説明

深穴加工装置

【課題】 深穴加工装置を用いてワークに深穴を加工する際に、ワークの加工部と加工具の間に切屑が詰まることなく、深穴の加工を円滑に行うことができる深穴加工装置の提供。
【解決手段】 気体と潤滑油を混合させて発生されたミストをワーク100の加工部と加工具との接触部に供給するミスト供給路85と、気体をミスト供給路に供給する気体供給路82とを有することにより、気体供給路82から供給される気体によりミスト供給路85のミストをワークの加工部と加工具との接触部まで確実に送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動する加工具によってワークに深穴を加工することが可能な深穴加工装置に関する。詳しくは、加工具が取り付けられた主軸がワークの加工部に向かって回転移動することにより、ワークに深穴を形成する深穴加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークに所定の深さの穴を加工する際に、切削液と気体から発生されたミストを加工具の切刃部分に供給する深穴加工装置が知られている。
【0003】
この種の深穴加工装置では、たとえば、気体経路から供給される気体と切削油経路から供給される切削油を主軸の先端部内或いは工具ホルダ内に設けられたミスト発生装置で混合させてミストを発生させ、そのミストを刃物の通路を通じて切刃近傍から噴射させるものがあった(特許文献1)。
【0004】
また、加工具を取り付けた加工軸がワークの加工部に向かって移動することにより当該ワークに所定の加工を行う機械加工機に対し、圧縮エアによりミスト化された潤滑油ミストを供給する機械加工機の潤滑油ミスト供給装置であって、上記機械加工機に付設されたシリンダと、該シリンダ内を摺動するピストンとを有し、該ピストンの摺動動作に伴ってエアを圧縮するエア圧縮手段と、上記加工軸の移動に連繋して上記ピストンを駆動する連繋手段と、少なくとも上記ワークの加工部に向かって潤滑油を供給する潤滑油供給手段と、該潤滑油供給手段からの潤滑油を上記エア圧縮手段からの圧縮エアによりミスト化し、その潤滑油ミストを上記ワーク外からワークの加工部に向かって噴霧供給する噴霧供給手段と、を備えたものがあった(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平9‐66437号公報
【特許文献2】特開2004‐58229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の技術では、ミスト発生手段を主軸の先端部内或いは工具ホルダ内に設けているため構造が複雑になり、さらに深穴の加工が進むにつれて、刃物の先端(切刃近傍)付近に切屑が溜まった場合には、切屑と刃物先端との摩擦により深穴の加工が困難になるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された従来の技術では、刃物の先端部に潤滑油が届かず、刃物先端と切屑との摩擦により深穴の加工が困難になるという問題があった。
【0008】
さらに、いずれの従来の技術においても、刃物の先端(切刃近傍)付近に切屑が溜まることによって、加工具に摩擦抵抗が作用して加工具の損傷等が生じてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、気体(たとえば、圧縮空気など)と潤滑油を混合させてミストを発生させるミスト発生手段(たとえば、ミスト発生手段86など)と、該ミスト発生手段により発生されたミストをワークの加工部と加工具との接触部に供給するミスト供給路(たとえば、ミスト供給路85など)と、気体をミスト供給路に供給する気体供給路(たとえば、気体供給路82など)と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
これにより、気体供給路からミスト供給路に気体が供給され、その気体によりミスト供給路のミストをワークの加工部と加工具との接触部まで確実に送り出すことができるため、ミスト発生手段を主軸の先端部近傍に設ける必要性もなく単純な構造で深穴加工装置を構成することができるとともに、加工具の先端部にミスト(潤滑油を含む)を確実に届けることができるので、加工具先端とワークとの摩擦による深穴の加工が困難になるということもない。
【0011】
また、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まっているかを判定するための目詰判定値(たとえば、流量値L、圧力値M、回転トルクQ、温度N、加工具温度DN、切屑温度KNなど)を測定する目詰判定値測定手段(たとえば、流量計89、圧力計88、回転トルク検出センサ(図示略)、温度センサ(図示略)、加工具温度センサ(図示略)、切屑温度センサ(図示略)など)と、該目詰判定値測定手段により測定された目詰判定値があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり流量値X、目詰まり圧力値P、目詰まりトルクK、目詰まり温度T、目詰まり加工具温度DT、目詰まり切屑温度KTなど)に達しているかを判定する目詰判定手段(たとえば、制御装置99など)と、該目詰判定手段により、目詰判定値測定手段により測定された目詰判定値があらかじめ設定された閾値に達していると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
これにより、目詰判定値測定手段により測定された目詰判定値があらかじめ設定された閾値に達していると判定された場合に気体供給路を流れる気体の流量を増加させるので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0013】
また、気体供給路を流れる気体の流量を測定する流量測定手段(たとえば、流量計89など)と、該流量測定手段により測定された流量値(たとえば、流量値Lなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり流量値Xなど)以下であるかを判定する流量判定手段(たとえば、制御装置99など)と、該流量判定手段により、流量測定手段により測定された流量値があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり流量値Xなど)以下であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0014】
これにより、流量測定手段により測定された流量値があらかじめ設定された閾値以下であると判定された場合に気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0015】
気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の流量を調節する流量調節手段(たとえば、ソレノイドバルブ92、流量制御装置(図示略)など)を、さらに有し、制御手段は、流量測定手段により測定された流量値(たとえば、流量値Lなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり流量値Xなど)以下であると判定された場合に、気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の流量をあらかじめ設定された流量値まで増加させるように流量調節手段を制御することを特徴とするものである。
【0016】
これにより、流量測定手段により測定された流量値があらかじめ設定された閾値以下であると判定された場合に気体供給路を流れる気体の流量をあらかじめ設定された流量値まで増加させるように流量調節手段を制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合に増加させる気体供給路の気体の流量を任意の流量値に設定することができ、これにより加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0017】
また、気体供給路を流れる気体の圧力を測定する圧力測定手段(たとえば、圧力計88)と、該圧力測定手段により測定された圧力値(たとえば、圧力値Mなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり圧力値Pなど)以上であるかを判定する圧力判定手段(たとえば、制御装置99など)と、該圧力判定手段により、圧力測定手段により測定された圧力値があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり圧力値Pなど)以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0018】
これにより、圧力測定手段により測定された圧力値があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0019】
また、気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の圧力を調節する圧力調節手段(たとえば、ソレノイドバルブ92、圧力制御装置87など)を、さらに有し、制御手段は、圧力測定手段により測定された圧力値(たとえば、圧力値Mなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり圧力値Pなど)以上であると判定された場合に、気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の圧力をあらかじめ設定された圧力値まで増加させるように圧力調節手段を制御することを特徴とするものである。
【0020】
これにより、圧力測定手段により測定された圧力値があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に気体供給路を流れる気体の圧力をあらかじめ設定された圧力値まで増加させるように圧力調節手段を制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合に増加させる気体供給路の気体の圧力を任意の圧力値に設定することができ、これにより加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0021】
また、主軸を回転させる主軸回転手段(たとえば、主軸回転駆動部33など)と、該主軸回転手段の駆動力を測定する駆動力測定手段(たとえば、回転トルク検出センサ(図示略)など)と、該駆動力測定手段により測定された駆動力の値(たとえば、回転トルクQなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まりトルクKなど)以上であるかを判定する駆動力判定手段(たとえば、制御装置99など)と、該駆動力判定手段により、駆動力測定手段により測定された駆動力の値があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まりトルクKなど)以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0022】
これにより、駆動力測定手段により測定された駆動力の値があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0023】
また、ワークの温度を測定するワーク温度測定手段(たとえば、温度センサ(図示略)など)と、該ワーク温度測定手段により測定されたワークの温度の値(たとえば、温度Nなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、円詰まり温度Tなど)以上であるかを判定するワーク温度判定手段(たとえば、制御装置99など)と、該ワーク温度判定手段により、ワーク温度測定手段により測定されたワークの温度があらかじめ設定された閾値(たとえば、円詰まり温度Tなど)以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0024】
これにより、ワーク温度測定手段により測定されたワークの温度があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0025】
また、加工具の温度を測定する加工具温度測定手段(たとえば、加工具温度センサ(図示略)など)と、加工具温度測定手段により測定された加工具の温度(たとえば、加工具温度DNなど)の値があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり加工具温度DTなど)以上であるかを判定する加工具温度判定手段(たとえば、制御装置99など)と、加工具温度判定手段により、加工具温度測定手段により測定されたワークの温度があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり加工具温度DTなど)以上であると判定された場合に、気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0026】
これにより、加工具温度測定手段により測定された加工具の温度があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0027】
また、深穴形成の加工時に生じた切屑の温度を測定する切屑温度測定手段(たとえば、切屑温度センサ(図示略)など)と、該切屑温度測定手段により測定された切屑の温度(たとえば、切屑温度KNなど)があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり切屑温度KTなど)以上であるかを判定する切屑温度判定手段(たとえば、制御装置99など)と、該切屑温度判定手段により、切屑温度測定手段により測定された切屑の温度があらかじめ設定された閾値(たとえば、目詰まり切屑温度KTなど)以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段(たとえば、制御装置99など)と、を有することを特徴とするものである。
【0028】
これにより、切屑温度測定手段により測定された切屑の温度があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合でも、流量を増加させた気体供給路の気体により、加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0029】
また、気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の流量を測定する流量測定手段(たとえば、流量計89など)と、気体供給路を流れる気体の流量を調節する流量調節手段(たとえば、ソレノイドバルブ92、流量制御装置(図示略)など)と、を有し、制御手段(たとえば、制御装置99など)は、気体供給路を流れる気体の流量をあらかじめ設定された流量値まで増加させるように流量調節手段を制御することを特徴とするものである。
【0030】
これにより、気体供給路を流れる気体の流量をあらかじめ設定された流量値まで増加させるように流量調節手段を制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合に増加させる気体供給路の気体の流量を任意の流量値に設定することができ、これにより加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0031】
また、気体供給路(たとえば、気体供給路82など)を流れる気体の圧力を測定する圧力測定手段(たとえば、圧力計88など)と、気体供給路を流れる気体の圧力を調節する圧力調節手段(たとえば、ソレノイドバルブ92、圧力制御装置87など)と、を有し、制御手段(たとえば、制御装置99など)は、気体供給路を流れる気体の圧力をあらかじめ設定された圧力値まで増加させるように圧力調節手段を制御することを特徴とするものである。
【0032】
これにより、気体供給路を流れる気体の圧力をあらかじめ設定された圧力値まで増加させるように圧力調節手段を制御するので、深穴形成の加工時に生じた切屑が加工具とワークの間に詰まった場合に増加させる気体供給路の気体の圧力を任意の圧力値に設定することができ、これにより加工具とワークの間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。
【0033】
また、深穴形成の加工時に生じた切屑及びミスト供給路から供給されたミストを構成する潤滑油を回収する回収路と、を有し、ミスト供給路は、主軸の内部に設けられ、回収路は、該主軸の外周面上に設けられたことを特徴とするものである。
【0034】
また、深穴形成の加工時に生じた切屑及びミスト供給路から供給されたミストを構成する潤滑油を回収する回収路(たとえば、切屑排出通路27aなど)と、を有し、該回収路は、主軸の内部に設けられたことを特徴とするものである。
【0035】
また、ミスト供給路(たとえば、ミスト供給路85など)は、主軸の外周面上に設けられたことを特徴とするものである。
【0036】
また、ミスト供給路(たとえば、ミスト供給路85など)は、ミスト発生手段から主軸近傍に至る外部ミスト供給路と、外部ミスト供給路と連通し、外部ミスト供給路の出口(たとえば、外部ミスト供給路出口57など)から主軸に取り付けられた加工具に至る内部ミスト供給路とからなり、ミスト発生手段により発生されたミストは、外部ミスト供給路の出口から内部ミスト供給路に対して主軸がワークの加工部に向かって移動する方向に傾斜させて供給されることを特徴とするものである。
【0037】
これにより、ミスト発生手段により発生されたミストが、外部ミスト供給路の出口から内部ミスト供給路に対して主軸がワークの加工部に向かって移動する方向に傾斜させて供給されるので、ミストがワークの加工部とドリルとの接触部により導きやすくなり、ミストの供給の流れをより増強することができる。
【0038】
また、ミスト供給路は、ミスト発生手段から主軸近傍に至る外部ミスト供給路と、外部ミスト供給路と連通し、外部ミスト供給路の出口(たとえば、外部ミスト供給路出口57など)から主軸に取り付けられた加工具に至る内部ミスト供給路とからなり、ミスト発生手段により発生されたミストは、外部ミスト供給路の出口から内部ミスト供給路に対して主軸の回転方向に沿って偏心させて供給されることを特徴とするものである。
【0039】
これにより、ミスト発生手段により発生されたミストが、外部ミスト供給路の出口から内部ミスト供給路に対して主軸の回転方向に沿って偏心させて供給されるので、ミストがワークの加工部とドリルとの接触部により導きやすくなり、ミストの供給の流れをより増強することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、気体と潤滑油を混合させてミストを発生させるミスト発生手段と、該ミスト発生手段により発生されたミストをワークの加工部と加工具との接触部に供給するミスト供給路と、気体をミスト供給路に供給する気体供給路とを有することにより、気体供給路から供給される気体によりミスト供給路のミストをワークの加工部と加工具との接触部まで確実に送り出すことができるので、ミスト発生手段を主軸の先端部近傍に設ける必要性もなく単純な構造で深穴加工装置を構成することができるとともに、加工具の先端部にミスト(潤滑油を含む)を確実に届けることができるので、加工具先端とワークとの摩擦による深穴の加工が困難になるということもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明に係る深穴加工装置の一実施形態について図面を参照にしながら説明する。図1は、本発明の一実施形態における深穴加工装置の一部切欠側面図である。また、図2は、本発明の一実施形態における深穴加工装置の上面図である。なお、本実施形態では、誘導加熱装置に用いられる中空のロールシェルをワーク100とし、そのワーク100(厚肉円管)の軸方向と平行方向に数十本の深穴を加工する場合について説明する。
【0042】
図1及び図2に示す深穴加工装置1は、基台3と、基台3の上部に設けられた加工ユニット支持部材4と、加工ユニット支持部材4の上部に設けられた加工ユニット5と、流量制御盤81とを備えている。
【0043】
まず、基台3について説明する。基台3は、床面2などの上部に備えられ、深穴加工装置1の土台となるものである。この基台3により、上述した加工ユニット支持部材4及び加工ユニット5が支持されている。基台3には、床面2と接する部分に、基台3を介して加工ユニット支持部材4及び加工ユニット5を図1に示すZ軸方向に移動可能とするZ軸方向移動手段6が設けられている。Z軸方向移動手段6は、基台3の下部に設けられた雌ねじが形成された雌ねじ筒(図示略)と、その雌ねじに螺合する雄ねじが形成されたZ軸方向移動回転体7からなり、このZ軸方向移動回転体7を回転させることにより、基台3を介して加工ユニット支持部材4及び加工ユニット5がZ軸方向に移動する。
【0044】
次に、加工ユニット支持部材4について説明する。加工ユニット支持部材4は、基台3の上部に配置し、加工ユニット5を支持するとともに、加工ユニット5を図1に示すX軸方向に移動可能とするX軸方向移動手段8及びY軸方向に移動可能とするY軸方向移動手段9を備えている。
【0045】
Y軸方向移動手段9は、加工ユニット5をX軸方向及びZ軸方向とほぼ直交するY軸方向(図1参照)に移動可能とするものであり、回転ハンドル10と、回転ハンドル10と連動する回転軸11と、ピニオン12と、ラック13とを備えている。
【0046】
回転ハンドル10は、手動によって回転されることにより、回転軸11を回転させるものである。この回転ハンドル10は、回転軸11に連結されていることから、回転ハンドル10を回転させることによりその回転ハンドル10の回転を回転軸11に伝達することができる。なお、本実施形態では、回転ハンドル10を手動により回転させ、その回転により回転軸11を回転させるようにしたが、これに限らず、回転ハンドル10の代わりに回転軸駆動モータ(図示略)により回転軸11を回転させるようにしてもよい。また、本実施形態では、回転ハンドル10の回転数と同一回転数で回転軸11を回転させるようにしたが、これに限らず、変則ギア(図示略)を設けて、回転ハンドル10の回転数と回転軸11の回転数を異ならせるようにしてもよい。
【0047】
回転軸11は、図1に示すように回転軸支持部材14a及び軸受14bにより支持されている。
【0048】
回転軸支持部材14aは、ラジアル軸受を用い、回転軸11とほぼ同径の中空部を有し、その中空部に回転軸11が挿通されることにより回転軸11を支持している。また、回転軸支持部材14aは、回転軸11を支持するとともに、回転軸11と回転軸支持部材14aのX軸方向の相対位置が変化しないように止め具14cが設けられている。また、軸受14bは、回転ハンドル10の近傍に設けられ、回転軸11とほぼ同径の中空部を有し、その中空部に回転軸11が挿通されることにより回転軸11を支持している。なお、回転軸支持部材14a及び軸受14bは、いずれも加工ユニット支持部材4に固着され、この回転軸支持部材14a及び軸受14bの中空部の中心は、回転軸11の軸心とほぼ一致するように設置されている。
【0049】
ピニオン12(歯車)は、外周が歯形であり、中央部には回転軸11が挿通される中空部を有している。そして、回転軸11がこのピニオン12の中空部で固着されていることから、回転ハンドル10を回転させることによりその回転ハンドル10の回転を回転軸11を介しピニオン12に伝達することができる。ラック13は、ピニオン12の外周に設けられた歯と噛合う歯が形成された面を平面形状としたもので、ピニオン12の回転運動をY軸方向の直線運動に変換するものである。すなわち、回転ハンドル10が回転されることにより、回転軸11に固定されたピニオン12が回転し、そのピニオン12の外周に設けられた歯と平面形状のラック13に設けられた歯が噛合うことによりピニオン12の回転運動がY軸方向の直線運動に変換される。これにより、加工ユニット5をY軸方向に移動させることができる。
【0050】
X軸方向移動手段8は、後述する加工ユニットの駆動部28をZ軸方向とほぼ直交するX軸方向(図1参照)に移動可能とするものであり、ケーシング20と、X軸方向移動駆動部21(モータ)と、ボールねじ23と、変位部材24(ボールねじナット)とを備えている。なお、加工ユニットの駆動部28は、本体部32と、主軸回転駆動部33(モータ)と、動力伝達ベルト34とを備えている。詳細は、加工ユニット5のところで後述する。
【0051】
X軸方向移動駆動部21は、電流によってX軸方向移動駆動部21の駆動軸を回転駆動させるものである。X軸方向移動駆動部21は、ケーシング20により外包されており、ケーシング20の内部でX軸方向移動駆動部21の駆動軸が、カップリング22を介してボールねじ23と連結されている。
【0052】
変位部材24は、ボールねじ23が挿通される中空部でボールねじ23と螺合し、ボールねじ23を介して加工ユニットの駆動部28をX軸方向に移動させるものである。そして、加工ユニットの駆動部28は、加工ユニットの駆動部28の下部に設けられた駆動部スライダ29が加工ユニット支持部材4の上部に設けられた加工ユニットガイドレール30を摺動することにより移動する。
【0053】
以上の構成から、X軸方向移動駆動部21に電流が供給されることにより駆動軸に連結されたボールねじ23が回転し、そのボールねじ23を介してボールねじ23に螺合された変位部材24がX軸方向に移動する。これにより、変位部材24に固定されている加工ユニットの駆動部28が加工ユニットガイドレール30に沿ってX軸方向に移動することとなる。なお、X軸方向移動駆動部21の駆動軸の回転方向を変えることにより、加工ユニットの駆動部28をそれぞれ図1に示すX軸方向正方向または負方向に移動させることができる。
【0054】
ボールねじ23は、図1及び図2に示すように、加工ユニットの駆動部28がX軸方向に移動可能な範囲に亘って延設されている。このボールねじ23の端部には、ボールねじ23を支持するボールねじ軸受25が設けられている。また、ケーシング20と加工ユニット支持部材4とが固着されている面には、ボールねじ23を支持する軸受26が設けられている。
【0055】
以上のように、X軸方向移動手段8及びY軸方向移動手段9によって、ワーク保持台101により保持されているワーク100の形状及び深穴加工を行うワーク100の位置に応じて、加工ユニット5(加工ユニットの駆動部28を含む)をXY平面上に自由に移動させることができる。なお、加工ユニット支持部材4の下部には、加工ユニット支持部材4が基台3上(Y軸方向)を移動する際の案内を行う案内部材15と、基台3と加工ユニット支持部材4のX軸方向の相対位置がほぼ一定になるように加工ユニット支持部材4のX軸方向の移動を規制するX軸方向移動規制手段16とが設けられている。
【0056】
案内部材15は、基台3の上部に設けられたガイドレール15bと、加工ユニット支持部材4の下部に設けられ、ガイドレール15bと接する部分にコロなどの回転体(図示略)が複数個備えられたスライダ部15aとからなる。そして、この回転体(図示略)が備えられたスライダ部15aが基台3の上部に設けられたガイドレール15b上をY軸方向に摺動することにより、基台3と加工ユニット支持部材4の摩擦が小さくなり、基台3に対する加工ユニット支持部材4のY軸方向の移動を円滑にすることができる。なお、ガイドレール15bは、図2に示すようにY軸方向に延設した形状をしている。
【0057】
X軸方向移動規制手段16は、X軸方向移動規制手段16の下端に凸部形状の突起部を有するスライダ部16bと、基台3の上部に設けられ、スライダ部16bの下端に備えられた凸部形状の突起部と係合する凸部形状の溝が設けられたガイドレール16aとを備えている。そして、上述したY軸方向移動手段9によって加工ユニット5がY軸方向に移動する際に、スライダ部16bの下部に設けられた凸部形状の突起部がガイドレール16aに形成された凸部形状の溝と係合しながら移動するので、基台3と加工ユニット支持部材4とのX軸方向の相対位置を一定に保ちながら、加工ユニット5をY軸方向に移動することができる。なお、ガイドレール16aは、図2に示すようにY軸方向に延設した形状をしている。なお、図1に示すように、Y軸方向移動手段9のピニオン12とラック13、案内部材15のガイドレール15bとスライダ部15a、X軸方向移動規制手段16のガイドレール16aとスライダ部16bは、深穴加工装置1の左右に設けられている。
【0058】
次に、加工ユニット5について説明する。加工ユニット5は、加工ユニット支持部材4の上部に設けられたものであり、主軸27(ボーリングバー)と、加工ユニットの駆動部28と、プレッシャヘッド31とを備えている。
【0059】
主軸27には、先端部にワーク100に深穴加工を行う後述するドリル(穿孔用工具)が連結されている。そして、主軸27は、ガイド部材37によりドリルの軸線方向に沿った変位をガイドされている。このガイド部材37には、主軸27が挿通される挿通孔が設けられており、その下部には、ガイド部材スライダ38が設けられている。そして、ガイド部材スライダ38を加工ユニットガイドレール30に沿って移動させることにより、ガイド部材37がX軸方向に移動可能となる。また、ガイド部材スライダ38の下部には、ガイド部材37を所望の位置に固定するための固定部材(図示略)が設けられている。そして、ガイド部材37を加工ユニットガイドレール30に沿って移動させた後に、その固定部材(図示略)によりガイド部材37を所望の位置に固定することができる。
【0060】
加工ユニットの駆動部28は、電流によって駆動軸を回転駆動させる主軸回転駆動部33(モータ)と、この主軸回転駆動部33からの駆動力を主軸27に伝達させる動力伝達ベルト34と、駆動部スライダ29の上部に本体部設置台39を介して固定されている本体部32とを備えている。
【0061】
主軸回転駆動部33の駆動軸には、円盤状の駆動プーリ35が設けられ、主軸27の一端部には、円盤状の従属プーリ36が設けられている。そして、駆動プーリ35と従属プーリ36の間に動力伝達ベルト34が懸架され、主軸回転駆動部33の駆動力が、駆動プーリ35から動力伝達ベルト34を介して従属プーリ36へと伝達されることにより、主軸27が回転する。
【0062】
この動力伝達ベルト34、駆動プーリ35、及び従属プーリ36は、本体部32の側壁に固定された箱状のケーシング17の内部に配設されている。
【0063】
本体部32は、内部に円筒状の空間が形成され、その側面に設けられた貫通孔を介して主軸27が回転自在に保持されている。また、本体部32の上部には、アダプタ18を介して主軸回転駆動部33が固定されている。そして、本体部32は、本体部設置台39を介して変位部材24に固定されているため、変位部材24が加工ユニットガイドレール30に沿って移動することにより、本体部32もその移動に伴って一体的にX軸方向に移動する。なお、図1に示す外部排出管19は、後述するように、ワーク100の加工時に発生した切屑及びミスト発生手段から供給されたミスト(潤滑油を含む)を外部の切屑貯留庫19aに送る配管である。ワーク100の加工時に発生した切屑及びミスト発生手段から供給されたミスト(潤滑油を含む)は、主軸27の中空部に形成された後述する切屑排出通路から外部排出管19を介して切屑貯留庫19aに送出される。
【0064】
プレッシャヘッド31は、主軸27の先端部に取り付けられた後述するドリルとワーク100の加工部の接触部に後述するミスト発生手段で発生されたミストを供給するものである。
【0065】
プレッシャヘッド31の下部には、プレッシャヘッド設置台41を介してプレッシャヘッドスライダ40が備えられている。そして、このプレッシャヘッドスライダ40が加工ユニットガイドレール30に沿って移動することにより、プレッシャヘッド31がX軸方向に移動可能となる。
【0066】
また、プレッシャヘッドスライダ40の下部には、プレッシャヘッド31を所望の位置に固定するためのプレッシャヘッド固定部材42が備えられている。このプレッシャヘッド固定部材42は、加工ユニット支持部材4に固定されており、一定間隔ごとにプレッシャヘッド固定穴が設けられている。そして、そのプレッシャヘッド固定穴にプレッシャヘッド固定部材42の固定部(図示略)を挿入することにより、プレッシャヘッド31を所望の位置に固定することができる。
【0067】
このように、プレッシャヘッド31を加工ユニットガイドレール30に沿って移動させた後に、このプレッシャヘッド固定部材42により、プレッシャヘッド31を所望の位置に固定することができる。
【0068】
また、プレッシャヘッド設置台41には、制御盤43が取り付けられている。この制御盤43が操作されることにより、その制御信号が深穴加工装置1の制御部(図示略)に送信され、ワーク100の深穴加工の制御が行われる。この制御盤43の詳細は図5を用いて後述する。なお、図2に示す流量制御盤81については、図8を用い後述する。
【0069】
次に、ワーク保持台101について図1〜図3を参照にしながら説明する。
図3は、図1及び図2のX−X断面を示す図である。ワーク基台103は、床面2などの上部に設けられ、ワーク保持台101の土台となるものである。ワーク基台103には、床面2に接する部分にワーク保持台101をZ軸方向に移動可能とするワークZ軸方向移動手段104が設けられている。
【0070】
このワークZ軸方向移動手段104は、ワーク基台103の下部に設けられた雌ねじが形成された雌ねじ筒(図示略)と、その雌ねじに螺合する雄ねじが形成されたワークZ軸方向移動回転体102からなり、ワークZ軸方向移動回転体102を回転させることにより、ワーク保持台101がZ軸方向に移動する。
【0071】
ワーク保持台101には、ワーク100の下部を支持するワーク下部支持部105(105a、105b)が設けられている。このワーク下部支持部105は、図1に示すようにワーク100の長手方向前後2箇所に設けられ、それぞれについて図3に示すように左右2箇所でワーク100を支持している。ワーク下部支持部105には、ワーク100と接触する位置に回転体106(106a、106b)が設けられ、回転体106でワーク100が支持されている。また、ワーク下部支持部105は、下部支持部移動ハンドル119(119a、119b)を回転することにより、図1及び図3に示すY軸方向に移動可能となる。すなわち、ワーク下部支持部105は、下部支持部移動ハンドル119を右回転方向に回転させることにより、ワーク下部支持部105(105aと105a、または105bと105b)がそれぞれ近づく方向(図3参照)に移動し、また下部支持部移動ハンドル119を左回転方向に回転させることにより、ワーク下部支持部105(105aと105a、または105bと105b)がそれぞれ遠ざかる方向(図3参照)に移動する。
【0072】
具体的には、下部支持部移動ハンドル119(119a、119b)には、ボールねじ120(120a、120b)が連結されており、そのボールねじ120は、中間位置を境にしてねじの巻き上がり方向が逆(右ねじと左ねじ)になっているため、下部支持部移動ハンドル119を回転することにより、下部支持部移動ハンドル119と連結したボールねじ120が回転し、そのボールねじ120に螺合された変位部材123(123a、123b)がそれぞれ近づく方向もしくは遠ざかる方向に移動し、ワーク下部支持部105もそれぞれ近づく方向(図3参照)もしくはそれぞれ遠ざかる方向(図3参照)に移動することとなる。これにより、あらゆる大きさのワーク100をワーク下部支持部105により支持することができる。なお、ワーク下部支持部105の移動は、そのワーク下部支持部105の下部に設けられたワーク下部支持部スライダ121(121a、121b)がワーク下部支持部ガイドレール122に沿って行われる(図1(図2のY−Y断面の部分)及び図3参照)。
【0073】
また、ワーク下部支持部105bの上部には、ワーク上部支持部107が設けられている。ワーク上部支持部107(図3参照)は、Z軸方向のワーク100の中心軸上で、かつ左右2つのワーク下部支持部105bがワーク100と接する点を含むワーク100のY軸−Z軸平面の外周面上に回転体108(図3参照)が位置するように設けられている。そして、ワーク上部支持部107は、上部支持部移動ハンドル109が回転されることにより、図1及び図3に示すZ軸方向に移動可能となる。これにより、ワーク上部支持部107とワーク下部支持部105bとにより、ワーク100を3点支持で保持することができる。
【0074】
ワーク100の他端には、ワーク100を3つのチャックで保持する三爪チャック111が設けられている。この三爪チャック111は、チャック取付台112に備えられているハンドル(図示略)を回転させることにより、チャック111の中心がワーク100の中心に一致するように3つの爪が連動して中心方向に移動する。そして、ワーク100はこの3つの爪により保持される。
【0075】
また、チャック取付台112には、チャック回転体110を介してワーク回転駆動部(図示略)が収納されている収納部113が連結されている。このワーク回転駆動部(モータ)は、電流によってワーク回転駆動部(図示略)の駆動軸を回転駆動させるものである。そして、このワーク回転駆動部(図示略)の駆動軸が回転することにより、チャック回転体110を介してチャック取付台112が回転し、ワーク100が一定角度回転することになる。具体的には、ワーク100は、収容部113に設けられた正回転スイッチ114(図1参照)を一回押すことにより右回転に一定角度回転し、また逆回転スイッチ115(図1参照)を一回押すことにより左回転に一定角度回転する。なお、このワーク100を回転させる一定角度は、角度設定器(図示略)により設定することができる。
【0076】
収容部113の下部には、設置台116aを介してスライダ117(117a、117b)が設けられている。そして、このスライダ117(117a、117b)がワーク基台103の上部に設けられたガイドレール118に沿って移動することにより、収容部113(ワーク回転駆動部を含む)がX軸方向に移動可能となる。
【0077】
また、ワーク下部支持部105aの下部にも、設置台116bを介してスライダ117(117c、117d)が設けられている。そして、同様にスライダ117(117c、117d)がワーク基台103の上部に設けられたガイドレール118に沿って移動することにより、ワーク下部支持部105aがX軸方向に移動可能となる。
【0078】
また、スライダ117の下部には、上述したケーシング20、X軸方向移動駆動部21、カップリング22、ボールねじ23、変位部材24、ボールねじ軸受25、軸受26と同様の構造をしたケーシング20a(図示略)、X軸方向移動駆動部21a(図示略)、カップリング22a(図示略)、ボールねじ23a(図示略)、変位部材24a(図示略)、ボールねじ軸受25a(図示略)、軸受26a(図示略)がそれぞれ設けられている。そして、X軸方向移動駆動部21aに電流が供給されることにより、X軸方向移動駆動部21aの駆動軸に連結されたボールねじ23aが回転し、そのボールねじ23aに螺合された変位部材24aがX軸方向に移動することにより、収容部113(ワーク回転駆動部を含む)がX軸方向に移動可能となる。
【0079】
なお、スライダ117(117c、117d)の下部には、ワーク下部支持部105aを所望の位置に固定するための固定部材(図示略)が設けられている。そして、ワーク下部支持部105aをガイドレール118に沿って移動させた後に、その固定部材(図示略)によりワーク下部支持部105aを所望の位置に固定させることができる。
【0080】
次に、上述したプレッシャヘッド31について図4を用い詳細に説明する。
図4は、図1及び図2に示すプレッシャヘッドの断面図である。
【0081】
プレッシャヘッド31は、後述するミスト発生手段により発生されたミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に供給するとともに、主軸27を支持するものであり、ガイド部材44と、ガイド部材44と結合されたプレッシャヘッド本体46と、プレッシャヘッド46と結合された保持部材47と、ケーシング48とからなる。
プレッシャヘッド31には、主軸27が挿通される中空部が形成されている。まず、そのプレッシャヘッド31の中空部に挿通される主軸27について簡単に説明する。
【0082】
主軸27の端部には、ワーク100に対して深穴の加工を行う中空状のドリル45が装着されている。この主軸27とドリル45とは、主軸27の端部内面に設けられた雌ねじとドリル45に端部外周面に設けられた雄ねじが螺合することにより連結されている。主軸27の中央部には、軸線方向に沿って中空部が形成されている。そして、ドリル45の中空部と主軸27の中空部により、ワーク100に深穴を形成する際に発生する切屑などを深穴加工装置1の外部に排出する切屑排出通路27aが構成されている。そして、ワーク100に深穴を形成する際に発生する切屑などは、ドリル45の切屑排出通路27aから主軸27の切屑排出通路27aを通って外部に排出される。
【0083】
次に、ガイド部材44について説明する。ガイド部材44は、ガイド部材本体49と、ガイド部材本体49の内面に嵌合されるブッシュ50とから構成されている。
【0084】
ガイド部材本体49は、中空状で円筒形状をしており、プレッシャヘッド本体46の端面の側壁に形成された挿通孔54に装着されている。そして、プレッシャヘッド本体46とは、ガイド部材本体49の端部に設けられたフランジ部においてボルトで結合されている。
【0085】
ブッシュ50は、磨耗に耐え、相当の強さがある材料(たとえば、炭素工具鋼や高速度工具鋼など)からなり、その内面には主軸27が挿通可能な中空状のブッシュ孔52(中空部)が形成されている。このブッシュ孔52の内径は、主軸27の外径よりも若干大きく形成され、このブッシュ孔52の内周面と主軸27の外周面の間に、ミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に供給するためのミスト供給路85が形成されている。これにより、後述するミスト発生手段により発生されたミストがプレッシャヘッド31の内部からプレッシャヘッド31外に送出され、後述するようにワーク100の加工部とドリル45の接触部にミストを供給することができる。なお、シール49a,50aは、後述するようにミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に供給する際に、そのミストがワーク100の外部に漏れなくするものである。
【0086】
また、ドリル45によりワーク100に深穴を加工する際に、主軸27が半径方向に振れた場合には、主軸27がブッシュ50の内周面と接触することにより主軸27の半径方向への振れを防止することができる。
【0087】
次に、プレッシャヘッド本体46について説明する。プレッシャヘッド本体46には、ミスト供給管(図4の点線部分)により後述するミスト発生手段と連結されるミスト供給口55が備えられている。そして、ミスト発生手段により発生されたミストが、ミスト供給口55を介してプレッシャヘッド31の中空部に供給される。このプレッシャヘッド31の中空部には、上述したガイド部材44の端面と保持部材47の端面により仕切られたミスト室56が形成されており、このミスト室56に後述するミスト発生手段により発生されたミストが圧縮空気とともに供給されることにより加圧され、ミスト室56で加圧された状態でミストを含む圧縮空気がワーク100の加工部とドリル45の接触部に供給される。
【0088】
このミスト室56のガイド部材44の端面は、図4に示すように、ミストの進行方向(ワーク100の加工部とドリル45の接触部の方向)に向かって内径を小さくしている。すなわち、ミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に導きやすくするために、円筒状の形状をしたガイド部材44(ガイド部材本体49及びブッシュ50)の端面を、ミストの進行方向に向かって、それぞれ内径が小さくように傾斜させている。なお、ガイド部材本体49及びブッシュ50の端面の傾斜は、それぞれの端面全体に傾斜を持たせてもよく、またそれぞれの端面の一部に傾斜を持たせてもよい。
【0089】
このように、ミスト室56を構成するガイド部材44の端面に傾斜を持たせることにより、ミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に導きやすくなり、ミストの供給の流れをより増強することができる。そして、深穴加工を行う際の潤滑油不足による不具合、すなわち、ドリル45とワーク100との摩擦により円滑に加工することができないなどの不具合を防止することができる。
【0090】
また、図4に示すように、プレッシャヘッド31のミスト供給口55から外部ミスト供給路出口57に至る供給路は、主軸27がワーク100に向かって移動する方向、すなわち、図4に示すX軸負の方向に傾斜(Θ1=10度〜45度(好ましくは、Θ1=15〜30度)傾斜)させて構成されている。これにより、外部ミスト供給路出口57からミスト室56に供給されるミストが、主軸27がワーク100に向かって移動する方向、すなわち図4に示すX軸負の方向に傾斜(Θ1=10度〜45度(好ましくは、Θ1=15〜30度)傾斜)させて供給されることとなる。換言すると、後述するミスト発生手段から外部ミスト供給路出口57に至るミスト供給路85を外部ミスト供給路とし、外部ミスト供給路出口57から主軸27に取り付けられたドリル45に至るまでのミスト供給路85を内部ミスト供給路とした場合に、後述するミスト発生手段により発生されたミストが、外部ミスト供給路の出口から内部ミスト供給路に対して主軸27がワーク100の加工部に向かって移動する方向に傾斜させて供給されることとなる。このように構成することにより、ミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に導きやすくなり、ミストの供給の流れをより増強することができる。そして、深穴加工を行う際の潤滑油不足による不具合、すなわち、ドリル45とワーク100との摩擦により円滑に加工することができないなどの不具合を防止することができる。
【0091】
次に保持部材47について説明する。保持部材47は、保持部材本体58と、保持部材本体58の内面に嵌合される軸受59と、Oリング60とから構成されている。
【0092】
保持部材本体58は、中空状で円筒形状をしており、プレッシャヘッド本体46の端部の側壁に形成された挿通孔61に装着されている。そして、プレッシャヘッド本体46は、保持部材本体58の端部に設けられたフランジ部においてボルトで結合されている。保持部材本体58の内周面58aには、軸受59(ラジアル玉軸受)が設けられており、この軸受59によって主軸27が回転可能に支持されている。具体的には、軸受59は、軸受59の内輪59aが主軸27の外周面に軸受支持管51と保持器53を介して圧入されて主軸27と一体化されており、また軸受59の外輪59bは保持部材47の内周面に圧入されて保持部材47と一体化されている。そして、内輪59aと外輪59bの間に転動体59cを有している。これにより、保持部材47の中空部を挿通する主軸27が回転可能となる。
【0093】
また、主軸27の外周面と保持部材本体58の内周面58aの間で、軸受59が設けられている位置よりワーク100側に、Oリング60が設けられている。このOリング60により、プレッシャヘッド31の内部のミスト室56から保持部材47の中空部を介してプレッシャヘッド31の外部にミスト(潤滑油)が漏れることを防止することができる。
【0094】
ケーシング48は、プレッシャヘッド31を外包するものであり、プレッシャヘッド本体46とはボルト62で固定されている。
【0095】
次に、図4に示すドリルについて図5を用い詳細に説明する。
図5(a)は、図4に示すドリルの側面図であり、図5(b)は、図4に示すドリルの上面図である。
【0096】
ドリル45は、ワーク100の加工部に供給されたミスト(潤滑油を含む)とワーク100の加工時に発生した切屑を先端に設けられた中心穴63から排出するBTA工具が用いられており、先端に設けられた超硬合金チップ65(切刃部)と、中心穴63と連通しドリル45の内部を貫通する切屑排出通路27aと、主軸27の端部内面に設けられた雌めじと螺合する雄ねじ部64と、ドリル45の外周面に設けられた突起部66とを備えている
【0097】
次に、図6を用いて、ワーク100の加工部に供給されたミスト及びワーク100の加工時に発生した切屑の流れについて説明する。図6は、ワークを加工する際のミスト及び切屑の送出経路の説明図である。
【0098】
ワーク100が図5に示すドリル45により加工されると、ワーク100の切削穴67の半径が、ドリル45の外周の半径よりもドリル45の突起部66だけ大きく形成される。そして、ワーク100の切削穴とドリル45の外周の間の隙間をミスト供給路85として、後述するミスト発生手段により発生されたミストが供給される。すなわち、ドリル45の外周面上に形成されたミスト供給路85が、主軸27の外周面とブッシュ孔52の内周面の間に形成されたミスト供給路85と連通することにより、ミスト発生手段により発生されたミストがワーク100の加工部に供給される。このようにして、ワーク100に深穴を加工する際に、ミスト供給路85から供給されたミスト(潤滑油を含む)が、ワーク100が切削されて発生する切屑とともに、ドリル45の中心孔63を介してドリル45及び主軸27の中空部に形成された切屑排出通路27aを経て、図1及び図2に示す外部排出管19から深穴加工装置1の外部に排出される。
【0099】
次に、図1に示す制御盤43について図7を用い説明する。
図7は、本発明の一実施形態における深穴加工装置に用いる制御盤の説明図である。 この制御盤43には、ドリル45を図1に示すX軸方向に移動させるとともに、ドリル45を回転させるための操作スイッチなどが設けられている。
【0100】
操作電源スイッチ68は、深穴加工装置1の電源スイッチであり、この操作電源スイッチ68を「入」にすることにより、深穴加工装置1が駆動可能となる。
【0101】
単独自動切換スイッチ69は、「自動」と「単独」の切換スイッチである。すなわち、ドリル45をあらかじめ定められた工程で運転させたい場合は単独自動切換スイッチ59を「自動」にし、それ以外に作業者がドリル45を任意の工程で回転移動させたい場合は単独自動切換スイッチ69を「単独」にする。そして、単独自動切換スイッチ69が「自動」にされているときに、作業者が自動運転ボタン70を押すことにより、ドリル45があらかじめ定められた工程で回転移動する。すなわち、単独自動切換スイッチ69が「自動」の場合に、作業者により自動運転ボタン70が押されることにより、あらかじめ定められた工程に従って、図1に示すX軸方向移動駆動部21の駆動力により、駆動部スライダ29を介して加工ユニットの駆動部28がX軸方向に移動しドリル45がX軸方向に移動するとともに、主軸回転駆動部33の駆動力により、主軸27が回転しドリル45が回転する。
【0102】
自動停止ボタン71は、この自動運転を停止したい場合に押すボタンである。そして、作業者により自動停止ボタン71が押されることにより自動運転が停止する。
【0103】
次に、単独自動切換スイッチ69が「単独」にされている場合に、作業者により正転ボタン72が押されることによりドリル45が正転(右回転)する。また、作業者により正寸ボタン73が押されることによりドリル45がワーク100の方向(図1のX軸負の方向)に移動し、作業者により逆寸ボタン74が押されることによりドリル45がワーク100と離れる方向(図1のX軸正の方向)に移動する。すなわち、単独自動切換スイッチ69が「単独」の場合に、作業者により正転ボタン70が押されると、主軸回転駆動部33の駆動力により主軸27が回転しドリル45が回転する。また、単独自動切換スイッチ69が「単独」の場合に、作業者により正寸ボタン73(または、逆寸ボタン74)が押されると、X軸方向移動駆動部21の駆動力により、駆動部スライダ29を介して加工ユニットの駆動部28がX軸方向負の方向(または、正の方向)に移動しドリル45がX軸方向負の方向(または、正の方向)に移動する。
【0104】
停止ボタン75は、単独運転を停止したい場合に押すボタンである。そして、停止ボタン75が作業者により押されることにより単独運転が停止する。非常停止ボタン76は、深穴加工装置1の運転(単独運転と自動運転)を緊急停止したい場合に押すボタンである。そして、非常停止ボタン76を作業者により押されることにより運転が停止する。
【0105】
主軸速度設定スイッチ77は、主軸27の回転速度を設定するためのスイッチである。本実施形態では、10段階に主軸27の回転速度を設定することができる。そして、作業者により、正転ボタン72が押されることにより、また自動運転ボタン70が押されることにより、この主軸速度設定スイッチ77により設定された速度で主軸27が回転する。
【0106】
主軸速度メータ78は、主軸27の回転速度を表示するものである。この主軸速度メータ78により、作業者は、現在の主軸27の回転速度を知ることができる。
【0107】
電源ランプ79aは、操作電源スイッチ68が「入」のときに点灯するランプであり、自動ランプ79bは、自動運転が行われているときに点灯するランプであり、また単独ランプ79cは、単独運転が行われているときに点灯するランプである。作業者は、これらのランプにより、電源状況や運転状況を知ることができる。
【0108】
ディスプレイ80は、タッチパネル式のディスプレイであり、作業者は、このディスプレイ80を用いて、深穴加工装置1やワーク保持台80を制御するための操作を行うことができる。
【0109】
次に、流量制御盤について図8を用い説明する。図8は、本発明の一実施形態における深穴加工装置に用いる流量制御盤の説明図である。
【0110】
流量制御盤81は、コンプレッサ(図示略)からの圧縮空気を用い、その圧縮空気と潤滑油とでミストを発生させて、そのミストをワーク100の加工部に供給するとともに、コンプレッサからの圧縮空気をワーク100の加工部に供給するものである。なお、本実施形態では、コンプレッサ(図示略)から供給される気体を圧縮空気として説明するが、これに限らず、本発明の効果を奏する限り窒素ガスなどの気体であってもよい。流量制御盤81には、コンプレッサ(図示略)からの圧縮空気をミスト供給路85を介してワーク100の加工部に供給する気体供給路82と、切屑が加工部に詰まったときにコンプレッサ(図示略)からの圧縮空気をミスト供給路85を介してワーク100の加工部に供給する加圧供給路83と、コンプレッサ(図示略)からの圧縮空気をミスト発生手段86に供給する一次側流路84と、ミスト発生手段86により発生されたミストをワーク100の加工部に供給するミスト供給路85を備えている。なお、本実施形態では、便宜的に気体供給路82と加圧供給路83を用いて説明するが、これに限らず、気体供給路82と加圧供給路83を合わせて気体供給路82としてもよい。
【0111】
気体供給路82は、ミスト発生手段86で発生されたミストがワーク100の加工部まで到着できるように圧縮空気をミスト供給路85に供給するための供給路であり、圧力制御装置87と、圧力計88と、流量計89と、手動ホールドバルブ90とを備えている。
【0112】
また、加圧供給路83には、レギュレータ91と、ソレノイドバルブ92とが備えられている。そして、一次側流路84には、圧力計93と、流量計95とが備えられている。圧力制御装置87は、気体供給路82の圧縮空気の圧力を制御するものである。
【0113】
圧力計88、93は、それぞれ気体供給路82、一次側流路84を流れる圧縮空気の圧力を測定するものであり、圧力計88、93には、それぞれの圧力計88、93を通過する圧縮空気の圧力値を表示するデジタル表示部(図8参照)が設けられている。
【0114】
流量計89、95は、それぞれ気体供給路82、一次側流路84を流れる圧縮空気の流量を測定するものであり、流量計89、95には、それぞれの流量計89、95を通過する圧縮空気の流量値を表示するデジタル表示部(図8参照)が設けられている。
【0115】
手動ホールドバルブ90は、手動ホールドバルブ90の上流側の圧縮空気を下流側に流れなくするものである。図8に示す手動ホールドバルブ90は、手動ホールドバルブ90のレバーを横方向にすることにより手動ホールドバルブ90の上流側の圧縮空気が下流側に流れる状態(「開」状態)になり、手動ホールドバルブ90のレバーを縦方向にすることにより手動ホールドレバー90の上流側の圧縮空気が下流側に流れなくなる(「閉」状態)。この手動ホールドレバー90は、ワーク100の深穴加工時には通常「開」状態になっている。
【0116】
レギュレータ91は。コンプレッサ(図示略)から供給される圧縮空気の圧力を一定圧力に減圧して下流側に送出するものである。具体的には、レギュレータ91に設けられた圧力調整部(図示略)を図示しない工具で回転操作することにより、レギュレータ91の内部の減圧弁(図示略)が操作され、レギュレータ91の下流側に送出される圧縮空気の圧力が設定される。これにより、レギュレータ91から送出される圧縮空気の圧力を所望の一定圧力にすることができる。この圧力調整部(図示略)を操作して設定した圧力値はレギュレータ91の表示部(図8参照)に表示される。
【0117】
ソレノイドバルブ92は、ワーク100の加工部とドリル45の間に切屑が詰まっていることが検知された場合に制御装置99からの信号を受信して「開」状態になるバルブである。ワーク100の加工部とドリル45の間に切屑が詰まっていることが検知された場合には、ソレノイドバルブ92が「開状態」になり、加圧供給路83に圧縮空気が供給され、加圧供給路83から気体供給路82を介し(マニホールド96で加圧供給路83が気体供給路82に合流)ミスト供給路85に加圧供給路83からの圧縮空気が送られる。
【0118】
これにより、ミスト供給路85の圧縮空気の流量が増大し、ワーク100の加工部とドリル45の間の切屑の詰まりを解消することができる。
【0119】
ミスト発生手段86は、内部に潤滑油が貯留されており、一次側流路84から圧縮空気が供給されることにより、内部でミストを発生させて、そのミストをミスト供給路85に送出するものである。具体的には、ミスト発生手段86には、潤滑油を貯留するタンク(図示略)と、タンクに取付けられた蓋(図示略)と、蓋に装着され滴下供給される油を霧化するベンチュリ式霧化器(図示略)と、潤滑油を所定温度に暖める発熱体(図示略)と、ベンチュリ式霧化器へ圧縮空気を供給する空気供給手段(図示略)とを備えている。そして、蓋に取り付けられた潤滑油吸上管によりタンク内の潤滑油を吸い上げ、蓋からベンチュリ式霧化器にわたって形成された潤滑油供給通路を介して、ベンチュリ式霧化器に潤滑油が供給される。蓋には、ベンチュリ式霧化器に送られる潤滑油の量を調整するオイル調整ニードルと、空気供給手段により供給される圧縮空気の圧力を調整する圧縮空気調整ニードルが設けられている。そして、ミスト流量設定スイッチ97が操作されることにより圧縮空気調整ニードルとオイル調整ニードルが作動し、ミスト流量設定スイッチ97により設定されたミストがミスト供給路85に送出される。
【0120】
ミスト流量設定スイッチ97は、ミストの発生量(ミスト供給路85に送出されるミストの量)を設定するための手動スイッチである。具体的には、図8に示すようにミスト流量設定スイッチ97のスイッチ97a〜97eをOFFからONに操作することにより、そのスイッチ97a〜97eに応じたミスト量(たとえば、15L、50L,100L、150L、そして250Lの5段階)のミストがミスト発生手段86からミスト供給路85に送出される。なお、本実施形態では、ミスト流量設定スイッチ97を手動スイッチとし、その手動スイッチを操作することによりミストの流量が設定されるようにしたが、これに限らず、たとえば、主軸27の回転速度や図1に示すX軸方向への進行速度などをもとに、ミスト量が自動的に設定されるようにしてもよい。また、ワーク100の加工部とドリル45の間に切屑が詰まっていることが検知されたときに、切屑排出用のミスト量が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0121】
マニホールド98は、気体供給路82をミスト供給路85に合流させるものである。これにより、ミスト発生手段86で発生したミストを気体供給路82からの気体を用いてワーク100の加工部に搬送することができる。制御装置99は、流量制御盤のそれぞれの装置を制御するものである。
【0122】
次に、本発明の深穴加工装置1の動作及び作用効果について説明する。
図9は、本発明の一実施形態における深穴加工処理のフローチャートである。
【0123】
まず、S1において、操作電源がONになっているかが判断される。操作電源は、作業者により図7に示す操作電源スイッチ68が「入」にされることにより「ON」となる。これにより、深穴加工装置1が駆動可能状態となる。そして、S1において、操作電源が「ON」であると判断された場合(「YES」の場合)はS2に進み、また「NO」の場合には、この深穴加工処理が終了する。
なお、本実施形態では、単独自動切換スイッチ69が「単独」になっている場合について説明する。
【0124】
S2において、ワーク100とプレッシャヘッド31が接触しているか否かが判断される。具体的には、ガイド部材本体49の端面に圧力センサ(図示略)が設けられ、その圧力センサにより、ワーク100の端面とプレッシャヘッド31の端面が接触しているか否かが判断される。ここで、S2において、「YES」の場合はS3に進み、また「NO」の場合には、深穴加工処理が終了する。
【0125】
次に、S3において、ミスト発生装置86により発生されたミスト及び気体供給路82(加圧供給路83を含む)から供給された圧縮空気がミスト供給路85を介しドリル45に対向するワーク100の加工部に供給される。具体的には、ワーク100の端面とプレッシャヘッド31の端面とが接触していると判断された場合に、深穴加工装置1の制御部(図示略)から流量制御盤81の制御装置99に信号が送信され、その信号を受信した制御装置99により圧力制御装置87及びミスト発生装置86が制御される。そして、圧力制御装置87のバルブが開かれ気体供給路82に圧縮空気が供給され、またミスト発生手段86からミストが供給される。これにより、ミスト供給路85を介しワーク100の加工部にミストと圧縮空気が供給される。
【0126】
ここで、ミストはミスト流量設定スイッチ97により設定されたミスト量で供給され、また、圧縮空気は図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された流量設定値(LSET)で供給される。
【0127】
次に、S4において、後述する主軸正転処理が行われる。主軸正転処理では、ドリル45が取り付けられた主軸27を主軸回転駆動部33(モータ)の駆動力により正回転(右回りの回転)させる。詳細は図10を用いて後述する。
【0128】
次に、S5において、後述する主軸正方向移動処理が行われる。主軸正方向移動処理では、ドリル45が取り付けられた主軸27をX軸方向移動駆動部21の駆動力により正方向(ワーク100の方向)に移動させる。そして、ドリル45がワーク100の加工部と接触し、さらにドリル45がワーク100の方向(図1のX軸負の方向)に移動することにより、ワーク100がドリル45の先端に設けられた超硬合金チップ65(切刃部)によって切削される。詳細は図11を用いて後述する。
【0129】
S6において、後述する目詰まり処理が行われる。目詰まり処理では、深穴形成の加工時に生じた切屑がドリル45とワーク100の間に詰まった場合に、加圧供給路83から気体供給路82を介し圧縮空気がミスト供給路85に供給される。これにより、流量が増加した気体供給路の圧縮空気により、ドリル45とワーク100の間の切屑の詰まりを確実に解消することができる。なお、このミスト供給処理は、ワーク100とプレッシャヘッド31が接触している状態で行われるので、ワーク100とプレッシャヘッド31の間からミストが漏れることなく、ミストをワーク100の加工部とドリル100の接触部に確実に供給することができる。
【0130】
これにより、ドリル45によってワーク100に深穴を加工する際に、ワーク100の加工部とドリル45の間を広範囲にわたり潤滑できるとともに、ワーク100の加工部とドリル45の間を広範囲にわたり冷却することができ、ドリル45とワーク100との摩擦による深穴の加工が困難になるということもない。
【0131】
次に、S7において、ワーク100の切削が終了したか否かが判断される。本実施形態では、ワーク100に深穴を加工しているドリル45がワーク100の反対側まで貫通した時点で、ワーク100の切削が終了したと判断される。具体的には、本実施形態では、X軸方向移動駆動部21(モータ)のトルクの変化率の推移を検出して、ワーク100の切削が終了したかが判断される。すなわち、ドリル45によりワーク100が切削されている間は、X軸方向移動駆動部21は高トルクで駆動しているが、ワーク100の切削が終了し、ドリル45がワーク100の反対側まで突き抜けた場合にはX軸方向移動駆動部21は低トルクで駆動することとなる。そのため、このトルクの変化率の推移を求めることによりワーク100の切削が終了したか否かが判断できる。なお、本実施形態では、X軸方向移動駆動部21のトルクの変化率の推移からワーク100の切削が終了したか否かを判断したが、これに限らず、主軸回転駆動部33のトルクの変化率の推移を検出して、ワーク100の切削が終了したかを判断してもよい。すなわち、ドリル45によりワーク100が切削されている間は、主軸回転駆動部33は高トルクで駆動しているが、ドリル45によるワーク100の切削が終了すると主軸回転駆動部33が低トルクで駆動することとなる。そのため、このトルクの変化率の推移からワーク100の切削が終了したか否かが判断できる。
【0132】
なお、本実施形態では、ワーク100に深穴を加工しているドリル45がワーク100の反対側まで貫通した時点で、ワーク100の切削が終了したと判断しているが、これに限らず、ワーク100を切削するためのあらかじめ定められた工程が終了した時点を、ワークの切削が終了した時点としてもよい。この場合は、あらかじめ定められた工程が終了したことの信号を深穴加工装置1に備えられている制御部(図示略)が受信することにより、S7のワーク100の切削が終了したと判断される。ここで、S7において、「NO」の場合はS6に進み、目詰まり処理を継続して行う。またS7で「YES」の場合には、S8の処理に進む。
【0133】
次に、S8において、主軸逆方向移動処理が行われる。主軸逆方向移動処理では、上述した正方向と反対方向(図1のX軸正の方向)に主軸27を移動させる。すなわち、深穴制御装置1の制御部(図示略)によって、X軸方向移動駆動部21に供給される電源の電流の極性を逆転させることにより、S5で主軸3を移動させた方向と反対方向(ワーク100から離れる方向)に主軸27が移動し、これにより、ドリル45をワーク100に形成された深穴から離脱させることができる。詳細は図13を用いて後述する。
【0134】
そして、S9では、主軸回転停止処理が行われる。この主軸回転停止処理では主軸27の回転を停止させる。詳細は図14を用いて後述する。
【0135】
次に、S10において、ミスト発生装置86により発生されたミスト及び気体供給路82(加圧供給路83を含む)から供給される圧縮空気の供給停止処理が行われる。具体的には、制御装置99により圧力制御装置87及びミスト発生装置86が制御され、圧力制御装置87のバルブが閉じられ気体供給路82への圧縮空気の供給が停止し、またミスト発生手段86からのミストの供給も停止する。これにより、ワーク100の深穴加工処理が終了する。
【0136】
本発明は、ミスト発生手段86により発生されたミストを気体供給路82から供給される圧縮空気とともにワーク100の加工部とドリル45の接触部に供給するので、潤滑油のみをワーク100の加工部に供給する場合と比較して、深穴を加工する際に使用する潤滑油の量を少なくすることができ、潤滑油に要するコストを低減することができるとともに、圧縮空気によりミストを確実にワーク100の加工部に送ることができる。
【0137】
次に、図9に示す主軸正転処理について説明する。
図10は、図9の主軸正転処理のフローチャートである。この主軸正転処理は、主軸27(ドリル45を含む)を正回転方向(時計周り方向)に回転させるための処理である。
【0138】
S11において、正転ボタンが「ON」か否かが判断される。正転ボタンが「ON」か否かは、作業者により図7に示す正転ボタン72が押されたか否かで判断される。
そして、S11で作業者により正転ボタン72が押されたと判断された場合(S11で「YES」の場合)には、S12で主軸27が正転する。すなわち、主軸回転駆動部33の駆動力が、駆動プーリ35から動力伝達ベルト34を介して従属プーリ36へと伝達され、主軸27が正回転方向(時計回りの方向)に回転する。なお、本実施形態では、主軸27の回転数は、800rpm前後に設定されている。これにより、主軸27に取り付けたドリル45も正回転方向に回転することになる。そして、S12の処理が終了した場合、もしくはS11で「NO」の場合には、主軸正転処理が終了する。
【0139】
次に、図9に示す主軸正方向移動処理について説明する。
図11は、図9の主軸正方向移動処理のフローチャートである。この主軸正方向移動処理は、主軸27(ドリル45を含む)を正方向(ワーク100の方向)に移動させるための処理である。
【0140】
S21において、正寸ボタンが「ON」か否かが判断される。正寸ボタンが「ON」か否かは、作業者により図7に示す正寸ボタン73が押されたか否かで判断される。
【0141】
そして、S21で作業者によりこの正寸ボタン73が押されたと判断された場合(S21で「YES」の場合)には、S22で主軸27がワーク100の方向に移動する。すなわち、X軸方向移動駆動部21(モータ)の駆動力が、ボールねじ23から変位部材24(ボールねじナット)を介して加工ユニットの駆動部28に伝達され、主軸27がワークの方向(X軸負の方向)に移動する。なお、本実施形態では、主軸27がワーク100に向かってX軸負の方向に移動する移動速度は、50mm/minに設定されている。これにより、主軸27に取り付けたドリル45もX軸負の方向に移動することになる。そして、S22の処理が終了した場合、もしくはS21で「NO」の場合には、主軸正方向移動処理が終了する。
【0142】
次に、図9に示す目詰まり供給処理について説明する。
図12は、図9の目詰まり供給処理のフローチャートである。この目詰まり処理は、ワーク100の加工部とドリル45の間に切屑が詰まった場合に、高圧の圧縮空気を加圧供給路83から気体供給路82を経てミスト供給路85を介してワーク100の加工部に送出させて切屑の詰まりを解消させるものである。
【0143】
S31において、気体供給路82の圧縮空気の流量Lが検出される。具体的には、気体供給路82に設けられた流量計89により、気体供給路82を流れる圧縮空気の流量が検出される。
【0144】
そして、S32において、S31で検出された流量Lの値が所定値X未満か否かが判断される。具体的には、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まり流量値Xと流量計89により検出された流量値Lとが比較され、流量値Lが目詰まり流量値X以下か否かが制御装置99により判断される。そして、S32で「YES」と判断された場合には、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると判断してS33に進む。
【0145】
S33において、気体供給路82の流量を増加させる。具体的には、流量値Lが目詰まり流量値X以下であると判断されると、制御装置99からソレノイドバルブ92に信号が送信され、その信号を受信したソレノイドバルブ92が短時間(たとえば、1秒間または3秒間など)「開」状態になるように制御される。これにより、加圧供給路83から気体供給路82を介しミスト供給路85に高圧の圧縮空気が供給され、ワーク100の加工部とドリル45の間に切屑が詰まっている場合でも、その切屑の詰まりを解消することができる。
【0146】
そして、S34において、流量Lが設定流量値LSET以上か否かが判断される。具体的には、設定流量値LSETと流量計89により検出された流量値Lとが比較され、流量値Lが設定流量値LSET以上か否かが制御装置99で判断される。そして、S34で「NO」と判断された場合には、さらにS33に進みS33の処理を行う。そして、再びS33によりソレノイドバルブ92が短時間(たとえば、1秒間や3秒間など)「開」状態になるように制御され、ワーク100の加工部の切屑の詰まりが解消できるまでS33→S34→S33のループの処理が行われる。これにより、ワーク100の加工部とドリル45の間の切屑の詰まりを完全に解消することできる。また、S34で「YES」の場合、もしくはS32で「NO」の場合には、目詰まり処理が終了する。ここで、設定流量値LSETは、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された流量設定値である。
【0147】
これにより、ワーク100の加工部に切屑が詰まった場合でも、圧縮空気をミスト供給路85に供給されるので切屑の詰まりが解消でき、深穴の切削中にドリル45の刃先が潰れるなどの刃先の損傷や主軸27が折れるなどの主軸27の破損を防止することができる。
なお、本実施形態では、S34により、流量値Lが設定流量値LSET以上と判断された場合に、ただちに目詰まり処理を終了することとしたが、これに限らず、S34により、数秒間(所定の時間)継続して流量値Lが設定流量値LSET以上であると判断された場合に、目詰まり処理を終了することとしてもよい。
【0148】
次に、図9に示す主軸逆方向移動処理について説明する。
図13は、図9の主軸逆方向移動処理のフローチャートである。この主軸逆方向移動処理は、主軸27(ドリル45を含む)を逆方向(ドリル100と離れる方向)に移動させるための処理である。
【0149】
S41において、逆寸ボタンが「ON」か否かが判断される。逆寸ボタンが「ON」か否かは、作業者により図7に示す逆寸ボタン74が押されたか否かで判断される。なお、逆寸ボタン74が押されたときには、正寸ボタン73が仮に「ON」状態であったとしても、「OFF」状態となる。
【0150】
そして、S41で逆寸ボタン74が押されたと判断された場合(S41で「YES」の場合)には、S42で主軸27がワークと離れる方向(X軸正の方向)に移動する。すなわち、X軸方向移動駆動部21(モータ)の駆動力が、ボールねじ23から変位部材24(ボールねじナット)を介して加工ユニットの駆動部28に伝達され、主軸27がワーク100と離れる方向(X軸正の方向)に移動する。なお、本実施形態では、主軸27がワーク100と離れる方向(X軸正の方向)に移動する移動速度は、3000mm/minに設定されている。これにより、主軸27に取り付けたドリル45も図1に示すX軸正の方向に移動することになる。そして、S42の処理が終了した場合、もしくはS41で「NO」の場合には、主軸逆方向移動処理が終了する。なお、この主軸27をワーク100と離れる方向への移動は、深穴加工装置1の制御部(図示略)によってX軸方向移動駆動部21に供給されている電流の極性を逆転されることにより行うことができる。
【0151】
次に、図9に示す主軸回転停止処理について説明する。
図14は、図9の主軸回転停止処理のフローチャートである。この主軸回転停止処理は、主軸27(ドリル45を含む)の回転を停止されるための処理である。
【0152】
S51において、停止ボタンが「ON」か否かが判断される。停止ボタンが「ON」か否かは、作業者により図7に示す停止ボタン75が押されたか否かで判断される。なお、停止ボタン75が押されたときには、正転ボタン72、正寸ボタン73、及び逆寸ボタン74が仮に「ON」状態であったとしても、「OFF」状態となる。これにより、深穴加工処理が終了するが、その後再び深穴加工処理が開始される(RETURN)。
【0153】
なお、本実施形態では、上述したように、単独自動切換スイッチ69が「単独」になっている場合について説明したが、「自動」になっている場合も同様の処理が行われる。すなわち、作業者が自動運転ボタン70を押すことにより、ドリル45があらかじめ定められた工程で回転移動する。すなわち、単独自動切換スイッチ69が「自動」の場合に、作業者により自動運転ボタン70が押されることにより、S2において、ワーク100とプレッシャヘッド31が接触していると判断されると、S3(ミストと気体の供給開始)、S4(主軸27正転)、S5(主軸27正転移動)の処理があらかじめ定められた工程で行われ、その後S6の目詰まり処理が行われ、S7を経てあらかじめ定められた工程でS8(主軸27逆方向移動)、S9(主軸27回転停止)、そしてS10(ミストと気体の供給停止)の処理がそれぞれ行われ、深穴加工処理が終了する。このことにより、単独自動切換えスイッチ69が「自動」になっている場合においても、目詰まり処理について「単独」の場合と同一の作用効果を奏することができる。
【0154】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0155】
次に本発明の変形例について説明する。
(1) 本実施の形態では、切屑が詰まっているか否かを、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まり流量値Xと流量計89により検出された流量値Lとを比較し、流量値Lが目詰まり流量値X以下の場合に、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると制御装置99により判断したが、これに限らず、図12のS31及びS32の処理の代わりに、S31において、気体供給路82の圧縮空気の圧力が圧力計88により検出され、そして、S32において、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まり圧力値Pと圧力計88により検出された気体供給路82を流れる圧縮空気の圧力Mとが比較され、圧力値Mが目詰まり圧力値P以上の場合にワーク100の加工部に切屑が詰まっていると制御装置99により判断してもよい。この場合、圧力値Mが目詰まり圧力値P以上と判断された場合に、図12のS33の処理を行うこととなる。
【0156】
また、図12のS31及びS32の処理の代わりに、S31において、主軸回転駆動部33の回転トルク(駆動力)が回転トルク検出センサ(図示略)により検出され、そして、S32において、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まりトルクKと回転トルク検出センサにより検出された主軸回転駆動部33の回転トルクQとが比較され、回転トルクQが目詰まりトルクK以上の場合に、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると制御装置99により判断してもよい。この場合、回転トルクQが目詰まりトルクK以上と判断された場合に、図12のS33の処理を行うこととなる。
【0157】
また、ワーク100の中心とドリル45の先端部を結ぶ直線上でワーク100の外周面上近傍にワーク100の温度を検出する温度センサ(図示略)を設け、図12のS31及びS32の処理の代わりに、S31において、ワーク100の中心とドリル45の先端部を結ぶ直線上でワーク100の外周面上近傍のワーク100の温度が温度センサにより検出され、そして、S32において、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まり温度Tと温度センサ(図示略)により検出されたワーク100の外周面上の温度Nとが比較され、温度Nが目詰まり温度T以上の場合に、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると制御装置99により判断してもよい。この場合、温度Nが目詰まり温度T以上と判断された場合に、図12のS33の処理を行うこととなる。なお、この温度センサ(図示略)には温度センサ移動手段(図示略)が設けられ、この温度センサ移動手段により温度センサをドリル45の進行に同期させてワーク100の外周面上を移動される。これにより、X軸方向移動駆動部21(モータ)の駆動力により、ドリル45がX軸負の方向(ワーク100の方向)に移動した後においても、ワーク100の中心とドリル45の先端部を結ぶ直線上でワーク100の外周面上近傍のワーク100の温度を温度センサ(図示略)により検出することができる。
【0158】
また、ドリル45の先端部(またはその周辺部)にドリル45の先端部近傍の温度を検出する加工具温度センサ(図示略)を設け、図12のS31及びS32の処理の代わりに、S31において、ドリル45の先端部近傍の加工具温度が加工具温度センサにより検出され、そして、S32において、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まり加工具温度DTと加工具温度センサ(図示略)により検出されたドリル45の先端近傍の加工具温度DNとが比較され、加工具温度DNが目詰まり加工具温度DT以上の場合に、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると制御装置99により判断してもよい。この場合、加工具温度DNが目詰まり加工具温度DT以上と判断された場合に、図12のS33の処理を行うこととなる。
【0159】
また、深穴形成の加工時に生じた切屑の温度を測定する切屑温度センサ(図示略)を切屑排出通路27aに設け、図12のS31及びS32の処理の代わりに、S31において、深穴形成の加工時に生じた切屑の温度が切屑温度センサにより検出され、そして、S32において、図7に示すタッチパネル式の操作パネル(ディスプレイ80)で作業者により設定された目詰まり切屑温度KTと切屑温度センサ(図示略)により検出された深穴形成の加工時に生じた切屑の切屑温度KNとが比較され、切屑温度KNが目詰まり切屑温度KT以上の場合に、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると制御装置99により判断してもよい。この場合、切屑温度KNが目詰まり切屑温度KT以上と判断された場合に、図12のS33の処理を行うこととなる。
【0160】
(2) 本実施の形態では、図12のS32において流量値Lが目詰まり流量値X以下であると判断されると、制御装置99からソレノイドバルブ92に信号が送信され、S33においてソレノイドバルブ92が短時間(たとえば、1秒間や3秒間など)「開」状態になるように制御されると説明したが、これに限らず、ソレノイドバルブ92の代わりに、流量制御装置と流量センサを加圧供給路83に設け、流量値Lが目詰まり流量値X以下であると判断された場合に、制御装置99から流量制御装置に信号が送信され、S33においてその信号を受信した流量制御装置により圧縮空気の流量があらかじめ設定された流量値になるまで増加されるように制御してもよい。
【0161】
また、ソレノイドバルブ92の代わりに、圧力制御装置と圧力センサを加圧供給路83に設け、流量値Lが目詰まり流量値X以下(変形例(1)では、圧力値Mが目詰まり圧力値P以上など)であると判断され場合に、制御装置99から圧力制御装置に信号が送信され、S33においてその信号を受信した圧力制御装置により圧縮空気の圧力があらかじめ設定された圧力値になるまで増加されるように制御してもよい。
【0162】
(3) 本実施の形態では、ミスト供給路85を主軸27の外周面上に設け、そしてミスト供給路85から供給されるミスト(潤滑油を含む)及び深穴形成の加工時に生じた切屑を主軸27の内部の切屑排出通路27aを介し深穴加工装置1の外部に排出する深穴加工装置1について説明したが、これに限らず、主軸27の中空部(内部)をミスト供給路とし、そのミスト供給路からワーク100の加工部にミストが供給され、そして、主軸27の外周面上に設けられた切屑排出通路から深穴形成の加工時に生じた切屑及びミスト供給路から供給されたミスト(潤滑油を含む)を深穴加工装置1の外部に排出させるようにしてもよい。
【0163】
また、主軸27及びドリル45の代わりに細長いロングドリルを用い、そのロングドリルをワーク100の方向(図1のX軸負の方向)に向かって移動させながら、ロングドリルを回転させて深穴を切削し、それと同時にロングドリルの中空部に形成されたミスト供給路を介してワーク100の加工部に潤滑油を供給し、そしてロングドリルの周囲に設けられたV形溝を通して、深穴形成の加工時に生じた切屑及びミスト供給路から供給されたミスト(潤滑油を含む)を深穴加工装置1の外部に排出させるようにしてもよい。
【0164】
(4) 本実施の形態では、プレッシャヘッド31のミスト供給口55から外部ミスト供給路出口57に至る供給路を、主軸27がワーク100に向かって移動する方向、すなわち図4に示すX軸負の方向に傾斜させて構成したが、これに限らず、ミスト発生手段86により発生されたミストが、上述した外部ミスト供給路出口から内部ミスト供給路に対して主軸27の回転方向に沿って偏心させて供給されるように構成してもよい。すなわち、図15(図4のZ−Z断面)に示すように、プレッシャヘッド31のミスト供給口55から外部ミスト供給路出口57に向かう供給路の中心軸の延長線が主軸27の回転方向側に偏心するように構成してもよい。
【0165】
このように構成することにより、ミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部に導きやすくなり、ミストの供給の流れをより増強することができる。そして、深穴加工を行う際の潤滑油不足による不具合、すなわち、ドリル45とワーク100との摩擦により円滑に加工することができないなどの不具合を防止することができる。
【0166】
また、プレッシャヘッド31のミスト供給口55から外部ミスト供給路出口57に至る供給路を、主軸27がワーク100に向かって移動する方向に傾斜させるとともに、ミスト発生手段86により発生されたミストが、上述した外部ミスト供給路出口から内部ミスト供給路に対して主軸27の回転方向に沿って偏心させて供給されるように構成してもよい。
【0167】
このように構成することにより、ミストをワーク100の加工部とドリル45の接触部にさらに導きやすくなり、ミストの供給の流れをよりさらに増強することができる。
【0168】
(5) 本実施の形態では、気体供給路82の圧縮空気の流量を増加させるために、加圧供給路83を設けたが、これに限らず、加圧供給路83を設けることなく気体供給路82の圧縮空気の流量を増加させるようにしてもよい。すなわち、ワーク100の加工部に切屑が詰まっていると判断された場合に、図12のS33において、制御装置99から気体供給路82に設けられた流量制御装置(図示略)に信号が送信され、その信号を受信した流量制御装置により圧縮空気の流量があらかじめ設定された流量値になるまで増加されるように制御してもよい。また、制御装置99から気体供給路82に設けられた圧力制御装置87に信号が送信され、その信号を受信した圧力制御装置87により圧縮空気の圧力があらかじめ設定された圧力値になるまで増加されるように制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の一実施形態における深穴加工装置の一部切欠側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における深穴加工装置の上面図である。
【図3】図1及び図2のX−X断面を示す図である。
【図4】図1及び図2に示すプレッシャヘッドの断面図である。
【図5】図4に示すドリルの説明図である。
【図6】ワークを加工する際のミスト及び切屑の送出経路の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態における深穴加工装置に用いる制御盤の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態における深穴加工装置に用いる流量制御盤の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態における深穴加工処理のフローチャートである。
【図10】図9の主軸正転処理のフローチャートである。
【図11】図9の主軸正方向移動処理のフローチャートである。
【図12】図9の目詰まり処理のフローチャートである。
【図13】図9の主軸逆方向移動処理のフローチャートである。
【図14】図9の主軸回転停止処理のフローチャートである。
【図15】変形例のプレッシャヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0170】
27a 切屑排出通路
33 主軸回転駆動部
57 外部ミスト供給路出口
82 気体供給路
85 ミスト供給路
86 ミスト発生手段
87 圧力制御装置
88 圧力計
89 流量計
92 ソレノイドバルブ
99 制御装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工具が取り付けられた主軸がワークの加工部に向かって回転移動することにより、ワークに深穴を形成する深穴加工装置であって、
気体と潤滑油を混合させてミストを発生させるミスト発生手段と、
該ミスト発生手段により発生されたミストを前記ワークの加工部と前記加工具との接触部に供給するミスト供給路と、
気体を前記ミスト供給路に供給する気体供給路と、を有することを特徴とする深穴加工装置。
【請求項2】
深穴形成の加工時に生じた切屑が前記加工具と前記ワークの間に詰まっているかを判定するための目詰判定値を測定する目詰判定値測定手段と、
該目詰判定値測定手段により測定された目詰判定値があらかじめ設定された閾値に達しているかを判定する目詰判定手段と、
該目詰判定手段により、前記目詰判定値測定手段により測定された目詰判定値があらかじめ設定された閾値に達していると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項3】
前記気体供給路を流れる気体の流量を測定する流量測定手段と、
該流量測定手段により測定された流量値があらかじめ設定された閾値以下であるかを判定する流量判定手段と、
該流量判定手段により、前記流量測定手段により測定された流量値があらかじめ設定された閾値以下であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項4】
前記気体供給路を流れる気体の流量を調節する流量調節手段を、さらに有し、
前記制御手段は、前記流量測定手段により測定された流量値があらかじめ設定された閾値以下であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量をあらかじめ設定された流量値まで増加させるように前記流量調節手段を制御することを特徴とする請求項3記載の深穴加工装置。
【請求項5】
前記気体供給路を流れる気体の圧力を測定する圧力測定手段と、
該圧力測定手段により測定された圧力値があらかじめ設定された閾値以上であるかを判定する圧力判定手段と、
該圧力判定手段により、前記圧力測定手段により測定された圧力値があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項6】
前記気体供給路を流れる気体の圧力を調節する圧力調節手段を、さらに有し、
前記制御手段は、前記圧力測定手段により測定された圧力値があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の圧力をあらかじめ設定された圧力値まで増加させるように前記圧力調節手段を制御することを特徴とする請求項5記載の深穴加工装置。
【請求項7】
前記主軸を回転させる主軸回転手段と、
該主軸回転手段の駆動力を測定する駆動力測定手段と、
該駆動力測定手段により測定された駆動力の値があらかじめ設定された閾値以上であるかを判定する駆動力判定手段と、
該駆動力判定手段により、前記駆動力測定手段により測定された駆動力の値があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項8】
前記ワークの温度を測定するワーク温度測定手段と、
該ワーク温度測定手段により測定されたワークの温度の値があらかじめ設定された閾値以上であるかを判定するワーク温度判定手段と、
該ワーク温度判定手段により、前記ワーク温度測定手段により測定されたワークの温度があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項9】
前記加工具の温度を測定する加工具温度測定手段と、
該加工具温度測定手段により測定された加工具の温度の値があらかじめ設定された閾値以上であるかを判定する加工具温度判定手段と、
該加工具温度判定手段により、前記加工具温度測定手段により測定されたワークの温度があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項10】
深穴形成の加工時に生じた切屑の温度を測定する切屑温度測定手段と、
該切屑温度測定手段により測定された切屑の温度があらかじめ設定された閾値以上であるかを判定する切屑温度判定手段と、
該切屑温度判定手段により、前記切屑温度測定手段により測定された切屑の温度があらかじめ設定された閾値以上であると判定された場合に、前記気体供給路を流れる気体の流量を増加させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の深穴加工装置。
【請求項11】
前記気体供給路を流れる気体の流量を測定する流量測定手段と、
前記気体供給路を流れる気体の流量を調節する流量調節手段と、を有し、
前記制御手段は、前記気体供給路を流れる気体の流量をあらかじめ設定された流量値まで増加させるように前記流量調節手段を制御することを特徴とする請求項2、7から10のいずれかに記載の深穴加工装置。
【請求項12】
前記気体供給路を流れる気体の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記気体供給路を流れる気体の圧力を調節する圧力調節手段と、を有し、
前記制御手段は、前記気体供給路を流れる気体の圧力をあらかじめ設定された圧力値まで増加させるように前記圧力調節手段を制御することを特徴とする請求項2、7から10のいずれかに記載の深穴加工装置。
【請求項13】
深穴形成の加工時に生じた切屑および前記ミスト供給路から供給されたミストを構成する潤滑油を回収する回収路と、を有し、
前記ミスト供給路は、前記主軸の内部に設けられ、
前記回収路は、該主軸の外周面上に設けられたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の深穴加工装置。
【請求項14】
深穴形成の加工時に生じた切屑および前記ミスト供給路から供給されたミストを構成する潤滑油を回収する回収路と、有し、
該回収路は、前記主軸の内部に設けられたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の深穴加工装置。
【請求項15】
前記ミスト供給路は、前記主軸の外周面上に設けられたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の深穴加工装置。
【請求項16】
前記ミスト供給路は、
前記ミスト発生手段から前記主軸近傍に至る外部ミスト供給路と、
前記外部ミスト供給路と連通し、前記外部ミスト供給路の出口から前記主軸に取り付けられた加工具に至る内部ミスト供給路とからなり、
前記ミスト発生手段により発生されたミストは、前記外部ミスト供給路の出口から前記内部ミスト供給路に対して前記主軸がワークの加工部に向かって移動する方向に傾斜させて供給されることを特徴とする請求項15記載の深穴加工装置。
【請求項17】
前記ミスト供給路は、
前記ミスト発生手段から前記主軸近傍に至る外部ミスト供給路と、
前記外部ミスト供給路と連通し、前記外部ミスト供給路の出口から前記主軸に取り付けられた加工具に至る内部ミスト供給路とからなり、
前記ミスト発生手段により発生されたミストは、前記外部ミスト供給路の出口から前記内部ミスト供給路に対して前記主軸の回転方向に沿って偏心させて供給されることを特徴とする請求項15記載の深穴加工装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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