液滴吐出方法、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置
【課題】液柱共鳴が励起する共振振動周波数を所望の周波数に設定することができ、共振振動周波数を高く設定し周波数に反比例する液滴の直径を小さくでき極めて微小な粒液滴を吐出できる。
【解決手段】本発明の液滴吐出方法によれば、液体を吐出するための液滴吐出孔14が、液体が供給される液柱共鳴液室11を構成する部材の一部に開孔されている。また、液柱共鳴液室11には液体に振動を付与する振動発生手段12が設けられている。そして、液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成することにより、定在波の腹となる領域に形成された液滴吐出孔14から液体を吐出される。
【解決手段】本発明の液滴吐出方法によれば、液体を吐出するための液滴吐出孔14が、液体が供給される液柱共鳴液室11を構成する部材の一部に開孔されている。また、液柱共鳴液室11には液体に振動を付与する振動発生手段12が設けられている。そして、液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成することにより、定在波の腹となる領域に形成された液滴吐出孔14から液体を吐出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のインクジェット記録装置はインクヘッド内の液室に設けられた圧電素子などを変位させて液室内のインクをインクノズルからインク滴として吐出して記録紙に付着させて印字を行うものであり、安価でかつ小型であることから広く普及している。このインクジェット記録装置の多くは、特許文献1に記載されているようなヘルムホルツ共振振動を用いて液滴吐出を行っている。このヘルムホルツ共振振動を用いているインクジェットヘッドでは、ヘッドを構成する圧力発生室内に圧電体によるヘルムホルツ共振振動を励起させて液滴を吐出孔から吐出している。このヘルムホルツ共振振動の共振周波数は、圧力発生室のインクの圧縮性に起因する流体コンプライアンス、圧力発生室を形成する弾性板や吐出孔プレート等の材料自体による剛性コンプライアンス、そして吐出孔の開口及びインク供給口におけるイナータンスに起因して設定されることが知られている。この圧力発生室のヘルムホルツ共振振動の共振周波数fは、下記の式1で表される。なお、圧力発生室のインクの圧縮性に起因する流体コンプライアンスをCi、また圧力発生室を形成している弾性板、吐出孔プレート等の材料自体による剛性コンプライアンスをCv、吐出孔開口のイナータンスをMn、インク供給口のイナータンスをMSとする。
f=1/(2π)×√{(Mn+MS)/(Mn×MS)(Ci+Cv)}
・・・(式1)
【0003】
また、ヘルムホルツ共振振動を用いて液滴を吐出する方式では上記式1の共振振動の周波数成分を制御することで液滴吐出制御を行っている。つまり、上記式1で決定される共振周波数fが圧電体の駆動周波数の上限となり、その上限となる駆動周波数に基づいて周波数制御を施して液滴吐出動作の制御を行う。
【0004】
更に、上記ヘルムホルツ共振振動を用いて液滴を吐出する方式以外に特許文献2に提案されている液滴吐出方法は、液柱共鳴液室の長手方向に発生する定在波を利用して液柱共鳴液室の長手方向に吐出する吐出孔から液柱共鳴液室内のインクを吐出する液滴吐出方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヘルムホルツ共振振動を用いた上記特許文献1の液滴吐出方法によれば、所望の共振周波数を得るためには、圧力発生室の上記流体コンプライアンスや上記剛性コンプライアンスの精度を上げなければならない。しかし、圧力発生室の加工技術では精度の限界があり、所望の共振周波数とすることは困難であった。また、共振周波数を高く設定することができないため、共振周波数に反比例する液滴径を小さくできないという課題があった。更に、上記特許文献2では、吐出孔が定在波の伝搬方向に設けられているために高周波による微小な液滴の吐出に限界があった。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、液室の流体コンプライアンスや吐出孔プレート等の構成材料の剛性コンプライアンスに関係なく、所望の共振振動周波数とすることができ、かつ極めて微小な粒液滴を生成できる、液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供でき、更に高密度印字が実現できるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出方法において、液柱共鳴液室内の上記液体に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とする液滴吐出方法である。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の液滴吐出方法において、上記定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数の上記液滴吐出孔が形成されていることを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の液滴吐出方法において、上記液滴吐出孔は1つの上記液柱共鳴液室に複数設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記液柱共鳴液室の長手方向の両端には、少なくとも一部に反射壁面が設けられていることを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動として、f=N×c/(4L)(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:液体の音波の速度、N:整数)が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法において、上記振動として、N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le)(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とするものである。
更に、請求項7の発明は、請求項6記載の液滴吐出方法において、Le/L>0.6であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動として、N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le)(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とするものである。
更に、請求項9の発明は、請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動の周波数は300kHz以上の高周波振動であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動発生手段の駆動信号は上記液柱共鳴液室の長手方向の長さによるいずれかの液柱共鳴振動数を周波数の主成分としたパルス群で上記振動発生手段を励振させることを特徴とするものである。
更に、請求項11の発明は、請求項10記載の液滴吐出方法において、上記パルス群は、予備圧発生パルス部、駆動主パルス部、残留振動打消パルス部の3つのパルス部に分かれて構成され、予備圧発生パルス部は上記パルス群の先頭にあって上記液体を滴化飛翔まで至らない状態に上記液柱共鳴液室内を励振させ、上記駆動主パルス部は上記予備発生パルス部に引き続く印加パルスであり、上記液体を上記液滴吐出孔から吐出させ、上記残留振動打消パルス部は上記駆動主パルス部の直後の印加パルスであって上記駆動主パルス部の主の周波数成分に対して逆位相の周波数成分を有する印加パルスであることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出装置において、一部に上記液滴吐出孔が開孔されている液柱共鳴液室と、該液柱共鳴液室内の液体に振動を付与する振動発生手段とを有し、該振動発生手段によって上記液柱共鳴液室内に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とするものである。
更に、請求項13の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の液滴吐出方法を用い、あるいは請求項12記載の液滴吐出装置を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液柱共鳴液室に発生させる共鳴現象を利用するため、液滴吐出に必要な駆動電圧を飛躍的に低く設定することができ、更に高次の共振周波数が利用できるために、極めて高い周波数での液滴吐出を実現することができる。また、周波数を高く設定することができるために、周波数に反比例して吐出される液滴直径が小さくできる。更に、周波数を変更することは、同じ構成の吐出ヘッドにおいて異なる定在波が複数モード存在するため、複数の共鳴モードを使いわけることによって実現でき、形成される液滴のサイズを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【図2】速度及び圧力変動の定在波の形状を示す図である。
【図3】速度及び圧力変動の定在波の形状を示す図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの液柱共鳴液室内の液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図5】300kHzサイン波の吐出をレーザシャドウグラフィにて撮影した例を示す図である。
【図6】駆動周波数と吐出速度の関係を示す特性図である。
【図7】液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図8】駆動周波数毎の液滴吐出の様子を示す図である。
【図9】駆動電圧波形を示す波形図である。
【図10】予備発生パルス部を含む駆動電圧波形を示す波形図である。
【図11】駆動周波数毎の印加電圧と液滴体積の関係を示す特性図である。
【図12】液滴吐出ヘッドの実施例を示す図である。
【図13】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図14】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図15】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図16】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図17】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図18】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図19】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図20】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図21】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図22】インクジェット記録装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、本発明の液滴吐出装置おける液滴形成のメカニズムについて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。同図の液滴吐出ヘッド10内の液柱共鳴液室11において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室11内の液の音速をcとし、振動発生手段12から媒質である液体に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式2)
の関係にある。
【0011】
また、図1の液柱共鳴液室11において固定端側のフレームの端部から液供給路13側の端部までの長さをLとし、更に液供給路13側のフレームの端部の高さh1(=約80[μm])は連通口の高さh2(=約40[μm])の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式3で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式3)
(但し、Nは偶数)
【0012】
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも上記式3が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。
【0013】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式2と上記式3より、
f=N×c/(4L) ・・・(式4)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0014】
図2にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図3にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図2及び図3のように表記することが一般的である。実線が速度の定在波、点線が圧力の定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図2の(a)からわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、液滴吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図2及び図3のような形態の液柱共鳴による定在波を生じるが、液滴吐出孔数、液滴吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式4より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式3より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]と、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式3より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0015】
なお、図1に示す本実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、液滴吐出孔14の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの液滴吐出孔14の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図2の(b)及び図3の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして液滴吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0016】
上記のように決定された駆動周波数で圧電体に電圧を与えたとき、圧電体が変形し、駆動周期にて圧力の定在波を発生する。このような原理を用いた本実施の形態の液滴吐出ヘッドにおいて、液柱共鳴液室11に液柱共鳴による定在波を形成し、液柱共鳴液室11の一部に配置された液滴吐出孔14から連続的に液滴15が吐出する。
【0017】
なお、液滴吐出孔14は、液柱共鳴による定在波の腹となる領域に配置することが効率の点で好ましい。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である(図4参照)。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。また、液滴吐出孔14は1つの液柱共鳴液室に1つでも構わないが、複数個配置することが、生産性の観点から好ましい。具体的には、2〜100個の間であることが好ましい。100個を超えた場合、100個の液滴吐出孔から所望の液滴を形成させようとすると、圧電体に与える電圧を高く設定する必要が生じ、圧電体の挙動が不安定となる。
【0018】
また、複数の液滴吐出孔14を開孔する場合、液滴吐出孔間のピッチは20μm以上、液柱共鳴液室11の長さ以下であることが好ましい。液滴吐出孔間のピッチが20μm以下の場合、隣あう液滴吐出孔14より放出された液滴同士が、衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなる。
【0019】
更に、液滴吐出孔の開口数、開口配置位置、液滴吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば液滴吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する液滴吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また液滴吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。
【0020】
このように、液柱共鳴液室11の長手方向に発生する液柱共鳴現象とは、液柱共鳴液室11の長手方向の長さLに対して定在波が発生し、特定の周波数において圧力の振動が増幅される現象である。この吐出方式は、吐出量を確保するために十分な大きさを持ち、かつ吐出孔集積化のために必然的に縦長の加圧流路である。
【0021】
なお、液滴吐出ヘッド10における液柱共鳴液室11は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図1に示すように、液柱共鳴液室11の長手方向の両端の壁面間の長さLは、上述した式4、そして後述する式5、式6に基づいて決定される。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液供給路13から連通接続されており、液供給路13には複数の液柱共鳴液室11と連通している。
【0022】
また、液滴吐出ヘッド11における振動発生手段12は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が望ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。圧電体は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段12は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が望ましい。
【0023】
更に、決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い液滴吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式5及び式6で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を液滴吐出孔から吐出することが可能である。
【0024】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式5)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式6)
【0025】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近いトナー吐出孔までの距離Leの比がLe/L>0.6であることが好ましい。
【0026】
図5には、300kHzサイン波の吐出をレーザシャドウグラフィにて撮影した例を示す。非常に径の揃った、かつ速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。また、図6には、255kHz〜350kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の、液滴速度周波数特性を示す。特にピーク位置(300kHz)付近では吐出速度が均一となっている。確かに、液柱共鳴周波数の第二モードである、300kHz近傍において、圧力定在波の腹の位置で均一吐出が実現している。
【0027】
次に、液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図7を用いて説明する。なお、同図において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、同図において、上述したように液供給路13側が開放されているが液供給路13と液柱共鳴液室11とが連通する開口の高さに比して固定端となるフレームの高さが約2倍以上であるため、液柱共鳴液室11はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0028】
図7の(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室11内の圧力波形と速度波形を示している。また、図7の(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った時の液柱共鳴液室11内の圧力波形と速度波形を示している。これらの同図の(a),(b)に示すように、液柱共鳴液室11における液滴吐出孔14が設けられている室内での圧力は極大となっている。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、液供給路13側へ流れる方向となっており、速度は小さい。その後、同図の(c)に示すように、液滴吐出孔14付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行する。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、同図の(a),(b)と液供給路13側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。
【0029】
そして、同図の(d)に示すように、液滴吐出孔14付近の圧力は極小になる。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、液供給路13側から液柱共鳴液室11へ流れる方向に変わる。速度は小さい。このときから液柱共鳴液室11への液体の充填が始まる。その後、同図の(e)に示すように、液滴吐出孔14付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、同図の(d)と液供給路13側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。この時点で、液体の充填が終了する。そして、再び、同図の(a)に示すように、液柱共鳴液室11の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、液滴吐出孔14から液滴15が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹となる領域に液滴吐出孔14が配置されていることから、当該腹の周期に応じて液滴15が液滴吐出孔14から吐出される。
【0030】
図8の(a)は駆動周波数が115kHzの液滴吐出の様子を示し、図8の(b)は駆動周波数が300kHzの液滴吐出の様子を示す。図8の(a)に示す駆動周波数が115kHzの液滴吐出と比較して、図8の(b)に示す駆動周波数300kHzの液滴吐出は、電圧の増加に対して液滴速度も液滴直径も単調増加の傾向にあることがわかる。
【0031】
図9は本発明による液滴吐出装置の圧力発生部材である圧電体に印加する駆動電圧波形について説明するための図である。圧電体に印加する印加電圧を基準とし、図8に示すような周波数相当波形を与える。上述したように、駆動電圧波形は、液柱共鳴液室内液体の、液柱共鳴振動数を主成分とした連続パルス群で構成される。液柱共鳴振動数は上述のとおり、複数の共鳴モード分存在し、適宜使用することができる。複数パルスで複数の液滴を飛翔させることとなり、複数の液滴で1画素を形成する。このとき、必ずしもパルス数と吐出滴数は同一でない。また、駆動する連続パルス群のパルス数を制御することにより、吐出させる液滴数、すなわち液滴量を可変とすることができる。したがって、記録媒体上での画素径を多値化することができ、階調性を有した記録が容易に可能となる。
【0032】
更に、液滴の吐出量、及びタイミングを正確に制御するためには、以下のような周波数相当波形を与えることが望ましい。1画素を形成するための連続パルス群は、図11に示す予備圧発生パルス部(図中のa期間の波形)、駆動主パルス部(図中のb期間の波形)、残留振動打消パルス部(図中のc期間の波形)の3つの部分に分かれて構成されている。予備圧発生パルス部は連続パルス群の先頭にあって、液を滴化飛翔まで至らない状態に液柱共鳴液室内部を励振させ、ノズル近傍の液圧の上昇を行う。すなわち、液ダレや気泡の吸入を抑制する。駆動主パルス部は、予備発生パルス部に引き続き、印加パルスに対応して、液滴を飛翔させる。液滴量の制御はこの部分で実行される。なお、パルス群は、液柱共鳴液室内の液の液共鳴振動数を主成分としたものとなる。残留振動打消パルス部は駆動主パルス部の直後で、駆動主パルス部の主の周波数成分に対し、逆位相の周波数成分を印加することにより、液柱共鳴液室内の液圧を急速に抑制させる。これにより、次の連続パルス群が印加される時には、ノズル近傍での液圧やノズル内の液のメニスカス面を、初期状態レベルまで復帰させることができる。すなわち、駆動パルス群の応答周波数を上げることができる。
【0033】
一連の駆動電圧波形は、図9に示すような正弦波状に限らず、矩形波やパルス波でも良い。その周波数成分が上述した液柱共鳴液室内の液の液共鳴振動数を主成分としたものであれば良い。現実的には、圧力発生部材である圧電素子自体の容量成分に応じて波形自体が時定数をもって立上、立下で遅れを生じるので、矩形波で十分実用性を得られる。また、予備発生パルス部は、図10に示すように、駆動主パルス部と同じ周波数成分で電圧レベルのみ低く設定したり、図9に示すように、同じ電圧レベルで周波数成分のみ異ならせて設定したりすることが可能である。残留振動数打消パルス部に対しても同様である。
【0034】
このように、駆動主パルス部に用いる液共鳴周波数は300kHz、およそ3μs以下であるので、1画素を1〜10滴程度で構成し、実質的な駆動周波数を30KHz程度に設定して多階調を得るのが良い。
【0035】
以上説明したとおり、本実施の形態による液滴吐出ヘッドは、圧力発生部材の変位量を直接液室内の容積変位に変換して液滴を吐出させるものではなく、液体の流体液共鳴を利用するものであるので、駆動エネルギーの著しい低減化が図れる。
【0036】
以下、実施例を挙げて具体的に説明する。
<実施例1>
実施例1は図1に示す液滴吐出ヘッドを用いて振動発生手段の圧電体に図4に示す波形を与えて液滴を形成している。なお、300kHz相当のサイン波形により形成される主パルス部波形を1回とした。また、ノズルはニッケルの電鋳を用いて開口径が8ミクロンであった。液柱共鳴液室及び液供給流路はステンレス製の流路板を貼り合せて形成した。更に、ニッケル薄膜を弾性板として貼り合せ、液柱共鳴液室の上部に圧電体を配置し、これら部材は、ステンレスからなるフレームにより図1のように固定されている。使用した液体は、酢酸エチル100部にシアン顔料を0.5重量部添加し、粘度調整のためにポリエステル樹脂を溶解したものを処方した。圧電体に与えた電圧値に対する、一滴の液滴量を示す。液滴量の測定は、本装置の直下に設けた受け皿に張られたシリコーン液中に上記波形を30kHzで吐出させ、100万滴吐出したところで駆動を停止し、シリコーン液の重量変化を測定し、平均的な重量を測定した。更に、高倍率の顕微鏡によって飛翔液滴を観測し、液滴直径を測定した結果、同じ条件において、重量測定法と同じ液滴量を得た。その結果、一滴の滴量は、パルスの電圧が8Vにおいて0.7plであった。
【0037】
<実施例2>
実施例2では、実施例1の主パルス部波形を2回に変更する以外は同じ構成で、同一の液滴量測定を行った。その結果、一滴の滴量はパルスの電圧が8Vにおいて1.2plであった。
【0038】
<実施例3>
実施例3では、実施例1の主パルス部波形を3回に変更する以外は同じ構成で、同一の液滴量測定を行った。その結果、1回の駆動において、液滴は2滴形成されたが、合計した滴量はパルスの電圧が8Vにおいて1.8plであった。このように、主パルス部のパルス数を変更することによって形成する液滴の量を変調することが可能である。
【0039】
<実施例4>
実施例4では、実施例1の主パルスを、610kHz相当波形に変更し、更にパルス数を2回に変更した。それ以外は同じ構成で同一の液滴量測定を行った。その結果、一滴の滴量は、パルスの電圧が8Vの条件において、0.5plであった。
【0040】
また、図12は液滴体積の電圧依存性を示す特性図である。同図には実施例1の条件で電圧を変更した結果を示す。このように、ヘルムホルツ周波数を基本とする例に比較して、実施例1では小さな液滴を低電圧で駆動することが可能であることがわかる。
【0041】
<実施例5>
図12は液滴吐出ヘッドの実施例を示す図である。同図の(a)は実施例5における同図に示すように、実施例5は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が2個開口するとともに液柱共鳴液室11の液供給路側端に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。両端ともにほぼ固定端のN=2の共鳴モードの定在波とみなすことができる。なお、駆動周波数は328[kHz]とした。この実施例5は、共鳴ピーク周波数での駆動の結果を示している。
【0042】
<実施例6>
図13は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例6は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が10個開口するとともに液柱共鳴液室11の液供給路側に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。なお、駆動周波数は377[kHz]とした。よって、図12の実施例5と比して固定端側が緩い拘束の固定端となっている。
【0043】
<実施例7>
図14は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例7は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が24個開口するとともに液柱共鳴液室11の液共通供給路側に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。なお、駆動周波数は417[kHz]とした。よって、図12の実施例5と比して、液柱共鳴液室11内の固定端とみなしていた先端側は開放端に近いN=3の共鳴モードの定在波となっている。
【0044】
<実施例8>
図15は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例8は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が4個開口するとともに液柱共鳴液室11の液供給路側に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。なお、駆動周波数は344[kHz]とした。よって、図12の実施例5と比して固定端側が液滴吐出孔の開口の影響でやや緩い拘束状態となるが、N=2の共鳴モードの定在波との固定端となっている。
【0045】
<実施例9>
図16は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例9は、局所的に液滴吐出孔の開口数を増やした場合で、液滴吐出孔14が液供給路側に近づき、他端が閉口端であるため、これを両端としたN=1の共鳴モードの定在波が発生し、液供給路側寄りに配置された液滴吐出孔がある領域の圧力分布に比して固定端側寄りに配置された液滴吐出孔がある領域の圧力分布は平坦な分布状態となっている。なお、駆動周波数は160[kHz]とした。
【0046】
<実施例10>
図17は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例10は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が36個開口としたことで、液柱共鳴液室長のおおよそ3分の1の範囲まで液滴吐出孔が設けられたことになる。この実施例6では、N=2の共鳴モードの定在波となるが、固定端側が緩い拘束の固定端となっている。なお、駆動周波数は468[kHz]とした。
【0047】
<実施例11>
図18は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例11は、実施例10と同じ形態の液供給流路及び液滴吐出孔の開口パターンであるが、周波数を少し低くした場合の例である。なお、駆動周波数は395[kHz]とした。この場合、共鳴定在波のパターンは同図に示すとおりであり、緩く拘束された、液滴吐出孔の密集した領域で、圧力分布が更に均一化する。実施例6に比較して、D4/DNが小さくなる、即ち粒子径分布がより均一化した。このように、同じ形態であっても、共鳴が発生している領域内において、駆動周波数を適宜決定することで粒子径分布を最適化することができる。
【0048】
<実施例12>
図19は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例12は、固定端側と液供給路側に液滴吐出孔を4個づつ配置した例である。実施例5と同様に、N=2の共鳴モードの定在波となる。このような液滴吐出孔の配置でも、全ての液滴吐出孔から均等に吐出が可能であった。なお、駆動周波数は344[kHz]とした。
【0049】
<実施例13>
図20は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例13は、液供給路の断面積が液柱共鳴液室の断面積より大きい場合、液供給路側は開放端となる。この場合は、N=1の共鳴モードの定在波となる。なお、駆動周波数は261[kHz]とした。
【0050】
<実施例14>
図21は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例14は、実施例13と同じ形態であるが、駆動周波数を変更した例である。駆動周波数は、516[kHz]とした。実施例10の場合は、N=4の共鳴モードの定在波となる。
【0051】
次に、本発明の液滴吐出装置としてのインクジェット記録装置の機構部について、図22を参照して以下に説明する。
【0052】
図22に示すインクジェット記録装置100において、左右の側板(図示せず)に横架したガイド部材であるガイドロッド101とステー102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。このキャリッジ103には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための上述した本発明の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド104を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0053】
液柱共鳴による記録ヘッド104は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッドの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッドの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0054】
また、キャリッジ103には、記録ヘッド104のノズル列に対応して各色のインクを供給するための液体収容容器としてのヘッドタンク105を搭載している。このヘッドタンク105には各色のインク供給チューブ(図示せず)を介して、カートリッジ装填部(図示せず)に装着された各色のインクカートリッジ(図示せず)から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填にはインクカートリッジ内のインクを送液するための供給ポンプユニット(図示せず)が設けられている。
【0055】
一方、給紙トレイ106の用紙積載部(圧板)107上に積載した用紙108を給紙するための給紙部として、用紙積載部107から用紙108を1枚ずつ分離給送する半月コロの給紙コロ109、及び給紙コロ109に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド110を備え、この分離パッド110は給紙コロ109側に付勢されている。
【0056】
そして、この給紙部から給紙された用紙108を記録ヘッド104の下方側に送り込むために、用紙108を案内するガイド部材111と、カウンタローラ112と、搬送ガイド部材113と、先端加圧コロ114を有する押さえ部材115とを備えるとともに、給送された用紙108を静電吸着して記録ヘッド104に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト116を備えている。この搬送ベルト116は、無端状ベルトであり、搬送ローラ117とテンションローラ118との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト116の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ119を備えている。この帯電ローラ119は、搬送ベルト116の表層に接触し、搬送ベルト116の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト119は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ117が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0057】
更に、記録ヘッド104で記録された用紙108を排紙するための排紙部として、搬送ベルト116から用紙118を分離するための分離爪120と、排紙ローラ121及び排紙コロ122とを備え、排紙ローラ121の下方に排紙トレイ123を備えている。
【0058】
また、装置本体の背面部には両面ユニット124が着脱自在に装着されている。この両面ユニット124は搬送ベルト116の逆方向回転で戻される用紙108を取り込んで反転させて再度カウンタローラ112と搬送ベルト116との間に給紙する。また、この両面ユニット124の上面は手差しトレイ125としている。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、図1に示す液柱共鳴液室11内の液体に、振動発生手段12によって振動が付与されると、液柱共鳴液室11内に液柱共鳴による定在波が発生する。この液柱共鳴による定在波を利用して液柱共鳴液室内に圧力分布を形成する。形成された圧力分布の変化によって液体が液滴吐出孔から吐出される。よって、従来の液滴吐出方法において液室構造に関係なく、液柱共鳴が励起する共振振動周波数を所望の周波数に設定することができ、共振振動周波数を高く設定し周波数に反比例する液滴の直径を小さくでき極めて微小な粒液滴を吐出できる。
【0060】
また、液滴吐出孔14は、液柱共鳴液室11内に形成される液柱共鳴による定在波の腹となる領域の液柱共鳴液室11を構成する部材に設けられる。
【0061】
更に、液滴吐出孔14は1つの液柱共鳴液室11に複数設けられている。よって、高密度に液滴を吐出できる。
【0062】
また、液柱共鳴液室11の長手方向の両端には、図1に示すように、少なくとも一部に反射壁面が設けられている。よって、少なくとも片側固定端となる液柱共鳴液室とし、当該液柱共鳴液室内で形成される液柱共鳴による定在波が安定した波形となり、安定した液滴吐出が期待できる。
【0063】
更に、液柱共鳴液室11の長手方向の長さをL、液体が液柱共鳴液室11に供給するための、液柱共鳴液室11と連通する液供給路13側の端部に最も近い液滴吐出孔14までの距離をLe、振動発生手段12によって発生する高周波振動の周波数をf、液体の音波の速度をcとし、Nは整数であるとき、L及びLeを用いて、N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le)で決定される範囲の周波数fを主成分とした駆動波形の駆動信号を用いて振動発生手段12を振動させる。また、N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le)で決定される範囲の周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段12を振動させる。なお、LとLeの比Le/Lが0.6より大きいことが好ましい。また、振動発生手段12によって発生する周波数は300kHz以上の高周波振動であることが好ましい。よって、液柱共鳴液室11内に液柱共鳴を誘起して液体を液滴吐出孔14から吐出することができる。
【0064】
また、駆動信号は液柱共鳴液室11の長手方向の長さによるいずれかの液柱共鳴振動数を周波数の主成分としたパルス群で振動発生手段12を励振させる。よって、液滴吐出を制御することができる。
【0065】
更に、パルス群は、図10に示すように、予備圧発生パルス部、駆動主パルス部、残留振動打消パルス部の3つのパルス部に分かれて構成されている。予備圧発生パルス部はパルス群の先頭にあって液体を滴化飛翔まで至らない状態に液柱共鳴液室内を励振させるための印加パルスである。また、駆動主パルス部は予備発生パルス部に引き続く印加パルスであり、液体を液滴吐出孔から吐出させる。更に、残留振動打消パルス部は駆動主パルス部の直後の印加パルスであって駆動主パルス部の主の周波数成分に対して逆位相の周波数成分を有する印加パルスである。よって、吐出される液滴の吐出量やタイミングを正確に制御することができる。
【0066】
また、図1に示す液滴吐出ヘッド10は、液柱共鳴液室11と振動発生手段12を有している。液柱共鳴液室11は、液室を構成するプレートの一部に液滴吐出孔14が開孔されている。更に、液室を構成する一部に液柱共鳴液室11内の液体に振動を付与する振動発生手段12が設けられている。そして、液柱共鳴液室11内に液柱共鳴による定在波を形成するようにこの振動発生手段12によって液柱共鳴液室11内に振動を付与し、液体を液滴吐出孔14から吐出させる。よって、所望の共振振動周波数とすることができ、かつ極めて微小な粒液滴を生成できる。
【0067】
更に、液滴吐出孔14は、液柱共鳴液室11内に形成される液柱共鳴による定在波の腹となる領域の液柱共鳴液室11を構成する部材に設けられる。液柱共鳴による定在波の腹となる領域は、圧力が極大となる領域であり、よって安定した液滴吐出が実現できる。
【0068】
更に、インクジェット記録装置に、上記の液滴吐出方法を用い、あるいは上記液滴吐出装置を有することにより、低電圧でインク滴を吐出でき、高密度印字が実現できる。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換、応用が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 液滴吐出装置
11 液柱共鳴液室
12 振動発生手段
13 液供給路
14 液滴吐出孔
15 液滴
100 インクジェット記録装置
104 記録ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特許第3569282号公報
【特許文献2】特許第3234073号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のインクジェット記録装置はインクヘッド内の液室に設けられた圧電素子などを変位させて液室内のインクをインクノズルからインク滴として吐出して記録紙に付着させて印字を行うものであり、安価でかつ小型であることから広く普及している。このインクジェット記録装置の多くは、特許文献1に記載されているようなヘルムホルツ共振振動を用いて液滴吐出を行っている。このヘルムホルツ共振振動を用いているインクジェットヘッドでは、ヘッドを構成する圧力発生室内に圧電体によるヘルムホルツ共振振動を励起させて液滴を吐出孔から吐出している。このヘルムホルツ共振振動の共振周波数は、圧力発生室のインクの圧縮性に起因する流体コンプライアンス、圧力発生室を形成する弾性板や吐出孔プレート等の材料自体による剛性コンプライアンス、そして吐出孔の開口及びインク供給口におけるイナータンスに起因して設定されることが知られている。この圧力発生室のヘルムホルツ共振振動の共振周波数fは、下記の式1で表される。なお、圧力発生室のインクの圧縮性に起因する流体コンプライアンスをCi、また圧力発生室を形成している弾性板、吐出孔プレート等の材料自体による剛性コンプライアンスをCv、吐出孔開口のイナータンスをMn、インク供給口のイナータンスをMSとする。
f=1/(2π)×√{(Mn+MS)/(Mn×MS)(Ci+Cv)}
・・・(式1)
【0003】
また、ヘルムホルツ共振振動を用いて液滴を吐出する方式では上記式1の共振振動の周波数成分を制御することで液滴吐出制御を行っている。つまり、上記式1で決定される共振周波数fが圧電体の駆動周波数の上限となり、その上限となる駆動周波数に基づいて周波数制御を施して液滴吐出動作の制御を行う。
【0004】
更に、上記ヘルムホルツ共振振動を用いて液滴を吐出する方式以外に特許文献2に提案されている液滴吐出方法は、液柱共鳴液室の長手方向に発生する定在波を利用して液柱共鳴液室の長手方向に吐出する吐出孔から液柱共鳴液室内のインクを吐出する液滴吐出方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヘルムホルツ共振振動を用いた上記特許文献1の液滴吐出方法によれば、所望の共振周波数を得るためには、圧力発生室の上記流体コンプライアンスや上記剛性コンプライアンスの精度を上げなければならない。しかし、圧力発生室の加工技術では精度の限界があり、所望の共振周波数とすることは困難であった。また、共振周波数を高く設定することができないため、共振周波数に反比例する液滴径を小さくできないという課題があった。更に、上記特許文献2では、吐出孔が定在波の伝搬方向に設けられているために高周波による微小な液滴の吐出に限界があった。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、液室の流体コンプライアンスや吐出孔プレート等の構成材料の剛性コンプライアンスに関係なく、所望の共振振動周波数とすることができ、かつ極めて微小な粒液滴を生成できる、液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供でき、更に高密度印字が実現できるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出方法において、液柱共鳴液室内の上記液体に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とする液滴吐出方法である。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の液滴吐出方法において、上記定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数の上記液滴吐出孔が形成されていることを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の液滴吐出方法において、上記液滴吐出孔は1つの上記液柱共鳴液室に複数設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記液柱共鳴液室の長手方向の両端には、少なくとも一部に反射壁面が設けられていることを特徴とするものである。
更に、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動として、f=N×c/(4L)(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:液体の音波の速度、N:整数)が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法において、上記振動として、N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le)(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とするものである。
更に、請求項7の発明は、請求項6記載の液滴吐出方法において、Le/L>0.6であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動として、N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le)(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とするものである。
更に、請求項9の発明は、請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動の周波数は300kHz以上の高周波振動であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、上記振動発生手段の駆動信号は上記液柱共鳴液室の長手方向の長さによるいずれかの液柱共鳴振動数を周波数の主成分としたパルス群で上記振動発生手段を励振させることを特徴とするものである。
更に、請求項11の発明は、請求項10記載の液滴吐出方法において、上記パルス群は、予備圧発生パルス部、駆動主パルス部、残留振動打消パルス部の3つのパルス部に分かれて構成され、予備圧発生パルス部は上記パルス群の先頭にあって上記液体を滴化飛翔まで至らない状態に上記液柱共鳴液室内を励振させ、上記駆動主パルス部は上記予備発生パルス部に引き続く印加パルスであり、上記液体を上記液滴吐出孔から吐出させ、上記残留振動打消パルス部は上記駆動主パルス部の直後の印加パルスであって上記駆動主パルス部の主の周波数成分に対して逆位相の周波数成分を有する印加パルスであることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出装置において、一部に上記液滴吐出孔が開孔されている液柱共鳴液室と、該液柱共鳴液室内の液体に振動を付与する振動発生手段とを有し、該振動発生手段によって上記液柱共鳴液室内に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とするものである。
更に、請求項13の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の液滴吐出方法を用い、あるいは請求項12記載の液滴吐出装置を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液柱共鳴液室に発生させる共鳴現象を利用するため、液滴吐出に必要な駆動電圧を飛躍的に低く設定することができ、更に高次の共振周波数が利用できるために、極めて高い周波数での液滴吐出を実現することができる。また、周波数を高く設定することができるために、周波数に反比例して吐出される液滴直径が小さくできる。更に、周波数を変更することは、同じ構成の吐出ヘッドにおいて異なる定在波が複数モード存在するため、複数の共鳴モードを使いわけることによって実現でき、形成される液滴のサイズを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【図2】速度及び圧力変動の定在波の形状を示す図である。
【図3】速度及び圧力変動の定在波の形状を示す図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの液柱共鳴液室内の液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図5】300kHzサイン波の吐出をレーザシャドウグラフィにて撮影した例を示す図である。
【図6】駆動周波数と吐出速度の関係を示す特性図である。
【図7】液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図8】駆動周波数毎の液滴吐出の様子を示す図である。
【図9】駆動電圧波形を示す波形図である。
【図10】予備発生パルス部を含む駆動電圧波形を示す波形図である。
【図11】駆動周波数毎の印加電圧と液滴体積の関係を示す特性図である。
【図12】液滴吐出ヘッドの実施例を示す図である。
【図13】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図14】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図15】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図16】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図17】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図18】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図19】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図20】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図21】液滴吐出ヘッドの他の実施例を示す図である。
【図22】インクジェット記録装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、本発明の液滴吐出装置おける液滴形成のメカニズムについて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。同図の液滴吐出ヘッド10内の液柱共鳴液室11において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、液柱共鳴液室11内の液の音速をcとし、振動発生手段12から媒質である液体に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・(式2)
の関係にある。
【0011】
また、図1の液柱共鳴液室11において固定端側のフレームの端部から液供給路13側の端部までの長さをLとし、更に液供給路13側のフレームの端部の高さh1(=約80[μm])は連通口の高さh2(=約40[μm])の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式3で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式3)
(但し、Nは偶数)
【0012】
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも上記式3が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。
【0013】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式2と上記式3より、
f=N×c/(4L) ・・・(式4)
と導かれる。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0014】
図2にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図3にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図2及び図3のように表記することが一般的である。実線が速度の定在波、点線が圧力の定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図2の(a)からわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、液滴吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図2及び図3のような形態の液柱共鳴による定在波を生じるが、液滴吐出孔数、液滴吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式4より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式3より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]と、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式3より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0015】
なお、図1に示す本実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、液滴吐出孔14の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの液滴吐出孔14の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図2の(b)及び図3の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして液滴吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0016】
上記のように決定された駆動周波数で圧電体に電圧を与えたとき、圧電体が変形し、駆動周期にて圧力の定在波を発生する。このような原理を用いた本実施の形態の液滴吐出ヘッドにおいて、液柱共鳴液室11に液柱共鳴による定在波を形成し、液柱共鳴液室11の一部に配置された液滴吐出孔14から連続的に液滴15が吐出する。
【0017】
なお、液滴吐出孔14は、液柱共鳴による定在波の腹となる領域に配置することが効率の点で好ましい。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である(図4参照)。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。また、液滴吐出孔14は1つの液柱共鳴液室に1つでも構わないが、複数個配置することが、生産性の観点から好ましい。具体的には、2〜100個の間であることが好ましい。100個を超えた場合、100個の液滴吐出孔から所望の液滴を形成させようとすると、圧電体に与える電圧を高く設定する必要が生じ、圧電体の挙動が不安定となる。
【0018】
また、複数の液滴吐出孔14を開孔する場合、液滴吐出孔間のピッチは20μm以上、液柱共鳴液室11の長さ以下であることが好ましい。液滴吐出孔間のピッチが20μm以下の場合、隣あう液滴吐出孔14より放出された液滴同士が、衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなる。
【0019】
更に、液滴吐出孔の開口数、開口配置位置、液滴吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば液滴吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する液滴吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また液滴吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。
【0020】
このように、液柱共鳴液室11の長手方向に発生する液柱共鳴現象とは、液柱共鳴液室11の長手方向の長さLに対して定在波が発生し、特定の周波数において圧力の振動が増幅される現象である。この吐出方式は、吐出量を確保するために十分な大きさを持ち、かつ吐出孔集積化のために必然的に縦長の加圧流路である。
【0021】
なお、液滴吐出ヘッド10における液柱共鳴液室11は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図1に示すように、液柱共鳴液室11の長手方向の両端の壁面間の長さLは、上述した式4、そして後述する式5、式6に基づいて決定される。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液供給路13から連通接続されており、液供給路13には複数の液柱共鳴液室11と連通している。
【0022】
また、液滴吐出ヘッド11における振動発生手段12は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が望ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。圧電体は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段12は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が望ましい。
【0023】
更に、決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い液滴吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式5及び式6で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を液滴吐出孔から吐出することが可能である。
【0024】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式5)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式6)
【0025】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近いトナー吐出孔までの距離Leの比がLe/L>0.6であることが好ましい。
【0026】
図5には、300kHzサイン波の吐出をレーザシャドウグラフィにて撮影した例を示す。非常に径の揃った、かつ速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。また、図6には、255kHz〜350kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の、液滴速度周波数特性を示す。特にピーク位置(300kHz)付近では吐出速度が均一となっている。確かに、液柱共鳴周波数の第二モードである、300kHz近傍において、圧力定在波の腹の位置で均一吐出が実現している。
【0027】
次に、液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図7を用いて説明する。なお、同図において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、同図において、上述したように液供給路13側が開放されているが液供給路13と液柱共鳴液室11とが連通する開口の高さに比して固定端となるフレームの高さが約2倍以上であるため、液柱共鳴液室11はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0028】
図7の(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室11内の圧力波形と速度波形を示している。また、図7の(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った時の液柱共鳴液室11内の圧力波形と速度波形を示している。これらの同図の(a),(b)に示すように、液柱共鳴液室11における液滴吐出孔14が設けられている室内での圧力は極大となっている。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、液供給路13側へ流れる方向となっており、速度は小さい。その後、同図の(c)に示すように、液滴吐出孔14付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行する。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、同図の(a),(b)と液供給路13側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。
【0029】
そして、同図の(d)に示すように、液滴吐出孔14付近の圧力は極小になる。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、液供給路13側から液柱共鳴液室11へ流れる方向に変わる。速度は小さい。このときから液柱共鳴液室11への液体の充填が始まる。その後、同図の(e)に示すように、液滴吐出孔14付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。液柱共鳴液室11内の液体の流れは、同図の(d)と液供給路13側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。この時点で、液体の充填が終了する。そして、再び、同図の(a)に示すように、液柱共鳴液室11の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、液滴吐出孔14から液滴15が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹となる領域に液滴吐出孔14が配置されていることから、当該腹の周期に応じて液滴15が液滴吐出孔14から吐出される。
【0030】
図8の(a)は駆動周波数が115kHzの液滴吐出の様子を示し、図8の(b)は駆動周波数が300kHzの液滴吐出の様子を示す。図8の(a)に示す駆動周波数が115kHzの液滴吐出と比較して、図8の(b)に示す駆動周波数300kHzの液滴吐出は、電圧の増加に対して液滴速度も液滴直径も単調増加の傾向にあることがわかる。
【0031】
図9は本発明による液滴吐出装置の圧力発生部材である圧電体に印加する駆動電圧波形について説明するための図である。圧電体に印加する印加電圧を基準とし、図8に示すような周波数相当波形を与える。上述したように、駆動電圧波形は、液柱共鳴液室内液体の、液柱共鳴振動数を主成分とした連続パルス群で構成される。液柱共鳴振動数は上述のとおり、複数の共鳴モード分存在し、適宜使用することができる。複数パルスで複数の液滴を飛翔させることとなり、複数の液滴で1画素を形成する。このとき、必ずしもパルス数と吐出滴数は同一でない。また、駆動する連続パルス群のパルス数を制御することにより、吐出させる液滴数、すなわち液滴量を可変とすることができる。したがって、記録媒体上での画素径を多値化することができ、階調性を有した記録が容易に可能となる。
【0032】
更に、液滴の吐出量、及びタイミングを正確に制御するためには、以下のような周波数相当波形を与えることが望ましい。1画素を形成するための連続パルス群は、図11に示す予備圧発生パルス部(図中のa期間の波形)、駆動主パルス部(図中のb期間の波形)、残留振動打消パルス部(図中のc期間の波形)の3つの部分に分かれて構成されている。予備圧発生パルス部は連続パルス群の先頭にあって、液を滴化飛翔まで至らない状態に液柱共鳴液室内部を励振させ、ノズル近傍の液圧の上昇を行う。すなわち、液ダレや気泡の吸入を抑制する。駆動主パルス部は、予備発生パルス部に引き続き、印加パルスに対応して、液滴を飛翔させる。液滴量の制御はこの部分で実行される。なお、パルス群は、液柱共鳴液室内の液の液共鳴振動数を主成分としたものとなる。残留振動打消パルス部は駆動主パルス部の直後で、駆動主パルス部の主の周波数成分に対し、逆位相の周波数成分を印加することにより、液柱共鳴液室内の液圧を急速に抑制させる。これにより、次の連続パルス群が印加される時には、ノズル近傍での液圧やノズル内の液のメニスカス面を、初期状態レベルまで復帰させることができる。すなわち、駆動パルス群の応答周波数を上げることができる。
【0033】
一連の駆動電圧波形は、図9に示すような正弦波状に限らず、矩形波やパルス波でも良い。その周波数成分が上述した液柱共鳴液室内の液の液共鳴振動数を主成分としたものであれば良い。現実的には、圧力発生部材である圧電素子自体の容量成分に応じて波形自体が時定数をもって立上、立下で遅れを生じるので、矩形波で十分実用性を得られる。また、予備発生パルス部は、図10に示すように、駆動主パルス部と同じ周波数成分で電圧レベルのみ低く設定したり、図9に示すように、同じ電圧レベルで周波数成分のみ異ならせて設定したりすることが可能である。残留振動数打消パルス部に対しても同様である。
【0034】
このように、駆動主パルス部に用いる液共鳴周波数は300kHz、およそ3μs以下であるので、1画素を1〜10滴程度で構成し、実質的な駆動周波数を30KHz程度に設定して多階調を得るのが良い。
【0035】
以上説明したとおり、本実施の形態による液滴吐出ヘッドは、圧力発生部材の変位量を直接液室内の容積変位に変換して液滴を吐出させるものではなく、液体の流体液共鳴を利用するものであるので、駆動エネルギーの著しい低減化が図れる。
【0036】
以下、実施例を挙げて具体的に説明する。
<実施例1>
実施例1は図1に示す液滴吐出ヘッドを用いて振動発生手段の圧電体に図4に示す波形を与えて液滴を形成している。なお、300kHz相当のサイン波形により形成される主パルス部波形を1回とした。また、ノズルはニッケルの電鋳を用いて開口径が8ミクロンであった。液柱共鳴液室及び液供給流路はステンレス製の流路板を貼り合せて形成した。更に、ニッケル薄膜を弾性板として貼り合せ、液柱共鳴液室の上部に圧電体を配置し、これら部材は、ステンレスからなるフレームにより図1のように固定されている。使用した液体は、酢酸エチル100部にシアン顔料を0.5重量部添加し、粘度調整のためにポリエステル樹脂を溶解したものを処方した。圧電体に与えた電圧値に対する、一滴の液滴量を示す。液滴量の測定は、本装置の直下に設けた受け皿に張られたシリコーン液中に上記波形を30kHzで吐出させ、100万滴吐出したところで駆動を停止し、シリコーン液の重量変化を測定し、平均的な重量を測定した。更に、高倍率の顕微鏡によって飛翔液滴を観測し、液滴直径を測定した結果、同じ条件において、重量測定法と同じ液滴量を得た。その結果、一滴の滴量は、パルスの電圧が8Vにおいて0.7plであった。
【0037】
<実施例2>
実施例2では、実施例1の主パルス部波形を2回に変更する以外は同じ構成で、同一の液滴量測定を行った。その結果、一滴の滴量はパルスの電圧が8Vにおいて1.2plであった。
【0038】
<実施例3>
実施例3では、実施例1の主パルス部波形を3回に変更する以外は同じ構成で、同一の液滴量測定を行った。その結果、1回の駆動において、液滴は2滴形成されたが、合計した滴量はパルスの電圧が8Vにおいて1.8plであった。このように、主パルス部のパルス数を変更することによって形成する液滴の量を変調することが可能である。
【0039】
<実施例4>
実施例4では、実施例1の主パルスを、610kHz相当波形に変更し、更にパルス数を2回に変更した。それ以外は同じ構成で同一の液滴量測定を行った。その結果、一滴の滴量は、パルスの電圧が8Vの条件において、0.5plであった。
【0040】
また、図12は液滴体積の電圧依存性を示す特性図である。同図には実施例1の条件で電圧を変更した結果を示す。このように、ヘルムホルツ周波数を基本とする例に比較して、実施例1では小さな液滴を低電圧で駆動することが可能であることがわかる。
【0041】
<実施例5>
図12は液滴吐出ヘッドの実施例を示す図である。同図の(a)は実施例5における同図に示すように、実施例5は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が2個開口するとともに液柱共鳴液室11の液供給路側端に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。両端ともにほぼ固定端のN=2の共鳴モードの定在波とみなすことができる。なお、駆動周波数は328[kHz]とした。この実施例5は、共鳴ピーク周波数での駆動の結果を示している。
【0042】
<実施例6>
図13は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例6は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が10個開口するとともに液柱共鳴液室11の液供給路側に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。なお、駆動周波数は377[kHz]とした。よって、図12の実施例5と比して固定端側が緩い拘束の固定端となっている。
【0043】
<実施例7>
図14は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例7は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が24個開口するとともに液柱共鳴液室11の液共通供給路側に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。なお、駆動周波数は417[kHz]とした。よって、図12の実施例5と比して、液柱共鳴液室11内の固定端とみなしていた先端側は開放端に近いN=3の共鳴モードの定在波となっている。
【0044】
<実施例8>
図15は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例8は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が4個開口するとともに液柱共鳴液室11の液供給路側に反射壁を設けた場合の定在波の一例である。なお、駆動周波数は344[kHz]とした。よって、図12の実施例5と比して固定端側が液滴吐出孔の開口の影響でやや緩い拘束状態となるが、N=2の共鳴モードの定在波との固定端となっている。
【0045】
<実施例9>
図16は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例9は、局所的に液滴吐出孔の開口数を増やした場合で、液滴吐出孔14が液供給路側に近づき、他端が閉口端であるため、これを両端としたN=1の共鳴モードの定在波が発生し、液供給路側寄りに配置された液滴吐出孔がある領域の圧力分布に比して固定端側寄りに配置された液滴吐出孔がある領域の圧力分布は平坦な分布状態となっている。なお、駆動周波数は160[kHz]とした。
【0046】
<実施例10>
図17は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例10は、液柱共鳴液室11内の固定端側に液滴吐出孔14が36個開口としたことで、液柱共鳴液室長のおおよそ3分の1の範囲まで液滴吐出孔が設けられたことになる。この実施例6では、N=2の共鳴モードの定在波となるが、固定端側が緩い拘束の固定端となっている。なお、駆動周波数は468[kHz]とした。
【0047】
<実施例11>
図18は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例11は、実施例10と同じ形態の液供給流路及び液滴吐出孔の開口パターンであるが、周波数を少し低くした場合の例である。なお、駆動周波数は395[kHz]とした。この場合、共鳴定在波のパターンは同図に示すとおりであり、緩く拘束された、液滴吐出孔の密集した領域で、圧力分布が更に均一化する。実施例6に比較して、D4/DNが小さくなる、即ち粒子径分布がより均一化した。このように、同じ形態であっても、共鳴が発生している領域内において、駆動周波数を適宜決定することで粒子径分布を最適化することができる。
【0048】
<実施例12>
図19は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例12は、固定端側と液供給路側に液滴吐出孔を4個づつ配置した例である。実施例5と同様に、N=2の共鳴モードの定在波となる。このような液滴吐出孔の配置でも、全ての液滴吐出孔から均等に吐出が可能であった。なお、駆動周波数は344[kHz]とした。
【0049】
<実施例13>
図20は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例13は、液供給路の断面積が液柱共鳴液室の断面積より大きい場合、液供給路側は開放端となる。この場合は、N=1の共鳴モードの定在波となる。なお、駆動周波数は261[kHz]とした。
【0050】
<実施例14>
図21は液滴吐出ヘッドの別の実施例を示す図である。同図に示す実施例14は、実施例13と同じ形態であるが、駆動周波数を変更した例である。駆動周波数は、516[kHz]とした。実施例10の場合は、N=4の共鳴モードの定在波となる。
【0051】
次に、本発明の液滴吐出装置としてのインクジェット記録装置の機構部について、図22を参照して以下に説明する。
【0052】
図22に示すインクジェット記録装置100において、左右の側板(図示せず)に横架したガイド部材であるガイドロッド101とステー102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。このキャリッジ103には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための上述した本発明の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド104を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0053】
液柱共鳴による記録ヘッド104は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッドの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッドの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0054】
また、キャリッジ103には、記録ヘッド104のノズル列に対応して各色のインクを供給するための液体収容容器としてのヘッドタンク105を搭載している。このヘッドタンク105には各色のインク供給チューブ(図示せず)を介して、カートリッジ装填部(図示せず)に装着された各色のインクカートリッジ(図示せず)から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填にはインクカートリッジ内のインクを送液するための供給ポンプユニット(図示せず)が設けられている。
【0055】
一方、給紙トレイ106の用紙積載部(圧板)107上に積載した用紙108を給紙するための給紙部として、用紙積載部107から用紙108を1枚ずつ分離給送する半月コロの給紙コロ109、及び給紙コロ109に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド110を備え、この分離パッド110は給紙コロ109側に付勢されている。
【0056】
そして、この給紙部から給紙された用紙108を記録ヘッド104の下方側に送り込むために、用紙108を案内するガイド部材111と、カウンタローラ112と、搬送ガイド部材113と、先端加圧コロ114を有する押さえ部材115とを備えるとともに、給送された用紙108を静電吸着して記録ヘッド104に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト116を備えている。この搬送ベルト116は、無端状ベルトであり、搬送ローラ117とテンションローラ118との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト116の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ119を備えている。この帯電ローラ119は、搬送ベルト116の表層に接触し、搬送ベルト116の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト119は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ117が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0057】
更に、記録ヘッド104で記録された用紙108を排紙するための排紙部として、搬送ベルト116から用紙118を分離するための分離爪120と、排紙ローラ121及び排紙コロ122とを備え、排紙ローラ121の下方に排紙トレイ123を備えている。
【0058】
また、装置本体の背面部には両面ユニット124が着脱自在に装着されている。この両面ユニット124は搬送ベルト116の逆方向回転で戻される用紙108を取り込んで反転させて再度カウンタローラ112と搬送ベルト116との間に給紙する。また、この両面ユニット124の上面は手差しトレイ125としている。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、図1に示す液柱共鳴液室11内の液体に、振動発生手段12によって振動が付与されると、液柱共鳴液室11内に液柱共鳴による定在波が発生する。この液柱共鳴による定在波を利用して液柱共鳴液室内に圧力分布を形成する。形成された圧力分布の変化によって液体が液滴吐出孔から吐出される。よって、従来の液滴吐出方法において液室構造に関係なく、液柱共鳴が励起する共振振動周波数を所望の周波数に設定することができ、共振振動周波数を高く設定し周波数に反比例する液滴の直径を小さくでき極めて微小な粒液滴を吐出できる。
【0060】
また、液滴吐出孔14は、液柱共鳴液室11内に形成される液柱共鳴による定在波の腹となる領域の液柱共鳴液室11を構成する部材に設けられる。
【0061】
更に、液滴吐出孔14は1つの液柱共鳴液室11に複数設けられている。よって、高密度に液滴を吐出できる。
【0062】
また、液柱共鳴液室11の長手方向の両端には、図1に示すように、少なくとも一部に反射壁面が設けられている。よって、少なくとも片側固定端となる液柱共鳴液室とし、当該液柱共鳴液室内で形成される液柱共鳴による定在波が安定した波形となり、安定した液滴吐出が期待できる。
【0063】
更に、液柱共鳴液室11の長手方向の長さをL、液体が液柱共鳴液室11に供給するための、液柱共鳴液室11と連通する液供給路13側の端部に最も近い液滴吐出孔14までの距離をLe、振動発生手段12によって発生する高周波振動の周波数をf、液体の音波の速度をcとし、Nは整数であるとき、L及びLeを用いて、N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le)で決定される範囲の周波数fを主成分とした駆動波形の駆動信号を用いて振動発生手段12を振動させる。また、N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le)で決定される範囲の周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段12を振動させる。なお、LとLeの比Le/Lが0.6より大きいことが好ましい。また、振動発生手段12によって発生する周波数は300kHz以上の高周波振動であることが好ましい。よって、液柱共鳴液室11内に液柱共鳴を誘起して液体を液滴吐出孔14から吐出することができる。
【0064】
また、駆動信号は液柱共鳴液室11の長手方向の長さによるいずれかの液柱共鳴振動数を周波数の主成分としたパルス群で振動発生手段12を励振させる。よって、液滴吐出を制御することができる。
【0065】
更に、パルス群は、図10に示すように、予備圧発生パルス部、駆動主パルス部、残留振動打消パルス部の3つのパルス部に分かれて構成されている。予備圧発生パルス部はパルス群の先頭にあって液体を滴化飛翔まで至らない状態に液柱共鳴液室内を励振させるための印加パルスである。また、駆動主パルス部は予備発生パルス部に引き続く印加パルスであり、液体を液滴吐出孔から吐出させる。更に、残留振動打消パルス部は駆動主パルス部の直後の印加パルスであって駆動主パルス部の主の周波数成分に対して逆位相の周波数成分を有する印加パルスである。よって、吐出される液滴の吐出量やタイミングを正確に制御することができる。
【0066】
また、図1に示す液滴吐出ヘッド10は、液柱共鳴液室11と振動発生手段12を有している。液柱共鳴液室11は、液室を構成するプレートの一部に液滴吐出孔14が開孔されている。更に、液室を構成する一部に液柱共鳴液室11内の液体に振動を付与する振動発生手段12が設けられている。そして、液柱共鳴液室11内に液柱共鳴による定在波を形成するようにこの振動発生手段12によって液柱共鳴液室11内に振動を付与し、液体を液滴吐出孔14から吐出させる。よって、所望の共振振動周波数とすることができ、かつ極めて微小な粒液滴を生成できる。
【0067】
更に、液滴吐出孔14は、液柱共鳴液室11内に形成される液柱共鳴による定在波の腹となる領域の液柱共鳴液室11を構成する部材に設けられる。液柱共鳴による定在波の腹となる領域は、圧力が極大となる領域であり、よって安定した液滴吐出が実現できる。
【0068】
更に、インクジェット記録装置に、上記の液滴吐出方法を用い、あるいは上記液滴吐出装置を有することにより、低電圧でインク滴を吐出でき、高密度印字が実現できる。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換、応用が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 液滴吐出装置
11 液柱共鳴液室
12 振動発生手段
13 液供給路
14 液滴吐出孔
15 液滴
100 インクジェット記録装置
104 記録ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特許第3569282号公報
【特許文献2】特許第3234073号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出方法において、
液柱共鳴液室内の上記液体に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出方法において、
上記定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数の上記液滴吐出孔が形成されていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液滴吐出方法において、
上記液滴吐出孔は1つの上記液柱共鳴液室に複数設けられていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記液柱共鳴液室の長手方向の両端には、少なくとも一部に反射壁面が設けられていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動として、
f=N×c/(4L)
(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:液体の音波の速度、N:整数)
が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法において、
上記振動として、
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le)
(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)
が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項7】
請求項6記載の液滴吐出方法において、
Le/L>0.6であることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動として、
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le)
(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)
が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項9】
請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動の周波数は300kHz以上の高周波振動であることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項10】
請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動発生手段の駆動信号は上記液柱共鳴液室の長手方向の長さによるいずれかの液柱共鳴振動数を周波数の主成分としたパルス群で上記振動発生手段を励振させることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項11】
請求項10記載の液滴吐出方法において、
上記パルス群は、予備圧発生パルス部、駆動主パルス部、残留振動打消パルス部の3つのパルス部に分かれて構成され、予備圧発生パルス部は上記パルス群の先頭にあって上記液体を滴化飛翔まで至らない状態に上記液柱共鳴液室内を励振させ、上記駆動主パルス部は上記予備発生パルス部に引き続く印加パルスであり、上記液体を上記液滴吐出孔から吐出させ、上記残留振動打消パルス部は上記駆動主パルス部の直後の印加パルスであって上記駆動主パルス部の主の周波数成分に対して逆位相の周波数成分を有する印加パルスであることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項12】
少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出装置において、
一部に上記液滴吐出孔が開孔されている液柱共鳴液室と、該液柱共鳴液室内の液体に振動を付与する振動発生手段とを有し、
該振動発生手段によって上記液柱共鳴液室内に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の液滴吐出方法を用い、あるいは請求項12記載の液滴吐出装置を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項1】
少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出方法において、
液柱共鳴液室内の上記液体に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出方法において、
上記定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数の上記液滴吐出孔が形成されていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液滴吐出方法において、
上記液滴吐出孔は1つの上記液柱共鳴液室に複数設けられていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記液柱共鳴液室の長手方向の両端には、少なくとも一部に反射壁面が設けられていることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動として、
f=N×c/(4L)
(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:液体の音波の速度、N:整数)
が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法において、
上記振動として、
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le)
(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)
が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項7】
請求項6記載の液滴吐出方法において、
Le/L>0.6であることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動として、
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le)
(L:上記液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:上記液供給路側の端部に最も近い上記吐出孔までの距離、c:液体の音波の速度、N:整数)
が成立する周波数fの振動を付与することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項9】
請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動の周波数は300kHz以上の高周波振動であることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項10】
請求項5、6、8のいずれか1項に記載の液滴吐出方法において、
上記振動発生手段の駆動信号は上記液柱共鳴液室の長手方向の長さによるいずれかの液柱共鳴振動数を周波数の主成分としたパルス群で上記振動発生手段を励振させることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項11】
請求項10記載の液滴吐出方法において、
上記パルス群は、予備圧発生パルス部、駆動主パルス部、残留振動打消パルス部の3つのパルス部に分かれて構成され、予備圧発生パルス部は上記パルス群の先頭にあって上記液体を滴化飛翔まで至らない状態に上記液柱共鳴液室内を励振させ、上記駆動主パルス部は上記予備発生パルス部に引き続く印加パルスであり、上記液体を上記液滴吐出孔から吐出させ、上記残留振動打消パルス部は上記駆動主パルス部の直後の印加パルスであって上記駆動主パルス部の主の周波数成分に対して逆位相の周波数成分を有する印加パルスであることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項12】
少なくとも1つの液滴吐出孔から液体を吐出して液滴化する液滴吐出装置において、
一部に上記液滴吐出孔が開孔されている液柱共鳴液室と、該液柱共鳴液室内の液体に振動を付与する振動発生手段とを有し、
該振動発生手段によって上記液柱共鳴液室内に振動を付与して上記液柱共鳴液室内に液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された上記液滴吐出孔から上記液体を吐出することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の液滴吐出方法を用い、あるいは請求項12記載の液滴吐出装置を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図5】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図5】
【図8】
【公開番号】特開2011−194675(P2011−194675A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63089(P2010−63089)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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