説明

混合型配位子表面改質ナノ粒子

少なくとも1種の両性金属酸化物又はオキシ水酸化物の表面改質ナノ粒子を含む組成物。ナノ粒子はその表面の少なくとも一部分上に、(i)乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、(ii)ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、過塩素酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1〜約4のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸塩、塩素酸塩、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤とを含む表面改質を担持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国特許仮出願第61/016,048号及び同第61/015,990号(2007年12月21日出願)の優先権を主張し、その内容が本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は表面改質金属酸化物又は金属オキシ水酸化物ナノ粒子を含む組成物に関し、別の態様では、かかる組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
金属酸化物には、非常に多くの用途がある。特に、酸化亜鉛は、例えば、白色顔料、触媒、抗菌皮膚保護軟膏の構成成分、及びゴム加硫用活性化剤としての使用を包含する多様な目的で使用される。日焼け止め剤及び木材用ニスは、超微粒子状酸化亜鉛を紫外線(UV)吸収顔料として含有する。
【0004】
酸化亜鉛は、UV光線への長期暴露時に劣化しないことから、UV吸収剤として有用である。ただし、その粒径が20ナノメートル(nm)未満のとき、量子閉じ込めにより、粒径が低下するとバンドギャップがより高エネルギーへとシフトする。酸化亜鉛に吸収されるUV波長の数を最大にするため、半導体のバルクバンドギャップにできるだけ近いバンドギャップを有する粒子が望ましい。粒径が小さい程、粒子バルク材料のバンドギャップからのシフトが大きくなるため、少なくとも約5nmの結晶粒子直径が一般に有用となり得る。このような粒子直径は、バルク材料に比較的近いバンドギャップ値を提供し、その結果比較的広い範囲の吸収波長が得られる。
【0005】
ただし、酸化亜鉛のナノ粒子は、ごく微量の可視光線しか散乱しないほど、十分に小さい場合がある。それ故、UV光線吸収性であるが可視光線透過性の複合材料(例えば、透明な有機−無機ハイブリッド材料、塑性体、塗料及びコーティング)は、酸化亜鉛ナノ粒子を充填剤として使用して作製することができる。光透過性を維持するため、粒子直径(及び存在するあらゆる粒塊の直径)は一般に、光の波長の約10分の1未満(例えば、約30nm未満)である必要がある。
【0006】
乾式及び湿式の両方法による酸化亜鉛の調製は既知である。亜鉛を燃焼する古典的な乾式方法は、広い粒度分布を有する凝集した粒子を生成する。特に超微粒子状酸化亜鉛は主に、沈殿プロセスを用いる湿式化学方法によって作製される。水溶液中での沈殿は、一般に酸化亜鉛への熱的変換を必要とする水酸化物及び/又はカーボネートを含有する材料をもたらす。熱的後処理は、粒子がこの処理中にマイクロメートル(μm)サイズの凝集体の形成を招きうる焼結プロセスを経ることから、粒子の超微粒子性にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。これらの凝集体は、ミリング又は粉砕によって不完全にしか一次粒子に破砕できない。
【0007】
非水性溶液(又は水酸化亜鉛の分解温度を超える水溶液)中で、酸化亜鉛は次式に従う単純な塩基沈殿により成長する(式中Xは一般に好適なアニオンであり、Yは好適なカチオンである)。
【0008】
ZnX+2YOH→ZnO+2YX+H
粒子の成長は、オストワルド熟成プロセスを通じて起こり、拡散依存性である。そのため、8nm又はそれ以上の直径の粒子が望ましい場合、粒子成長は室温でかなり低速である。反応温度の上昇は、プロセスを妥当な速度まで速めることができるが、これは同時にアグロメレーションの速度を増大する。
【0009】
種々の一般的な亜鉛塩類(例えば、酢酸亜鉛)はそのような非水性沈殿プロセスにおいて出発塩として使用されてきた。ただし、このような出発塩類は一般に比較的高速のアグロメレーションを避けるために希釈溶液の使用を必要とし、このような塩類から成長した酸化亜鉛は透明性を必要とする用途に適さない粒塊を生成する傾向がある。加えて、かかる塩から成長した酸化亜鉛は、多くの場合その表面改質の性質故に水、極性有機溶媒、又はある種の他の媒質中に容易に分散せず、酸化亜鉛の分散性は長期安定性を欠いてきた。かかる特性は、工業的用途を妨げてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明者は、様々な媒質(例えば、溶媒、ポリマー、塗料、コーティング、化粧品処方、及び製剤処方など)に相溶性である(及びそれ故それらに分散性である)ように表面改質された、及び/又は特定の媒質の特性と適合するように容易に調整され得る(例えば、制御された配位子交換を通して)、所望の一次粒径を有する金属酸化物又は金属オキシ水酸化物ナノ粒子(特に酸化亜鉛ナノ粒子)についての必要性があると認識している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔に述べると、一態様においては、本発明は少なくとも1種の両性金属酸化物又はオキシ水酸化物(最も好ましくは酸化亜鉛)の表面改質ナノ粒子を含む組成物を提供する。ナノ粒子は、(i)乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物(好ましくは乳酸塩)から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、(ii)ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、過塩素酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1〜約4のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸塩、塩素酸塩、及びこれらの混合物(好ましくは、酢酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは酢酸塩)から選択される少なくとも1種の表面改質剤とを含む表面改質を、ナノ粒子の表面の少なくとも一部分上に担持する。好ましくは、表面改質の少なくとも約25モルパーセントの表面改質剤(すなわち「配位子」)を乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物から選択する。
【0012】
2種類の配位子の異なる交換特性ゆえに、かかる「混合型配位子改質」ナノ粒子は制御可能に配位子交換できることが判明している。驚くべきことに、乳酸塩又はチオ乳酸塩配位子は交換に対して他の列挙された配位子(以降「交換配位子」とする)よりも著しく優れた安定性と抵抗性を示す。このことは、特定の媒質(例えば、化粧品組成物の構成成分)とのナノ粒子の相溶性を高めるための配位子交換を可能にする一方で、表面改質ナノ粒子をアグロメレーションに対して(交換配位子のみを有する対応するナノ粒子よりも)より安定にすることができる。2つの種類の配位子の比率を変化させることによって、配位子変化の範囲(例えば、程度の差はあるが親水性配位子又は親油性配位子に関する)を制御することができ、ナノ粒子の表面特性はこれによって制御可能に調整される。
【0013】
本発明の混合型配位子改質ナノ粒子は、比較的安価な出発化合物から比較的簡単に調製することができる。例えば、塩基性沈殿プロセスにおける、金属カルボン酸塩又は金属カルボン酸塩前駆体(すなわち、カルボン酸(又は別の方法では非干渉である非金属カチオンのカルボン酸塩)及び非干渉であるアニオンの金属塩)の混合物の使用は、金属酸化物又は金属オキシ水酸化物ナノ粒子が好ましい、より大きな平均一次粒径(例えば、4〜5nm以上の平均一次粒子直径)へと成長するのを可能にする一方で、アグロメレーションを最小化又は除去することさえできることが観察されている。このことは、酸化亜鉛ナノ粒子(例えば、約5nm〜約10nm又はそれ以上の範囲の平均一次粒子直径を有する酸化亜鉛ナノ粒子)の製造に特に有利である場合がある。このようなナノ粒子は、UV光線吸収性で可視光線透過性の複合材料を製造する際の使用について十分に好適であることができ、得られる粒径制御は更に吸収特性の調整を可能にする。
【0014】
したがって、少なくとも好ましい実施形態においては、本発明の組成物は様々な媒質に相溶性であるように表面改質された、及び/又は特定の媒質の特性に適合するように容易に調整できる、所望の一次粒径の金属酸化物又は金属オキシ水酸化物ナノ粒子(特に酸化亜鉛ナノ粒子)について上記の必要性を満たすことができる。組成物はそれ故例えば、少なくとも1つの担体物質又は媒質(例えば、ガス、液体、バルク固体、粉末、油、ゲル、及び分散体などの形態の材料又は材料の混合物)を更に含むことができる。
【0015】
別の態様においては、本発明は、本発明の組成物を含む物品も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のこれら並びにその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
【図1】実施例1〜3並びに比較実施例1及び2に記載の組成物の実施形態についての平均一次粒子直径対時間のプロット。
【図2】実施例1〜3並びに比較実施例1及び2に記載の組成物の実施形態についての平均アグロメレート化粒子直径対時間の対数プロット。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本特許出願で使用されるとき、
「アグロメレーション」は、比較的弱い(例えば、電荷すなわち極性に基づく)から比較的強い(例えば、化学結合に基づく)範囲であることができる、一次粒子の会合を意味する。
【0018】
「両性」(金属酸化物又は金属オキシ水酸化物に関して)は、ブレンステッド/ローリーの酸及び塩基の両方として機能できることを意味する。
【0019】
「分散指数」は、ゾル中の金属酸化物又はオキシ水酸化物ナノ粒子の動的光散乱を、紫外−可視分光法又はX線回折(分散指数は、ゾル中の一次粒子間のアグロメレーションの度合いの定量的尺度であり、理論上は、非アグロメレート化粒子の分散指数は1であり、一次粒子間のアグロメレーションの度合いが増加するにつれて分散指数の値は増加する)で決定されるような粒子の一次粒径で除算することによって決定されるような粒径と等しいパラメータを意味する。
【0020】
「交換配位子」は上記に定義したような乳酸塩又はチオ乳酸塩以外の表面改質剤を意味する。
【0021】
「ナノ粒子」は約100nm未満の直径を有する粒子を意味する。
【0022】
「一次粒径又は粒径」は、非会合の単一の結晶粒子の寸法又は直径を意味する。並びに、
「ゾル」は、液相中のコロイド粒子の分散体又は懸濁液を意味する。
【0023】
「実質的に非アグロメレート化」(金属酸化物又はオキシ水酸化物ナノ粒子に関して)は1〜10(好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3)(酸化亜鉛分散体について、溶媒をナノ粒子及び溶媒の総重量に基づいて0.5重量パーセントの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒で交換した場合)の分散指数を有することを意味する。
【0024】
表面改質ナノ粒子の調製
本発明の組成物の混合型配位子改質ナノ粒子は、任意の様々な既知の方法又は以降で展開される粒子表面改質方法によって調製することができる。有用な方法としては、例えば米国出願公開第2004/0033270 A1号(Kropfら)に記載されるものが挙げられ、この記述は参考として本明細書に組み込まれる。
【0025】
例えば、金属酸化物又はオキシ水酸化物ナノ粒子は、ナノサイズ粒子(適用の範囲については、好ましくは1ナノメートル(nm)(より好ましくは約3nm、最も好ましくは約5nm)から約50nm(より好ましくは約30nm、最も好ましくは約20nm)の平均一次粒子直径を有し、ここで粒径範囲の任意の下限を粒径範囲の任意の上限と対にすることができる)を提供できる任意の方法によって調製することができる。ナノ粒子は次いで液体媒質(例えば、アルコール、エーテル、又は極性非プロトン性溶媒)に分散させることができ、所望により任意の水残渣を取り除くことができる。次いで1つ以上の交換配位子を形成する表面改質剤、乳酸及び/又はチオ乳酸並びに酸(好ましくは、酢酸、塩化水素酸、又はこれらの混合物)を、得られる分散液に添加することができ(好ましくは、交換配位子をまず酸形態で添加することによるか、又は全ての酸を同時に添加することによる)、得られる混合物を還流下で室温から液体媒質の沸点までの間の温度に加熱した(大気圧で)。所望により、任意の得られる水を取り除くことができる。得られる表面改質ナノ粒子は分離(例えば、濾過によって又は遠心分離によって)、洗浄、及び所望により乾燥させることができる。
【0026】
好ましい分取方法には、実質的な非アグロメレート化ナノ粒子を維持するか又は製造する一方で所望の表面改質を提供できるものが挙げられる。好ましい分取方法には塩基性沈殿プロセスが挙げられる。
【0027】
例えば、好ましいプロセスは、(a)(1)少なくとも1つの塩基と、(2)(i)両性金属酸化物又はオキシ水酸化物を形成する金属カチオンから選択される金属カチオン(最も好ましくは亜鉛)、(ii)乳酸又はチオ乳酸アニオン(好ましくは、乳酸アニオン)、及び(iii)交換配位子(例えば、酢酸アニオン)、又は別の方法では、(i)金属カチオン及び非干渉アニオン(すなわちアニオンは塩基と反応しない)、(ii)乳酸又はチオ乳酸(好ましくは乳酸)、非干渉の非金属カチオン(例えば、テトラアルキルアンモニウム、好ましくはテトラメチルアンモニウム)の乳酸塩又はチオ乳酸塩(好ましくは乳酸塩)、又はこれらの混合物、及び(iii)交換配位子の酸形態(例えば、酢酸又は1〜約4のアルキレンオキシ部分を含むカルボン酸)、交換配位子及び非干渉の非金属カチオンの塩、又はこれらの混合物を含んでいる金属カルボン酸塩前駆体を含んでいる少なくとも1つの金属カルボン酸塩(塩又は塩の混合物)とを組み合わせること、並びに(b)塩基及び金属カルボン酸塩(類)又は金属カルボン酸塩前駆体に反応を可能にすること(例えば、金属酸化物又は金属オキシ水酸化物を形成する)を含む。
【0028】
このような金属カルボン酸塩類又は金属カルボン酸塩前駆体の塩基性沈殿プロセスへの使用は、実質的に非アグロメレート化の金属酸化物又は金属オキシ水酸化物のナノ粒子の調製を可能にすることができる。更に、かかる塩類又はそれらの前駆体は、ナノ粒子が好ましいより大きな平均一次粒径(例えば、4〜5nmを超える平均一次粒子直径)まで成長することを可能にすることができる。このプロセスの好ましい実施形態は、例えば、反応温度及び/又は時間を変えることで、平均一次粒径の制御を可能にする。
【0029】
好ましいプロセスでの使用に好適となりうる塩基類としては、ヒドロキシル基含有塩基化合物及びこれらの混合物が挙げられる。有用な化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい塩基類としては、水酸化ナトリウム(例えば、その比較的低コストにより)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(例えば、その広範な有機溶媒への溶解度により)及びこれらの混合物が挙げられる。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドがより好ましい。
【0030】
塩基は固体形態(例えば、NaOH又はKOHペレットとして)又は極性有機溶媒(例えば、メタノールのようなアルカノール)の溶液の形態で使用できる。広範な濃度が有用となり得る(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、メタノール中に25重量パーセントという商業的に入手可能な濃度で使用できる)。好ましいプロセスの好ましい実施形態において、塩基は溶液の形態で、金属カルボン酸塩又は金属カルボン酸塩前駆体に溶液の形態で添加することができる。塩基の溶解に有用な溶媒類としては、アセトン、ジエチルエーテル、アルカノール類(例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられ、アルカノール類が好ましく、メタノールがより好ましい。
【0031】
上記の金属カルボン酸塩(類)は、好ましいプロセスにおいて、非干渉アニオン類(式Iに関する以下の定義による)のみを有する1つ以上の他の塩類(例えば、塩化亜鉛のような塩類)と組み合わせて使用することができる。ただし、好ましくは、このような組み合わせの少なくとも約25モルパーセントは、上記の金属カルボン酸塩(類)である。望ましい場合、非妨害アニオン類を有するその他の塩類は、その他の金属カチオン類を(例えば、金属カチオンの全モル数を基準にして約10モルパーセントまでの濃度で)含むことができるが、好ましくはその他の塩類中の全ての金属類が両性金属酸化物類又はオキシ水酸化物類を形成するものから選択される。
【0032】
好ましいプロセスでの使用に好適な金属塩類には、(i)両性金属酸化物又はオキシ水酸化物を形成する金属カチオンから選択される金属カチオン及び(ii)乳酸又はチオ乳酸アニオン(又は両方)を含むもの、並びに(i)このような金属カチオン及び(ii)少なくとも1つの交換配位子(例えば酢酸アニオン)を含むものが挙げられる。かかる金属及びかかるアニオンの混合型アニオン塩類も有用である。好適な金属にはBe、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te及びPoなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。かかる金属の好ましいカチオンにはBe+2、Ti+4、V+4、V+5、Mn+4、Cr+3、Cr+4、Fe+3、Fe+4、Co+3/Co+2(混合された酸化状態の化合物)、Ni+3、Ni+4、Al+3、Zn+2、Ga+3、In+3、Ge+2、Sn+2、Sn+4、Pb+2、As+3、Sb+3、Bi+3、Te+4及びPo+4など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
好ましい金属類としてはTi、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのはTi、Al、Zn、Ga、In、及びこれらの混合物であり、Znが最も好ましい。所望される場合に、塩類はその他の金属カチオン類(非両性)を(例えば、金属カチオンの総モル数を基準にして約10モルパーセントまでの濃度で)含むことができるが、好ましくは塩類中の全ての金属類が両性金属酸化物類又はオキシ水酸化物類を形成するものから選択される。
【0034】
有用な金属塩類の分類は、次の一般式によって表すことができる
[CHCH(Y)COO[X+(m+n) (I)
式中、各Yは独立して−OH又は−SHであり、各Xは独立して非干渉アニオンであり(すなわち、アニオンは塩基と反応しない)、m及びnは合計m+nが金属カチオンMの電荷と等しくなるような値を有する整数であり、少なくとも約90モルパーセント(好ましくは少なくとも約95モルパーセント、より好ましくは約100モルパーセント)のM(金属カチオンのモルの総数に基づく)がBe、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Po、及びこれらの混合物から選択される。
【0035】
好ましくは、Yは−OHであり、Xはハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、過塩素酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、R’(OR)Z(OR)(CHCOO
(式中、R’は1〜約4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各Rは独立して1〜約4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレン部分であり、xは0〜4の整数であり、Zは二価の有機連結部分(例えば、共有結合、−S−、−C(O)O−、−C=C−、及び−C(O)NH−、並びにこれらの組み合わせからなる群から非指向的に選択される部分)であり、ただしwは、x+wの合計が1〜4の整数であり、yが0〜約3の整数であるという条件で0〜4である)、
及び塩素酸イオン並びにこれらの混合物(より好ましくは塩化物、酢酸塩、及びこれらの混合物から選択され、最も好ましくは酢酸塩)から選択されるアニオンであり、及び/又はMはTi、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb、及びこれらの混合物(より好ましくはTi、Al、Zn、Ga、In、及びこれらの混合物、最も好ましくは亜鉛)から選択される。
【0036】
有用な金属塩の代表例には、金属乳酸塩類、金属チオ乳酸塩類、金属酢酸塩類、金属ハロゲン化物類(好ましくは、金属塩化物類)、1〜約4のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸塩の金属塩類、金属硝酸塩類、金属プロピオン酸塩類、金属炭酸塩類、金属ギ酸塩類、金属硫酸塩類、金属臭素酸塩類、金属過塩素酸塩類、金属トリブロモ酢酸塩類、金属トリクロロ酢酸塩類、金属トリフルオロ酢酸塩類及び金属塩素酸塩類など(混合型金属塩類及び/又は混合型アニオン塩類が含まれる)及びこれらの混合物が挙げられ、金属の優先傾向は上記に示されたようなものである。より好ましい金属塩類には乳酸亜鉛、チオ乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、及びこれらの混合物(混合型アニオン塩類を含む)が挙げられる。乳酸亜鉛(Zn(Lac)のように表すことができる)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛(Zn(Ac)のように表すことができる)が更により好ましく、乳酸亜鉛及び酢酸亜鉛が最も好ましい。
【0037】
このような金属塩類は供給業者から入手することができ、又は乳酸、チオ乳酸及び/又は他の酸(例えば酢酸)で置換できるアニオンを有する対応する金属塩類から調製することができる。有用な出発金属塩類としては、金属オキシ硝酸塩類、金属オキシ塩化物類、金属炭酸塩類、金属酢酸塩類、金属ギ酸塩類、金属プロピオン酸塩類、金属硝酸塩類、金属塩化物類、金属酸化物類、金属水酸化物類、金属オキシ水酸化物類、及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。このような塩の多くは市販されている。金属乳酸塩類、金属チオ乳酸塩類及び金属酢酸塩類は、かかる出発金属塩類と、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から市販されている乳酸、チオ乳酸又は酢酸との反応から得ることができる。
【0038】
乳酸、チオ乳酸、及び/又は他の酸(例えば、酢酸又は1〜約4個のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸)を、例えば出発金属塩の水溶液に添加することができ、次いで得られた混合物を例えば約120℃のオーブンで一晩乾燥させることができる。別の方法としては、酸添加の前に、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を出発金属塩の水溶液に添加して沈殿(例えば、金属水酸化物)を形成させることができ、これを回収し(例えば、濾過によって)、洗浄し(例えば、比較的低温の水中で)、水に分散することができる。得られた混合物は、一晩攪拌しながら、例えば約70℃に加熱することによって反応させることができる。得られた金属塩は、単離(例えば、濾過に続く得られたろ液の回転蒸発によって)及び乾燥(例えば、真空オーブン内で)することができる。出発金属塩と酸とを組み合わせるその他の順序及び方法を利用することができる。概して化学量論的な量の出発金属塩及び酸を使用することができるが、化学量論的に過剰ないずれかの反応物質が有用である場合がある。
【0039】
好ましいプロセスの実施での使用に好適であり得る溶媒としては、金属カルボン酸塩類又は金属カルボン酸塩前駆体及び塩基類が実質的に可溶性であることができるものが挙げられる。このような溶媒類としては、極性有機溶媒類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アルカノール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、及び同様のもの、並びにこれらの混合物)、N−メチルピロリジノン(NMP)、水(例えば、亜鉛カルボン酸塩類を使用する場合には亜鉛水酸化物分解温度を超える温度にて)、及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
好ましい溶媒としては、こうした溶媒への金属カルボン酸塩類の比較的高い溶解度により、DMSO、DMF、アセトニトリル、NMP、及びこれらの混合物(DMSOがより好ましい)が挙げられる。しかしながら、別の好ましい溶媒類として、精製中の除去の容易さから、アルカノール類(好ましくは、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。最も好ましくは、溶媒が、所望の金属酸化物ナノ粒子の十分な分散を維持しながら、本方法の反応物質及び生成物を溶解する能力があることであろう。
【0041】
好ましいプロセスは少なくとも1種の塩基と少なくとも1種の上記カルボキシレート含有金属塩又は塩の混合物とを組み合わせることによって実施することができる(好ましくは少なくとも1種の溶媒中で)。別の方法としては、好ましさには劣るが、本プロセスは金属カルボン酸塩類を金属カルボン酸塩前駆体で置換することによって実施できる。このような前駆体は、(i)金属カチオン(上記のように、両性金属酸化物類又はオキシ水酸化物類を形成する金属カチオンから選択される)及び非干渉アニオン(すなわち上記のように、塩基と反応しないアニオン)を含んでいる少なくとも1種の金属塩と、(ii)乳酸又はチオ乳酸、非干渉の非金属カチオンの乳酸塩又はチオ乳酸塩(例えば、テトラアルキルアンモニウム、好ましくは、テトラメチルアンモニウム)、あるいはこれらの任意の2種以上の混合物(好ましくは、乳酸、乳酸塩(類)、又はこれらの混合物、より好ましくは乳酸塩(類))と、(iii)酸形態の交換配位子(例えば、酢酸又は1〜約4個のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸)、交換配位子の塩及び非干渉の非金属カチオン、又はこれらの混合物とを含むことができる。有用な金属塩類の分類は、次の一般式によって表すことができる
+n[X (II)
式中、M、X、及びnは式Iに関する上記定義による。この代替方法において、全カルボン酸を中和するために必要な量と比較して過剰な量の塩基を使用して、塩基を存在する金属と反応させることができる。この代替方法は、中和される酸1モルにつき1モルの水を生成する。比較的少量の水は、ZnOナノ粒子の成長の反応速度を上げることができるが、比較的大量の水の存在はアグロメレーションを引き起こすことができる。
【0042】
一般に、いかなる順序及び方法での反応物質の組み合わせも使用できるが、時として各反応物質を組み合わせる前に溶媒中に溶解することが好ましいことがある。好ましくは、金属塩(類)又は塩前駆体の量と比較して準化学量論的な量の塩基を(特に塩が亜鉛カルボン酸である場合に)利用することができる(例えば、得られる金属酸化物が十分な分散を保つことを確実とするために)。乳酸又はチオ乳酸(乳酸アニオン又はチオ乳酸アニオン)と交換酸(又は交換アニオン)とのモル比は、幅広い範囲にわたって変化させることができるが(ナノ粒子の成長の所望の速度、アグロメレーションに対する所望の抵抗性、及び配位子交換プロセスにおいて使用するための所望の量の交換配位子に基づく)、好ましくはモル比は1:3〜3:1の範囲である。
【0043】
所望する場合には、混合を促進するため機械的攪拌又はかき混ぜを使用することができる。任意に、溶解、反応、及び/又は一次粒径の成長を促進するために加熱を使用することができる。所望する(例えば、それが選択された溶媒の沸点を超える温度で実行される反応に有用となりうる)場合には、反応物質は圧力容器内で組み合わせることができる。
【0044】
例えば、モルホロジー、磁気特性、伝導性、光吸収又は放出特性、及び/又は得られるナノ粒子の結晶化度に影響するため、種々の化合物(外部イオン類)を、ナノ粒子沈殿の前、間、又は後に添加することができる。好ましい添加剤化合物としては、第2〜第4主族元素及び遷移金属化合物(より好ましくは、コバルト、ガリウム、インジウム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、及びアルミニウム化合物、並びにこれらの混合物、最も好ましくは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及びケイ素化合物、並びにこれらの混合物)が挙げられる。このような添加剤化合物は、好ましくは、溶解形態で反応物質の組み合わせに添加することができ、及び/又は好ましくは金属(例えば金属塩の形態で存在する)の総モル数を基準にして約0.01〜約10モルパーセントの量で使用することができる。
【0045】
得られる表面改質ナノ粒子を、デカンテーション(例えば、遠心分離又は共溶媒添加によって所望により誘発される沈降に続く)、濾過、溶媒除去のための回転蒸発、透析、ダイアフィルトレーション、及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせのような標準的技法を用いて単離(例えば、得られたゾルから)及び/又は精製することができる。得られる生成物の特性は、紫外可視分光法(吸収特性)、X線回折(結晶粒径、結晶相、及び粒度分布)、透過電子顕微鏡(粒径、結晶相、及び粒度分布)、及び動的光錯乱(アグロメレーションの度合い)によって評価することができる。
【0046】
表面改質ナノ粒子を含んでいる組成物及び物品
上記の分取方法は、その表面の少なくとも一部分上に、(i)乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物(好ましくは、乳酸塩)から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、(ii)ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、過塩素酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1〜約4のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸塩、塩素酸塩、及びこれらの混合物(好ましくは酢酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは酢酸塩)から選択される少なくとも1種の表面改質剤とを含む表面改質を担持する、両性金属酸化物又はオキシ水酸化物(最も好ましく酸化亜鉛)ナノ粒子を製造することができる。好ましくは、表面改質の少なくとも約25モルパーセントの表面改質剤(すなわち「配位子」)(より好ましくは少なくとも約40モルパーセント、最も好ましくは少なくとも約50モルパーセント)が乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物から選択される。
【0047】
少なくともいくつかの好ましい用途における使用については、表面改質ナノ粒子は、好ましくは1nm(より好ましくは約3nm、最も好ましくは約4nm)から約20ナノメートル(より好ましくは約15nm、最も好ましくは約10nm)の平均一次粒子直径を有し、及び/又は好ましくは表面改質ナノ粒子の総重量に基づいて、約1重量パーセント(より好ましくは約2重量パーセント、最も好ましくは約10重量パーセント)から約40重量パーセント(より好ましくは約20重量パーセント、最も好ましくは約15重量パーセント)の表面改質剤を含む(ここで、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる)。本発明の組成物は、表面改質ナノ粒子を構成又は本質的に構成することができ、あるいは更に担体物質又は媒質(例えば、ガス、液体、バルク固体、粉末、油、ゲル及び分散体などの形態の材料又は材料の混合物)を含むことができる。例えば、組成物が液体担体中の表面改質ナノ粒子の分散体の形態である場合、様々な配位子の遊離塩もまた存在し得る。
【0048】
担体物質の性質(及び量)は、当該技術分野において既知であるように、具体的な用途に応じて幅広く変化させることができる。表面改質ナノ粒子は、例えば、有機−無機ハイブリッド材料(例えば、ポリマー、塗料、コーティングなどのUV保護のための)に使用することができる。好ましい実施形態は、UV光線吸収性で可視光線透過性の組成物の製造に有用であり得る。
【0049】
しかしながら表面改質剤の生体適合性のために、表面改質ナノ粒子(特に酸化亜鉛)の好ましい使用には化粧品処方及び製剤処方での使用が挙げられる。ナノ粒子は、例えば日焼け止め剤、抗生物質軟膏剤及び口腔又はデンタルケア組成物などの化粧品処方で使用することができる。このような場合、有用な担体物質には、水、水系液体、油、ゲル、エマルション、マイクロエマルション、分散体、並びにこれらの混合物を挙げることができる。組成物は更に、例えば、芳香剤、乳化剤、増粘剤、着香剤、可溶化剤、染料、抗生物質、保湿剤及び同類物、並びにこれらの混合物などの、化粧品に一般的に使用されている添加剤を更に含むことができる。処方を、紙又は布担体(例えば、織布又は不織布材料)上に堆積して、衛生物品(例えば、おむつ、タンポン又はパンティライナー)を提供することができる。
【0050】
任意の様々な薬剤を含んでいる製剤処方中での使用は特に好ましい。例えば表面改質ナノ粒子は、抗アレルギー剤、鎮痛剤、糖質コルチコイド、気管支拡張薬、抗ヒスタミン剤、治療用タンパク質及びペプチド、鎮咳剤、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、利尿薬、ホルモン、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせを含有している薬剤の混合及び/又は送達を高めるために使用することができる。有名な部類としては、β刺激薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬、抗ロイコトリエン、メディエーター放出抑制剤、5−リポキシオキシゲナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤が挙げられる。
【0051】
製剤処方は、更に1種以上の賦形剤を含む場合がある。好適な賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients(Rowe,et al.,APhA Publications,2003)に列挙されており、微晶性セルロース、リン酸二カルシウム、ラクトース一水和物(好ましい糖)、マンノース、ソルビトール、炭酸カルシウム、デンプン、及びステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸亜鉛が挙げられる。表面改質ナノ粒子は賦形剤配合物/薬剤配合物の調製を補助することができる(例えば、混合時間を減らすことによって、処理する間の磨耗を減少することによって、及び配合物の均質性を改善することによって)。
【0052】
表面改質ナノ粒子は、薬剤吸入粉末処方(例えば、経鼻孔又は経口吸入薬物送達における使用を目的とする薬剤及び糖(類)などの所望の賦形剤(類)を含んでいる)において粉末の流動特性を高めるために特に有用であることができる。ナノ粒子は、ナノ粒子を実質的に含まない対応する粉末と比較して少なくとも粉末の流動性又は噴流性を改善するために十分な量(例えば、ナノ粒子は、処方の総重量に基づいて約10重量パーセント以下の量、約5重量パーセント以下の量、約1重量パーセント以下の量、約0.1重量パーセント以下の量、又は更には約0.01重量パーセント以下の量(例えば0.001重量パーセントなど)で使用することができる)で処方中に存在し得る。このような処方は、概して1種以上の粉末(例えば、約1,000マイクロメートル以下の、より典型的には約100マイクロメートル以下の、概して有効直径として測定される平均粒径を有する)と表面改質ナノ粒子とを、任意の好適な従来の混合又はブレンドプロセスを用いて混合することで調製することができる。
【0053】
例えば、表面改質ナノ粒子を、分散体を形成するために有機溶媒に添加することができ、粉末(類)を分散体に添加することができ、得られる混合物は混合を促進するために一定時間にわたって攪拌又は混ぜることができる。溶媒は真空の補助と共に蒸発により又は真空の補助なしで蒸発により取り除くことができる。有用な溶媒には、トルエン、イソプロパノール、ヘプタン、ヘキサン、オクタン及び同類物、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ナノ粒子は酸化亜鉛ナノ粒子であり、溶媒はイソプロパノールである。代替方法においては、所望する場合、表面改質ナノ粒子及び粉末(類)は乾式ブレンドであってよい。
【0054】
ある程度の流動性を備える薬剤吸入粉末処方を提供するために、表面改質ナノ粒子を選択することができる。所望する場合、交換配位子(例えば、酢酸表面改質剤)は配位子交換する(例えば、表面改質ナノ粒子の分散体に添加し、所望により加熱及び/又は続いて精製することで、疎水性又は親水性配位子が、交換配位子のものよりも金属酸化物表面又はオキシ水酸化物表面について高い親和性を有する)ことができ、そのため処理溶媒又は粉末(類)の特性に基づいて、得られる処方は実質的な自由流動特性を呈し得る。配位子は頭部(headgroup)(主にナノ粒子表面と相互作用する部分)及び尾部(tailgroup)(溶媒と相互作用する部分)を含んでいるとして記載することができる。有用な頭部には、チオール、アミン、リン酸、ホスホネート、ホスフィンオキシド、サルフェート、スルホネート、ヒドロキサム酸及び/又は同類の部分を含むものが挙げられる。2−ドデシルこはく酸の場合のように、複数の頭部が同じ尾部から延びることができる。有用な疎水性及び/又は親水性配位子尾部にはアルキル、アリール、オリゴエチレングリコール、及び/又は同類の部分を1つ又は複数含むものが挙げられる。トリフェニルホスフィンオキシドの場合のように、複数の尾部が同じ頭部から延びることができる。
【0055】
したがって、好適な表面改質剤は、使用する処理溶媒及び粉末(類の)性質並びに得られる処方に所望される特性に基づいて選択することができる。処理溶媒が疎水性である場合、例えば、当業者は疎水性溶媒と相溶性である表面改質ナノ粒子を達成する様々な疎水性表面改質剤から選択することができ、処理溶媒が親水性である場合、当業者は様々な親水性表面改質剤から選択することができ、かかる溶媒がヒドロフルオロカーボンである場合、当業者は様々な相溶性表面改質剤から選択することができる、などである。粉末(類)の性質及び所望の最終特性がまた、表面改質剤の選択に影響を及ぼす場合もある。ナノ粒子は、所望の組の特性を有するナノ粒子を提供するために組み合わされる複数の異なる表面改質剤(例えば、親水性及び疎水性部分の組み合わせ)を有することができる。表面改質剤は、概して、統計的に平均化された、無秩序に表面改質されたナノ粒子を提供するように選択される。
【0056】
表面改質剤は、ナノ粒子の表面上に、粉末(類)との相溶性に必要な特性を備える表面改質ナノ粒子を提供するのに十分な量で存在する。例えば、表面改質剤はナノ粒子の少なくとも一部分(好ましくは、実質的な一部分)の表面上に不連続的な又は連続的な単層を形成するのに十分な量であることができる。
【0057】
得られる薬剤吸入粉末処方は、投与の前に保存物品又は保存装置(好ましくは、マウスピースと粉末収容システムを含んでいるドライパウダー吸入器)に保存することができる。この保存物品又は保存装置は、例えば、リザーバ、カプセル、ブリスター又は陥凹テープを含むことができ、複数回投与装置又は単回投与装置であることができる。
【実施例】
【0058】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は、単に例証のみを目的とし、追記された請求項の範囲を制限するものではない。
【0059】
本明細書の実施例及びその他の部分における全ての部、百分率、比などは特に注記がない限り、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、Sigma−Aldrich ChemicalCompany(St.Louis,MO)より入手した。
【0060】
一次粒径測定
一次粒径を観測するために用いた紫外(UV)−可視(Vis)分光計は、パーキンエルマー(商標)ラムダ35計測器(PerkinElmer(商標)Life and Analytical Sciences(Wellesley,MA)より入手可能)に路程1cmのUVグレード石英試料セル又はキュベットを備えたものであった。実験試料の少量のアリコートをそのバイアル瓶から取り出し、有機溶媒(例えば、200プルーフの無水エタノール(USPグレード、Aaper Alcohol and Chemical Co.,(Shelbyville,Kentucky))で希釈した。希釈した試料を、十分に振盪して混合し、約2.5mLをUV−可視分光測定用キュベットに移した。UV−Vis分光計を、スリット幅設定1nm及びデータ収集間隔1nmを用いて、1分につき1920nmの速度で500nmから280nmまで走査した。分光計は、326nmで可視光線ランプからUV光線ランプに変わるよう設定した。
【0061】
試料の吸収端の位置を、分光計ソフトウェアと共に供給されたSavitzsky−Golayの手順を用いて、吸光度対波長曲線を波長に関して区別することによって決定し、その際幅パラメータは9に設定した。吸光度対波長曲線の識別において、分光計ソフトウェアは、結果がポジティブピークを備える曲線であるように、識別された吸光度対波長曲線のネガティブを計算した。このピークの最大波長を吸収端位置λ’maxとした。E.A.MeulenkampによってJournal of Physical Chemistry,B,102,5556〜5572(1998)に記載された次の式を用いて、吸収端位置(λ’max、単位nm)から粒子直径(d、単位nm)を求めた。
【0062】
d={0.017+[(334.56/λ’max)−0.8904]1/2}/[(375.64/λ’max)−1]
この方法でλ’maxを決定し、粒子直径を計算することで試料の粒度分布モードに対応する直径を与えた。
【0063】
光錯乱は、不正確な吸収度の測定値につながり、したがって不正確な一次粒径の測定につながることから、一次粒径は、試料が容易に認識される量まで錯乱されたとき(例えば、重大なアグロメレーションにより)には計算しなかった。この容易に認識できる量は、400nmでの吸光度を吸収端の最上部での吸光度で除した値として定義した。この数が0.2よりも大きいときは、一次粒径を計算しなかった。
【0064】
所望するならば、大量のこのような粒子アグロメレーションによって紫外−可視分光法が不適当な場合には、標準的なX線回折(XRD)技術を一次粒径を測定するのに使用することができる。バックグラウンドがゼロに取られている単結晶石英製試料ホルダ上に、予め調製したゾルを取り、数滴をホルダ上に配置して溶媒を蒸発させるか、又は乾燥したナノ粒子を低沸点溶媒、例えばアセトン中のスラリーにし、次いでホルダ上に数滴配置した後に溶媒を蒸発させるかして、試料を調製及び配置することができる。PANalytical(Westborough,MA)垂直回折計、銅K放射線、及び比例検出器の散乱線レジストリーを用いて、サーベイスキャンの形で反射配置データを集めることができる。回折計には、可変入射ビームスリット、固定回折ビームスリット、及びグラファイト回折ビームモノクロメータを取り付けることができる。5〜80度(2)で、0.04度刻み及び24秒のドウェル時間を用いて、サーベイスキャンを行うことができる。45kV及び35mAのX線発生装置設定を使用することができる。観察した回折ピークには、Pearson VIIピーク型モデル、立法スプラインバックグラウンドモデル及びJADE X線回折解析ソフトウェア(v7.5,Materials Data Incorporated(MDI)(Livermore,CA))のアプリケーションを用いてプロファイルフィッティングを実施することができる。ピーク幅は、Kα1構成要素の半値全幅(FWHM)としてとることができる。明白な結晶サイズ(Dapp)はScherrer式(以下で説明される)を用いて決定することができ、計測された広がり及び形状因子0.9の採用についての収集の後でピークFWHM値を観察することができる。
【0065】
Scherrer式:Dapp=Kλ/βcos(θ)(Åでの結果)
式中、
K=0.90形状因子
λ=1.540598Å波長Cu Kα1
β=計測された広がりについて収集した後のピークFWHM値(ラジアンでの)
θ=ピーク位置2θの半値
(X−ray Diffraction Procedures for Polycrystalline and Amorphous Materials,Chapter 9,p.491,Harold P.Klug and Leroy E.Alexander,John Wiley & Sons,Inc.,New York(1954)、P.Scherrer,Gottinger Nachrichten,2,p.98(1918)。)
酸化亜鉛濃度測定
選択された分散体中の酸化亜鉛の濃度は、分散体のUV−可視吸収端の高さを測定し、報告されている酸化亜鉛ナノ粒子の吸光係数に分散体の希釈係数を乗じることにより決定した。(直径約4nmの酸化亜鉛ナノ粒子については0.135mg mL−1−1cm−1の吸光係数がJournal of Colloid and Interface Science,288,313〜316(2005)にHu et al.によって報告されており、この数値を全ての計算に使用した。)特徴は端部であって、独立したピークではなかったので、吸収端の高さは多くの場合明瞭ではなかった。吸収端高さを再現性よく計算するため及び変化する幅を備える吸収端について補正するため、以下の手順を用いた。
【0066】
λ’(識別される吸光度)曲線に生じるピークのλ’maxを上記のように決定した。次いでピークの半値全幅(FWHM)を以下のように決定した。ピークの左側最小位置を、λ’maxよりも15nm〜45nmの範囲の低い波長において、λ’曲線の識別される吸光度の最小値としてとる。ピークの右側最小位置を、λ’maxよりも30nm大きい波長において、λ’曲線の識別される吸光度としてとる。識別される吸光度曲線におけるピークの左側及び右側中間点(ピークの起点からピークの最高値までの間の半値)を、最高値及びそれぞれの最低値を平均することで決定した。次いで右側中間点(長波長側)の波長値から左側中間点(短波長側)の波長値を減じることでFWHMを決定した。
【0067】
FWHMを決定した後、分散体の吸収端の吸光度値を計算した。吸光度曲線における標準オフセットのために、吸収端の頂点の吸光度から吸収端の底値の吸光度を減じることによって吸収端を標準化した。吸収端の頂点(top)の吸光度は、λ’maxからFWHMの1.3倍を減じた波長と対応する波長での吸光度であった。吸収端の底値(bottom)における吸光度は、λ’maxにFWHMの1.3倍を加えた波長と対応する波長での吸光度だった。最終的に、吸収端について記録された吸光度は、頂点(より高い)吸光度から底部(より低い)吸光度を減じた結果であった。
【0068】
アグロメレーションの度合い
動的光錯乱の測定は、マルバーンナノサイザー(Malvern NANOSIZER)ナノ(Nano)−ZS、型番ZEN−3600、粒径分析器(マルバーンインスツルメンツ(Malvern Instruments)、英国マルバーン(Malvern)より入手可能)を用いて実施し、これを時間の経過にともなう粒子のアグロメレーションを観測するために用いた。少量(1g)のアリコートを油浴中の試料バイアル瓶から採取し、1gのジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した。希釈した試料を十分に混合し、続いてガラスキュベットに移した。光散乱データは、試料温度を25℃に設定して記録した。ジメチルスルホキシドの粘度(1.98×10−3Pa・s、1.98cP)及び屈折率(1.479)を使用して、得られた自己相関関数を粒径に変換した。報告されたアグロメレート化粒子直径は、強度加重分布に基づいた。
【0069】
実施例1〜3及び比較例1及び2
乳酸亜鉛(Pfaltz&Bauer(Waterbury,CT))を、真空オーブン中で100℃で一晩乾燥させた。&乳酸亜鉛の熱重量測定(TGA)を乾燥工程の前と後に行なった。熱重量測定装置の温度は毎分20℃の速度で120℃まで上昇させ、この温度を20分保った。真空オーブン中での乾燥工程の前では、乳酸亜鉛は15.7重量パーセントの水を含有していた。乾燥工程の後では、乳酸亜鉛は2.4重量パーセントの水を含有していた。
【0070】
酸化亜鉛は、乳酸亜鉛(Zn(Lac))と酢酸亜鉛(Zn(Ac))を様々な比率で使用して合成した。2.75gの乾燥酢酸亜鉛(Alfa Aesar(Ward Hill,MA)、183.5g/モル)を26.35gのジメチルスルホキシド(DMSO、EMD Chemicals(Gibbstown,NJ)、OMNISOLVグレード)中に溶解することで0.52mモル/gのZn(Ac)の原液を調製した。様々な量のZn(Lac)とDMSOを原液の一部に添加して、以下の表1に示されるような一連の試料を調製した。
【0071】
【表1】

【0072】
それぞれの試料を40mLバイアル瓶中に配置し、それぞれに20.3gのDMSOと電磁攪拌棒を加えた。次いでそれぞれのバイアル瓶を90℃の油浴槽に配置した。次いでそれぞれのバイアル瓶に2.3gの水酸化テトラメチルアンモニウム(メタノール中25パーセント、Alfa Aesar(Ward Hill,MA))を添加した。5つの試料それぞれが約1重量パーセントのZnOナノ粒子を含有していると見込まれた。試料を様々な時間間隔でUV−可視分光法(0.5gのアリコートと24.5gの200プルーフのエタノールを用いた)及び動的光散乱で分析した。結果を図1及び2に図示する。
【0073】
実施例4及び比較実施例3
ZnO−[(Lac)(Ac)](酢酸亜鉛と乳酸亜鉛のモル比1:1の混合物から成長した酸化亜鉛)及びZnO−[Lac](乳酸亜鉛単独から成長した酸化亜鉛)の配位子交換の比較
ZnO−[(Lac)(Ac)]ナノ粒子分散体の調製
まず、14.64gのDMSO(EMD Chemicals(Gibbstown,NJ)、OMNISOLVグレード)中に2.24gの乳酸亜鉛(9.21mモル、Pfaltz & Bauer(Waterbury,CT)、本質的に上記のように乾燥させた)と1.69の無水酢酸亜鉛(9.21mモル、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)、183.5g/モル)を溶解し、シリコーンオイルのヒートバス中で80℃に加熱することで酸化亜鉛ナノ粒子分散体を調製した。&次いで11.42gの水酸化テトラメチルアンモニウム(メタノール中25重量パーセント、31.3mモル、Alfa Aesar(Ward Hill,MA))を得られた溶液に滴下で添加した。得られた成長した酸化亜鉛粒子をUV−可視分光法を用いて観測した。80℃での1時間の加熱工程後、酸化亜鉛粒子は5.15nmの平均粒径に達した。ヒートバスから粒子を含有している分散体を取り外して粒子の成長を停止させた。
【0074】
得られた酸化亜鉛ナノ粒子分散体5gを5gのDMSOに希釈した。希釈した分散体に3−(エチレンジアミノ)プロピル−官能化シリカゲル0.33gを添加し、得られた混合物を室温で2日間磁気的に攪拌した。次いで37mm直径の1マイクロメートルガラス繊維メンブレンシリンジフィルタ(Pall Life Sciences(East Hills,NY)、Acrodisc(商標)#4524T)を通して濾過することで分散体からシリカゲルを取り除いた。得られた精製した分散体をUV−可視分光法を用いて分析した(14.9mLの200プルーフのエタノール中に0.1mLを希釈することで150倍の希釈が達成された)。直径5.33nmの酸化亜鉛と、1mLあたり21.9mgの酸化亜鉛濃度を検出した。
【0075】
ZnO−[Lac]ナノ粒子分散体の調製
まず初めに、塩基の添加時に、DMSO中に十分な量の乾燥乳酸亜鉛を溶解させて、酸化亜鉛が5重量パーセントであるような酸化亜鉛分散体の製造を試みたところ、得られたDMSO中の乳酸亜鉛溶液は迅速にゲル化し、磁気撹拌することができなくなった。したがって、以下の方法で酸化亜鉛が5重量パーセントである酸化亜鉛分散体を調製した。
【0076】
乾燥乳酸亜鉛(0.90g、3.7mモル、Pfaltz & Bauer(Waterbury,CT)、本質的に上記のように乾燥させた)を14.09gのDMSO(EMD Chemicals(Gibbstown,NJ)、OMNISOLVグレード)に溶解し、シリコーンオイルのヒートバス中で80℃に加熱滴状した。乳酸亜鉛を15分溶解させた。得られた溶液に水酸化テトラメチルアンモニウム(メタノール中25重量パーセント、2.28g、6.25mモル、Alfa Aesar(Ward Hill,MA))を滴下して添加した。乳酸亜鉛と塩基を15分以上反応させた。この、乳酸亜鉛を添加し、待ち、塩基を添加し、待つ、というサイクルを4回以上繰り返し、その結果全部で18.5mモルの乳酸亜鉛が添加され、31.3mモルの塩基が添加された。得られた酸化亜鉛粒子の成長をUV−可視分光法を用いて観測した。80℃での26時間の加熱工程後、酸化亜鉛粒子は5.09nmの平均粒径に達した。粒子を含有している分散体をヒートバスから取り外し、粒子の成長を停止させた。
【0077】
得られた酸化亜鉛ナノ粒子分散体5gを、5gのDMSOに希釈した。希釈した分散体に3−(エチレンジアミノ)プロピル−官能化シリカゲル0.33gを添加し、得られた混合物を室温で2日間磁気的に攪拌した。次いで37mm直径の1マイクロメートルガラス繊維メンブレンシリンジフィルタ(Pall Life Sciences(East Hills,NY)、Acrodisc(商標)#4524T)を通して濾過することで分散体からシリカゲルを取り除いた。得られた精製した分散体をUV−可視分光法を用いて分析した(14.9mLの200プルーフのエタノール中に0.1mLを希釈することで150倍希釈が達成された)。直径5.06nmの酸化亜鉛と、1mLあたり24.6mgの酸化亜鉛濃度を検出した。
【0078】
1−ドデカンチオールでの配位子交換
1−ドデカンチオール0.30g(1.5mモル)をガラス瓶に量り取り、1−メトキシ−2−プロパノールを24.7g添加し、よく混合することで溶液(以降「溶液A」と呼ぶ)をつくった。これにより、溶液1グラムあたり0.06mモルの1−ドデカンチオールを含有する溶液をもたらした。
【0079】
上記の調製したZnOナノ粒子分散体2種類の各1mLを15mLの遠心管に添加した。分散体に小さな撹拌棒(10mm×3mm)を添加した。80℃に保ったシリコーンオイルのヒートバスに、遠心管を浸した。加熱したナノ粒子分散体に溶液A0.36gを添加し、そのすぐ後に1−メトキシ−2−プロパノール0.64mLを添加した。得られた混合物を、1時間にわたって加熱及び撹拌した。
【0080】
溶液Aを添加するとすぐZnO−[(Lac)(Ac)]分散体は不透明でかつ白色になったが、一方で、ZnO−[Lac]分散体は透明のままだった。混合物を室温まで冷却した後、冷却した混合物を毎分3000回転(rpm)で20分にわたって遠心分離した。各混合物から液体をデカントし、1−ドデカンチオールと反応(配位子交換を経験)していない任意の酸化亜鉛ナノ粒子についてUV−可視分光法で分析した。遠心分離後に残った任意の固体を、最初は手で振盪し、次いで磁気撹拌を少なくとも1時間にわたって行うことで、エタノール2.9mL中のスラリーにした(本質的には1−ドデカンチオールとのZnO−[Lac]反応(配位子交換経験)からは固体は残らない)。得られたエタノール系スラリーを3000rpmで20分にわたって遠心分離した。エタノールを次いでデカントした。任意の残った固体を磁気撹拌によりクロロホルム(EMD Chemicals(Gibbstown,NJ)、OMNISOLVグレード)2.9mL中に再分散した。
【0081】
各分散体0.1mLをクロロホルムを用いて3.0mLに希釈して(30x希釈係数)、石英キュベット中でUV−可視分光法を用いて分析した。1−ドデカンチオールで官能化された酸化亜鉛の量と、CHCl中に分散された酸化亜鉛の量を各分散体について下の表2に示し、ここで最も高い酸化亜鉛の吸収端は上記のように決定した。
【0082】
【表2】

【0083】
1−ドデカンチオールとの反応(配位子交換)の後にDMSO分散体中に残っている酸化亜鉛の量は、各分散体について下の表3で示す。
【0084】
【表3】

【0085】
したがって、ZnO−[(Lac)(Ac)]が1−ドデカンチオールと反応(配位子交換を経験)した場合、酸化亜鉛ナノ粒子は、比較的極性のDMSO分散体から凝集するのに十分なほど明らかに疎水性となる。酸化亜鉛を固体として遠心分離し、エタノールのスラリーとし(任意の残っているDMSOを除去するために)、再び固体として遠心分離し、比較するとはるかに極性の低い溶媒(すなわちクロロホルム)に良好に再分散させることができる。
【0086】
対照的にZnO−[Lac]は明らかに、DMSO中で凝集するのに十分なほど疎水性になるのに十分な程度には1−ドデカンチオールとは反応(配位子交換を経験)しなかった。結果として、本質的に酸化亜鉛はクロロホルム相には全く移ることができなかった。
【0087】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含まれる参照された記述内容は、その全体が、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の両性金属酸化物又はオキシ水酸化物の表面改質ナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子が前記ナノ粒子の表面の少なくとも一部分上に、(i)乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、(ii)ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、過塩素酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1〜約4のアルキレンオキシ部分を含んでいるカルボン酸塩、塩素酸塩、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤とを含む表面改質を担持する、組成物。
【請求項2】
前記金属が、Be、Ti、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、及びPo、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記金属が、Be+2、Ti+4、V+4、V+5、Mn+4、Cr+3、Cr+4、Fe+3、Fe+4、Co+3/Co+2(混合された酸化状態の化合物)、Ni+3、Ni+4、Al+3、Zn+2、Ga+3、In+3、Ge+2、Sn+2、Sn+4、Pb+2、As+3、Sb+3、Bi+3、Te+4、Po+4、及びこれらの混合物から選択されるカチオンの形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記金属が、Ti、V、Mn、Cr、Al、Zn、Ga、In、Sn、Pb、及びこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記金属が、Ti、Al、Zn、Ga、In、及びこれらの混合物から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属が亜鉛である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記表面改質の前記表面改質剤の少なくとも25モルパーセントが乳酸塩、チオ乳酸塩、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記表面改質が乳酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記表面改質が酢酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記表面改質が酢酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記表面改質ナノ粒子が1nm〜50nmの平均一次粒子直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記表面改質ナノ粒子が前記表面改質ナノ粒子の総重量に基づいて1重量パーセント〜40重量パーセントの前記表面改質剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記表面改質ナノ粒子が実質的に非アグロメレート化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
酸化亜鉛の表面改質ナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子が前記ナノ粒子の表面の少なくとも一部分上に(i)乳酸塩と、(ii)酢酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の表面改質剤とを含む表面改質を担持する、組成物。
【請求項15】
前記表面改質剤が酢酸塩である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記表面改質ナノ粒子が実質的に非アグロメレート化されており、1nm〜20nmの平均一次粒子直径を有し、前記表面改質ナノ粒子の総重量に基づいて1重量パーセント〜40重量パーセントの前記表面改質を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも1種の担体物質を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記担体物質がポリマーである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記担体物質が有機溶媒である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記有機溶媒がイソプロパノールである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が薬剤を含む製剤処方である、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記薬剤が粉末である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が化粧品処方である、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
請求項17の組成物を含む物品。
【請求項25】
前記物品がドライパウダー吸入器である、請求項22の組成物を含む物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−508019(P2011−508019A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539687(P2010−539687)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086914
【国際公開番号】WO2009/085721
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】