説明

混合方法、光学用複合材料及び光学素子

【課題】溶媒を使用することなく、且つ、粒子の偏在(凝集)を発生させることなく、光学用硬化性樹脂への容易に安定した粒子の混合方法、粒子を混合した光学用複合材料、この光学用複合材料を使用した光学素子の提供。
【解決手段】光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法であって、前記光学用硬化性樹脂と、前記粒子とを一次混合した後、二次混合を行うことを特徴とする光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法、この混合方法により製造された光学用複合材料、及びこの光学用複合材料を使用した光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会に向けたオプトエレクトロニクスの研究が精力的に行われ、その実現に向けて光学材料の開発も盛んに行われている。光通信、光記録、光加工、光計測、光演算等、オプトエレクトロニクスの様々な展開を支える光学材料として、高屈折性、低分散性(すなわち高いアッベ数)、耐熱性、対衝撃性、機械的強度、透明性、無色性、クリーン性、易成形性、軽量性、耐薬品性・耐溶剤性等の特性が求められている。
【0003】
これまで光学材料として、石英や光学ガラスなどの無機系材料が主に用いられてきた。これら無機系材料は、優れた光学特性や耐熱性を有しているものの、加工性やコスト、密度が大きいなどの問題を抱えているため、これらに対応すべく近年、優れた光学特性と加工性、軽量性等を兼ね備えた樹脂材料として、熱可塑性樹脂材料、硬化性樹脂材料の開発が進められている。しかしながら、これらの樹脂材料は無機系材料と比較して、屈折率が低く目的によっては十分でない場合がある。又、樹脂材料は無機系材料と比較して環境温度の変化や湿度の変化による屈折率の変化が大きく、例えば光学素子用材料として使用した場合に、環境温度が上昇した際には屈折率が低下し性能が大きく変動してしまい問題になる場合があった。そこで、熱可塑性樹脂に微小な無機微粒子を分散させることにより、光学素子としての透明性を損なうことなく光学性能を向上させた有機無機複合材料を用いた光学素子が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。この様な技術により温度や湿度の一時的な変化による性能変化はある程度低減出来るものの、熱可塑性樹脂は耐熱性が十分ではないため、高温環境下で長期間使用された場合、変質や変形により性能が劣化する場合があった。
【0004】
例えば、硬化性樹脂に微粒子を添加させる方法として、熱硬化型、自硬化型、溶剤蒸発硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型の硬化性樹脂材料を使用し、高屈折率且つ高アッベ数な微粒子を1)水、有機溶剤、又はこれら2つに分散させたサスペンジョン、又は、ゾルゲル法を用いて作成したサスペンジョンと基材ポリマーとを混合させるか、2)初めから溶媒に基材ポリマーを溶解させた中に微粒子を分散させることによって混合することで高屈折率且つ高アッベ数を有する硬化性樹脂材料を製造する方法が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0005】
又、酸化チタン高屈折率微粒子と、SO3Na基を有するウレタンアクリレートオリゴマーと、アルキルスルホン酸塩分散剤と、ケトン系混合溶媒とを混合した高屈折率光学膜用分散液にUV硬化性樹脂を添加・混合して塗布液を調整し、ポリエステル製透明基板の上に塗布、乾燥してUV硬化させ高屈折率光学膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0006】
しかしながら特許文献3、特許文献4に記載の方法は、硬化性樹脂に微粒子を分散させる方法としては優れた方法であるが、溶媒を除去するための装置、除去した溶媒の回収装置等が必要となり、装置全体が大きくなり設備投資も必要になると言う問題があった。又、溶解・分散、混合、溶媒除去と言った煩雑な作業が増え、生産効率を上げることが難しかった。
【0007】
一方、特許文献1及び2に記載されているような熱可塑性樹脂に微粒子を分散させる際には、2軸混練機等の混練機を用いた溶融混練により樹脂と微粒子の混合を行っている。しかしながら、この様な方法で硬化性樹脂と粒子を混合すると、十分に分散が進む前の、粒子が偏在する箇所は粘度が大きく、大きな剪断熱が発生するために硬化性樹脂の硬化が進行してしまい粒子が十分に分散されず、部分的に粒子が偏在(凝集)してしまうため、結果として光学素子の透過率が低下すると言う問題が発生した。
【0008】
この様な状況から、溶媒を使用することなく、且つ、粒子の偏在(凝集)を発生させることなく、硬化性樹脂へ容易に安定して粒子を混合するための混合方法の開発、粒子を混合した光学用複合材料、この光学用複合材料を使用した光学素子の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2002−207101号公報
【特許文献2】特開2002−240901号公報
【特許文献3】特開2003−73563号公報
【特許文献4】特開2004−115594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は溶媒を使用することなく、且つ、粒子の偏在(凝集)を発生させることなく、光学用硬化性樹脂への容易に安定した粒子の混合方法、粒子を混合した光学用複合材料、この光学用複合材料を使用した光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記に示す構成により達成された。
【0011】
1.光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法であって、前記光学用硬化性樹脂と、前記粒子とを一次混合した後、二次混合を行うことを特徴とする光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【0012】
2.前記粒子が硬化性樹脂に対して、体積分率で15〜60%であることを特徴とする前記1に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【0013】
3.前記一次混合は、光学用硬化性樹脂の非硬化環境に制御し行うことを特徴とする前記1又は2に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【0014】
4.前記二次混合は、光学用硬化性樹脂の非硬化環境に制御し行うことを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【0015】
5.前記二次混合が終了した後、光学用硬化性樹脂は溶融状態を保持していることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【0016】
6.前記1〜5の何れか1項に記載の混合方法により製造されたことを特徴とする光学用複合材料。
【0017】
7.前記6に記載の光学用複合材料を使用したことを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0018】
溶媒を使用することなく、且つ、粒子の偏在(凝集)を発生させることなく、光学用硬化性樹脂への容易に安定した粒子の混合方法、粒子を混合した光学用複合材料、この光学用複合材料を使用した光学素子を提供することが出来、粒子の添加により光学性能を適宜コントロールすることにより市場の要求に応じた光学用複合材料及び光学素子の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0020】
(光学用硬化性樹脂)
先ず、本発明に用いられる硬化性樹脂について説明する。本発明に係わる光学用硬化性樹脂は、硬化する前は溶融状態であり、紫外線照射、電子線照射又は加熱処理の何れかの操作によって硬化するものであり、硬化させることによって可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上を有するものである。又、添加剤を添加した場合であっても、添加剤を添加する前の400nmの光に対する透過率の低下が1%〜10%程度であるものが好ましい。
【0021】
本発明における透過率は、樹脂材料を3mm厚の平板テストピースとして、公知の分光光度計、例えば分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3150)等により各波長について測定した値を表す。
【0022】
本発明に係わる光学用硬化性樹脂としては特に限定はなく、紫外線及び電子線照射等の活性光線硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、2液混合型硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの硬化性樹脂として例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有する硬化性樹脂、アリルエステル化合物を含有する樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中で好ましい樹脂として、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有する硬化性樹脂、アリルエステル化合物を含有する樹脂が挙げられる。これらの光学用硬化性樹脂の具体的な樹脂を以下に示す。
【0023】
(シリコーン樹脂)
Si−O−Siを主鎖としたシロキサン結合を有するシリコーン樹脂を使用することが出来る。当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば特開平6−9937号公報参照)。
【0024】
熱硬化性のポリオルガノシロキサン樹脂は、加熱による連続的加水分解−脱水縮合反応によって、シロキサン結合骨格による三次元網状構造となるものであれば、特に制限はなく、一般に高温、長時間の加熱で硬化性を示し、一度硬化すると過熱により再軟化し難い性質を有する。
【0025】
この様なポリオルガノシロキサン樹脂は、下記一般式(A)が構成単位として含まれ、その形状は鎖状、環状、網状形状の何れであってもよい。
【0026】
((R1)(R2)SiO)n … (A)
上記一般式(A)中、「R1」及び「R2」は同種又は異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基を示す。具体的には、「R1」及び「R2」として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。「R1」及び「R2」は水酸基及びアルコキシ基から選択される基であってもよい。又、上記一般式(A)中、「n」は50以上の整数を示す。
【0027】
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、又はこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。又、相互に溶解しあう範囲で、組成の異なるものを配合して用いてもよい。
【0028】
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の何れの方法も用いることが出来る。例えば、オルガノハロゲノシランの1種又は2種以上の混合物を加水分解ないしアルコリシスすることによって得ることが出来、ポリオルガノシロキサン樹脂は、一般にシラノール基又はアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10質量%含有する。
【0029】
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融しうる溶媒の存在下に行うのが一般的である。又、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを、オルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることが出来る。この様にして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのがよい。
【0030】
(エポキシ樹脂)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’−4’−シクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂(国際公開第2004/031257号パンフレット参照)、スピロ環を含有したエポキシ樹脂、鎖状脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0031】
(アダマンタン骨格を有する硬化性樹脂)
2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート(特開2002−193883号公報参照)、3,3’−ジアルコキシカルボニル−1,1’ビアダマンタン(特開2001−253835号公報参照)、1,1’−ビアダマンタン化合物(米国特許第3342880号明細書参照)、テトラアダマンタン(特開2006−169177号公報参照)、2−アルキル−2−ヒドロキシアダマンタン、2−アルキレンアダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−tert−ブチル等の芳香環を有しないアダマンタン骨格を有する硬化性樹脂(特開2001−322950号公報参照)、ビス(ヒドロキシフェニル)アダマンタン類やビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(特開平11−35522号公報、特開平10−130371号公報参照)等が挙げられる。
【0032】
(アリルエステル化合物を含有する樹脂)
芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等が挙げられる。これらの光学用硬化性樹脂には、各種添加剤の使用が可能である。
【0033】
(添加剤)
添加剤としては、光学用硬化性樹脂に添加した際の透過率の低下が1〜10%であれば、特に限定はないが、リン系安定剤から選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されるものであれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0034】
(硬化剤)
硬化剤は硬化性樹脂材料を構成する上で使用されるものであり特に限定はない。又、本発明において、硬化性樹脂材料と、添加剤を添加した後の光学材料の透過率を比較する場合、硬化剤は添加剤には含まれないものとする。硬化剤としては、酸無水物硬化剤やフェノール硬化剤等を好ましく使用することが出来る。酸無水物硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等を挙げることが出来る。又、必要に応じて硬化促進剤が含有される。硬化促進剤としては、硬化性が良好で、着色がなく、熱硬化性樹脂の透明性を損なわないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)等のイミダゾール類、3級アミン、4級アンモニウム塩、ジアザビシクロウンデセン等の双環式アミジン類とその誘導体、ホスフィン、ホスホニウム塩等を用いることが出来、これらを1種、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
(粒子)
本発明に係わる粒子に付き説明する。粒子としては無機粒子が好まし用いられ、無機粒子としては、非結晶性を示すものであればどのような組成であってもよく、例えば、酸化物粒子が挙げられ、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、チタン産バリウム等が挙げられる。又、これら酸化物との組み合わせで形成されるリン酸塩、炭酸塩、硫酸塩等も好ましく用いられ、リン酸アルミニウム、リン酸タンタル、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、等を挙げることが出来る。
【0036】
上記の無機粒子は、1種類の無機粒子を用いてもよく、又複数種類の無機粒子を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の無機粒子を用いることで、必要とされる特性を更に効率よく向上させることも出来る。
【0037】
又、本発明に係る無機粒子の平均粒子径は、光学素子として使用される場合の使用波長よりも十分小さく、透過率を低下させない大きさであれば特に制限はないが、1nm以上、30nm以下であることが好ましく、1nm以上、20nm以下がより好ましく、特に好ましくは1nm以上、10nm以下である。平均粒子径が1nm未満の場合、無機粒子の分散が困難になり所望の性能が得られない恐れがあることから、平均粒子径は1nm以上であることが好ましく、又平均粒子径が40nmを超えると、得られる複合硬化性材料組成物が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがあることから、平均粒子径は30nm以下であることが好ましい。ここで言う平均粒子径は各粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値を言う。
【0038】
更に、無機粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状の粒子が好適に用いられる。具体的には、粒子の最小径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
【0039】
又、粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
【0040】
更に無機粒子の屈折率nの温度Tに対する変化率(温度依存性)dn/dT値は0以上であることが好ましく、更に無機粒子のdn/dT値が0以上、0.01以下であることが好ましく、特に好ましくは5×10-5以上、5×10-3以下である。尚、dn/dT値は以下に示す方法により測定した値を示す。
【0041】
本発明において好ましく用いられる無機粒子としては、非結晶性を有し、且つdn/dT値が0以上であると同時に、樹脂との混合等に使用される際の加熱等のプロセスにおいて、凝集や分解を起こさず、特性が変化しないことが好ましい。
【0042】
以上の点を考慮して、本発明に好ましく用いられる無機粒子としては、金属複酸化物、リン酸塩が特に挙げられる。又、発明において好ましく用いられる無機粒子は表面改質処理が施されている方が好ましい。
【0043】
(非結晶性無機粒子の形成方法、表面改質方法)
本発明に係る無機粒子の形成方法は、小粒径で単分散な非結晶性粒子を形成するために、水又はアルコール等の溶媒中で形成することを特徴とする。粒子形成方法としては、公知の何れの方法も用いることが出来る。例えば、ハロゲン化金属やアルコキシ金属を原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物粒子を得ることが出来る。この際、粒子の安定化のために有機酸や有機アミンなどを併用する方法も用いられる。又、2種以上の溶液の混合により粒子を析出させる反応晶析法や、pH変化による析出を利用した均一沈殿法(尿素法)等も好ましく利用出来る。
【0044】
本発明においては、水又はアルコール中でこれらの方法により粒子形成を行うことにより非結晶性無機粒子を形成した後、更に粒子表面を改質することにより非極性溶媒中に分散される粒子の平均粒径は、1nm以上、30nm以下であることが好ましい。
【0045】
表面改質する方法は、特に限定されるものではなく、公知の何れの方法も用いることが出来る。例えば、水が存在する条件下で加水分解により粒子の表面に修飾する方法が挙げられる。無機粒子の表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。これらは特に限定されず、無機粒子及び無機粒子を分散する光学用硬化性性樹脂の種類により適宜選択することが可能である。又、各種表面処理を2つ以上同時又は異なる時に行ってもよい。この方法では、酸又はアルカリなどの触媒が好適に用いられ、粒子表面の水酸基と、表面修飾剤が加水分解して生じる水酸基とが、脱水して結合を形成することが一般に考えられている。
【0046】
本発明において、無機粒子の表面改質に用いる表面修飾剤としては、一般にシラン系カップリング剤と呼ばれる有機シラン化合物が好ましく用いられる。有機シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルフェノキシシランなどが挙げられる。
【0047】
又、例えば、分散剤を粒子表面に存在する酸性基、あるいは塩基性基に吸着させることにより粒子表面を改質する方法も有効である。特に、塩基性基に吸着するカルボン酸基及び/又は無水カルボン酸基を有する化合物が好ましく用いられる。カルボン酸基を有する化合物としては特に限定はされず、例えば、ステアリン酸等の直鎖カルボン酸、環状構造を持つシクロヘキサンカルボン酸、マレイン酸等のジカルボン酸やそれらにメルカプト基やアミド基の様な置換基を有するもの等の比較的分子量の小さいものから、高分子化合物の主鎖や側鎖にカルボキシル基を持つもの等、混合する樹脂の種類に適した化合物を選択出来る。又、無水コハク酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物や高分子鎖に無水マレイン酸を反応させた酸変性物等も好ましく用いられる。
【0048】
これらの化合物は、反応速度などの特性が異なり、表面修飾の条件などに適した化合物を用いることが出来る。又、1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよい。更に、用いる化合物によって得られる表面修飾粒子の性状は異なることがあり、材料組成物を得るにあたって用いる熱可塑性樹脂との親和性を、表面修飾する際に用いる化合物を選ぶことによって図ることも可能である。
【0049】
表面修飾の割合は特に限定されるものではないが、表面修飾後の粒子に対して、10質量%以上、99質量%以下であることが好ましく、30質量%以上〜98質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明の非水系粒子分散液は、無機粒子を上記の如く表面改質を行った後に非極性溶媒中に平均粒径1nm〜30nmの粒子として分散されることが好ましい。ここで言う非極性溶媒とは、水、アルコール等の極性基を有する溶媒の含有率が20%以下、好ましくは10%以下である溶媒を指す。非極性溶媒の種類は、その後のプロセスである樹脂との混合に適したものを選択することが好ましく、樹脂の溶解が可能な、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン等が好ましく使用出来る。
【0051】
非極性溶媒への分散方法としては特に限定しないが、溶液中で微粒子の表面改質を行った後に溶媒置換を行う方法や、溶媒除去して乾燥させた微粒子を非極性溶媒に添加する方法等が挙げられる。又、無機微粒子と非極性溶媒を混合した後に超音波処理やビーズミル分散機を用いて分散を行うことにより、所望の粒径に制御することは好ましい態様の一つである。
【0052】
本発明は、上記光学用硬化性樹脂へ、上記粒子を混合する混合方法に関するものである。以下に、本発明の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法に付き説明する。
【0053】
(光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法)
光学用硬化性樹脂へ粒子を二軸混合機を用いて一度に混合する場合、混合時の剪断力により光学用硬化性樹脂に熱が掛かり、熱硬化性の場合は硬化反応が進んでしまったり、粒子が二軸混合機内部への付着したり、不均一な粘度差が生じることによるトルクの急激な上昇が起き、十分な混練が行えない。
【0054】
本発明は、これらの問題点を解決した光学用硬化性樹脂へ粒子を混合方法に関する。
【0055】
本発明の混合方法は、光学用硬化性樹脂へ粒子を粗混合する一次混合と、最終混合する二次混合との2段階に分けて行う構成となっている。
【0056】
本発明における一次混合とは、光学用硬化性樹脂と粒子とを乳鉢等を用いて混合した後、複合物の任意の10箇所から試料を採取し、質量を測定した後に、各試料を有機溶媒に溶解し、遠心分離機(例えば、日立微量高速遠心機 himac CF16RXII)を用いて粒子のみを取り出し、得られた各試料中の粒子の体積分率の分布を測定した場合に、粒子の体積分率の分布が1%以上、10%以内になる程度まで混合することを表す。ここで言う粒子の体積分率とは、以下の式で表される。
【0057】
体積分率=(試料中の粒子の質量/粒子の比重)/(硬化性樹脂の質量/硬化性樹脂の比重+試料中の粒子の質量/粒子の比重)×100
尚、粒子の体積分率の分布は、以下の式で表される。
【0058】
体積分率の分布=(最も粒子の体積分率が大きい試料の体積分率−最も粒子の体積分率が小さい試料の体積分率)/10箇所の試料における平均体積分率×100
一次混合に使用する装置としては剪断力による熱が発生して硬化性樹脂を硬化させたり、粒子の偏在が発生したりしない限りは、特に限定はなく、例えば三本ロールミル、ミキシングロールミル(井上製作所社製)、乳鉢等を用いることが出来る。混合は光学用硬化性樹脂と粒子とを一括で添加し混合してもよいし、段階的に分割添加して混合してもよい。尚、これらの装置を使用して一次混合を行う場合、使用する光学用硬化性樹脂が硬化しない非硬化環境に制御し行うことを必要とする。例えば、光学用硬化性樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、混合に伴い発生する熱を熱硬化性樹脂の硬化温度以下に制御し行う必要があり、又、紫外線硬化樹脂の場合は、紫外線を遮断した環境で行う必要がある。
【0059】
二次混合とは一次混合を終了した複合物を混合機により、体積分率の分布が1%未満となるまで分散混合することを言う。
【0060】
二次混合に使用する混合機としては特に限定はなく、例えばラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置又はバッチ式混練装置、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置等が挙げられる。具体的な混練機としては、ラボプラストミル KF6V(東洋精機(株)製)、RCニーダー(栗本鉄工所(株)製)、ポリラボシステム(HAAKE(株)製)、ナノコンミキサー(東洋精機製作所(株)製)、ナウターミキサーブス・コ・ニーダー(Buss(株)製)、TEM型押出機(東芝機械(株)製)、TEX二軸混合機(日本製鋼所(株)製)、PCM混練機(池貝鉄工所(株)製)、ニーデックス(三井鉱山(株)製)、MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所(株)製)、バンバリーミキサー(神戸製鋼所(株)製)が挙げられる。尚、これらの装置を使用して二次混合を行う場合も、一次混合を行う場合と同じ非硬化環境に制御し行うことを必要とする。
【0061】
本発明に係る粒子の総含有量は、光学用硬化性樹脂に対し体積分率で15%以上、60%以下であることが好ましく、30%以上、60%以下であることがより好ましく、30%以上、50%以下であることが更に好ましい。
【0062】
粒子の体積分率が15%未満の場合は、粒子による硬化性樹脂の光学性能の調整が十分に行えず、粒子を添加するメリットが十分に得られない場合がある。
【0063】
又、粒子の体積分率が60%を超える場合は、粒子を均一に分散出来ても光学素子として必要な透過率が得られない場合がある。
【0064】
上記に示す如く、光学用硬化性樹脂へ粒子を粗混合する一次混合と、最終混合する二次混合との2段階に分けて行うことで光学用複合材料が製造される。
【0065】
本発明の混合方法により粒子を混合した光学用複合材料は、光学素子への適用が可能である。光学素子としては、回折格子、フレネルレンズ、レンズ、プリズム、ミラー等の光学部品、導光板、液晶基板、光反射板、灯具用レンズ、灯具用カバー、光ディスク、インクジェット用流路板等が挙げられ、中でも光学レンズ(例えば、CD用ピックアップレンズ等)、光学プリズムに好適である。
【0066】
本発明の混合方法により粒子を混合した光学用複合材料を金型に入れ光や熱で硬化させることで所定形状に成型し、本発明に係る光学素子を製造することが出来る。
【0067】
具体的には、光学用複合材料が紫外線や電子線硬化性樹脂の場合には、透光性の所定形状の金型等に樹脂組成物を充填するか、あるいは基板上に塗布した後、紫外線及び電子線を照射して硬化させればよい。一方、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、圧縮成型やトランスファー成型、射出成型等により硬化成型させればよい。
【0068】
又、シート状やフィルム状を呈する光学素子(例えば偏向子)を製造する場合には、硬化性樹脂として、可視光、紫外線及び電子線等の活性エネルギー線で硬化する「光硬化性樹脂」を適用するのが好ましい。この場合、樹脂組成物を透光性の所定形状の金型等に充填するか又は基板上に塗布し、その後に当該樹脂組成物に対し可視光、紫外線及び電子線等の活性エネルギー線を照射して当該樹脂組成物中の光硬化性樹脂を硬化させ、当該樹脂組成物を所定形状に成型する。
【0069】
本発明の混合方法により粒子を混合した光学用複合材料を、レンズとして加工する際には、予め所定の処方に合わせた曲率を備えた上型と下型とを使用して、直接レンズ形状に形成してもよく、又一次成形品を形成後、レンズ研磨装置を使用して荒削りや研磨を行い所望形状のレンズを最終製品として得ることも可能である。又、レンズ形成後、ポリシロキサン系有機ハードコート剤膜やカラーリング加工、反射防止膜、フッ素系の水やけ防止の成膜などの表面処理加工を行うことも可能である。
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
(光学用硬化性樹脂Aの準備)
信越化学株式会社製シリコーン樹脂LPS−L−500のA液とB液を準備した。
【0072】
(光学用硬化性樹脂Bの準備)
ダイセル株式会社製芳香族含有エポキシ樹脂を準備した。
【0073】
尚、日本油脂株式会社製硬化剤パーブチルOを1質量%添加した。
【0074】
(粒子の準備)
日本アエロジル社製疎水化処理シリカ RX300を準備した。
【0075】
(光学用硬化性樹脂への粒子の混合)
準備した光学用硬化性樹脂A、光学用硬化性樹脂B、粒子を使用し、表1に示す様に混合方法、粒子の体積分率を変えて混合し光学用複合材料を作成し試料No.101〜110とした。
【0076】
一次混合
一次混合は乳鉢を使用し、光学用硬化性樹脂と粒子とを混合し、任意に採取した試料の粒子の体積分率の分布が1%以上、10%以内になるまで行った。
【0077】
二次混合
二次混合は、ラボプラストミル KF6V(東洋精機)を使用した。
【0078】
評価
作製した各試料No.101〜110に付き、分散性、透過率を以下に示す評価方法で評価した結果を表1に示す。
【0079】
分散性の評価
試料の任意の10箇所から取り出したサンプルの質量を測定した後アセトンに溶解させ、遠心分離機(日立微量高速遠心機 himac CF16RXII)を用いて粒子のみを取り出して質量を測定し、以下に示す式より粒子の体積分率の分布を算出した。
体積分率の分布=(最も粒子の体積分率が大きい試料の体積分率−最も粒子の体積分率が小さい試料の体積分率)/10箇所の試料における平均体積分率×100
分散混合の結果、体積分率の分布が1%未満となったものを○、1%以上のものを×とした。
【0080】
透過率の評価
各試料No.101〜110の樹脂材料をそれぞれ3mm厚の平板テストピースとして、分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3150)を用い、400nmの透過率を測定した。
【0081】
透過率が80%以上となったものを○、70%以上80%未満のものを△、70%未満のものを×とした。
【0082】
【表1】

【0083】
上記の結果から明らかなように、本発明の試料である102、104、106、107、110においては、粒子が均一に分散され、凝集もないため、優れた透過率が得られた。一方、一次混合を行わずに、二軸混合機のみで分散を行った101、103、105、109では、分散を均一に行うことが出来ず、十分な透過率も得られなかった。又、乳鉢での分散のみを行った108においても、均一に分散することが出来ず、十分な透過率も得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法であって、前記光学用硬化性樹脂と、前記粒子とを一次混合した後、二次混合を行うことを特徴とする光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【請求項2】
前記粒子が硬化性樹脂に対して、体積分率で15〜60%であることを特徴とする請求項1に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【請求項3】
前記一次混合は、光学用硬化性樹脂の非硬化環境に制御し行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【請求項4】
前記二次混合は、光学用硬化性樹脂の非硬化環境に制御し行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【請求項5】
前記二次混合が終了した後、光学用硬化性樹脂は溶融状態を保持していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光学用硬化性樹脂への粒子の混合方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の混合方法により製造されたことを特徴とする光学用複合材料。
【請求項7】
請求項6に記載の光学用複合材料を使用したことを特徴とする光学素子。

【公開番号】特開2008−308540(P2008−308540A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156069(P2007−156069)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】