説明

液状脱臭剤

【課題】有効成分が低濃度でも、高濃度の硫化水素の悪臭を効率的に除去可能な液状脱臭剤を提供する。
【解決手段】アミノ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体及び第8族〜第12族の金属塩を含む水溶液からなることを特徴とする液状脱臭剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状脱臭剤に関し、特に悪臭成分である硫化水素ガスの脱臭に好適に用いられる液状脱臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化水素は、トイレ、凝集排水、ヘドロ、下水、車中、室内の悪臭成分として、悪臭の主要な原因となっている。このような悪臭を除去するため、固体脱臭剤、液状脱臭剤が提案されている。
【0003】
従来、固体脱臭剤としては、活性炭、シリカ、ゼオライト等の無機系の固体材料を使用することがよく知られている。しかし、これらは、吸着量が限定されたり、また、悪臭の吸着が可逆的なため、いったん吸着したガスが再放出されたりするという問題があった。
【0004】
一方、液状脱臭剤としては、アミノ基とカルボキシル基を有する特定の両性共重合体の水溶液(例えば特許文献1)が提案されている。しかし、この液状脱臭剤は、高濃度の硫化水素に対して所望の脱臭効果を得るために、有効成分である両性共重合体を高濃度で含有させることが必要なため、コストが高くなったり、安全性が問題となることがあった。加えて、溶液が酸性(pH4以下)であるのでハンドリングの際の安全性の面からも実用的でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−108452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題に鑑み、本発明の目的は、有効成分が低濃度でも、高濃度の硫化水素の悪臭を効率的に除去可能な液状脱臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、特定の両性共重合体とともに金属塩を併用した液状脱臭剤は、これらの有効成分が極めて低濃度でも、驚くべき相乗作用で硫化水素の悪臭を除去できることを見出した。しかも、この液状脱臭剤は、中性付近でも硫化水素の悪臭を除去することが可能であり、その結果、脱臭剤を安全にハンドリングすることができることを見出した。
【0008】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、
(1) アミノ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体及び第8族〜第12族の金属塩を含む水溶液からなることを特徴とする液状脱臭剤、
(2) カルボキシル基を有する単量体が2つのカルボキシル基を有するものである、上記(1)に記載の液状脱臭剤、
(3) 両性共重合体の固形分濃度が0.01〜10質量%である、上記(1)または(2)に記載の液状脱臭剤、
(4) 金属塩の固形分濃度が0.000001〜3質量%である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液状脱臭剤、
(5) 両性共重合体/金属塩の混合比が10/3〜10000/1である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の液状脱臭剤、
(6) 両性共重合体及び金属塩を含む水溶液のpHが5.0〜8.5である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の液状脱臭剤、
(7) 硫化水素用脱臭剤である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の液状脱臭剤、および
(8) ガス状硫化水素用脱臭剤である、上記(7)に記載の液状脱臭剤
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有効成分が低濃度でも、高濃度の硫化水素の悪臭を効率的に短時間で除去可能な液状脱臭剤を提供することができた。本発明の液状脱臭剤は、中性付近でも悪臭を除去可能であるので、ハンドリングの際、安全である。従って据え置き型で用いてもよい。また、悪臭のある空間や物に対し噴霧することができ、この場合、短時間で安全に悪臭を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液状脱臭剤は、アミノ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体及び第8族〜第12族の金属塩を含む水溶液からなることを特徴とするものである。本発明においては、「アミノ基」とは、第1、第2、第3級アミノ基とともにアンモニウム4級塩基も含むものとする。
【0011】
本発明に用いる両性共重合体としては、(A)アミノ基を有する単量体(例えばモノまたはジアリルアミンなど)と2つのカルボキシル基を有する単量体(例えばマレイン酸など)とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体、(B)(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルと(メタ)アクリル酸とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体、(C)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体を例示することができる。本発明に用いる両性共重合体中のアミノ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体とのモル比は、1:100〜100:1が好ましい。
【0012】
この両性共重合体を得るための単量体混合物は、本発明の目的を損なわない限り、第3の単量体成分を含ませることができる。そのような第3の単量体成分は、二酸化硫黄、アクリルアミド等の非イオン系単量体が挙げられる。
【0013】
上記(A)のアミノ基を有する単量体と2つのカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体としては、下記の構造式(I),(IIa ),(IIb ),(IIIa),(IIIb),
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

(ただし、上記式(I),(IIa ),(IIb ),(IIIa),(IIIb)中、R1 およびR2 は、それぞれに独立に水素原子、メチル基、エチル基またはシクロヘキシル基であり、R3 は、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基あり、R4 およびR5 は、それぞれに独立に水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基あり、Xは、アニオンである)
で示されるアリルアミン系単位、その無機酸塩および有機酸塩から選ばれるカチオン単位の少なくとも1種と、下記の構造式(IV),(V ),(VI),(VII )
【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

(ただし、上記式(IV),(V ),(VI),(VII )中、R6 は、水素原子またはメチル基であり、Yは、結合するカルボキシ基ごとにそれぞれに対して独立に水素、Na、K、NH4から選ばれるカチオンである)
で示されるアニオン単位の少なくとも1種とを有する両性共重合体を例示することができる。
【0023】
上記一般式(I)のモノアリルアミン単位を得るための単量体の例としては、モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミンを例示できる。
【0024】
上記一般式(IIa ),(IIb ),(IIIa),(IIIb)で表されるジアリルアミン単位を得るための単量体の例としては、ジアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−エチルジアリルアミン、N−プロピルジアリルアミン、N−ヘキシルジアリルアミン、N−オクチルジアリルアミン、N−ベンジルジアリルアミンなどが挙げられ、またその第四級アンモニウム塩としては、例えばジアリルジメチルアンモニウムハライドなどが挙げられる。
【0025】
上記一般式(IV),(V ),(VI),(VII )で表わされる、2つのカルボキシル基を有する単位を得るための単量体としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などを例示できる。
【0026】
上記(B)の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルと(メタ)アクリル酸とを含む単量体混合物から得られた共重合体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルと(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルと(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルと(メタ)アクリル酸との共重合体、アクリル酸ジエチルアミノプロピルと(メタ)アクリル酸との共重合体を例示できる。
【0027】
上記(C)のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸とを含む単量体混合物から得られた共重合体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸との共重合体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸との共重合体、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸との共重合体、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸との共重合体を例示できる。
【0028】
本発明の液状脱臭剤は、上述の両性共重合体とともに金属塩を含むものであり、該金属塩は、第8族〜第12族の金属塩から選ばれる。本発明の液状脱臭剤は、両性共重合体に第8〜第12族の金属塩を併用することにより、これらの有効成分が極めて低濃度でも高濃度の硫化水素ガスを効果的に除去することができる。これらの有効成分の濃度は後述する。
第8族〜第12族の金属塩としては、銅塩、亜鉛塩、ニッケル塩、鉄塩等を例示できる。
【0029】
なお、金属塩として、第8族〜第12族の金属塩以外の金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩を上記の共重合体とともに用いた場合は、所望の脱臭効果を得ることができない。
【0030】
本発明の脱臭剤は、アミノ基とカルボキシル基を有する両性共重合体及び第8〜第12族の金属塩を含有し、両性共重合体と金属塩との相互作用により、硫化水素を消臭する能力が発現すると考えられる。すなわち、本発明の液状脱臭剤において、金属塩中の遷移金属は両性共重合体中のカルボキシル基と配位しており、そこへ悪臭成分である硫化水素が両性共重合体のアミノ基と相互作用することにより、硫化水素と遷移金属とを近接した位置とすることができ、その結果、硫化水素が遷移金属と反応しやすくなって、硫化水素が分解して悪臭が除去されるものと推定される。本発明の脱臭剤は、両性共重合体も金属塩も低濃度でも脱臭効果が優れている。
【0031】
本発明に用いる金属塩としては、銅、亜鉛、ニッケル、鉄などの金属の硫酸塩、塩化物、硝酸塩、炭酸塩等を例示できる。本発明の液状脱臭剤は、用いる所定量の上記両性共重合体と用いる所定量の金属塩とを水、例えばイオン交換水とを混合し溶解するだけで、簡単に短時間で製造することができる。金属塩は水溶性であることが好ましい。ここに「水溶性」とは、金属塩の使用濃度で水に溶解することを意味する。
【0032】
本発明の液状脱臭剤は、その製造に関して、特開2004−315792号公報等に記載のポリビニルアミン系消臭剤のように加熱操作や、不要物を除去するための透析操作が不必要であり、その結果、工業的に製造することが容易である。
【0033】
本発明の液状脱臭剤に用いる両性共重合体の固形分濃度は、0.01〜10質量%、好ましくは0.02〜8質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは、0.1〜2質量%であり、極めて低い濃度で用いることができる。
【0034】
また、本発明の液状脱臭剤に用いる金属塩の固形分濃度は、0.000001〜3質量%、好ましくは0.00001〜2質量%、さらに好ましくは、0.0005〜1質量%、特に好ましくは、0.002〜0.3質量%であり、極めて低い濃度で用いることができる。
【0035】
本発明の液状脱臭剤において、両性共重合体/金属塩の混合比は10/3〜10000/1が好ましく、4/1〜2000/1がより好ましく、5/1〜100/1が更に好ましく、20/3〜50/1が特に好ましい。
【0036】
本発明の液状脱臭剤は、両性共重合体および金属塩の濃度を極めて薄くしても消臭可能なので、悪臭発生源、または悪臭空間に噴霧して脱臭しても安全である。加えて、pHを中性付近、すなわちpH5.0〜8.5、好ましくはpH5.5〜8.0に調整しても消臭効果を発揮できるので、ハンドリングの際の安全性が極めて高い。
【0037】
本発明の液状脱臭剤は、特に悪臭の主要原因である硫化水素の脱臭に好適である。ガス状硫化水素を短時間で消臭可能である。
【実施例】
【0038】
実施例1 モノアリルアミンとマレイン酸との両性共重合体(1.2:1)および塩化第二銅を含む脱臭剤
【0039】
1−1.モノアリルアミンとマレイン酸との両性共重合体(1.2:1)の合成
撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mLセパラブルフラスコに、マレイン酸116.07g(1.0モル)と蒸留水79.11gを入れ、氷浴で内温が10℃以下になるまで冷却した。冷却後、モノアリルアミン68.52g(1.2モル)を、滴下ロートを用いて滴下し、滴下終了後ウォーターバスで45℃に加温した。開始剤APS(過硫酸アンモニウム)を10.04g添加し、重合反応を開始した。その後、17時間後、24時間後にAPS 10.04gを追加し、計46時間反応を継続した。反応後の溶液を蒸留水で希釈し、さらに水酸化ナトリウムでpH7.0に調製して、固形分濃度38質量%のモノアリルアミンとマレイン酸との両性共重合体(1.2:1)の水溶液を得た。
【0040】
1−2.脱臭剤の調製
塩化第二銅0.05gにイオン交換水97.32g加え混合後、1−1の操作で得られたモノアリルアミンとマレイン酸との両性共重合体(1.2:1)2.63gを添加し、固形分濃度1.0質量%の両性共重合体および固形分濃度0.05質量%の塩化銅を含む液状脱臭剤100gを得た。この液状脱臭剤のpHは、6.2であった。
【0041】
実施例2 メタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルの両性共重合体(1:5:0.3)および塩化亜鉛を含む脱臭剤
【0042】
2−1.メタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルの両性共重合体(1:5:0.3)の合成
メタクリル酸ジメチルアミノエチル15.72g(0.1モル)、メタクリル酸43.05g(0.5モル)、メタクリル酸ヒドロキシエチル3.90g(0.03モル)、イオン交換水94.01g を混合し、冷却下で水酸化ナトリウムを添加してpH7.0とした単量体混合溶液を調製した。撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mLセパラブルフラスコに、次亜リン酸ナトリウム0.63g、イオン交換水94.01gを入れ、ウォーターバスにて内温が60℃になるように加温した。その後、開始剤V−50を0.85g添加し、滴下ロートに入れた単量体混合溶液を滴下することにより、重合反応を開始した。開始から6時間後に2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸(V−50) 0.42gとイオン交換水62.67gを追加し、さらに24時間反応させた。反応終了後の溶液に、水酸化ナトリウムを加え、pH7.0に調製し、メタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルの両性共重合体(1:5:0.3)水溶液を得た。この溶液の固形分濃度は、24.4質量%であった。
【0043】
2−2.脱臭剤の調製
塩化亜鉛0.05gにイオン交換水95.85g加え混合後、2−1の操作で得られたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルの両性共重合体(1:5:0.3)水溶液(固形分濃度24.4質量%)4.10gを添加し、固形分濃度1.0質量%の両性共重合体および固形分濃度0.05質量%の塩化亜鉛を含む液状脱臭剤100gを得た。この液状脱臭剤のpHは、6.5であった。
【0044】
実施例3 メタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルの両性共重合体(1:20:0.1)および塩化亜鉛を含む脱臭剤
メタクリル酸ジメチルアミノエチル4.72g(0.03モル)、メタクリル酸51.65g(0.6モル)、メタクリル酸ヒドロキシエチル0.39g(0.003モル)、イオン交換水85.14gに変更して単量体混合溶液を調製した以外は、2−1と同様の操作にて重合し、メタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸とメタクリル酸ヒドロキシエチルの両性共重合体(1:20:0.1)を得た。この溶液の固形分濃度は27.6質量%であった。
【0045】
塩化亜鉛0.05gにイオン交換水96.30g加え混合後、上記の操作で得られた両性共重合体水溶液(固形分濃度27.4質量%)3.65gを添加し、固形分濃度1.0質量%の両性共重合体および固形分濃度0.10質量%の塩化亜鉛を含む液状脱臭剤100gを得た。この液状脱臭剤のpHは、6.0であった。
【0046】
実施例4 ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸との両性共重合体および塩化亜鉛を含む脱臭剤
塩化亜鉛0.05gにイオン交換水94.95gを加え混合後、pH7.0に調製したジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸との両性共重合体(1:1)水溶液(固形分濃度20質量%)5.0gを添加し、固形分濃度1.0質量%の両性共重合体および固形分濃度0.05質量%の塩化亜鉛を含む液状脱臭剤100gを得た。この液状脱臭剤のpHは、6.5であった。
【0047】
実施例5 ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(10:5:1)および塩化亜鉛を含む脱臭剤
共重合体成分をジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(10:5:1)に変更した以外は実施例4と同様にして液状脱臭剤を得た。この液状脱臭剤のpHは、6.5であった。
【0048】
実施例6 ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(10:5:1)および塩化亜鉛と塩化第二銅を含む消臭剤
塩化亜鉛0.02g、塩化第二銅0.02gにイオン交換水94.95gを加え混合後、pH7.0に調製したジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(10:5:1)水溶液(固形分濃度20質量%、pH7.0)5.0gを添加し、固形分濃度1.0質量%の両性共重合体および合計固形分濃度0.04質量%の塩化亜鉛と塩化第二銅を含む液状脱臭剤100gを得た。この液状脱臭剤のpHは、6.4であった。
【0049】
実施例7 ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(10:5:1)および塩化第二銅を含む脱臭剤
塩化第二銅0.05gにイオン交換水94.95gを加え混合後、pH7.0に調製したジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(10:5:1)水溶液(固形分濃度20質量%、pH7.0)5.0gを添加し、固形分濃度1.0質量%の両性共重合体および固形分濃度0.05質量%の塩化第二銅を含む液状脱臭剤100gを得た。この液状脱臭剤のpHは、6.4であった。
【0050】
実施例8 ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(50:49:1)および塩化亜鉛とを含む脱臭剤
共重合体成分をジアリルジメチルアンモニウムクロリドとマレイン酸と二酸化イオウとの両性共重合体(50:49:1)水溶液(固形分濃度20質量%、pH7.0)5.0gに変更した以外は実施例4と同様にして、液状脱臭剤を製造した。この液状脱臭剤のpHは、6.5であった。
【0051】
比較例1〜5 金属塩を含まず、両性共重合体のみを含む比較脱臭剤
実施例1、2、4、5および7で用いた両性共重合体のみを使用し、金属塩を使用せずに、両性共重合体の固形分濃度が1.0質量%である比較例1〜5の液状脱臭剤を製造した。
【0052】
比較例6 ジアリルジメチルアンモニウムクロリド単独重合体および塩化亜鉛を含む比較脱臭剤
pH7に調製したジアリルジメチルアンモニウムクロリド単独重合体水溶液(固形分濃度20質量%)5.0gに、塩化亜鉛0.05g、イオン交換水94.95gを加え混合して、比較例6の液状脱臭剤を製造した。
【0053】
比較例7 アクリル酸単独重合体および塩化亜鉛を含む比較脱臭剤
重合体成分をアクリル酸単独重合体に変更した以外は、比較例6と同様にして、比較例7の液状脱臭剤を製造した。
【0054】
比較例8 塩化亜鉛のみを含む比較脱臭剤
塩化亜鉛0.05gにイオン交換水99.95gを加え混合し、固形分濃度が0.05質量%の塩化亜鉛のみからなる比較例8の液状脱臭剤を製造した。
【0055】
評価試験
硫化水素に対する実施例1〜7、比較例1〜8の脱臭剤の悪臭除去性能を、下記の方法で評価した。
【0056】
1質量%水溶液に調製したサンプル1.0gを入れたシャーレと撹拌子を300mLのコニカルビーカーに入れ、100ppm濃度となるように硫化水素ガスをシリンジで注入し、コニカルビーカーの口を密閉した。マグネチックスターラーでコニカルビーカー内を室温で撹拌し、一時間経過後にガステック社製の検知管を用いて、コニカルビーカー内の残存硫化水素ガス濃度を測定した。
【0057】
ブランクは、同様にコニカルビーカーに撹拌子と硫化水素ガスを入れただけで、サンプルを入れない条件におけるガス濃度とする。
【0058】
脱臭率は、下記式から算出した。
脱臭率(%)={(B−S)/B } ×100
S:サンプルを入れて測定したときの残存硫化水素ガス濃度(ppm)
B:ブランクの硫化水素ガス濃度(ppm)
【0059】
試験結果
表1に各実施例、比較例の硫化水素に対する悪臭除去性能評価結果を示す。
【表1】



略語 AA:アリルアミン
MA:マレイン酸
DMAEMAc:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
MAc:メタクリル酸
HEMA:メタクリル酸ヒドロキシエチル
DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド
SO:二酸化硫黄
AAc:アクリル酸

表1より、両性共重合体に金属塩を添加した実施例1〜8の液状脱臭剤は、金属塩を添加しない比較例1〜5の液状脱臭剤と比較して硫化水素に対する消臭率が格段に優れていることが分かる。
【0060】
また、重合体と金属塩を含むが、重合体がカチオン重合体、アニオン重合体であって、本発明で用いられる両性共重合体ではない比較例6、7の液状脱臭剤は、悪臭除去性能が低い。
また、金属塩のみを含む比較例8の液状脱臭剤も悪臭除去性能が低い。
【0061】
このことから、本発明の液状脱臭剤において、両性共重合体と金属塩とを併用したことによる技術的意義(相乗効果)は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、両性共重合体および金属塩が低濃度でも、高濃度の硫化水素の悪臭を効率的に短時間で除去可能な液状脱臭剤を提供することができる。
本発明の液状脱臭剤は、中性付近でも悪臭を除去可能であるので、ハンドリングの際、安全である。従って据え置き型で用いることができる。また、悪臭のある空間や物に対し噴霧することができ、この場合、短時間で安全に悪臭を除去することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体混合物から得られた両性共重合体及び第8族〜第12族の金属塩を含む水溶液からなることを特徴とする液状脱臭剤。
【請求項2】
カルボキシル基を有する単量体が2つのカルボキシル基を有するものである、請求項1に記載の液状脱臭剤。
【請求項3】
両性共重合体の固形分濃度が0.01〜10質量%である、請求項1または2に記載の液状脱臭剤。
【請求項4】
金属塩の固形分濃度が0.000001〜3質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の液状脱臭剤。
【請求項5】
両性共重合体/金属塩の混合比が10/3〜10000/1である、請求項1〜4のいずれかに記載の液状消臭剤。
【請求項6】
両性共重合体及び金属塩を含む水溶液のpHが5.0〜8.5である請求項1〜5のいずれかに記載の液状脱臭剤。
【請求項7】
硫化水素用脱臭剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の液状脱臭剤。
【請求項8】
ガス状硫化水素用脱臭剤である、請求項7に記載の液状脱臭剤。