説明

清掃具

【課題】 クッション体に設けるクッションリブの成形寸法精度を向上し、清掃具の清掃作業性を向上すること。
【解決手段】 清掃具本体11の下面外周部12にクッション体21の上面外周部22Bを結合してなる清掃具10であって、クッション体21のクッションリブ24が、クッション体21の上面の長手方向に沿う方向に延在し、かつ清掃具本体11の下面中央リブ13を斜めに横切る屈曲を繰り返すもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃具として、特許文献1に記載の如く、ハンドルが取付けられる清掃具本体の下面外周部にクッション体の上面外周部を結合し、清掃具本体の下面中央リブをクッション体の上面中央部に形成した弾性スペーサに当て、クッション体の下面の清掃面の中央部を押し出して該清掃面を凸状湾曲面とし、ハンドルからの押圧力によって該弾性スペーサを圧縮変形させ、クッション体の下面の清掃面を平坦面とするものがある。
【0003】
特許文献1の清掃具によれば、ハンドルの操作によって、清掃面を湾曲面又は平坦面に切換えながら、清掃面の周囲に大きなわたぼこりやゴミ等が付着するのを回避しつつ、清掃面を覆う清掃シートの全体にほこりや汚れを付着させて効率良く床面の清掃を行なうことができる。
【特許文献1】特開2001-299659
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のクッション体1は、図9に示す如く、発泡ウレタン等を金型2により低圧発泡成形し、クッション体1の上面中央部に設けた中央当接台1Aの長手方向に沿う複数位置に弾性スペーサ1Bを凸状形成し、相隣る弾性スペーサ1Bを互いに離隔配置するものである。
【0005】
このとき、金型2は、上型2Aと下型2Bからなり、上型2Aと下型2Bによりクッション体成形部3を設け、上型2Aに弾性スペーサ成形部4を設け、発泡ウレタン等を注入した上型2Aと下型2Bを閉じた状態で長手方向に沿って傾斜配置され、クッション体1を成形する。
【0006】
クッション体1を金型2によって成形するとき、発泡ウレタン等は傾斜配置されている金型2のクッション体成形部3の下方から上方に向けて順に発泡してクッション体1を成形していき、この発泡の一部が下方の弾性スペーサ成形部4から上方の弾性スペーサ成形部4に順に入ってクッション体1の長手方向に沿う複数の弾性スペーサ1Bを順に成形する。
【0007】
しかしながら、発泡ウレタン等の発泡が金型2の弾性スペーサ成形部4に入ったとき、弾性スペーサ成形部4が閉塞状をなしているために、発泡は弾性スペーサ成形部4の奥に空気を残して行き止まり状態になる(図9(B))。このため、成形されたクッション体1にあっては、弾性スペーサ1Bの高さ寸法精度が悪くなり、清掃具本体に結合した使用時に、クッション体1の下面の清掃面に所期の凸状湾曲面や平坦面を形成できず、清掃作業性を向上するに至らない。
【0008】
本発明の課題は、クッション体に設けるクッションリブの成形寸法精度を向上し、清掃具の清掃作業性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、清掃具本体の下面外周部にクッション体の上面外周部を結合し、清掃具本体の下面リブをクッション体の上面に形成したクッションリブに当て、クッション体の下面の清掃面を押し出して該清掃面を凸状湾曲面とし、清掃具本体への押圧力によって該クッションリブを圧縮変形させ、クッション体の下面の清掃面を概ね平坦面に近づける清掃具であって、前記クッション体のクッションリブが、クッション体の上面の長手方向に沿う方向に延在し、かつ清掃具本体の下面リブを斜めに横切るようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
清掃具10は、図1、図2に示す如く、清掃具本体11の下面外周壁部12(下面外周部)にクッション体21の外周縁22Aに沿う上面外周溝部22B(上面外周部)を嵌合し(及び/又は、部分的に又は全周を接着し)、清掃シート31によりクッション体21の下面の清掃面21Aを覆い、清掃具本体11の上面に設けたハンドル41を手で持って床面を払拭することにより、床面のほこりや汚れを清掃シート31に付着させて清掃を行なう。
【0011】
清掃具本体11は、図1〜図3に示す如く、合成樹脂からなる概ね矩形平板材であり、外周縁を下方に折り曲げた外周壁部12を有し、外周壁部12により囲まれる中空部に、その中央を長手方向の一端側から他端側に延在する直線状の下面中央リブ13(下面リブ)を備えるとともに、その両側に間隔をおいて平行に延設される1以上の下面サイドリブ14を備える。尚、清掃具本体11のこの中空部には、リブ13、14に交差する等の他の補強リブを備えても良い。
【0012】
清掃具本体11は、リブ13、14が設けられる中空部と反対側の上面の中央に、円形の湾曲陥没部15を備え、この湾曲陥没部15の上面に自在継手16を介してハンドル41を連結している。ハンドル41は、自在継手16を介して、清掃具本体11に対し前後左右に揺動自在になる。清掃具本体11の上面の4隅には、清掃シート31を係脱自在にするシート係止具17が設けられる。
【0013】
クッション体21は、図4、図5に示す如く、軟質かつ弾性のある発泡ウレタン等からなり、清掃具本体11への嵌合前には、下面を平坦な清掃面21Aとするように形成される。クッション体21は外周縁22Aに沿う外周溝部22Bを有し、この外周溝部22Bに清掃具本体11の外周壁部12を嵌合することにより、清掃具本体11とクッション体21を組立て一体化する。
【0014】
クッション体21は、清掃具本体11の下面中央リブ13に対応する上面中央部の長手方向に沿う一端側から他端側に延在される中央支持台23、及び中央支持台23の上の長手方向に沿う一定範囲に形成されるクッションリブ24を備える。また、清掃具本体11の下面サイドリブ14に対応する位置には、中央支持台23の両側に間隔をおいて平行に延在されるサイド支持台25を備える。
【0015】
従って、清掃具10にあっては、図2(A)に示す如く、清掃具本体11とクッション体21の組立て一体化状態で、清掃具本体11の下面中央リブ13をクッション体21のクッションリブ24に当て、清掃具本体11の下面サイドリブ14をクッション体21のサイド支持台25から離隔し、クッション体21の下面の清掃面21Aの中央部を押し出して清掃面21Aを凸状湾曲面とする。
【0016】
他方、図2(B)に示す如く、ハンドル41に加える押圧力を清掃具本体11からクッション体21に付与することにより、清掃具本体11の下面中央リブ13によりクッション体21のクッションリブ24を圧縮変形させて該クッションリブ24を中央支持台23に食い込ませるように押し潰し、下面サイドリブ14をサイド支持台25に当接させつつ、クッション体21の下面の清掃面21Aを押圧力付与前の凸状湾曲面から概ね平坦面に近づけるように変形させ、その全体を床面に接触させることができる。
【0017】
しかるに、清掃具10にあっては、クッション体21のクッションリブ24が、図4、図5に示す如く、クッション体21の上面中央部の長手方向に沿う一定範囲にて連続をなし、かつ清掃具本体11の直線状の中央リブ13を断続的に横切る折れ線状(波形状、S字状等でも可)の屈曲部を備えてこれを繰り返す。
【0018】
更に、クッションリブ24は、全長に渡り、クッション体21の上面中央部の長手方向に沿う進み方向に連続する。長手方向に沿う進み方向に連続するとは、クッションリブ24をクッション体21の長手方向に沿う一端側から他端側にたどるときに、常に他端側に近づく方向(進み方向)に向けて連続することを意味する。
【0019】
本実施例のクッションリブ24は、クッション体21の長手方向の一端を下位に、他端を上位に位置させたとき、図5(A)に示す如く、クッション体21の上面中央部の中心線Cを右側から左側への斜め上方に向けて横切る左上り斜線部24A、中心線Cの左側傍にて左上り斜線部24Aの左側端から上方へ向けて中心線Cに平行に延びる左側直線部24B、左側直線部24Bの上端から右側への斜め上方に向けて中心線Cを左側から右側に横切る右上り斜線部24C、中心線Cの右側傍にて右上り斜線部24Cの右側端から上方へ向けて中心線Cに平行に延びる右側直線部24Dを順に接続して連続化したものである。
【0020】
尚、クッションリブ24の屈曲部の角度は広角をなすことが好ましく、(実施品は130度)110〜150度が更に好ましい(90度に近づくと肉欠けが生じ易く、直線(180度)に近づくと本体リブとの接触面積が大きすぎる)。
【0021】
尚、本発明の清掃具10は、清掃具本体11の上面の中央に備えた湾曲陥没部15が下面側に突出しているから、この湾曲陥没部15の下面側への突出部に対応するクッション体21の上面にはクッションリブ24を設けていない。従って、クッションリブ24はクッション体21の長手方向に沿う中央部で分断される。但し、クッションリブ24に悪影響を与える湾曲陥没部15の如くが存在しない場合には、クッションリブ24をクッション体21の長手方向に沿う一端側から他端側に渡る全長に連続できる。
【0022】
以下、クッション体21を金型50により成形する方法について説明する。
金型50は、図6に示す如く、上型51と下型52からなり、上型51と下型52によりクッション体成形部51A、52Aを形成し、上型51により外周縁成形部51B、外周溝成形部51C、支持台成形部51D、クッションリブ形成部51Eを形成する。金型50は、発泡ウレタン等を注入した上型51と下型52を閉じた状態で長手方向に沿って傾斜配置され、低圧発泡により発泡ウレタン等を発泡させながらクッション体21を成形する。即ち、金型50によるクッション体21の成形手順は以下の如くになる。
【0023】
(1)金型50の上型51を開き、下型52を傾斜配置し、注入ノズルにより発泡ウレタン等を下型52のクッション体成形部52Aの上端寄りに注入する(図6(A))。
【0024】
(2)下型52のクッション体成形部52Aに注入された発泡ウレタン等が重力により下位側に流動してくる適宜のタイミングで上型51を閉じる(図6(B))。
【0025】
(3)金型50内の発泡ウレタン等はクッション体成形部51A、52Aの下方から順に発泡してクッション体21を成形していき、この発泡の一部が外周縁成形部51B、外周溝成形部51C、支持台成形部51D、クッションリブ成形部51Eにも下方から順に入ってクッション体21の外周縁22A、外周溝部22B、支持台23、25、クッションリブ24を成形していく(図7(B))。
【0026】
尚、上型51の長手方向の最上部には、外周縁成形部51Bに連通して外部に開口する排気孔53が穿設されている。上述(3)の発泡ウレタン等が押し上げる上型51、下型52内の空気が排気孔53から外部に排出される。空気を押し出す発泡ウレタン等も排気孔53から外部に流出するが、この発泡ウレタン等はクッション体21の成形後に除去される。
【0027】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(請求項1、3)
(a)クッション体21に形成したクッションリブ24の弾発特性により、ハンドル41の操作によって、クッション体21の下面の清掃面21Aを湾曲面又は概ね平坦面にスムースに切換えできる。
【0028】
従って、床面の大きなほこりやゴミ等に対しては、清掃面21Aを湾曲させ、清掃面21Aの外縁側に隙間を保持した状態で床面を払拭することにより、それらのほこりやゴミ等を清掃面21Aの周囲に堆積させることなく、清掃面21Aの清掃シート31に付着させることができる。他方、ハンドル41に押圧力を加え、清掃面21Aを押圧力付与前の湾曲面から概ね平坦面としてその全体を床面に接触させて払拭することにより、清掃シート31の全体にほこりや汚れを付着させて清掃できる。
【0029】
このとき、クッション体21のクッションリブ24が清掃具本体11の下面中央リブ13を断続的に横切る屈曲状をなし、クッションリブ24が中央リブ13の長手方向に一定の間隔をおく各局部にだけ当るからハンドル41の押圧力がクッションリブ24の各局部を介してクッション体21に弾発的に伝えられ、軽い力でスムースに清掃面21Aを湾曲面又は平坦面に切換えできる。
【0030】
(b)クッション体21を金型50によって成形するとき、発泡ウレタン等は傾斜配置されている金型50のクッション体成形部51A、52Aの下方から順に発泡してクッション体21を成形していき、この発泡の一部がクッションリブ成形部51E等にも下方から順に入ってクッションリブ24等を成形していく。このとき、クッションリブ成形部51Eは長手方向に沿って連続し、かつ繰り返し屈曲状をなすから、クッションリブ成形部51Eに入る発泡ウレタン等はクッションリブ成形部51Eの内部に下方から上方へと連続状に充満していく。従って、クッションリブ成形部51Eの内部の空気は、充填される発泡ウレタン等によってより上方へと押し出されて残ることなく排出され、成形されたクッション体21に設けられるクッションリブ24の成形寸法精度を向上できる。これにより、クッション体21を清掃具本体11に結合した清掃具10において、クッション体21の下面の清掃面21Aに所期の凸状湾曲面や平坦面を形成し、清掃作業性を向上することができる。
【0031】
(請求項2、4)
(c)金型50に設けるクッションリブ成形部51Eが、全長に渡り、クッション体成形部51Aの長手方向に沿う進み方向に連続するから、傾斜配置された金型50のクッションリブ成形部51Eは全長に渡って上向きをなし、上述(b)の空気を押し出し性の確実を図ることができる。
【0032】
尚、本発明のクッションリブの成形方法は、清掃具に限定されない一般用途のクッションリブの成形方法として利用することもできる。
【0033】
また、クッションリブ及び清掃具本体の下面リブは本実施例に限定されず、種々の形状をとり得る。例えば、清掃具本体の下面リブを屈曲形状として、クッションリブを直線状としたり、直線状の清掃具本体の下面リブに斜めに横切る(斜めに横切るとは、2つのリブが直交するものでないことをいう)クッションリブを複数個設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は清掃具を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図2は清掃具の横断面を示し、(A)は清掃面を湾曲面にした断面図、(B)は清掃面を平坦面にした断面図である。
【図3】図3は清掃具本体を示す下面斜視図である。
【図4】図4はクッション体を示す上面斜視図である。
【図5】図5はクッション体を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図6は金型を示し、(A)は発泡ウレタン等の注入初期段階を示す斜視図、(B)は発泡ウレタン等の注入中間段階を示す斜視図である。
【図7】図7は本発明のクッション体の成形状態を示し、(A)はクッション体の要部を示す斜視図、(B)は金型の下部成形状態を示す断面図である。
【図8】図8は金型の上部成形状態を示す断面図である。
【図9】図9は従来例のクッション体の成形状態を示し、(A)はクッション体の要部を示す斜視図、(B)は金型の下部成形状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 清掃具
11 清掃具本体
12 下面外周壁部(下面外周部)
13 下面中央リブ
21 クッション体
21A 清掃面
22B 上面外周溝部(上面外周部)
24 クッションリブ
41 ハンドル
50 金型
51A、52A クッション体成形部
51E クッションリブ成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃具本体の下面外周部にクッション体の上面外周部を結合し、
清掃具本体の下面リブをクッション体の上面に形成したクッションリブに当て、クッション体の下面の清掃面を押し出して該清掃面を凸状湾曲面とし、
清掃具本体への押圧力によって該クッションリブを圧縮変形させ、クッション体の下面の清掃面を概ね平坦面に近づける清掃具であって、
前記クッション体のクッションリブが、クッション体の上面の長手方向に沿う方向に延在し、かつ清掃具本体の下面リブを斜めに横切る清掃具。
【請求項2】
前記清掃具本体の下面リブが、清掃具本体の概ね長手方向に沿う直線状に延在し、前記クッション体のクッションリブが、クッション体の上面の長手方向に沿う進み方向に連続して設けられ、該クッション体の上面の長手方向に沿う複数ヶ所で清掃具本体の下面リブを横切る請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
クッションリブを上面に備えるクッション体を金型により成形する成形方法であって、
金型をクッション体成形部の長手方向に沿って傾斜配置し、
金型に設けるクッションリブ成形部が、該金型の傾斜方向に沿う連続をなすクッションリブの成形方法。
【請求項4】
前記金型に設けるクッションリブ成形部が、該金型の傾斜方向に沿う進み方向に連続をなし、かつ屈曲部を備える請求項3に記載のクッションリブの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−68156(P2006−68156A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253354(P2004−253354)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】