説明

液浸対物レンズ及びそれを用いた倒立顕微鏡

【課題】浸液を対物レンズ上に安定して保持する技術を提供する。
【解決手段】液浸対物レンズである対物レンズ5は、先端部5aと本体部5bを含む。先端部5aの側面は、光軸AX方向の異なる位置に先端平面2とのなす角が異なる側面6と側面3とを有する。先端平面2と先端平面2に接する側面6とのなす角が先端平面2と側面3とのなす角に比べて小さくなるように、側面6は形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸対物レンズに関し、特に、倒立顕微鏡で用いられる液浸対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子導入により細胞内に発現させることができる蛍光蛋白質が実用化され、これを用いることで生体標本に与えるダメージを抑制することが可能となった。このような蛍光蛋白質としては、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)やYFP(yellow Fluorescent Protein)などがある。これらの蛍光蛋白質の実用化により蛍光観察の対象が広がり、現在では、例えば、ゼブラフィッシュ、線虫、ショウジョウバエなどの比較的大きな生体標本も観察対象となっている。比較的大きな生体標本の深部を明瞭に観察するためには、通常、長作動距離を有する液浸対物レンズを備えた、共焦点顕微鏡や2光子励起顕微鏡が使用される。
【0003】
ところで、液浸対物レンズとは、標本(またはその保持部材)と対物レンズとの間を水や油などの浸液で満すことで高開口数を実現する対物レンズであり、通常、浸液は表面張力により対物レンズと標本の間に保持される。
【0004】
しかしながら、液浸対物レンズを倒立顕微鏡で使用する場合には、対物レンズ上(標本と対物レンズの間)に安定に浸液を保持することが難しい。さまざまな要因により表面張力と他の力の釣り合いが崩れると、浸液は標本と対物レンズの間から流れ出て、対物レンズの先端部から下方へ流れ落ちてしまう。特に、長作動距離を有する液浸対物レンズを用いる場合には、標本と対物レンズの間に満たすべき浸液の量が多いため、このような現象が生じやすい。
【0005】
浸液が標本と対物レンズの間から流れ出て、標本と対物レンズの間の浸液が適量に対して不足すると、顕微鏡は観察性能を十分に発揮できない。また、流れ落ちた浸液が対物レンズの鏡筒内部に浸入すると対物レンズの正常な性能の発揮を阻害する原因となり得る。また、対物レンズの先端部から流れ落ちた浸液は鏡筒外部を汚してしまう。
【0006】
このため、標本と対物レンズとの間から浸液が流れ出ること自体を抑制するために浸液を対物レンズ上に安定して保持する技術や、標本と対物レンズとの間から流れ出た浸液により生じる不利益を防止する技術が求められている。
【0007】
このような技術的な課題に対して有効な技術が、例えば、特許文献1で開示されている。特許文献1では、レンズ環の外周に防水キャップを取り付ける技術が開示されている。また、標本と対物レンズの間から溢れ出た浸液を保持する水保持部や受け溝も開示されている。
【0008】
特許文献1で開示される技術によれば、浸液が対物レンズの鏡筒内部に浸入することで生じる対物レンズの性能劣化を防止することができる。また、浸液が鏡筒外部を汚すことも防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3203698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1で開示される技術は、標本と対物レンズとの間での浸液を安定に保持するという技術的な課題に対しては何ら貢献しない。このため、特許文献1で開示される技術では、浸液の保持の安定性は改善されない。従って、比較的多くの浸液を要求する長作動距離の液浸対物レンズを使用する際には、十分な量の浸液を安定して保持することができない。
【0011】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、十分な量の浸液を対物レンズ上に安定して保持する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部を含み、側面は、光軸方向の異なる位置に、先端平面とのなす角が異なる、少なくとも第1側面と第2側面とを有し、先端平面と先端平面に接する第1側面とのなす角は、先端平面と第2側面とのなす角に比べて小さい液浸対物レンズを提供する。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の液浸対物レンズにおいて、第2側面は、第1側面と像側で接する面である液浸対物レンズを提供する。
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の液浸対物レンズにおいて、αを先端平面と第1側面とのなす角とするとき、45°<α<135°を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、d1を第1側面の光軸の方向の長さとするとき、0.05mm<d1<2mmを満たす液浸対物レンズを提供する。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、第1側面に、疎液性コーティングが施されている液浸対物レンズを提供する。
【0016】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、φ1を液浸対物レンズに含まれる最も標本側のレンズの径とし、φ2を先端平面の径とするとき、0.2<φ1/φ2<0.95を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0017】
本発明の第7の態様は、標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部を含み、先端平面は、光軸を中心とした環状の溝を有し、先端平面と溝の光軸側の側面とのなす角は、先端平面と先端部の側面とのなす角に比べて小さい液浸対物レンズを提供する。
【0018】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の液浸対物レンズにおいて、αを先端平面と溝の光軸側の側面とのなす角とするとき、45°<α<135°を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0019】
本発明の第9の態様は、第7の態様または第8の態様に記載の液浸対物レンズにおいて、dgを溝の光軸の方向の長さとするとき、0.05mm<dg<2mmを満たす液浸対物レンズを提供する。
【0020】
本発明の第10の態様は、第7の態様乃至第9の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、溝の光軸側の側面に、疎液性コーティングが施されている液浸対物レンズを提供する。
【0021】
本発明の第11の態様は、第7の態様乃至第10の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズにおいて、φ1を液浸対物レンズに含まれる最も標本側のレンズの径とし、φgを環状の溝の内径とするとき、0.2<φ1/φg<0.95を満たす液浸対物レンズを提供する。
【0022】
本発明の第12の態様は、標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部、を含み、先端部は、光軸と先端平面が交わる点から最も近い、先端平面に対して傾斜した面であり、先端平面に接する第1面と、第1面に対して傾斜して接する第2面と、を含み、光軸を含む断面上で先端平面から第2面に向かって進むとき、先端平面と第1面の接点での曲がる方向と第1面と第2面の接点での曲がる方向が反対である液浸対物レンズを提供する。
【0023】
本発明の第13の態様は、第1の態様乃至第12の態様のいずれか1つに記載の液浸対物レンズを含む倒立顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、十分な量の浸液を対物レンズ上に安定して保持する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】液体に作用する力と液体の形状について説明するための図である。
【図2A】固体表面上に保持された液体の接触角について説明するための図である。
【図2B】固体表面上に保持された液体の接触角について説明するための図である。
【図2C】固体表面上に保持された液体の接触角について説明するための図である。
【図3】ヤングの式について説明するための図である。
【図4A】従来技術に係る対物レンズの側面概略図である。
【図4B】従来技術に係る対物レンズの上面概略図である。
【図5】実施例1に係る対物レンズの側面概略図である。
【図6】実施例2に係る対物レンズの側面概略図である。
【図7】実施例3に係る対物レンズの側面概略図である。
【図8】実施例4に係る対物レンズの側面概略図である。
【図9】本発明の一実施例に係る対物レンズを含む共焦点顕微鏡の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
各実施例について説明する前に、浸液などの液体を対物レンズなどの固体上により多く保持するための方法について説明する。
まず、より多くの浸液を対物レンズ上に保持するために、好ましい浸液及び対物レンズの物性について説明する。
【0027】
図1(a)に例示されるように、液体LQには、液体LQを構成する分子同士が互いに引っ張り合う分子間力F1のはたらきにより、液体LQの形状を表面積の小さい球形に維持しようとする表面張力が作用している。しかしながら、固体Sと接触すると、固体Sと液体LQの間にも引力がはたらくため、液体LQの形状が変化する。また、固体平面上に液体LQが配置される場合、図1(b)に例示されるように、重力Gにより液体LQが固体Sに押し付けられることになるため、液体LQには固体平面に沿って広がろうとする力F2が作用する。従って、これらの力のバランスにより、図1(c)に例示されるように、固体平面上での液体LQの形状は定まることになる。
【0028】
このような固体平面上での液体の形状を特徴付ける指標として、接触角が知られている。接触角とは、固体上に置かれた液体表面に引いた接線が固体となす角度として定義される。
【0029】
図2A、図2B、図2Cは、それぞれ異なる接触角で固体平面上に保持された液体を例示している。図2Aは、接触角θ1で固体平面上に保持された液体LQ1が例示されている。図2Bは、図2Aに例示される接触角θ1より小さな接触角θ2で固体平面上に保持された液体LQ2が例示されている。図2Cは、図2Bに例示される接触角θ2より小さな接触角θ3で固体平面上に保持された液体LQ3が例示されている。
【0030】
図2Aから図2Cで例示されるように、接触角が大きいほど、液体は、平面上で球形に近い形状を有し、平面上により多く保持され得る。
一般に、接触角θは、図3に例示されるように、固体Sの表面張力γs、液体LQの表面張力γl、及び、固液間の界面張力γslの力の釣合いにより定まり、ヤングの式と呼ばれる以下の式(1)を用いて表現できる。
【0031】
【数1】

【0032】
式(1)は、固体の表面張力γsが小さい固体を用いることで、接触角θを大きくすることができることを示している。
従って、対物レンズの先端平面の周辺部や先端平面と接する対物レンズの側面に、表面張力γsが小さい材料、例えば、フッ素系材料を用いることが望ましい。より具体的には、対物レンズの先端平面の周辺部や周辺部と接する対物レンズの側面に、フッ素樹脂をコーティングすることが望ましい。これにより、浸液が大きな接触角を有することになり、その結果、より多くの浸液を対物レンズ上に保持することができる。
【0033】
次に、より多くの浸液を対物レンズ上に保持するために、好ましい対物レンズの形状について説明する。
図4Aは、従来技術に係る対物レンズの側面概略図であり、図4Bは、従来技術に係る対物レンズの上面概略図である。図4A及び図4Bに例示される対物レンズ1は、先端部1aと本体部1bを含み、先端部1aの輪郭は、先端平面2と側面3とにより画定される。先端平面2は、対物レンズ1に含まれるレンズにより形成されるレンズ領域LRと、レンズ領域LRを取り囲む周辺領域PRと、を含んでいる。
【0034】
図4Aに例示されるように、従来技術に係る対物レンズ1では、通常、標本に対向し光軸AXに直交する先端平面2と光軸AXに平行な本体部1bの側面4とは、先端平面2に対して角度βで傾斜した側面3により接続されている。
【0035】
上述したように、より多くの浸液を対物レンズ上に保持するためには、より大きな接触角を実現する材料を選択することが望ましい。しかしながら、ヤングの式は、図3に例示されるように液体が平面上に存在し、且つ、平衡状態にあることを前提に成り立つ式である。このため、対物レンズは、ヤングの式から導かれる接触角から推定される量の浸液を必ずしも保持できるわけではない。
【0036】
例えば、図4A及び図4Bに例示される対物レンズ1と標本の間に注入するときの浸液の勢いが大きすぎると、浸液が対物レンズ1の先端平面2からはみ出して、先端平面2に対して傾斜した対物レンズ1の側面3に接触してしまう。浸液が側面3と接触すると、浸液と側面3の間に生じる界面張力などにより、先端平面2上で保たれていた力の釣り合いが崩れてしまう。この他にも、作業中に発生する振動などが原因で浸液が側面3と接触する場合も、同様に力の釣り合いが崩れることになる。力の釣り合いが崩れると、本来保持し得る浸液が側面3に沿って対物レンズ1と標本の間から流れ出してしまい、十分な量の浸液を対物レンズ1と標本の間に保持することができない。
【0037】
従って、対物レンズを浸液と側面とが接触しにくい形状にすること、即ち、対物レンズの先端平面と先端平面に接する側面とのなす角(以降、側面の角度と記す。)を小さくするが望ましい。これにより、より多くの浸液を対物レンズ上に安定して保持することが可能となるため、長作動距離の対物レンズなど比較的多くの浸液を保持する必要がある対物レンズであっても、十分な量の浸液を保持することができる。
【0038】
また、この場合、対物レンズを浸液と側面とが接触しにくい形状にすることで、側面と接触しなかった液浸の表面は、気体に接することになるため、表面積に占める気液界面の割合が増加する。その結果、液浸を対物レンズと標本の間に維持しようとする方向にはたらく表面張力の大きさが大きくなる。
【0039】
しかしながら、通常、対物レンズの先端部の側面の角度は、さまざまな制約により、任意に選択することはできない。具体的には、対物レンズ内部には、対物レンズを構成する複数のレンズ、レンズを支持するレンズ環、及び、補正環などの機構などが含まれるため、これらの要素によって対物レンズの輪郭形状は制約される。このため、対物レンズの先端部の側面の角度は、これらの構造的な制約の下、利用者が標本を確認しやすい角度(アクセス角)に設計されることが通常である。
【0040】
そこで、対物レンズの先端部の側面を、角度(先端平面とのなす角)が異なる複数の側面で構成する。即ち、対物レンズの先端部の側面は、少なくとも、先端平面に接する第1側面と、第1側面と異なる第2側面を含む。そして、第1側面と第2側面は、光軸方向の異なる位置に、第1側面の角度(先端平面と第1側面とのなす角)が第2側面の角度(先端平面と第2側面とのなす角)に比べて小さくなるように、形成される。なお、第1側面の光軸方向の長さが第2側面の光軸方向の長さに比べて短くなるように形成されても良い。
【0041】
このように、先端平面に接する第1側面の光軸方向の長さを短くすることで、第1側面の角度を、対物レンズの構造的な制約に制限されることなく、小さくすることができる。その結果、十分な量の浸液を対物レンズ上に安定して保持することが可能となる。
【0042】
なお、本明細書において、対物レンズの先端平面と他の面とのなす角(他の面の角度)は、対物レンズ側の角度、即ち、内角を意味するものとする。
以下、各実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0043】
図5は、本実施例に係る対物レンズの側面概略図である。図5に例示される対物レンズ5は、液浸対物レンズであり、標本に対向し光軸AXに直交する先端平面2と側面とにより輪郭形状が画定される先端部5aと、本体部5bを含んでいる。また、先端平面2は、対物レンズ5に含まれる最も標本側のレンズL1が露出した領域であるレンズ領域LRと、その周囲の周辺領域PRと、を含んでいる。
【0044】
図5に例示されるように、先端部5aの側面は、光軸方向の異なる位置に、先端平面2とのなす角が異なる、先端平面に接する第1側面である側面6と第2側面である側面3とを有している。また、先端平面2と先端平面2に接する側面6とのなす角αが、先端平面2と側面3とのなす角βに比べて小さく、側面6の光軸方向の長さd1が、側面3の光軸方向の長さd2に比べて短くなるように、側面6は形成されている。
【0045】
なお、図5では、先端平面2と側面6とのなす角αは、略90°であるが、特にこれに限られない。先端平面2と側面6とのなす角αは、以下の条件式(2)を満たすことが望ましい。
45°<α<135° ・・・(2)
【0046】
条件式(2)の上限値を上回る場合、側面6の角度が大きすぎるため、浸液と側面6とが接触しやすくなる。このため、十分な量の浸液を保持することが難しい。
【0047】
条件式(2)の下限値を下回る場合、先端平面2からはみ出した浸液は、側面6に接触することはなく側面3に直接接触し、それによって、力の釣り合いが崩れる。従って、下限値を下回って角度を小さくするメリットはほとんどない。その一方で、下限値を下回って角度を小さくしすぎると、対物レンズ5の先端部5aの形状が複雑化して対物レンズ5の製造が困難となる。
【0048】
また、側面6の光軸方向の長さd1は、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
0.05mm<d1<2mm ・・・(3)
条件式(3)の上限値を上回る場合、側面6の光軸方向の長さが長いため、浸液と側面3(または側面6)が接触する前に、力の釣り合いが崩れやすい。従って、上限値を超えて側面6の光軸方向の長さを長くするメリットはほとんどない。その一方で、上限値を超えて側面6の光軸方向の長さを長くしすぎると、上述したような対物レンズの構造上の制約を受けやすく、側面6の角度を任意に設定することが難しくなる。
【0049】
条件式(3)の下限値を下回る場合、先端平面2から側面3までの距離が短いため、先端平面2からはみ出した浸液が、側面6に接触することはなく、側面3に直接接触しやすい。このため、側面6の角度を小さくして浸液を側面6に接触しにくくしても、その効果を十分に発揮し得ない。
【0050】
また、対物レンズ5の第1側面である側面6に、フッ素樹脂などを用いて疎液性コーティングを行ってもよい。これにより、浸液と側面6の間にはたらく引力が小さくなるため、側面6に浸液が接触した場合であっても、先端平面2上で釣り合っていた力の関係を大きく崩すことない。従って、浸液が対物レンズ5と標本の間から流れ出すことを抑制することができる。また、対物レンズ5の先端平面2上の周辺領域PRに、フッ素樹脂などを用いて疎液性コーティングを行ってもよい。これにより、先端平面2上での接触角を大きくすることができるため、より多くの浸液を保持することができる。
【0051】
また、対物レンズ5は、さらに、以下の条件式(4)を満たすことが望ましい。ここで、φ1は対物レンズ5に含まれる最も標本側のレンズL1の径であり、φ2は先端平面2の径である。
0.2<φ1/φ2<0.95 ・・・(4)
【0052】
条件式(4)の上限値を上回る場合、常に先端平面2のほぼ全体を浸液で満たす必要がある。このため、対物レンズ5と標本の間から浸液が流れ出しやすく、十分な量の浸液を保持することが難しくなる。
【0053】
条件式(4)の下限値を下回る場合、先端平面2に占めるレンズL1の表面積が小さすぎるため、必要最小限の浸液を用いた場合、浸液をレンズL1上に配置することが難しい。
【0054】
以上、本実施例に係る対物レンズ5によれば、浸液と側面6とが接触しにくいため、浸液を対物レンズ5上に安定して保持することができる。また、浸液を対物レンズ5上に安定して保持することができるため、結果として、より多くの十分な量の浸液を保持することができる。
【0055】
本実施例に係る対物レンズ5では、第2側面である側面3は、第1側面である側面6と像側で接する面として構成されている。このため、側面6は、光軸AXと先端平面2が交わる点から最も近い先端平面2に対して傾斜した面であり、先端平面2に接する面(第1面)である。また、側面3は、側面6に対して傾斜した面であり、側面6と接する面(第2面)である。従って、“先端平面2と先端平面2に接する側面6とのなす角αが、先端平面2と側面3とのなす角βに比べて小さい”は、“光軸AXを含む断面上で先端平面2から側面3(第2面)に向かって進むとき、先端平面2と側面6(第1面)の接点での曲がる方向と側面6(第1面)と側面3(第2面)の接点での曲がる方向が反対である”と、換言することができる。
【0056】
なお、第2側面である側面3は、必ずしも第1側面である側面6と像側で接する面である必要はない。第2側面は、対物レンズの構造的な制約により決められた角度を有する側面であればよい。従って、第1側面と第2側面の間に、さらに、異なる角度の側面を含んでもよい。
【実施例2】
【0057】
図6は、本実施例に係る対物レンズの側面概略図である。図6に例示される対物レンズ7は、液浸対物レンズであり、標本に対向し光軸AXに直交する先端平面2と側面とにより輪郭形状が画定される先端部7aと、本体部7bを含んでいる。また、先端平面2は、対物レンズ7に含まれる最も標本側のレンズL1が露出した領域であるレンズ領域LRと、その周囲の周辺領域PRと、を含んでいる。
【0058】
図6に例示されるように、先端部7aの側面は、光軸方向の異なる位置に、先端平面2とのなす角が異なる、先端平面に接する第1側面である側面8と第2側面である側面3とを有している。また、先端平面2と先端平面2に接する側面8とのなす角αが、先端平面2と側面3とのなす角βに比べて小さく、側面8の光軸方向の長さd1が、側面3の光軸方向の長さd2に比べて短くなるように、側面8は形成されている。
【0059】
なお、図6に例示される対物レンズ7は、先端平面2と先端平面2に接する側面8とのなす角αが鋭角である点が、実施例1に係る対物レンズ5と異なっている。その他の点は、実施例1に係る対物レンズ5と同様である。
【0060】
従って、対物レンズ7も、条件式(2)から(4)を満たすことが望ましい。また対物レンズ7の側面8または周辺領域PRに、フッ素樹脂などを用いて疎液性コーティングを行ってもよい。
【0061】
以上、本実施例に係る対物レンズ7によれば、実施例1に係る対物レンズ5と同様に、浸液と側面8とが接触しにくいため、浸液を対物レンズ7上に安定して保持することができる。また、浸液を対物レンズ7上に安定して保持することができるため、結果として、より多くの十分な量の浸液を保持することができる。
【0062】
なお、本実施例に係る対物レンズ7でも、実施例1に係る対物レンズ5と同様に、第2側面である側面3は、第1側面である側面8と像側で接する面として構成されている。このため、側面8は、光軸AXと先端平面2が交わる点から最も近い先端平面2に対して傾斜した面であり、先端平面2に接する面(第1面)である。また、側面3は、側面8に対して傾斜した面であり、側面8と接する面(第2面)である。従って、“先端平面2と先端平面2に接する側面8とのなす角αが、先端平面2と側面3とのなす角βに比べて小さい”は、“光軸AXを含む断面上で先端平面2から側面3(第2面)に向かって進むとき、先端平面2と側面8(第1面)の接点での曲がる方向と側面8(第1面)と側面3(第2面)の接点での曲がる方向が反対である”と、換言することができる。
【実施例3】
【0063】
図7は、本実施例に係る対物レンズの側面概略図である。図7に例示される対物レンズ9は、液浸対物レンズであり、標本に対向し光軸AXに直交する先端平面2と側面とにより輪郭形状が画定される先端部9aと、本体部9bを含んでいる。また、先端平面2は、対物レンズ9に含まれる最も標本側のレンズL1が露出した領域であるレンズ領域LRと、その周囲の周辺領域PRと、を含んでいる。さらに、先端平面2は、光軸AXを中心とした環状の溝10を有している。図7に例示される対物レンズ9では、先端平面2に形成された溝10は、光軸側の側面11と、側面11と接する側面12とから構成されている。
【0064】
図7に例示されるように、先端平面2と溝10の光軸側の側面11とのなす角αが、先端平面2と先端部9aの側面3とのなす角βに比べて小さく、溝10の光軸方向の長さdgは、先端部9aの光軸方向の長さd2に比べて短くなるように、溝10は形成されている。
【0065】
実施例1及び実施例2では、浸液と先端部の側面とが接触しにくい形状を有する対物レンズを例示したが、より多くの浸液を対物レンズ上に保持するために好ましい対物レンズの形状は、特にこれに限られない。図7に例示されるような、浸液と先端平面2に設けた溝10の側面が接触しにくい形状を有する対物レンズ9でも、浸液と先端部の側面とが接触しにくい形状を有する対物レンズと同様に、より多くの浸液を対物レンズ上に保持することができる。
【0066】
なお、対物レンズ9では、溝10よりも内側の先端平面2上に浸液が保持される。従って、溝10の光軸側の側面11が、浸液に対して、実施例1または実施例2に係る対物レンズにおける第1側面(側面6、側面8)と同様に作用する。
【0067】
このため、先端平面2と側面11とのなす角αは、上述した条件式(2)を満たすことが望ましい。
また、溝10の光軸方向の長さdgは、以下の条件式(5)を満たすことが望ましい。
0.05mm<dg<2mm ・・・(5)
【0068】
条件式(5)の上限値を上回る場合、溝10の光軸方向の長さが長いため、浸液が溝10の側面11(または溝10の底や側面12)に接触する前に、力の釣り合いが崩れやすい。従って、上限値を超えて溝10の光軸方向の長さを長くするメリットはほとんどない。その一方で、上限値を超えて溝10の光軸方向の長さを長くすると、対物レンズ内部の要素と溝10が接触する可能性があるため、側面11の角度を任意に設定することが難しくなる。
【0069】
条件式(5)の下限値を下回る場合、先端平面2から溝10の底までの距離が短いため、先端平面2からはみ出した浸液が、側面11に接触することはなく、溝10の底や側面12に直接接触しやすい。このため、側面11の角度を小さくして浸液を側面11に接触しにくくしても、その効果を十分に発揮し得ない。
【0070】
また、対物レンズ9の溝10の光軸側の側面11に、フッ素樹脂をコーティングしてもよい。これにより、浸液と側面11の間にはたらく引力が小さくなるため、側面11に浸液が接触した場合であっても、先端平面2上で釣り合っていた力の関係を大きく崩すことない。従って、浸液が対物レンズ9と標本の間から流れ出すことを抑制することができる。また、対物レンズ9の先端平面2上の周辺領域PRに、フッ素樹脂をコーティングしてもよい。これにより、先端平面2上での接触角を大きくすることができるため、より多くの浸液を保持することができる。
【0071】
また、対物レンズ9は、さらに、以下の条件式(6)を満たすことが望ましい。ここで、φ1は対物レンズ9に含まれる最も標本側のレンズL1の径であり、φgは環状の溝10の内径である。
0.2<φ1/φg<0.95 ・・・(6)
【0072】
条件式(6)の上限値を上回る場合、常に溝10の内側の領域のほぼ全体を浸液で満たす必要がある。このため、対物レンズ9と標本の間から浸液が流れ出しやすく、十分な量の浸液を保持することが難しくなる。
【0073】
条件式(6)の下限値を下回る場合、溝10の内側の領域に占めるレンズL1の表面積が小さすぎるため、必要最小限の浸液を用いた場合、浸液をレンズL1上に配置することが難しい。
【0074】
以上、本実施例に係る対物レンズ9によれば、浸液と側面11とが接触しにくいため、浸液を対物レンズ9上に安定して保持することができる。また、浸液を対物レンズ9上に安定して保持することができるため、結果として、より多くの十分な量の浸液を保持することができる。
【0075】
なお、本実施例に係る対物レンズ9では、溝10の光軸側の側面11は、光軸AXと先端平面2が交わる点から最も近い先端平面2に対して傾斜した面であり、先端平面2に接する面(第1面)である。また、溝10の側面12は、先端平面2に対して傾斜した面であり、側面11と接する面(第2面)である。従って、光軸AXを含む断面上で先端平面2から側面12(第2面)に向かって進むとき、先端平面2と側面11(第1面)の接点での曲がる方向と側面11(第1面)と側面12(第2面)の接点での曲がる方向が反対であるという特徴を対物レンズ9は有している。
【実施例4】
【0076】
図8は、本実施例に係る対物レンズの側面概略図である。図8に例示される対物レンズ13は、液浸対物レンズであり、標本に対向し光軸AXに直交する先端平面2と側面とにより輪郭形状が画定される先端部13aと、本体部13bを含んでいる。また、先端平面2は、対物レンズ13に含まれる最も標本側のレンズL1が露出した領域であるレンズ領域LRと、その周囲の周辺領域PRと、を含んでいる。さらに、先端平面2は、光軸AXを中心とした環状の溝14を有している。図8に例示される対物レンズ13では、先端平面2に形成された溝14は、光軸側の側面15と、側面11と接する底面16と、側面15に対向する側面17と、から構成されている。
【0077】
図8に例示されるように、先端平面2と溝14の光軸側の側面15とのなす角αが、先端平面2と先端部13aの側面3とのなす角βに比べて小さく、溝14の光軸方向の長さdgは、先端部13aの光軸方向の長さd2に比べて短くなるように、溝14は形成されている。なお、溝14の光軸方向の長さdgは、先端部13aの光軸方向の長さd2に比べて短くなるように形成されていてもよい。
【0078】
なお、図8に例示される対物レンズ13は、溝14の形状、及び、先端平面2と溝14の光軸側の側面15とのなす角αが直角である点が、実施例3に係る対物レンズ9と異なっている。その他の点は、実施例3に係る対物レンズ9と同様である。
【0079】
従って、対物レンズ7も、条件式(2)、条件式(5)、及び条件式(6)を満たすことが望ましい。また対物レンズ13の光軸側の側面15または周辺領域PRに、フッ素樹脂をコーティングしてもよい。
【0080】
以上、本実施例に係る対物レンズ13によれば、実施例3に係る対物レンズ9と同様に、浸液と側面15とが接触しにくいため、浸液を対物レンズ13上に安定して保持することができる。また、浸液を対物レンズ13上に安定して保持することができるため、結果として、より多くの十分な量の浸液を保持することができる。
【0081】
なお、本実施例に係る対物レンズ13では、溝14の光軸側の側面15は、光軸AXと先端平面2が交わる点から最も近い先端平面2に対して傾斜した面であり、先端平面2に接する面(第1面)である。また、溝14の底面16は、側面15に対して傾斜した面であり、側面15と接する面(第2面)である。従って、側面15が先端平面2に対して傾斜する方向が、底面16が側面15に対して傾斜する方向と反対であるという特徴を対物レンズ13は有している。
【0082】
さらに言い換えると、以下のようになる。通常の対物レンズが、光軸に直交する先端平面と光軸と一致する中心軸をもつ円筒の側面を持ち、さらに先端平面と円筒の側面を繋ぐよう先端平面と円筒の側面の両方に対して傾斜をもつ面取り部状の側面を持つ。これに対して、本発明に係る液浸対物レンズは、さらに先端平面に光軸を中心とした円状の溝、または先端平面から面取り部状の側面に向けて第2の面が形成されている。円状の溝の光軸側の面または第2の面の傾斜の角度は、光軸を含む断面上で見たとき面取り部状の側面の傾斜の角度より光軸に平行に近い傾斜の角度となっている。また、光軸を含む断面上で見て先端平面から面取り部状の側面に向かって順に追っていくとき、先端平面から一旦光軸に平行に近い角度に次の面との接点で曲がり、円状の溝の光軸側の面または第2の面に達する。さらに次の面との接点で逆方向に曲がる。なお、円状の溝はV字状でもコの字の開口部を上に向けた物であっても良い。
【0083】
以下、上述した実施例1から実施例4に係る対物レンズの用途として特に好適な顕微鏡について説明する。
実施例1から実施例4に係る対物レンズの用途として、倒立共焦点顕微鏡は好適である。
【0084】
図9は、本発明の一実施例に係る対物レンズを含む倒立共焦点顕微鏡の構成を例示した図である。図9に例示される共焦点顕微鏡20は、倒立顕微鏡であり、照明光としてレーザ光を射出するレーザ光源(短波用レーザ21、可視光レーザ22)と、標本から生じた蛍光を照明光から分離する分離手段(ダイクロイックミラー35)と、標本を走査する走査手段(ガルバノミラー32)と、対物レンズ36と、対物レンズ36の焦点位置と光学的に共役な位置に配置された共焦点絞り38と、共焦点絞り38を通過した蛍光を検出する検出器42とを含んで構成されている。対物レンズ36は、実施例1から実施例4のいずれかに係る対物レンズであり、液浸対物レンズである。
【0085】
短波用レーザ21または可視光レーザ22から射出されたレーザ光は、ミラー23及びダイクロイックミラー35を介して集光レンズ25に入射し、集光レンズ25によりファイバカップリング機構26に集光する。ファイバカップリング機構26からシングルモードファイバ27に入射したレーザ光は、ファイバ調整機構28により射出されるレーザ光の位置や傾きが調整され、シングルモードファイバ27から射出する。シングルモードファイバ27から射出したレーザ光は、コリメータレンズ29で平行光に変換され、ミラー30、ダイクロイックミラー31、ガルバノミラー32、瞳投影レンズ33、レンズ34、ミラー35を介して対物レンズ36に入射する。対物レンズ36は、レーザ光を、対物レンズ36の焦点位置に配置された標本に、スポット状に照射する。
【0086】
レーザ光が照射されることにより標本から生じる蛍光は、レーザ光と同じ光路を反対の方向に進行し、ダイクロイックミラー31へ入射する。蛍光は、レーザ光を反射し蛍光を透過する特性を有するダイクロイックミラー31を透過し、結像レンズ37により共焦点絞り38上に集光する。共焦点絞り38は、対物レンズ36の焦点位置と光学的に共役な位置に配置されているため、焦点位置から生じた蛍光のみが共焦点絞り38に設けられたピンホールを通過する。共焦点絞り38を通過した蛍光は、その波長に応じて、ダイクロイックミラー39を透過または反射し、バリアフィルタ41を透過して検出器42で検出される。
【0087】
図9に例示される共焦点顕微鏡20などの共焦点顕微鏡は、生体標本を対象とした蛍光観察の用途で広く用いられている。共焦点顕微鏡は、共焦点効果によりZ方向に高い分解能を有することから標本の深部を観察することができるが、標本の深部を観察する際、対物レンズと標本との接触を避けるためには、対物レンズに長い作動距離が必要となる。また、生体標本へのダメージを抑えながら明るい画像を得るためには、対物レンズに高い開口数が必要となる。このため、生体標本と対物レンズの間に、比較的多くの浸液を保持する必要がある。このような理由から、共焦点顕微鏡は、実施例1から実施例4に例示される対物レンズの用途として好適である。
【0088】
また、実施例1から実施例4に係る対物レンズの用途として、2光子励起顕微鏡も好適である。
2光子励起顕微鏡も、生体標本を対象とした蛍光観察の用途で用いられている。このため、2光子励起顕微鏡に用いられる対物レンズも、共焦点顕微鏡に用いられる対物レンズと同様の理由から、長い作動距離と高い開口数が必要となる。このため、生体標本と対物レンズの間に、比較的多くの浸液を保持する必要がある。また、2光子励起顕微鏡では、焦点位置からのみ蛍光が生じる。このため、対物レンズでは、散乱した蛍光も含めて、できるかぎり多くの蛍光を取り込むことが重要である。このような理由から、2光子励起顕微鏡は、実施例1から実施例4に例示される対物レンズの用途として好適である。
【0089】
<付記>
1.標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部を含む液浸対物レンズであって、前記側面は、少なくとも前記先端平面に接する第1側面を含み、αを前記先端平面と前記第1側面とのなす角とするとき、45°<α<135°を満たす。
【符号の説明】
【0090】
1、5、7、9、13、36・・・対物レンズ、1a、5a、7a、9a、13a・・・先端部、1b、5b、7b、9b、13b・・・本体部、2・・・先端平面、3、4、6、8、11、12、15、17・・・側面、10、14・・・溝、16・・・底面、L1・・・レンズ、LR・・・レンズ領域、PR・・・周辺領域、AX・・・光軸、20・・・共焦点顕微鏡、21・・・短波用レーザ、22・・・可視光レーザ、23、30、35、40・・・ミラー、24、31、39・・・ダイクロイックミラー、25・・・集光レンズ、26・・・ファイバカップリング機構、27・・・シングルモードファイバ、28・・・ファイバ調整機構、29・・・コリメータレンズ、32・・・ガルバノミラー、33・・・瞳投影レンズ、34・・・レンズ、37・・・結像レンズ、38・・・共焦点絞り、41・・・バリアフィルタ、42・・・検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部を含み、
前記側面は、前記光軸方向の異なる位置に、前記先端平面とのなす角が異なる、少なくとも第1側面と第2側面とを有し、
前記先端平面と前記先端平面に接する前記第1側面とのなす角は、前記先端平面と前記第2側面とのなす角に比べて、小さい
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記第2側面は、前記第1側面と像側で接する面である
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液浸対物レンズにおいて、
αを前記先端平面と前記第1側面とのなす角とするとき、
45°<α<135°
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
d1を前記第1側面の前記光軸の方向の長さとするとき、
0.05mm<d1<2mm
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記第1側面に、疎液性コーティングが施されている
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
φ1を前記液浸対物レンズに含まれる最も標本側のレンズの径とし、φ2を前記先端平面の径とするとき、
0.2<φ1/φ2<0.95
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項7】
標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部を含み、
前記先端平面は、光軸を中心とした環状の溝を有し、
前記先端平面と前記溝の光軸側の側面とのなす角は、前記先端平面と前記先端部の前記側面とのなす角に比べて、小さい
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項8】
請求項7に記載の液浸対物レンズにおいて、
αを前記先端平面と前記溝の光軸側の側面とのなす角とするとき、
45°<α<135°
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の液浸対物レンズにおいて、
dgを前記溝の前記光軸の方向の長さとするとき、
0.05mm<dg<2mm
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
前記前記溝の光軸側の側面に、疎液性コーティングが施されている
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の液浸対物レンズにおいて、
φ1を前記液浸対物レンズに含まれる最も標本側のレンズの径とし、φgを前記環状の溝の内径とするとき、
0.2<φ1/φg<0.95
を満たすことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項12】
標本に対向し光軸に直交する先端平面と、側面と、により輪郭形状が画定される先端部、を含み、
前記先端部は、
前記光軸と前記先端平面が交わる点から最も近い、前記先端平面に対して傾斜した面であり、前記先端平面に接する第1面と、
前記第1面に対して傾斜して接する第2面と、を含み、
前記光軸を含む断面上で前記先端平面から前記第2面に向かって進むとき、前記先端平面と第1面の接点での曲がる方向と第1面と第2面の接点での曲がる方向が反対である
ことを特徴とする液浸対物レンズ。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の液浸対物レンズを含むことを特徴とする倒立顕微鏡。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−78439(P2012−78439A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221603(P2010−221603)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】