凸台座130の底面における凸部131の延在方向すなわち尾根131の延在方向は、y方向、つまり、図8における映像信号線の延在方向である。しかし、図11における尾根131の延在方向は、y方向に限らず、x方向でもよい。さらに、凹凸台座130の底面に形成される尾根131は、x方向、y方向のみならず、x方向およびy方向に対して所定の角度を有していてもよい。尾根131の方向がいずれの方向であっても、柱状スペーサ150の先端が、2以上の尾根131と接すること、より好ましくは、3個以上の尾根131と接することが重要である。この場合柱状スペーサ150の先端部は、尾根の延在方向と直角方向において、2個以上、好ましくは3個以上の尾根と接する必要がある。
【0052】
ところで、液晶表示装置において、液晶を注入する方法には、液晶表示装置の内部を真空にして注入孔から液晶を注入する方法(真空注入法)と、対向基板の周囲にシール材を形成し、内部に液晶を滴下する方法(滴下方法、ODF、One Drop Fill)がある。このうち、滴下方法は、滴下する液晶量を正確に制御する必要がある。対向基板200に形成される柱状スペーサ150の数が多いと、滴下液晶量の制御が難しくなることと、柱状スペーサ150間のばらつきによってTFT基板100と対向基板200との間隔の制御が困難になる。
【0053】
したがって、滴下方式においては、柱状スペーサ150の数が真空注入法の場合に比較して少ない。そうすると、液晶表示装置が熱サイクルを受けた場合、あるいは、外部から圧力が加わった場合等に、1個当たりの柱状スペーサ150にかかるストレスおよび歪が大きくなる。つまり、柱状スペーサ150の横ずれの量が大きくなる。つまり、滴下方式の場合は、配向膜削れの生ずる機会がより多い。
【0054】
したがって、本発明を滴下方式によって液晶を注入する方式の液晶表示装置に適用することによって特に効果を上げることが出来る。
【0055】
以上で説明した構成では、凹凸台座130は対向基板200におけるオーバーコート膜203に形成されている。しかし、液晶表示装置の品種によっては、オーバーコート膜203が形成されていない場合がある。このような場合、TFT基板100に形成された柱状スペーサ150に対向する部分の対向基板200に形成されたブラックマトリクス201に凹凸台座130を形成することが出来る。また、ブラックマトリクス201が柱状スペーサに対向する部分に無い場合は、柱状スペーサ150に対向する部分の対向基板200に形成されたカラーフィルタ202に凹凸台座130を形成することが出来る。
【0056】
また、対向基板200に対向電極105が形成されている場合は、対向基板200に凹凸台座130を形成した後、透明電極であるITOによって形成された対向電極105を形成し、その後、配向膜106を形成する。このような構成においても、凹凸台座130において、柱状スペーサ150が接触する凸部における配向膜は無くすことができるか、わずかな膜厚とすることが出来る。これによって配向膜屑による輝点の発生を防止することが出来る。
【0057】
また、以上の説明では、TFT基板側に有機パッシベーション膜が存在していないものとして説明した。しかし、TFT基板側に有機パッシベーション膜が存在している場合でも、柱状スペーサをTFT基板側に形成することが出来、対向基板側のオーバーコート膜等に凹凸台座を形成することが出来る。
【符号の説明】
【0058】
10…走査線、 20…映像信号線、 21…ドレイン電極、 22…ソース電極、 100…TFT基板、 101…ゲート絶縁膜、 102…無機パッシベーション膜、 103…画素電極、 104…層間絶縁膜、 105…対向電極、 106…配向膜、 107…有機パッシベーション膜、 110…平坦台座、 120…凹台座、 130…凹凸台座、 131…凸部、 132…凹部、 140…シール材、 150…柱状スペーサ、 200…対向基板、 201…ブラックマトリクス、 202…カラーフィルタ、 203…オーバーコート膜、 210…液晶層、 211…液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極とTFT基板を有する画素がマトリクス状に形成された表示領域とその周辺領域を含むTFT基板と、ブラックマトリクスとカラーフィルタの上にオーバーコート膜が配置された対向基板の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記対向基板は、前記TFT基板の表示領域に対応した表示領域と、前記TFT基板の周辺領域に対応した周辺領域を有し、
前記TFT基板と前記対向基板との間隔は、前記TFT基板に形成された柱状スペーサによって間隔が規定され、
前記対向基板の前記オーバーコート膜には表示領域において、前記柱状スペーサと対向する凹凸台座が形成され、
前記凹凸台座の底面は、凸部と凹部が形成され、前記凸部の先端は、前記平坦部よりも低く、
前記凸部に存在する配向膜の膜厚は、前記凹部に存在する配向膜の膜厚よりも小さく、
前記柱状スペーサの先端は前記凹凸台座の底面に形成された2個以上の凸部と接触し、
前記凹凸台座の底面の径は、前記柱状スペーサの先端の径よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記TFT基板の前記周辺領域に形成された柱状スペーサは、前記対向基板の周辺領域においては、前記オーバーコート膜の平坦台座と接することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記TFT基板には有機パッシベーション膜は存在しないことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記凹凸台座の前記凸部の断面形状における傾斜部の傾斜角度は、6度以上で25度以下であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記凹凸台座の前記凸部の断面形状における傾斜部の傾斜角度は、3度以上で45度以下であることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶は、滴下方式によって充填されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
画素電極とTFT基板を有する画素がマトリクス状に形成された表示領域とその周辺領域を含むTFT基板と、ブラックマトリクスとカラーフィルタが配置された対向基板の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記対向基板は、前記TFT基板の表示領域に対応した表示領域と、前記TFT基板の周辺領域に対応した周辺領域を有し、
前記TFT基板と前記対向基板との間隔は、前記TFT基板に形成された柱状スペーサによって間隔が規定され、
前記対向基板の前記ブラックマトリクスには表示領域において、前記柱状スペーサと対向する凹凸台座が形成され、
前記凹凸台座の底面は、凸部と凹部が形成され、前記凸部の先端は、前記平坦部よりも低く、
前記凸部に存在する配向膜の膜厚は、前記凹部に存在する配向膜の膜厚よりも小さく、
前記柱状スペーサの先端は前記凹凸台座の底面に形成された2個以上の凸部と接触し、
前記凹凸台座の底面の径は、前記柱状スペーサの先端の径よりも大きく、
前記TFT基板の前記周辺領域に形成された柱状スペーサは、前記対向基板の周辺領域においては、前記ブラックマトリクスの平坦台座と接することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記TFT基板には有機パッシベーション膜は存在しないことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
画素電極とTFT基板を有する画素がマトリクス状に形成された表示領域とその周辺領域を含むTFT基板と、ブラックマトリクスとカラーフィルタが配置された対向基板の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記対向基板は、前記TFT基板の表示領域に対応した表示領域と、前記TFT基板の周辺領域に対応した周辺領域を有し、
前記TFT基板と前記対向基板との間隔は、前記TFT基板に形成された柱状スペーサによって間隔が規定され、
前記対向基板の前記カラーフィルタは表示領域において、前記柱状スペーサと対向する凹凸台座が形成され、
前記凹凸台座の底面は、凸部と凹部が形成され、前記凸部の先端は、前記平坦部よりも低く、
前記凸部に存在する配向膜の膜厚は、前記凹部に存在する配向膜の膜厚よりも小さく、
前記柱状スペーサの先端は前記凹凸台座の底面に形成された2個以上の凸部と接触し、
前記凹凸台座の底面の径は、前記柱状スペーサの先端の径よりも大きく、
前記TFT基板の前記周辺領域に形成された柱状スペーサは、前記対向基板の周辺領域においては、前記カラーフィルタの平坦台座と接することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
前記TFT基板には有機パッシベーション膜は存在しないことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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