説明

液面被覆用フロート

【課題】投入されたフロートがどの向きで液面に浮いても隙間なく常に液面上に配列することができる構造の液面被覆用フロートを提供する。
【解決手段】所定の厚さを有する正六角形状の板を底板とし、その底板と同じ正六角形状の第1〜第3の板を、底板の正六角形状の面に垂直な中心軸を通り、第1〜第3の板のそれぞれの隣接する二つの側面の交線と、底板の隣接する二つの側面の交線とが2箇所で交点Oを形成するように底板1が重ね合せられている。そして、その交点Oの位置では、底板と第1〜第3の板の板厚を薄くすることにより、交点Oが頂点となるように形成される構造の成形体10になっている。そして、この成形体10を液体中に入れた場合に、底板または第1、第2および第3の板のいずれかに相当する部分1a、2a、3a、4aが液面上に現れるように成形体10の重さが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体が液体中に溶け込んだり、液体が蒸発したりするのを防止し、液体の保温や臭気の発散を防止するために、液体の表面に浮かべて液面を被覆する液面被覆用フロートに関する。さらに詳しくは、小さな容器内の液面を被覆するため、フロートを小さくしても、フロートが重なり合ったり、向きが不順で隙間ができたりすることなく、きれいに並んで液面を塞ぐことができる液面被覆用フロートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液面被覆用フロートとしては、中空に形成されている球状のフロートが知られている。この球状のフロートは、多数個をまとめて液体中に投げ込んでも、重なり合うことなく液面に浮いて並ぶため、効率的にフロートを並べることができる。しかし、球状の直径部分が液面に並ぶため、液面では円の配列になり、液面を完全に塞ぐことはできず、小さい球を混ぜて投入する必要があるが、それでも完全に表面を塞ぐことはできない。
【0003】
また、フロートとして、平面形状が正六角形状で、上下面に低い錐面または凸状曲面を形成した一定の厚さを有する板状構造のものも知られている(たとえば、特許文献1参照)。このように、平面形状を正六角形状にすれば、液面状に配列されると隙間を生じることなく並べることができる。しかし、たとえば室内用や実験室用の小さな容器などの液体に隙間を生じることなく浮かべるには、対角の寸法が10mm程度と小さくする必要がある。このような小さいフロートを纏めて液中に投入すると、上下面に錐面や凸状曲面が形成されていても、フロート同士がくっついて重なり合い、その結果、液面を完全に塞ぐことができない。
【0004】
一方、たとえば図8に示されるように、平面形状が正六角形状のフロートで、上面の錐面51を高くして、たとえば仰角αが45°以上の錐面または凸状曲面とし、下面側の肉厚を厚くするなどの工夫により、常に上面が上を向く構造にしたものも考えられている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−355395号公報
【特許文献2】特開2002−114292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の平面形状が正六角形の板状のフロートでは、前述のように、とくに小さくなると重なり合ってくっついてしまい、液面を完全に塞ぐことができない。また、前述の図8に示されるように、上面側に高い錐面や凸状曲面を形成した構造のフロートは、大きい傾斜を有しているため、必ず高い錐面や凸状曲面が上を向けば重なり合うという問題はなくなる。しかし、多数個がまとめて液体中に放り込まれたときに密集していると、たとえフロートの下面側を重くしておいても、下向きや横向きに放り込まれたフロートが、正常な向きにひっくり返ることは難しくなる。すなわち、上面を上に向けるためにフロートが回転しようとするとき、その回転が周囲の他のフロートに妨げられ、必ずしも回転できないことがある。そのため、フロートが横向きの状態で液面に浮かぶと、フロートの正六角形状が液面に現れないため、周囲の別のフロートと密着することができない。その結果、液面を完全に被覆することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、投入されたフロートがどの向きで液面に浮いても隙間なく常に液面上に配列することができる構造の液面被覆用フロートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液面被覆用フロートは、所定の厚さを有する正六角形状の板を底板とし、該底板と同じ正六角形状の第1、第2および第3の板を、前記底板の正六角形状の面に垂直な中心軸を通り、前記第1、第2および第3の板のそれぞれの隣接する二つの側面の交線と、前記底板の隣接する二つの側面の交線とが2箇所で交点を形成するように前記底板を貫通させて重ね合せると共に、該交点の位置では、前記底板と前記第1、第2および第3の板の板厚を薄くすることにより前記交点が頂点となるように形成される構造の成形体であり、該成形体を液体中に入れた場合に、前記底板または前記第1、第2および第3の板のいずれかに相当する部分が液面上に現れるように前記成形体の重さが設定される構造になっている。
【0009】
また、前記成形体は、底板に相当する部分と、前記第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間の少なくとも一部が成形材料により埋め込まれた形状となるように形成されてもよい。そうすることにより、間隙部に別のフロートの突状部が入り込むことを防止することができ、2個以上のフロートが積み上がるという問題が殆ど発生しないため好ましい。
【0010】
前記成形体は、前記底板に相当する部分と、前記第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間が、平面で繋がるように成形材料により埋め込まれた形状の多面体となるように形成されてもよい。
【0011】
ここに多面体とは、複数の多角形の面により囲まれた立体であり、2つの多角形が共有する辺(稜)で2つの多角形のなす角度が、立体の中心から見て180°以下の立体を意味する。多角形の面には、多少の凹凸を有するものも含む。
【0012】
前記成形体は、前記底板に相当する部分と、前記第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間が、該空間を構成する前記底板に相当する部分、第1、第2および第3の板に相当する部分のうちの二つのそれぞれの端部が交わる三点を結ぶ面が露出面となるように、前記空間が成形材料により埋め込まれた形状に形成されていることが、別のフロートとの吸着を防ぐ観点から好ましい。ここに端部とは、各板に相当する部分の側面の一辺をいう。
【0013】
前記成型体の表面が残され、内部を空洞化して中空に形成されていてもよい。また、この中空に形成した前記多面体の内部に錘を入れることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液面被覆用フロートによれば、底板と、第1、第2および第3の板に相当する部分の成形材料を有しており、その間隙部分が空隙になっており、成形体材料は液体よりも軽い材料が用いられているため、液体中にフロートが放り込まれた場合に、底板、第1の板、第2の板および第3の板に相当する部分のいずれかが液面上に現れる。すなわち、いずれかの板に相当する部分の間隙部が液面に位置するように液体中に入れられても、間隙部の液面よりも下の部分は液体で埋められており、その下に液体よりも軽い成形体材料があるため、その成形体材料の部分、すなわち板に相当する部分が液面に浮かび上がって安定する。この関係は、板に相当する部分の間隙部に成形体材料が埋め込まれて多面体にされた場合でも、その間隙部を埋めた面は、成形体全体の一つの面として連続した面ではないため、非常に不安定であると共に、間隙部の中心部分がちょうど液面になればバランスを保ちうるが、少しでもずれると、そのバランスを維持することができず、板に相当する部分が液面にきて安定する。
【0015】
そのため、底板、第1の板、第2の板および第3の板のいずれかに相当する部分が常に液面に浮かんでいる状態になり、上から見ると正六角形状になり、液面には各板に相当する部分の側面が現れる。この各側面は全て同じ幅で同じ長さであるため、各フロートの側面が隣接すると、表面張力により密着する。そのため、複数のフロートが集まることにより、液面に隙間が形成されることなく液面を覆うことができる。
【0016】
さらに、液面と平行な平面部分は各板に相当する部分の側面部しかなく、面積の大きい平面または平面に近い錐面や曲面を有しないため、2個以上のフロートが積み上がるという問題は殆ど発生しない。ごくまれに積み上がった場合でも、下のフロートが上に乗ったフロートの重さにより沈み込むため不安定となり、積み上がった状態で安定することはない。この傾向は、各板に相当する部分の間隙部を埋め込んだ場合(多面体にした場合など)でも、同様の傾向になるが、底板に相当する部分と平行な面が平面になると、他のフロートが重なり合う場合が生じる可能性がある。このような場合は、少なくともこの面が平面にならないで凹面になるように埋め込むことにより、表面張力による吸着力が働かないため、重なり合うという問題はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の液面被覆用フロートの一実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】本発明の液面被覆用フロートの構造を説明するための底板および第1〜第3の板に相当する部分の結合した状態の上面および断面の説明図である。
【図3】本発明の液面被覆用フロートを液体に浮かべたときの配列の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の液面被覆用フロートを液体に浮かべたときの配列の他の例を示す説明図である。
【図5】本発明の液面被覆用フロートを液体に浮かべたときの配列のさらに他の例を示す説明図である。
【図6】本発明の液面被覆用フロートの他の実施形態を示す斜視説明図である。
【図7】本発明の液面被覆用フロートのさらに他の実施形態を示す斜視説明図である。
【図8】従来の液面被覆用フロートの構造例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、添付図面を参照しながら、本発明の液面被覆用フロートを詳細に説明する。本発明による液面被覆用フロートは、図1にその斜視説明図、図2に成形体の構造を説明する各板を結合した状態の上面図および底板1と第1の板2とを結合した状態の断面説明図がそれぞれ示されているように、所定の厚さbを有する正六角形状の板を底板1とし、その底板1と同じ正六角形状の第1、第2および第3の板2、3、4を、底板1の正六角形状の面に垂直な中心軸Cを通り、第1、第2および第3の板2、3、4のそれぞれの隣接する二つの側面の交線P(すなわち側面の角部)と、底板1の隣接する二つの側面の交線P(側面の角部)とが2箇所で交点Oを形成するように(換言すると、両角部がその中心で一致するように)底板1に重ね合せられている。そして、その交点Oの位置では、底板1と第1、第2および第3の板の板厚を薄くすることにより、交点Oが頂点となるように形成される構造の成形体10になっている。そして、この成形体10を液体中に入れた場合に、底板または第1、第2および第3の板のいずれかに相当する部分1a、2a、3a、4aが液面上に現れるように成形体10の重さが設定されている。
【0019】
底板1は、使用目的に応じた所望のフロートの大きさにより、その一辺の大きさaおよび厚さbが決定される。すなわち、液体を入れるタンクが大きい場合にはフロート10も大きくできるが、室内用とか実験用の容器などに液体を入れる場合には、容器自身が小さくなり、フロート10が大きくなると、容器の端の方で液体を被覆できない部分の面積が相対的に大きくなり、液体の表面を覆うという趣旨を全うすることができない。そのため、このような小形容器に入れた液体の表面を覆うには、対角の寸法(正六角形の対向する頂点を結ぶ線の長さ)で10〜50mm程度、すなわち正六角形の一辺の長さaが5〜25mm程度で、厚さbが5〜20mm程度の大きさに設定される。しかし、大きな容器内の液体の蓋をする場合でも、この小さいフロートをそのまま用いることもできるし、大きな容器用には、もっと大きいフロートを用いることもできる。すなわち、対角の寸法が150〜200mm程度の大きいものでも同様に形成することができる。厚さbは、隣接するフロート同士が表面張力により吸着する部分であるので、余り薄いと吸着力がなくなるので、また、液面より上に現れる部分に吸着力が強く働くため、常にある幅が液面より上にでる必要がある一方、比重のバラツキも考慮する必要があり、少なくとも5mm程度は必要となり、上限は20mm程度あれば足りるが、その寸法には限定されない。なお、大きな容器用で、前述の対角を大きくする場合には、その対角を大きくする割合に応じてこの厚さbも大きくすることが好ましい。
【0020】
このような正六角形状の板を1枚底板1として水平に置き、第1〜第3の板2、3、4を底板1の面と垂直な中心軸Cを通るように、かつ、第1〜第3の板2、3、4がそれぞれの角部が底板1の異なる角部と重なるように、すなわち第1〜第3の板2、3、4がそれぞれ60°回転した位置で、底板1の正六角形の角部と重なるように一体化されている。さらに詳細に説明すると、底板1の2つの側壁が交わる交線Pの中心部と、第1〜第3の板2、3、4のそれぞれの2つの側壁が交わる交線Pの中心部とが一致して頂点(交点O)を形成するように重ね合せた構造になっている。すなわち、それぞれの板が重ね合されることにより重複する部分は、その重複分を省略した構造で、図2(a)にその上面図が、図2(b)に第1の板2の中心部での断面説明図が示されている。そして、交線Pの交わった部分では、その交線Pの交わる点Oが正六角形の頂点となるように、各板が端部で薄くされた構造に形成されている。
【0021】
本発明によるフロートの成形体10の構造は、底板1の正六角形の角部が、第1〜第3の板2、3、4の正六角形の角部と一致するように、かつ、第1〜第3の板2、3、4は底板1の中心軸Cを通るように重ねる、という構造であるが、換言すると、図2(b)に示されるように、底板1と第1の板2とを重ね合せた構造で、第1の板2を中心軸Cの回りに60°回転した位置に第2の板3を重ね合せ、さらに同じ方向に60°回転させた位置に第3の板4を重ね合せることによっても、同様の構造にすることができる。そして、その角部の板厚を薄くして、頂点(交点O)を形成することは前述と同じである。
【0022】
このようにして形成された構造物の外形に合せて金型を形成し、射出成形などにより樹脂などの成形材料を注入することにより形成することができる。材料としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂、ゴムあるいはエラストマなどの弾性部材、アルミニウムなどの金属材料などの材料を使用することができる。この場合、材料の密度が大きい場合には、合成樹脂などに、発泡剤を混ぜておくことにより、発泡成形体を作成したり、発泡させた樹脂からなるビーズを材料として型に入れ、熱圧縮成形したり、ペースト状のゴムに加硫剤と共に発泡剤を混ぜ込んで成形したり、後述するように内部を中空にしたりすることもできる。このような発泡させた材料を用いたり、内部を中空にしたりすることにより、成形材料としては、液体よりも密度の大きい材料、たとえばPFA(比重:約2)などの水よりも密度の大きい材料を用いることもできる。
【0023】
この成形体は、水、油、アルコールなど種々の液体中に入れた場合に、底板に相当する部分1a、または第1〜第3の板に相当する部分2a〜4aが液面に浮かぶようにその重量と浮力とにより設計される。すなわち、底板に相当する部分1aや第1〜第3の板に相当する部分2a、3a、4aはこの成形体10を二分する位置になるため、この成形体10の全体の重さと、成形体10の全体積の半分の液体の重さ(水、油、アルコールなどにより同じ体積でも重さは異なる)とがほぼ等しくなるように形成される。成形体10の重量が大きすぎると成形体10の半分以上が沈むため、軽い材料を用いるか、成形の際に前述のように、発泡剤を添加してその発泡剤を発泡させて成形体10内に空隙部を形成する発泡成形体にするか、成形体10の内部を中空に形成する。成形体10の内部を中空にする場合、後述する多面体の構造などにすると製造が非常に容易になる。液体が水の場合には、比重が0.5程度になるように成形体10を形成することにより、前述の板に相当する部分が水面に現れるようにすることができる。
【0024】
本発明の液面被覆用フロートは、このような構造と重さになるように形成された成形体10であるため、たとえば多数個をランダムに液体中に放り込んでも、重なり合うことなく液面に浮かぶ。すなわち、成形体10の上下左右の位置関係はなく、球に近い形状で全ての方向に対称形であるため、液内で起き上がりこぼしのように回転させる必要はなく、液中に入ったまま、その浮力で液面に浮かび、前述のように、板に相当する部分以外のところが液面に来ると不安定になり、液面に一番近い板に相当する部分が液面に現れて安定する。また、液中に放り込まれたときに上下に重なった場合が生じても、その重なった下のフロートは浮力よりも大きな重力が働くため、液中に沈み、横に浮いて液面に浮かび上がる。そのため、全てのフロートは液面に浮かぶ。一方、液面に浮いている各フロートは、前述のように板に相当する部分が水面に現れているため、上から見ると正六角形になっている。しかも、正六角形の各辺は板に相当する部分の厚さbを有する側面になっており、その半分以上が液面上に現れるように重量が調整されている。そのため、隣接するフロートの各辺の側面が表面張力で引き付けあって吸着する。
【0025】
この吸着した状態を上面から見て示した図が、図3〜5に示されている。すなわち、図3は3個の成形体10が共に底板に相当する部分1aが液面に現れて吸着した状態を示す平面図であり、図4は、3個の成形体10が共に第1〜第3の板に相当する部分2a〜4aが液面に現れた場合の平面図であり(第1〜第3の板に相当する部分2a〜4aのいずれが液面に現れても同じ形状になる)、図5は、その両方が入り混じった状態の平面図である。このように、複数の成形体10(フロート)がいずれの状態で液面に浮いても、上から見ると常にそれぞれは正六角形であり、その側面には一定の幅を有しているため、表面張力による吸着により液面に隙間を生じさせることなく埋め尽くすことができる。
【0026】
図6は、本発明の液面被覆用フロートの他の実施形態を示す、図1と同様の斜視説明図である。このフロート(成形体10)は、図1に示す液面被覆用成形体10の、第1〜第3の板に相当する部分2a〜4aのそれぞれの間隙部を表面が平面になるように成形材料により埋め込んだ構造をしている。その結果、多面体になっており、図6に示されるように、第1〜第3の板に相当する部分2a〜4aのそれぞれの間隙部の空間がなくなっている。他の各板に相当する部分の角部の構造や重量などは図1に示される例と同じである。
【0027】
このような構造にすることにより、多数個のフロートが同時に液面に投げ込まれたときにフロートが密集していても、間隙部に別のフロート(成形体10)の板に相当する部分の一部が入り込むことを防ぐことができると共に、各板に相当する部分1a〜4aは、図1の場合と同様に表面にそのまま露出しているため、図1に示される例と同様に液面で他のフロート(成形体10)と吸着することができる。一方、図6に示されるように、底板に相当する部分1aが液面に来ると、その上面5が平面になるため、この上に他のフロート(成形体10)の上面5が乗って相互にくっつく場合が起こり得る。しかし、他のフロート(成形体10)も図6に示されるフロート(成形体10)と同じ向きで重なった場合にのみ吸着する可能性があるだけで、別の面、すなわち斜面6が乗っても、斜めで重心が合わないため滑り落ち、また、各板に相当する部分(側壁に相当する部分)が乗っても、その面積は小さいため安定せず、すぐに落ちて重なった状態が続くことはない。また、図6に示される状態と同じ向きで重なって上に乗っても、この上に別のフロート(成形体10)が乗ると、重量は2倍になるため、下側のフロートは液面よりも下に沈み、表面張力もなくなり、液中に沈んだフロートは上に乗ったフロートから分離して液面に浮かび上がる可能性が非常に大きい。そのため、フロート(成形体10)同士が上下に重なり合うことは殆ど生じない。
【0028】
しかし、このような可能性をさらに減ずるには、図6に示される上面5で、第1〜第3の板に相当する部分2a〜4aを除いた部分を凹面に形成することにより、表面張力が働かなくなるため、重なり合う可能性がより一層なくなる。また、斜面6には、前述のように、他の面がくっつき合うことは殆ど生じないが、同様に凹面または凸面に形成することができる。前述の上面5は、液面上で横になって他のフロート(成形体10)と接合する場合があるため、各板に相当する部分2a〜4aより出っ張ると支障を来たすが、この斜面6では他のフロート(成形体10)と接合する面ではないため、小さければ凸面になっていても問題はない。
【0029】
また、各面に凹面や凸面を形成するのではなく、斜面6から上面(下面)5にかけて連続した面となるような凹部を形成することもできる。その例が、図7に図6と同様の斜視説明図で示されている。すなわち、図7のフロート(成形体10)は、底板に相当する部分と、第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間を有しており、その空間を構成する底板に相当する部分、第1、第2および第3の板に相当する部分のうちの二つのそれぞれの端部が交わる三点を結ぶ面が露出面7となるように、空間を成形材料により埋め込んだ構造となっている。端部とは、板に相当する部分の側面の辺を意味しており、たとえば底板に相当する部分1aの端部と第1の板に相当する部分2aの交わる点がQ、第1の板に相当する部分2aと第2の板に相当する部分3aの交わる点がR、第2の板に相当する部分3aと底板に相当する部分1aの交わる点がSである。このQ、R、Sを結ぶ面は、平面であっても、凹面であっても、小さければ凸面であっても良い。第1、第2および第3の板に相当する部分の2つで挟まれる空間に、この三点Q、R、Sで囲まれる面(露出面7)を表面とするような壁面が形成されることにより、これらの板に相当する部分の間隙部を小さくすることができながら、相互に吸着することはあり得ないし、内部に中空部を形成しやすいので、より一層好ましい。
【0030】
前述の多面体形状の成形体10や、埋め込んだ部分の表面を凹面形状にした成形体10は、その外表面は型で形成されるため、ブロー成形や、回転成形、ガスインジェクション成形により、簡単に内部を中空に形成することもできる。また、そのような成形体10を2つに割って、それぞれ中空状のものを型成形で形成し、その2つを超音波溶着などにより接着して中空状のものを形成することもできる。このような中空状の構造にすることにより、とくに比重に適した材料がない場合に比重を調整する面からも、また、材料の節約の面からも有効である。このような中空体を形成するには、図1に示される構造よりも遥かに容易である。また、中空にして材料を節約する場合、比重が小さくなりすぎる場合には、中空部分に、錘を入れて比重を調整することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 底板
1a 底板に相当する部分
2 第1の板
2a 第1の板に相当する部分
3 第2の板
3a 第2の板に相当する部分
4 第3の板
4a 第3の板に相当する部分
5 上面
6 斜面
P 交線
O 交点(頂点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さを有する正六角形状の板を底板とし、該底板と同じ正六角形状の第1、第2および第3の板を、前記底板の正六角形状の面に垂直な中心軸を通り、前記第1、第2および第3の板のそれぞれの隣接する二つの側面の交線と、前記底板の隣接する二つの側面の交線とが2箇所で交点を形成するように前記底板を貫通させて重ね合せると共に、該交点の位置では、前記底板と前記第1、第2および第3の板の板厚を薄くすることにより前記交点が頂点となるように形成される構造の成形体であり、該成形体を液体中に入れた場合に、前記底板または前記第1、第2および第3の板のいずれかに相当する部分が液面上に現れるように前記成形体の重さが設定されてなる液面被覆用フロート。
【請求項2】
前記成形体は、前記底板に相当する部分と、前記第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間の少なくとも一部が成形材料により埋め込まれた形状となるように形成されてなる請求項1記載の液面被覆用フロート。
【請求項3】
前記成形体は、前記底板に相当する部分と、前記第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間が、平面で繋がるように成形材料により埋め込まれた形状の多面体となるように形成されてなる請求項2記載の液面被覆用フロート。
【請求項4】
前記成形体は、前記底板に相当する部分と、前記第1、第2および第3の板に相当する部分の二つとで囲まれる空間が、該空間を構成する前記底板に相当する部分、第1、第2および第3の板に相当する部分のうちの二つのそれぞれの端部が交わる三点を結ぶ面が露出面となるように、前記空間が成形材料により埋め込まれた形状に形成されてなる請求項2記載の液面被覆用フロート。
【請求項5】
前記成形体の埋め込まれた部分の表面が凹面形状に形成されてなる請求項2〜4のいずれか1項に記載の液面被覆用フロート。
【請求項6】
前記成形体の表面が残され、内部を空洞化して中空に形成されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の液面被覆用フロート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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