説明

清掃用具

【課題】 清掃用処理液を所要位置に向けて噴出させることができ、シート状清掃材を清掃用ヘッドに保持して清掃を行う場合に、そのシート状清掃材により噴出部からの清掃用処理液の噴出が妨げられることが回避される。
【解決手段】 柄体Dの基端部の前側に、供給される洗浄液を前方へ噴出するための洗浄液噴出部DDを固定的に設ける。柄体Dは、回動連結部材JAにおける軸受筒状部JBの回動軸線のまわりに回動して前後方向RA−RAの傾斜角度が可変であると共に、回動連結部材JAに対し連結軸Cのまわりに左右方向RB−RBに回動が可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用処理液を噴出しつつ対象面の清掃を行い得る清掃用具に関する。
【背景技術】
【0002】
底面側に不織布シートを保持してその清掃材で対象面を清掃する清掃用ヘッドの上側に基部が連結されている柄を備える清掃用具としては、特表2003−506110号公報(特許文献1)に記載されているように、清掃用ヘッドに洗浄液噴出部が設けられたものがある。
【0003】
このような洗浄液噴出部を備えた従来の清掃用具の場合、洗浄液噴出部から噴出した洗浄液は前方の清掃対象面に散布されるが、洗浄液噴出部は清掃用ヘッドに対し固定状態にあるため、清掃対象面における使用者が必要とする位置に洗浄液を適切に散布し難いという難点があった。また、清掃用ヘッドに不織布シートを保持する場合に、通常の長方形状の不織布シートでは清掃用ヘッドに設けられた洗浄液噴出部が不織布シートにより覆われてしまうおそれがあるため、洗浄液噴出部を露出し得るような特別な形状の不織布シートを用いる必要があり、使用者にとっては不織布シートの選択性が狭められるという問題があった。
【特許文献1】特表2003−506110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、清掃用処理液を所要位置に向けて噴出させることができ、シート状清掃材を清掃用ヘッドに保持して清掃を行う場合に、そのシート状清掃材により噴出部からの清掃用処理液の噴出が妨げられることが回避される清掃用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の清掃用具は、
少なくとも底面側に清掃材を保持してその清掃材で対象面を清掃する清掃用ヘッドと、清掃用ヘッドの上側に基部が連結されている柄を備える清掃用具であって、
前記柄に、清掃用処理液を前方に噴出するための噴出部が固定的に設けられており、
前記柄は、前記清掃用ヘッドに対する前後の傾斜角度及び各前後傾斜角度位置における左右の傾斜角度が、それぞれ所定以上の範囲で可変であり、
噴出部から清掃用処理液を噴出させるための操作部を備えることを特徴とする。
【0006】
操作部の操作により、清掃用ヘッドの上側に基部が連結されている柄の基部側に固定的に設けられた噴出部から清掃用処理液を前方へ噴出させることにより対象面に清掃用処理液を配しつつ、対象面の清掃を行うことができる。
【0007】
柄の左右傾斜角度および/または前後傾斜角度(左右傾斜角度及び前後傾斜角度の両方又は一方)を適宜変更して操作部を操作することにより、柄の基部側に固定的に設けられた噴出部から清掃用処理液を前方の所要位置に向けて噴出させることができる。
【0008】
また、清掃用処理液用の噴出部が柄の基部側に固定的に設けられているので、清掃用ヘッドの少なくとも底面側並びに前縁部及び前部上側を覆う状態でシート状清掃材を清掃用ヘッドに保持して清掃を行う場合に、そのシート状清掃材により噴出部からの清掃用処理液の噴出が妨げられることが回避される。
【0009】
本発明の清掃用具は、清掃用ヘッドの上側に、柄の基部を連結した位置付近から清掃用ヘッドの前縁部まで下降傾斜する清掃用処理液流下部を備えるものとすることができる。
【0010】
この場合、噴出部から噴出した清掃用処理液の一部が清掃用ヘッドよりも前方の対象面に到達せずに清掃用処理液流下部上に落下した場合に、その清掃用処理液は、清掃用処理液流下部上を清掃用ヘッドの前縁部まで流下するか、或いは清掃用処理液流下部の一部又は全部を清掃材が覆っている場合は清掃材上を流れたり清掃材に吸収される。そのため、清掃用処理液が清掃用ヘッド上に滞留することが回避される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の清掃用具によれば、柄の左右傾斜角度および/または前後傾斜角度を適宜変更して操作部を操作することにより、柄の基部側に固定的に設けられた噴出部から清掃用処理液を前方の所要位置に向けて噴出させることができる。また、清掃用処理液用の噴出部が柄の基部側に固定的に設けられているので、清掃用ヘッドの少なくとも底面側並びに前縁部及び前部上側を覆う状態でシート状清掃材を清掃用ヘッドに保持して清掃を行う場合に、そのシート状清掃材により噴出部からの清掃用処理液の噴出が妨げられることが回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図面に表した清掃用具の例を中心として説明する。
【0013】
図1は、柄体の一部を省略した清掃用具の斜視図、図2は、柄体の一部を省略した清掃用具の前後方向断面図、図3は、柄体の一部を省略した清掃用具の正面図、図4は、清掃用具の要部破断斜視図、図5は、清掃用具の要部側面図、図6は、清掃用具の要部断面図である。
【0014】
清掃用具Tは、清掃用ヘッドHと、清掃用ヘッドHの上側に基部が連結されている柄体Dを備える。
【0015】
清掃用ヘッドHは、平面等脚台形状(清掃用ヘッドは、平面略長方形状等の適宜形状、特に平面形状において長手方向と短手方向を有する適宜形状を選択し得る)の板状又は薄形箱形状のヘッド本体HAと、そのヘッド本体HAの下面全体をカバーするように下面側に取り付けられたエラストマー材料製の弾力性を有するクッション底部HBからなる。清掃用ヘッドHは短手方向が前後方向であり、清掃用ヘッドHの平面等脚台形状を構成する平行な2辺のうち長い方の辺が前辺HF、短い方の辺が後辺HRである。なお、清掃用ヘッドは、平面形状において長手方向と短手方向を有する
【0016】
ヘッド本体HAの上部の前後における両側位置には、清掃用ヘッドHの底面に配した清掃用シートWの前後縁部付近を押し込んで保持するためのシート状縁部保持部が設けられている。シート状縁部保持部12は、ゴム状材料製の複数の舌片間にシート状縁部を保持するものである。
【0017】
ヘッド本体HAの上側の横方向中央部における前後方向中央部よりもやや後側の位置(前後方向の中央から後端に向かってその間の5分の1乃至5分の2の間)に、外方突出部J3を有する回動連結部材JAを介して柄体Dが連結されている。回動連結部材JAは、ヘッド本体HAに対し横方向の回動軸線の回りに回動可能なように連結されている。
【0018】
回動連結部材JAは、軸受筒状部JBの周方向の1箇所(必ずしも1箇所に限らない)に、柄体Dの基部を連結するための、上部が略半円形板状で下部が方形板状(これに限らない)をなす外方突出部J3(なお、例えば外方突出部自体を柄体の基部とすることもできる)を有する。
【0019】
柄体Dの基端部は、平行状に相対する支持突部DAからなり、両支持突部DAは、それぞれ略半円形板状(これに限らない)をなす。両支持突部DA間には縦断面略U字状の溝状間隙部Uが形成されている。この柄体Dの溝状間隙部Uに、外方突出部J3が平行状に挿入された状態で、両支持突部DAと外方突出部J3が、回動連結部材JAの回動軸線に直交する方向の連結軸Cにより連結されている。これにより、柄体Dは、回動連結部材JAにおける軸受筒状部JBの回動軸線のまわりに回動して前後方向RA−RAの傾斜角度が可変であると共に、回動連結部材JAに対し連結軸Cのまわりに左右方向RB−RBに回動が可能なように連結されている。柄体Dは、清掃用ヘッドHに対する前後の傾斜角度及び各前後傾斜角度位置における左右の傾斜角度がそれぞれほぼ180度可変である。
【0020】
外方突出部J3(被支持突部)の外周部のうち、連結軸Cのほぼ両側方位置に、それぞれ外周側回動阻止突部JCを有する。両外周側回動阻止突部JCは、約180度中心角を隔てて位置する。一方、溝状間隙部Uの基底部UAに、片持支持部DFにより柄体Dの軸線方向基端向きに弾性的に突出するよう支持された基底側回動阻止突部DEが設けられている。
【0021】
柄体Dの中間部における後側には、洗浄液ボトルB(洗浄液に限るものではない)を、その口部B1側を下向きに嵌合させて保持するための、上方開口の洗浄液保持部Lを備える。
【0022】
洗浄液ボトルBの口部B1には、栓体Pとキャップ部Qからなる開閉栓機構が設けられている。キャップ部Qには、空気抜きパイプA1が連結されている。
【0023】
洗浄液保持部Lは、栓体Pを収容したキャップ部Qを口部B1に螺合させた洗浄液ボトルBのキャップ部Qを嵌合保持するための嵌合保持部LAを有する。
【0024】
柄体Dの上端には後方屈曲の把手DBが設けられ、柄体Dにおける把手DBの下側に洗浄液噴出操作のための操作レバーDC(操作部)が設けられている。また柄体Dの基端部の前側に、供給される洗浄液(艶出し液等の洗浄液以外の清掃用処理液であってもよい)を前方へ噴出するための洗浄液噴出部DDが固定的に設けられている。操作レバーDCを把手DB側へ引くことにより、洗浄液保持部Lに保持した洗浄液ボトルB内の洗浄液を流下させて洗浄液噴出部DDから噴出させることができる。なお、操作部は柄体の先端部又はその近傍に設けることが好ましい。
【0025】
清掃用ヘッドHの上側における横方向中央部には、柄体Dの基端部を連結した回動連結部材JAの基部である軸受筒状部JBの位置から清掃用ヘッドHの前辺HF(前縁部)まで下降傾斜して幅広溝の溝底状をなす清掃用処理液流下部HCを有する。
【0026】
清掃を行なうには、清掃用ヘッドHのクッション底部HBの底面HB1を清掃用シートWで覆った状態でその清掃用シートWの前後縁部を清掃用ヘッドHの上側の前後各位置における左右のシート状縁部保持部12により保持する。その上で、清掃者は、必要に応じ操作レバーDCを引くことにより洗浄液を洗浄液噴出部DDから噴出させて床面等の清掃対象面上に散布しつつ、柄体Dを把持して清掃対象面をクッション底部HBの底面側に位置する清掃用シートWにより拭いて清掃を行なう。
【0027】
柄体Dの左右傾斜角度および/または前後傾斜角度を適宜変更して操作レバーDCを操作することにより、柄体Dの基端部の前側に設けられた洗浄液噴出部DDから、洗浄液を前方の所要位置に向けて噴出させることができる。また、洗浄液噴出部DDが柄体Dの基端部に設けられているので、清掃用ヘッド自体に噴出部が設けられる場合と異なり、クッション底部HBの底面HB1並びに清掃用ヘッドHの前部上側及び後部上側を覆う清掃用シートWにより洗浄液噴出部DDからの洗浄液の噴出が妨げられることが回避される。
【0028】
また、洗浄液噴出部DDから噴出した洗浄液の一部が清掃用ヘッドHよりも前方の清掃対象面に到達せずに清掃用処理液流下部HC上に落下した場合に、その洗浄液は、清掃用処理液流下部HC上を清掃用ヘッドHの前縁部まで流下するか、或いは清掃用シートW上を流れたり清掃用シートWに吸収される。そのため、洗浄液が清掃用ヘッドH上に滞留することが回避される。
【0029】
通常の使用状態において柄体Dと清掃用ヘッドHが連結軸Cを中心としてなす角度においては、平行状に相対する支持突部DA間の溝状間隙部Uの基底部UAに位置する基底側回動阻止突部DEは、外方突出部J3の外周部から径方向にやや離隔した状態が保たれ、連結軸Cのほぼ両側方位置に位置する外周側回動阻止突部JCと基底側回動阻止突部DEが接することはない。
【0030】
清掃用具を使用せずに収納する場合に、清掃用ヘッドHを柄体Dに対し連結軸Cのまわりに回動させて清掃用ヘッドHの長手方向を柄体Dの軸線方向とほぼ平行にしようとすると、外周側回動阻止突部JCと基底側回動阻止突部DEが、主として基底側回動阻止突部DEが弾性的に径方向外方に押し込まれることにより互いに相手方を乗り越えた後、基底側回動阻止突部DEが弾性的に復元する。これにより、柄体Dに対し清掃用ヘッドHがその自重により逆向きに回動することが阻止される。なお、外周側回動阻止突部と基底側回動阻止突部は、それぞれ突部の全部を乗り越えるものでなく、一部を乗り越えて逆向き回動を阻止し得るものでもよい。
【0031】
再使用時には、清掃用ヘッドHの自重によるものを越える所定の逆向き回動力を加えることにより、主として基底側回動阻止突部DEが弾性的に径方向外方に押し込まれることにより互いに逆向きに乗り越えさせ、連結軸Cを中心とした柄体Dに対する清掃用ヘッドHの角度を通常の清掃時の角度に戻して清掃に使用することができる。
【0032】
基底側回動阻止突部DEは支持突部DA間の溝状間隙部Uの基底部UAに位置するので、外周側回動阻止突部JCと基底側回動阻止突部DEの間の乗り越え及び逆向き乗り越えは、外部に露出していない箇所において行なわれる。そのため、回動阻止機構の損傷が防がれると共に、外観が損なわれない。
【0033】
また、外周側回動阻止突部JCと基底側回動阻止突部DEの間の乗り越え及び逆向き乗り越えは、主として基底側回動阻止突部DEの径方向の弾性的突出力によるものであるため、繰り返し行なわれる乗り越え及び逆向き乗り越えにより支持突部DA同士の間隔を部分的に拡開させるような作用は実質上生じない。そのため、回動阻止力が弱まって清掃用ヘッドHの自重により逆向きに乗り越え得るようになることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】柄体の一部を省略した清掃用具の斜視図である。
【図2】柄体の一部を省略した清掃用具の前後方向断面図である。
【図3】柄体の一部を省略した清掃用具の正面図である。
【図4】清掃用具の要部破断斜視図である。
【図5】清掃用具の要部側面図である。
【図6】清掃用具の要部断面図である。
【符号の説明】
【0035】
12 シート状縁部保持部
A1 空気抜きパイプ
B 洗浄液ボトル
B1 口部
C 連結軸
D 柄体
DA 支持突部
DB 把手
DC 操作レバー
DD 洗浄液噴出部
DE 基底側回動阻止突部
DF 片持支持部
H 清掃用ヘッド
HA ヘッド本体
HB クッション底部
HB1 底面
HC 清掃用処理液流下部
HF 前辺
HR 後辺
J3 外方突出部
JA 回動連結部材
JB 軸受筒状部
JC 外周側回動阻止突部
L 洗浄液保持部
LA 嵌合保持部
P 栓体
Q キャップ部
T 清掃用具
U 溝状間隙部
UA 基底部
W 清掃用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底面側に清掃材を保持してその清掃材で対象面を清掃する清掃用ヘッドと、清掃用ヘッドの上側に基部が連結されている柄を備える清掃用具であって、
前記柄に、清掃用処理液を前方に噴出するための噴出部が固定的に設けられており、
前記柄は、前記清掃用ヘッドに対する前後の傾斜角度及び各前後傾斜角度位置における左右の傾斜角度が、それぞれ所定以上の範囲で可変であり、
噴出部から清掃用処理液を噴出させるための操作部を備えることを特徴とする清掃用具。
【請求項2】
清掃用ヘッドの上側に、柄の基部を連結した位置付近から清掃用ヘッドの前縁部まで下降傾斜する清掃用処理液流下部を備える請求項1記載の清掃用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−54338(P2007−54338A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243785(P2005−243785)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】