説明

液晶装置、及び電子機器

【課題】表示品質を向上させることが可能な液晶装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】シール材40を介して貼り合わされた素子基板10及び対向基板と、素子基板10及び対向基板のうち少なくとも一方の基板上に形成されたシランカップリング剤による表面処理が施された無機配向膜18と、を備え、平面的にシール材40と画素領域との間に、シランカップリング剤による表面処理が施されていない未処理領域71を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、例えば、無機配向膜が設けられた一対の基板間に、シール材を介して液晶が注入封止された構造となっている。このような液晶装置において、一対の基板間に不純物(例えば、水分など)が入り込むことによって、例えば、焼き付きが発生するなど表示特性が劣化する恐れがある。
【0003】
そこで、基板上に設けられた無機配向膜にシランカップリング剤による表面処理を施すことによって、外部から一対の基板間に不純物が入り込むことを抑える技術が開示されている。また、特許文献1では、無機配向膜をシラン化合物によって表面処理すると共に、シール領域に表面処理を施さない部分を設けることにより、無機配向膜とシール材との密着性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−93672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の液晶表示装置は、外部から不純物が入ることが抑えられると共に、シール材と無機配向膜との密着性が向上するものの、注入された液晶に不純物が含まれていた場合には、不純物を除去することが難しく、表示特性の劣化(焼き付きや表示ムラなど)を抑えることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る液晶装置は、シール材を介して貼り合わされた一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上に形成されたシランカップリング剤による表面処理が施された無機配向膜と、を備え、前記シール材と表示領域との間に、前記シランカップリング剤による表面処理が施されていない未処理領域を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、無機配向膜上における平面的にシール材と表示領域との間に未処理領域を設けたので、液晶分子の動作によって液晶層に含まれる不純物(水分やイオン成分など)を、シランカップリング剤の表面処理が施されていない未処理領域に掻き集めることが可能となる。よって、未処理領域の無機配向膜が露出した部分(親水基領域)に不純物が集まるので、表示領域における焼き付きの発生を抑えることが可能となり、表示品質を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る液晶装置において、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に額縁遮光膜が設けられており、前記未処理領域は、前記シール材と前記額縁遮光膜との間に設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、シール材と額縁遮光膜との間に未処理領域を設けたので、未処理領域に不純物を集めることが可能となり、額縁遮光膜から内側の領域の焼き付きの発生を抑えることができる。その結果、表示品質を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る液晶装置において、前記シール材と重なる少なくとも一部の領域に前記シランカップリング剤による表面処理が施されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、シール材の下側に表面処理が施されていることにより、外部から不純物(水分など)が侵入することを抑えることができると共に、シール材と無機配向膜との密着性を向上させることができる。
【0013】
[適用例4]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、上記した液晶装置を備えているので、未処理領域に不純物を集めることが可能となり、表示品質を向上させることができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は液晶装置の構造を示す模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】(a)は液晶装置におけるシランカップリング剤処理が施される領域を示す模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のA−A’断面に沿う模式断面図。
【図4】図3(b)に示す液晶装置のB部を拡大して示す拡大断面図。
【図5】液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャート。
【図6】従来の液晶装置と本実施形態の液晶装置とにおける焼き付きの度合いを比較するグラフ。
【図7】液晶装置を備えた電子機器(投射型表示装置)の構成を示す模式図。
【図8】変形例の液晶装置の構造を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のC−C’断面に沿う模式断面図。
【図9】変形例の液晶装置の構造を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のD−D’断面に沿う模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
【0017】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、又は基板の上に他の構成物を介して配置される場合、又は基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0018】
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0019】
<液晶装置の構成>
図1(a)は、液晶装置の構造を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図2は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構造を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0020】
図1(a)及び(b)に示すように、液晶装置100は、対向配置された素子基板10及び対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10及び対向基板20は、例えば、透明な石英基板、ガラス基板などが用いられている。
【0021】
素子基板10は、対向基板20よりも一回り大きく形成されている。両基板10,20は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合されている。そして、その隙間に、負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50が構成されている。シール材40は、例えば、熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0022】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に額縁遮光膜21が設けられている。額縁遮光膜21は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、対向基板20側に設けられている。そして、額縁遮光膜21の内側が画素領域Eとなっている。画素領域Eには、マトリックス状に画素Pが複数配置されている。なお、図1では図示省略したが、画素領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0023】
素子基板10の1辺部には、1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。更に、該1辺部と交差し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側には、走査線駆動回路102が設けられている。
【0024】
1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線105は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子104に接続されている。以降、1辺部に沿った方向をX方向とし、1辺部と交差し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0025】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15及びスイッチング素子としてのTFT30と、信号配線と、これらを覆う第1無機配向膜18とが形成されている。また、素子基板10の表面には、TFT30における半導体層に光が入射して光リーク電流が流れ、不適切なスイッチング動作となることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0026】
対向基板20の液晶層50側の表面には、額縁遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間膜22と、層間膜22を覆うように設けられた光透過性を有する共通電極23と、共通電極23を覆う第2無機配向膜24とが設けられている。
【0027】
額縁遮光膜21は、図1(a)に示すように、平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより、対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が画素領域Eに入射しないように遮蔽して、画素領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0028】
層間膜22は、例えば、酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して額縁遮光膜21を覆うように設けられている。このような層間膜22の形成方法としては、例えば、プラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0029】
共通電極23は、例えば、ITOなどの透明導電膜からなり、層間膜22を覆うと共に、図1(a)に示すように、対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線105に電気的に接続されている。
【0030】
画素電極15を覆う第1無機配向膜18及び共通電極23を覆う第2無機配向膜24は、例えば、酸化シリコン(SiO2)などからなる無機配向膜によって構成されている。本実施形態では、負の誘電異方性を有する液晶分子が配向膜面に対してプレチルトを与えられて垂直配向するように、所定の方向に配向処理が施されたものである。
【0031】
また、本実施形態では、画素領域Eは実効的な表示がなされる表示領域と、表示領域を囲む周辺領域とを含むものである。周辺領域に配置された画素Pはダミー画素として扱われている。
【0032】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも画素領域Eにおいて互いに絶縁されて交差する複数の走査線3a及び複数のデータ線6aと、データ線6aに対して一定の間隔をおいて平行するように配置された容量線3bとを有する。なお、走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
【0033】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0034】
TFT30のゲートは走査線3aに電気的に接続され、TFT30のソースはデータ線6aに電気的に接続されている。画素電極15は、TFT30のドレインに電気的に接続されている。
【0035】
データ線6aは、データ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
【0036】
データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングで、互いに重複しないパルス信号として順次供給する。
【0037】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された共通電極23との間で一定期間保持される。
【0038】
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
【0039】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0040】
このような液晶装置100は、透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が上記光学設計に応じて配置されて用いられる。
【0041】
図3(a)は、液晶装置においてシランカップリング剤の表面処理が施される領域を示す模式平面図である。図3(b)は、図3(a)に示す液晶装置のA−A’断面に沿う模式断面図である。図4は、図3(b)に示す液晶装置のB部を拡大して示す拡大断面図である。以下、シランカップリング剤の表面処理が施された液晶装置について、図3及び図4を参照しながら説明する。なお、図3(b)に示す液晶装置は、素子基板から画素電極までの層の図示を省略している。
【0042】
図3に示すように、素子基板10上には、第1無機配向膜18が形成されている。一方、対向基板20上には、第2無機配向膜24が設けられている。そして、素子基板10と対向基板20とは、シール材40を介して貼り合わされている。
【0043】
第1無機配向膜18上における画素領域Eの外側からその内側全体には、シランカップリング剤によって表面処理が施された表面処理部61が設けられている。また、第2無機配向膜24側も同様に、第2無機配向膜24上における画素領域Eの外側からその内側全体には、シランカップリング剤によって表面処理が施された表面処理部62が設けられている。
【0044】
シランカップリング剤としては、官能基としてアルキル基を有するものが用いられる。具体的には、有機官能基(Y)がアルキル基であるものが用いられ、より具体的には、例えば、Si(OCH3)3(C18H37)が好適に用いられる。さらには、アルキル基を有するシランカップリング剤の一部又は全部の有機官能基をCF基に置換したものを用いるようにしてもよい。
【0045】
そして、平面的にシール材40と画素領域Eとの間に、シランカップリング剤の表面処理が施されていない、未処理領域71,72が設けられている。これにより、図4の拡大図に示すように、シランカップリング剤の表面(一対の基板10,20間)に存在する不純物81(水分など)が、表面処理が施された表面上から弾かれて、未処理領域71の第1無機配向膜18の表面に集められる。
【0046】
これにより、画素領域E内に存在する不純物81(水分など)に起因する表示ムラや焼き付きが発生することを抑えることが可能となり、その結果、表示品質を向上させることができる。
【0047】
<液晶装置の製造方法>
図5は、液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャートである。以下、液晶装置の製造方法を、図5を参照しながら説明する。なお、素子基板上に設けられた各層を含めて素子基板と称する場合がある。また、対向基板上に設けられた各層を含めて対向基板と称する場合がある。
【0048】
最初に、素子基板10側の製造方法を説明する。ステップS11では、ガラス基板などからなる素子基板10上にTFT30等を形成する。具体的には、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、素子基板10上にTFT30などを形成する。
【0049】
ステップS12では、画素電極15を形成する。具体的には、TFT30等の形成と同様に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、素子基板10上のTFT30の上方に画素電極15を形成する。
【0050】
ステップS13では、画素電極15の上方に第1無機配向膜18を形成する。第1無機配向膜18の製造方法としては、例えば、酸化シリコン(SiO2)などの無機材料を斜方蒸着する斜方蒸着法が用いられる。
【0051】
ステップS14では、第1無機配向膜18上にシランカップリング剤の表面処理を施す。具体的には、シランカップリング剤を用いた第1無機配向膜18の表面処理は、気相法と液相法の二通りの手法が可能である。気相法では、例えば、第1無機配向膜18を形成した基板をCVD装置に入れ、シランカップリング剤を蒸気として導入することにより、このシランカップリング剤の蒸気によって第1無機配向膜18の表面に処理を施す。液相法で表面処理する場合には、シランカップリング剤を適宜な溶媒に溶解して第1無機配向膜18を表面処理することができる。
【0052】
更に、表面処理が施されない未処理領域71,72を形成する。具体的には、シランカップリング剤をエッチングガスで除去する方法や、UV(紫外線)で分解させる方法などがある。なお、エッチングガスを用いて除去する場合は、マスクを形成してからシランカップリング剤を除去する。以上により、素子基板10側が完成する。
【0053】
次に、対向基板20側の製造方法を説明する。まず、ステップS21では、ガラス基板等の透光性材料からなる対向基板20上に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、共通電極23を形成する。
【0054】
ステップS22では、共通電極23上に第2無機配向膜24を形成する。第2無機配向膜24の製造方法は、第1配向膜と同様であり、例えば、斜方蒸着法を用いて形成する。
【0055】
ステップS23では、第2無機配向膜24上にシランカップリング剤の表面処理を施す。具体的には、第1無機配向膜18にシランカップリング剤の表面処理を行った方法と同様の方法を用いることができる。以上により、対向基板20側が完成する。次に、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる方法を説明する。
【0056】
ステップS31では、素子基板10上にシール材40を塗布する。詳しくは、素子基板10とディスペンサー(吐出装置でも可能)との相対的な位置関係を変化させて、素子基板10における画素領域Eの周縁部に(画素領域Eを囲むように)シール材40を塗布する。
【0057】
ステップS32では、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。具体的には、素子基板10に塗布されたシール材40を介して素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。より具体的には、互いの基板10,20の平面的な縦方向や横方向の位置精度を確保しながら行う。
【0058】
ステップS33では、液晶注入口(図示せず)から構造体の内部に液晶を注入し、その後、液晶注入口を封止する。封止には、例えば、樹脂等の封止材が用いられる。以上により、液晶装置100が完成する。
【0059】
図6は、従来の液晶装置と本実施形態の液晶装置とにおいて焼き付きの度合いを比較するグラフである。以下、焼き付きの度合いについて、図6を参照しながら説明する。
【0060】
図6に示すグラフは、横軸に従来の液晶装置及び本実施形態の液晶装置100の2つの液晶装置を示している。一方、縦軸に焼き付き度合いを示しており、図示上側に向かって程度が悪くなる。
【0061】
具体的には、例えば、液晶装置をプロジェクターに搭載した状態で、市松模様(パターン)の画像を投射した状態において焼き付きの評価試験を行う。
【0062】
従来の液晶装置の焼き付きの程度に対し、本実施形態の液晶装置100の焼き付きの程度は、およそ半分程度となっている。このように、シール材40と額縁遮光膜21との間に、シランカップリング剤の未処理領域71,72を設けることにより、未処理領域71,72に水分などの不純物81を集めることが可能となり、水分に起因する焼き付きの発生を抑えることができる。
【0063】
<電子機器>
図7は、上記した液晶装置を備えた電子機器(投射型表示装置)の構成を示す模式図である。以下、電子機器の構成について、図7を参照しながら説明する。
【0064】
図7に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0065】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0066】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0067】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0068】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0069】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0070】
このような投射型表示装置1000によれば、液晶中の不純物イオンの偏在が抑制された液晶装置100を備え、高い表示品位が実現されている。
【0071】
以上詳述したように、本実施形態の液晶装置100、及び電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0072】
(1)本実施形態の液晶装置100によれば、無機配向膜18,24上における平面的にシール材40と画素領域Eとの間に、シランカップリング剤の表面処理が施されていない未処理領域71,72を設けたので、液晶分子の動作によって液晶層50に含まれる不純物81(水分やイオン成分など)を、未処理領域71,72に掻き集めることが可能となる。よって、未処理領域71,72の無機配向膜18,24が露出した部分(親水基領域)に不純物81が集まるので、画素領域Eにおける焼き付きの発生を抑えることが可能となり、表示品質を向上させることができる。
【0073】
(2)本実施形態の電子機器によれば、上記した液晶装置100を備えているので、未処理領域71,72に不純物81を集めることが可能となり、表示品質を向上させることができる電子機器を提供することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の技術範囲に含まれるものである。また、以下のような形態で実施することもできる。
【0075】
(変形例1)
上記したように、シランカップリング剤の表面処理が施された表面処理部61,62は、平面的に額縁遮光膜21の外側から内側全体の領域のみに限定されず、例えば、図8に示す領域に形成するようにしてもよい。図8は、変形例の液晶装置の構造を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のC−C’断面に沿う模式断面図である。
【0076】
図8に示すように、液晶装置200は、上記した実施形態の領域に加えて、シール材40の下側に表面処理部161が設けられている。平面的にシール材40と額縁遮光膜21との間の領域には、上記と同様に、シランカップリング剤の表面処理が施されていない未処理領域171,172が設けられている。
【0077】
これによれば、シール材40の下側に表面処理が施されているので、上記した実施形態の効果に加えて、外部から液晶装置200の内部に不純物81(水分など)が入り込むことを抑えることができる。更に、シール材40と第1無機配向膜18との密着性を向上させることができる。
【0078】
(変形例2)
上記したように、画素領域Eの周囲の全周に未処理領域71,72を設けることに限定されず、例えば、図9に示す領域に未処理領域を設けるようにしてもよい。図9は、変形例の液晶装置の構造を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のD−D’断面に沿う模式断面図である。
【0079】
図9に示すように、液晶装置300は、画素領域Eの周囲における対角の2箇所に未処理領域271,272が設けられている。それ以外の領域は、シール材40から内側の領域にシランカップリング剤の表面処理が施されている表面処理部261,262が設けられている。なお、シール材40の下側は、表面処理が施されていてもよい。
【0080】
これによれば、例えば、一軸配向させることが可能な液晶装置300において、液晶分子の動作により不純物81を対角に集めることが可能となる。そして、対角に未処理領域271,272が設けられていることにより、集まった不純物81を未処理領域の第1無機配向膜18に付着させることができる。
【0081】
なお、対向する2コーナーに未処理領域271,272を設けることに限定されず、平面的に、額縁遮光膜21の周囲に均等な間隔をあけて未処理領域を設けるようにしてもよい。
【0082】
更に、これらの方法に限定されず、例えば、素子基板10側の画素領域Eの周囲における1つの角部に未処理領域を設け、更に、対向基板20側の画素領域Eの周囲における前記1つの角部と平面的に対角に位置する角部に未処理領域を設けるようにしてもよい。これによれば、一軸配向させることが可能な液晶装置において、液晶分子の動作により不純物を、上記の方法と比較して最小限の構成でそれぞれの角部に集めることが可能となる。
【0083】
(変形例3)
上記したように、シランカップリング剤の未処理領域71,72を素子基板10側と対向基板20側の両方に設けたが、これに限定されず、例えば、どちらか一方の基板側だけに設けるようにしてもよい。これによれば、両方の基板10,20に未処理領域71,72を設ける場合と比較して、画素領域E内の不純物81の分散があると考えられるものの、不純物81を未処理領域に集めることが可能となり、従来と比較して、表示品質を向上させることができる。
【0084】
(変形例4)
上記したように、未処理領域71,72は、シール材40と画素領域Eとの間に設けることに限定されず、例えば、シール材40と表示領域(実効的な表示領域)との間に設けるようにしてもよい。この場合においても、表示領域の表示品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
3a…走査線、3b…容量線、6a…データ線、10…素子基板、15…画素電極、16…保持容量、18…第1無機配向膜、20…対向基板、21…額縁遮光膜、22…層間膜、23…共通電極、24…第2無機配向膜、30…TFT、40…シール材、50…液晶層、61,62,161,261…表面処理部、71,72,171,172,271,272…未処理領域、81…不純物、100,200,300…液晶装置、101…データ線駆動回路、102…走査線駆動回路、103…検査回路、104…外部接続端子、105…配線、106…上下導通部、1000…投射型表示装置、1100…偏光照明装置、1101…ランプユニット、1102…インテグレーターレンズ、1103…偏光変換素子、1104,1105…ダイクロイックミラー、1106,1107,1108…反射ミラー、1201,1202,1203,1204,1205…リレーレンズ、1206…クロスダイクロイックプリズム、1207…投射レンズ、1210,1220,1230…液晶ライトバルブ、1300…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材を介して貼り合わされた一対の基板と、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上に形成されたシランカップリング剤による表面処理が施された無機配向膜と、
を備え、
前記シール材と表示領域との間に、前記シランカップリング剤による表面処理が施されていない未処理領域を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に額縁遮光膜が設けられており、
前記未処理領域は、前記シール材と前記額縁遮光膜との間に設けられていることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液晶装置であって、
前記シール材と重なる少なくとも一部の領域に前記シランカップリング剤による表面処理が施されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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