説明

温室屋根面開閉装置

【課題】プラスチックシートの巻き取り機構によらず屋根面を開閉でき、防虫ネット等の張設を可能にし得る屋根面開閉装置を提供する。
【解決手段】屋根面構成部を内側の屋根面構成部と、外側の屋根面構成部との二重構造とし、内側の屋根面構成部にのみ被覆材2a2bを張設する。被覆材を非開口領域Bと開口領域Aとに区分するとともに、内側の屋根面構成部の下位側に非開口領域を、上位側に開口領域をそれぞれ配置する。両領域の境界部分を第一の支持部材3によって固定的に支持し、開口領域の上位端縁を第二の支持部材4によって屋根面構成部の傾斜方向に沿って移動可能に支持する。開口領域に位置する被覆材の下位端縁を折り返し、断面略S字状の折り返し部21を形成し、この折り返し部の内側に棒状の分銅5を挿入する。第二の支持部材に牽引部材6を設け、この牽引部材を巻き取りおよび巻き戻し可能な回転駆動部7を屋根面の最上部付近に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室の屋根面を開閉する装置に関し、特に、屋根面を構成する被覆材を開閉するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温室の屋根面を開閉する装置に関する従来の技術は、屋根面の一部を構成する天窓の枠体を開閉可能に設け、当該枠体に張設される被覆材を含めた天窓全体を機械的に開閉する構成としたもの(特許文献1参照)、または、屋根面に張設される被覆材を巻き取ることにより屋根面を開放し、被覆材を巻き戻して屋根面を閉塞する構成としたもの(特許文献2および3参照)があった。
【特許文献1】特開2001−327223号公報
【特許文献2】特開平9−294484号公報
【特許文献3】特開2003−304755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術のうち前者は、被覆材としてガラス板を使用する場合のように、巻き取りできないときに採用されていたものであるが、天窓を構成する部分を開放する際には、当該天窓を屋根面に対して有角状に支持しなければならず、ガラス板により被覆される天窓を開閉するためには大きな駆動力を必要とするのみならず、開放状態で停止させるためのクラッチ機構をも必要とするものであった。また、上記天窓を開放するためには、当該天窓が屋根面から大きく突出する状態となるため、天窓開放時において病害虫の侵入を防止するための防虫ネット等を重ねて張設することは困難であった。
【0004】
一方、後者にあっては、上記天窓の開閉装置とは異なり、柔軟なプラスチックシート(塩化ビニルシートやポリオレフィン系のシートなど)を巻き取る構成であるため、天窓を開放状態で支持するためのクラッチ機構を不要とするものであるが、巻き取られたプラスチックシートにシワを発生させたり、また、巻き戻しの際(すなわち閉塞させる際)にプラスチックシートを緊張させるための機構を必要とするものであった。
【0005】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、プラスチックシートの巻き取り機構によらず屋根面を開閉でき、防虫ネット等の張設を可能にし得る屋根面開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、傾斜する屋根面構成部に張設されてなる被覆材を開閉可能にしてなる温室屋根面開閉装置において、上記屋根面構成部を下弦材による内側の屋根面構成部と、上弦材による外側の屋根面構成部とからなる二重の屋根面構成部を形成するとともに、上記内側の屋根面構成部にのみ被覆材を張設してなる温室屋根面開閉装置であって、上記被覆材を非開口領域と開口領域とに区分するとともに、上記非開口領域を上記内側の屋根面構成部の下位側に、上記開口領域を上記非開口領域に連続させつつ上記内側の屋根面構成部の上位側にそれぞれ配置させ、上記開口領域と非開口領域との境界部分を第一の支持部材によって、該開口領域の上位端縁を第二の支持部材によってそれぞれ支持し、上記第一の支持部材を上記内側の屋根面構成部に固定するとともに、上記第二の支持部材を該屋根面構成部の傾斜方向に沿って移動可能に設け、上記開口領域に位置する被覆材の下位端縁付近を上記第一の支持部材を越えて上記非開口領域の被覆材表面に積層させつつ、断面略S字状に折り返してなる折り返し部を形成し、この折り返し部の内側に棒状の分銅を挿入し、上記第二の支持部材を上方へ牽引する牽引部材を該支持部材に連続して設け、この牽引部材を巻き取りおよび巻き戻し可能な回転駆動部を上記屋根面の最上部付近に備えたことを特徴とする温室屋根面開閉装置を要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、開口領域に位置する被覆材の下位端縁付近は、第一の支持部材を越えてさらに下位方向に位置することとなり、第一の支持部材を越えた端縁付近は、断面略S字状に形成された折り返し部に挿入された分銅によって下位方向に付勢されることとなる。従って、第一の支持部材と第二の支持部材との距離が変動することにより、折り返し部分が昇降することとなり、非開口領域の表面において開口領域の被覆材が積層されることとなる。また、上記分銅が錘として機能するため、第二の支持部材を屋根面の傾斜に沿って下位方向に移動するとき、断面略S字状の一辺の長さを拡張させて開口領域の開口を円滑にし、逆に第二の支持部材を上位方向に移動するときも、被覆材の下位端縁を下位方向に緊張することとなり、閉塞時の被覆材を緊張する機能を有することとなる。また、第二の支持部材の移動手段は、牽引部材の巻き取りまたは巻き戻しによるものであり、牽引部材をウインチなどの回転駆動部によって巻回可能にすることにより、被覆材を介して作用する分銅の付勢に抗して第二の支持部材を上位方向に牽引することができる。そして、当該牽引部材には、第二の支持部材に向かって分銅の付勢が、回転駆動部に向かって牽引力が作用することとなり、上記回転駆動部による牽引部材の巻き戻しにより、上記分銅による付勢が勝ることによって、第二の支持部材を下位方向へ移動することができる。この下位方向への移動により、開口領域の被覆材が非開口領域に移動することとなり、当該開口領域を開放することとなる。なお、開口領域の被覆材が内側の屋根面構成部を開放した部分には牽引部材が存在するものの、この牽引部材は紐状体であって、棟方向に適当な間隔で設けられることから、開口に必要十分な開放を実現できるものである。さらに、屋根面構成部が二重に形成されており、かつ、被覆材が内側の屋根面構成部にのみ張設されていることから、被覆材が強風を受けた場合であっても、外側の屋根面構成部が被覆材の吹き上がりを防止できる。つまり、折り返し部の下端および第二の支持部材は固定されていないため、被覆材の表面が風を受けて吹き上がることが考えられるが、その際、外側の屋根面構成部が上昇を抑えることとなり、上記吹き上がりを防止するのである。このことは、被覆材そのものに対する吹き上がりについても同様に防止できるものである。
【0008】
また、本発明は、傾斜する屋根面構成部に張設されてなる被覆材を開閉可能にしてなる温室屋根面開閉装置において、上記屋根面構成部を下弦材による内側の屋根面構成部と、上弦材による外側の屋根面構成部とからなる二重の屋根面構成部を形成するとともに、上記内側の屋根面構成部に被覆材を張設し、上記外側の屋根面構成部に網材を張設してなる温室屋根面開閉装置であって、上記被覆材を非開口領域と開口領域とに区分するとともに、上記非開口領域を上記内側の屋根面構成部の下位側に、上記開口領域を上記非開口領域に連続させつつ上記内側の屋根面構成部の上位側にそれぞれ配置させ、上記開口領域と非開口領域との境界部分を第一の支持部材によって、該開口領域の上位端縁を第二の支持部材によってそれぞれ支持し、上記第一の支持部材を上記内側の屋根面構成部に固定するとともに、上記第二の支持部材を該屋根面構成部の傾斜方向に沿って移動可能に設け、上記開口領域に位置する被覆材の下位端縁付近を上記第一の支持部材を越えて上記非開口領域の被覆材表面に積層させつつ、断面略S字状に折り返してなる折り返し部を形成し、この折り返し部の内側に棒状の分銅を挿入し、上記第二の支持部材を上方へ牽引する牽引部材を該支持部材に連続して設け、この牽引部材を巻き取りおよび巻き戻し可能な回転駆動部を上記屋根面の最上部付近に備えたことを特徴とする温室屋根面開閉装置をも要旨としている。
【0009】
上記構成によれば、内側の屋根面構成部に張設した被覆材は、上述と同様に開口領域の開閉を可能にするものである。これに付加して、外側の屋根面構成部に網材を張設していることから、その網目を所望寸法とした網材を使用することにより、被覆材の開口時における病害虫の侵入防止効果または受粉用昆虫の逃避防止効果を得ることができる。そして、本発明のような構成であれば当該網材が外側の屋根面構成部全体に張設されるため、空気の通過し得る面積の総和が大きくなり、屋根面を開放したことの効果を減退させることがないのである。つまり、例えば被覆材を開口した範囲にのみ網材を設ける場合には、当該開口部を通過できる通気量は、本来の開口部の通気量よりも少ないものとなるのが一般的であり、これは、網材を構成する繊維部分が障害となるためであるが、開口範囲よりも大きな面積に網材を設けることにより、通気量の減少を抑えることができるのである。
【0010】
上記各発明において、開口領域が、屋根面全体のほぼ3分の2に相当する範囲に形成された開口領域とした構成にすることができる。この場合、開口領域を二つ折りにした状態により屋根面全体の3分の1の面積に縮小でき、これを非開口領域の被覆材の表面に積層することにより、屋根面を最大限に利用した開閉装置を構成することができる。
【0011】
なお、上記のような上弦材と下弦材を使用する構成の場合には、前記上弦材と下弦材との間隙を50mm以上100mm以下にしてなることが好ましい。これは、棒状の分銅として、直径32mmの円筒鋼管を使用する場合、前記第二の支持部材の肉厚および被覆材の肉厚を考慮すれば、50mm未満の間隙では、断面略S字状にしてなる折り返し部の形成が困難となり、仮に、形成できたとしても分銅が自在に移動できる程度の間隙を生じさせることができない可能性があるからである。しかも、間隙が100mmを超えるときは、内側の屋根面構成部が突風または強風等によって吹き上げられる際に、被覆材等の移動距離が大きくなるため、この移動によって当該被覆材および支持部材等に作用する負荷が強大となるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被覆材による屋根面の展張は、回転駆動部による牽引部材の巻き取りによって行われ、被覆材を開口する際には、回転駆動部による牽引部材の巻き戻しにより、開口領域の下部における被覆材の折り返し部が、分銅の重量によって屋根面下位方向に移動するため、当該被覆材を二つ折りの状態にして開口領域を開放させることができる。従って、被覆材にシワを発生させることを回避することができるとともに、展張時における緊張機構が不要となるものである。そして、天窓開閉装置のような部分的に大きく突出する構成ではないことから、被覆材の外側に防虫ネット等を張設することが可能となるものである。
【0013】
また、屋根面構成部は内側および外側の二重構造に形成されているため、被覆材の吹き上がりを防止できるうえに、外側の屋根面構成部に防虫ネット等の網材を張設することができるのである。そして、上述のとおり、被覆材を二つ折りにして開口させる際においても、被覆材がプラスチックシートである場合には、その積層された肉厚寸法は極端に大きなものとはならず、上弦材と下弦材との間隙を50mm〜100mmの範囲内とすることにより、被覆材の開閉を可能にするとともに、被覆材の吹き上がり防止効果を確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第一の実施形態にかかる温室全体の骨組み部分を示した図である。この図において示すように、本実施形態の屋根面1は全体としてアーチ状に形成されており、この屋根面1は、下弦材11によって内側の屋根面構成部1aが形成されるとともに、上弦材12によって外側の屋根面構成部1bが形成されている。上記下弦材11および上弦材12は、均等な間隙を有して二重に構成されており、いずれも、母屋(図示せず)とともに表面を格子状に構成している。
【0015】
ここで、上記の内側の屋根面構成部1aは、塩化ビニールまたはポリオレフィン系のプラスチックシート等からなる被覆材2によって被覆されている。この屋根面構成部1aの棟13から軒14または谷15に至る範囲のうち、棟11から約3分の2に相当する部分を開口領域Aとし、残りの3分の1に相当する部分を非開口領域Bとしており、開口領域Aに張設される被覆材2aを非開口領域Bに存在する被覆材2bの表面に移動することによって、開口領域Aを開口可能に構成するものである。
【0016】
開口領域Aの被覆材2aは、その下位端縁が第一の支持部材3によって、上位端縁が第二の支持部材4によって、それぞれ支持されており、下位端縁を支持する支持部材3は、下弦材11に鋲着されて固定的に設けられ、他方、上位端縁を支持する支持部材4は、下弦材11の表面に載置されており、その自重により当該下弦材11の表面上に摺接されるようになっている。従って、当該支持部材4に対し引き上げまたは引き下げ方向の外力が作用することにより、容易に下弦材11の傾斜に沿って移動できるように設けられている。
【0017】
そこで、両支持部材3,4による被覆材2の支持状態の詳細を図2に示している。なお、図2は外側の屋根面構成部1bを省略している。図2(a)に示すように、開口領域Aの被覆材2aは、その下位端縁付近を非開口領域Bの被覆材2bに重ねて配置されている。すなわち、開口領域Aの被覆材2aの下位端縁は支持部材3によって固定的に支持されるものであるが、この支持部材3を境にして被覆材2aを折曲し、支持部材3の表面を乗り越えてさらに下位の範囲に配置し、再び折曲させることにより折り返し部21を構成して、当該被覆材2aを断面略S字状に形成しているのである。このように断面略S字状を形成することにより、開口領域Aの被覆材2aのみを観察すれば、折り返し部21を底部とする有底部材が形成されることとなるのである。そして、図示のように、当該折り返し部21に棒状(円柱形または円筒形の棒状)の分銅5を挿入することにより、上記有底部材の底部が当該分銅5を支持する状態とすることとなるのである。
【0018】
上記のような構成により、開口領域Aの被覆材2aの上位端縁を支持する支持部材4を移動させることにより、固定的な支持部材3との距離が長短変化することとなるところ、この距離の変化に応じて、折り返し部21の位置を変更させるのである。すなわち、両支持部材3,4の距離が短くなるとき、開口領域Aに設けられる被覆材2aは、両支持部材3,4の間を張設すべき面積よりも大きくなり、残余する部分によって下位端縁における断面略S字状部分が形成されるのであるが、このS字状部分の下端に位置する折り返し部21には分銅5が存在し、当該分銅5の重量によって当該折り返し部21を下位方向に引っ張ることとなるのである。そして、分銅5は、開口領域Aの被覆材2aの折り返し部21に挿入されているのみであることから、その位置が固定的なものとなるのではなく、当該引っ張り力に応じて折り返し部21を下方に移動させることとなるのである。これに対し、両支持部材3,4の距離が長くなるときは、開口領域Aの被覆材2aの残余する部分が減少し、折り返し部21は分銅5の重量に抗して上昇することとなるのである。
【0019】
このようにして、上位の被覆材2aの支持部材4を屋根面の傾斜に沿って昇降させることにより、当該被覆材2aにより被覆される範囲が広狭することとなり、この被覆材2aによる被覆面積が狭くなることにより屋根面を開放することができるのである。この開放は、上位の被覆材2aの上位端縁と棟13付近との間に形成されるものである。
【0020】
次に、上位の支持部材4の昇降について詳述すれば、図2(b)に示すように、当該支持部材4は、開口領域Aの被覆材2aの上位端縁を全体的に支持するものであり、この支持部材4は棟方向(図中紙面に垂直方向)に長尺な部材で構成されている。この支持部材4には、被覆材2aの端縁を係止する係止部材41と、下弦材11の表面に摺接しつつ当該下弦材11の傾斜に沿って移動する摺接部42とを備えており、さらに、摺接部42には、牽引部材6を連結するために立設された牽引連結部43を備えている。そして、牽引部材6が上記牽引連結部43にその先端を連結するとともに、他端をウインチ7に連結することにより、ウインチ7の操作によって牽引されるものである。なお、牽引部材6の牽引経路には、棟13の近傍において滑車8が介在されており、牽引される方向が変換されつつ支持部材4とウインチ7との間に牽引部材6を緊張するように構成されている。
【0021】
上記のような構成であることから、上記牽引部材6がウインチ7によって巻き取られることにより、支持部材4を下弦材11に沿って上昇させることができる。このとき、上述のように、被覆材2aの下位端縁には分銅5による下向きの引っ張り力が作用することとなるため、この引っ張り力に抗して巻き取られるのである。そして、当該ウインチ7の回転方向を反転させることにより、牽引部材6の緊張を緩和させることにより、上記分銅5の引っ張り力が支持部材4を下位へ移動させる動力となり、ウインチ7の巻き戻しの程度に応じて支持部材4が下弦材11の傾斜に沿って下降することとなるのである。
【0022】
本実施形態は、上記のような構成であることから、ウインチ7による牽引部材6を最も短くなるまで巻き取った場合には、被覆材2aが開放領域Aの全域を被覆することとなり、この状態において温室の屋根面は閉塞されることとなる(図1参照)。これに対し、図3に示すように、ウインチ7を巻き戻して牽引部材6の緊張を緩和させ、被覆材2aの上位端縁を下降させることにより、この下降した範囲において温室の屋根面を開口させることとなる。このとき、開口領域Aの被覆材2aは全体として下降することとなるが、下位を非開口領域Bの被覆材2bの表面に断面略S字状部分を形成しつつ、二つ折りの状態で当該表面に積層されることとなるのである。
【0023】
このように、開口領域Aの被覆材2aを非開口領域Bの被覆材2bに二つ折り状態で積層させるものであるから、開口領域Aと非開口領域Bとの面積比を2:1とすることにより、屋根面の3分の2に相当する面積の開口領域Aと、3分の1に相当する面積の非開口領域Bとに区分することができ、この3分の2に相当する面積の開口領域Aの被覆材2aを二つ折りすることにより、屋根面全体に対する面積割合を3分の1とすることができるのである。従って、現実の温室屋根面においても約3分の2に相当する開口領域Aを構成させることが可能となる。
【0024】
また、図3において図示したように、被覆材2が張設されている外側には、外側の屋根面構成部1bが存在するため、非開口領域Bにおける被覆材2の積層は、下弦材11と上弦材12の中間において行われることとなる。そして、この両者間の間隙が均一であることから、折り返し部21が移動した場合であっても、被覆材2と両方の屋根面構成部1a,1bとの相対的な位置関係は一定となる。この折り返し部21および上記の第二の支持部材4は、上述のとおり、いずれも固定されているものではないため、被覆材2の表面が強風または突風などを受けることにより不安定となり得るが、当該被覆材2が吹き上がるときは、外側の屋根面構成部1bが障害となり、その吹き上がりが防止されることとなる。この吹き上がりが防止されることにより、固定されていない各部(第二の支持部材4、分銅5など)の位置が結果的に安定することとなる。これと同様に、突風等によって煽られる被覆材2についても、外側の屋根面構成部1bによって上昇が抑制されるため、結果的に被覆材2が煽られることも防止でき、被覆材2および開閉装置全体が安定した状態で設置されることとなるのである。
【0025】
なお、このような吹き上がりを防止するためには、下弦材11による内側の屋根面構成部1aと、上弦材12による屋根面構成部1bとの間隙を50mm〜100mmに維持しつつほぼ同形状に形成することが好ましい。これは、折り返し部21が十分に移動できる程度の間隙を確保するとともに、当該折り返し部21および第二の支持部材4が大きく移動しないためである。例えば、分銅5の重量はその直径によって変化させることが可能であるが、この寸法の下限を32mmとする場合には、50mm程度の間隙が必要となり、また、第二の支持部材4における牽引連結部43の高さ寸法を40mmとする場合においても、50mm以上の間隙が必要となる。また、上記各寸法を大きくしてなる構成とする場合においても、被覆材2の煽りを防止するためには、100mm以下とすることが好ましい。すなわち、被覆材2が煽られることにより、外側の屋根面構成部1bまで上昇するときには、分銅5の重量に抗して上昇することとなるが、大きく上昇するときには、被覆材2に大きな引っ張り応力が作用するため、破断等の原因になり得るからである。
【0026】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態は、図4に示すように、外側の屋根面構成部1bに防虫ネットなどの網材8を張設する構成としたものである。ここで張設される網材8は、開閉する機構を備えず、被覆材2a,2bが張設された屋根面を常に包囲する状態となる。従って、上記構成の開口領域Aの被覆材2aを移動させて内側の屋根面構成部を部分的に開口させるときであっても、その外側には網材8が存在しており、外部からの病害虫の侵入を防止することができるのである。これと同時に、受粉のために昆虫(マルハナバチ等)を温室内で開放した場合の逃避防止効果をも得ることができる。
【0027】
ところで、夏季における温室内の温度は異常に高温となり、この温度調整のためにも屋根面を開口することが望まれるのであるが、上記のような病害虫の侵入および受粉用蜂の逃避を考慮すると、容易に屋根面を開放することができなかったのである。他方、いわゆる天窓による開閉装置を備えた温室においては、天窓の開口部に防虫ネットを張設する構成が考えられるが、空気の流通できる面積の総和が比較的小さなものであるため、当該ネットを構成する各繊維が障害となって所望の流量の空気を通過させることができず、温室内の暖かい空気を十分に放出させることができなかった。これに対し、本実施形態のように、開閉する屋根面1(内側の屋根面)の全体を包囲するように網材8を設ける場合には、外気の流入できる面積が格段に広がることとなり、つまり、網材8を構成する繊維を除く通気可能な部分の全面積が広いため、屋根面1を開口したときの空気の流動を確保することができるのである。
【0028】
以上のとおりであるから、第一の実施形態にあっては、被覆材2を巻き取ることなく容易に屋根面1を開閉できこととなり、第二の実施形態にあっては、上記第一の実施形態に加えて通気可能な状態で防虫ネット等8を張設できることとなる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に示した態様に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることができる。たとえば、温室の屋根面1は、図示のようなアーチ形状に限定されることなく、直線的に傾斜する三角屋根形状であってもよく、屋根面1に展張される被覆材2は、その材質を限定するものではなく、例示した塩化ビニール製またはポリオレフィン系の樹脂製以外のシートを使用することができる。そして、一般的には透明シートを使用するが、着色等が施されるものであってもよい。ただし、断面略S字状を形成するための柔軟性が必要となる。
【0030】
また、支持部材3,4にあっては、たとえば、実公平7−57号公報に示されるような楔式結合具またはこれと同様の原理により結合具によって支持させることができる。この場合、固定的に設けられる下位の支持部材3は、下弦材11に鋲着されるほか、溶接等の方法により固着することができ、他方の支持部材4は、下弦材11に沿った移動を実現する手段として、下弦材11に摺接可能な摺接部42(図(b)参照)を設けるほかに、例えば、図5に示すようなスライダ42を設ける構成とすることも可能である。この種の構成については、当該スライダ42の移動方向を規制する規制レール43を下弦材11に重ねて設け、この規制レール43を挿通できるように、当該スライダ42を断面形状略C字形としたものとすることができる。このような構成にすれば、スライダ42は当該規制レール43に沿って(すなわち下弦材11の傾斜方向に沿って)移動可能となるのである。このとき、図5(b)に示すように、下弦材11を円筒状に構成し、規制レール43の底面を平面状とすることによって、両者11,43は部分的に当接させることができる。つまり、当該下弦材11の上端に沿って規制レール43を重ねて装着する際、規制レール43の底面の一部が円形断面の下弦材11の外周部分上端と接することとなる。この当接位置を規制レール43の底面の中央に合致させ、当該位置においてネジ44などを使用して接合することにより、スライダ42の両端縁が下弦材11に接触することなく規制レール43に沿った摺動を可能にすることとなる。なお、スライダ42の上面には下弦材11の長手方向に対して直交する方向に連続する係止部材41が設けられているが、適当な間隔で規制レール43を設置することにより、当該規制レール43に沿って移動するスライダ43が上記係止部材41を適宜間隔で支持することができるものとなる。
【0031】
上記のほかに、牽引部材6として使用するものについては実施形態の説明中に明記していないが、通常ワイヤを使用することが予想される。これは、長期間の使用に耐えるために金属ワイヤとするものであるが、樹脂製ロープ等であっても十分な耐久性を有するものであれば、この種のロープを使用することができる。さらに、上記実施形態の分銅5は、円柱または円筒の棒状部材を使用するが、その断面形状が円形のみならず多角形であっても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】(a)は開口領域の被覆材下位端縁の構成を示す拡大説明図であり、(b)は上位端縁の構成を示す拡大説明図である。
【図3】開口領域を開口させた状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第二の実施形態を示す説明図である。
【図5】(a)は第二の支持部材の他の実施形態を示す説明図であり、(b)はVB−VB断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 屋根面
1a 内側の屋根面構成部
1b 外側の屋根面構成部
2 被覆材
2a 開口領域の被覆材
2b 非開口領域の被覆材
3 第一の支持部材
4 第二の支持部材
5 分銅
6 牽引部材
7 ウインチ(回転駆動部)
8 網材
11 上弦材
12 下弦材
13 棟
14 軒
15 谷
21 折り返し部
41 係止部材
42 スライダ
43 規制レール
44 ネジ
A 開口領域
B 非開口領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜する屋根面構成部に張設されてなる被覆材を開閉可能にしてなる温室屋根面開閉装置において、上記屋根面構成部を下弦材による内側の屋根面構成部と、上弦材による外側の屋根面構成部とからなる二重の屋根面構成部を形成するとともに、上記内側の屋根面構成部にのみ被覆材を張設してなる温室屋根面開閉装置であって、上記被覆材を非開口領域と開口領域とに区分するとともに、上記非開口領域を上記内側の屋根面構成部の下位側に、上記開口領域を上記非開口領域に連続させつつ上記内側の屋根面構成部の上位側にそれぞれ配置させ、上記開口領域と非開口領域との境界部分を第一の支持部材によって、該開口領域の上位端縁を第二の支持部材によってそれぞれ支持し、上記第一の支持部材を上記内側の屋根面構成部に固定するとともに、上記第二の支持部材を該屋根面構成部の傾斜方向に沿って移動可能に設け、上記開口領域に位置する被覆材の下位端縁付近を上記第一の支持部材を越えて上記非開口領域の被覆材表面に積層させつつ、断面略S字状に折り返してなる折り返し部を形成し、この折り返し部の内側に棒状の分銅を挿入し、上記第二の支持部材を上方へ牽引する牽引部材を該支持部材に連続して設け、この牽引部材を巻き取りおよび巻き戻し可能な回転駆動部を上記屋根面の最上部付近に備えたことを特徴とする温室屋根面開閉装置。
【請求項2】
傾斜する屋根面構成部に張設されてなる被覆材を開閉可能にしてなる温室屋根面開閉装置において、上記屋根面構成部を下弦材による内側の屋根面構成部と、上弦材による外側の屋根面構成部とからなる二重の屋根面構成部を形成するとともに、上記内側の屋根面構成部に被覆材を張設し、上記外側の屋根面構成部に網材を張設してなる温室屋根面開閉装置であって、上記被覆材を非開口領域と開口領域とに区分するとともに、上記非開口領域を上記内側の屋根面構成部の下位側に、上記開口領域を上記非開口領域に連続させつつ上記内側の屋根面構成部の上位側にそれぞれ配置させ、上記開口領域と非開口領域との境界部分を第一の支持部材によって、該開口領域の上位端縁を第二の支持部材によってそれぞれ支持し、上記第一の支持部材を上記内側の屋根面構成部に固定するとともに、上記第二の支持部材を該屋根面構成部の傾斜方向に沿って移動可能に設け、上記開口領域に位置する被覆材の下位端縁付近を上記第一の支持部材を越えて上記非開口領域の被覆材表面に積層させつつ、断面略S字状に折り返してなる折り返し部を形成し、この折り返し部の内側に棒状の分銅を挿入し、上記第二の支持部材を上方へ牽引する牽引部材を該支持部材に連続して設け、この牽引部材を巻き取りおよび巻き戻し可能な回転駆動部を上記屋根面の最上部付近に備えたことを特徴とする温室屋根面開閉装置。
【請求項3】
前記開口領域は、前記内側の屋根面構成部によって形成される屋根面の全面積のほぼ3分の2に相当する範囲に形成された開口領域である請求項1または2に記載の温室屋根面開閉装置。
【請求項4】
前記内側の屋根面構成部と外側の屋根面構成部との間隙を50mm以上100mm以下にしてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の温室屋根面開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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