説明

液透過パネル

【課題】動物用トイレの使用において、ペットシートのよれやめくれによる尿漏れを防ぐことのできる、動物用システムトイレの液透過パネルを提供すること。
【解決手段】動物用システムトイレ1の排泄物吸収部6を覆う液透過パネル3であって、前記パネルは、該パネルの厚さ方向に対して垂直な側面方向Xからの荷重に対して1cm以上のよれが生じるのに必要な荷重である、側面1cm圧縮変形荷重が5N以上20N以下である。この液透過パネル3は、該液透過パネル3の厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有し、液が前記複数の孔部31を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙を材料とした液透過パネル3であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば犬等の動物用システムトイレに用いられる使い捨てタイプの液透過パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
室内で飼育する動物の排泄物の処理にあたっては、室内に設置できる動物用トイレが使用されている。近年、この動物用トイレとしては、市販のトイレ用のペットシートを直接床面に敷いたもの、ペットシートをペットシートの外周を押さえる外枠により固定する動物用トイレ(特許文献1)、浅底のトレイ状の受け皿に、板状の尿吸収マットと、該尿吸収マットの上面の全域を密接して被覆する液透過性の不織布とを収容した動物用トイレ(特許文献2)等が使用されている。
【0003】
しかし、動物が直接乗る部分に、不織布等で構成される低剛性のシート部材を用いる上記の動物用トイレでは、犬が勢いよくトイレに入ったり、排泄時の犬の習性により排泄前にトイレの中で「においとり」と呼ばれる周回運動を行ったりすることで、シート部材に、「よれ」や「めくれ」が発生することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3609855号公報
【特許文献2】特開2002−142599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の「よれ」や「めくれ」という問題は、動物の足による荷重が思いのほか大きいという点に由来する。その荷重は、例えば、動物の体重を10kg、足の大きさを10cmと仮定すると1本の足あたりにかかる荷重は2.5kg程度となる。これだけの荷重がかかると、動物が直接乗る部分に載置される着脱可能な使い捨て部材として、例えば、液透過性の孔部を有するパネルを用いた場合にも、上記の「よれ」や「めくれ」の発生が懸念される。また、荷重で孔部が潰れてしまい使用中に液透過性が低下するという問題も新たに懸念される。
【0006】
このように、動物トイレにおいて動物が直接乗る部分に載置される部材について、犬が勢いよくトイレに入る場合のこと、また、排泄前にトイレの中で周回運動を行うという犬の習性とその際の大きな荷重に鑑み、その部材自体の強度を考慮するという課題は、低剛性のシート部材を用いる従来の動物トイレにおいては全く考慮されておらず、それ自体が新規な課題である。
【0007】
従って、本発明は、動物トイレ用において動物が直接乗る部分に載置される液透過パネルであって、排泄物の液透過性を有しながら清掃が容易で交換可能な使い捨てタイプあり、且つ、シート部材のように「よれ」や「めくれ」や「孔潰れ」が発生しない液透過パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、所定の液透過性を備える液透過パネルを用いた場合、孔部に平行なパネル平面方向からの荷重より、孔部に垂直なパネル側面方向からの荷重に対して所定の強度を有することが、上記の「よれ」や「めくれ」や「孔潰れ」の防止に対して有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)動物用トイレにおいて動物が直接乗る部分に載置される液透過パネルであって、下記で定義される、前記液透過パネルの側面1cm圧縮変形荷重が0.35N以上20N以下である液透過パネル。
[側面1cm圧縮変形荷重:液透過パネルの厚さ方向に対して垂直な側面方向から、先端が直径10mmの円系プランジャーで、500mm/minの速度で圧縮荷重をかけた際に、液透過パネルが1cm変形するまでの荷重。]
【0010】
(2)前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、液が前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙である(1)記載の液透過パネル。
【0011】
(3)前記段ボール紙は、該段ボール紙を構成するシート部材を積層して得られるブロックを、前記孔部の貫通方向と垂直に所定の厚さで切断して得られる(2)記載の液透過パネル。
【0012】
(4)前記液透過パネルは、90%以上の液透過率を有する(1)から(3)の何れかに記載の液透過パネル。
【0013】
(5)排泄物収容部を有する排泄容器と、前記排泄物収容部の上部空間に着脱可能に配置される(1)から(4)の何れかに記載の液透過パネルと、を備える動物用システムトイレ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シートのよれやめくれによる尿漏を防ぎつつ、孔部が潰れて液透過性が低下することを防ぐことができる、動物用システムトイレ用の液透過パネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る動物用システムトイレの斜視図である。
【図2】実施形態に係る動物用システムトイレの分解斜視図である。
【図3】実施形態に係る動物用システムトイレにおいて、液透過パネルを取り外した状態の動物用システムトイレの平面図である。
【図4】実施形態に係る動物用システムトイレの、図1の動物用システムトイレ1のA−A線における断面図である。
【図5】実施形態に係る動物用システムトイレに用いる液透過パネルの上面図である。
【図6】実施形態に係る動物用システムトイレに用いる液透過パネルの、図5の液透過パネル3のB−B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0017】
<全体構造>
まず、本発明の実施形態である動物用システムトイレ1を用いて、動物用システムトイレ1の全体構造について説明する。
【0018】
本実施形態の動物用システムトイレ1は、図1及び2に示すように、吸液シート6等の吸水性を有する吸液部材を収容可能な排泄物収容部21を有し上面が開口した排泄容器2と、この排泄容器2の上部に配置され排泄容器2の開口した上面を覆う底面を有する上部容器4と、この上部容器4の底面部41に配置(載置)される液透過パネル3と、を備える。
【0019】
排泄容器2は、図2に示すように、略正方形状の底面部22と、この底面部の4辺それぞれから底面部22に対して所定の角度で起立して配置される4つの側壁部23と、を備える。排泄物収容部21は、底面部22及び4つの側壁部23に囲まれた空間により形成される。この排泄物収容部21には、動物が排泄した尿等が収容される。
【0020】
上部容器4は、図2及び図3に示すように、上面が開口して構成され、平面視で略正方形状の底面を構成する支持部41とこの支持部41の4辺それぞれから支持部41に対して所定の角度で起立して配置される4つの上部側壁部42と、を備える。
【0021】
支持部41は、図3に示すように、複数の貫通穴441を有する格子状に構成され、尿等の液体を透過可能となっている。つまり、複数の貫通穴441は、矩形形状に形成され、行方向及び列方向にそれぞれ所定の間隔をあけて配置される。
【0022】
複数の貫通穴441の大きさは、好適な液体透過性を確保する観点から、一辺の長さが好ましくは1mm〜100mm、より好ましくは10〜60mmである。
【0023】
また、支持部41における格子状部分の幅W1(図3に図示)は、好適な液体透過性を確保すると共に、支持部41の強度を確保する観点から、好ましくは1mm〜10mm、より好ましくは2mm〜6mmである。
【0024】
また、支持部41の厚さD1(図4に図示。)は、支持部41の強度を確保する観点から、好ましくは1mm〜10mmである。
【0025】
4つの上部側壁部42のうちの3つの上部側壁部42の高さは、略均一に構成されている。そして、4つの上部側壁部42のうちの1つの上部側壁部42aには、他の3つの上部側壁部42の高さよりも高さが低く構成された出入り口部43が形成されている。動物用システムトイレ1を使用する動物は、この出入り口部43から上部容器4に出入りできる。
【0026】
以上の排泄容器2及び上部容器4は、木材、金属、プラスチック等の種々の材質を用いて構成できる。これらの材質の中では、排泄物が材料の内部に染み込むことによる臭気の発生の問題や、排泄物による腐食の問題がないことからプラスチックを用いるのが好ましい。プラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等種々の材料を使用することができる。
【0027】
液透過パネル3は、図1及び図2に示すように、上部容器4の支持部41の上面側に配置され、支持部41の上面の略全域を覆う。本実施形態では、液透過パネル3は、支持部41の大きさの略半分の大きさを有する長方形状に形成され、2枚の液透過パネル3により支持部41の上面を覆っている。また、液透過パネル3は、長手方向が上部容器4の出入り口部43が形成された上部側壁部42aの延びる方向に沿うように配置される。
【0028】
以上の液透過パネル3は、所定の液透過性、好ましくは所定の吸水性を備える。液透過パネル3の詳細については、後述する。
【0029】
以上の動物用システムトイレ1は、図2及び図4に示すように、排泄物収容部21に吸液シート6を収容した状態で、排泄容器2の上部に上部容器4を配置し、この上部容器4の支持部41に液透過パネル3を載置して使用される。
【0030】
そして、この状態では、図4に示すように、排泄物収容部21と液透過パネル3との間に支持部41が配置されるので、排泄物収容部21と液透過パネル3との間には、所定の空間5が形成される。
【0031】
なお、排泄容器2の内部の排泄物収容部21には、排泄容器2の底部に水平方向に引出し可能な引出トレイを設けてもよい。この場合、引出しトレイはそのまま排泄物を収容するか、引出しトレイの内部に吸液シート6を敷設した状態で使用される。引出しトレイを設けることにより、排泄物収容部21の清掃が非常に容易になる。また、引出しトレイは排泄容器2からの取り出しが容易であることから取手を備えるのが好ましい。取手の形状は引出しトレイを把持できる限り特に制限されない。
【0032】
排泄容器2の上部の開口部の形状は特に限定されず、意匠性等を考慮して、正方形、長方形、台形、楕円形、円形、半円形等種々の形状から選択することができる。大型の吸水性のパネルから液透過パネル3を切断して加工する際に余剰の部材が生じないことから、排泄容器2の上部の開口部の形状は正方形又は長方形であるのが好ましい。
【0033】
<使い捨て液透過パネル>
次に、使い捨ての液透過パネル3について説明する。液透過パネル3は全体として平面パネル状であり、図1及び図2に示されるように排泄容器2の開口部の略全面を覆うように上部容器4に対して着脱可能に構成される。より具体的には、液透過パネル3は、図5に示すように、複数のシート部材(後述の波板状シート32及び平板状シート33)が厚さ方向に沿うように配置されると共に隣り合うシート部材が所定箇所で接合されて形成されている。つまり、液透過パネル3は、シート部材により連続的に形成される壁部と、この壁部により囲まれた空間により形成され厚さ方向に貫通する複数の孔部31と、を備える開孔パネルである。
【0034】
液透過パネル3を構成するパネルの材料は、排泄物を良好に透過するものを用いる。材料の具体例としては、例えばパルプ等からなる紙が好適に用いられるがこれに限定されず、例えば、液透過性を備えるために厚さ方向に連続気泡を有するウレタンフォーム等であってもよい。なお、ウレタンフォームであっても独立気泡を有するものは液透過性がなく不適である。
【0035】
液透過パネル3の厚さは、パネルに用いる材料、構成するパネルの形態によって異なるが、典型的には、3〜25mmが好ましく、3〜10mmがより好ましい。液透過パネル3が薄すぎる場合、パネルの変形により排泄物の排泄物収容部21への透過が妨げられたり、動物の重量によってはパネルが破壊されたりする場合がある等、強度の点で問題が生じやすい。液透過パネル3が厚すぎる場合は、一回の排泄による液透過パネル3の排泄物の吸収量が増加し交換サイクルが短くなる問題や、交換用パネルを保管する際に嵩張ること等の問題がある。
【0036】
図5に示すように、液透過パネル3は、その厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有し、複数の孔部31を通じて排泄物を液透過パネル3の厚さ方向に透過するものを用いるのが好ましい。複数の孔部の開口部の形状及び面積は同一であっても異なっていてもよい。かかる複数の孔部31を有する液透過パネル3は、例えばスポンジ状の材料のように不規則な方向の孔部を有するパネルと比較して、使い捨て液透過パネル3の内部に残留する排泄物の量を低減しやすく、動物による液透過パネル3の踏みつけによる動物の足濡れを抑制しやすい。
【0037】
液透過パネル3が、液透過パネル3の厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有する場合、複数の孔部31の開口部の平均面積は10〜100mm/個であるのが好ましく、15〜60mm/個であるのがより好ましい。孔部31の開口部の平均面積が小さすぎると液透過パネル3に付着する排泄物の量が増え足濡れを抑制しにくく、孔部31の開口部の平均面積が広すぎると液透過パネル3に十分な強度を付与するために液透過パネル3を厚くする必要がある点で好ましくない。複数の孔部31の開口部の平均面積の測定方法は特に制限されず公知の種々の方法を用いることができ、例えば、開口部の写真を画像解析する方法等により測定することが出来る。
【0038】
液透過パネル3が、その厚さ方向に貫通する複数の孔部31を有するための、パネルの構造としては、製造が容易で安価に入手可能であることからコルゲートハニカム構造のパネルが好ましい。
【0039】
以下コルゲートハニカム構造の液透過パネル3について図5及び図6を参照して説明する。図6は図5の液透過パネル3のB−B線における断面図である。コルゲートハニカム構造の液透過パネル3を作製するには、波板状シート32と平板状シート33とを接合する。波板状シート32の波型は、コルゲーターと呼ばれる機械で材料に付与する。波板状シート32と平板状シート33とを接合する方法は特に制限されず、接着剤による接合方法等の公知の接合方法から適宜選択できるが、耐水性の高い樹脂系の接着剤が好ましい。
【0040】
次に波板状シート32と平板状シート33とを接合して得た部材を複数枚積層して接着する。この場合も耐水性の高い樹脂系の接着剤による接着が好ましい。そして、波板状シート32と平板状シート33とを接合して得た部材を積層してできたブロックを孔部31の貫通方向と平行に適当な大きさに切断し、孔部31の貫通方向と垂直に適切な厚さにスライスすることにより、コルゲートハニカム構造の液透過パネル3が完成する。完成したコルゲートハニカム構造の液透過パネル3は、波板状シート32と平板状シート33とに囲まれる孔部31を有する。
【0041】
<液透過パネルの圧縮強度>
液透過パネル3の側面1cm圧縮変形荷重(以下単に圧縮強度ともいう)については、後述する実施例における圧縮強度試験1記載の方法で、測定した場合の圧縮強度が0.35N以上20N以下であり、5N以上15N以下が好ましい。かかる圧縮強度を有する使い捨て液透過パネル3を用いることにより、動物用システムトイレにおいて、シートのよれやめくれによる尿漏れを防止することが可能となる。また、同時に孔部の潰れも防止できる。
【0042】
上記の圧縮強度は、液透過パネル3の有する2対の両側面において異なる場合がある。これは、液透過パネル3に構造由来の異方性がある場合であり、例えば、図5における積層方向Xと、非積層方向Yとでは、通常「X方向の圧縮強度」>「Y方向の圧縮強度」となる。本発明においては、少なくとも一方が上記の範囲であればよく、好ましくは両方向共に上記の範囲内である。本実施形態のように「X方向の圧縮強度」>「Y方向の圧縮強度」となる場合には、X方向が動物用トイレにおける動物の侵入方向Zと一致するようにすることで、犬等の動物が勢いよくトイレに入る際の荷重にも耐えることができる。この点からすると、X方向又はY方向の何れかの高いほうの圧縮強度が10N以上であることが最も好ましい。
【0043】
このように、本発明の液透過パネル3は、上記のような高い液透過率と、側面方向からの圧縮強度を両立させた点に特徴がある。
【0044】
<液透過パネルの液透過率>
液透過パネル3の液透過率は90%以上が好ましく、93%以上がより好ましい。かかる液透過率の使い捨て液透過パネル3を用いることにより、排泄後の液透過パネル3への尿の付着を低減でき、内部での尿の拡散や、踏みつけによる動物の足濡れを抑制しやすい。液透過パネル3の液透過率は下記の方法により測定出来る。
【0045】
〔液透過率測定方法〕
あらかじめ重量(A)を測定された受け皿を、液透過パネル3等の液透過率を測定する試料の下部に置く。人工尿約30mlを測りとり人工尿の重量(B)を測定する。試料上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側に人工尿をまんべんなく滴下する。試料から人工尿の液滴が落下しなくなった時点で人工尿の入った受け皿の重量(C)を測定する。液透過率の値を下式に基づいて算出する。なお、人工尿は後述する実施例の組成のものを使用する。
【0046】
(液透過率計算式)
液透過率(%)=(重量(C)−重量(A))÷重量(B)×100
【0047】
動物用システムトイレに用いる液透過パネルを係る構成とすることにより、排泄物の大部分を液透過パネル3を通じて排泄物収容部21へ透過させることが出来るので、排泄物による足濡れを抑制することが可能となる。なお、液透過パネル3は支持部41に対して着脱可能に構成されているので、尿の吸収や大便の詰まりにより汚染されても容易に交換することができ、動物用システムトイレ1の清掃作業が非常に容易である。
【0048】
さらに、液透過パネル3と排泄物収容部21の間には空間5が形成されている。このため、大量の排尿があった場合でも、尿は液透過パネル3の孔部を通過して裏面側の表面で拡散し、その後に排泄物吸収物品6で吸収される。すなわち、空間5によって尿が戻り孔部がオーバーフローして液透過パネル3の表面側へ残ることを効果的に防止する。これにより上記の足濡れの発生が抑制される。
【0049】
本発明の動物用システムトイレ1は、上述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態に係る動物用システムトイレにおいて、排泄容器2の上部に液透過パネル3表面での排泄物の飛散による動物用システムトイレ1の周囲の汚染を防止するために、所望の形状のフードを設けてもよい。
【0050】
また、本実施形態に係る動物用システムトイレ1において、液透過パネル3の波板状シート32は曲線状のシートで構成されているが、波板状シート32はジグザグに折り曲げられたシートにより構成されてもよい。また孔部31の開口部の形状は、これらに限らず例えば六角形であってもよいし、円形であってもよい。開口部の大きさが前述した所定の範囲であり、厚さ方向に貫通する孔部であれば、任意の形状を適宜選択することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る動物用システムトイレ1において、支持部4は格子状の多孔板に変えて、円形の開口部が規則的に設けられたパンチングプレート、平行してスリットが多数設けられた多孔板、網状の板等に変更されてもよい。
【0052】
本発明の動物用システムトイレ1は、犬、猫、兎等のペットとして飼育される動物用のトイレとして使用でき、特に室内で飼育される犬用のトイレとして好適に使用できる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
以下に記す方法に従い、下記の通り、紙製液透過パネル材料、ウレタン、不織布について、圧縮強度試験として、下記の試験1、2を行った。試験の結果を表1、表2に記す。
【0055】
紙製液透過パネル(実施例1):王子板紙(株)より入手可能なONBS耐水原紙(坪量180g/m2)を使用したAフルート片側段ボールを積層させてカットし、図5のようなコルゲートハニカム構造に加工したもので、孔部開口部の平均面積は16mm/個。これを5cm×12cmにカットした。
ウレタン(実施例2〜4):それぞれ、厚さ3mm、7mm、10mmのウレタンフォームを5cm×12cmにカットした。
不織布(比較例1〜3):それぞれ、35g/m目付、70g/m目付、100g/m目付の不織布を5cm×12cmにカットした。
【0056】
〔圧縮強度試験1〕
(1)試料を固定し、試料の横方向(厚さ方向に対して垂直な方向)から、試料の側面に対し、先端が直径10mmの円系プランジャーで、試料が1cm変形するまで、500mm/minの速度で荷重をかけた。実施例1については、図5に示す12cmの側面からのX方向(積層方向)と5cmの側面からのY方向(非積層方向)の両方向に荷重をかけて測定し、その他の実施例、比較例については、試料の長さ5cmの側辺に荷重をかけた。
(2)デジタルフォースゲージでピークの荷重を測定した。それぞれの試料について、各4回荷重を測定し、その平均値(N)を表1に記した。
【0057】
【表1】

【0058】
〔圧縮強度試験2〕
(1) 試料をトイレ表面に設置し、重量約3kgの小型犬で実際使用した。
(2)1日間使用し、よれやめくれが全くなかったものの結果を○、一回1cm以上のよれやめくれがあったものを△、2回以上1cm以上のよれやめくれがあったものを×とし、結果を表2に記した。
【0059】
【表2】

【0060】
表1、2より、圧縮強度が、おおよそ0.35N以上、好ましくは1N以上あることが、3kgの小型犬の踏みつけによる横方向からの圧力に対して、好ましい圧縮強度であることが分かる。実施例1の紙製液透過パネルは、積層方向、非積層方向ともに、充分な圧縮強度を持つことが分かる。ウレタンフォームについては、10mm以上の厚さがある場合に好ましい圧縮強度があることが分かる。比較例1〜3の不織布はペットシートの材料として用いられる場合が多いが、これについては横方向からの圧力に対して圧縮強度をまったく持たないことが分かる。
【0061】
また、表1、2より、実施例1のコルゲートハニカム構造の紙製液透過パネルにおいては、積層方向についてより強い圧縮強度があることが分かる。動物用システムトイレに、この液透過パネルを用いる場合、例えば、上部容器側壁部42の一部に壁の低い犬の入り口を設けて、犬の進入方向を一定に規定し、犬の踏みつけによる圧縮力のかかる方向と、液透過パネル3のコルゲートハニカム構造の積層方向を一致させることにより、より高い圧縮力に対してよれを防止できることが分かる。
【0062】
後述する、実施例5、実施例6、及び比較例4において、人工尿は以下の組成のものを用いた。
〔人工尿組成〕
尿素 400g
塩化ナトリウム 160g
硫酸マグネシウム(7水和物) 16g
塩化カルシウム(2水和物) 6g
以上を合計20Lになるように水で調整する。
調整液に、青色1号を2g加え着色する。
【0063】
<実施例5、実施例6、及び比較例4>
以下に記す方法に従い、下記の紙製液透過パネル材料、不織布性液透過パネル材料、及びプラスチック製スノコについて、それぞれ、5回ずつ、液透過率試験、足濡れ性試験を行った。液透過率試験の結果を表3に、足濡れ性試験の結果を表4にそれぞれ記す。
【0064】
(液透過パネル材料)
紙製液透過パネル(実施例5):ニューレンコートを原紙として使用、Aフルート段ボールをコルゲートハニカム構造に加工したもの、孔部開口部の平均面積16mm/個。
不織布性液透過パネル(実施例6):活性炭を含有したポリエステル繊維を使用した脱臭紙を原紙として使用、Aフルート段ボールをコルゲートハニカム構造に加工したもの、孔部開口部の平均面積10.5mm/個、パラフィン系撥水剤4.8%添加。
プラスチック製スノコ(比較例4):メッシュトレイ(ポリプロピレン製、開口部形状:縦6mm×横6mm、横方向桟太さ3.5mm、縦方向桟太さ3.5mm)
【0065】
〔液透過率試験〕
あらかじめ重量(A)を測定された受け皿を、液透過率を測定する試料の下部に置く。人工尿約30mlを測りとり人工尿の重量(B)を測定する。試料上に内径60mmの円筒を置き、円筒の内側に人工尿をまんべんなく滴下する。試料から人工尿の液滴が落下しなくなった時点で人工尿の入った受け皿の重量(C)を測定する。液透過率の値を下式に基づいて算出する。
【0066】
(液透過率計算式)
液透過率(%)=(重量(C)−重量(A))÷重量(B)×100
【0067】
〔足濡れ性試験〕
使い捨て液透過パネル3の材料の上に内径60mmの円筒を置き、その内側に30mlの人工尿をまんべんなく滴下する。人工尿の滴下後、円筒を取り除き、30分間放置する。10cm×10cmのろ紙(JIS P3801に定められる2種)の重量(A)を測定する。30分後、液透過パネル3の材料の人工尿を滴下した箇所の上に10cm×10cmのろ紙を載せ、5秒間静置する。5秒後、ろ紙を取り外し、ろ紙の重量(B)を測定する。足濡れ性の試験結果を下式に基づいて算出する。
【0068】
(足濡れ性計算式)
足濡れ性(g)=重量(B)−重量(A)
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
比較例4より、プラスチック製のスノコが、人工尿を良好に透過することが、表4より分かる。しかしプラスチック製のスノコでは、足濡れ試験において、スノコ上に残存した人工尿が多量にろ紙に付着する結果となった。
【0072】
一方、紙や不織布等からなるコルゲートハニカム形状のパネルからなる液透過パネル3を用いた実施例5及び実施例6では、液透過パネル3が優れた液透過性を示すことが分かった。このため、実施例5及び実施例6の液透過パネル3を用いれば、人工尿の大分部分が液透過パネル3を透過し、僅かに液透過パネル3上に残存する人工尿は液透過パネル3に吸収されるため、足濡れ試験において表5に示されるようにろ紙には殆ど人工尿が付着しないことが分かった。
【0073】
表1から4より、コルゲートハニカム形状の構造の紙製液透過パネルは、液透過性が高く、且つ、圧縮強度も強いことより、動物用システムトイレの排泄物吸収部を覆う液透過パネルとして好適であることが分かった。
【符号の説明】
【0074】
1 動物用システムトイレ
2 排泄容器
21 排泄物収容部
3 液透過パネル
31 孔部
32 波板状シート
33 平板状シート
4 上部容器
41 支持部
5 空間
6 吸液シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物用トイレにおいて動物が直接乗る部分に載置される液透過パネルであって、
下記で定義される、前記液透過パネルの側面1cm圧縮変形荷重が0.35N以上20N以下である液透過パネル。
[側面1cm圧縮変形荷重:液透過パネルの厚さ方向に対して垂直な側面方向から、先端が直径10mmの円系プランジャーで、500mm/minの速度で圧縮荷重をかけた際に、液透過パネルが1cm変形するまでの荷重。]
【請求項2】
前記液透過パネルは、該液透過パネルの厚さ方向に貫通する複数の孔部を有し、液が前記複数の孔部を通って前記液透過パネルの厚さ方向に透過する段ボール紙である請求項1記載の液透過パネル。
【請求項3】
前記段ボール紙は、該段ボール紙を構成するシート部材を積層して得られるブロックを、前記孔部の貫通方向と垂直に所定の厚さで切断して得られる請求項2記載の液透過パネル。
【請求項4】
前記液透過パネルは、90%以上の液透過率を有する請求項1から3の何れかに記載の液透過パネル。
【請求項5】
排泄物収容部を有する排泄容器と、前記排泄物収容部の上部空間に着脱可能に配置される請求項1から4の何れかに記載の液透過パネルと、を備える動物用システムトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5442(P2012−5442A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145700(P2010−145700)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】