説明

減圧造型用鋳枠

【課題】構成を簡素化でき、減圧鋳型造型鋳造ラインのさらなる低コスト化やさらに多品種への対応を可能とする減圧造型用鋳枠を提供する。
【解決手段】上下面が開口され且つ周囲に通気路11が形成された枠体12と、該枠体の一つの側面内壁のみを介して、上記通気路に連通される抜気パイプ13と、上記枠体の側面内壁に設けられるとともに上記通気路に貫通されて設けられる多数の通気孔を覆うフィルタ部材24と、上記枠体に設けられ、上記通気路に外部の吸引装置を接続するための吸引弁とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧造型法を用いた減圧鋳型造型鋳造ラインで用いられる減圧造型用鋳枠に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧造型法を用いた減圧鋳型造型鋳造ラインは、生型鋳型造型鋳造ラインに比べて大型の鋳物への適用が可能であるという点で有利である。さらに、減圧鋳型造型鋳造ラインは、粘結剤を用いる自硬性プロセスに対して廃棄物や有害ガスが発生しないという点で有利である。このように、減圧鋳型造型鋳造ラインは、環境にやさしく大型の鋳物にも適用できるものである。このような減圧鋳型造型鋳造ラインにおいて、低いイニシャルコストで多品種に対応できるラインが求められている。そして、このようなラインで用いられるのに適した減圧造型用鋳枠が求められている。従来より、減圧造型用鋳枠として例えば特許文献1に記載のものが知られているが、さらに構成を簡素化して、低コスト化やさらに多品種へ対応することを実現できる減圧造型用鋳枠が望まれている。また、鋳物のサイズが非常に大きく鋳枠全体の大部分を占める場合等の注湯量が非常に大きい場合に、鋳枠と抜気パイプの熱膨張量に差が生じた影響で抜気パイプの取り付け部分に不具合が発生する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−223046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、構成を簡素化でき、減圧鋳型造型鋳造ラインのさらなる低コスト化やさらに多品種への対応を可能とする減圧造型用鋳枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る減圧造型用鋳枠は、上下面が開口され且つ周囲に通気路が形成された枠体と、該枠体の一つの側面内壁のみを介して、上記通気路に連通される抜気パイプと、上記枠体の側面内壁に設けられるとともに上記通気路に貫通されて設けられる多数の通気孔を覆うフィルタ部材と、上記枠体に設けられ、上記通気路に外部の吸引装置を接続するための吸引弁とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、抜気パイプが枠体の一つの側面内壁のみを介して通気路に連通される構成により、構成を簡素化でき、減圧鋳型造型鋳造ラインのさらなる低コスト化やさらに多品種への対応を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の正面図である。
【図2】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の背面図である。
【図3】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の左側面図である。
【図4】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の右側面図である。
【図5】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の平面図である。
【図6】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の底面図である。
【図7】図5に示す減圧造型用鋳枠のA−A断面図である。
【図8】図5に示す減圧造型用鋳枠のB−B断面図である。
【図9】本発明が適用された減圧造型用鋳枠の変形例として、下側枠体に抜気パイプを設けた例を示す断面図である。
【図10】本発明が適用された減圧造型用鋳枠を用いて好適な半自動減圧造型鋳造ラインのレイアウト概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した減圧造型用鋳枠について、図面を参照して説明する。図1〜図6は、それぞれ本発明を適用した減圧造型用鋳枠1の正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図を示している。また、図7は、図5に示すA−A断面を示す断面図である。図8は、図5に示すB−B断面を示す断面図である。
【0009】
本発明を適用した減圧造型用鋳枠1は、図1〜図4に示すように、上鋳枠10と下鋳枠20とからなる。ここで、上鋳枠10及び下鋳枠20を一体化した状態に特徴があるのはもちろんのこと、以下で説明するように上鋳枠10のみにも特徴がある。
【0010】
上鋳枠10は、図5〜図8に示すように、上下面が開口され且つ周囲に通気路11が形成された上側枠体12と、この上側枠体12に設けられ通気路11に連通される抜気パイプ13と、この上側枠体12に設けられるフィルタ部材14とを備える。また、上鋳枠10には、上側枠体12の外面に設けられ、通気路11に外部の吸引装置を接続するための吸引弁として、自動弁15が複数設けられている。
【0011】
抜気パイプ13は、上鋳枠10内に充填された耐熱性粒子としての砂を均等な圧力で負圧固化するものである。抜気パイプ13は、一例として、多孔パイプの周囲に金網等のフィルタが巻き回されてなる。ここで、多孔質の焼結金属からなる抜気パイプを用いてもよい。
【0012】
また、抜気パイプ13は、従来のような対向する側面内壁の両方に接続されて架け渡される形式ではなく、一つの側面内壁のみに接続される形式とされる。具体的には、抜気パイプ13は、上側枠体12の一つの側面内壁12aのみを介して、通気路11に連通されている。すなわち、抜気パイプ13は、その一端外周にネジ部13aが形成されこのネジ部13aが例えば側面内壁12aに埋め込まれたソケット部12eにねじ込み取り付けられることにより上側枠体12に取り付けられている。それとともに、抜気パイプ13は、他端が閉塞部13bにより閉塞されている。この抜気パイプ13は、他端付近で枠体からの支持部17により支持されている。
【0013】
このように、かかる抜気パイプ13は、一端側のみ固定とされ、他端側は、高さ方向に支持されるのみであり軸方向には移動可能とされているため、鋳物のサイズが大きく注湯の量が多い場合に、抜気パイプ13と上側枠体12との膨張量に差ができたときにも、抜気パイプ13の取り付け部に大きな力が加わることもなく、当該部分に不具合が生じることもない。
【0014】
フィルタ部材14は、上側枠体12の側面内壁に穿設された多数の貫通孔からなる通気孔を覆うように形成されている。この通気孔及びフィルタ部材14は、4つの側面内壁12a〜12dに設けられている。
【0015】
支持部17は、抜気パイプ13の数や配置に応じて一又は複数設けられる。この上鋳枠10では、抜気パイプ13が複数本であるため、支持部17も2つ以上設けられている。ここで、支持部17は、上述した抜気パイプ13の考え方と同様に対向する側面内壁に接続されて掛け渡される形式ではなく、一端が枠体の側面内壁のうちいずれか一の側面内壁に接合されるとともに、他端が該側面内壁に隣接する側面内壁に接合された部材により支持されている。
【0016】
具体的に、支持部17は、それぞれ一端が枠体の側面内壁のうちいずれか一の側面内壁12b,12dに接合される支持部材17a,17bを有する。支持部材17a,17bは、例えば四角形棒等の型鋼からなる。支持部材17aは、一端が側面内壁12bに溶接等で接合され、他端がこの側面内壁12bに隣接する側面内壁12cに接合された保持部材17cにより支持されている。一方、支持部材17bは、一端が側面内壁12dに溶接等で接合され、他端がこの側面内壁12dに隣接する側面内壁12cに接合された保持部材17dにより支持されている。保持部材17c,17dは、例えば適切な厚みの板材からなり、側面内壁12cや支持部材17a,17bに対して、溶接等により接合されている。
【0017】
このような支持部材17a,17bや保持部材17c,17dにより構成される支持部材17は、一端側のみ固定とされ、他端側は、ある程度支持部材17a,17bの長手方向に移動可能な構造であることから、鋳物のサイズが大きく注湯の量が多い場合に、支持部材17a,17bと上側枠体12との膨張量に差ができたときにも、支持部17や上側枠体12が損傷してしまうことを防止できる。かかる支持部17は、抜気パイプ13に不具合が生じることをも防止できる。
【0018】
自動弁15は、上側枠体12の外面に吸引弁としてそれぞれ、複数設けられている。尚、この自動弁15に変えて又はこの自動弁15に加えて一又は複数の手動弁を設けるように構成しても良い。すなわち、本発明を適用する減圧造型用鋳枠は、少なくとも自動弁又は手動弁のいずれかを設けるように構成すればよく、自動弁及び手動弁の両方を設けるように構成してもよい。自動弁15及び/又は手動弁が少なくとも一つ設けられている構成により、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインに用いられるのに適したものとなり、多品種な鋳物の鋳造に対応することを実現できる。上側枠体12において、自動弁15及び手動弁をそれぞれ複数設けるように構成した場合には、さらに多品種な鋳物の鋳造に対応することを実現できる。
【0019】
下鋳枠20は、上述の上鋳枠10の下方側に一体可能に構成されている。すなわち、上述の上鋳枠10と以下で説明する下鋳枠20は、側面部に設けられた結合部材により一体とされて造型鋳枠として機能する。具体的には、例えば、上鋳枠10の上側枠体12の側面に設けられたハッカークランプ4が、下鋳枠20の下側枠体の側面に設けられたクランプピン5に係合することで、上鋳枠10及び下鋳枠20が一体とされる。分離する際は、このハッカークランプ4のクランプピン5への係合を解除すればよい。
【0020】
この下鋳枠20は、上下面が開口され且つ周囲に通気路21が形成された下側枠体22と、この下側枠体22に設けられるフィルタ部材24とを備える。また、下鋳枠20は、下側枠体22の外面に設けられ、通気路21に外部の吸引装置を接続するための吸引弁として、自動弁25や手動弁26が複数設けられている。
【0021】
フィルタ部材24は、下側枠体22の側面内壁に穿設された多数の貫通孔からなる通気孔を覆うように形成されている。この通気孔及びフィルタ部材24は、4つの側面内壁に設けられている。また、下側枠体22用のフィルタ部材24は、下側枠体22の下端部まで形成されている。より詳しくは、フィルタ部材24は、下側枠体22の上端部から所定の距離を有した位置から下端部までの高さ方向の全部にわたって形成されている。この所定の距離は、上側枠体12、下側枠体22の合わせ面である見切り面付近には、冷却用のエアチャンバ28を設けることとなるため、チャンバ形成部分の距離を示すものである。すなわち、ここでは、フィルタ部材24が通気路21の高さ方向の全面に形成され、抜気パイプを設けない構成の鋳枠の中では、もっとも吸引機能を高める構成であることを意味している。換言すると、下側枠体22では、上述の上側枠体12と異なり、抜気パイプを設けない構成とされている。その理由は、この下側枠体22は、より重量の重い鋳物を形成するのに適した構成であり、この下側枠体22を用いた減圧造型用鋳枠は、型バラシの際に落下する鋳物が原因で抜気パイプが損傷されることを防止でき、若しくは、型バラシの際に抜気パイプ上に載せられた鋳物を取り出すことを要せずそのまま落下させることで鋳物を簡単に取り出すことを実現できる。
【0022】
自動弁25や手動弁26は、下側枠体22の外面に吸引弁として、設けられている。自動弁25及び手動弁26が少なくとも一つ設けられている構成により、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインに用いられるのに適したものとなり、多品種な鋳物の鋳造に対応することを実現できる。さらに、この下側枠体22では、自動弁25及び手動弁26がそれぞれ複数設けられるように構成してもよく、その場合には、さらに多品種な鋳物の鋳造に対応することを実現できる。尚、ここでは、自動弁25及び手動弁26の両方を設けるものとして減圧造型用鋳枠1の下側枠体22を構成するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、少なくとも自動弁25又は手動弁26のいずれかを設けるように構成すればよい。
【0023】
また、ここで説明した下側枠体22及び上述した上側枠体12には、上鋳枠10及び下鋳枠20が合わさる面である見切り面付近にエアチャンバ18,28が設けられている。そして、このエアチャンバ18,28には、外気が直接金枠とフィルムが接する面に流れ込むので金枠の昇温を抑え、フィルムの溶着を防止することができる。注湯量が非常に大きい場合等であって、それ以上の空冷が必要なときには圧縮空気が吹きかけられる構成とすることができ、金枠とフィルムが接する面を一辺とするエアチャンバ18,28へ圧縮空気を吹き込み空冷することによって金枠の昇温を抑え、フィルムの溶着を防止することができる。また、上側枠体12及び下側枠体22には、反転用のブッシュ19,29や、位置合わせ部材6,7が設けられている。
【0024】
以上のような上鋳枠10及び下鋳枠20からなる減圧造型用鋳枠1を用いて鋳造する場合は、通気孔を備えた模型板の表面に合成樹脂フィルムからなる遮蔽部材を吸引密着し、次に模型板上に上鋳枠10又は下鋳枠20を載置固定し、この鋳枠内に耐熱性粒子状物(砂)を緊密に充填するとともに、この鋳枠の上面を合成樹脂フィルムからなる蓋部材で覆い、ついでこの鋳枠内をフィルタ部材14,24に覆われた内壁面の貫通孔と抜気パイプ13を介して抜気し、耐熱性粒子状物(砂)を均等に負圧固化して鋳型を造型する。その後、模型板を鋳枠から取り外すと、遮蔽部材が鋳型側に保持されるとともに、この遮蔽部材側に造型面が形成される。そして、このように造型した上鋳枠10及び下鋳枠20を上下に対向配置してその造型面にキャビティを形成し、このキャビティ内に溶融金属を注湯して所望の製品を鋳造する。
【0025】
以上のように本発明を適用した減圧造型用鋳枠1は、上側枠体12と、この上側枠体12の一つの側面内壁12aのみを介して通気路11に連通される抜気パイプ13と、フィルタ部材14と、吸引弁として少なくとも自動弁15を備える構成により、構成を簡素化して、この減圧造型用鋳枠自体やこれを用いた減圧鋳型造型鋳造ラインのさらなる低コスト化やさらに多品種への対応を実現できる。すなわち、この減圧造型用鋳枠1は、抜気パイプ13が一つの側面内壁12aのみを介して通気路11に連通されているため、従来の対向する側面内壁に掛け渡される形式に対して、取り付けが容易であり、またメンテナンスも容易である。また、上述したように、上側枠体12と抜気パイプ13との間に熱膨張差が生じても抜気パイプ13の片側が伸び方向にはフリーのため損傷されることがないため、鋳物サイズが大きく注湯の量が多いような場合にも対応でき、損傷防止の効果とともにさらに多品種への対応が可能となる。
【0026】
また、減圧造型用鋳枠1は、抜気パイプ13は、その一端外周にネジ部13aが形成され該ネジ部により上側枠体12に取り付けられるとともに、他端が閉塞部13bとされており、該他端付近で上側枠体12からの支持部17により支持されている点にも特徴を有し、かかる構成により上述したように、構成を簡素化して、低コスト化や多品種への対応を実現できる。
【0027】
さらに、減圧造型用鋳枠1は、支持部17を構成する支持部材17a,17bが、それぞれその一端が上側枠体12の側面内壁のうちいずれか一の側面内壁12b、12dに接合されるとともに、他端が該側面内壁12b,12dに隣接する側面内壁12cに接合された部材により支持されている点にも特徴を有し、かかる構成により上側枠体12と支持部17との間に熱膨張差が生じても支持部材17a,17bの長手方向の伸びに保持部材17c,17dが対向できる構成であることから、支持部17や上側枠体12の損傷を防止するとともに、鋳物サイズが大きく注湯の量が多い場合にも対応でき、上述したように、構成を簡素化して、低コスト化や多品種への対応を実現できる。
【0028】
また、減圧造型用鋳枠1は、上述した上側枠体12の下方側に一体可能とされた下側枠体22と、フィルタ部材24と、吸引弁として自動弁25や手動弁26を備える構成により、下側枠体22用のフィルタ部材24が、下側枠体22の下端部まで形成されている構成により、すなわち、下側枠体に抜気パイプを設けない構成により、構成を簡素化して低コスト化を実現するとともに、重量の重い鋳物に適した構成とすることができ、多品種への対応を実現できる。
【0029】
また、減圧造型用鋳枠1は、吸引弁として自動弁15,25及び手動弁26を備えることで、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインに用いられるのに適したものとなり、多品種な鋳物の鋳造に対応することを実現できる。
【0030】
尚、上述した減圧造型用鋳枠1では、下側枠体22に抜気パイプを設けないように構成したがこれに限られるものではなく、図9に示すように、下側枠体32の通気路31に連通される下側枠体32用の抜気パイプ33を設けるように構成してもよい。この場合、下側枠体用の抜気パイプについても上述した抜気パイプ13と同様に、一つの側面内壁のみに接続される形式とされる。また、この抜気パイプ33を支持する支持部も上述した支持部17と同様に、一又は複数設けられ、それぞれの一端が下側枠体の側面内壁のうちいずれか一の側面内壁に接合されるとともに、他端が該側面内壁に隣接する側面内壁に接合された補助部材により支持される構成とされている。ここで、図9は、上述した図7に対応する部分を示す断面図である。また、図9に示すように、この下側枠体32には、型バラシの際に下側枠体用の抜気パイプ33を保護するための、保護部材40が設けられるように構成してもよい。この保護部材40は、例えば型鋼を組み合わせて桟として形成される。尚、図9に示す減圧造型用鋳枠1’では、下鋳枠30の下側枠体32に抜気パイプ33を設けるためフィルタ部材34が設けられる高さ方向の範囲が狭くなるとともに、下側枠体32に抜気パイプ33とこれを支持する支持部材が設けられたことを除いて図1〜図8で説明した減圧造型用鋳枠1と同様であるので、共通部分の詳細な説明は省略する。
【0031】
かかる下側枠体32を有する減圧造型用鋳枠1’では、枠と抜気パイプ33とに熱膨張差が生じても抜気パイプ33の片側が伸び方向にはフリーのため損傷されることがないため、鋳物サイズが大きく注湯の量が多いような場合にも対応でき、損傷防止の効果とともにさらに多品種への対応が可能となる。また、減圧造型用鋳枠1’は、保護部材により抜気パイプ33の損傷を防止することができる。
【0032】
次に、上述した減圧造型用鋳枠1及び減圧造型用鋳枠1’を用いた半自動減圧鋳型造型鋳造ラインの一例について図10を用いて説明する。図10は、本発明を適用した半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLの概要を示す図である。図10に示すように、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLは、真空ポンプユニット101と、砂供給装置102と、造型装置103と、上下鋳枠配置設備104と、注湯装置105と、バラシ装置114と、砂処理装置106とを有している。
【0033】
ここで、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLとは、造型、注湯、バラシ、製品取り出しの一部を作業者が行なう造型鋳造ラインをいう。真空ポンプユニット101とは、減圧鋳型を造型する際の減圧を確保するための真空ポンプとその周辺装置をいう。この真空ポンプは、造型装置103から防音隔離されている。砂供給装置102とは、上下鋳枠に砂を供給する装置をいう。造型装置103とは、フィルム成形、塗型、枠セット、砂入れ充填及び抜型をなす装置をいう。また、注湯装置105は、取鍋を通常用いる。砂処理装置106とは、砂から鉄片などを除去すると共に砂を冷却する装置である。
【0034】
フィルム成形とは、減圧鋳型造型に用いるフィルムを加熱軟化させて模型表面に密着成形させることをいう。塗型とは、砂型の表面に塗布することで鋳型の表面を改良する材料をいう。枠セットとは、上鋳枠又は下鋳枠を模型箱の上に載せることをいう。ここで、セットされる上鋳枠及び下鋳枠として、上述の上鋳枠10、下鋳枠20,30が対応する。抜型とは、模型から半割の砂を内蔵した(鋳型内蔵の)上鋳枠又は下鋳枠を抜き上げ分離することをいう。
【0035】
造型装置103は、砂供給装置102に連結され、ターンテーブル107上に模型箱108を配置して真空ポンプユニット101に連通させた状態にして模型箱108をフィルム成形、塗型剤塗布、塗型乾燥、枠セット、砂入れ充填、及び抜型の各位置に順次循環移動可能に構成されている。例えば造型装置103において、ターンテーブル107上に配置された模型箱108に配管110およびホース111を介して真空ポンプユニット101に連通させた状態として、この模型箱108をフィルム成形、塗型剤塗布、塗型乾燥、枠セット及び抜型を行う位置Bと、砂入れ充填を行う位置Cとの各位置に順次循環移動可能になっている。
【0036】
また、図10中に示す造型ステーションAは、造型をなす位置であり、例えば造型装置103を備えた造型ステーションAではフィルム成形、塗型、枠セット、砂入れ充填及び抜型の作業が自動的に又は作業者により行われる。また、図10中に示す鋳枠合わせステーションDは、造型ステーションにおいて造型された鋳型内蔵の上下鋳枠を合わせる位置である。さらに、図10中に示す注湯ステーションEは、鋳型内蔵の上下鋳枠に注湯装置によって注湯を行なう位置であり、例えばこの注湯ステーションEに配置され、重ね合わされた上下鋳枠W(上述の上鋳枠10及び下鋳枠20に相当)に、取鍋に保持された溶湯を、取鍋を傾けることによって注湯を行う。また、図10中に示すFは、バラシステーションを示す。
【0037】
次に、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLにおける動作について説明する。この半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLにおいて、真空ポンプユニット101が作動されている。造型装置103では、模型箱108が、模型を取付けた模型板の下部に中空室を画成し、この中空室と模型板表面を細孔により連通された状態とされている。また、模型箱108の中空室と上下鋳枠Wの中空室(上述の通気路11,21,31等)には、配管110及びホース111を介して真空ポンプユニット101が接続され、吸引が行われる。このとき、上述した減圧造型用鋳枠1には、自動弁15,25や手動弁26等の各種吸引弁が設けられていることから、便利であり、多品種の鋳物への対応を可能するとともに低コスト化を可能とする。
【0038】
次に、例えば作業者によりフィルム吸着用の細孔があいた模型に加熱柔化したフィルムがかぶせられる。次に、フィルムを模型に吸着させ、成形を行い(フィルム成形)、フィルムに塗型剤を吹き付ける(塗型)。吸引作用が施された模型上に空の上鋳枠を載せる(枠セット)。
【0039】
そして、砂供給装置102から造型装置103に載置された模型箱108と鋳枠空間に粘結剤を含まない乾燥砂を供給され、振動機によって振動されることで充填される。振動充填後、模型の反対側にシール用のプラスチックフィルムを張る。その後、鋳型内を減圧したあと、模型側の吸引を解除し、抜型を行なう(抜型)。このようにして砂内蔵の下鋳枠を造型し、同様の手順で砂内蔵の上鋳枠を造型する。そして、鋳枠合わせステーションDで、上鋳枠と下鋳枠を鋳枠合わせする。枠合わせをしたのち、クランプ治具によって、上下鋳枠同士を締結する。
【0040】
なお、この半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLでは、フィルム成形、塗型剤塗布、塗型乾燥、枠セット、抜型を行う位置は同じ場所である。すなわち、位置Bにおいて、フィルム成形、塗型剤塗布、塗型乾燥、枠セットを行った後にターンテーブル107を作動させて、模型箱108を位置Cに移動させる。次に、位置Cにおいて、砂入れ充填を行ったのち、ターンテーブル107を作動させて、位置Bに戻して抜型を行う。
【0041】
その後、枠合わせされた上下鋳枠Wは、鋳枠合わせステーションDから注湯ステーションEにかけて配置されている上下鋳枠配置設備104に移動させられる。例えば、その移動方法として、作業者がクレーン113などによって短時間に搬送する。その後、注湯が行なわれ、冷却後、バラシステーションFにあるバラシ装置114に運ばれて、真空を切断することにより容易に、上下鋳枠から鋳物と乾燥砂を分離する。
【0042】
なお、ここでは、砂処理装置106に横型砂冷却装置115を備えているので、注湯により高温になった砂を大量に迅速に冷却することができる。横型は冷却を水冷と空冷を組み合わせて行なうので効率的である。
【0043】
以上のような半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLによれば、砂の充填や型バラシが容易で環境にやさしい鋳物づくりのために、低いイニシャルコストで多品種に対応できるラインを提供できるという利点がある。
【0044】
また、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLは、真空ポンプユニット101が、模型箱及び上下鋳枠の中空室と真空ポンプとを、配管及びホースを介して連通する真空ポンプユニットであって、真空ポンプが、造型装置から防音隔離して設けられている。これにより、真空ポンプの騒音が工場に伝わらないため、作業者の作業環境がよくなる。
【0045】
さらに、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLは、上下鋳枠配置設備が、鋳枠合わせステーションDから注湯ステーションEに配置されていることができる。これにより、鋳枠合わせから注湯まで効率的なラインを構成することができる。枠合わせした上下鋳枠は、作業者がクレーンで短時間に搬送することができるという利点がある。また、上下鋳枠配置設備は、上下鋳枠循環設備とすることができ、鋳枠合わせステーションDから注湯ステーションEを経てバラシステーションFに順次自動循環移動させることもできる。大型の鋳物には上下鋳枠は、循環設備を使用するよりも、クレーンで移動させる方が駆動動力に大きなエネルギを使用しない点で効率的である。
【0046】
さらに、半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLは、砂処理装置が、砂冷却装置を有する。これによりライン内で循環して砂を有効に活用することができる。砂冷却装置は縦型でも横型でもよいが、横型にすると多量の砂及び高温の砂を冷却することができるという利点があり、特に大型の鋳物には横型が好ましい。
【0047】
以上の半自動減圧鋳型造型鋳造ラインLにおいて、上述の減圧造型用鋳枠1を用いることにより、鋳枠による効果とラインによる効果との相乗効果により、低コストで多品種への対応を実現できる。
【符号の説明】
【0048】
1 減圧造型用鋳枠
11 通気路
12 上側枠体
13 抜気パイプ
14 フィルタ部材
15 自動弁
21 通気路
22 下側枠体
24 フィルタ部材
25 自動弁
26 手動弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面が開口され且つ周囲に通気路が形成された枠体と、
該枠体の一つの側面内壁のみを介して、上記通気路に連通される抜気パイプと、
上記枠体の側面内壁に設けられるとともに上記通気路に貫通されて設けられる多数の通気孔を覆うフィルタ部材と、
上記枠体に設けられ、上記通気路に外部の吸引装置を接続するための吸引弁とを備える減圧造型用鋳枠。
【請求項2】
上記抜気パイプは、その一端外周にネジ部が形成され該ネジ部により上記枠体に取り付けられるとともに、他端が閉塞されており、該他端付近で上記枠体からの支持部により支持されていることを特徴とする請求項1記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項3】
上記支持部は、一又は複数設けられ、それぞれの一端が上記枠体の側面内壁のうちいずれか一の側面内壁に接合されるとともに、他端が該側面内壁に隣接する側面内壁に接合された部材により支持されていることを特徴とする請求項2記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項4】
上記吸引弁は、自動弁であることを特徴とする請求項1記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項5】
上記吸引弁は、手動弁であることを特徴とする請求項1記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項6】
上記吸引弁は、複数設けられ、自動弁及び手動弁が少なくとも一つ設けられていることを特徴とする請求項1記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項7】
さらに、上記枠体の下方側に一体可能とされ、上下面が開口され且つ周囲に通気路が形成された下側枠体と、
該下側枠体の側面内壁に設けられるとともに上記下側枠体の通気路に貫通されて設けられる多数の通気孔を覆う下側枠体用のフィルタ部材とを備え、
上記吸引弁は、上記下側枠体にも設けられている請求項1記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項8】
上記下側枠体用のフィルタ部材は、上記下側枠体の下端部まで形成されている請求項7記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項9】
上記下側枠体に設けられ、上記下側枠体の通気路に連通される下側枠体用の抜気パイプを備える請求項7記載の減圧造型用鋳枠。
【請求項10】
上記下側枠体には、型バラシの際に上記下側枠体用の抜気パイプを保護するための、保護部材が設けられている請求項9記載の減圧造型用鋳枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−183442(P2011−183442A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53005(P2010−53005)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】