説明

温度センサー

【課題】多点測定用の温度センサーであって、小型化するとともに、安価で、取り扱いが容易であり、温度の測定精度が高い温度センサーを提供する。
【解決手段】保護管20内に往復するリード線50を備え、温度特性が互いに異なる複数個の圧電共振子40は、リード線50に直列又は並列に接続されている。圧電共振子40は、セラミック製の容器30に収納されている。圧電共振子40は、ランタン、ガリウム、タンタル、アルミニウム及び酸素からなる単結晶で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーに関し、特に、多点測定用の温度センサーの小型化に関する。
【背景技術】
【0002】
多点測定用の温度センサーは、流動する流体の温度変化又は固体の温度分布を測定する場合等に必要であり、1本の保護管内に複数の熱電対を配置した温度センサーが用いられている。特許文献1には、図5に示すような温度センサー91が記載されている。温度センサー91は、1本の保護管92の中に複数の熱電対(シース形熱電対)93を収納したものである。図6に示すように、各熱電対93は、その先端をなす測温部93aの位置が、保護管92の軸線方向に順にずらして配置されており、これによって複数の点の温度を測定することができる。
【0003】
しかしながら、温度センサー91は、測定点が多くなるにつれて、熱電対93の数が多くなる。このため、保護管92の直径が太くなって、温度測定に時間の遅れが大きくなり、誤差を生じることとなる。また、熱電対93の数が増えるにつれて、温度センサー91を組立てる作業も非常に煩雑となる。特に、保護管92が途中で折り曲げられるL字型等としたい場合には、特に組立作業が困難となる。
【0004】
各熱電対93は、接続端部(アダプタ)97内において、接続装置98を用いて補償導線99に接続されることになる。このため、熱電対93の増加とともに接続端部97の大きさも大きくなり、また、各補償導線99を識別するための銘板の取り付け等、作業量も増加することになる。さらに、保護管92の素材にセラミックを使用する場合には、接続端部97が大型化すると、温度センサー91の取り扱いが非常に困難となる。
【0005】
また、測定温度が高い場合には、白金−白金ロジウムの熱電対を使用することになるので、温度センサー91が高価になるという欠点がある。さらに、この場合、接点部分でロジウムが拡散するために徐々に起電力が変化し、校正が頻繁に必要となるという問題もある。なお、後述するセラミック製の容器を気密に封止する方法に関しては、特許文献2等に記載されている技術を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−107233号公報
【特許文献2】特開2008−192863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、多点測定用の温度センサーであって、その保護管を小さくすることにより、取り扱いが容易で、温度の測定精度が高い温度センサーを提供することにある。また、大きな接続端部を必要としない温度センサーを提供することにある。さらに、安価にすることが可能で、温度測定に経時的変化を生じない温度センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る温度センサーは、多点測定用の温度センサーであって、保護管内に往復するリード線を備え、温度特性が互いに異なる複数個の圧電共振子が、前記リード線に直列又は並列に接続されている手段を採用している。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る温度センサーは、請求項1に記載の温度センサーにおいて、前記圧電共振子が、容器内に収納されている手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る温度センサーは、請求項2に記載の温度センサーにおいて、前記容器の内部が気密に封止されている手段を採用している。また、本発明の請求項4に係る温度センサーは、請求項2又は3に記載の温度センサーにおいて、前記容器が、セラミック製である手段を採用している。また、本発明の請求項5に係る温度センサーは、請求項1乃至4の何れかに記載の温度センサーにおいて、前記圧電共振子が、白金線からなる端子を備えている手段を採用している。
【0010】
また、本発明の請求項6に係る温度センサーは、請求項1乃至5の何れかに記載の温度センサーにおいて、前記リード線を絶縁するために、2穴絶縁管が用いられている手段を採用している。また、本発明の請求項7に係る温度センサーは、請求項1乃至6の何れかに記載の温度センサーにおいて、前記圧電共振子及び前記リード線を固定するために、支持棒が設けられている手段を採用している。
【0011】
また、本発明の請求項8に係る温度センサーは、請求項1乃至7の何れかに記載の温度センサーにおいて、前記圧電共振子が、ランタン、ガリウム、タンタル、アルミニウム及び酸素からなる単結晶で形成されている手段を採用している。また、本発明の請求項9に係る温度センサーは、請求項1乃至8の何れかに記載の温度センサーにおいて、前記保護管が、セラミックからなる手段を採用している。さらに、本発明の請求項10に係る温度センサーは、請求項1乃至9の何れかに記載の温度センサーにおいて、前記リード線が、端部にループアンテナを備えている手段を採用している。
【発明の効果】
【0012】
上記のような構成としたことにより、本発明の温度センサーは、多点測定用の温度センサーであって、保護管を小さくすることが可能であり、取り扱いを容易にすることが可能であり、温度の測定精度を高くすることが可能である。また、大きな接続端部を必要とせず、安価とすることが可能であり、温度測定に経時的変化を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の温度センサーの概略を示し、(a)及び(b)は概略外形図、(c)は概略断面図である。
【図2】本発明で用いる圧電共振子及び容器を示し、(a)は圧電共振子を収納した容器本体の平面図及び断面図、(b)は蓋の平面図及び断面図、(c)は組立て後の斜視図である。
【図3】容器の配列と配線を示す斜視図であり、(a)は圧電共振子を直列に接続した場合、(b)(c)(d)は圧電共振子を並列に接続した場合であって、夫々絶縁方法等を変えて示している。
【図4】温度センサーと共振周波数計測部との接続方法を示し、(a)は通常の導線を用いる方法、(b)はループアンテナを用いる方法、(c)は温度センサーの接続端部内にループアンテナを組み込んだ方法を示す。
【図5】従来の熱電対を用いた温度センサーを示す。
【図6】図5に示す温度センサーの一部拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には本発明による温度センサーの概略が示されている。(a)は保護管20が直線状をなす温度センサー10であり、(b)は保護管20が90度折れ曲がってL字状をなす温度センサー11である。(c)は温度センサー10の一部を拡大した断面図を示している。
【0015】
保護管20の一端には2つの端子51を備える接続端部70が設けられ、2つの端子51から保護管20の内部を往復するようにリード線50が設けられている。リード線50は、電気伝導性に優れる銅線又は銀線が好ましいが、高温で使用する場合には、耐熱、耐酸化性に優れる白金線とすることが好ましい。リード線50には、容器30に収納された圧電共振子40が複数接続されている。圧電共振子40の接続は、図1(c)では直列としているが、並列とすることも可能である。
【0016】
保護管20は、ステンレス管を用いることも多いが、焼成炉や拡散炉等のように高温であるとともに清浄な処理環境を必要とする場合には、セラミックとすることが好ましい。ただし、本明細書において「セラミック」という用語は、「石英」を含む意味で用いることとする。比較的入手し易い材料としては、例えば、外径が8mmで内径が6mmの炭化珪素管や、外径が13mmで内径が8mmの石英管を使用することができる。
【0017】
図2に示すように、圧電共振子40は、セラミック製の容器30に収納することが好ましい。図2(a)に記載しているように、圧電共振子40の表面及び裏面には、夫々電極端子41が取り付けられている。電極端子41を取付けるために、圧電共振子40の両面は、白金のメタライズ等により導電性が高められていることが好ましい。
【0018】
電極端子41の素材は、電気伝導性に優れる銅又は銀が好ましいが、高温で使用する場合には、耐熱、耐酸化性に優れる白金とすることが好ましい。そして、白金等でメタライズされた圧電共振子40の両面に、白金線等を直接接続することができる。
【0019】
圧電共振子40は、いわゆる圧電素子と呼ばれるものであって、温度とともに共振特性が変化することを利用して、温度を測定することができる。すなわち、両電極端子41に交流信号を供給するとともに周波数を変化させて圧電素子40の共振周波数を測定することにより温度を知ることができる。圧電共振子40としては、従来から水晶共振子が使用されているが、より高性能のものも開発されている。
【0020】
特に、ランタン、ガリウム、タンタル、アルミニウム及び酸素から成る結晶でLTGAと呼ばれるものは、好ましい条件を揃えている。例えば、比較的安価に製造可能であるとともに、高温における周波数特性が一定であり、1200℃まで安定して使用することができる。また、ヒステリシスも認められない。ここで、圧電共振子40の大きさは、厚さ100〜150μmの板状であり、5mm程度の円板状又は角板状で使用する。
【0021】
容器30は、圧電共振子40を収納する本体31と蓋32により形成されており、図2(c)に示すような箱状をなしている。容器30の素材としては、アルミナ等のセラミック製とすることにより、高温でも安定して使用することができる。或いは、温度測定対象物がシリコンである場合には、同一条件とするためにシリコンとすることが好ましい。容器30の大きさとしては、例えば、縦横が7mmで厚さが1.5mm程度とすることができる。本体31と蓋32との接合部、或いは電極端子41の取出し部は封止して、容器30の内部を気密に保持することが好ましい。これにより、圧電共振子40の安定性が一層確実となり、経時的変化を生じることがなくなる。
【0022】
図3には、容器の配列と配線及び絶縁方法を示している。保護管20内の配線は、往復するリード線50が2本のみとなる。このため、従来の温度センサー91の保護管92と比較して、保護管20内は飛躍的に簡略化され、保護管20を小型化することが可能であり、或いは、温度測定点を大幅に増加することが可能である。
【0023】
リード線50の絶縁用被覆材としては、比較的低温で使用する場合には、ポリイミド等を用いることができる。高温で使用する場合には、セラミック絶縁管や、セラミック繊維を編組して筒状に形成したスリーブ61を用いることが好ましい。
【0024】
図3(a)は複数の圧電共振子40を直列に接続した場合を、図3(b)は並列に接続した場合を示し、何れも片方のリード線50をスリーブ61で被覆しているが、往復する両方のリード線50を被覆することもできる。セラミック繊維製の紐で縛ることにより、スリーブ61をリード線50に固定することができる。
【0025】
図3(c)は、図3(b)の例において、リード線50と並べて支持棒65を配列した例を示している。白金であってもリード線50は高温で軟化するが、セラミック繊維製の紐を用いてリード線50を支持棒65に固定することにより、圧電共振子40を収納した容器30の位置を固定することができる。また、温度センサー10の組立てにおいても、保護管20内に複数の圧電共振子40を容易に挿入することができる。ただし、L字状の温度センサー11においては、支持棒65は一方の側のみに使用することとなる。
【0026】
図3(d)は、リード線50の絶縁用材料として、セラミック製の2穴絶縁管62を用いた例である。2穴絶縁管62は、直線状の温度センサー10における使用に適し、最も確実に絶縁することができる。2穴絶縁管62は、例えば、断面が長径3mm短径1.5mmの楕円状で、直径0.8mmの穴を2つ備えるアルミナ絶縁管を用いることができる。また、類似の絶縁物として、外径1.2mmで直径0.8mmの穴を備える1穴の石英ビーズを用いることもできる。
【0027】
図4は、温度センサー10等を用いて、複数の点の温度を測定する方法を示している。図4(a)に示すように、温度の測定には、ネットワークアナライザを内蔵した温度測定装置80を用いる。温度測定装置80は、温度センサー10内の複数の圧電共振子40を備える回路に、周波数の変化する高周波の交流信号を供給することによって、圧電共振子40の共振周波数を測定することができる装置である。
【0028】
各圧電共振子40の温度と共振周波数との関係は、相互に異なっている必要がある。しかしながら通常の用途においては、温度測定のスタートにおいて、全点を同一温度とすることが可能であり、連続的に測定を継続することが可能であるため、それほど大きく異なる必要はない。例えば、同一周波数で共振する温度が20〜30℃異なっていれば、使用可能となることが多い。この結果、測定点数が多くなっても、掃引する周波数帯域はそれほど広げる必要がない。
【0029】
圧電共振子40を直列に接続した場合と並列に接続した場合では、総合的なインピーダンスが変わってくるが、温度測定の方法は全く同じである。すなわち、温度測定の範囲から、これに必要な周波数帯域を定め、この周波数帯域で周波数が変化する交流信号を、繰り返し供給することにより、各点の温度を連続して測定することができる。連続して測定することにより、各点を特定して、正確に区別することができる。
【0030】
温度センサー10と温度測定装置80とは、必ずしも導線で接続された回路である必要はない。図4(b)に示すように、温度センサー10と温度測定装置80とを2つのループアンテナ81で接続することが可能である。2つのループアンテナ81を介して、高周波の交流信号を供給と受信をすることができるからである。或いは、図4(c)に示すように、ループアンテナ81アンテナを内蔵した接続端部71を備える温度センサー12とすることによって、(b)と同様に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の温度センサーは、多点測定用の温度センサーであって、保護管を小さくすることが可能であり、取り扱いを容易にすることが可能であり、温度の測定精度を高くすることが可能である。また、大きな接続端部を必要とせず、安価とすることが可能であり、温度測定に経時的変化を生じることがない。該本発明の温度センサーは、半導体の分野等で、今後、大いに使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0032】
10、91 温度センサー
20、92 保護管
30 容器
31 本体
32 蓋
40 圧電共振子
41 電極端子
50 リード線
51 端子
61 スリーブ
62 2穴絶縁管
65 支持棒
70、71、97 接続端部
80 温度測定装置
81 ループアンテナ
93 熱電対
93a 測温部
98 接続装置
99 補償導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多点測定用の温度センサーであって、
保護管内に往復するリード線を備え、温度特性が互いに異なる複数個の圧電共振子が、前記リード線に直列又は並列に接続されていることを特徴とする温度センサー。
【請求項2】
前記圧電共振子が、容器内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の温度センサー。
【請求項3】
前記容器の内部が、気密に封止されていることを特徴とする請求項2に記載の温度センサー。
【請求項4】
前記容器が、セラミック製であることを特徴とする請求項2又は3に記載の温度センサー。
【請求項5】
前記圧電共振子が、白金線からなる端子を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の温度センサー。
【請求項6】
前記リード線を絶縁するために、2穴絶縁管が用いられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の温度センサー。
【請求項7】
前記圧電共振子及び前記リード線を固定するために、支持棒が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の温度センサー。
【請求項8】
前記圧電共振子が、ランタン、ガリウム、タンタル、アルミニウム及び酸素からなる単結晶で形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の温度センサー。
【請求項9】
前記保護管が、セラミックからなることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の温度センサー。
【請求項10】
前記リード線が、端部にループアンテナを備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の温度センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137322(P2012−137322A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288299(P2010−288299)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所名:日刊工業新聞社 刊行物名及びタイトル:日刊工業新聞 2010年12月3日付 第11面 「900℃まで計測可能 フルヤ金属がセンサー LTGA結晶を使用 半導体関連に拡販」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名:セミコン・ジャパン2010 開設者名:有限会社セミ・ジャパン 開設日:2010年12月1日(水)〜3日(金)(3日間)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【Fターム(参考)】