説明

液状有機塩混合物及びその製造方法

【課題】 室温において液状を示す有機塩混合物を工業的に安価で簡便に製造できる方法を提供すること。
【解決手段】 式(1):
(RHN)・HSO (1)
[式中、R、R及びRはアルキル基、シクロアルキル基又は式(2):
R’−[O−(CH−CHR”−)r]− (2)
で表される官能基等を示し、それらは互いに同じであっても異なっていても良く、置換基を有していてもよい。また、R、R及びRの何れか二つ乃至は三つが互いに結合し窒素原子と共に環を形成していてもよい。]で表される硫酸水素塩、式(3):
(RHN・SO2− (3)
(式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表される硫酸塩及び有機酸塩化合物とを含有してなる有機塩混合物であって、0℃〜100℃の温度範囲において液状であることを特徴とする有機塩混合物及びその製造法。
【図面】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0℃〜100℃の温度範囲において液状を示す有機塩混合物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状を示す有機塩の代表的なものとして第四級アンモニウム塩が知られている。液状を示す有機塩は、揮発性が極めて小さく、蒸気圧が極めて低いこと、不燃または難燃であること、イオン伝導度を有すること等の特性を有することから、電気化学デバイス用の電解質としての応用が期待されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。また一方では、導電性付与剤としての応用も知られている(例えば、特許文献2参照)。これらの用途には当該有機塩を単独で用いるのみならず、二種類以上を混合し、液状を示す有機塩混合物として用いることも可能である。
【特許文献1】特開平11−297355号公報
【特許文献2】特開2003−192845号公報
【非特許文献1】J.Phys.Chem.B,20,4164(1999)
【0003】
液状を示す有機塩の製造は、通常ピリジンやメチルピロリジン等の第三級アミンとアルキルハライドを反応させて第四級アンモニウム=ハライドを製造した後、ハライドアニオンをビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデートアニオン等の対応するアニオンにアニオン交換してなる。また、混合物の製造は、通常上記で得られた液状を示す有機塩を二種類以上混合してなる。しかしながら、この有機塩の製造方法は、1)第三級アミンとアルキルハライドとの反応は通常加熱処理が必要、2)アニオン交換に、比較的高価なビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸又はそのアルカリ金属塩等を用いる、等の問題があり、工業的に安価で簡便に製造できる、液状を示す有機塩混合物の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来製法に比べて工業的に安価で簡便に製造できる、0℃〜100℃の温度範囲において液状を示す有機塩混合物及びその製造法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行ったところ、第三級アミンと硫酸とを加熱処理を必要とすることなく室温で混合するのみで生成する第三級アミンの硫酸水素塩および硫酸塩と、有機酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩(以下、有機酸塩化合物という)とからなる三種類の有機塩の混合物が0℃〜100℃の温度範囲において液状を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、式(1):
【0007】
(RHN)・HSO (1)
[式中、R、R及びRはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は式(2):
【0008】
R’−[O−(CH−CHR”−)r]− (2)
(R’は低級アルキル基を、R”は水素原子またはメチル基を、rは0〜4、pは1〜10の整数を示し、pが2の場合に二つのrは同一であっても異なっていてもよい。)で表される官能基[以下、官能基(2)という]を示し、それらは互いに同じであっても異なっていても良く、置換基を有していてもよい。また、R、R及びRの何れか二つ乃至は三つが互いに結合し窒素原子と共に環を形成していてもよい。]で表される硫酸水素塩[以下、硫酸水素塩(1)という]、式(3):
【0009】
(RHN・SO2− (3)
(式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表される硫酸塩[以下、硫酸塩(3)という]及び有機酸塩化合物とを含有してなる有機塩混合物であって、0℃〜100℃の温度範囲において液状であることを特徴とする有機塩混合物及びその製造法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、0℃〜100℃の温度範囲において液状を示す新規な有機塩混合物を提供でき、当該有機塩混合物は従来製法に比べて工業的に安価で簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
式(1)及び式(3)中、R、R及びRで表されるアルキル基としては炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基又はn−ドデシル基等が例示できる。シクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。アルケニル基としては、例えば直鎖又は分枝鎖状の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはエテニル基、プロペニル基、ブテニル基又はペンテニル基等を例示できる。アルキニル基としては、例えば直鎖又は分枝鎖状の炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、プロピニル基、ブチニル基又はペンチニル基等を例示できる。
【0012】
官能基(2)中、R’で表される低級アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基又はt−ブチル基等が例示できる。官能基(2)の具体例としては、メトキシメチル基、メトキシエチル、メトキシプロピル基、メトキシ(2−メチルエチル)基、エトキシメチル基、エトキシエチル、エトキシプロピル基、エトキシ(2−メチルエチル)基、メトシキエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル又はプロポキシエトキシエチル基等が例示できる。
【0013】
、R及びRが有することのできる置換基としては、例えば水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、ビニル基又はアリル基等が挙げられる。また、R、R及びRはこれらの何れか二つ乃至は三つが互いに結合し窒素原子と共に環を形成していてもよく、形成される環の具体例としては、ピロリジン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環又はピラゾール環等の5員環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピペラジン環又はピリジン環等の6員環が挙げられる。
【0014】
硫酸水素塩(1)の具体例としては、トリメチルアミン硫酸水素塩、トリエチルアミン硫酸水素塩、トリプロピルアミン硫酸水素塩、トリブチルアミン硫酸水素塩、トリヘキシルアミン硫酸水素塩、トリオクチルアミン硫酸水素塩、トリデシルアミン硫酸水素塩、トリドデシルアミン硫酸水素塩、1−メチルピロリジン硫酸水素塩、1−エチルピロリジン硫酸水素塩、1−ブチルピロリジン硫酸水素塩、1−メチルピペリジン硫酸水素塩、1−エチルピペリジン硫酸水素塩、1−ブチルピペリジン硫酸水素塩、1−メチルモルフォリン硫酸水素塩、1−エチルモルフォリン硫酸水素塩、1−ブチルモルフォリン硫酸水素塩、1−メチルピペラジン硫酸水素塩、1−エチルピペラジン硫酸水素塩、1−ブチルピペラジン硫酸水素塩、1,4−ジメチルピペラジン硫酸水素塩、1−エチル−4−メチルピペラジン硫酸水素塩、1−ブチル−4−メチルピペラジン硫酸水素塩、ピリジン硫酸水素塩、2−メチルピリジン硫酸水素塩、3−メチルピリジン硫酸水素塩、4−メチルピリジン硫酸水素塩、1−メチルイミダゾール硫酸水素塩、1−エチルイミダゾール硫酸水素塩、1−ブチルイミダゾール硫酸水素塩又は1、2−ジメチルイミダゾール硫酸水素塩等が挙げられる。
【0015】
硫酸塩(3)の具体例としては、ジ(トリメチルアミン)硫酸塩、ジ(トリエチルアミン)硫酸塩、ジ(トリプロピルアミン)硫酸塩、ジ(トリブチルアミン)硫酸塩、ジ(トリヘキシルアミン)硫酸塩、ジ(トリオクチルアミン)硫酸塩、ジ(トリデシルアミン)硫酸塩、ジ(トリドデシルアミン)硫酸塩、ジ(1−メチルピロリジン)硫酸塩、ジ(1−エチルピロリジン)硫酸塩、ジ(1−ブチルピロリジン)硫酸塩、ジ(1−メチルピペリジン)硫酸塩、ジ(1−エチルピペリジン)硫酸塩、ジ(1−ブチルピペリジン)硫酸塩、ジ(1−メチルモルフォリン)硫酸塩、ジ(1−エチルモルフォリン)硫酸塩、ジ(1−ブチルモルフォリン)硫酸塩、ジ(1−メチルピペラジン)硫酸塩、ジ(1−エチルピペラジン)硫酸塩、ジ(1−ブチルピペラジン)硫酸塩、ジ(1,4−ジメチルピペラジン)硫酸塩、ジ(1−エチル−4−メチルピペラジン)硫酸塩、ジ(1−ブチル−4−メチルピペラジン)硫酸塩、ジ(ピリジン)硫酸塩、ジ(2−メチルピリジン)硫酸塩、ジ(3−メチルピリジン)硫酸塩、ジ(4−メチルピリジン)硫酸塩、ジ(1−メチルイミダゾール)硫酸塩、ジ(1−エチルイミダゾール)硫酸塩、ジ(1−ブチルイミダゾール)硫酸塩又はジ(1、2−ジメチルイミダゾール)硫酸塩等が挙げられる。
【0016】
有機酸塩化合物としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキシル酸、2−エチルヘキシル酸等の一塩基酸又はマレイン酸、蓚酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、ピロメリット酸、エチレンジアミン四酢酸等の多塩基酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸リチウム、ブタン酸ナトリウム、ブタン酸カリウム、n−オクチル酸リチウム、n−オクチル酸ナトリウム、n−オクチル酸カリウム、2−エチルヘキシル酸リチウム、2−エチルヘキシル酸ナトリウム、2−エチルヘキシル酸カリウム、n−ドデシル酸リチウム、n−ドデシル酸ナトリウム、n−ドデシル酸カリウム等が例示できる。
【0017】
本発明の有機塩混合物における硫酸水素塩(1)、硫酸塩(3)及び有機酸塩化合物の混合割合については、有機酸塩化合物が、硫酸水素塩(1)と硫酸塩(3)との合計量1重量部に対して、通常0.01重量部〜1重量部、好ましくは0.1重量部〜0.8重量部であり、硫酸水素塩(1)と硫酸塩(3)との割合は硫酸水素塩(1)及び硫酸塩(3)がそれぞれ通常10重量%〜98重量%及び90重量%〜2重量%、好ましくは25重量%〜95重量%及び75重量%〜5重量%である。
【0018】
本発明の有機塩混合物は、硫酸水素塩(1)、硫酸塩(3)及び有機酸塩化合物を溶剤中、室温で混合した後、溶剤を除去し、得られた残渣を乾燥することで製造できる。
【0019】
溶剤としては、硫酸水素塩(1)、硫酸塩(3)及び有機酸塩化合物を溶解するものであれば特に限定されず、メタノール又はエタノール等のアルコール類、アセトン又はメチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類或いは酢酸エチル又は酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。かかる使用量は特に限定されない。
【0020】
次に硫酸水素塩(1)及び硫酸塩(3)の製造法について述べる。これらの塩は式(4):
【0021】
N (4)
(式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表される第三級アミン[以下、第三級アミン(4)という]と硫酸を溶媒中で反応し、反応終了後に反応混合物から溶媒を留去すれば、硫酸水素塩(1)及び硫酸塩(3)の混合物として得られる。
【0022】
第三級アミン(4)の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリn−ペンチルアミン、トリn−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリn−ヘプチルアミン、トリn−オクチルアミン、トリn−デシルアミン、n−ドデシルアミン、トリn−ドデシルアミン、トリアリルアミン、ジメチルアリルアミン、メチルジアリルアミン、ジメチル(メトキシエトキシエチル)アミン、トリ(メトキシエチル)アミン、トリ(エトキシエチル)アミン、トリ(メトキシエトキシエチル)アミン、トリ(エトキシエトキシエチル)アミン、1−メチルピロリジン、1−メチルピペリジン、1−メチルピペラジン、1−メチルモルホリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,3−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、2,3,5−トリメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−クロロピリジン、2,6−ジクロロピリジン、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、ピラジン、2−メチルピラジン、2−シアノピラジン、ピリミジン、2−メチルピリミジン、2−シアノピリミジン、2−アミノメチルピリミジン、4−メチルピリミジン、ピリダジン、3−メチルピリダジン又は3,6−ジクロロピリダジン等が挙げられるが特に限定されない。
【0023】
第三級アミン(4)の使用量は硫酸1モルに対して、通常0.2モル〜2モルである。この使用量によって、得られる硫酸水素塩(1)と硫酸塩(3)の生成量が決定する。
【0024】
溶媒としては特に限定するものではないが、水、メタノールおよびエタノールのようなプロトン性の極性溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドのような非プロトン性の極性溶媒、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのような非プロトン性の無極性溶媒が使用できる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。かかる使用量はアミン(4)1重量部に対して、通常0.1重量部〜10重量部、好ましくは1重量部〜4重量部である。
【0025】
硫酸は通常水溶液で用いられる。かかる濃度は特に限定されない。また、第三級アミン(4)と硫酸の混合順序も特に限定されず、反応器に第三級アミン(4)と溶媒を仕込み、硫酸を滴下混合してもよいし、反応器に硫酸と溶媒を仕込み、第三級アミン(4)を滴下混合してもよい。反応温度は特に限定されないが、本反応は発熱反応であるため、氷冷又は水冷下にて滴下混合をすることが望ましい。
【0026】
本発明の有機塩混合物は、樹脂等に添加、混合、配合又は塗布等により、樹脂等の導電性付与剤として使用することができる。かかる樹脂は特に限定されず、ゴム、ABS樹脂又はポリスチレン等の熱可塑性樹脂或いはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。かかる有機塩混合物の量は樹脂1重量部に対して、通常0.001重量部〜0.1重量部、好ましくは0.002重量部〜0.05重量部である。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。なお、イオンクロマト分析はDX−100(DIONEX社製)を用いて行った。
【0028】
実施例1
撹拌機、温度計及び冷却器を備え付けた300ml三つ口フラスコにトリn−プロピルアミン107.5g(0.75モル)と水107.5gを仕込んだ。次いで、水冷下に50%硫酸水溶液29.4g(0.15モル)を1時間かけて滴下した。この時、内温は最高で40℃になった。反応終了後、反応混合物を減圧下に濃縮乾固し、トリn−プロピルアミン硫酸水素塩とジ(トリn−プロピルアミン)硫酸塩からなる混合物を黄色粘稠液体(粘度:11,850mPa・s)として得た(38.8g、得率49.1%)。また、イオンクロマト分析から算出したトリn−プロピルアミン硫酸水素塩とジ(トリn−プロピルアミン)硫酸塩の生成割合は74:26であった。以下にこの混合物のNMRを示す。
【0029】
H−NMR(DMSO) δ:0.90(9H、t)、1.62(6H、m)、2.90(6H、q)、9.51(1H、bs)
13C−NMR(DMSO) δ:11.18、17.03、53.81
【0030】
実施例2
撹拌機、温度計及び冷却器を備え付けた500ml三つ口フラスコにトリn−ブチルアミン55.6g(0.3モル)と水55.6gを仕込んだ。次いで、水冷下に50%硫酸水溶液117.6g(0.6モル)を1時間かけて滴下した。この時、内温は最高で38℃になった。反応終了後、反応混合物を減圧下に濃縮乾固し、トリn−ブチルアミン硫酸水素塩とジ(トリn−ブチルアミン)硫酸塩からなる混合物を白色結晶(融点:61.9℃)として得た(70.9g、得率77.4%)。イオンクロマト分析から算出したトリn−ブチルアミン硫酸水素塩とジ(トリn−ブチルアミン)硫酸塩の生成割合は82:18であった。以下にこの混合物のNMRを示す。
【0031】
H−NMR(DMSO) δ:0.96(9H、t)、1.39(6H、m)、1.72(6H、m)、3.10(6H、q)、9.70〜10.17(1H、bs)
13C−NMR(DMSO) δ:13.49、19.86、25.02、52.05
【0032】
実施例3
実施例2の50%硫酸水溶液の量を24.4g(0.15モル)に変えた以外は実施例2と同様にして行い、トリn−ブチルアミン硫酸水素塩とジ(トリn−ブチルアミン)硫酸塩からなる混合物を白色結晶(融点:61.2℃)として得た(42.4g、得率46.3%)。イオンクロマト分析から算出したトリn−ブチルアミン硫酸水素塩とジ(トリn−ブチルアミン)硫酸塩の生成割合は28:72であった。
【0033】
実施例4
撹拌機、温度計及び冷却器を備え付けた500ml三つ口フラスコに1−メチルピロリジン42.6g(0.5モル)と水42.6gを仕込んだ。次いで、水冷下に50%硫酸水溶液49.0g(0.25モル)を1時間かけて滴下した。この時、内温は最高で40℃になった。反応終了後、反応混合物を減圧下に濃縮乾固し、1−メチルピロリジン硫酸水素塩とジ(1−メチルピロリジン)硫酸塩からなる混合物を褐色液体(粘度:1,820mPa・s)として得た(45.6g、得率44.4%)。また、イオンクロマト分析から算出した1−メチルピロリジン硫酸水素塩とジ(1−メチルピロリジン)硫酸塩の生成割合は94:6であった。以下にこの混合物のNMRを示す。
【0034】
H−NMR(DMSO) δ:1.94(4H、m)、2.77(3H、s)、3.18(4H、m)、10.02(1H、bs)
13C−NMR(DMSO) δ:23.18、40.37、54.75
【0035】
実施例5
実施例2で得られた混合物60gを120gのメタノールに溶解させた溶液と2−エチルヘキシル酸ナトリウム15gをメタノールに溶解させて濃度を20重量%に調製した溶液を500mLのナスフラスコ中にて攪拌しながら室温で混合した。混合後、混合物をエバポレーターで濃縮してメタノールを留去後、60℃で6時間減圧乾燥し、濃縮残として、トリn−ブチルアミン硫酸水素塩、ジ(トリn−ブチルアミン)硫酸塩及び2−エチルヘキシル酸ナトリウムからなる有機塩混合物を白色懸濁液状化合物として得た(71.4g、得率95.2%、)。以下に有機塩混合物のNMRを示す。
【0036】
H−NMR(DMSO) δ:0.90(6H、t)、0.99(9H、t)、1.39(4H、m)、1.42(6H、m)、1.72(10H、m)、2.21(1H、m)、3.11(6H、q)、9.70〜10.17(1H、bs)、
13C−NMR(DMSO) δ:12.26、14.04、14.37、21.06、23.75、26.65、30.86、33.06、48.69、53.54、180.15
【0037】
実施例6
実施例5の2−エチルヘキシル酸ナトリウムの代わりにn−オクチル酸ナトリウムを用いた以外は実施例5と同様にして行い、トリn−ブチルアミン硫酸水素塩、ジ(トリn−ブチルアミン)硫酸塩及びn−オクチル酸ナトリウムからなる有機塩混合物を白色懸濁液状化合物として得た(73g、得率97.3%、)。以下に有機塩混合物のNMRを示す。
【0038】
H−NMR(DMSO) δ:0.91(9H、t)、1.20〜1.30(11H、m)、1.30(6H、m)、1.40〜1.70(2H、m)1.60(6H、m)、2.10〜2.30(2H、m)、2.96(6H、q)、9.70〜10.17(1H、bs)、
13C−NMR(DMSO) δ:13.48、13.85、22.01、24.49、25.06、28.39、31.12、33.68、38.49、51.65、174.39
【0039】
実施例7
実施例5で得られた有機塩混合物5重量部、エピコート828(登録商標:油化シェルエポキシ社製エポキシ樹脂)100重量部およびテトラメチルエチレンジアミン5重量部とを混合し、120℃で2時間かけて熱硬化させて、有機塩混合物を含有したエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂の表面抵抗値は10台を示した。なお、有機塩混合物を配合しない場合のエポキシ樹脂の表面抵抗値は1015台を示した。
【0040】
実施例8
実施例5で得られた有機塩混合物5重量部を熱可塑性樹脂のポリスチレン(Aldrich社製)100重量部に混合し、150℃で1時間かけて混合後、30℃まで放冷して、有機塩混合物を含有したポリスチレン樹脂を得た。得られたポリスチレン樹脂の表面抵抗値は10台を示した。なお、有機塩混合物を配合しない場合のポリスチレン樹脂の表面抵抗値は1015台を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
(RHN)・HSO (1)
[式中、R、R及びRはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は式(2):
R’−[O−(CH−CHR”−)r]− (2)
(R’は低級アルキル基を、R”は水素原子またはメチル基を、rは0〜4、pは1〜10の整数を示し、pが2の場合に二つのrは同一であっても異なっていてもよい。)で表される官能基を示し、それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい。さらには、R、R及びRの何れか二つ乃至は三つが互いに結合し窒素原子と共に環を形成していてもよい。]で表される硫酸水素塩、式(3):
(RHN・SO2− (3)
(式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表される硫酸塩及び有機酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩とを含有してなる有機塩混合物であって、0℃〜100℃の温度範囲で液状であることを特徴とする有機塩混合物。
【請求項2】
式(1)で表される硫酸水素塩、式(3)で表される硫酸塩及び有機酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を混合することを特徴とする請求項1記載の有機塩混合物の製造方法。
【請求項3】
式(1)で表される硫酸水素塩及び式(3)で表される硫酸塩が式(4):
N (4)
(式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるアミンと硫酸を反応させて得られる混合物であることを特徴とする請求項2記載の有機塩混合物の製造方法。
【請求項4】
式(1)で表される硫酸水素塩と式(3)で表される硫酸塩からなる混合物。
【請求項5】
、R及びRが炭素数1〜12のアルキル基である請求項1記載の有機塩混合物。
【請求項6】
請求項1記載の有機塩混合物を含有することを特徴とする導電性付与剤。


【公開番号】特開2006−155968(P2006−155968A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341336(P2004−341336)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】