説明

清拭布

【課題】保水量が多く、拭き取り作業性にも優れた清拭布を提供する。
【解決手段】 清拭布1は、シート状のスポンジ2を、織物、編物又は不織布からなる布地3で包み込んで、外周縁10を縫製することでスポンジ2を布地3と一体にしてなる。清拭布1には、外周縁10に対して傾斜する方向に直線状に、又は曲線状若しくは螺旋状に押さえ縫製部52が形成されている。吸水時に、押さえ縫製部52の厚みが、清拭布1の押さえ縫製部52以外の部分である一般部53の厚みよりも薄くなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清拭布に関し、例えば、自動車産業、精密機械産業、医療機器産業、陶磁器産業等の工業製品に付着した粉塵、研ぎ粕、ダスト等の拭き取り、流し台等の生活関連機器、消費材関連機器などに付着したダスト等の拭き取りなどに用いられる清拭布に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車をはじめとする工業製品の製造過程では、表面塗装が行われることが多い。塗装などで発生した粉塵、研ぎ粕、ダストの塗装面への付着は、塗料が弾かれる現象や細かな凹凸の発生といった悪影響を及ぼす。そこで、ダストの除去は、塗装分野において切り離せない作業となっている。
【0003】
また、精密機器産業などの各種産業におけるダストの除去は、製品の品質の維持・向上のために、必須である。
【0004】
また、一般住宅においても、流し台、洗面台、床などのあらゆるところで、ダストの拭き取り作業が行われている。
【0005】
従来、ダストを除去するために、なめし革、布類、スポンジ類、不織布等を半乾燥状態又は水を含浸せしめた状態で被清拭面を拭き取る方法が行われてきた(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−231870号公報
【特許文献2】特開2007−61430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、なめし類、布類、不織布類は、薄いため、保水量が少なく、水を絞り出す回数が多い。また、捩れやすく、拭き取り作業性もよくない。
【0008】
スポンジ類は、柔軟性をもつため被清拭面を傷つけず、また、被清拭面に付着している水や水垢の吸収性もよく、絞ったときの排水性もよい。その反面、スポンジ類は、柔らかい材質であるため、使用中に破断が生じて、千切れたり、崩れたりすることが多い。このため、頻繁に新品に取り替えなければならず、コストがかかる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、保水量が多く、拭き取り作業性にも優れた清拭布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の清拭布は、シート状のスポンジを、織物、編物又は不織布からなる布地で包み込んで、外周縁を縫製することで前記スポンジを前記布地と一体にしてなる清拭布であって、前記外周縁の延び方向に対して傾斜する方向に直線状に、又は曲線状若しくは螺旋状に縫製部が形成されており、吸水時に、前記縫製部の厚みが、前記清拭布の前記縫製部以外の部分である一般部の厚みよりも薄くなるようにすることを特徴とする。
【0011】
本発明の清拭布は、スポンジと布地で構成されている。スポンジは、シート状を呈しているため、自在に折り曲げることができ、清拭布として用いることができる。スポンジは、弾性復元力があるため、形状保持性能に優れる。ゆえに、把持しやすく、また、清拭布が捩れることなく、拭き取り作業性がよい。また、スポンジは、柔軟性に優れるため、被清拭面を傷つけず、被清拭面に付着している水や水垢の吸収性もよく、絞ったときの排水性もよい。
【0012】
また、スポンジは、布地で包まれているため、使用中に千切れにくく、崩れにくい。たとえ、スポンジが千切れたとしても、布地に包まれているため、清拭布の外部に破片がでにくく、被清拭面を汚すことはない。
【0013】
一方、布地は、織物、編物又は不織布からなるため、スポンジよりも耐磨耗性及び耐久性が優れている。このため、スポンジを布地で包んで布地を表面に配置することで、耐久性及び耐磨耗性に優れる布地が、被清拭面に直接接触することとなる。このため、清拭布を長期間使用することができる。
【0014】
このように、本発明の清拭布は、スポンジを布地で包んで一体化されている。このため、本発明の清拭布は、スポンジ自体の利点と布地の利点とを併せ持つ清拭布とすることができる。
【0015】
また、清拭布の拭き取り方向は,清拭布の外周縁に沿った方向となりやすい。そこで、本発明の清拭布では、拭き取り方向とほぼ平行な清拭布の外周縁の延び方向に対して傾斜する方向に直線状に、又は曲線状若しくは螺旋状に縫製している。このため、縫製の方向が、拭き取り方向と平行になりにくく、後述の実験例に示されるように、拭き取り後の被清拭面に水筋や水垢が残り難い。
【0016】
また、吸水時には、縫製部の厚みが、清拭布の中の縫製部以外の一般部の厚みよりも小さくなる。このため、被清拭面の拭き取りの際に、一般部が、凸部となって、被清拭面を強く擦り、被清拭面に付着している汚れを拭き取ることができる。また、縫製部は、凹部となり、拭き取った水や汚れを保留させ、被清拭面への再度の付着を防止することができる。
【0017】
(2)前記縫製部は、前記外周縁の延び方向に対して10〜80°の傾斜角度で傾斜する方向に直線状に形成されていることが好ましい。前記構成によれば、拭き取り方向と平行になりにくく、拭き取り後の被清拭面に水筋や水垢が一層残りにくくなる。一方、縫製部が、清拭布の外周縁の延び方向に対する縫製部の傾斜角度が、10°未満又は80°を超える場合には、拭き取り方向が、外周縁に対してわずかに傾斜した場合には、拭き取り方向が、縫製部の延び方向と平行になり、水筋や水垢が残るおそれがある。
【0018】
(3)前記縫製部は、互いに平行な複数の直線で形成されていることが好ましい。この場合には、清拭布の拭き取り方向に、複数の凹凸が繰り返し配置されることになり、清拭布で被清拭面を拭き取り方向に1回拭き取る間に、水や水垢を拭き取る部分や、保留させる部分が繰り返される。このため、拭き取り性能が高くなる。
【0019】
(4)互いに平行な複数の直線で形成されている前記縫製部のピッチは、10〜50mmであることが好ましい。この場合には、吸水時に、一般部のスポンジが膨張することにより、清拭布表面に凹凸が形成されやすい。このため、水や水垢などを、縫製部に形成された凹部に留まらせ、被清拭面に再付着することを効果的に抑制することができる。
【0020】
(5)前記スポンジの吸水量は、前記スポンジの質量を1としたときに、3〜20倍であることが好ましい。この場合には、多量の水を吸収することができる。ゆえに、吸い取った水を清拭布から絞り出す作業を少なくすることができる。
【0021】
(6)前記布地は、長繊維糸から形成されていることが好ましい。この場合には、布地から糸屑が発生しにくく、被清拭面に糸屑を残すことなく拭き取り作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の清拭布によれば、スポンジを布地で包み込んで、外周縁の延び方向に対して傾斜する方向に縫製している。このため、保水量が多く、拭き取り作業性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る清拭布の断面図である。
【図2】本実施形態に係る清拭布の斜視図である。
【図3】本実施形態に係る、吸水時の清拭布の断面図である。
【図4】サンプル4の清拭布の平面図である。
【図5】サンプル5の清拭布の平面図である。
【図6】サンプル6の清拭布の平面図である。
【図7】サンプル7の清拭布の平面図である。
【図8】サンプル8の清拭布の平面図である。
【図9】サンプル9の清拭布の平面図である。
【図10】サンプル10の清拭布の平面図である。
【図11】サンプル11の清拭布の平面図である。
【図12】サンプル12の清拭布の平面図である。
【図13】サンプル13の清拭布の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る清拭布について、図面を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態の清拭布1は、スポンジ2を布地3で包んで、外周縁10を縫製することでスポンジ2と布地3とを一体化してなる。
【0025】
スポンジ2は、複数の連通気泡、又は/及び独立気泡をもつ発泡体である。スポンジ2は、例えば、ナイロン、ポリウレタン、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオレフィン、ポリエステルなどを素材としている。中でも、セルロースがよい。
【0026】
スポンジ2の全体形状は、シート状を呈している。スポンジ2の乾燥時の厚みは、1〜7mmであるとよく、更には2〜5mmであることが好ましい。この場合には、清拭布が折り畳みやすくなり、また十分な吸水力も持つことができる。スポンジ2の乾燥時の厚みが薄すぎると、清拭布がボリューム不足になり、拭き取り作業性が低下するおそれがあり、また吸水力及び保水力が低下するおそれがある。スポンジ2の乾燥時の厚みが厚すぎると、把持しにくくなり、拭き取り作業性が却って低下する。また、吸水したスポンジ2が、縫製により締め付けられて、破断を生じるおそれがある。
【0027】
スポンジ2の吸水量は、スポンジ2の質量を1としたときに、3〜20倍であることが好ましく、更には、10〜20倍であることが望ましい。スポンジ2の吸水量が低すぎると、清拭布の吸水性が低下し、スポンジ2の吸水量が多すぎると、吸水したときの清拭布の厚みが大きくなりすぎて、清拭布の取り扱い性が低下するおそれがある。
【0028】
布地3は、織物、編物、又は不織布からなる。このうち、布地3は、耐久性及び耐摩擦性の観点から、織物又は編物からなることが好ましい。布地3は、一般に、平織、綾織などの織物がよい。布地3が編物である場合には、経編み、緯編みのいずれでもよく、例えば、トリコット編み、ラッセル編みなどを用いることができる。
【0029】
布地3は、短繊維糸又は長繊維糸のいずれで構成されていてもよいが、長繊維糸で構成されていることが好ましい。長繊維糸は、ある程度の柔軟性をもつとともに、ほつれ難く、糸クズの発生が少ない。長繊維糸は、長繊維を複数本束ねて1本の糸にしたマルチフィラメントからなることがよい。繊維がほつれにくく、被清拭面への繊維の付着を防止することができる。
【0030】
布地3の素材は、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ビニロン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂、綿、麻、毛などの天然素材のいずれであっても良いが、この中、耐久性及び耐磨耗性の点から、ポリエステル、ナイロンであることがよい。
【0031】
布地3の乾燥時の厚みは、0.1〜2mmであるとよく、更には0.4〜0.6mmであることが好ましい。
【0032】
布地3は、スポンジ2の全体を包んで清拭布を形成している。図2に示すように、清拭布1の平面形状は、四角形であることがよく、更には長方形又は正方形であるとよい。清拭布1の外周縁10には、糸4で縫製された周縁縫製部51が形成されている。長方形状の清拭布1は、4方向に延びる外周縁10で囲まれている。このすべての外周縁10に、周縁縫製部51が形成されている。
【0033】
清拭布1には、外周縁10の一辺の中心から垂直方向に縫製を行うことで中心縫製部55が形成されているとよい。中心縫製部55に沿って清拭布1が折り畳みやすくなり、スポンジ2と布地3とを確実に一体化させることができる。
【0034】
清拭布1には、外周縁10に対して傾斜する方向に直線状に、又は曲線状若しくは螺旋状に縫製されて押さえ縫製部52が形成されている。
【0035】
図2に示すように、押さえ縫製部52は、清拭布1の外周縁10の延び方向に対して傾斜する方向に直線状に形成されているとよい。清拭布1の外周縁10の延び方向に対する押さえ縫製部52の傾斜方向αは、いずれの角度でもよいが、10〜80°であることがよく、更には、20〜70°であるとよく、望ましくは35〜55°であることが望ましい。
【0036】
押さえ縫製部52は、互いに平行な複数の直線で形成されていることが好ましい。この場合、複数の互いに平行な直線状の押さえ縫製部52のピッチPは、15〜50mmであることがよく、更には20〜40mmであることが好ましい。押さえ縫製部52のピッチPが狭すぎる場合には、吸水時に、清拭布1内部のスポンジ2が、一般部53で十分に膨張できず、吸水性及び保水性が低下するおそれがある。押さえ縫製部52のピッチPが広すぎる場合には、凹部となる押さえ縫製部52が少なく、水や汚れを溜め込むことができず、被清拭面に再付着するおそれがある。
【0037】
また、押さえ縫製部52は、曲線状若しくは螺旋状に形成されていてもよい。曲線状又は螺旋状の押さえ縫製部52は、外周縁10の延び方向に平行でない非平行部分をもつ。この非平行部分で、拭き取ったダストが保留され、被清拭面に再付着することが防止される。このような、押さえ縫製部52が曲線状若しくは螺旋状に形成される場合にも、押さえ縫製部52は、互いに平行に複数形成されているとよく、押さえ縫製部52のピッチPは、押さえ縫製部52が直線の場合と同様の理由により、10〜50mmであることがよく、更には20〜40mmであることが好ましい。
【0038】
清拭布1の大きさは、折り畳み等の作業性を考慮すると、10cm×15cm〜30cm×40cmであるとよく、更には12cm×20cm〜25cm×30cmであることが好ましい。
【0039】
清拭布の大きさが、10cm×15cm〜30cm×40cmである場合には、押さえ縫製部52は、周縁縫製部51及び中心線縫製部55を除いて、2〜17本であることがよく、更には3〜10本であることが好ましい。この場合には、汚れが布地3に引っかかることなく、またスポンジ2が水吸収により膨張しても押さえ縫製部52で破断することも防止できる。
【0040】
清拭布の縫製は、一重縫いでも複数縫いでもよいが、吸水時にスポンジ2を破断させないために、一重縫い又は二重縫いがよい。
【0041】
縫製のミシン目の間隔は、1.5〜5mmであることがよく、更には、3〜4mmであることが好ましい。ミシン目が小さすぎる場合には、吸水時に清拭布内部のスポンジが、水吸収により膨張して縫製糸により締め付けられて、破断が生じるおそれがある。ミシン目が大きすぎる場合には、汚れが布地3に引っかかり、布地3から糸クズが発生するおそれがある。
【0042】
図3に示すように、押さえ縫製部52は、吸水時に、清拭布1の押さえ縫製部52以外の部分である一般部53よりも低くなるようにする。押さえ縫製部52は、布地3で包まれたスポンジ2を圧縮した状態で糸4で縫い合わしている部分である。このため、吸水時には、押さえ縫製部52では、糸の縫い合わせによりスポンジ2の膨張が抑えられ、一般部53ではスポンジ2が膨張する。このため、押さえ縫製部52の厚みは、吸水時に、一般部53よりも薄く抑えられる。ここで、吸水時とは、清拭布1に水を飽和状態まで吸収させた後、水を若干絞り出して、清拭布1から水が垂れない程度にしたときの状態をいう。即ち、被清拭面を拭くときの状態をいう。
【0043】
吸水時には、押さえ縫製部52の厚みFは、1.5〜3.5mmであることがよく、更には2〜3mmであることがよい。一般部53の厚みEは3〜7mmであることが好ましく、更には4〜6mmであることが好ましい。この場合には、十分な吸水性を発揮しつつ、柔軟に折り曲げることができ、拭き取り作業性がよい。
【0044】
また、吸水時の押さえ縫製部52の厚みFと一般部53の厚みEの差(E―F)は、1mm以上、更には2mm以上であることがよい。この場合には、拭き取った水や汚れを、押さえ縫製部52に形成された凹部に十分に保留させることができ、被清拭面への再付着を防止することができる。前記差(E−F)の上限は、スポンジ2が太くすぎ把持しにくくなることを防止するために、4mmとすることがよい。前記差(E−F)は、更には、2.5〜3.5mmであることが好ましい。
【0045】
一般部53の厚みに対する押さえ縫製部52の厚みの比率(F/E)は、1未満であり、好ましくは0.1〜0.8であり、更には0.2〜0.6であることが望ましい。
【0046】
本発明の清拭布1は、一旦水を十分に吸収させた後に、水が垂れないように軽く絞って用いられる。このように吸水させた清拭布1は、例えば、折り畳むことなく平らな状態で、被清拭面を拭き取るか、又は1回若しくは複数回折り畳んだ状態で、被清拭面を拭き取る。清拭布1は、2〜4重に折り畳まれて被清拭面を拭き取ることが好ましい。折り畳むことで、清拭布1のボリュームが増え、拭き易く作業性に優れる。また、布地3に包まれたスポンジ2により、高い吸水性及び排水性を発揮する。更には縫製により生じる吸水時の特殊な凹凸構造によって、被清拭面上のダスト等の異物を効果的に拭き取り除去することができる。
【実施例】
【0047】
以下に説明するように、清拭布の複数のサンプルを作製し、ダスト拭き取り試験を行った。
(サンプル1)
シート状のセルロール系のスポンジのみを清拭布とした。清拭布は、長方形を呈し、大きさは縦16cm、横26cmとし、乾燥時の厚みは2.5mm±0.5mmとした。スポンジの吸水量は、質量を1としたときの13.5倍である。
(サンプル2)
布地のみを清拭布とした。布地は、長繊維糸で形成されている。長繊維糸は、ポリエステル長繊維を複数本束ね撚りあわせたマルチフィラメントからなる。布地は、平織で編成されている。布地の1枚分の厚みは0.5mmであり、これを2枚重ね合わせ、外周縁を縫製して清拭布とした。縫製のミシン目の間隔は4mmとした。清拭布の縦、横の大きさは、サンプル1と同様であり、乾燥時の厚みは1mmとした。
(サンプル3)
サンプル1のセルロース系のスポンジを、サンプル2の布地で包み込み、外周縁を縫製して周縁縫製部を形成することで、スポンジと布地とを一体化して、清拭布とした。清拭布の縦、横の大きさは、サンプル1と同様であり、乾燥時の厚みは、3.5mmである。清拭布の長手方向の外周縁の中心に、長手方向に対して垂直な方向に直線状の中心縫製部を1箇所形成した。縫製のミシン目の間隔は4mmとした。
【0048】
(サンプル4)
図4に示すように、サンプル3の清拭布に、長手方向Lに垂直な方向に延びる直線状の押さえ縫製部52aを複数形成した。複数の押さえ縫製部52aは、等間隔で平行に延びている。押さえ縫製部52aのピッチP1は、30mmである。縫製のミシン目の間隔は4mmとした。清拭布1には、長手方向Lの外周縁10の中心に中心縫製部55が1箇所、中心縫製部55の左右両側にそれぞれ押さえ縫製部52が4箇所形成されている。
【0049】
(サンプル5)
図5に示すように、サンプル3の清拭布に、長手方向Lと平行な方向に延びる直線状の押さえ縫製部52bを複数形成した。複数の押さえ縫製部52bは、等間隔で平行に延びて形成されている。押さえ縫製部52bのピッチP2は、30mmである。清拭布1には、押さえ縫製部52bが5箇所形成されている。
【0050】
(サンプル6)
図6に示すように、サンプル4の清拭布に、長手方向Lに平行な方向に延びる直線状の押さえ縫製部52bを形成した。長手方向Lに平行な方向に延びる押さえ縫製部52bは、複数形成され、それぞれピッチP2が30mmで平行に延びている。本サンプルの清拭布1には、長手方向Lに平行に延びる押さえ縫製部52bは5箇所、長手方向Lに垂直な方向に延びる押さえ縫製部52aは8箇所形成されている。
【0051】
(サンプル7)
図7に示すように、サンプル3の清拭布に、外周縁10の延び方向に対して45°の角度で傾斜する直線状の押さえ縫製部52を複数形成した。複数の押さえ縫製部52は、等間隔で平行に延びている。押さえ縫製部52のピッチPは30mmである。清拭布1には、押さえ縫製部52が8箇所形成されている。
【0052】
(サンプル8)
図8に示すように、サンプル3の清拭布に、中心縫製部55に対して左右対称に延びる押さえ縫製部52を形成した。押さえ縫製部52は、外周縁10の延び方向に対して45°の角度で傾斜する方向に延びる。また、押さえ縫製部52は、清拭布1の外周縁10の延び方向に対して45°の方向に傾斜している。押さえ縫製部52は、中心縫製部55を境として左右両側に、それぞれ5箇所形成されている。
【0053】
(サンプル9)
図9に示すように、サンプル9の清拭布1は、押さえ縫製部52のピッチPを70mmとし、3箇所に等間隔で形成した点を除いて、サンプル7と同様である。
【0054】
(サンプル10)
図10に示すように、サンプル10の清拭布1は、押さえ縫製部52のピッチPを50mmとし、5箇所に等間隔で形成した点を除いて、サンプル7と同様である。
【0055】
(サンプル11)
図11に示すように、サンプル11の清拭布1は、押さえ縫製部52のピッチPを15mmとし、17箇所に等間隔で形成した点を除いて、サンプル7と同様である。
【0056】
(サンプル12)
図12に示すように、サンプル12の清拭布1は、押さえ縫製部52のピッチPを30mmとし、清拭布の外周縁10の延び方向に対する押さえ縫製部52の傾斜角度αを80°とし、8箇所に等間隔で押さえ縫製部52を形成した点を除いて、サンプル7と同様である。
【0057】
(サンプル13)
図13に示すように、サンプル13の清拭布1は、押さえ縫製部52のピッチPを20mmとし、清拭布の外周縁10の延び方向に対する押さえ縫製部52の傾斜角度αを10°とし、9箇所に等間隔で押さえ縫製部52を形成した点を除いて、サンプル7と同様である。
【0058】
(サンプル14)
サンプル14の清拭布では、サンプル7で用いられたセルロース系スポンジに代えて、PVAスポンジを用いている。PVAスポンジの乾燥時の厚みは、2.5mmであり、吸水量は質量の10倍である。その他は、サンプル7と同様である。
【0059】
(サンプル15)
サンプル15の清拭布では、サンプル7と吸水量が異なるセルロース系スポンジを用いた。このスポンジの吸水量は、スポンジ自体の質量を1としたときの20倍であり、サンプル7に用いたスポンジの吸水量よりも多かった。サンプル15に用いたスポンジの乾燥時の厚みは、2.5mmであった。その他は、サンプル7と同様である。
【0060】
(サンプル16)
サンプル16の清拭布は、セルロース系スポンジの乾燥時の厚みを1mmとし、サンプル7と同様の縫製である。
【0061】
(サンプル17)
サンプル17の清拭布は、セルロース系スポンジの乾燥時の厚みを3.5mmとし、サンプル7と同様の縫製である。
【0062】
(サンプル18)
サンプル18の清拭布は、縫製のミシン目の間隔を1.5mmとし、サンプル7と同様の縫製である。
【0063】
<ダスト拭き取り試験>
上記サンプル1〜18の清拭布について、ダスト拭き取り試験を行った。
【0064】
まず、塗装された鋼板面(縦1m、横1m)の幅15cm、長さ50cmの範囲に、JISZ8901試験用ダスト15種(試験用粉体8種72質量%、試験用粉体12種23質量%、コットンリンター5質量%の混合)3gを均一に振り掛けた。上記サンプル1〜18の清拭布を水道水で十分に湿らせた後に、水が垂れない程度まで絞り、中心縫製部55で半分に折り畳んだ。この清拭布で、ダストを振り掛けた鋼板面に対して圧力が均一となるように留意しながら、1回拭き取った。拭き取り方向は、清拭布の長手方向Lと平行にした(図4参照)。
【0065】
1)各清拭布で拭き取り作業を行った後に、鋼板面に付着しているダストを、スカラ株式会社製のマイクロスコープDG−3xを用いて倍率100倍で撮影した。1視野におけるダストの個数をランダム10箇所で測定し、その平均値を基に、拭き取り性を評価した。小数点以下1位までを有効値とした。拭き取り性は、以下の5段階で評価した。
【0066】
A:平均0〜0.3個、B:平均0.4〜0.6個、C:平均0.7〜0.9個、D:平均1.0〜2.0個、E:平均2.1個以上
2)各清拭布の作業性について、以下の5段階で評価した。
【0067】
A:極めて良好(折り畳み性良好、拭き取りスピード大、清拭布表面のシワの発生無し、掴み性良好)
B:良好(折り畳み性、拭き取りスピード、清拭布表面のシワ、掴み性の何れか1つに問題があるが、作業に大きな支障は無い)
C:普通(折り畳み性、拭き取りスピード、清拭布表面のシワ、掴み性の何れか2つに問題があるが、作業に大きな支障は無い)
D:難点有(折り畳み性、拭き取りスピード、清拭布表面のシワ、掴み性の何れか3つに問題があり、作業に支障有り)
E:不可(折り畳み性、拭き取りスピード、清拭布表面のシワ、掴み性の全てに問題があり、且つ作業に支障有り)
3)各清拭布で拭き取った後の鋼板面のキズの有無、水跡発生の有無についても目視で評価した。水跡発生の有無は、以下の4段階で評価した。
【0068】
A:殆ど発生しない、B:直径1mm未満の水粒が拭き取り面に点々と発生する。C:直径1mm未満の水粒が拭き取り面全域で発生する。D:直径1mm以上の水粒が拭き取り面全域に発生する。
【0069】
上記評価項目の結果について表1に示した。
【0070】
4)押さえ縫製部52のピッチが異なるサンプル7、9〜11の清拭布について、吸水時の清拭布の凹凸状態を調べた。吸水時とは、清拭布を水道水で十分に湿らせた後に、水が垂れない程度まで絞った状態である。サンプル7では、吸水時に凹部となる押さえ縫製部52の厚みFは、2.5mmであり、凸部となる一般部53の厚みEは5mmであり、凹凸差(E−F)は2.5mmであった。サンプル11では、吸水時に凹部となる押さえ縫製部52の厚みFは、3mmであり、凸部となる一般部53の厚みEは5mmであり、凹凸差(E−F)は2mmであった。このことから、押さえ縫製部52のピッチが大きいほうが、清拭布の凹凸差が大きくなることがわかった。
【0071】
押さえ縫製部52のピッチが50mm、70mmのサンプル10、9では、押さえ縫製部52の厚みF、一般部53の厚みE、及び凹凸差がサンプル7とほとんど変わらなかった。
【0072】
【表1】

【0073】
上記の結果から、スポンジのみを清拭布としたサンプル1、布地のみを清拭布としたサンプル2は、拭き取り性、作業性が良好ではなく、また拭き取り後の鋼板面全域に水跡が残った。特に、サンプル2は作業性が悪く、鋼板面に残った水後も大きかった。スポンジのみを清拭布としたサンプル1では鋼板面にキズが残った。これは、スポンジ表面に残留したダストが鋼板面に接触したためであると考えられる。
【0074】
サンプル5は、拭き取り性が悪かった。サンプル5の清拭布の拭き取り性が悪いのは、拭き取り方向と平行に、押さえ縫製部52が延びているため、拭き取り時に、押さえ縫製部52に形成された凹部を汚れがすり抜けて、鋼板面上に残ったためであると考えられる。
【0075】
これに対して、サンプル7〜18の清拭布は、外周縁10の延び方向に対して傾斜する方向に押さえ縫製部52が形成されており、いずれの評価についてもほぼ拭き取りに支障のないものであった。
【0076】
押さえ縫製部52の傾斜角度又はピッチが異なるサンプル7〜13の中では、傾斜角度が45°のサンプル7〜10、12は、すべての評価について特に良好であった。サンプル11、13は、作業性及び拭き取り性が良好ではなかった。サンプル11は、押さえ縫製部52のピッチが15mmであり、他のサンプル7〜10に比べて狭く、湿った状態での拭き取り時に、十分な凹凸差が形成されず、汚れの拭き取り性能が低下したものと考えられる。サンプル13は、押さえ縫製部52の延び方向が、拭き取り方向と10°の差しかなく、ほぼ平行であったため、拭き取り方向に押さえ縫製部52を形成したサンプル5と同様に、拭き取り性が悪く、また水跡も鋼板全領域に残ったものと考えられる。
【0077】
押さえ縫製部52のピッチが15mm(サンプル11)、30mm(サンプル7)、50mm(サンプル10)、70mm(サンプル9)の4種について比較すると、ピッチが15mmの場合には、ピッチが30mmの場合に比べて、作業性が低く、また水跡も多かった。これは、ピッチが狭い場合には、清拭布の凹凸差ができにくく、水の逃げ場所である凹部の十分な窪み量が形成されなかったためであると考えられる。逆に、ピッチを70mmと広くした場合には、清拭布の凹凸の数が少ないため、拭き取り性は向上しなかった。
【0078】
清拭布内部のスポンジをPVAスポンジとしたサンプル14では、セルロース系のスポンジを用いたサンプル7に比べて、拭き取り性及び作業性が低かった。これは、PVAスポンジはセルロース系スポンジに比べて吸水性が低く、清拭布内部のスポンジの吸水性及び排水性が悪く、このため、拭き取り性及び作業性が低かったものと考えられる。このことから、セルロース系スポンジは、PVAスポンジに比べて、清拭布の素材として適しているといえる。
【0079】
サンプル14、15に用いられているスポンジの吸水量は、それぞれ10倍、20倍である。サンプル15では、拭き取り性A、作業性A、傷無し、水跡Aと全て良好な結果であった。これに対して、サンプル14では、水跡だけがBであり、他の結果は、拭き取り性A、作業性A、傷無しと良好であった。この結果から、清拭布内部のスポンジの吸水量は、スポンジの質量を1としたときの10倍以上であることがよいといえる。PVAスポンジを用いたサンプル14では、セルロース系スポンジを用いたサンプル15と比べて、拭き取り性、作業性に劣ることから、清拭布内部のスポンジとしては、セルロース系スポンジがよいといえる。
【0080】
サンプル7,16,17では、スポンジの厚みが異なる。スポンジの乾燥厚みが1mmであるサンプル16では、乾燥厚みが2.5mmのスポンジを用いたサンプル7に比べて、拭き取り性及び作業性が劣った。乾燥厚みが3.5mmのスポンジを用いたサンプル17では、作業性が低く、水跡が発生し、加えて、清拭布を絞った際にセルロース系スポンジに破断が生じた。この結果から、清拭布に内蔵するスポンジの乾燥厚みは、1〜4mm、さらには2〜3mmであることが好ましいといえる。
【0081】
縫製のミシン目の間隔を1.5mmとしたサンプル18では、吸水時にスポンジが膨張して、縫製により引っ張られることになった。このため、折り畳み性が悪く、絞った際にスポンジに破断が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の清拭布は、あらゆるところの拭き取りに用いられる。例えば、自動車産業、電子機器、食品製造機器、光学機器、精密機械産業、医療機器産業、陶磁器等の工業製品の製造過程又は最終製品のメンテナンスにおけるダスト等の拭き取り、あるいは一般家庭における流し台、洗面台、床などに付着したダスト等の拭き取りなどに用いられる。
【符号の説明】
【0083】
1:清拭布、2:布地、3:スポンジ、4:糸、10:外周縁、51:周縁縫製部、52,52a,52b:押さえ縫製部、53:一般部、55:中心縫製部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のスポンジを、織物、編物又は不織布からなる布地で包み込んで、外周縁を縫製することで前記スポンジを前記布地と一体にしてなる清拭布であって、
前記外周縁の延び方向に対して傾斜する方向に直線状に、又は曲線状若しくは螺旋状に縫製部が形成されており、
吸水時に、前記縫製部の厚みが、前記清拭布の前記縫製部以外の部分である一般部の厚みよりも薄くなるようにすることを特徴とする清拭布。
【請求項2】
前記縫製部は、前記外周縁の延び方向に対して10〜80°の傾斜角度で傾斜する方向に直線状に形成されている請求項1記載の清拭布。
【請求項3】
前記縫製部は、互いに平行な複数の直線で形成されている請求項2記載の清拭布。
【請求項4】
互いに平行な複数の直線で形成されている前記縫製部のピッチは、10〜50mmである請求項3記載の清拭布。
【請求項5】
前記スポンジの吸水量は、前記スポンジの質量を1としたときに、3〜20倍である請求項1〜4のいずれか1項に記載の清拭布。
【請求項6】
前記布地は、長繊維糸から形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の清拭布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−120607(P2012−120607A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272167(P2010−272167)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(393005015)株式会社メイテック (7)
【Fターム(参考)】