説明

液液抽出塔の停止方法

【課題】 揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、効率的かつ安全に実施することができる液液抽出塔の停止方法を提供する。
【解決手段】 揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、下記の工程を有する液液抽出塔の停止方法。
停止工程:水層液及び油層液の抽出塔への供給を停止する工程
置換工程:水層液及び油層液の抽出塔への供給停止後、抽剤である新水のみを引き続き供給して塔内の水層を新水に置換し、抽出塔の底部から抽出液を抜出し、置換完了後に新水の供給を停止する工程
バブリング工程:抽出塔の底部付近から不活性気体を供給し、抽出塔の内部の液中をバブリングして通過させ、抽出塔の頂部付近から気化した油層と不活性気体を抜き出す工程
抜き出し工程:油層が除かれた抽出塔の水層液を抽出塔の底部から抜き出す工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液液抽出塔の停止方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、効率的かつ安全に実施することができるという優れた特徴を有する液液抽出塔の停止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棚段を有する液液抽出塔を用いて油層と水層を接触させ、所望の成分を分離回収する方法は汎用されている(文献1参照。)。ところが抽出塔の運転を停止し、塔内の水層を新水に置換した後に塔内の液を塔底から排出する際、最初に水層が排出され始め、その後排出操作の終期近くの不確定な時期に油層が排出されてくる。ここで、水層と油層の排出回収先は別々にする必要があり、排出操作中水層と油層の切り替わり時期を現場で監視する必要があり、極めて非効率であり、また該切り替わりの時期を見落とすなど、安全上の観点からも問題であった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−80283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、効率的かつ安全に実施することができるという優れた特徴を有する液液抽出塔の停止方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、下記の工程を有する液液抽出塔の停止方法に係るものである。
停止工程:水層液及び油層液の抽出塔への供給を停止する工程
置換工程:水層液及び油層液の抽出塔への供給停止後、抽剤である新水のみを引き続き供給して塔内の水層を新水に置換し、抽出塔の底部から抽出液を抜出し、置換完了後に新水の供給を停止する工程
バブリング工程:抽出塔の底部付近から不活性気体を供給し、抽出塔の内部の液中をバブリングして通過させ、抽出塔の頂部付近から気化した油層と不活性気体を抜き出す工程
抜き出し工程:油層が除かれた抽出塔の水層液を抽出塔の底部から抜き出す工程
【発明の効果】
【0006】
本発明により、揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、効率的かつ安全に実施することができるという優れた特徴を有する液液抽出塔の停止方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
揮発性の油層を形成する油とは、水と混合した場合に均一層を形成しないものであり、炭化水素を例示することができる。なお、ここでいう炭化水素は、炭素及び水素に加えて、酸素原子、窒素原子等を含有していてもよい。炭化水素の具体例としては、炭素数3〜5の炭化水素をあげることができる。
【0008】
棚段を有する液液抽出塔は、公知であり、たとえば特開平7−80283号公報に開示されている。
【0009】
本発明の停止工程とは、水層液及び油層液の抽出塔への供給を停止する工程である。
【0010】
本発明の置換工程とは、水層液及び油層液の抽出塔への供給停止後、抽剤である新水のみを引き続き供給して塔内の水層を新水に置換する工程である。
【0011】
抽出塔の底部から抜出された抽出液は、抽出液処理塔等へ送られる。
【0012】
本発明のバブリング工程とは、抽出塔の底部付近から不活性気体を供給し、抽出塔の内部の液中をバブリングして通過させ、抽出塔の頂部付近から気化した油層と不活性気体を抜き出す工程である。
【0013】
不活性気体としては、窒素等をあげることができる。
【0014】
抽出塔の頂部付近から抜き出された混合気体は、燃焼処理装置等へ送られる。
【0015】
本工程の終了時期は、抽出塔の頂部付近から抜き出された混合気体の携帯型ガス検知器による可燃性ガス濃度の測定等により判断できる。
【0016】
本発明の抜き出し工程は、油層が除かれた抽出塔の水層液を抽出塔の底部から抜き出す工程である。
【0017】
本発明がなされた経緯について説明する。前記のとおり、抽出塔の運転を停止し、塔内の液を塔底から排出する際、最初に水層が排出され始め、その後排出操作の終期近くの不確定な時期に油層が排出されてくる。ここで、水層と油層の排出回収先は別々にする必要があり、排出操作中水層と油層の切り替わり時期を現場で監視する必要があり、極めて非効率であり、また該切り替わりの時期を見落とすなど、安全上の観点からも問題があった。本発明者等は、上記の現象の発生原因について検討した。その結果、塔内の液を排出する際に棚段塔内の棚の凹部に油が残留し、該油がある不確定な時期に落下して排出されることを見出した。更に、本発明者等はその対策について検討し、液の排出に先立ち、本発明のバブリング工程を実施することにより、凹部に残留している油をバブリング気体とともに排出することができ、その後塔内には水層のみが残留し、よって該水層を排出しても不意に油層が出てくることを防止できることを見出したのである。
【実施例】
【0018】
次に本発明を実施例により説明する。
【0019】
実施例1
油層を形成する油としてC4炭化水素混合物を用いた。定常運転時の油層/水層の重量比は0.1であった。液液抽出塔として、内容積(液保持量)17m3のものを、棚段として多孔板を用いた。停止工程により、水層液及び油層液の抽出塔への供給を停止した。続いて、置換工程により、水層液及び油層液の抽出塔への供給停止後、新水のみを引き続き供給して塔内の水層を新水に置換した。次に、バブリング工程として、新水の供給を停止し、窒素(流量30Nm3/h)を抽出塔の底部付近から抽出塔の内部の液中をバブリングして通過させ、抽出塔の頂部付近から気化した油層と不活性気体を抜き出した。本工程は4時間継続し、終了時期を抽出塔の頂部付近から抜き出された混合気体の携帯型ガス検知器による可燃性ガス濃度の測定で確認した。抽出塔の頂部付近から抜き出された混合気体は、最終的に燃焼処理装置に送って処理した。
抜き出し工程として、抽出塔の水層液を抽出塔の底部から抜き出した。
上記のとおり実施した結果、抜き出し工程中の液には油層は混合しておらず、水層のみが円滑に排出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性の油層と水層を接触させる棚段を有する液液抽出塔の停止方法であって、下記の工程を有する液液抽出塔の停止方法。
停止工程:水層液及び油層液の抽出塔への供給を停止する工程
置換工程:水層液及び油層液の抽出塔への供給停止後、抽剤である新水のみを引き続き供給して塔内の水層を新水に置換し、抽出塔の底部から抽出液を抜出し、置換完了後に新水の供給を停止する工程
バブリング工程:抽出塔の底部付近から不活性気体を供給し、抽出塔の内部の液中をバブリングして通過させ、抽出塔の頂部付近から気化した油層と不活性気体を抜き出す工程
抜き出し工程:油層が除かれた抽出塔の水層液を抽出塔の底部から抜き出す工程
【請求項2】
油層が、炭素数3〜5の炭化水素混合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
バブリング工程の不活性気体が窒素である請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2006−136780(P2006−136780A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327523(P2004−327523)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】