説明

液状凍結防止剤組成物

【課題】 寒冷地、或いは冬期の雪氷道路面や空港滑走路などに広く利用される液状凍結防止剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の液状凍結防止剤組成物は、グリセリンを基剤とし、その水溶液に、非イオン界面活性剤又は陽イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤から選ばれる1種或いは2種以上の表面張力調整剤を配合し、浸透性及び拡散性を高めたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地、或いは冬期の雪氷道路面などに広く利用される液状凍結防止剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より凍結防止剤としては、種々の物質が用いられてきたが、塩化物は塩害問題が伴うことから、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩系の凍結防止剤が主流となった。
また、この凍結防止剤は、粒状のものと液状のものが知られ、粒状では遅効性で、均一な散布も困難となるため、即効性で、散布も容易な液状のものが好適に利用されるようになってきた。
この従来の液状凍結防止剤としては、酢酸カリウム水溶液又は蟻酸カリウム水溶液又は酢酸ナトリウム水溶液等が用いられてきており、一般的には冬期の雪氷道路面などの凍結防止に使用されている。
【0003】
また、グリセリン等の不凍液を用いることも特許文献1などに開示されている。より詳しくは、グリセリン等の水溶性不凍液と、酢酸カリウム等の酢酸塩と、防錆剤と、水とを特定の割合で混合してなる道路凍結防止剤が開示されている。
さらに、適度な粘調性を付与するために、グリセリンを添加することも特許文献2などに開示されている。
【特許文献1】特開平9−48961号公報
【特許文献2】特開2005−23167公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の液状凍結防止剤は、水と同程度の表面張力を有し、凍結路面への浸透性及び拡散性に乏しいため、液状凍結防止剤が凍結路面に充分に広がらず、しかも電気伝導性を有しているため、電気系統が関連する構造物の凍結防止には使用されていなかった。更に、凍結路面に散布された酢酸系凍結防止剤は、幾分酢酸臭がするため、不快に感じる人もいた。この点は、グリセリンと酢酸塩とを組み合わせた特許文献1でも同様である。
また、前記特許文献に開示される方法も含めて、従来の液状凍結防止剤は、凍結路面への広がりが十分でないという点で改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、臭いがなく、表面張力を水以下に低下させ、凍結路面への浸透性及び拡散性を高めた液状凍結防止剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、グリセリンを基剤とし、その水溶液に、非イオン界面活性剤又は陽イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤から選ばれる1種或いは2種以上の表面張力調整剤を配合し、浸透性及び拡散性を高めたことを特徴とする液状凍結防止剤組成物に関するものである。
【0007】
また、本発明は、グリセリン20〜88重量%、水80〜12重量%からなる水溶液に、表面張力調整剤を0.01〜1.0重量%添加してなる前記液状凍結防止剤組成物をも提案するものである。
さらに、本発明の液状凍結防止剤組成物には、防腐効果が必要な場合には、防腐剤を1種或いは2種以上を含有することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状凍結防止剤組成物は、従来の液状凍結防止剤組成物に比べ、凍結路面への浸透性及び拡散性が高いため、凍結防止の効果を効率よく、広い面積範囲にて発揮することができ、使用する量も少量でよいため、経済的効果も高い。そして、寒冷地、或いは冬期の雪氷道路面などの凍結防止に広く利用することができる。
また、電気伝導性を嫌う構造物への使用も、水道水と同等レベルの低電気伝導性を有するため有効である。
更に、本発明において基剤として用いるグリセリンは、従来の酢酸系凍結防止剤のように臭いも無く、医薬品、化粧品、食品等に使用される安全性の高い物質であるため、例えばゴルフ場のグリーン、フェアウエー及びカート道路等の凍結防止など、幅広い用途にも有効に使用することができ、或いは凍結路面のみならず農薬等の凍結防止を必要とする用途にも利用できる。
【0009】
また、グリセリン20〜88重量%、水80〜12重量%からなる水溶液に、表面張力調整剤を0.01〜1.0重量%添加してなる液状凍結防止剤組成物は、より安定に表面張力を低下させ、浸透性及び拡散性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に使用するグリセリンは、前述の従来の技術にても説明したように既に水溶性不凍液として使用されていたという実績もあり、本発明では基剤として用いられる。このグリセリンは、水を混合しない場合には粘調な液体であるため、好ましくは88重量%以下を水(12重量%以上)に混合して水溶液をして用いる。また、水が多すぎる(80重量%以上)場合には、液状凍結防止剤の凝固点が−5℃と高くなり、不凍効果が弱くなってしまい、所期の凍結防止効果を得ることができなくなる。したがって、グリセリンは20〜88重量%、水は80〜12重量%で混合することが好ましい。
このグリセリン水溶液は、水に比べて表面張力は低いが、凍結路面への浸透性及び拡散性を向上する効果は十分に高くはない。
【0011】
表面張力調整剤は、非イオン界面活性剤又は陽イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤から選ばれる1種或いは2種以上であって、前記グリセリン水溶液の表面張力を低下させることができ、凍結路面への浸透性及び拡散性を大きく向上することができる。この表面張力調整剤は、前記グリセリン水溶液に0.01重量%未満で含有させても表面張力が低下せず、1.0重量%以上を含有させてもそれ以上の表面張力の低下効果は得られず、むしろコスト上昇になるため、経済的には無駄となる。したがって、表面張力調整剤は、前記グリセリン水溶液に0.01〜1.0重量%添加することが好ましい。
なお、電気伝導性を嫌う場所には、非イオン系界面活性剤を使用することが好ましい。
【実施例】
【0012】
次に、実施例及び比較例を示す。
【0013】
[実施例1]
グリセリン65部を水35部に溶解させ、グリセリン水溶液を作製し、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル0.01重量%、0.1重量%、1.0重量%添加し、実施例1の液状凍結防止剤組成物とした。
【0014】
[実施例2]
グリセリン65部を水35部に溶解させ、グリセリン水溶液を作製し、陰イオン界面活性剤としてジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.01量%、0.1重量%、1.0重量%添加し、実施例2の液状凍結防止剤組成物とした。
【0015】
[実施例3]
グリセリン65部を水35部に溶解させ、グリセリン水溶液を作製し、陽イオン界面活性剤としてオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド0.01量%、0.1重量%、1.0重量%添加し、実施例3の液状凍結防止剤組成物とした。
【0016】
[実施例4]
グリセリン65部を水35部に溶解させ、グリセリン水溶液を作製し、両性界面活性剤としてジメチルアルキルベタイン0.01量%、0.1重量%、1.0重量%添加し、実施例4の液状凍結防止剤組成物とした。
【0017】
[実施例5]
グリセリン65部を水35部に溶解させ、グリセリン水溶液を作製し、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと陰イオン界面活性剤としてジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムの混合比を1:1として0.01重量%、0.1重量%、1.0重量%添加し、実施例5の液状凍結防止剤組成物とした。
【0018】
[比較例1]
グリセリン65部を水35部に溶解させ、グリセリン水溶液を作製し、比較例1の液状凍結防止剤組成物とした。
【0019】
[比較例2]
水のみを、比較例2の液状凍結防止剤組成物とした。
【0020】
[表面張力試験]
前記実施例1〜5及び比較例1,2の各液状凍結防止剤組成物について、試料温度を20℃としてウイルヘルミー法(プレート法)で表面張力試験を実施した。
その測定結果を表1に示した。
【表1】

尚、表中の界面活性剤量は、実施例1では非イオン界面活性剤の、実施例2では陰イオン界面活性剤の、実施例3では陽イオン界面活性剤の、実施例4では両性界面活性剤の、実施例5では非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤の混合物の量を示す。
【0021】
[拡散試験]
前記実施例1〜5及び比較例1,2の各液状凍結防止剤組成物について、試料温度を5℃として−5℃で凍結させた氷板にスポイトで3滴(約0.15g)を5cmの高さから落下させ、1分後に円形に広がった幅を測定した。
その測定結果を表2に示した。
【表2】

尚、表中の界面活性剤量は、実施例1では非イオン界面活性剤の、実施例2では陰イオン界面活性剤の、実施例3では陽イオン界面活性剤の、実施例4では両性界面活性剤の、実施例5では非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤の混合物の量を示す。
【0022】
以上本発明の実施例を示したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにも実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンを基剤とし、その水溶液に、非イオン界面活性剤又は陽イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤から選ばれる1種或いは2種以上の表面張力調整剤を配合し、浸透性及び拡散性を高めたことを特徴とする液状凍結防止剤組成物。
【請求項2】
グリセリン20〜88重量%、水80〜12重量%からなる水溶液に、表面張力調整剤を0.01〜1.0重量%添加してなる請求項1に記載の液状凍結防止剤組成物。