説明

温度センサの取付け構造

【課題】複数の温度センサの取り付け、取り外しが容易で周囲の気流の影響を低減した取り付け構造を提供する。
【解決手段】複数の温度センサ12を保持する保持体13の取付け面に保持溝16を形成し、複数の温度センサ12の各検出端12aの位置を、保持体13の長手方向に異ならせて前記保持溝16内に保持し、保持体13を、前記検出端12aが検出対象であるTダイに接触するように取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の温度センサの取付け構造に関し、更に詳しくは、熱可塑性樹脂などからなるシートやフィルムの成形に使用されるTダイ(フラットダイ)などの温度を検出するのに好適な温度センサの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のフィルムやシートの製造方法として、スリット状のダイリップを有するTダイから、溶融樹脂を押出して吐出させ、フィルムやシート状に成形し、冷却ロールで固化させて引き取るTダイ法が広く実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3533101号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Tダイは、フィルムやシートを成形するために、幅広の平板状となっており、押し出し機から流入した溶融樹脂が、マニホールドによって幅方向に拡大して流れ、先端のスリット状のダイリップから吐出される。
【0004】
Tダイの温度は、溶融樹脂の粘度、したがって、溶融樹脂の流れと密接に関連しており、このため、Tダイから吐出されるフィルム等の幅方向の厚みが均一になるように、ヒータおよび温度センサを幅方向に沿って配置してTダイの温度を制御している。
【0005】
Tダイは、上述のように幅方向に広いために、温度センサによる検出点も幅方向に沿って多数となり、かかる多数の温度センサをTダイに取り付けるための取り付け作業が面倒であり、特に、Tダイは、使用後に洗浄などのメンテナンスが必要であるために、メンテナンスの度に、多数の温度センサを取り外したり、取り付けたりするのは、面倒である。
【0006】
また、Tダイの近傍には、Tダイから吐出されるフィルムが冷却ローラに接触するように、エア吐出ノズル(エアナイフ)からエアが噴き付けられるのであるが、Tダイの表面に取り付ける温度センサでは、前記エアによる気流の影響を受けて検出温度が変動しやすいという難点がある。
【0007】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、複数の温度センサの取り付け、取り外しが容易な取り付け構造を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の温度センサの取付け構造は、複数の温度センサを保持する保持体に、前記複数の温度センサの各検出端の位置を、前記保持体の長手方向に異ならせて保持し、前記保持体を、前記検出端が検出対象に近接または接触するように取り付けるものである。
保持体は、複数の温度センサを保持できればよく、特に形状等が限定されるものではない。
【0009】
本発明の温度センサの取付け構造によると、複数の温度センサが、各検出端の位置を異ならせて保持体に保持されているので、保持体を、検出対象に取り付けることによって、複数の温度センサを検出対象に取り付けることができる一方、保持体を、検出対象から取り外すことによって、複数の温度センサを取り外すことが可能となり、検出対象に対する複数の温度センサの取り付け、取り外し作業が容易となる。
【0010】
(2)本発明の温度センサの取付け構造の一つの実施形態では、前記保持体は、断熱性材料からなり、前記検出対象に取り付けた状態で、前記検出対象との間で前記複数の温度センサを覆うように保持するものである。
【0011】
保持体は、各温度センサの、少なくとも検出端の近傍を覆うものであるのが好ましい。
【0012】
この実施形態によると、保持体を検出対象に取り付けた状態では、複数の温度センサは、断熱性の保持体で覆われるので、保持体の外側の気流による影響を低減して、精度よく温度を検出することができる。
【0013】
(3)本発明の温度センサの取付け構造の他の実施形態では、前記保持体は、前記検出対象への取り付け面に、前記複数の温度センサを保持する凹部を備えている。
【0014】
凹部は、温度センサを収納保持できる形状であればよく、各温度センサにそれぞれ対応するように複数の凹部を備えてもよい。
【0015】
凹部に収納された温度センサは、例えば、耐熱性のテープや樹脂などで保持体に固定してもよいし、ネジおよび取付け具などによって保持体に固定してもよい。
【0016】
この実施形態によると、凹部に複数の温度センサを収納保持した保持体を、検出対象に取り付けることによって、複数の温度センサを、検出対象側に位置させて取り付けることができる。
【0017】
(4)本発明の温度センサの取付け構造の好ましい実施形態では、前記検出対象が、溶融した樹脂をダイリップから吐出するダイである。
【0018】
この実施形態によると、ダイへの複数の温度センサの取り付け、取り外し作業が容易となる。
【0019】
(5)本発明の温度センサの取付け構造の一つの実施形態では、前記温度センサが熱電対である。
【0020】
この実施形態によると、複数の熱電対を、検出対象に容易に取り付け、取り外しできることになる。
【0021】
(6)本発明の温度センサの取付け構造の他の実施形態では、前記検出対象を加熱する複数のヒータを、前記検出対象に近接または接触するように、前記保持体と一体に取り付けるものである。
【0022】
ヒータは、少なくともその一部が、検出対象に近接あるいは接触すればよい。
【0023】
この実施形態によると、温度センサのみならず、検出対象を加熱するヒータを、保持体と一体に検出対象に取り付け、取り外しすることができる。
【0024】
(7)上記(6)の実施形態では、前記複数のヒータを、前記保持体に、該保持体の長手方向の位置を異ならせて保持してもよい。
【0025】
この実施形態によると、検出対象の異なる位置を、各ヒータでそれぞれ加熱することができる一方、各ヒータに対応する温度センサによって検出対象の温度を検出することができる。
【0026】
(8)上記(6)または(7)の実施形態では、前記保持体は、前記検出対象に取り付けた状態で、前記検出対象との間で前記複数のヒータを覆うように保持している。
【0027】
この実施形態によると、保持体を検出対象に取り付けた状態では、複数のヒータは、保持体で覆われるので、保持体の外側の気流による影響を低減して、効率よく検出対象を加熱することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の温度センサが、各検出端の位置を異ならせて保持体に保持されているので、保持体を、検出対象に取り付けることによって、複数の温度センサを取り付けることができる一方、保持体を、検出対象から取り外すことによって、複数の温度センサを取り外すことが可能となり、検出対象に対する温度センサの取り付け、取り外し作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の一つの実施形態に係るフィルム製造装置の概略構成図であり、図2は、図1の矢符A方向から見たTダイを示す図である。
【0031】
押出し機1で溶融されて押し出された溶融樹脂は、供給路20を介してTダイ2に供給され、マニホールド3で幅方向(図2の左右方向)に広げられ、先端のスリット状のダイリップ4から下方に吐出され、吐出されたフィルム5は、図1に示すように、一対の冷却ローラ6,7によって表裏両面が冷やされて後続のロール8,9を介して巻き取り機10に巻き取られる。
【0032】
また、吐出されたフィルム5は、エア吐出ノズル14からのエアによって、上流側の冷却ローラ6に密着されて効率的に冷却される。
【0033】
Tダイ2は、図1に示すように、基本的に二分割の分割ブロック2a,2bを備えており、各分割ブロック2a,2bに対応して後述のようにヒータおよび温度センサが取り付けられている。
【0034】
図3は、この実施形態のTダイ2のヒータおよび温度センサの配置を示す図であり、図2に対応する図であり、一方の分割ブロック2aについて示している。
【0035】
Tダイ2の各分割ブロック2a,2bには、複数、ここでは、簡略化のために、3つのヒータ11が設けられるとともに、3つの熱電対12を保持した保持体13が設けられている。
【0036】
ヒータ11および熱電対12の検出端は、幅方向(Tダイの長手方向)に沿ってそれぞれ配置されており、3チャンネルの温度制御を行うものである。ヒータ11は、従来と同様に、Tダイ2の先端のダイリップ4から離れた箇所の取付孔(図示せず)にそれぞれ取り付けられている。
【0037】
この実施形態では、Tダイ2への3つの熱電対12の取り付け、取り外し作業を容易にするために、次のように構成している。
【0038】
すなわち、この実施形態では、3つの熱電対12を、保持体13に保持しており、この保持体13をTダイ2に取り付けるようにしている。
【0039】
図4は、保持体13のTダイ2への取り付け状態を示す平面図であり、図5は、そのB−B線に沿う断面図であり、図6は、Tダイ2への取り付け面側、すなわち、底面側から見た図である。
【0040】
この実施形態の保持体13は、例えば、マイカやヘミットなどの断熱性材料によって、大略矩形板状に構成され、Tダイ2への取り付け面には、各熱電対12を収納保持する逆U字状の保持溝16が、保持体13の長手方向に沿って形成されている。
【0041】
各熱電対12は、例えば、耐熱性の充填樹脂などによって保持溝16内に収納固定されており、各熱電対12の検出端12aは、図5に示すように下方に延びている。
【0042】
3つの熱電対12は、各検出端12aが保持体13の長手方向(図6の左右方向)に沿って異なる位置になるように、保持溝16内に固定されている。
【0043】
各熱電対12の各検出端12aは、保持体13を、Tダイ2に取り付けたときに、上述の図3の各ヒータ11に対応する検出点に位置するように、保持体13に保持されている。
【0044】
この保持体13は、図7に示すように、長手方向の適宜個所に、取付け具15を装着するための取付凹部13aが形成されており、この取付凹部13aに取付け具15を装着して、図4の平面図に示すようにTダイ2にネジ止めすることによって、Tダイ2に取り付けるようにしている。この取付けによって、保持体13に保持された各熱電対12の各検出端12aが、Tダイ2の表面に圧接される。
【0045】
保持体13の一端側から引き出された各熱電対12の配線の端部は、図4に示すように、コネクタ18によって一体化されており、図示しない温度調節器などの入力側のコネクタ19と接続される。
【0046】
このように、複数の熱電対12が、保持体13に保持されて一体化されているので、Tダイ2への複数の熱電対12の取り付けは、保持体13を、取付け具15でTダイ2へネジ止めして、それらの配線をコネクタ接続すればよく、従来のように各熱電対を個別に取り付ける必要がなく、取り付け作業が容易となる。また、同様に、保持体13をTダイ2から取り外すことによって、複数の熱電対を取り外すことが可能となり、従来のように各熱電対を個別に取り外す必要がなく、取り外し作業が容易となる。
【0047】
しかも、各熱電対12の配線は、保持体13にまとめて保持されているので、従来のように各熱電対の配線の引き回しが邪魔になることがない。
【0048】
更に、各熱電対12の各検出端12aは、保持体13によって覆われているので、エア吐出ノズル14からのエアなどの保持体13の外側の気流の影響を受けることなく、Tダイ2の温度を精度よく検出することができる。
【0049】
(実施形態2)
図8は、本発明の他の実施形態の図4に対応する図であり、図9は、そのB−B線に沿う断面図であり、図10は、図6に対応する図である。
【0050】
この実施形態では、保持体13−1には、熱電対12のみならず、3つのプレート式のヒータ21を保持させている。
【0051】
すなわち、保持体13−1の取り付け面には、ヒータ保持用の矩形の保持溝22が、長手方向に沿って形成されており、この保持溝22内に、プレート式のヒータ21が保持されている。各ヒータ21は、保持体3−1の長手方向に沿って異なる位置に保持されており、各ヒータ21に個別的に対応するように各熱電対12の検出端12aを位置させている。
【0052】
その他の構成は、上述の実施の形態と同様である。
【0053】
この実施の形態によると、複数の温度センサ12のみならず、検出対象を加熱する複数のヒータ21を、保持体13−1と一体に検出対象に取り付け、取り外しすることができ、作業性が一層向上する。
【0054】
(その他の実施形態)
上述の実施の形態では、温度センサとして熱電対を用いたけれども、測温抵抗体などの他の温度センサを用いてもよく、また、プレート式のヒータに代えて、カートリッジ式やその他のヒータを用いてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、Tダイに適用して説明したけれども、本発明は、Tダイに限らず、複数の温度センサで温度を検出する対象であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、フィルムやシートなどを成形するのに用いられるダイなどの温度検出に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る温度センサの取付け構造を用いたフィルム製造装置の概略構成図である。
【図2】図1のTダイを示す図である。
【図3】Tダイのヒータおよび温度センサの配置を示す図である。
【図4】温度センサの取付け状態を示す平面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図4の取付け面側から見た図である。
【図7】図4の保持体の一部の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態の温度センサおよびヒータの取付け状態を示す平面図である。
【図9】図8のB−B線に沿う断面図である。
【図10】図8の取付け面側から見た図である。
【符号の説明】
【0058】
1 押出し機
2 Tダイ
4 ダイリップ
11,21 ヒータ
12 熱電対
13 保持体
16,22 保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の温度センサを保持する保持体に、前記複数の温度センサの各検出端の位置を、前記保持体の長手方向に異ならせて保持し、前記保持体を、前記検出端が検出対象に近接または接触するように取り付けることを特徴とする温度センサの取付け構造。
【請求項2】
前記保持体は、断熱性材料からなり、前記検出対象に取り付けた状態で、前記検出対象との間で前記複数の温度センサを覆うように保持する請求項1に記載の温度センサの取付け構造。
【請求項3】
前記保持体は、前記検出対象への取り付け面に、前記複数の温度センサを保持する凹部を備える請求項1または2に記載の温度センサの取付け構造。
【請求項4】
前記検出対象が、溶融した樹脂をダイリップから吐出するダイである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の温度センサの取り付け構造。
【請求項5】
前記温度センサが熱電対である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の温度センサの取り付け構造。
【請求項6】
前記検出対象を加熱する複数のヒータを、前記検出対象に近接または接触するように、前記保持体と一体に取り付ける請求項1ないし5のいずれか一項に記載の温度センサの取付け構造。
【請求項7】
前記複数のヒータを、前記保持体に、該保持体の長手方向の位置を異ならせて保持する請求項6に記載の温度センサの取付け構造。
【請求項8】
前記保持体は、前記検出対象に取り付けた状態で、前記検出対象との間で前記複数のヒータを覆うように保持する請求項6または7に記載の温度センサの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−30241(P2010−30241A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197437(P2008−197437)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】