説明

温度により相溶状態と分離状態とが可逆変化する溶媒セットにおいて定温度で相溶・分離をおこなう方法ならびに装置

温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせにおいて、一定温度(温度変化させることなし)で相溶・分離をおこなう方法。また、現在分離中の第一・第二溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離温度のデータに基づき、現在分離中の温度より低い温度で相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比になるように第一溶媒および/または第二溶媒を構成する溶媒を添加して定温度で第一・第二溶媒の相溶化、または分離をおこなう方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は化学反応の制御が容易、かつ、化学反応生成物の回収が容易である溶媒システム(溶媒系)およびその使用法を提供し、該溶媒システムを用いた化合物の製造法を示唆し、かかる装置を提供するものである。
溶媒システムは、相対的に低誘電率あるいは低極性の第一溶媒、および相対的に高誘電率あるいは高極性の第二溶媒の組み合わせであるが、これら第一溶媒と第二溶媒それぞれは複数の溶媒の混合溶媒でもよい。もちろん単独の溶媒であってもよい。第一溶媒、第二溶媒の組み合わせを「溶媒の組み合わせ」あるいは、「溶媒システム」あるいは、「溶媒セット」と記載する。ただし、本明細書において、前記「溶媒の組み合わせ」、「溶媒システム(溶媒系)」、「溶媒セット」は同じ意味である。「溶媒」とは「溶質」を溶解して「溶液」となし、かかる溶液中で化学反応を行う液体媒体である。本発明が適用される「化学反応」は広義のそれである。すなわち、生物の体内の反応(生体反応)や光・放射線などによる物理的な反応とも線引きすることはなく、これらを包含する広い意味とする。強いて定義するなら、電子など基本的な物質構成要素のやりとりで説明される物質変換のプロセスすべて、である。
重要なことであるが、本発明は「溶媒」という「化学反応」の場についての新規な技術を提案している。しかしながら、この技術の実態はかかる「溶媒」に反応物質である「溶質」を溶解した「溶液」である。本明細書では、こういった実態への実施態様の説明は省略し、前記の「溶媒」という「化学反応」の場、すなわち溶媒システムおよびその使用法を説明することにとどめる。というのは、化学物質、生体物資などすべての反応対象物質の「溶質」を該化学反応場に溶解してなる利用の実態は千差万別であって包括的説明が困難、かつ、個別説明がなくとも本発明の適用は可能であることは容易に理解できるからである。具体例を求めたいのであれば、特許文献1あるいは特許文献1のさらなる実施態様であるペプチド合成への適用が記載されている特許文献2があるので参照されたい。
【背景技術】
本発明者は、温度により相溶状態と分離状態の状態変化を容易に制御でき、この状態変化の制御により反応の制御および生成物などの分離・精製など広範囲な化学プロセスに採用可能で、かつ、そのプロセスに多大な工業メリットをもたらしうる新規な溶媒セットを提案した(特許文献1参照)。繰り返しになるが、この溶媒セットは化合物製造に関わる化学プロセス、さらに一般の「化学反応」すなわち、生物の体内の反応や物理的な反応と線引きすることはなく広い意味の、電子など基本的な物質構成要素のやりとりで説明されるプロセスにすべて適用されうる。
もちろん、かかるプロセスとは、分子内および分子間反応、分子内および分子間相互作用、電子移動、物質の移動速度の差に基づく分離、分配係数の差に基づく抽出分離、溶媒分画を含む。溶媒セットを用いた化学プロセスのわかりやすい例が、前述の特許文献2記載の液相ペプチド合成である。(特許文献2、非特許文献1参照)
溶媒セットを構成する第一溶媒の具体例はシクロヘキサン、溶媒セットを構成する第二溶媒の具体例はDMI(ジメチルイミダゾリジノン)であるが、その他多くの物質を用いて溶媒セットとなしうる。広範囲な候補物質は、特許文献1および特許文献3に示されている。該候補物質については、特許文献1および特許文献3の繰り返しになるのでここでは説明は省略する。
発明者の提案である従来の溶媒セットは、温度により相溶状態と分離状態の状態変化を容易に制御することがポイントである。本明細書においては、この温度、すなわち相対的低温での分離状態から相対的高温での相溶状態になる温度を、「相溶・分離臨界温度」と定義する。もちろん逆に相対的高温から相溶・分離臨界温度以下になれば分離状態になる。この相溶・分離臨界温度は実験的に決定される。より厳密には相溶・分離臨界温度に統計的・熱力学的(量子力学的)な幅があると推定されるが、それは本明細書では考慮せず、幅のない数値とする。再現性は統計的に確保されるので実用上問題はない。
<相溶・分離臨界温度>
特許文献1によれば、第一の溶媒あるいは第二の溶媒の構成を変えることによって、相溶状態と相分離状態が切り替わる温度(相溶・分離臨界温度)も自在に変えることができる、と記載されている。これを具体的に示すものは、特許文献1と同じものである図1と図2である。図1は、第一の溶媒であるシクロヘキサン(CH)と第二の溶媒であるニトロアルカン混合溶媒(NA)の構成と相溶化温度の変化に関する実験データの図が開示されている。これは、パラメータとしてCHとNAの容積比を1:5、2:5、1:1、5:1とし、それぞれのNAを構成しているニトロメタン(NM)とニトロエタン(NE)の容積混合比を横軸、溶媒温度を縦軸として、両溶媒を混合した際の相溶・分離臨界温度データをプロットしたものである。
また、図2は、第一の溶媒であるシクロヘキサン(CH)と第二の溶媒を1:1の等容積(それぞれ50容積%)と固定して、第二の溶媒を、ニトロメタン(NM)とニトロエタン(NE)の混合溶媒、または、アセトニトリル(AN)とプロピオニトリル(PN)の混合溶媒、またはジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルアセトアミド(DMA)の混合溶媒として、第二の溶媒の容積混合比を横軸、溶媒温度を縦軸として、両溶媒を混合した際の相溶・分離臨界温度データをプロットしたものである。
図1、図2より、20℃から60℃の範囲で相溶・分離臨界温度が、第一・第二の溶媒構成で変化することがわかる。換言すれば、第一の溶媒と第二の溶媒のセットにおいて、第一・第二の溶媒構成を変える手段をもつことによって、両溶媒の相溶・分離臨界温度を変えることができる。つまり相溶化状態での化学反応を温度が低いレベルでも可能になしうる。
<極性または誘電率>
ところで、一般に極性または誘電率については、非特許文献2および非特許文献3に技術基準が記載されている。すなわち、極性(ET(30))の実験的評価は、非特許文献3記載の方法に従って行えばよいし、誘電率の実験的評価は、非特許文献2記載の方法に従って行えばよい。特許文献3に記載されているように、ここで第一溶媒と記載される低極性溶媒の条件をこれらに準拠して表記するなら、誘電率が0から15、または、極性(ET30)が20未満である。同様にここで第二溶媒と記載される高極性溶媒の条件をこれらに準拠して表記するなら、その極性(ET(30))が25以上、または、その誘電率が20以上である。
本発明の溶媒システムは、相対的に低誘電率あるいは低極性の第一溶媒、および相対的に高誘電率あるいは高極性の第二溶媒の組み合わせである。よって、極性または誘電率が、本発明の相溶・分離現象のキーとなる物理量となりうる。温度を変化させることでも極性または誘電率に変化が生じるため、相溶・分離現象が起こると考えている。
関連文献は次のとおりである。
特開2003−62448号公報「相溶性−多相有機溶媒システム」(特許文献1)
特開2003−18298号公報「相溶性−多相有機溶媒システムによりアミノ酸を逐次的に付加する液相ペプチド合成法」(特許文献2)
特願2003−45815号「温度により相溶状態・分離状態が可逆変化する溶媒の組み合わせを用いた化学プロセス方法」(特許文献3)
”A liquid−phase peptide synthesis in cyclohexane−based biphasic thermomorphic systems”,Kazuhiro Chiba,Yusuke Kono,Shokaku Kim,Kohsuke Nishimoto,Yoshikazu Kitano and Masahiro Tada,.Chem.Commun.,2002,(Advance Article),The Royal Society of Chemistry,1766−1767,2002,.(First published on the web 15th July 2002)(非特許文献1)
J.A.Riddick and W.B.Bunger(eds.),Organic Solvents,Vol.II of Techniques of Organic Chemistry,Third Edition,Wiley−Interscience,New York,1970.
C.Reichardt and K.Dimroth,Fortshr.Chem.Forsch.11,1(1968),C.Reichardt,Justus Liebigs Ann.Chem.725,64(1971).(非特許文献2)
本発明が解決しようとする課題は、従来の溶媒セットにおいて、温度に依存することなく相溶状態と分離状態の状態変化を容易に制御することである。化合物を量産する場合には、当然のことながら反応容器の熱容量は大きく、その温度を変化させるのは多大のエネルギーを必要とする。また、温度を一定とした高温容器と低温容器を用意して、反応過程の溶媒セットと被反応物を、それらを往来往復させる構成も可能ではあるが、往来往復のための手段を組み込むことは生産設備のコストアップにつながり、好ましくない。
本発明が解決しようとする課題は、端的には、温度を一定としたままで、相溶状態と分離状態の状態変化を容易に制御することである。この課題の解決を追求することは溶媒セットの相溶・分離変化の本質を探求することに他ならない。つまり、温度変化はこの相溶・分離現象を誘発するひとつの条件にすぎないとの観点から、これを包含する本質的な条件を探求した。
【発明の開示】
本発明は、従来の温度変化による相溶・分離状態変化、を包括する基本概念を提示する。すなわち、本発明の溶媒セットの相溶・分離変化が、必ずしも温度だけによるものではなく、温度を包括する上位の科学的根拠を探求することから発明されたものであって、これを説明する。
前述のように、溶媒システムは、相対的に低誘電率あるいは低極性の第一溶媒、および相対的に高誘電率あるいは高極性の第二溶媒の組み合わせである。具体的に非特許文献2、非特許文献3の定義する物理量においては、第一の溶媒の誘電率が0から15、または第一の溶媒の極性(ET30)が20未満であり、第二の溶媒の誘電率が20以上、または第二の溶媒の極性(ET30)が25以上である。相溶・分離はこの誘電率あるいは極性の変化で発生していると考える。
(本発明の第1の態様)
したがって、温度を変化させなくとも誘電率あるいは極性の変化を誘発すればよい。よって変化誘発物質の添加でもよい。これを溶媒セットを構成する溶媒で実現してもよい。本発明の第1の態様は、分離状態にある第一の溶媒、または第二の溶媒を構成する複数の溶媒のうちの少なくとも一要素溶媒を添加して、かかる添加量が分離状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の誘電率の差または極性の差を相対的に少なくとも10%減少させる添加量であれば相溶化する。つまり、溶媒セットを構成する物質を溶液に追加して分離しているものを相溶化させうる。
さらに添加する物質は溶媒セットを構成する物質ではない「第三の」物質でもかまわない。つまり、その添加物質が第一・第二溶媒の溶質であってもよい。換言すれば、分離状態にある第一の溶媒に溶解する溶質物質、または第二の溶媒に溶解する溶質物質を添加して、かかる添加量が分離状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の誘電率の差または分離状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の極性の差を相対的に少なくとも10%減少させる添加量であれば相溶化する。
(本発明の第2の態様)
相溶状態にあるものを分離するには逆に誘電率の差または極性の差を相対的に少なくとも10%増加させる添加量であればよい。この説明は単なる置換、繰り返しになるので省略する。
さて、上記に提示した第一・第二溶媒の誘電率の差または極性の差を相対変化をリアルタイムで検知する(リアルタイム・モニタリングする)ことは現時点では困難である。とはいえ、第一・第二溶媒の誘電率の差または極性が結果的に10%変化する添加量がより明確に示すことができないと利用できない。そこで、より実用的な方法と装置を以下に説明する。その方法と装置は従来のデータである図1、図2データを用いる。
図1、および図2を模式的に示したものが、図3である。図3は、温度により相溶状態・分離状態を可逆変化する溶媒の組み合わせにおいて、温度を変化させることによる相溶・分離することの概念図を示している。分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態点であるX点とX点の温度を上げて相溶状態となした第一・第二溶媒の組み合わせの状態点であるY点を温度変化により行き来する。図3の横軸である第二溶媒組成やパラメータである第一・第二溶媒比は、従来は化学反応プロセス中に変更するというアイデアはなかった。つまり、溶媒セットの設計においてパラメータである第一・第二溶媒比および第二溶媒組成を設定し、これを固定した上で相溶・分離は温度で制御して化学反応プロセスを進行させていた。
一方、本発明の状態変化を図4に示す。分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態点であるX点とX点の溶媒組成・混合比を変えて相溶状態となした第一・第二溶媒の組み合わせの状態点であるZ点を行き来する。図の横軸の第二溶媒組成を化学反応プロセス中に変える。このことで、相溶状態・分離状態の状態変化を制御する。図4の左右矢印が、溶媒セットの状態変化を示す。これは従来概念(図3)からは容易に想起されえない新規な概念である。ここで、前述の誘電率または極性との関連性は次のとおりである。すなわち、この横軸の第二溶媒の組成変化または第一・第二溶媒比の変化が温度変化と同様に、第一・第二溶媒の誘電率の差または極性の差を変化させる、ということである。
溶媒の誘電率または極性をリアルタイムで捕らえる(リアルタイム・モニタリングする)ことは、現時点では困難である、と前に述べた。先願の特許では、このリアルタイム・モニタリングを間接的に温度で行っていた、と解釈できる。同様に図4の概念が、新規な誘電率または極性のリアルタイム・モニタリングの方法を与える。すなわち、先願特許の温度を、溶媒組成・混合比に置換した、ということである。
仮に、溶媒の誘電率または極性をリアルタイムで捕らえる(リアルタイム・モニタリングする)ことが可能になれば、きわめて適切な相溶・分離のコントロールも実現可能になる。 誘電率または極性を制御量として測定し、その計測値から相溶・分離の状態を制御対象としてクローズドループで制御する装置も構成できる。しかし現在はオープンループである。
先願の発明である温度変化は、相溶・分離現象を誘発するひとつの条件にすぎない。これを包含する本質的な条件は、溶媒の誘電率または極性の変化であって、これが温度を包括するかたちで相溶・分離現象を説明するものと考えている。オープンループではあるが、第二溶媒の組成変化または第一・第二溶媒比の変化でも該現象は誘発される。これが本発明の第3の態様以降の方法と装置の発明である。
図5は、本発明と従来の発明とを組み合わせた方法の概念図である。すなわち温度も変化、かつ、溶媒組成・混合比も変化、という方法である。分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態出発点V1点から温度および溶媒組成・混合比を変えて相溶状態となした第一・第二溶媒の組み合わせ状態点W1点へ移動、相溶状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態出発点V2点へ移動、温度および溶媒組成・混合比を変えて分離状態となした第一・第二溶媒の組み合わせ状態点W2点へ移動し相溶・分離を繰り返す。
これは、先願特許の加熱・冷却手段を有する装置(特願2002−198242等)において実現してもよいが、添加する溶媒等物質の温度を相対的に高温または低温にしたほうが装置は簡素で実用的である。つまり溶媒組成・混合比を変化させるための添加物質で温度も変化させる、ということである。
添加する溶媒等物質を高熱エネルギーのガス状にする、または低熱エネルギーの凝結固体(氷)にする、としてもよい。ここで溶媒等物質と表現しているのは、図5の方法で添加するものが溶媒セットを構成する物質ではない「第三の」物質でもかまわないからである。つまり、その添加物質が第一・第二溶媒の溶質であればよく、さらにその「第三の」添加物質が、ガス状または凝結固体(氷)でもよい。
<コンビケムにおける発明が解決しようとする課題>
ここで、本発明が解決しようとする課題を補足する。いわゆるコンビケム、コンビナトリアル化学で用いられる自動分注合成装置における課題である。図6は、コンビナトリアル自動合成に用いられる自動分注器の作用動作の説明図である。図7は図6の分注器でA液とB液の2液を混合して昇温する動作を示すタイムチャートである。
ここで従来の方法、すなわち溶媒セットを温度上昇(容器の昇温)で分離状態から相溶化することでコンビナトリアル化学合成をする、とする。図8が、A液とB液の2液を混合して昇温する動作を示す分注器タイムチャートである。A液とB液の2液を混合して昇温する動作を示す分注器タイムチャートにおいて、たとえばmix1(1番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間)とmix2(2番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間)とが異なることがわかる。つまり、複数の容器を保持した装置を一気に昇温するため、このような時間差が生じてしまう。
この時間差は問題である。すなわち、コンビナトリアル自動合成の主反応前の反応前準備時間であるmix1とmix2が異なるということは、個々の容器の反応条件が不統一であるので不適切である。つまり、混合から容器昇温開始するまでに要する時間mixnが容器ごとにばらつくことは不適切である。混合後から容器昇温「完了」するまでに要する時間MIXnでも同様である(図9)。図9は、A液とB液の2液を混合して昇温する動作を示す分注器タイムチャートにおいて、たとえばMIX1(1番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温完了するまでに要する時間)とMIX2(2番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温完了するまでに要する時間)とが異なるという問題があることを示している。もちろん容器個別温度制御手段を配備すればよいがコストが膨大となる。反応容器は100個のオーダであるので実用的ではない。
本発明では、図8及び図9の問題は発生しない。これを説明する図が図10である。本発明では図10のタイムチャートに示すごとく、分注器でA液とB液の2液を混合した後、C液(物質C)の添加で相溶化する。したがって、この添加時刻でそれぞれの容器溶媒が相溶化して反応が始まるので反応前準備時間であるABn、BCnを一定にコントロールできる。
(本発明の第3及び4の態様)
本発明の第3及び4の態様は、本発明は温度を変えないで、つまり図4の水平矢印のように温度一定条件下で、第二溶媒の構成要素の混合率、および/または、第一・第二溶媒の混合比(グラフパラメータ)の変更で相溶化、および、その逆の分離を行う方法である。つまり図4の斜線あり、のゾーンの分離状態点から、斜線なし、のゾーンの相溶状態点に移動する相溶化、およびその逆の分離を、該当する溶媒添加で行う方法である。
すなわち、本発明の第3の態様は、臨界温度TA(critical Temperature of A−point on the data graph)で相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(A)および第二の溶媒の組成混合比rAと、TAよりも低温である臨界温度TB(critical Temperature of B−point on the data graph)で相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比r12(B)および第二の溶媒の組成混合比rBとを比較して、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(A)および第二の溶媒の組成混合比rAが、TAよりも低温であるTBで相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比となるように第一溶媒および/または第二溶媒を構成する溶媒を添加して、TA未満かつTBより高温の定温度で分離状態にあるTAで相溶・分離する第一・第二溶媒を、TA未満かつTBより高温の定温度で相溶化する方法、である。
上記クレームは図4グラフのすべての斜線あり・なし状態点2点での水平移動に適用される。さらに注意すべきことは、図4のような水平移動である必要はない、ということである。つまり図4の斜線あり・なしを分割する臨界温度ラインを横切りさえすれば、斜行移動でもかまわない。
本発明の第4の態様は、第3の態様とは逆に図4の斜線なしゾーン(相溶状態点)から斜線ありゾーン(分離状態点)に移動する分離の方法である。これは本発明の第3の態様の記載を変更したものにすぎないので説明は省略する。
さて次に、図4の任意の状態出発点が与えられ、その出発点から任意に移動するとき「実用的な移動」はどうか、を考える。図1及び図2と見比べてみればわかるように水平移動することは、横軸の第二溶媒組成混合比の変更とともに、第一・第二溶媒混合比(グラフパラメータ)も変更しなければならない。これは面倒である。したがって後者の第一・第二溶媒の混合比(グラフパラメータ)は一定にしたままで、第二溶媒の構成要素の混合率のみを変更したほうが添加量の計算が簡単である。図12の矢印がこれを示している。図中T0は、TA未満かつTBより高温の任意の定温度を示す。
図12の矢印は、一見すると「温度一定」の条件を無視していると誤解しやすいが、そうではない。すなわち、図12と図4とはグラフ上の有効点(valid points)が異なり、かつ、縦軸温度の取り扱いが異なる。前者については、第一・第二溶媒の混合比(グラフパラメータ)は一定にしたまま、という条件のみがグラフ上の有効点(valid points)であるということである。
後者については、図4ではすべての温度を有効としているのに対し、図12では温度はパラメータであり、ひとつの温度条件しか有効でない。(以降図13その他についても同様である。特に縦軸温度は点線の温度TA未満かつ温度TBより高温の「ひとつの定温度」しか意味をもたない。縦軸温度すべてに意味を持つ図3、図4、図5と混同してはならない。)
図12の斜行移動において添加量の計算を試みる。すなわち、第一・第二溶媒の混合比(グラフパラメータ)は一定、つまり、r12(A)=r12(B)の条件下で第一溶媒の添加量deltaQ1、第二溶媒の添加量deltaQ2を求める。
ここで、ふたつの新たな量を追加定義する。ひとつは第二溶媒組成混合比を最大限変化させて得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeの温度データ、もうひとつは、設定されるTAとTBの温度差である余裕温度deltaTである。これらTrange、deltaTを定義する。前者Trangeは、本質的に第一・第二溶媒の相溶・分離臨界温度に関する情報量である。つまり、図4その他の横軸である第2溶媒組成を、フルレンジ(一方溶媒0%から100%)で変化させたときの相溶・分離臨界温度の変化幅である。これは、注目している溶媒セットの相溶・分離特性のひとつの代表量といえる。
変量Trangeではない別の量を導入してもよい。相溶・分離臨界温度の第2溶媒組成依存にリニアリティ(直線性)があるので、たとえば、図4などのグラフの勾配である「第2溶媒組成変化に対する相溶・分離臨界温度変化率」でもよい。
変量Trange、あるいは上記の変化率は、本発明の第3及び4の態様における記載の「第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて」のデータを意味するものである。
もうひとつの新たな定義量である余裕温度deltaTは設定値である。厳密ではないが、この値は図4でいえば、A点から垂直上方にたてた垂線と注目している溶媒セットの相溶・分離臨界温度ラインの交点およびB点から垂直下方に下ろした垂線と相溶・分離臨界温度ラインの交点のそれぞれ縦軸温度の差の程度の値である。
余裕温度deltaTは同様に、図12でいえば、A点とB点の縦軸温度の差である。この設定値の意味するところは、本件を任意の化学反応に応用する際、予想される不可避の反応系の温度変化に対応する安全余裕である。厳密に温度一定条件を実用反応系につくるのは環境温度などの影響で困難である。余裕温度deltaTはその温度変動分を見越して設定される。したがって、実施する対象プロセス、現場の条件、などを踏まえて決定すべきものである。
点Aは、TA未満かつTBより高温の定温度で相溶状態にあり、点Bは、TA未満かつTBより高温の定温度で分離状態にある。ここで出発点を点Aとし、点Aから点Bへの移行、すなわち一定温度(TA未満かつTBより高温の定温度)条件下で相溶状態からの分離を考える。
(本発明の第5の態様)
まずTrangeのデータと設定されたdeltaTとから、図12をみれば明らかに、出発点である点Aに対する到達点、点Bを決めることができる。図12からTrange:1=deltaT:(rB−rA)の比例関係が成立する。これからただちに下記の「式1」がえられる。ここで、Trangeを用いるのではなく、直線の勾配である「第二溶媒組成変化に対する相溶・分離臨界温度変化率」でも、同様の関係式を得て、これよりrBを求めてもよい。

さて、rBが求められたので、出発点A点の溶媒の条件:第二溶媒の量Q2(A)、r12(A)、rAとから第一溶媒の添加量deltaQ1、第二溶媒の添加量deltaQ2を求める式を導出する。
(本発明の第6の態様)
当然ではあるが、第二溶媒の組成混合比をrAからをrBに変化するにあたって、第二溶媒を構成する「ふたつの第二溶媒の両方を添加する」ことは無駄である。つまり、第二溶媒の組成溶媒の一方は点Aから点Bの状態変化の前後において添加量ゼロで量は変化しない。
このことから、(1−rA)*Q2(A)=(1−rB)*Q2(B)である。ここで、他方の第二溶媒の組成溶媒の添加(増加)量は、rB*Q2(B)−rA*Q2(A)である。これらの式から、第二溶媒の添加量deltaQ2の下記「式2」がえられる。r12(A)=r12(B)の条件があるのでこれをr12と記して(r12(A)=r12(B)=r12)、第一溶媒の添加量deltaQ1の下記「式3」がえられる。


(本発明の第7の態様)
逆に出発点が点Bで、そこから点Aへの移行を考える。すなわち相溶状態からの分離である。この方法をロジカルに記載したものが本発明の第7の態様である。点BはTA未満かつTBより高温の定温度で分離状態にあり、点Aは、TA未満かつTBより高温の定温度で相溶状態にある。まずrAについては、「式1」を下記「式4」より求められる。

(本発明の第8の態様)
点A→点Bの場合と同様、ふたつの第二溶媒の両溶媒の添加は無駄であるので、点A→点Bの場合とは逆に、「他方の」第二溶媒の組成溶媒の添加はしない。すなわち、rA*Q2(A)=rB*Q2(B)。ここで一方の第二溶媒の組成溶媒の添加(増加)量は、(1−rA)*Q2(A)−(1−rB)*Q2(B)である。これらの式から、第二溶媒の添加量deltaQ2の下記「式5」がえられる。r12(A)=r12(B)の条件下であるのでこの比をr12と代表記載して(r12(A)=r12(B)=r12)、第一溶媒の添加量deltaQ1の下記「式6」がえられる。

ここまでは、第一・第二溶媒の混合比(グラフパラメータ)は一定、つまり、r12(A)=r12(B)の条件下で添加量計算を簡単化した。さて、r12(A)=r12(B)の条件とは別の条件を考える。すなわち、TCで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rCと、Tdで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rdとが等しい(rC=rd=r)という条件である。これを図示したものが図13であり、図中の垂直矢印がrC=rd(=r)とした移動を示す。図中T0は、TC未満かつTdより高温の任意の定温度を示す。
ここで、関数fを定義する。第一・第二溶媒の混合比(r12(C)、r12(d)など)から相溶・分離臨界温度Tを出す関数をf(r12)とする。また、f(r12)の逆関数も定義する。すなわち相溶・分離臨界温度Tから第一・第二溶媒の混合比r12を出す関数をf−1(T)とする。図15に関数f(r12)と関数fの逆関数f−1(T)の説明図を示す。
この関数、逆関数は図1及び図2のような組成混合比r12に対する相溶・分離臨界温度Tのデータがあればソフトウェアとしてインプリメントできる。たとえばコンピュータ装置において組成混合比r12と相溶・分離臨界温度のデータを記憶したデータベースを構築して、一方のデータから他方を直接参照、あるいはデータから内挿外挿するソフトウェアを組めばよい。簡単な方法としては相溶・分離臨界温度のN+1個の測定値によるN次の回帰式を該関数としてもよい。
(本発明の第9の態様)
本発明の第9の態様及び第11の態様は、その前の態様との統一性のためA、Bで記載しているが、ここでは簡単のためにC,dに置換して記載する(A→C、B→dと置換)ので、式7、式8、式9、式10においても、A→C、B→dと置換したそれぞれ式7’、式8’、式9’、式10’で説明する。しかし、これら式7’、式8’、式9’、式10’については、式7、式8、式9、式10をA→C、B→dと置換しただけなので記載は省略する。(式7’、式8’、式9’、式10’はそれぞれ式7、式8、式9、式10を該置換を施しただけなので逐次記載しない)

さて、TCで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rCと、Tdで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rdとを等しく設定し(rC=rd)、かつ、かかる溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、r12から相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度からr12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)を定義した。
相溶状態であるC点から分離状態であるd点に移行させるとき、設定されたTCとTdの温度差である余裕温度deltaTと、TCで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(C)とから、Tdで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(d)を式7’から求められる。これは図15から明らかである。
(本発明の第10の態様)
相溶状態C点からd点へ移行し分離するときは、第二の溶媒の量を相対的に増加させなければならない。したがって、第一溶媒の量は変えない。このことから、r12(C)Q2(C)=r12(d)Q2(d)。この関係式で第二溶媒の添加量deltaQ2=Q2(d)−Q2(C)を書き換えて式8’がえられる。r12(d)は式7’からえられるので、式8’において第二溶媒の添加量deltaQ2が求まる。当然第一溶媒の添加量deltaQ1はゼロである。
(本発明の第11の態様)
逆に分離状態であるd点から相溶状態であるC点に移行させるとき、式7’を書き換えた式9’でC点の第一・第二溶媒の混合比r12(C)が求められる。
(本発明の第12の態様)
分離状態から相溶化させるときは、第一の溶媒の量を相対的に増加させなければならない。したがって、第二溶媒の量は変えない。このことから、Q2(C)=Q2(d)。この関係式で第二溶媒の添加量deltaQ2=r12(d)Q2(d)−r12(C)Q2(C)を書き換えて式10’がえられる。第二溶媒添加量deltaQ2は当然ゼロである。
<計算例>
第一・第二溶媒の混合比r12を第一/第二溶媒=1/10で一定として、相溶状態のA点から分離状態のB点に移行することを考える。rAは、4/10であった。与えられた任意のTrangeとdeltaTとから、式1よりrBが5/10と計算されたとする。出発点A点の第二溶媒量は10mlであった。このとき一方の第二溶媒構成溶媒は4ml、他方が6mlである。この場合、一方の第二溶媒(4ml)を増量するのは明らかである。
第一溶媒の添加量deltaQ1は式2より、(1/10)((5/10)−(4/10))/(1−(5/10))10=0.2ml、一方の第二溶媒の添加量deltaQ2は式3より、((5/10)−(4/10))/(1−(5/10))10=2.0mlである。
<第一溶媒の添加省略>
図14Aは、低極性の第一溶媒代表例シクロヘキサンの混合比をパラメータとした第二の溶媒の組成混合比(横軸)に対する相溶・分離臨界温度(縦軸)データグラフである。ここで、シクロヘキサンの混合比が多い場合(たとえば1:20以上)ではパラメータ)を変化してもデータグラフのシフトは少ない(グラフが密である)。このような混合比の場合は第一溶媒の添加量deltaQ1を無視して添加しなくとも大きな問題は生じない。これを具体例で示したものが図14Bである。
図14Bは、第一・第二溶媒の混合比r12=100(第一/第二溶媒=100)、第一溶媒が1000ml、第二溶媒が10ml、かつ、前例同様に一方の第二溶媒構成溶媒は4ml、他方が6mlでrAが4/10である出発点Aから、rBが5/10である到達点Bへ移行するケースである。ここで、一方の第二溶媒の添加量deltaQ2は式3より、前例同様に2.0mlである。一方、第一溶媒の添加量deltaQ1は式2より、(1/10)((5/10)−(4/10))/(1−(5/10))1000=20mlである。
ここで、第一溶媒の必要添加量deltaQ1=200mlを省略してゼロmlとしたとしよう。すると、図14Bの点B’に移行する。このとき点B’のパラメータ:第一・第二溶媒の混合比r12は、第一溶媒1000ml、第二溶媒12mlであるので1000/12=83.3である。定性的に、混合比r12=100(第一/第二溶媒=100)と混合比r12=83.3(第一/第二溶媒=83.3)のグラフのシフトは少なく縦軸温度の差も小さい。
余裕温度deltaTと相溶・分離臨界温度(縦軸)データ(図14B)とを比較してチェックが必要であるが、おおむねr12=100とr12=83.3との差で生じる相溶・分離臨界温度の差は、余裕温度deltaTに対して小さな温度差である、とみなせる。よって第一溶媒の添加量deltaQ1を無視して添加しなくとも大きな問題は生じない。
第一溶媒の添加量を省略した場合の第一・第二溶媒の混合比r12は、rBとrAから計算できる。それは、r12(1−rB)/(1−rA)である。前例を当てはめると、100(1−(5/10))/(1−(4/10))=83.3である。
(本発明の第13の態様)
次に、アルキルカーボネートに代表されるわずかの量で相溶・分離臨界温度を顕著に変化させる物質の利用法(請求項13)について説明する。図11は、第二溶媒としてDMI(ジメチルイミダゾリジノン)とカーボネートの混合物を用いた場合の相溶・分離臨界温度データグラフである。このグラフの横軸はカーボネートの組成量を相対的に減らす方向で、かつ、この横軸スケールは拡大されているのでグラフの勾配は図1図2などと比べてきわめて急峻である。これは相溶状態の溶媒セットにカーボネートを少し添加するだけで分離しやすいということを示唆している。
図11のような特性をもつカーボネートのような物質は、相溶状態にある溶媒セットに作用して第一・第二の溶媒の誘電率の差または極性の差を顕著に増大させるものと考えられる。この物質については、温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と単独または複数の溶媒の混合で構成される第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と単独または複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒との相溶化プロセスを少なくとも一回は行ったあとの分離操作で利用する。
該相溶化プロセスの後の分離について、該相溶化プロセスの相溶化液に第一および第二溶媒以外の物質を添加して温度を変化せずに分離する方法として、添加物質として、単独または複数の溶媒の混合で構成される第二溶媒に添加物質を加えた混合液と第一溶媒の組み合わせにおいて、第二の溶媒に対して添加物質を体積混合率で10%加えることで相溶・分離臨界温度が少なくとも10度変化する物質を加えて定温度で分離する方法である。
(本発明の第14の態様)
繰り返しになるが、請求項13の添加物質の例はカーボネートであって、特に図11で例示されたアルキルカーボネートが好適である。また一般に請求項13の添加物質を添加した溶液の誘電率が20以上、または極性(ET30)が25以上である固体を用いるのが好適である。
以上説明においては、第二溶媒が2つの溶媒からなる2溶媒混合である場合で説明したが、第二溶媒が3つ以上の溶媒からなる場合も同様である。第二溶媒を構成する3つ以上の溶媒のうちの2つの溶媒に注目し、その他の第二溶媒を構成する溶媒の混入量を固定しておけばよいからである。具体的には、注目する2つの溶媒の組成混合比を横軸とした相溶・分離臨界温度のデータを用いればよく、そのデータは、他の第二溶媒を構成する溶媒の混入量を固定しておく。
したがって、3つ以上の溶媒の数をNとし、そのうちの2つの溶媒に注目した数、すなわちNから2をとる組み合わせの数()だけの相溶・分離臨界温度のデータを採取し、それらの中で最適な組み合わせを選んで、その溶媒について本発明の相溶分離のための操作を行えばよい。もちろん、その他の第二溶媒を構成する溶媒の混入量も変数であるので組み合わせの数は多くなる。溶媒コストなどの評価関数を設定し、この評価関数の極値をもとめる最適化アルゴリズムで計算して添加アクションを決定するのが望ましい。
(本発明の第15〜18の態様)
次に、本発明方法を実施する装置を説明する。図16が本発明の装置で特に計算ブロックの説明図(A→B:r12一定)、図17が本発明の装置で特に計算ブロックの説明図(A←B:r12一定)、図18が本発明の装置で特に計算ブロックの説明図(C→d:r一定)、図19が本発明の装置で特に計算ブロックの説明図(C←d:r一定)である。
本発明の第15の態様は、本発明の第1、3及び4の態様の方法の発明を実施するための装置の発明であって、これを説明する図が図16である。本発明の第16の態様は、本発明の第2、5及び6の態様の方法の発明を実施するための装置の発明であって、これを説明する図が図17である。本発明の第17の態様は、本発明の第1、7及び8の態様の方法の発明を実施するための装置の発明であって、これを説明する図が図18である。本発明の第18の態様は、本発明の第2、9,10の方法の発明を実施するための装置の発明であって、これを説明する図が図19である。
図16から図19で、1が式1または式11の演算手段を有する演算ブロック、2が式2または式12の演算手段を有する演算ブロック、3が式3または式13の演算手段を有する演算ブロック、4が式4または式14の演算手段を有する演算ブロック、5が式5または式15の演算手段を有する演算ブロック、6が式6または式16の演算手段を有する演算ブロック、7が式7、式7’または式17の演算手段を有する演算ブロック、8が式8、式8’または式18の演算手段を有する演算ブロック、9が式9、式9’または式19の演算手段を有する演算ブロック、10が式10、式10’または式20の演算手段を有する演算ブロックである。
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせにおいて、一定温度で温度変化させることなしで相溶・分離をおこなうことを実現した。量産プロセスの反応容器熱容量は大きく、その温度を変化させるのは多大のエネルギーを必要とするが、本発明によってそのエネルギーが不要となり大きな省エネ効果がある。また、コンビナトリアルケミストリーの自動合成で多数の類似反応を実行させるときに統一すべき反応前時間条件を一定化しやすい、という効果もある。
本発明の第15の態様は、温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、分離状態にある
相溶・分離する臨界温度がTAで、第一・第二溶媒混合比がr12で、第二の溶媒量がQ2(A)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrAである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第一・第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTAよりも低いTBで、第一・第二溶媒混合比が前記同一のr12である第一・第二溶媒の組み合わせの第二の溶媒の組成混合比rBとなすことで分離状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを相溶化する装置であって、rAおよびQ2(A)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第一・第二溶媒混合比がr12である第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第二溶媒組成混合比を最大限変化させて得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeのデータを相溶・分離臨界温度のデータベースから取り込むデータベース参照手段と、deltaT、TrangeとrAの値から、rBを下記の式11から求める演算手段と、前記演算手段から得られたrBとrA、Q2(A)の値から第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式12から求める演算手段、および第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式13から求める演算手段とを有する装置である。

本発明の第16の態様は、温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、相溶状態にある相溶・分離する臨界温度がTBで、第一・第二溶媒混合比がr12で、第二の溶媒量がQ2(B)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrBである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第一・第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTBよりも高いTAで、第一・第二溶媒混合比が前記同一のr12である第一・第二溶媒の組み合わせの第二の溶媒の組成混合比rAとなすことで相溶状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを分離する装置であって、rBおよびQ2(B)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第一・第二溶媒混合比がr12である第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第二溶媒組成混合比を最大限変化させて得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeのデータを相溶・分離臨界温度のデータベースから取り込むデータベース参照手段と、deltaT、TrangeとrBの値から、rAを下記の式14から求める演算手段と、前記演算手段から得られたrAとrB、Q2(B)の値から第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式15から求める演算手段、および第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式16から求める演算手段とを有する装置である。


本発明の第17の態様は、温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、分離状態にある
相溶・分離する臨界温度がTAで、第一・第二溶媒混合比がr12(A)で、第二の溶媒量がQ2(A)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTAよりも低いTBで、第二溶媒の任意の二つの組成混合比が前記rと同一(rA=rB)で、第一・第二溶媒混合比がr12(B)となすことで分離状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを相溶化する装置であって、r12(A)およびQ2(A)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、第一・第二溶媒の混合比r12を変数として相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度Tを変数として第一・第二溶媒の混合比r12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)をもつ関数データベースを参照するデータベース参照手段とをもち、r12(A)、deltaTの値から、r12(B)を下記の式17から求める演算手段と、前記演算手段から得られたr12(B)とr12(A)、Q2(A)の値から第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式18から求める演算手段とを有する装置である。

本発明の第18の態様は、温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、相溶状態にある
相溶・分離する臨界温度がTBで、第一・第二溶媒混合比がr12(B)で、第二の溶媒量がQ2(B)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTBよりも高いTAで、第二溶媒の任意の二つの組成混合比が前記rと同一(rB=rA)で、第一・第二溶媒混合比がr12(A)となすことで相溶状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを分離する装置であって、r12(B)およびQ2(B)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、第一・第二溶媒の混合比r12を変数として相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度Tを変数として第一・第二溶媒の混合比r12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)をもつ関数データベースを参照するデータベース参照手段とをもち、r12(B)、deltaTの値から、r12(A)を下記の式19から求める演算手段と、前記演算手段から得られたr12(A)とr12(B)、Q2(B)の値から第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式20から求める演算手段とを有する装置である。

【図面の簡単な説明】
図1は、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比(CH:NA(ニトロアルカン))および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータ(その1)を示す。ここで、第一の溶媒はCH(シクロヘキサン)であり、第二の溶媒はNM(ニトロメタン)とNE(ニトロエタン)の混合溶媒である。
図2は、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータ(その2)を示す。ここで、第一の溶媒はCH(シクロヘキサン)であり、第二の溶媒はNM(ニトロメタン)とNE(ニトロエタン)の混合、あるいはAN(アセトニトリル)とPN(プロピオニトリル)の混合溶媒、あるいはDMF(ジメチルホルムアミド)とDMA(ジメチルアセトアミド)の混合溶媒である。
図3は、温度により相溶状態・分離状態を可逆変化する溶媒の組み合わせにおいて、温度を変化させることによる相溶・分離することの概念図を示す。
図4は、第二溶媒の組成を変化させて定温度で相溶・分離することの概念図を示す。
図5は、温度および組成変化により相溶・分離することの概念図を示す。
図6は、コンビナトリアル自動合成に用いられる自動分注器の作用動作を示す。
図7は、分注器でA液とB液の2液を混合して昇温する動作を示すタイムチャートを示す。
図8は、A液とB液の2液を混合して昇温する動作を示す分注器タイムチャートにおいて、たとえばmix1(1番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間)とmixn(n番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間)とが異なるという問題があることを示す。
図9は、A液とB液の2液を混合して昇温する動作を示す分注器タイムチャートにおいて、たとえばMIX1(1番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温完了するまでに要する時間)とMIX2(2番目の反応容器においてA液とB液を混合後から容器昇温完了するまでに要する時間)とが異なるという問題があることを示す。
図10は、本発明の相溶・分離方法を採用すれば図8、図9の問題は起こらないことを示す。(分注器でA液とB液の2液を混合し、さらにC液(物質C)の混合で相溶化して反応開始するので反応前準備時間であるABn、BCnは一定である)
図11は、第二溶媒の構成としてDMI(ジアルキルイミダゾリジノン)とカーボネートの混合物を用いた場合の相溶・分離臨界温度データを示す。
図12は、温度TAで分離状態(A点)にある第一・第二溶媒で温度TAよりも低温である温度TBの組成混合比となるように第一溶媒および/または第二溶媒を構成する溶媒を添加して、温度TA未満かつ温度TBより高温の定温度で第一・第二溶媒の相溶化をおこなうこと、あるいはその逆パスで分離を行うことの概念図(r12(A)=r12(B)=r12のケース)を示す。
図13は、温度TCで分離状態(C点)にある第一・第二溶媒で温度TCよりも低温である温度Tdの組成混合比となるように第一溶媒および/または第二溶媒を構成する溶媒を添加して温度TC未満かつ温度Tdより高温の定温度で第一・第二溶媒の相溶化をおこなうこと、あるいはその逆パスで分離を行うことの概念図(rA=rBのケース)を示す。
図14は、(a)シクロヘキサンの混合比が多い場合(たとえば1:20以上)に第一・第二溶媒混合比(パラメータ)を変化してもデータグラフのシフトは少ない(グラフが密である)ことを示す。(b)シクロヘキサンの混合率が多い場合(1:20以上)にシクロヘキサンの添加を省略した場合の変化(A→B’)を示す。
図15は、第一・第二溶媒の混合比r12から相溶・分離臨界温度Tを出す関数f(r12)と関数fの逆関数f−1(T)を示す。
図16は、本発明の装置において、特に、計算ブロックを示す(A→B:r12一定)。
図17は、本発明の装置において、特に、計算ブロックを示す(A←B:r12一定)。
図18は、本発明の装置において、特に、計算ブロックを示す(C→d:r一定)。
図19は、本発明の装置において、特に、計算ブロックを示す(C←d:r一定)。
【符号の説明】
1 式1または式11の演算手段を有する演算ブロック
2 式2または式12の演算手段を有する演算ブロック
3 式3または式13の演算手段を有する演算ブロック
4 式4または式14の演算手段を有する演算ブロック
5 式5または式15の演算手段を有する演算ブロック
6 式6または式16の演算手段を有する演算ブロック
7 式7、式7’または式17の演算手段を有する演算ブロック
8 式8、式8’または式18の演算手段を有する演算ブロック
9 式9、式9’または式19の演算手段を有する演算ブロック
10 式10、式10’または式20の演算手段を有する演算ブロック
A点 温度Tで分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの第一・第二溶媒の混合比(パラメータ)および第二の溶媒の組成混合比(横軸)に対する相溶・分離温度(縦軸)データグラフ上の点
B点 A点と同一の第一・第二溶媒の混合比(パラメータ)で温度Tよりも低温で相溶・分離する第一・第二溶媒の組み合わせにおいて第二の溶媒の組成混合比(横軸)に対する相溶・分離温度(縦軸)データグラフ上の点
C点 温度Tで分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの第一・第二溶媒の混合比(パラメータ)および第二の溶媒の組成混合比(横軸)に対する相溶・分離温度(縦軸)データグラフ上の点
d点 C点と同一の第二溶媒の組成混合比(横軸)で温度Tよりも低温で相溶・分離する第一・第二溶媒の組み合わせにおいて第一・第二溶媒の混合比(パラメータ)による相溶・分離温度(縦軸)データグラフ上の点
AB1 1番目の反応容器においてA液にB液を混合するのに要する時間(A液、B液は上記のA点、B点とは無関係)
ABn n番目の反応容器においてA液にB液を混合するのに要する時間(A液、B液は上記のA点、B点とは無関係)
BC1 1番目の反応容器においてA・B液を混合後C液混合で相溶化するのに要する時間(A液、B液、C液は上記のA点、B点とは無関係)
BCn n番目の反応容器においてA・B液を混合後C液混合で相溶化するのに要する時間(A液、B液、C液は上記のA点、B点とは無関係)
ΔT 設定する余裕温度差
f(*) 第二の溶媒の組成混合比(*=rAなど)から相溶・分離温度を出す関数
−1(*) 関数fの逆関数(*=相溶・分離温度)
mix1 1番目の反応容器においてA・B液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間
mix2 2番目の反応容器においてA・B液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間
mixn n番目の反応容器においてA・B液を混合後から容器昇温開始するまでに要する時間
MIX1 1番目の反応容器においてA・B液を混合後から容器昇温完了するまでに要する時間
MIXn n番目の反応容器においてA・B液を混合後から容器昇温完了するまでに要する時間
Move1 ニードルNを反応容器に挿入する分注器の作用動作
Move2 ニードルNを反応容器から出し別の反応容器位置に移動する分注器の作用動作
R1 1番目の反応容器
R2 2番目の反応容器
R3 3番目の反応容器
Rn n番目の反応容器
rA 第二の溶媒の組成混合比
rB 第二の溶媒の組成混合比
rC 第二の溶媒の組成混合比
r12 第一・第二溶媒の混合比
T0 TA未満かつTBより高温の任意の定温度またはTC未満かつTdより高温の任意の定温度
V1点 分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態出発点
V2点 相溶状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態出発点
W1点 温度および第一・第二溶媒の混合比・第二の溶媒の組成混合比を変えて相溶状態となした第一・第二溶媒の組み合わせ状態点
W2点 温度および第一・第二溶媒の混合比・第二の溶媒の組成混合比を変えて分離状態となした第一・第二溶媒の組み合わせ状態点
X点 分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせの状態点
Y点 X点の温度を上げて相溶状態となした第一・第二溶媒の組み合わせの状態点
Z点 X点の第一・第二溶媒の混合比・第二の溶媒の組成混合比を変えて相溶状態となした第一・第二溶媒の組み合わせの状態点
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て引用により本明細書に取り込まれるものとする。また、本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2003−72695号の明細書に記載の内容は全て引用により本明細書に取り込まれるものとする。
【実施例1】
20℃において、シクロペンタン 5ミリリットル、DMI 10ミリリットルを混合することにより形成した均一溶液に、同温度のシクロヘキサン 5ミリリットルを添加すると、直ちに相分離が起こり、シクロアルカンを主成分とする上層およびDMIを主成分とする下層を形成した。本法では、均一状態での化学プロセス終了後、二相分離による物質分離の過程で、温度を変化させる必要がない。
10℃において、二環性シクロアルカンであるデカリン 10ミリリットル、DMI 5ミリリットルを混合することにより形成した均一溶液に、同温度のDMF 5ミリリットルを添加すると、直ちに相分離が起こり、シクロアルカンを主成分とする上層およびDMIおよびDMFを主成分とする下層を形成した。本法では、均一状態での化学プロセス終了後、二相分離による物質分離の過程で、温度を変化させる必要がない。
シクロヘキサン以外に第一溶媒に用いられるものとして、シクロヘキサン環二つが縮環したデカリン(decalin)も好適である。第一溶媒をデカリン、第二溶媒をDMIとDMFの混合、という溶媒セットも好適である。さらに請求項では混乱を避けるため、第一溶媒は単独の溶媒としたが、第一溶媒も第二溶媒同様複数の溶媒の混合でよい。具体的には第一溶媒はシクロヘキサンとシクロペンタンの混合やシクロヘキサンとシクロオクタンの混合でもよい。
次に、容器および溶液の温度を常に一定にした状態で均一化状態から二相分離させることによりペプチド連続合成を実現した実施例として、環状アミド化合物を第二の溶媒としたペプチド結合形成反応を示す。
実施例2(ペプチド合成)
25℃においてシクロヘキサン100ミリリットルに2−アミノ−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシロキシ−ベンジルエステル 1ミリモルを溶解した。ここにFmoc−Gly−OBt 3ミリモル、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCD)5ミリモルを含むNMP(N−メチル−2−ピロリジノン)溶液20ミリリットルを添加し90分間攪拌した。次に本反応システムを攪拌しながら同温度において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)1:1(w/w)溶液を20ミリリットルを漸次滴下した。このとき、反応溶液はシクロヘキサンを主とする上層と、NMP、EC,PCを主成分とする下層の二相に分離した。下層溶液を除去し、シクロヘキサン相を25℃においてエチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)1:1(w/w)溶液10ミリリットルで3回洗浄した。シクロヘキサン溶液から、2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−アセチルアミノ]−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシルオキシ−ベンジルエステルを収率99%で得た。H−NMR(400MHz)δ:7.77(2H,d,J=7.3Hz),7.59(2H,d,J=7.3Hz),7.40(2H,t,J=7.3Hz),7.31(2H,dt,J=0.7,7.3Hz),6.52(2H,s),6.38(1H,d,J=8.4Hz),5.44−5.37(1H,br),5.10(1H,d,J=12.1Hz),5.02(1H,d,J=12.1Hz),4.62(2H,dd,J=8.4,4.8Hz),4.42(2H,d,J=7.0Hz),4.24(1H,t,J=7.0Hz),3.96−3.92(8H,m),2.21−2.16(1H,m),1.81−1.76(4H,m),1.75−1.70(2H,m),1.48−1.43(6H,m),1.37−1.21(84H,br),0.91(3H,d,J=7.0Hz),0.88(9H,t,J=7.0Hz),0.86(3H,d,J=7.0Hz);13C−NMR(150MHz)δ:171.5,168.7,156.5,153.1,143.6,141.2,138.3,130.0,127.7,127.0,125.0,120.0,107.0,73.4,69.2,67.5,67.4,57.1,47.1,32.0,31.4,30.4,29.8,29.7,29.5,29.4,26.1,22.8,19.0,17.7,14.2;MALDI TOF−MS(pos)calcd for C83138[M+Na]1314,found 1314.
実施例3(アミド化合物を第二の溶媒としたペプチド結合形成反応)
55℃においてメチルシクロヘキサン100ミリリットルに2−アミノ−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシロキシ−ベンジルエステル 1ミリモルを溶解した。ここにFmoc−Gly−OBt 3ミリモル、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCD)5ミリモルを含むDMF(ジメチルホルムアミド)溶液20ミリリットルを添加し60分間攪拌した。次に本反応システムを攪拌しながら同温度において、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)1:1(w/w)溶液を20ミリリットルを漸次滴下した。このとき、反応溶液はシクロヘキサンを主とする上層と、NMP、EC,PCを主成分とする下層の二相に分離した。下層溶液を除去し、シクロヘキサン相を55℃においてエチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)1:1(w/w)溶液10ミリリットルで3回洗浄した。シクロヘキサン溶液から、2−[2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−アセチルアミノ]−3−メチル−ブチリックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシルオキシ−ベンジルエステルを収率92%で得た。
産業上の利用性
本発明の溶媒セットは化合物製造に関わる化学プロセス、さらに一般の「化学反応」すなわち、生物の体内の反応や物理的な反応と線引きすることはなく広い意味の、電子など基本的な物質構成要素のやりとりで説明されるプロセスにすべて適用されうる。すなわち、分子内および分子間反応、分子内および分子間相互作用、電子移動、物質の移動速度の差に基づく分離、分配係数の差に基づく抽出分離、溶媒分画に適用される。本発明の溶媒セットを用いた化学プロセスのわかりやすい例としては、液相ペプチド合成がある。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一・第二溶媒の誘電率データまたは第一・第二溶媒の極性データに基づいて、分離状態にある第一・第二溶媒の誘電率または極性を変化させることで温度を変化せずに相溶化する方法であって、
第一の溶媒の誘電率が0から15、または第一の溶媒の極性(ET30)が20未満であり、第二の溶媒の誘電率が20以上、または第二の溶媒の極性(ET30)が25以上であり、第一の溶媒、または第二の溶媒を構成する複数の溶媒のうちの少なくとも一要素溶媒を添加して、かかる添加量が分離状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の誘電率の差または極性の差を相対的に少なくとも10%減少させる添加量であるか、または、
第一の溶媒に溶解する溶質、または第二の溶媒に溶解する溶質を添加して、かかる添加量が分離状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の誘電率の差または分離状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の極性の差を相対的に少なくとも10%減少させる添加量である、温度を変化せずに相溶化する方法。
【請求項2】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一・第二溶媒の誘電率データまたは第一・第二溶媒の極性データに基づいて、分離状態にある第一・第二溶媒の誘電率または極性を変化させることで温度を変化せずに分離する方法であって、第一の溶媒の誘電率が0から15、または第一の溶媒の極性(ET30)が20未満であり、第二の溶媒の誘電率が20以上、または第二の溶媒の極性(ET30)が25以上であり、第一の溶媒、または第二の溶媒を構成する複数の溶媒のうちの少なくとも一要素溶媒を添加して、かかる添加量が相溶状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の誘電率の差または極性の差を相対的に少なくとも10%増大させる添加量であるか、または、
第一の溶媒に溶解する溶質、または第二の溶媒に溶解する溶質を添加して、かかる添加量が相溶状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の誘電率の差または相溶状態にある第一の溶媒と第二の溶媒の極性の差を相対的に少なくとも10%増大させる添加量である、温度を変化せずに分離する方法。
【請求項3】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、分離状態にある第一・第二溶媒の組み合わせを温度を変化せずに相溶化する方法であって、臨界温度TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比と、TAよりも低温である臨界温度TBで相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比とを比較して、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比が、TAよりも低温であるTBで相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比となるように第一溶媒および/または第二溶媒を構成する溶媒を添加して、TA未満かつTBより高温の定温度で分離状態にあるTAで相溶・分離する第一・第二溶媒を、TA未満かつTBより高温の定温度で相溶化する方法。
【請求項4】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、相溶状態にある第一・第二溶媒の組み合わせを温度を変化せずに分離する方法であって、臨界温度TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比と、TAよりも低温である臨界温度TBで相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比とを比較して、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比が、TBよりも高温であるTAで相溶・分離する第一・第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比となるように第一溶媒および/または第二溶媒を構成する溶媒を添加して、TA未満かつTBより高温の定温度で相溶状態にあるTBで相溶・分離する第一・第二溶媒を、TA未満かつTBより高温の定温度で分離する方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法において、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(A)とTBで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(B)とを等しく設定し(r12(A)=r12(B))、かつ、かかる同一混合比の第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第二溶媒組成混合比を最大限変化させて得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeのデータと、設定されるTAとTBの温度差を余裕温度deltaTと、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比をrAとから、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rBを下記の式1から求める方法。

【請求項6】
請求項5記載の方法において、第二溶媒の量Q2(A)とr12とrAとrBの値から第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式2、第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式3から求める方法。


【請求項7】
請求項4記載の方法において、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(A)とTBで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(B)とを等しく設定し(r12(A)=r12(B))、かつ、かかる同一混合比の第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeのデータと、設定されるTAとTBの温度差を余裕温度deltaTと、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比をrBとから、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rAを下記の式4から求める方法。

【請求項8】
請求項7記載の方法において、第二溶媒の量Q2(B)とr12とrAとrBの値から第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式5、第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式6から求める方法。


【請求項9】
請求項3記載の方法において、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rと、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rとを等しく設定し(rA=rB)、かつ、かかる同一組成混合比の第二溶媒と第一溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、第一・第二溶媒の混合比r12を変数として相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度Tを変数として第一・第二溶媒の混合比r12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)を得て、設定されるTAとTBの温度差を余裕温度deltaTと、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(A)とから、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(B)を下記の式7から求める方法。

【請求項10】
請求項9記載の方法において、第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式8から求める方法。

【請求項11】
請求項4記載の方法において、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rAと、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の第二溶媒の組成混合比rBとを等しく設定し(rA=rB)、かつ、かかる同一組成混合比の第二溶媒と第一溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、第一・第二溶媒の混合比r12を変数として相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度Tを変数として第一・第二溶媒の混合比r12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)を得て、設定されるTAとTBの温度差を余裕温度deltaTと、TBで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(B)とから、TAで相溶・分離する第一・第二溶媒の混合比r12(A)を下記の式9から求める方法。

【請求項12】
請求項11記載の方法において、第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式10から求める方法。

【請求項13】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と単独または複数の溶媒の混合で構成される第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と単独または複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒との相溶化プロセスを少なくとも一回は行い、該相溶化プロセスの後の分離について、該相溶化プロセスの相溶化液に第一および第二溶媒以外の物質を添加して温度を変化せずに分離する方法であって、添加物質として、単独または複数の溶媒の混合で構成される第二溶媒に添加物質を加えた混合液と第一溶媒の組み合わせにおいて、第二の溶媒に対して添加物質を体積混合率で10%加えることで相溶・分離臨界温度が少なくとも10度変化する物質を加えて定温度で分離する方法。
【請求項14】
請求項13において、添加物質がアルキルカーボネートである定温度で分離する方法。
【請求項15】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、分離状態にある
相溶・分離する臨界温度がTAで、第一・第二溶媒混合比がr12で、第二の溶媒量がQ2(A)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrAである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第一・第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTAよりも低いTBで、第一・第二溶媒混合比が前記同一のr12である第一・第二溶媒の組み合わせの第二の溶媒の組成混合比rBとなすことで分離状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを相溶化する装置であって、rAおよびQ2(A)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第一・第二溶媒混合比がr12である第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第二溶媒組成混合比を最大限変化させて得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeのデータを相溶・分離臨界温度のデータベースから取り込むデータベース参照手段と、deltaT、TrangeとrAの値から、rBを下記の式11から求める演算手段と、前記演算手段から得られたrBとrA、Q2(A)の値から第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式12から求める演算手段、および第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式13から求める演算手段とを有する装置。



【請求項16】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、相溶状態にある相溶・分離する臨界温度がTBで、第一・第二溶媒混合比がr12で、第二の溶媒量がQ2(B)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrBである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第一・第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTBよりも高いTAで、第一・第二溶媒混合比が前記同一のr12である第一・第二溶媒の組み合わせの第二の溶媒の組成混合比rAとなすことで相溶状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを分離する装置であって、rBおよびQ2(B)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第一・第二溶媒混合比がr12である第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第二溶媒組成混合比を最大限変化させて得られる相溶・分離臨界温度の最大温度変化幅Trangeのデータを相溶・分離臨界温度のデータベースから取り込むデータベース参照手段と、deltaT、TrangeとrBの値から、rAを下記の式14から求める演算手段と、前記演算手段から得られたrAとrB、Q2(B)の値から第一溶媒の添加量deltaQ1を下記の式15から求める演算手段、および第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式16から求める演算手段とを有する装置。



【請求項17】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、分離状態にある相溶・分離する臨界温度がTAで、第一・第二溶媒混合比がr12(A)で、第二の溶媒量がQ2(A)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTAよりも低いTBで、第二溶媒の任意の二つの組成混合比が前記rと同一(rA=rB)で、第一・第二溶媒混合比がr12(B)となすことで分離状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを相溶化する装置であって、r12(A)およびQ2(A)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、第一・第二溶媒の混合比r12を変数として相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度Tを変数として第一・第二溶媒の混合比r12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)をもつ関数データベースを参照するデータベース参照手段とをもち、r12(A)、deltaTの値から、r12(B)を下記の式17から求める演算手段と、前記演算手段から得られたr12(B)とr12(A)、Q2(A)の値から第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式18から求める演算手段とを有する装置。


【請求項18】
温度により相溶状態と分離状態とが可逆的に変化する第一の溶媒と複数の溶媒の混合で構成されている第二の溶媒の組み合わせ溶媒セットにおいて、第一の溶媒と第二の溶媒の混合比および第二の溶媒の組成混合比に対する相溶・分離臨界温度のデータに基づいて、相溶状態にある相溶・分離する臨界温度がTBで、第一・第二溶媒混合比がr12(B)で、第二の溶媒量がQ2(B)で、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの第二の溶媒の組成混合比を、第二溶媒を添加することで相溶・分離する臨界温度が設定された余裕温度deltaTだけTBよりも高いTAで、第二溶媒の任意の二つの組成混合比が前記rと同一(rB=rA)で、第一・第二溶媒混合比がr12(A)となすことで相溶状態にある前記第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットを分離する装置であって、r12(B)およびQ2(B)のデータを入力する初期値入力手段と、余裕温度deltaTの設定入力手段と、第二溶媒の任意の二つの組成混合比がrである第一・第二溶媒の組み合わせ溶媒セットの相溶・分離臨界温度のデータより、第一・第二溶媒の混合比r12を変数として相溶・分離臨界温度を得る関数f(r12)、および相溶・分離臨界温度Tを変数として第一・第二溶媒の混合比r12を得るf(r12)の逆関数f−1(T)をもつ関数データベースを参照するデータベース参照手段とをもち、r12(B)、deltaTの値から、r12(A)を下記の式19から求める演算手段と、前記演算手段から得られたr12(A)とr12(B)、Q2(B)の値から第二溶媒の添加量deltaQ2を下記の式20から求める演算手段とを有する装置。



【国際公開番号】WO2004/096429
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505914(P2005−505914)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006064
【国際出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【Fターム(参考)】