説明

清掃装置及び清掃装置の停止具

【課題】清掃装置を回収位置まで容易に誘導・停止させる。
【解決手段】床面104と壁面105とによって囲まれた領域に液体を貯留可能な構造物の床面104を清掃する清掃装置において、構造物の床面104を走行しながら清掃する清掃装置本体1を有するとともに、清掃装置本体1を回収する場合に、清掃装置本体1を壁面105に平行に走行させることで所定の回収位置に誘導する誘導手段8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水が張られたプールや貯水槽等の構造物の床面を清掃する清掃装置、及び清掃装置を所定位置で停止させる停止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の清掃装置(清掃ロボット)には、例えば、水の張られたプール等の清掃場所において、その床面を走行しながら、ブラシで床面を掃き、そして、ポンプを介してゴミ等を吸引することにより、所望の清掃を行うものがある。
【0003】
この清掃装置には、例えば、電気ケーブルが接続され、これを介してポンプ等が駆動されるもの(例えば特許文献1参照)や、電気ケーブルを介さずに、無線での遠隔操作によるものがある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
清掃装置に電気ケーブルが接続されている場合には、清掃場所に障害物がある場合に、電気ケーブルがこの障害物に掛かるおそれがある。これに対して、無線での遠隔操作で清掃装置を制御する場合には、そのおそれもなく、この点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−19852号公報
【特許文献2】特開2000−353014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、清掃が終了した場合、或いは、清掃途中で、清掃装置を回収したい場合において、清掃装置が所定の回収位置まで戻ってくるように操作することが必要となるが、この場合には、清掃装置が水中に配置されていることから、無線での遠隔操作においても、その位置を確認しながら操作することが難しかった。
【0007】
特に、いわゆる稼動床式のプールにおいて、床が上昇したときに、この床の下側に形成される空間を清掃するような場合には、清掃装置の位置が全く確認できない場合もあり、清掃装置の位置を確認しながら操作して所定の回収位置に誘導することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、回収位置まで容易に誘導可能な清掃装置を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、清掃装置を回収位置で容易に停止させることができる清掃装置の停止具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであって、床面と壁面とによって囲まれた領域に液体を貯留可能な構造物の床面を清掃する清掃装置において、構造物の床面を走行しながら清掃する清掃装置本体を有するとともに、清掃装置本体を回収する場合に、清掃装置本体を構造物の壁面に平行に走行させることで所定の回収位置に誘導する誘導手段を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、誘導手段によって走行装置本体を壁面に対して平行に走行させることによって、所定の回収位置まで走行装置本体を容易に誘導できるようになる。
【0012】
また、本発明に係る清掃装置は、前記誘導手段は、清掃装置本体を構造物の壁面に対して平行に走行させるために、清掃装置本体と壁面との距離を測定する少なくとも2つのセンサを有する構成を採用できる。
【0013】
かかる構成によれば、各センサが測定する距離が等しくなるように清掃装置本体の向きを調整するようにすれば、清掃装置本体を常に壁面に対して平行に走行させることができる。
【0014】
また、本発明に係る清掃装置は、前記誘導手段は、清掃装置本体が構造物の壁面に当接したときに、構造物内における清掃装置本体の位置を検知できるように、構造物内における所定の方向を検知する方向検知手段を有する構成を採用できる。
【0015】
かかる構成によれば、方向検知手段によって、走行装置本体の構造物内における所定の方向を検知することで、清掃装置が構造物の壁面に当接したときに、構造物内における清掃装置本体の位置を検知でき、これによって、清掃装置本体を回収位置に容易に誘導できるようになる。
【0016】
また、本発明に係る停止具は、上記の清掃装置を回収位置で停止させる停止手段を有することを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、停止手段によって、清掃装置を停止具が設置された回収位置で容易に停止させることができる。
【0018】
また、本発明に係る停止具は、停止手段が、清掃装置本体に当接する当接部材と、清掃装置本体が当接部材に当接したときに、清掃装置本体に停止信号を送信する送信機と、清掃装置本体が当接部材に当接したことに連動して送信機を作動させるスイッチ部とを有する構成を採用できる。
【0019】
かかる構成によれば、停止手段によって、清掃装置を停止具が設置された回収位置で容易に停止させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、清掃装置を回収位置まで容易に誘導・停止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る清掃装置を示す平面図である。
【図2】同清掃装置の側面図である。
【図3】同清掃装置の正面図である。
【図4】清掃装置が清掃場所を清掃している状態を示す斜視図である。
【図5】同清掃装置を回収する方法及び清掃装置の停止具を示す平面図である。
【図6】第2実施形態に係る清掃装置の回収方法を示す平面図である。
【図7】同実施形態に対応する清掃装置の停止具を示す側面図であり、(a)は清掃装置が停止具の近傍に位置する状態を示し、(b)は、停止具によって清掃装置が停止した状態を示す。
【図8】第3実施形態に係る清掃装置の回収方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。図1〜図5は、本発明に係る清掃装置(清掃ロボット)の一実施形態を示している。この清掃装置は、例えば、床面とこの床面を囲む壁面とによって囲まれた領域に水等の液体を貯留可能なプールや貯水槽等の構造物内のように水の張られた場所(清掃場所)において、所定の方向に走行しながら、その床面を清掃するためのものである。
【0023】
清掃装置は、例えば、図4に示すようなプール101内において、その床102を清掃するために使用される。図4は、いわゆる可動床式のプール101を例示する。このプール101は、その床102が所定の昇降装置(図示せず)によって昇降可能に構成される。これにより、プール101は、その水深を自在に調節できるようになっている。
【0024】
また、プール101の床102には、所定の大きさの開口部(点検口)103が形成されており、清掃装置は、床102が上昇したときに、この開口部103を介して床102の下方に形成される空間に入り、その床面104をも清掃できるようになっている。
【0025】
なお、このプール101は、床面104とこの床面104の周りに設けられる、平面視四角形状に構成される壁面105(105a〜105d)とによって囲まれた領域に水を貯留できるようになっている(図5参照)。
【0026】
図1〜図3に示すように、清掃装置は、所定の機器を搭載する清掃装置本体1を有する。清掃装置本体1は、本体フレーム3、走行装置4、清掃場所の清掃を行う清掃手段5、駆動源(バッテリ)6、発光装置7、清掃装置を回収する場合に、清掃装置本体1を所定の回収位置に誘導するための誘導手段8、および清掃装置本体1の制御を行う制御装置(図示略)、を備える。
【0027】
清掃装置本体1の本体フレーム3は、平面視略長方形状に形成されており、この本体フレーム3の長手方向が、清掃装置本体1の進行方向にほぼ一致する。なお、以下、この本体フレーム3の長手方向に直交する方向を、左右または左右方向という。
【0028】
この本体フレーム3には、走行装置4、清掃手段5、駆動源6、発光装置7、受信部11等の各種機器が一体に組み付けられている。本体フレーム3の前部には、走行装置4等の機器を保護する保護部材(バンパ)9が設けられている。保護部材9には、この保護部材9がプール101の壁面105に当接したときに、これを感知する2つのタッチセンサ(図示略)が設けられている。本体フレーム3は、駆動源6等が載置されるとともに、これらを支持する支持台3aを有する。2つのタッチセンサは、保護部材9の左右方向に間隔をおいて設けられている。
【0029】
走行装置4は、左右一対の無端帯状のゴムクローラ15、各ゴムクローラ15を駆動するスプロケット16、アイドラ17、スプロケット16を駆動する駆動手段としてのモータ等により構成される。この一対の走行装置4により、清掃装置本体1は、前進、後進、および方向転換(旋回)が可能になり、清掃場所の全域を走行しながら清掃できるようになっている。
【0030】
図2に示すように、清掃手段5は、本体フレーム3の前側に設けられる清掃具21と、支持台3aの前側の位置に載置されるポンプ22と、ポンプ22に接続される濾過フィルタ23とを備える。清掃具21は、清掃具本体25と、清掃具本体25を支持する車輪26と、清掃具本体25とポンプ22とを接続する接続配管27とを有する。
【0031】
清掃具本体25は、清掃場所の床面104に接するブラシ29と、清掃場所にあるゴミ等の吸引対象物を吸引するための吸引口30とを有する。清掃具本体25は、ブラシ29を介して清掃場所の床面104を磨くとともに、この清掃場所に存在する吸引対象物を吸引口30から吸引することによって、清掃場所の床面104の清掃を行うようになっている。
【0032】
清掃具本体25の吸引口30から吸引された吸引対象物(ゴミ)は、接続配管27を通じてポンプ22内に吸入される。ポンプ22は、吸入部31と吐出部32を備え、吸入部31には、前記接続配管27が接続され、吐出部32には、前記濾過フィルタ23が接続されている。ポンプ22は、清掃具21から吸引された吸引対象物を、吸入部31から内部に吸入するとともに、吐出部32から吐出して濾過フィルタ23に圧送するように構成される。
【0033】
前記濾過フィルタ23は、袋状に構成されるとともに、ポンプ22によって吸引されたゴミ等の回収物を回収し、ポンプ22から吐出された水を濾過して外部(清掃場所)に排出するように構成されている。
【0034】
駆動源6は、ポンプ22の後方位置で、本体フレーム3の支持台3aに載置されている。駆動源6は、直方体状のケース35によって覆われている。駆動源6は、ポンプ22、走行装置4の駆動手段(モータ18)、発光装置7等に動力(電力)を供給する。
【0035】
発光装置7は、駆動源6の上部(上面)に設置されている。この発光装置7は、清掃場所における清掃装置本体1の位置の確認を容易にするために所定のパターン(点灯、点滅等)で発光する。
【0036】
誘導手段8は、図1、図2に示すように、駆動源6を覆うケース35の側面に設けられている。具体的には、誘導手段8は、ケース35の側面の上部に設けられており、プール101の床面104から所定高さになるように配置される。
【0037】
誘導手段8は、清掃装置本体1とプール101の壁面105との間隔を測定可能な測距センサ8a,8bを有する。清掃装置本体1には、2つの測距センサ8a,8bが設けられている。2つの測距センサ8a,8bは、清掃装置本体1の長手方向、すなわち、清掃装置の進行方向に間隔をおいて配置されている。清掃装置本体1は、2つの測距センサ8a,8bが感知するプール101の壁面105との間隔が等しくなるように走行することで、プール101の壁面105に平行に進行することができる。
【0038】
本実施形態では、測距センサ8a,8bとして赤外線センサ8a,8bが使用される。測距センサ8a,8bは、平面視において、清掃装置本体1の進行方向に対して直角な方向に赤外線を放射できるように配置されている。また、本実施形態において、測距センサ8a,8bは、水平方向に対して斜め上方に赤外線を放射するように設定されている。この測距センサ8a,8bが測定可能な距離は、約0.5m〜2mの範囲である。
【0039】
制御装置は、清掃装置本体1に搭載されるモータ、誘導手段8等の各種機器を制御する。
この制御装置は、所定時間が経過するか、又は所定の条件(例えば、清掃装置本体1の走行距離や、回収したゴミの量等の条件)を満たすまで、プール101等の床面104を清掃するように清掃装置本体1を制御する(以下、この制御を「清掃モード」という)。
【0040】
この制御装置は、清掃モードにおいて、例えば、清掃装置本体1を直進させながら、保護部材9がプール101等の壁面105に当接したときに、タッチセンサの感知信号を受信し、この信号の受信に基づいて、清掃装置本体1を一旦停止させ、さらにこの清掃装置本体1を方向転換させて再び直進するように走行装置4を制御する。
【0041】
また、制御装置は、清掃モードが終了したとき、又は所定の条件を満たしたときに、清掃装置本体1を所定の回収位置まで移動させるように制御する(以下、この制御を「回収モード」という)。
【0042】
以下、回収モードによる清掃装置の回収方法について説明する。例えば清掃場所が稼動床式のプール101の場合には、プール101の床102に形成された開口部103の直下の床面104の位置が回収位置となる。この場合、回収位置には、清掃装置本体1を停止させるための停止手段40を有する停止具41が配置される。
【0043】
本実施形態では、開口部103は、プール101の1つの壁面(以下「第1壁面」という)105aの近傍に形成されており、停止具41は、プール101の第1壁面105aの近傍位置または、この第1壁面105aに接触するように、床面104に配置されている。
【0044】
本実施形態において、停止具41は、立方体状に構成されている。この停止具41は、その高さ(床面104からの高さ)が、清掃装置本体1の誘導手段8の高さよりも低くなるように設定されている。この停止具41の停止手段40は、清掃装置本体1の保護部材9が接触する接触面42を有する。
【0045】
清掃装置を回収位置に移動させるために、制御装置は、清掃装置本体1の保護部材9がプール101の壁面105bに当接するまで走行装置4を駆動する。保護部材9がプール101の1つの壁面(以下「第2壁面」という)105bに当接したとき、その旨の信号がタッチセンサから制御装置に送信される。制御装置は、タッチセンサからの信号を受信し、これによって清掃装置本体1を所定の角度(例えば90°)だけ旋回させる。図例では、制御装置は、清掃装置本体1を左に旋回させる。
【0046】
清掃装置本体1が所定角度旋回すると、誘導手段8の2つの測距センサ8a,8bが清掃装置本体1とプール101の第2壁面105bとの間隔を検知してその信号を制御装置に送信する。制御装置は、2つの測距センサ8a,8bが検知した清掃装置本体1と第2壁面105bとの間隔(距離)を比較する。
【0047】
2つの測距センサ8a,8bが検知した清掃装置本体1とプール101の第2壁面105bとの間隔が異なるとき、制御装置は、走行装置4を駆動して、この間隔が等しくなるように、清掃装置本体1を若干旋回させてその位置(向き)を微調整する。
【0048】
このように清掃装置本体1の位置を微調整して2つの測距センサ8a,8bが検知する前記間隔が等しくなったとき、清掃装置本体1は、第2壁面105bに対して平行に進行できる位置に設定されることとなる。制御装置は、これを判断して清掃装置本体1を前進させる。
【0049】
清掃装置本体1を前進させる間は、2つの測距センサ8a,8bによって、清掃装置本体1とプール101の第2壁面105bとの間隔を検知し、その信号を制御装置に送信する。制御装置は、2つの測距センサ8a,8bからの信号を比較しながら、その値が異なるときは、上述のように清掃装置本体1の向きを微調整しながら前進させる。
【0050】
このようにしてプール101の1つの壁面105bに平行となるように、清掃装置本体1を前進させていると、再び保護部材9がプール101の別の壁面(以下「第3壁面」という)105cに当接する。このとき、制御装置は、上記と同様に、清掃装置本体1を所定角度だけ左に旋回させ(方向転換させ)、誘導手段8を介してこの第3壁面105cに平行な方向に清掃装置本体1を前進させる。
【0051】
第3壁面105cに対して平行に走行する清掃装置本体1は、この第3壁面105cにほぼ直角に繋がる第1壁面105aに接触する。この場合、上記と同様に、第1壁面105aに当接した清掃装置本体1は、制御装置による制御によって、所定角度だけ左に旋回する。そして、上述したような誘導手段8による誘導によって、第1壁部に対して平行な状態を維持しながら走行する。
【0052】
清掃装置本体1は、第1壁部に対して平行に走行していくと、停止具41に当接する。具体的には、清掃装置本体1の保護部材9が停止具41の停止手段40としての接触面42に接触する。
【0053】
そうすると、制御装置は、清掃装置本体1を一旦停止させ、この清掃装置本体1が所定角度(例えば約90°)だけ左に旋回するように、走行装置4を駆動する。このように、清掃装置本体1が旋回した後、誘導手段8としての測距センサ8a,8bがプール101の壁面105と清掃装置本体1との間隔を測定すべく、所定周波数の赤外線を所定方向に放射する。
【0054】
このとき、走行装置本体1の誘導手段8の高さは、停止具41よりも高く設定されていることから、誘導手段8から放射された赤外線は、この停止具41に当たらずに、停止具41の後方に放射される。したがって、測距センサ8a,8bは、停止具41の存在を検知できない。このとき、測距センサ8a,8bからは、壁面105が存在しない旨の信号(又は壁面との間隔が無限大である旨の信号)が制御装置に送信される。
【0055】
制御装置は、この信号を受信すると、清掃装置本体1が回収位置に到着したと判断し、走行装置4を停止させる。
【0056】
回収位置に到着した清掃装置本体1を、開口部103を介して引き上げることによって、清掃装置の回収が完了する。
【0057】
以上説明した本実施形態に係る清掃装置によれば、誘導手段8によって、清掃装置本体1をプール101の壁面105に平行に走行させることによって、この清掃装置本体1を所定の回収位置に容易に移動させることができる。さらに、この誘導手段8は、2つの測距センサ8a,8bを用いるだけの簡単な構成で、容易に清掃装置本体1を壁面105に平行に走行させることができるため、その製造も容易である。
【0058】
また、本実施形態の清掃装置を停止させるための停止具41は、その停止手段40として、清掃装置本体1の保護部材9が接触可能な接触面42を有するだけの構成でよく、その製造を容易に行うことができる。しかも、この停止具41を清掃装置の回収位置に配置するだけで、清掃装置本体1を停止させることができることから、清掃装置を容易に回収できる。
【0059】
図6、図7は、本発明に係る清掃装置の第2実施形態を示す。本実施形態では、清掃装置本体1には、第1実施形態のような測距センサ8a,8bが設けられていない。したがって、清掃装置本体1を回収位置まで誘導手段8、及び回収する方法が異なる。本実施形態では、清掃装置本体1に組み込まれた制御装置が誘導手段8として機能する。また、本実施形態では、清掃装置を回収位置で停止させる停止具41の構成が第1実施形態と異なる。これらの点以外の本実施形態の構成については、第1実施形態と同様である。
【0060】
以下、停止具41の構成について説明する。停止具41の停止手段40は、図7に示すように、清掃装置本体1に当接する当接部材43と、清掃装置本体1が当接部材43に当接したときに、清掃装置本体1に停止信号を送信する送信機44と、清掃装置本体1が当接部材43に当接したことに連動して送信機44を作動させるスイッチ部45と、これらを支持する支持基材46とを有する。
【0061】
当接部材43は、棒状に形成されており、その一端部が枢支軸47を介して支持基材46に対して回動可能に連結されている。
【0062】
スイッチ部45は、当接部材43が所定角度回動したときに、この当接部材43に当接するように、当接部材43に対して所定間隔離間されて支持基材46に固定されている。なお、本実施形態では、スイッチ部45としてリミットスイッチが採用されている。スイッチ部45は、送信機44に対して電気的に接続されている。スイッチ部45は、当接部材43が当接したときにONになり、その信号により送信機44を作動させることができる。
【0063】
送信機44は、清掃装置本体1を停止させるための停止信号を、清掃装置本体1内の制御装置に送信する。なお、制御装置には、送信機44からの停止信号を受信するための受信アンテナが設けられている。
【0064】
以下、第2実施形態における清掃装置の回収方法について説明する。清掃装置本体1が清掃モードから回収モードへと制御モードが切り替えられたとき、制御装置は、清掃装置本体1の保護部材9がプール101の壁面105に当接するように、清掃装置本体1を直進させる。
【0065】
例えば、清掃装置本体1の保護部材9がプール101の第2壁面105bに接触したとき、保護部材9に一体に設けられる2つタッチセンサのそれぞれは、自身に作用する圧力に関する信号(以下「圧力信号」という)を制御装置に送信する。制御装置は、2つのタッチセンサから送られた圧力信号を基に、各タッチセンサに作用する圧力の大小を比較する。
【0066】
さらに、制御装置は、2つの圧力信号に係る圧力が異なるとき、これらの圧力が等しくなるように、走行装置4を駆動して、清掃装置本体1の位置を微調整する。各タッチセンサに作用する圧力が等しくなったとき、清掃装置本体1は、その進行方向が第2壁面105bに対して略直交するように配置される。
【0067】
制御装置は、この状態から清掃装置本体1を所定距離だけ後退させるように走行装置4を駆動する。その後、制御装置は、走行装置4を駆動して、清掃装置本体1を左に約90°旋回させる。清掃装置本体1を旋回させた後、制御装置は、清掃装置本体1を前進(直進)させるように走行装置4を駆動する。
【0068】
これにより、清掃装置本体1は、プール101の第2壁面105bとほぼ平行に走行することができる。ただし、プール101のような比較的大型の構造物においては、その床面104の水平度や平滑さに誤差があり、その影響で、清掃装置本体1の走行方向とプール101の第2壁面105bとの平行の度合いに誤差が生じるおそれがある。
【0069】
この誤差を調整して、清掃装置本体1を再度、第2壁面105bに対して平行に走行させるために、制御装置は、清掃装置本体1を一旦停止させ、再度この第2壁面105bに保護部材9を接触させるべく、清掃装置1を右に約90°旋回させ、第2壁面105bに向かって直進させる。そして、上記と同様に、第2壁面105bに当接した保護部材9の2つのタッチセンサの圧力が等しくなり、清掃装置本体1の進行方向が第2壁面105bに対して垂直になるように、清掃装置本体1の向きの微調整を行う。
【0070】
この調整が終わると、制御装置及び走行装置4の制御によって、清掃装置本体1を後退させ、第2壁面105bから所定間隔離れたところで、この清掃装置本体1を再度左に90°旋回させ、そのまま第2壁面105bに平行に走行させる。
【0071】
上記のような清掃装置本体1の進行方向の調整の頻度は、プール101の大きさに応じて適宜設定される。また、この調整は、例えば清掃装置本体1の走行距離や走行時間を基準に設定される。
【0072】
このように、清掃装置本体1をプール101の第2壁面105bに平行に走行させるとともに、この清掃装置本体1を、例えばプール101の第2壁面105bに取り付けられた停止具41の停止手段40によって停止させる。具体的には、図7(b)に示すように、清掃装置本体1が停止手段40の当接部材43に当接し、この当接部材43が枢支軸47まわりに所定角度回動したとき、スイッチ部45がONになり、これに連動して送信機44から清掃装置本体1へと停止信号が送信される。
【0073】
清掃装置本体1が停止信号を受信すると、制御装置が走行装置4を停止させ、これによって、清掃装置本体1を回収位置で停止させることができる。
【0074】
以上説明した本実施形態に係る清掃装置によれば、回収モードにおいて、制御装置によって、所定のタイミング(頻度)で清掃装置本体1の進行方向を調整することによって、清掃装置本体1を常に壁面105に対して平行に走行させることができ、これによって清掃装置本体1を容易に回収できるようになる。
【0075】
また、本実施形態における停止具41によれば、清掃装置本体1を当接部材43に当接させるだけで容易に清掃装置本体1を停止させることができ、これによって清掃装置本体1を容易に回収できるようになる。
【0076】
図8は、本発明に係る清掃装置の第3実施形態を示す。本実施形態では、清掃装置本体1に第1実施形態のような測距センサ8a,8bが設けられておらず、代わりに、清掃装置本体1に対する所定の方向を検知する方向検知手段8cが誘導手段8として設けられている。本実施形態では、上記の停止具41を用いることなく、清掃装置本体1を所定の回収位置に誘導できる。これらの点以外の第3実施形態の構成要素については、第1実施形態と同様である。
【0077】
本実施形態では、方向検知手段8cとしてジャイロスコープが採用されている。例えば、ジャイロスコープは、プール101の任意の壁面105に対して垂直な方向(又は平行な方向)を検知するように設定されている。
【0078】
以下、本実施形態に係る清掃装置の回収方法について説明する。なお、プール101には、回収位置が近傍に設定されている第1壁面105a、第1壁面105aに平行な第2壁面105b、第1壁面105a及び第2壁面105bに対して直角な第3壁面105c、第4壁面105dが設けられており、回収モードにおいて、第4壁面105dに清掃装置が接触した場合を例としてその回収方法を説明する。
【0079】
方向検知手段8cとしてのジャイロスコープは、第1壁面105aから第2壁面105bに向かうとともに、第2壁面105bに対して直交する方向(又は、第3壁面105c及び第4壁面105dに平行な方向)を検知するように設定されている。
【0080】
清掃装置の制御モードが清掃モードから回収モードに切り替わったとき、制御装置は、清掃装置本体1の保護部材9をプール101の壁面105に接触させるべく、走行装置4を駆動して清掃装置本体1を直進させる。これにより、例えば、第4壁面105dに保護部材9が接触したとき、制御装置は、ジャイロスコープが検知する方向に基づいて、清掃装置本体1が第4壁面105dに接触したことを認識する。
【0081】
制御装置は、第2実施形態と同様に、保護部材9に取り付けられた2つのタッチセンサが感知する圧力が等しくなるように、走行装置4を駆動して清掃装置本体1の向き(位置)を微調整する。このように調整された清掃装置1は、第4壁面105dに垂直な方向に直進(後退)できるようになる。
【0082】
制御装置には、各壁面105a〜105dに対する回収位置の位置データが記憶されている。これにより、制御装置は、清掃装置本体1が接触する壁面105を特定することで、回収位置を特定することができる。
【0083】
例えば、回収位置が第1壁面105aの近傍位置にある場合、制御装置は、第4壁面105dから回収位置がどれだけ離れているかを認識できる。制御装置は、清掃装置本体1が第4壁面105dに接触したとき、上記のように清掃装置本体1の向きを調整した後、回収位置の位置データに基づいて、回収位置と第4壁面105dとの離間距離だけ清掃装置本体1を後退させる。
【0084】
そして、制御装置は、清掃装置本体1が第1壁部に向くように走行装置4を介して旋回させる。そして、制御装置は、清掃装置本体1を第1壁面105a寄りに設けられた回収位置に向けて前進(直進)させる。制御装置は、第1壁面105aに接触したときに停止され、これによって回収位置への清掃装置本体1の移動が完了する。
【0085】
以上説明した本実施形態の清掃装置によれば、方向検知手段8cを清掃装置本体1の誘導手段8として利用することによって、清掃装置本体1を容易に回収位置まで移動させて回収することができるようになり、この点において特に有用である。また、停止具41を用いることなく清掃装置本体1を回収位置で回収できるので、この点においても有利である。
【0086】
なお、本発明は上記の実施形態に限らず、発明思想を逸脱しない範囲において種々の変更、変形が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用してもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよい。
【0087】
例えば、上記の実施形態では、誘導手段8が駆動源6を覆うケース35の側面に設けられていた例を示したが、これに限らず、誘導手段8を別の位置に設けても良い。要は、誘導手段8が設けられる高さ位置が停止具41の高さよりも高くされていればよい。なお、誘導手段8の高さは、停止具41と同じでもよく、この場合は、誘導手段8である測距センサ8a,8bの赤外線が停止具41よりも高く放射されるように放射角度を設定することで、清掃装置本体1を停止具41の近傍位置で停止させることができる。
【0088】
また、例えば、停止具41を、プール101の壁面105とは測距センサ8a,8bの赤外線の反射率の異なる材料によって形成し、この違いによって停止位置を特定することができれば、停止具41の高さを誘導手段8の高さよりも高く構成してもよい。この場合には、例えば、停止具41として鏡を用いることも可能である。
【0089】
また、上記の第1実施形態において、清掃装置本体1がプール101の壁面105に接触する度に、この清掃装置本体1を左に旋回させて走行させる例を示したが、これに限らず、清掃装置本体1を右に旋回させて走行させることによっても、この清掃装置本体1を回収位置に誘導できる。
【0090】
誘導手段8として、赤外線を使用する測距センサ8a,8bを用いた例を示したが、これに限らず、例えば、停止具41を磁性体又は非磁性体で構成するとともに、磁力センサ8a,8bによって、停止具41の磁性の有無を確認することで、走行装置本体1を回収位置で停止させるようにしてもよい。
【0091】
上記実施形態では、プール101の床面104を清掃装置が清掃する例を示したが、これに限らず、清掃装置は、水等の液体を貯留、又は流通可能な貯水槽や排水管、排水桝等その他の種々の構造物の床面の清掃に適用できる。
【0092】
上記実施形態では、プール101の壁面105の近傍位置に停止具41を配置し、この停止具41の位置を回収位置として、清掃装置本体1を回収する例を示したが、これに限らず、例えば、回収位置が壁面105から離れている場合であっても、壁面105の近傍に配置した停止具41の位置まで清掃装置本体1を移動させ後に、この停止具41から所定の方向に、所定の距離だけ清掃装置本体1を直進させるように制御装置に所定プログラムを組み込むことで、清掃装置本体1を容易に回収することができる。
【0093】
上記の第1実施形態では、誘導手段8として2つの測距センサ8a,8bを用い、清掃装置本体1を壁面105に対して平行に走行させて停止位置まで誘導する例を示したが、これに限らず、例えば、誘導手段として1つの測距センサを用いてもよい。この場合は、この1つの測距センサによって、清掃装置本体1と壁面105との距離を測定した後、清掃装置本体1をある程度前進させて再度壁面105との距離を測定し、測定した距離を比較して、清掃装置本体1と壁面105との距離が常に一定となるように、制御装置によって走行装置4を制御すればよい。
【符号の説明】
【0094】
1…清掃装置本体、2…遠隔操作手段、3…本体フレーム、3a…支持台、4…走行装置、5…清掃手段、6…駆動源、7…発光装置、8…誘導手段、8a…測距センサ、8b…測距センサ、8c…方向検知手段、9…保護部材、15…ゴムクローラ、16…スプロケット、17…アイドラ、18…モータ、21…清掃具、22…ポンプ、23…濾過フィルタ、25…清掃具本体、26…車輪、27…接続配管、29…ブラシ、30…吸引口、31…吸入部、32…吐出部、35…ケース、40…停止手段、41…停止具、42…接触面、43…当接部材、44…送信機、45…スイッチ部、46…支持基材、47…枢支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面と壁面とによって囲まれた領域に液体を貯留可能な構造物の床面を清掃する清掃装置において、
構造物の床面を走行しながら清掃する清掃装置本体を有するとともに、清掃装置本体を回収する場合に、清掃装置本体を構造物の壁面に平行に走行させることで所定の回収位置に誘導する誘導手段を備えることを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記誘導手段は、清掃装置本体を構造物の壁面に対して平行に走行させるために、清掃装置本体と壁面との距離を測定する少なくとも2つのセンサを有する請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記誘導手段は、清掃装置本体が構造物の壁面に当接したときに、構造物内における清掃装置本体の位置を検知できるように、構造物内における所定の方向を検知する方向検知手段を有する請求項1に記載の清掃装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の清掃装置を回収位置で停止させる停止手段を有する清掃装置の停止具。
【請求項5】
前記停止手段は、清掃装置本体に当接する当接部材と、清掃装置本体が当接部材に当接したときに、清掃装置本体に停止信号を送信する送信機と、清掃装置本体が当接部材に当接したことに連動して送信機を作動させるスイッチ部とを有する請求項4に記載の清掃装置の停止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−259472(P2010−259472A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110380(P2009−110380)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(591056547)ビー・エル・オートテック株式会社 (20)