説明

温室用保温装置

【課題】低コストで、温室内だけでなく、植物の苗木が植えられる土壌も温室内と同様に保温すること。
【解決手段】植物の苗木2が栽培される温室3内の室温を調整できる温室用保温装置1において、冷風もしくは温風を送出する冷温熱源4と、冷温熱源4に接続され、該冷温熱源4から送出される冷風もしくは温風を温室3内に供給するダクト5と、苗木2が植えられている収容容器8を並べて載置させる載置台10と、を備え、ダクト5を、収容容器8よりも下方に位置するように載置台10に配置し、ダクト5に供給される冷風もしくは温風を、該ダクトの内側から収容容器8の方向に向けて放出させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内の室温を調整できる温室用保温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビニールハウスの支持体を覆うビニールに保温材を取り付けてビニールハウスを保温する保温装置が存在する。特許文献1には、ビニールハウスの支持体となるビニール支持体の上に設置される下ビニールと上ビニールとの間に保温用空気マットを介在させたビニールハウスの保温装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−58355号公報(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているビニールハウスの保温装置では、ビニールハウスの上方から室内を温めているため、ビニールハウスの室内全体を均一に温めることができる。しかしながら、植物が植えられる土壌は空気よりも温度上昇率が低いため、当該保温装置では、上記土壌を温室内と同様に保温することが困難である。また、保温用空気マットをビニールハウスの屋根全体を覆うように配置しなければならないため、コストが上昇してしまう。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで、温室内だけでなく、植物の苗木が植えられる土壌も温室内と同様に保温することが可能な温室用保温装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、植物の苗木が栽培される温室内の室温を調整できる温室用保温装置において、冷風もしくは温風を送出する冷温熱源と、冷温熱源に接続され、該冷温熱源から送出される冷風もしくは温風を温室内に供給するダクトと、苗木が植えられている収容容器を並べて載置させる載置台と、を備え、ダクトを、収容容器よりも下方に位置するように載置台に配置し、ダクトに供給される冷風もしくは温風を、該ダクトの内側から収容容器の方向に向けて放出させるものである。
【0007】
また、収容容器を載置台の長手方向に沿って一列または複数列に並べて配置すると共に、ダクトを載置台の下方に長手方向に沿って配置し、該ダクトの長手方向に沿って複数の吹出孔を設け、該吹出孔から冷風もしくは温風を温室内に放出させるのが好ましい。
【0008】
また、ダクトは、冷温熱源に接続される主ダクトと、主ダクトから分岐して延伸する単数もしくは複数の枝ダクトとを有し、枝ダクトに対応するように載置台を配置させ、枝ダクトの内側から載置台に載置される収容容器に向けて冷風もしくは温風を放出させるのが好ましい。
【0009】
また、枝ダクトの先端は閉塞させるのが好ましい。
【0010】
また、載置台は、収容容器が載置される容器載置部と、該容器載置部の下方に設けられ、枝ダクトが載置されるダクト載置部とを有しており、容器載置部には上下方向に開口する開口部が形成されているものとするのが好ましい。
【0011】
また、収容容器が載置された載置台の少なくとも上方および長手側となる両側方を覆うのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、低コストで、温室内だけでなく、植物の苗木が植えられる土壌も温室内と同様に保温することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る保温装置および温室の構成を概略的に説明するための正面断面図である。
【図2】図1中の保温装置および温室の構成を概略的に説明するための平面断面図である。
【図3】図1中の載置台に苗木と枝ダクトが配置された状態を説明するための斜視図である。
【図4】図2中の灌水ホースの構成を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る温室用保温装置1(以下、単に保温装置1という。)について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図1〜図4に示す矢示X方向を「前」、矢示X方向を「後(後ろ)」、このX方向とX方向と水平方向で直交する方向となる矢示Y方向を「左」、矢示Y方向を「右」、このXY平面と直交する方向の矢示Z方向を「上」および矢示Z方向を「下」とそれぞれ規定する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る保温装置1および温室3の構成を概略的に説明するための正面断面図である。図2は、図1中の保温装置1および温室3の構成を概略的に説明するための平面断面図である。図3は、載置台10に苗木2と枝ダクト7が配置された状態を説明するための斜視図である。なお、図2では、枝ダクト7の構成を示すため、載置台10の一部の図示は省略してある。また、図3では、カーテン26の図示は省略してある。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る保温装置1は、例えば、植物の苗木2が並べて配置される温室3内の室温を調整できる保温装置である。図2に示すように、保温装置1は、温室3内に設置されており、冷風もしくは温風を送出する冷温熱源となる冷暖房装置4と、冷暖房装置4に接続され冷風もしくは温風を温室3内に供給するダクト5とを有する。ダクト5は、冷暖房装置4に接続される主ダクト6と、主ダクト6から複数分岐する枝ダクト7とを有する。
【0017】
図1および図2に示すように、苗木2は収容容器の一例である鉢8に植えられて、温室3内に設置される載置台10に、例えば、一列に並べて配置されている。鉢8には、例えば、トマト、桃もしくは梨等の苗木2を植えることが可能である。また、苗木2は、鉢8内に収容された土壌11に植えられる(図1を参照)。この土壌11は、例えば、プラスチックのペレットと鹿沼土等の土との混合物とすることができるが、このような構成に限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、温室3は、例えば、三角屋根12を有するビニールハウスである。三角屋根12の頂部近傍には、左右対称となるように開閉可能な天窓13が設けられている。天窓13は三角屋根12の頂部12aを中心として回動可能に構成されている。この天窓13を上方へ回動させ該天窓13を開状態とすることで、外気を温室3内に取り込むことができる。特に、温室3内の室温が高温の場合、外気を温室3内に取り込んで、温室3内の室温を低温にすることが可能である。なお、本実施の形態では、温室3の屋根を三角形状としているが、ドーム状等の他の形状としても良い。
【0019】
また、温室3の内側には、正面から見て略三角形状を呈する屋根部14aを備えた支持体14が設置され、該支持体14には保温カーテン15が取り付けられている。すなわち、支持体14の外側を保温カーテン15で覆うことが可能となっている。保温カーテン15は、屋根部14aの頂部14bから左右対称となるように支持体14の側部14cを覆うことが可能に設けられている。また、図1に示すように、保温カーテン15は、側部14cの外側に引き下げることが可能であると共に、頂部14bに向かって引き上げることが可能となっている。このため、温室3内の温度に応じて、適宜、保温カーテン15を引き上げたり降ろしたりすることが可能である。なお、保温カーテン15は、例えば、透光性を有する樹脂から形成されている。
【0020】
図2に示すように、冷暖房装置4は温室3内の左斜め後方に配設されている。主ダクト6は、その一端が冷暖房装置4に接続され、温室3内の外周縁に略コ字状の形態で配置されている。枝ダクト7は、主ダクト6のうち温室3内の前後に位置し左右方向に伸びる後方ダクト部6aおよび前方ダクト部6bのそれぞれから分岐している。本実施の形態では、枝ダクト7は、後方ダクト部6aおよび前方ダクト部6bから温室3の前後方向の中央に向かってそれぞれ4本ずつ分岐している。この枝ダクト7は載置台10の長手方向に沿って延伸している。なお、主ダクト6と各枝ダクト7とは連通しているため、冷暖房装置4から主ダクト6に送り込まれた冷風もしくは温風は、主ダクト6を通過して各枝ダクト7に送り込まれる。
【0021】
ダクト5は、塩化ビニル製の樹脂から形成されており、枝ダクト7の先端は閉塞されている。具体的には、図3に示すように、枝ダクト7の先端は紐等で縛ることによって閉塞されている。すなわち、枝ダクト7は細長い袋状の形態を有していることになる。また、前方ダクト部6bの左端部6cも閉塞されている。冷風もしくは温風が送り込まれていない状態ではダクト5は萎んでおり、冷風もしくは温風が送り込まれると、萎んでいるダクト5は膨らむ。また、図2に示すように、枝ダクト7には長手方向に沿って一定の間隔を隔てて吹出孔16が形成されている。このため、主ダクト6に送り込まれた冷風もしくは温風は、吹出孔16を介して枝ダクト7の内部から温室3内に供給される。
【0022】
載置台10は、図2に示すように、縦長の形態を有しており、各枝ダクト7と対応するように、温室3内に合計8個配置されている。図1および図3に示すように、載置台10は、鉢8が載置される容器載置部17と、枝ダクト7が載置されるダクト載置部18を有している。すなわち、容器載置部17が上段に形成されると共に、ダクト載置部18が下段に形成される2段のベンチ式の構造を有している。また、図1に示すように、容器載置部17の上方には、載置台10の天井部分を形成する天井部20が設けられている。載置台10は略円筒状の形態を有する各種フレーム部材21を組み立てることによって形成される。具体的には、図3に示すように、縦長の縦長フレーム21Aを左右一対に2本立て、これら一対の縦長フレーム21Aを前後方向に所定の間隔を隔てて複数配置する。そして、これら一対の縦長フレーム21Aによって容器載置部17およびダクト載置部18を支持させる。
【0023】
図3に示すように、容器載置部17は、前後方向に沿って左右に一対に配置された長手状の長手フレーム21Bの前後の開口端部に短手状の短手フレーム21Cを連結させて四角状の枠22を形成し、その枠22内に長手方向に沿って3本の長手フレーム21Bを架け渡すことによって形成される。このように、容器載置部17は、枠22を3本の長手フレーム21Bで仕切ることによって形成されるため、容器載置部17を上下に貫通するような4つの矩形状の開口部23を有する。ダクト載置部18は、容器載置部17の場合と同様、四角状の枠22を形成し、その枠22内に短手方向に沿って短手フレーム21Cを架け渡すことによって形成される。この短手フレーム21Cは、一対の縦長フレーム21Aの設置位置と対応する位置に架け渡される。なお、ダクト載置部18の下側にもダクト載置部18と同様の形態を有する支持枠24が設けられている。
【0024】
天井部20も、ダクト載置部18と同様の形態を有している(図3において不図示)。具体的には、縦長フレーム21Aの上端部に、長手フレーム21Bと短手フレーム21Cとから形成される四角状の枠22を設置し、その枠22内に短手方向に沿って短手フレーム21Cを架け渡すことによって形成される。また、図1に示すように、各載置台10には、その天面と左右の側面を覆うようにカーテン26が配置されている。カーテン26を配置することにより、載置台10の内部を一定温度に保温することが可能となる。カーテン26は、例えば、透光性を有する樹脂から形成されている。
【0025】
上述したように、枝ダクト7は、載置台10の長手方向に沿ってダクト載置部18上に載置されている。具体的には、図3に示すように、枝ダクト7は、ダクト載置部18と容器載置部17との間の空間に、載置台10の長手方向に沿って配置されている。枝ダクト7がダクト載置部18上に載置された状態では、各吹出孔16は鉢8の直下に位置している。このため、枝ダクト7に導入される冷風もしくは温風は、吹出孔16から吹き出し、開口部23を通過して鉢8の底面に吹き付けられる。このため、温度変化しにくい鉢8内の土壌11を、確実に冷却もしくは温めながら温室3内を保温することが可能となる。枝ダクト7は、例えば、針金等を、膨張時の枝ダクト7の外径と略同一径となるようにリング状に巻いた不図示の保持枠によって載置台10に保持することができる。また、主ダクト6からの冷風もしくは温風が枝ダクト7に導入されなくなると、枝ダクト7内の空気の大部分は温室3内へ放出される。この際、枝ダクト7は萎んだ状態となる。
【0026】
また、各載置台10には温度を計測するための不図示の温度センサが設置されている。そして、各温度センサが設定温度に到達すると冷暖房装置4がオフとなるように構成されている。また、各載置台10に載置されている鉢8のうちから1つの鉢8を基準鉢8として選択し、該基準鉢8に、土壌11の水分を計測するための不図示の水分計を設置する。そして、各水分計が所定の水分を含むようになると冷暖房装置4がオフとなるように構成することも可能である。
【0027】
図4は、灌水ホース30の構成を説明するための斜視図である。
【0028】
図3および図4に示すように、温室3内には各苗木2に水を供給するための灌水ホース30が配設されている。この灌水ホース30によって苗木2の土壌11に水を供給することが可能となる。灌水ホース30は各載置台10に対応して設けられる主ホース31と、主ホース31から各鉢8に向かって分岐する枝ホース32とを有する。灌水ホース30は、灌水が貯留される不図示の灌水タンクに接続されている不図示の本ホースから合計8つ分岐している。図3に示すように、灌水ホース30は載置台10の容器載置部17に巻き付けられながら長手方向に沿って伸びている。このように、灌水ホース30が容器載置部17に巻き付けられることで、該灌水ホース30は載置台10に保持される。なお、図3に示すように、主ホース31の長手方向の先端31aは閉塞している。
【0029】
図4に示すように、枝ホース32の先端にはリング状の形態を有するリング状ホース33が設けられている。このリング状ホース33は鉢8の内周に沿うように土壌11上に配置される。このリング状ホース33は枝ホース32と連通している。また、リング状ホース33の内周側には円周方向に沿って所定の間隔を隔てて複数の噴出孔34が設けられている。このため、枝ホース32からリング状ホース33に導入された水は、リング状ホース33の噴出孔34から土壌11に供給される。なお、主ホース31、枝ホース32およびリング状ホース33は可撓性を有するチューブにより形成されているが、これらを他の材料から形成するようにしても良い。
【0030】
図1に示すように、載置台10の内部における苗木2の上方には、苗木2に薬液を噴霧するための頭上墳管35が設置されている。頭上墳管35には、苗木2と対応するように噴射孔36が設けられている。なお、頭上墳管35から薬液を噴霧するための噴霧用ノズルを噴射孔36と対応する位置に設けるようにしても良い。この頭上噴管35は、不図示の薬液タンクに接続されている不図示の頭上本管から合計8つ分岐している。頭上噴管35は、断面円形状の樹脂製の筒状部材から形成されており、その先端は閉塞されている。
【0031】
頭上噴管35は不図示の頭上本管を介して不図示の加圧ポンプに接続されており、該頭上噴管35内に残留した薬液は、不図示の加圧ポンプの圧力により不図示の薬液タンクに戻すことが可能となっている。すなわち、頭上噴管35内に残留した薬液を加圧ポンプによって吸引し、不図示の薬液タンクに回収させることが可能である。
【0032】
また、頭上噴管35が不図示の頭上本管から分岐した直後の部分には、不図示の電磁弁が設けられている。この電磁弁の開閉を切り替えることにより、各頭上噴管35へ薬液が供給されるか否かが決められる。すなわち、電磁弁が開状態の場合、薬液は不図示の頭上本管から頭上噴管35に供給され、閉状態の場合、薬液は頭上本管から頭上噴管35に供給されない。なお、電磁弁の替わりに、不図示の手動コックを配設するようにしても良いし、電磁弁を設けないようにしても良い。
【0033】
一方、灌水ホース30が、不図示の本ホースから分岐した直後の部分にも、不図示の電磁弁が設けられている。この電磁弁の開閉を切り替えることにより、各灌水ホース30へ水が供給されるか否かが決められる。すなわち、電磁弁が開状態の場合、水は不図示の本ホースから灌水ホース30に供給され、閉状態の場合、水は不図示の本ホースから灌水ホース30に供給されない。なお、電磁弁の替わりに、不図示の手動コックを配設するようにしても良いし、電磁弁を設けないようにしても良い。
【0034】
次に、保温装置1の動作について説明する。
【0035】
まず、温室3内を低温の状態で保温にする場合について説明する。まず、天窓13を開けると共に、保温カーテン15を引き上げて、温室3内に外気を取り込む。このように、温室3内に外気を取り込むことで、温室3内の温度を下げることができる。温室3内に外気を取り入れられたら、天窓13を閉めると共に、保温カーテン15を支持体14の外側にかける。支持体14を保温カーテン15で覆うことにより、支持体14内が保温されやすい状態となる。次に、保温すべき温度を設定し、不図示の冷温風切替ボタンを冷風モードに切り替え、冷暖房装置4をオンにする。すると、冷暖房装置4から主ダクト6の内部に冷風が導入される。導入された冷風は主ダクト6の後方ダクト部6aから前方ダクト部6bまで行き渡り、主ダクト6内の全体に供給される。そして、主ダクト6内に供給された冷風は、主ダクト6から各枝ダクト7内に導入される。冷風は、枝ダクト7の根元部分から先端部に向かって導入される。上述したように、冷風は主ダクト6、枝ダクト7に、順次、供給されていき、その供給に伴って、萎んでいた主ダクト6および枝ダクト7が次第に膨張していく。
【0036】
ダクト5が完全に膨張すると、各吹出孔16から冷風が上方に向かって吹き出し、低温の空気が温室3内全体に行き渡る。このため、温室3内の空気を低温にて保温することが可能となる。また、吹出孔16から吹き出す冷風は、開口部23を通過して鉢8の底面に直接吹き付けられる。すなわち、冷風は、鉢8の底面に吹き付けられてから、温室3内全体に行き渡ることになる。このため、温度変化しにくい鉢8内の土壌11を、確実に低温に保持することが可能となる。そして、不図示の温度センサが設定温度に到達すると、冷暖房装置4がオフとなり、冷風の供給が停止される。なお、温室3内を温めた状態で保温にする場合、温風を供給すること以外は低温で保温する場合の動作と同様である。この場合、天窓13を開けることなく、温風を供給するようにしても良い。
【0037】
次に、水を土壌11に供給する動作の概略について説明する。
【0038】
灌水ホース30を用いて苗木2に水を供給する場合、水の供給が行われる載置台10に対応する不図示の電磁弁を開状態にし、不図示の加圧ポンプを作動させて、不図示の灌水タンクから灌水ホース30に水を圧送する。具体的には、加圧ポンプの圧力により、灌水タンクの水を不図示の本ホースを介して、主ホース31に送り込む。主ホース31に送り込まれた水は、主ホース31から分岐する枝ホース32に送り込まれ、その後、リング状ホース33に導入される。水がリング状ホース33に導入されると、導入された水はリング状ホース33の噴出孔34から土壌11に供給される。
【0039】
次に、頭上墳管35を用いて薬液を苗木2に供給する動作の概略について説明する。
【0040】
頭上噴管35を用いて苗木2に薬液を供給する場合、薬液の供給が行われる載置台10に対応する不図示の電磁弁を開状態にし、不図示の加圧ポンプを作動させて、不図示の薬液タンクから頭上噴管35に薬液を圧送する。具体的には、加圧ポンプの圧力により、薬液タンクの薬液を不図示の頭上本管を介して、頭上噴管35に送り込む。頭上噴管35に送り込まれた薬液は、該頭上噴管35の噴射孔36から苗木2の外側に向かって噴霧される。そして、薬液の供給が終了したら、不図示の加圧ポンプに吸引力が作用し、頭上墳管35に残留した薬液を薬液タンクまで引き戻す。このように、頭上墳管35に残留した薬液は薬液タンクに回収されることになる。このため、薬液を有効活用することが可能となる。
【0041】
以上、説明した保温装置1では、冷風もしくは温風を、ダクト5を介して各鉢8の底面に吹き付けながら温室3内に供給することが可能である。すなわち、鉢8内に収容されている土壌11に向けて冷風もしくは温風を吹き付けることが可能である。このため、温度変化しにくい土壌11を確実に冷却もしくは温めつつ、温室3内を保温することが可能となる。また、ダクト5といった簡易な装置を用いて温室3内を保温しているため、装置の構造が複雑化せず、コストを削減することが可能となる。
【0042】
また、保温装置1では、枝ダクト7に吹出孔16が設けられているため、各鉢8に確実に冷風もしくは温風を供給することが可能である。このため、土壌11をより確実に冷却もしくは温めた状態としつつ、温室3内を保温することが可能となる。また、載置台10を並列的に配置させ、該載置台10に鉢8を並べると共に、載置台10に沿って枝ダクト7をその下方に配置する構成を採用している。このため、簡易な構成で土壌11を冷却もしくは温めつつ、温室3内を保温することが可能となる。
【0043】
また、保温装置1では、枝ダクト7の先端を閉塞しているため、確実に主ダクト6から枝ダクト7に冷風もしくは温風が導入され、確実に吹出孔16から冷風もしくは温風を放出させることが可能となる。
【0044】
また、保温装置1では、容器載置部17には、開口部23が設けられているため、吹出孔16から吹き出した冷風もしくは温風を確実に鉢8の底面に吹き付けることができる。このため、温度変化しにくい鉢8内の土壌11を、確実に冷却もしくは温めることが可能となる。
【0045】
また、保温装置1では、各載置台10はカーテン26によって覆われている。このため、載置台10内の空間を確実に保温することが可能となる。その結果、土壌11をより確実に保温することが可能となる。
【0046】
また、保温装置1では、灌水ホース30を用いて土壌11に水を供給している。したがって、苗木2に水を確実に供給することが可能となる。また、灌水ホース30におけるリング状ホース33は各鉢8毎に設置され、苗木2の外周側から中央に向かって水を噴出させる構成とされているため、土壌11に均一かつ確実に水を供給することが可能となる。
【0047】
また、保温装置1では、頭上墳管35から薬液を噴霧した後、不図示の薬液タンクに薬液を戻しているため、頭上墳管35の内部に薬液が残留するのを防止できる。したがって、頭上墳管35に残留した薬液が固化し、再度、薬液を散布する際に、当該固化した薬液が、その薬液散布の障害となるのを防止できる。したがって、配列された苗木2の外側に均一の量の薬液を供給することが可能となる。また、薬液を薬液タンクに回収しているため、回収した薬液を再度使用することができ、薬液を有効活用することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0049】
上述の実施の形態では、主ダクト6は、温室3内の外周縁に略コ字状の形態で配置されているが、主ダクト6はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、後方ダクト部6aおよび前方ダクト部6bのそれぞれの左右の端部を結ぶような四角枠状の形体としても良い。また、主ダクト6を後方ダクト部6aのみから構成するようにしても良い。
【0050】
また、上述の実施の形態では、枝ダクト7は、後方ダクト部6aおよび前方ダクト部6bから4本ずつ合計8本分岐されているが、枝ダクト7の分岐数は8本に限定されるものではない。また、例えば、後方ダクト部6aと前方ダクト部6bからそれぞれ異なる数の枝ダクト7を分岐させるようにしても良いし、後方ダクト部6aと前方ダクト部6bとを結ぶように枝ダクト7を設けるようにしても良い。また、枝ダクト7を左右方向に伸びるように配設しても良い。
【0051】
また、上述の実施の形態では、鉢8は載置台10に一列に配置されているが、鉢8の載置台10に配置される形態は一列での設置に限定されず、例えば、2列としても良いし、左右にジグザグに波状に配置するようにしても良い。
【0052】
また、上述の実施の形態では、載置台10はフレーム部材21を組み合わせることによって形成されているが、載置台10はフレーム部材によって組み立てられる構成に限定されるものではなく、例えば、容器載置部17等を平板状の板部材で構成したベンチ式の台としても良い。
【0053】
また、上述の実施の形態では、各枝ダクト7に冷風等を供給させるか否かを選択するための弁が設けられていないが、例えば、枝ダクト7が主ダクト6から分岐した直後の部位に電磁弁等を配設して、各枝ダクト7に冷風等を供給させるか否かの選択が可能な構成としても良い。
【0054】
また、上述の実施の形態では、カーテン26の前後の端部にはカーテンが設けられておらず、開放されているが、カーテン26の前後の開放端部にもカーテンを設けるようにしても良い。また、カーテンに代えて、板状の壁を設けても良い。
【0055】
また、上述の実施の形態では、各載置台10に1つずつ不図示の温度センサを設けているが、温度センサの設置はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、温室3内の所定の位置に1つもしくは複数設置するようにしても良い。また、不図示の水分計も各載置台10の基準となる鉢8に設置することに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1…温室用保温装置
2…苗木
3…温室
4…冷暖房装置(冷温熱源)
5…ダクト
6…主ダクト
7…枝ダクト
8…鉢(収容容器)
10…載置台
16…吹出孔
17…容器載置部
18…ダクト載置部
23…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の苗木が栽培される温室内の室温を調整できる温室用保温装置において、
冷風もしくは温風を送出する冷温熱源と、
上記冷温熱源に接続され、該冷温熱源から送出される上記冷風もしくは上記温風を上記温室内に供給するダクトと、
上記苗木が植えられている収容容器を並べて載置させる載置台と、
を備え、
上記ダクトを、上記収容容器よりも下方に位置するように上記載置台に配置し、上記ダクトに供給される上記冷風もしくは上記温風を、該ダクトの内側から上記収容容器の方向に向けて放出させることを特徴とする温室用保温装置。
【請求項2】
請求項1記載の温室用保温装置において、前記収容容器を前記載置台の長手方向に沿って一列または複数列に並べて配置すると共に、前記ダクトを前記載置台の下方に長手方向に沿って配置し、該ダクトの長手方向に沿って複数の吹出孔を設け、該吹出孔から前記冷風もしくは前記温風を前記温室内に放出させることを特徴とする温室用保温装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の温室用保温装置において、前記ダクトは、前記冷温熱源に接続される主ダクトと、上記主ダクトから分岐して延伸する単数もしくは複数の枝ダクトとを有し、上記枝ダクトに対応するように前記載置台を配置させ、前記枝ダクトの内側から前記載置台に載置される前記収容容器に向けて前記冷風もしくは前記温風を放出させることを特徴とする温室用保温装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の温室用保温装置において、前記枝ダクトの先端は閉塞していることを特徴とする温室用保温装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の温室用保温装置において、前記載置台は、前記収容容器が載置される容器載置部と、該容器載置部の下方に設けられ、前記枝ダクトが載置されるダクト載置部とを有しており、上記容器載置部には上下方向に開口する開口部が形成されていることを特徴とする温室用保温装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の温室用保温装置において、前記収容容器が載置された前記載置台の少なくとも上方および長手側となる両側方を覆っていることを特徴とする温室用保温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−161940(P2010−161940A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4639(P2009−4639)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(507297422)ダイヤ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】