説明

減圧蒸気加熱装置

【課題】 少ない量の冷却流体を補給するだけで、タンク内の液体の温度を任意に制御することのできる減圧蒸気加熱装置を得ること。
【解決手段】
反応釜1のジャケット部11に蒸気供給管3を接続する。蒸気供給管3には蒸気圧力調節弁7と気液分離器4を取り付ける。ジャケット部11の下方に吸引手段2を接続する。吸引手段2を、エゼクタ14とタンク5と循環ポンプ15とで構成する。タンク5の上部に循環液体をシャワー状に噴出する循環液体噴出口27を配置する。
循環液体噴出口27から循環液体がシャワー状に噴出される間に、循環液体の保有している熱量の一部が大気中へ放熱され、循環液体の液温を低下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器内の被加熱物を低圧蒸気で加熱するものに関し、特にその加熱蒸気温度が100度C程度の比較的低温の場合に適した減圧蒸気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の減圧蒸気加熱装置は、熱交換器と、この熱交換器に加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管と、熱交換器内の流体を吸引する吸引手段を接続し、吸引手段をエゼクタとタンクと循環ポンプで構成して、タンクの上部に冷却流体補給管を接続することで、タンク内の液体の温度を任意に制御することができるものである。
【0003】
上記従来の減圧蒸気加熱装置では、タンク内の液体の温度を任意の温度まで低下させるために、多量の冷却流体を補給しなければならない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−319544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、少ない量の冷却流体を補給するだけで、タンク内の液体の温度を任意に制御することのできる減圧蒸気加熱装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱交換器と、当該熱交換器に加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管と、熱交換器内の流体を吸引する吸引手段を接続したものにおいて、吸引手段を液体エゼクタとタンクと循環ポンプで構成して、タンク内の液体を循環ポンプで液体エゼクタからタンクへと循環させると共に、タンクの上部に循環液体をシャワー状に噴出する循環液体噴出口を配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、タンクの上部に循環液体噴出口を配置したことにより、この循環液体噴出口から循環液体がシャワー状にタンク内に供給される間に、循環液体の保有している熱量の一部が大気中へ放熱され、循環液体の液温を低下させることができ、冷却流体の補給量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る減圧蒸気加熱装置の実施例を示す構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、タンクの上部に循環液体噴出口を配置するものであるが、この循環液体噴出口は1個の噴出口とすることも、あるいは、小径のものを多数寄せ集めて多数個の噴出口とすることもできる。
【実施例】
【0010】
図1において、熱交換器としての反応釜1と、エゼクタ14とタンク5と循環ポンプ15から成る吸引手段2と、タンク5の上部に配置した循環液体噴出口27とで減圧蒸気加熱装置を構成する。
【0011】
反応釜1へ加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管3は、図示しないボイラー等の蒸気源と接続すると共に、蒸気圧力調節弁7と開閉弁8を取り付け、流体供給管6の一端を接続し、更に気液分離器4を取り付けて、反応釜1のジャケット部11と接続する。
【0012】
ジャケット部11の右側上部に冷却流体供給管23を接続する。この冷却流体供給管23からジャケット部11に冷却流体を供給することによって、反応釜1を加熱に代えて冷却することができるものである。
【0013】
反応釜1のジャケット部11の下端を、蒸気トラップ12とバルブ13を介して吸引手段2のエゼクタ14と接続する。吸引手段2は、エゼクタ14とタンク5と循環ポンプ15に循環路16を介して接続した組み合わせポンプとして構成する。エゼクタ14はタンク5内の流体を循環ポンプ15で循環して通過させることにより、その流体温度に応じた吸引力を生じるものである。
【0014】
タンク5の上部に循環液体をシャワー状に噴出する循環液体噴出口27を配置する。循環液体噴出口27は、略逆三角形状で下面に設けた複数の噴出口から、矢印で示すように、タンク5内へ循環液体をシャワー状に噴出する。このように循環液体がシャワー状に噴出される間に、循環液体の保有している熱量の一部が大気中へ放熱され、循環液体の液温を低下させることができ、冷却流体の補給量を少なくすることができる。
【0015】
循管路16を分岐して、余剰流体排出管9と流体供給管6を連通する。余剰流体排出管9には開閉弁10を取り付けて、図示しないタンク5内のレベル計と連動してタンク5内の液位を所定レベルに維持する。
【0016】
流体供給管6は、組み合わせポンプ2の循環流体の一部を蒸気供給管3の上部から矢印方向に供給するものであり、途中に液体エゼクタ20とストレーナ18と弁手段19とを取り付ける。液体エゼクタ20の吸込室22を、管路24を介して蒸気トラップ25の出口側と接続する。
【0017】
流体供給管6に取り付けたストレーナ18は、一般的にY型ストレーナと呼ばれているもので、内部に円筒状の漉し板と漉し網からなるスクリーン部材を有しており、このスクリーン部材を流体が流下することによって、流体中に混入していた錆やスケール等の異物を漉し取ることができ、異物の漉し取られた流体だけが弁手段19側へ流下することができるものである。
【0018】
ストレーナ18のブロー通路17に自動開閉弁26を接続する。ブロー通路17は、ストレーナ18の入口側と連通しており、スクリーン部材で漉し取られてスクリーン部材内壁に付着している異物をこのブロー通路17から外部へ排除することができる。従って、自動開閉弁26を開弁することによって、ストレーナ18へ流入した流体はスクリーン部材に付着している異物をブローしてブロー通路17と自動開閉弁26から系外へ排除される。
【0019】
流体供給管6と反応釜1のジャケット部11の間に気液分離器4を配置する。気液分離器4は、従来から用いられている型式のもので良く、遠心力を利用したものや衝突板に衝突させるもの、あるいは、フィルターを用いたもの等適宜用いることができる。気液分離器4の下部に蒸気トラップ25を取り付け、管路24を介して液体エゼクタ20と連通する。蒸気トラップ25は、蒸気は通過させることがなく、液体としての復水だけを流下させる自動弁の一種であり、気液分離器4で分離された液体としての復水を出口側へ排出するものである。
【0020】
反応釜1内の図示しない被加熱物を加熱する場合、蒸気供給管3から加熱用の蒸気をジャケット部11に供給すると共に、循環ポンプ15を駆動してエゼクタ14で吸引力を発生させる。
【0021】
この場合、加熱用の蒸気は蒸気圧力調節弁7で所定の圧力まで減圧されるが、圧力が減圧されても保有している熱量はほとんど減少することが無いために、減圧蒸気は過熱蒸気となる。しかしながら、流体供給管6から循環流体の一部が過熱蒸気中に供給されることによって、気液分離器4を流下する間までに過熱蒸気は飽和温度蒸気まで減温される。流体供給管6から供給される流体の量は、弁手段19の開度を適宜調整することにより、制御することができる。
【0022】
気液分離器4で循環流体と蒸気の混合流体はそれぞれ気液分離され、飽和温度となった蒸気はジャケット部11に供給されて反応釜1内の被過熱物を加熱すると共に、分離された液体即ち復水は蒸気トラップ25を通って液体エゼクタ20に吸引される。
【0023】
循環液体噴出口27から循環液体がシャワー状に噴出される間に、循環液体の保有している熱量の一部が大気中へ放熱され、循環液体の液温を低下させることができ、冷却流体の補給量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 反応釜
2 吸引手段
3 蒸気供給管
4 気液分離器
5 タンク
6 流体供給管
11 ジャケット部
14 エゼクタ
15 循環ポンプ
17 ブロー通路
18 ストレーナ
19 弁手段
20 液体エゼクタ
23 冷却流体供給管
27 循環液体噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、当該熱交換器に加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管と、熱交換器内の流体を吸引する吸引手段を接続したものにおいて、吸引手段を液体エゼクタとタンクと循環ポンプで構成して、タンク内の液体を循環ポンプで液体エゼクタからタンクへと循環させると共に、タンクの上部に循環液体をシャワー状に噴出する循環液体噴出口を配置したことを特徴とする減圧蒸気加熱装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−2405(P2012−2405A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136392(P2010−136392)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)