温度予測システムおよび方法
【課題】高速での温度測定を可能にする。
【解決手段】体に接触したときの温度検出プローブから受信した温度信号に基づき、体温を短時間で予測するサーミスタシステムおよび方法であり、非線形のマルチパラメータ曲線適合プロセスを実行し、曲線の適合における誤差に応じ、パラメータを変えるか、または温度の予測を行う。曲線の適合と温度データとの間の差に対する基準が存在する。所定の数の時間フレームにわたる曲線の適合が許容できない場合、プロセスは、連続モニタステートに切り換わる。予測のための測定時間フレームに基づくスタート時間の判断は、予測遅延時間に結合した組織接触スレッショルドによって実行される。
【解決手段】体に接触したときの温度検出プローブから受信した温度信号に基づき、体温を短時間で予測するサーミスタシステムおよび方法であり、非線形のマルチパラメータ曲線適合プロセスを実行し、曲線の適合における誤差に応じ、パラメータを変えるか、または温度の予測を行う。曲線の適合と温度データとの間の差に対する基準が存在する。所定の数の時間フレームにわたる曲線の適合が許容できない場合、プロセスは、連続モニタステートに切り換わる。予測のための測定時間フレームに基づくスタート時間の判断は、予測遅延時間に結合した組織接触スレッショルドによって実行される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義で温度計の改良に関し、より詳細には、複数の患者測定サイトから、正確な温度測定値を短時間で得るための電子予測式温度計に関する。
【0002】
病院および医者のオフィスのような医療分野では、温度を測定し、測定した温度をディスプレイする感温デバイスにより、患者の体温を測定することが、一般的なやり方である。このようなデバイスは、温度に応答する水銀柱を内蔵するガラス球温度計であり、水銀柱は、較正された温度目盛りの近くで膨張したり、収縮したりする。一般に、ガラス式温度計を患者に挿入し、温度計の温度が患者の体温で安定できるようになるまで、十分な時間インターバルだけ放置し、その後、医療要員によって、温度を読み取るために取り外される。この時間インターバルは、通常2分〜9分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガラス球温度計などを使用する従来の温度測定方法は、多くの大きな問題を生じやすい。温度測定にはかなりの時間を要し、年齢や病弱のために、必要な時間だけ体温計を体に挿入したまま、適正に保持しておくことができない患者にとっては、体温測定をするのに、比較的長時間の測定サイクルの間、医療要員が物理的にそばに付き添っていなければならないので、注意を他の仕事に向けることができなくなる。更に、ガラス球温度計は、読み取りが容易ではないので、特に不十分な照明の下では、または急を要するような読み取り時には、人為的な誤差が生じやすい。
【0004】
従来、直接読み取り電気式温度計測器と組み合わせて作動するようになっている温度検出プローブを使用することにより、ガラス球温度計のこれら欠陥を最小にするか、または解消するよう、種々の努力がなされてきた。ある解決方法では、プローブの端部に、サーミスタのような電子式感温デバイスを取り付け、このデバイスを患者に挿入する。特定の状態に応じ、デバイスの電圧または電流の変化がモニタされ、出力信号が安定したときに、温度がデジタルフォームでディスプレイされる。このことは、一般に、直接読み取り方法と称される。この方法によると、測定された温度の読み取りミスによる誤差が発生する可能性は小さくなるが、安定した温度表示に達するには、依然として、比較的長い時間がかかる。代表的な触接読み取り方法またはモードでは、温度表示を得るには、どこでも3分〜5分が必要である。
【0005】
電子温度計の固有の特徴は、温度計が触れた体の温度を瞬時に測定できないことである。そのため、温度計が表示する温度が、測定される実際の体温を表示するまで、かなりの時間がかかる。この時間の遅れは、体の表面から温度センサまでの熱の流れを阻害する測定システムの種々の要因によって生じるものである。この要因の一部として、センサの先端、体の皮膚および組織、および測定対象の間の汚染を防止するためのセンサの先端に取り付けられた衛生カバーを挙げることができる。
【0006】
上記欠陥を克服する1つの試みとして、プローブが患者との平衡状態に達する前に、患者の温度の直接デジタル表示を得るために、予測または推定回路に結合された感温電子プローブを使用する方法がある。測定時間中、患者の体温が大幅に変化しないことを想定するこの解決方法では、電子温度計の熱安定時に患者に広がる温度を、測定温度から予測し、熱安定に達する前に、この温度をディスプレイする。従来の多くのデバイスでは、ある時間にわたり、測定温度をモニタし、その微分値を計算し、患者の温度を予測するように、この微分値を処理することによって、温度の予測が行われている。
【0007】
最終的な安定した温度を予測することによって作動する電子温度計を用いた場合、利点として、熱安定状態に達する前に、温度測定を完了し、測定にかかる時間を短縮できることを挙げることができる。そのため、全測定時間にわたって、患者がプローブを正しい位置に保持しない危険性は低減され、医療要員の付き添い時間が短くてすむ。別の利点として、体温はダイナミックであり、従来の水銀ガラス式温度計による測定のための2分〜8分の間で、大幅に変化するので、短時間の測定は、よりタイムリーな診断情報を提供できることが挙げられる。しかし、かかる温度計の欠点は、データの処理および解析を正確に実行しなければ、温度を予測する精度が顕著に低下することである。
【0008】
予測タイプの処理および温度測定を使用する電子温度計は、感温トランスジューサとして、サーミスタを備えていることがある。このサーミスタは、極めてゆっくりと生じる温度変化の最終増分量と共に、漸近的に最終安定温度に接近するが、温度変化の主要部分は、比較的急速に生じる。図1は、かかる温度応答を示している。代表的なサーミスタにおける測定時間22と温度24の関数としてプロットされた測定温度20のグラフが示されている。
【0009】
上で説明したように、サーミスタが示す温度20は、測定中の被験者の実際の体温TF26に対して、時間が遅らせられる。この時間遅れは、測定された温度ライン20と被験者の実際の温度ライン26とを比較することによって理解できる。スタート時間t0から測定が進むにつれ、温度は、時間t0からt1の間で、TRからT1まで急速に高くなる。表示された温度の増加レートは、時間t1とt2との間で小さくなり、温度ラインは、時間がより長くなるにつれ、漸近的に安定化温度TF26に徐々に接近する傾向がある。
【0010】
上で説明したように、本発明は、測定の初期の時間、例えば時間t1とt2との間で収集された温度データを解析し、最終温度TFを予測できるシステムに関するものである。従来、初期の、より急速な温度変化をモニタし、この温度変化からデータを抽出し、サーミスタが実際に組織の温度で安定化するまでの長時間、その時間でサーミスタに接触する組織の実際の温度を推定する試みがなされてきた。
【0011】
サーミスタが患者との平衡状態に到達する前に、組織の温度をより急速に推定するために実施されている従来の方法は、応答の初期において、データポイントからサーミスタのデータポインにトをサンプリングし、サーミスタの応答のカーブ形状を予測することである。このカーブの形状から、カーブの漸近線、従って安定化温度を推定できる。より簡単なシステムを例として、この原理を説明するために、図2に示すような等しくない温度の2つの体に関係する熱伝達について検討する。一方の体は、熱質量が大きく、他方は熱質量が小さく、時間=0において、互いに接触した状態に置かれている。時間が進むにつれ、小さい熱質量、および大きい熱質量の温度は、安定化温度と称される温度と平衡状態となる。このプロセスを示す式は、次のとおりである。
【数1】
ここで、T(t)は、時間を関数とするより小さい方の体の温度、
TFは、システムの安定化温度、
TRは、小さい方の体の初期温度、
tは、時間、
τは、システムの時定数である。
【0012】
この関係から、温度Tが、時間tにおける2つのポイントで既知であるとき、例えば時間t1においてT1であり、時間t2においてT2であるとき、次の式2を適用することによって、安定化温度TFを予測できる。
【数2】
【0013】
更に、式1が示すタイプの簡単な一次熱伝達システムに対して、温度の第1時間微分の自然対数は、次のように、−1/τに等しい傾きを有する直線となる。
【数3】
および
【数4】
ここで、
【数5】
であり、ここで、K=TR、TFおよびτに依存する定数、
T’=温度の第1微分、
T”=温度の第2微分である。
【0014】
従来の技術は、温度平衡曲線の解析に対し、この簡単な一次の関係を適用したものであった。ある場合には、サーミスタのメーカーが設定したサーミスタの時定数を活用していた。しかしながら、これらの技術のいずれも、温度応答曲線を正確にモデル化できないということを認識していなかった。その理由は、患者の組織および血管系と衛生プローブカバー、センサおよびプローブのステムとの複雑な熱力学的な相互作用によって、応答曲線が決定されるからである。
【0015】
温度計を、体の組織、例えば患者の口に接触させると、応答曲線はその組織に対するプローブの物理的な配置、特定組織の熱伝達特性、プローブと組織とを分離する衛生プローブカバー34(図2)、および図3に示すようなプローブの検出先端とシャフト36を通過する熱伝達により、応答曲線は影響を受ける。図3におけるこれらファクター36の各々は、サーミスタからの熱の流れに影響し、各々は熱抵抗および熱容量を含む異なる熱力学的質を有する。生物学的ファクター38も、サーミスタに対する熱の流れに影響し、患者の間で、特に年齢および体の組成と共に大幅に変化する。
【0016】
構造体の空間的な幾何学的形状と組み合わされたこれらファクターは、サーミスタで検出される温度が、サーミスタ単独のアプリオリに工場で供給されるサーミスタの時定数を使って得られるような簡単なモデルから予測できるよりも、より複雑な特性曲線により、表わされる。
【0017】
従来の推定技術は、皮膚接触に従う温度上昇は指数曲線(いわゆるニュートン加熱)に従うとの仮定に依存していた。図2に示すように、センサを加熱するのに、熱の無限で、かつ良好に撹拌されたソースを利用できるという条件下で、このモデルは正確となる。比熱を有し、初期温度「TW(0)」を有する水の大きいソース30内に浸漬された温度センサまたはプローブ32に、プローブカバー34が取り付けられており、このプローブは、熱質量Mおよび初期温度TP(0)を有する。このプローブカバーは、熱抵抗Rを有し、これら理想的な条件下では、水の浴からプローブまでの熱の流れは、次の簡単な式によって制御される。
【数6】
【0018】
任意の時間におけるプローブ温度の微分方程式を解くと、水に浸漬した後の任意の時間tにおけるプローブ温度に関し、次の方程式が得られる。
【数7】
【0019】
熱上昇の時定数は、主として、プローブの熱質量と、プローブカバーの熱抵抗であるRの積Mによって決定される。
【0020】
体の一部、例えば口または腋下に接触するように配置された温度プローブの加熱に対し、このような単純なモデルを適用することは、プローブの中間領域における組織の有限熱容量および皮下層でスタートし、内部の構造まで進む組織の連続する層の熱抵抗を考慮していない。
【0021】
特にプローブの温度が上昇するにつれ、プローブに接触している中間領域からの熱が除去されているので、プローブに熱が達するには、別の熱エネルギーが、より多くの組織を通過しなければならない。従って、このようなリモート熱エネルギーは、より近くの領域から、プローブ内に流れ込んだ熱エネルギーよりも時定数が長い。
【0022】
任意の時間tにおいて、現在の値と最終値との間には、次の式で示すような温度差が生じる。
【数8】
従って、式2が予測する温度の変化レートが、時間内の任意のポイントにおいて、温度変化の一定比率のままに留まることを考慮することにより、体の沿い機内の複雑な熱伝導をモデル化するための、式2の限界について理解できると思う。
【0023】
従って、安定温度を予測でき、一次のモデルとは異なり、測定下の体、および測定システム自身の双方の、変化する熱の流れ特性に適合できる測定システムに対するニーズが生じている。安定温度を示す、可能性のある温度上昇曲線を生じるのに、実時間で解かれる同時方程式の組を使用する予測技術が、従来提案されている。成功するには、かかる技術は、上昇曲線の形状に適当に近似できるよう、かなりの数の係数を有する方程式を使用しなければならない。実際には、使用できる項の数が限定されているので、かかる解決方法の精度には限界がある。更に、極めて簡単な小電力のマイクロプロセッサ回路を、サーミスタで使用するとき、かかる方程式を計算によって解くことは、簡単なことではない。
【0024】
更に、メーカーは、極めて複雑で高度な医療装置を開発できるが、このコストの問題も、常に念頭に入れなければならないことにも注目すべきである。メーカーは、広範な種々の患者に利用できるように、医療機器のコストを、できるだけ低く維持しようと努力している。計算をより高速で実行し、より多くの回数、計算を実行できるようにするためには、より大型のプロセッサを設け、計算速度がより高速であり、メモリサイズがより大きい温度計を利用することとなるが、これには、コストの問題が生じる。このような処理パワーの増加は、実質的に温度計のコストを上げ、従って、多くの患者が入手できないことになる。
【0025】
その代わりに、当業者であれば、コスト的に効率的であるが、健全かつ、正確で、高速で実行できるアルゴリズムを使用することにより、複雑な温度データ処理によって、患者の体温を、正確かつ高速で予測できる温度計を要望すると思う。
【0026】
1つの温度計で、患者の口内、直腸内および腋下部分で体温を測定できる温度計が求められていることも、よく知られている。体温測定に利用するために、これらサイトのうちの1つ以上を使用できない特定の患者との間で、種々の要因が作用することがある。従って、これら3つのすべてのサイトで測定できる温度計は、別々のサイトに対して、異なる温度計を探さなければならない場合に比して、利点を有することになる。患者の腋下部で体温を測定することは、口および直腸部で測定することと大幅に異なることを認識しなければならない。
【0027】
多くの場合、腋下部に対するプローブの温度応答は、口および直腸部とは大きく異なる。この部分は、脂肪組織の下方の層を有する粘液のない皮下組織から構成されているという事実のために、腋下に位置するプローブの温度応答の曲率は、口および直腸サイトの曲率よりもかなり平坦的である(曲線100は、口部における代表的な曲線であり、曲線102は腋下部における代表的な曲線である図6を参照されたい)。
【0028】
従来の予測可能な温度計測技術は、電子温度計測技術を大きく前進させたが、当業者は、測定条件および測定下の被験者特性が測定と測定との間で変化する測定プロセスの早期ステージにおいて、安定温度を予測できる電子温度計に対するニーズがまだあると認識している。更に、多数の測定サイト、例えば口、直腸、および腋下部のすべてにおける患者の体温を測定し、予測できる単一温度計に対するニーズが存在することも認識されている。更に、比較的簡単で、安価な回路を有する、正確な医療用温度計に対するニーズもある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、簡単に言えば、測定プロセスの初期段階において、被験者の体温を予測することにより、被験者の体温を測定するための温度計および方法を提供するものである。本発明の温度計および方法は、モデル曲線をモニタされた温度データと合致させるように、多数のパラメータを含む非線形モデルを適合させるものである。これらのパラメータは、温度上昇曲線の初期部分において、予測プロセスの結果得られるモデル曲線からパラメータが選択され、センサ、すなわち被験者の平衡温度が予測される。このように、予測プロセスは、温度計のプローブの熱特性だけでなく、被験者の解剖学的部分、および生理学的特性に対して適合可能であり、比較的少ないデータ収集、およびデータ処理で済み、センサの平衡温度の正確な予測を行うことができる。
【0030】
詳細な特徴として、パラメータのうちの1つ、すなわち、曲率インデックスCが、選択された解剖学的サイトに対して、適当な値のレンジにわたって評価される。本発明に係わる温度計システムおよび方法の適応可能な特性により、1つの温度計で、患者の多数の部分の測定をすることができる。
【0031】
他の特徴によれば、センサは、被験者の体温の検出に応答して、温度信号を発生し、この温度信号は、時間と共に変化する。選択された第1の時間フレームにわたって、プロセッサは温度信号をモニタし、第1時間フレームの温度サンプルの選択された特徴的サブセットを決定し、モニタされた温度信号の特性のパラメータに適合する非線形曲線の一組の計算に基づいて、かつモデル曲線に基づいて、モデル温度曲線を、提供または適合させ、被験者の体温を予測する。より詳細な特徴として、プロセッサは、センサが被験者の体温に達するまでの時間から、第1の時間フレームを選択し、パラメータに適合する非線形曲線を使用し、被験者の体温の予測を計算するために、モデル曲線を提供する。
【0032】
別の、より詳細な特徴によれば、プロセッサはモデル曲線とモニタされた温度データとを比較し、その差がスレッショルドを越えなければ、プロセッサは、モデル曲線から被験者の体温を予測し、これをディスプレイする。
【0033】
別のより詳細な特徴によれば、プロセッサは、選択された領域に対して決定されたモデルパラメータを使用し、選択されたモデルパラメータの線形関数であるオフセット項を計算する。
【0034】
更に別の詳細な特徴によれば、オフセット項を計算するのに使用されるモデルパラメータは曲率パラメータに関係している。
【0035】
別のより詳細な特徴によれば、プロセッサは選択された予測ウィンドーのスタート前に時間遅延を使用し、選択されたモデルパラメータの線形関数であるオフセット項を計算する。
【0036】
さらに別の特徴によれば、プロセッサは、選択された第1時間フレームの非線形曲線適合と所定の完全性基準とを比較し、第1フレームからの予測温度が完全性基準を満たしていない場合、プロセスは、被験者の体温の計算から、第1時間フレームを排除する。
【0037】
別の特徴によれば、プロセッサは、モニタされた温度データの特性と完全性基準とを比較し、モニタされた温度データの特性が完全性基準を満たしていない場合、プロセッサは被験者の体温を予測するためにこれらデータを使用しない。
【0038】
更に別の詳細な特徴によれば、完全性基準のうちの1つは、モニタされた温度データの曲率の質を含む。
【0039】
更に別の詳細な特徴によれば、完全性基準の別の基準は、モニタされた温度データの傾き限度を含む。
【0040】
更に別の特徴によれば、モニタされた温度データが完全性基準を満たさない場合、プロセッサは完全性基準と比較するために、モニタされた温度データの別のウィンドーを選択する。
【0041】
更に別の特徴によれば、プロセッサは、被験者の体温を測定する際に、選択された第1時間フレームが排除された場合に、第2の選択された時間フレームにわたって温度信号をモニタする。
【0042】
更にプロセッサは、1つの特徴によれば、第1時間フレームの後に生じる第2時間フレームを選択し、別の特徴によれば、プロセッサは、第1時間フレームにオーバーラップする第2時間フレームを選択する。
【0043】
別の特徴によれば、プロセッサは、被験者の体温の決定から前の時間フレームが排除された場合に、複数の選択された異なる時間フレームにわたって、温度信号をモニタし、モニタされる複数の時間フレームの数を、センサが被験者の体温に達する前の所定時間内の時間フレームの数に制限する。
【0044】
別の特徴によれば、プロセッサは、センサが被験者の体温の検出を開始するスタート時間を決定し、プロセッサは、スタート時間後生じる温度信号を含むように、第1時間フレームを選択する。
【0045】
より詳細な特徴によれば、プロセッサは、センサからの温度信号の現在の値を計算することにより、被験者の体温をセンサが検出していると判断し、現在の値が、組織接触スレッショルド温度を越えていると、計算に基づきスタート時間を設定する。
【0046】
本発明の特徴を例示する添付図面を参照して、次の詳細な説明を読めば、本発明の上記以外の特徴および利点が明らかとなると思う。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】患者に接触している温度プローブ内に取り付けられたサーミスタセンサの温度平衡を示すサーミスタセンサデバイスの代表的な漸近応答曲線のグラフである。
【図2】平衡状態に達するための第1温度と第2温度との間の熱の流れを示す、流体が第1温度よりも高い第2温度となっている大きな流体浴内に浸漬されている、第1温度を有する小さい物体の図である。
【図3】内部器官によって生じ、主要血管およびその他の組織を通り、プローブカバーおよびその他のデバイスを通って広がり、最後にサーミスタに到達するが、サーミスタから空気、ハンドルを通り、更にサーミスタから熱を伝えるデバイスおよびその他のものを通ってプローブシャフト、更にはオペレータにも流れる熱を示す、患者の体温を測定するプロセスの熱流図である。
【図4】2つのプローブ、プローブカバー、ディスプレイおよび被験者の体温を測定するのに有効な入力手段を有するポータブル体温計の正面図である。
【図5】平衡状態に達する前に得られた温度データを分析することに基づき、患者の体温を予測することにより、システムの温度センサと患者との最終平衡状態前に、患者の体温を決定するための、本発明の原理に従ったシステムのブロック図である。
【図6】本発明の様相に係わる、体温を予測し、ディスプレイするための温度データ収集および処理を示すフローチャートである。
【図7】口内および直腸内測定サイトにおける温度測定のための曲率を示すサーミスタセンサデバイスの応答曲線例、および腋下サイトにおける応答ラインの曲率が口内、直腸内サイトにおける応答ラインの曲率よりも小さいことを示す、腋下サイトにおける温度測定のための第2ラインを示すグラフである。
【図8】被験者の体温を予測するための、本発明の様相に係わる、組織接触スレッショルド、予測スタート遅延、予測スタートおよび予測完了ポイントを示す温度のグラフである。
【図9】モデル曲線をデータ曲線に適合させ、限度内で適合したときに被験者の体温を予測するために、被験者のためのデータ曲線と共に使用すべき所定のAi、BiおよびCiパラメータの異なる組によって形成されたモデル温度曲線の一組である。
【図10】モデル温度曲線を実際に測定されたデータポイントに適合させ、モデル曲線がデータに許容できる程度に適合したかどうかを判断する際に使用すべき、実際のデータポイントの各々とモデル曲線との間の差を決定する曲線を示す図である。
【図11】予測において使用される最終組織接触ポイントを示すと共に、予測スタート遅延および予測サンプルのスタートを示す、図8の温度グラフの各大部分である。
【図12】本発明の様相に係わる方法の特徴に係わるデータフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次の説明では、異なる図面中における同様の、または対応する要素を示すのに、同様な符号を使用している。
【0049】
図4には、本発明の新規な特徴を含む電子温度計40の一実施例が示されている。この電子温度計は、温度計の本体46に、導線44で接続された患者の体の所定の部分の温度を検出するためのプローブ42を備えている。このプローブは、本体の保管用ウェル48から取り出すようになっており、温度計の本体は、電気部品および温度計の電源を含み、更に温度の値、およびエラーメッセージ、またはアラームメッセージをディスプレイするためのディスプレイ50と、第1入力デバイス52をも有する。この入力デバイス52は、この場合、ディスプレイの下に位置するオンオフスイッチとなっている。
【0050】
温度測定中にサイトの特性を検討するのに、サイトおよび温度データを処理するための方法を、より適切に選択できるよう、本体の正面パネル56には、MODEスイッチ54も設けられている。一実施例では、このMODEスイッチは、FAST ORAL(高速口内測定)、FAST AXILLARY(高速腋下測定)、FAST RECTAL(高速直腸内測定)を選択するようになっている。温度計には、第2プローブ58も含まれており、この第2プローブは、本体のウェル60内に挿入された保管位置に示されている。
【0051】
本発明によれば、患者の口内温度、および腋下温度を測定するために、1つのプローブを使用し、直腸内温度測定をするのに、別のプローブを使用するようになっている。患者に接触する前に、プローブを覆うように取付けられる衛生カバー62も示されている。
【0052】
図5に示すブロック図は、本発明の態様における温度計40の一実施例の主要な電子部品を示している。温度センサ42は、測定中に検出される温度に応答して、温度信号を発生する。患者とプローブのセンサとの間には、プローブカバー62も存在する。温度センサとしてサーミスタを使用する場合、信号は、サーミスタの抵抗を示す。従って、検出された温度を示すアナログ電圧となっている。
【0053】
温度を表示するこれらの信号は、増幅器70によって増幅され、アナログ−デジタルコンバータ72により、更に処理ができるよう、デジタル状に変換される。アナログ−デジタルコンバータは、デジタル化された電圧信号を受信し、この信号を処理して、被験者の温度を決定するプロセッサ74に接続されている。その後、信号データを分析できるよう、アルゴリズムと共に、温度および時間信号データを、メモリ76が記憶するようになっている。
【0054】
信号が一旦処理されると、プロセッサは、予測された安定温度をディスプレイするために、ディスプレイ78へ信号を送る。プローブは、ヒーター電源80によって制御されるヒーターデバイスを含んでいる。プローブが本体のウェルから引き抜かれた場合、プロセッサは、ヒーター電源をオンにすることにより、プローブの温度を設定ポイントまで上昇させるよう、プローブのヒーターを制御する。この設定ポイントは、一般に93°F(33.9℃)であるが、別の温度を選択することもできる。
【0055】
スイッチを付勢すると、温度計の温度測定機能が無能化される。このスイッチは、プローブを取り外すと、自動的に測定が可能となるように、プローブの保管ウェブ内に位置していることが好ましい。種々の部品の電力要求を満たすために、電源82が設けられている。図を明瞭にするために、電源と部品との間の特定の接続は示されていないが、当業者であれば、かかる接続については理解できると思う。
【0056】
図5の特定の実施例には、電子予測温度計が示されているが、この温度計は、単に本発明を説明するためのものにすぎない。メモリ76は、実際には多数のメモリデバイスを含むことができる。プロセッサ74は、多数のプロセッサを含むことができ、ユーザーインターフェース78は、多数のスイッチまたはディスプレイを含むことができる。当業者であれば、図5について種々の変形が可能であることは明らかであると思う。
【0057】
次に図6を参照する。図6には、本発明の様相に係わる方法の一実施例の一般的な機能(タスク)が、これらの間で流れるデータと共に示されている。このタスクは、同時に実行してもよいし、またはシーケンスで実行してもよい。図示されている一部のタスクは、システムが実行する特定の測定中に実行されなくてもよい。データフローは、付勢シーケンスを意味するものではなく、この図では、制御および付勢については示されていない。
【0058】
温度計のシステムを初期化し(90)、温度センサからのデータの発生が開始される。十分な温度サンプル(データ)が取得されると、このサンプルは、フィルタにかけられる(92)。このフィルタリングは、実現されるフィルタのタイプ、順序、およびモデルに応じて決まる。あるケースでは、簡単なボックスカー平均/分割器が使用される。他の、より複雑なフィルタを使用することもできる。次に、予測温度94を計算する際に、プロセッサによりフィルタにかけられた温度データが使用される。予測された温度の受け入れ可能な計算を行うと、この温度がディスプレイされる。
【0059】
次に、3つの口内サイト、直腸内サイト、および腋下サイトの各々に対し、温度予測をするための手段の一般化された実施例について説明する。選択されたサイトのオペレータによる選択により、そのサイトで使用するための制御パラメータをスレッショルドの選択された組が決定される。
【0060】
ABCE非線形のマルチパラメータ曲線の適合予測の概観
組織接触に続いて生じる、フィルタにかけられた温度サンプル(ウィンドー)のシーケンス(図8参照)に、非線形のマルチパラメータモデル(式9)を適合することにより、(センサが患者の温度と平衡状態に対すると予想される時間のような)将来の所定の時間における温度の推定または予測を実行する。
【数9】
ここで、
Tfit(n・τ)は、特定の時間t=n・τ°Fにおける温度の推定値、
nは、「予測スタート」のための条件を満たす第1サンプルにおいて、0に初期化された整数のサンプルインデックス、
τは、サンプル当たりの秒数(sec)、
Aは、「オフセット」パラメータ(°Fまたは℃)、
Bは、「スパン」または「レンジ」パラメータ(°Fまたは℃)、
Cは、「曲率」または「平衡レート」パラメータ(sec−1)、
Eは、温度データの曲線に良好に適合させるためにモデル曲線の曲率を非線形に変えるために使用できる「タイムワープ」ファクター(無単位)である。
【0061】
第1ウィンドー内で行われる適合が、予測のための基準を満たさない場合、1つの測定サンプル(10個のサンプルの平均値の2分の1、下記のTAD計算の詳細を参照)だけ前方に、ウィンドーをスライドし、モデルパラメータを再計算する。
【0062】
CおよびEの多数の離散値の各々に対し、線形最小二乗最適化方法を使ってモデルパラメータ(A、B)を計算する。モデル曲線の値およびウィンドーデータ要素の値の間の差として測定された最小の(合計二乗誤差)を得るA、B、CおよびEの解を、そのウィンドーに対してそれぞれAm、Bm、CmおよびEmとする。この値は、所定のスレッショルド未満であり、他の曲率の質(下記に説明するCQI)および傾き条件(下記に説明するウィンドースロープ)が、このウィンドー内で満たされた場合、下記の式10を使って温度を予測するのにパラメータABCを使用する。
【数10】
ここで、
D(Cm)は、曲率調節ファクター、
D(T)は、時間調節ファクター、
Doは、オフセット定数、
wは、予測スタートが生じてから経過した秒数、
n・τは、温度を推定すべきときの予測スタート点に対する将来の秒数である。
【0063】
図10の実施例では、Cmに対する指数E(式9参照)は、1に設定されていることが理解できると思う。しかし、別の実施例では、温度データの曲率に、モデル曲線をより正確に適合させるために、1以外の値にこの指数を設定できる。温度データは時間に依存している。すなわち、各データポイントは時間内の離散的ポイントで取り込んだものである。
【0064】
温度データ「曲線」を示すために、データポイントを相互に接続すると、かかる曲線は一方の軸線として時間を有し、従って、時間曲線と見なすことができる。この指数Eは、温度/時間データの曲率により正確に一致するよう、モデル曲線の曲率を非線形に変えるので、タイムワープファクターと称されている。その理由は、この指数は、時間的な意味でモデル曲線を変えるからである。データ曲線により正確に一致するように、指数Uを変えるには、より長い処理時間とパワーを必要とすることになる。
【0065】
式10で得られるモデル曲線は、組織との接触により暖められたときのプローブの温度のレートを予測するものである。この設計をするには、口内、直腸内、および腋下における熱伝達の差に起因し、腋下の測定と比較した口内、直腸内測定に対しては、Cの値を大きくしなければならない。図7には、おおまかな比較が示されている。グラフライン100は、口内部および直腸部に対する温度応答の代表的な形状を示す。グラフライン102は、腋下部に対する温度応答の代表的な形状を示す。口内部および直腸内部に対する曲率は、腋下部の曲率よりもより大きくなることが明らかである。腋下モード対口内/直腸内モードでも、一部の制御パラメータおよびスレッショルドは異なる。これらの差については後述する。
【0066】
更に、一旦ファクターの種々の値を決定する(A、B、CおよびD)と、平衡温度の予測値を決定するために、n・τの時間を入力できる。一例として、口内および直腸測定に対しては、108秒の値を入力することができ、一方、腋下の測定に対しては、300秒の値を入力できる。式10(Tpredict)を解くと、平衡温度が得られる。
【0067】
ファクターD(C)、D(w)およびD0は、E項を固定したときに、部分的に生じ得る予測値におけるわずかなシステム上の誤差を補償するものである。D(C)は、次の形態の線形調節である。
【数11】
ここで、
Cslopeは、定数、
Cは、最小合計二乗誤差に関連する推定値、
D(w)も、同じく次のような形態となっている。
【数12】
ここで、
wは、現在のウィンドーを評価したときの、予測スタートから経過した時間(秒)であり、
D0は、D(w)およびD(C)のバイアス効果だけでなく、集団研究で統計的に観察されるわずかなシステム上のオフセットを除くのに使用される定数である。
【0068】
使用されるCの値およびD項の値のレンジは、ランダムに選択された広範な被験者の集団の実際の温度テストに基づいて選択されたものである。実際の温度テストに基づき、これら値のすべては、このような広範な被験者の集団に対する温度の予想性能を最適にするために設定されたものである。しかし、当業者に明らかなように、他の被験者の集団によるテスト結果に応じて、これらの値は変わり得る。測定された実際のデータに応じ、D項の一部またはすべては、値0に進み得ることにも留意すべきである。
【0069】
更に、モデルの曲率を制御するために、式9におけるC項に対する指数Eを使用した場合、D項は必要でないことがあり、0に設定できる。式10の場合のように、指数Eを1にセットしたときのモデル曲線の形状をある程度補償するためにD項が使用される。指数Eを1にセットし、線形のD項を使用するこの実施例は、プロセッサに対する要求を下げ、正確な予測結果を生じさせることが分かっている。
【0070】
推定された温度が、高低の予測限度外にある場合、計測機器は、自動的に連続モニタリングステートに移行する。この連続モニタステートは、温度計が患者の応じを予測せず、その代わりに、患者の温度と平衡状態となるまで、単にアクティブなままであるステートのことである。選択される解剖学的サイト、接触、流体結合および加えられる圧力に応じ、この測定には3分〜8分かかる。
【0071】
図8は、予測プロセスの代表的な温度プロフィル、およびキーとなる特徴を示す。プローブ42を、計測器のウェル48(図4参照)から外すと、プローブは、室温周辺温度となる。プローブのヒーター電源80(図5参照)を付勢(110)すると、プローブの温度は、プローブヒーターによりターゲット設定点まで変化するが、特にプローブにプローブカバー62が取り付けられていない場合、数度オーバーシュートし、振動する。次に、プローブカバーをプローブに取り付け、カバーと共にプローブを組織に接触させると、温度は設定ポイントから上昇し、組織接触スレッショルド112を越え、ヒーターをシャットオフする。
【0072】
組織接触スレッショルドを越える未処理(100ms)の温度を検出し、その後、モードに応じた固定された時間の遅延を行うことにより、予測スタートの決定を行う。未処理温度が予測スタート状態に達する前に、組織接触スレッショルドより低下した場合、この遅延時間を延長する。
【0073】
予測スタート64に対する基準を満たす未処理サンプルでスタートし、ブロック内の10の未処理温度サンプルを平均し、フィルタにかけられたサンプルのアレイ(ウィンドー)116を生じさせるように記憶する。10のかかる各平均値を、TAD(温度平均および分割)と称す。TADの値が記録された最大TAD値よりも、1°F(≒0.5℃)だけ小さい場合、組織接触の損失が生じていると仮定するので、計測ステートを連続モニタステートに変える。
【0074】
曲率質インデックス(CQI)およびウィンドーの傾きの値を計算するのに、各ウィンドー内のEADサンプルを使用する。これらの値が、合計二乗誤差(SSE)と共に予測を示すために指定された基準のすべてを満たさなければならない。この基準が満たされなかった場合、次のウィンドーを次のように形成する。推定ウィンドーに各連続する秒に対するTAD値を加算し、個々の成功したウィンドー予測を発生するか、または最大数のウィンドー(MaxNum Windows)に達するまで、最も旧いTAD値を除く。
【0075】
最終ウィンドーに達し、それらのSSE、CQI、およびウィンドーの傾きの値が、特性されたスレッショルドに達しなかった場合、最終ウィンドーのSSEを、スレッショルドFSSEとを比較する。この比較に成功した場合、最終ウィンドーからの予測を行い、成功しなかった場合、計測を連続モニタステートに変える。他の方法で合格した予測に対して、予測された温度が高低予測限度外にある場合、計測は、自動的に連続モニタステートに変わる。
【0076】
他のいくつかの条件は、予測から連続モニタステートへの移行を廃止できる。これら条件はヒーターを制御し、サーミスタの故障に関して、プローブをモニタするソフトウェアールーチンによって設定される。図2は、これら条件の完全性に関して示しており、これについては、本明細書の他の場所において説明する。
【0077】
温度平均および分割(TAD処理)
計測器は、温度プローブ増幅器70(図5)からの電圧をサンプリングし、この値を100ミリ秒のインターバルでデジタル変換する。効率およびノイズ抑制をするために、100ミリ秒(未処理)のサンプルを、簡単なボックス化平均分割器(式13)であらかじめフィルタリングし、1秒のインターバルで、「温度平均され、分割された」または「TAD」サンプルを発生する。
【数13】
ここで、
Nは、TADサンプルの数/ウィンドーであり、第1TADの第1サンプルは予測スタート遅延118以後のサンプルである。次に、予測スタート遅延は、904°F(34.4℃)を第1サンプルが越えることによってスタートする。スタート遅延期間中、未処理温度が組織接触スレッショルドよりも低下した場合、予測スタート遅延タイマーがリセットされる。
【0078】
予測ウィンドーサンプル選択
熱平衡曲線は、いくつかのソースから生じたアーティファクトを頻繁に含んでいる。本発明に係わるシステムおよび方法は、入力データを最適に選択することにより、アーティファクトの効果を回避するように試みている。組織に接触した最初の数秒内で、プローブ加熱の残留効果が平衡曲線の形状に影響し得る。計測器具からプローブを除いた後に、プローブが組織にすぐに接触すればするほど、これらの作用がより生じやすい。プローブカバーの位置/または皮膚によるカバーの圧縮の変化は、組織をカバーとの間の熱抵抗を変える。この変化は、熱平衡曲線の形状および平衡温度の大きさの双方に影響する。
【0079】
ノイズソースの効果を緩和するために、アルゴリズムは、各々が固定された数のTADサンプルから成る時間ウィンドーからの多数の推定値を計算する(図2のブロック図を参照)。特定ウィンドーからの推定値が、予測に適しているかどうか、または測定ウィンドーを次に入力されるTAD値に対して進めなければならないか(スライドしなければならないか)どうかを判断するために、3つの計量値を計算する。
【0080】
1.第1の合否の目安はウィンドーの合計二乗誤差(SSE)(式14)である。許可された最終ウィンドーに達する場合、最終ウィンドーのSSE値を使用して予測をディスプレイすべきかどうか、または信頼性のある予測をできないときに計測が連続モニタステートに移行しなければならないかどうかを判断する。
【数14】
【0081】
2.第2の合否の目安は、曲率の質インデックス(CQI)である。この目的は、温度曲線を正常な下向きの凹状形状(図1参照)から変位させるようなウィンドーTADデータ内のアーティファクトを検出することにある。ウィンドーの第3TADからスタートし、これら曲率を決定するために、3つの各TAD値を評価する。
【0082】
一実施例では、一連の3つのポイントのうちの第2ポイントは、第1ポイントおよび第3ポイントの平均値以上の値を有していなければならない。そうでない場合、CQIは、受け入れできないものと見なされる。ウィンドー内のTADの3つのうちのいずれもが、曲率の基準を満たすことができない場合、ウィンドーは予測に使用できず、アルゴリズムは、ウィンドーを1ステップ(1つのTAD)だけ前進させなければならない。
【数15】
ここで、
wは、1からNum Windowsまでの推定ウィンドーのインデックス、
Nは、ウィンドー当たりのTADの数であり、
TADインデックスは、1からNum Windowsまで変化する。
【0083】
「ifPOSITIVE」演算子は、右側の括弧内の値が正である場合、これを合計に加えることを示していることに留意されたい。この値が負である場合、この値は合計に加えない。即座にディスプレイされた予測を発生するために、所定のウィンドーからの推定値を使用するためには、各ウィンドーに対するCQI値は、CQIスレッシュホールド(Threshold)以下でなければならない。
【0084】
3.第3の合否の目安は、ウィンドーの傾き(WindowSlope)であり、この傾きは、各ウィンドー内の最初のTADと最後のTADの差として単に計算される。この値が、限度のスロープスレッシュホールド(SlopeThreshould)を越えた場合、次のウィンドーを選択しなければならないか、最終ウィンドーを評価しなければならない。
【数16】
ここで、NumTADは、ウィンドー内のTADサンプルの数である。
【0085】
極めて高体温、例えば104°F(40℃)の患者の場合、ウィンドースロープ(WindowSlope)は、極めて有効であることが分かっている。多くのケースでは、かかる患者の温度データ曲線は、当初曲線高い傾きを有し、プロセッサに患者の実際の温度よりもかなり高い温度を予測させる。WindowSlopeの特徴によれば、傾きが過度に大きく、生じ得る高体温の患者を示している場合、プロセッサは、データの次のウィンドーを待つことになる。次のデータは、患者の体温データがより兆候的であるポイントに近似し、予測が正確となる。
【0086】
一実施例において、ウィンドーが迅速な予測のための基準を満たさない場合、LastWindowに達すると、別の機会が提供される。最終ウィンドーのSSEと、ファイナルウィンドースクエアースレッシュホールド(FinalWindowSquareThreshold)とが比較される。この基準が満たされた場合、最終ウィンドーに対する予測を計算する。
【0087】
推定処理
推定値を発生するために、必要とされるTADサンプルを取得し、発生させることにより、推定ウィンドーを完成しなければならない。次に、適合パラメータA、BおよびCだけでなく、合否の目安、SSE、CQI、およびWindowSlopeを決定するために、TADサンプルを処理する。
【0088】
最小二乗推定方法(LSE)を使って、AおよびBを決定する。式9の非線形性に起因し、C、Eの各値に対する合計二乗誤差を計算し、最小合計二乗誤差(SSE)を生じる対応するAおよびBと共に、C、Eの値を探すことにより、CおよびEを決定しなければならない。特定の体のサイトに対する可能な値の有限レンジから、C、Eを選択すれば十分であることが分かっている。口と直腸は、C、Eの値の1つのレンジを使用するのに十分類似し、かつ比較的高い熱伝導率を有するが、より低い熱伝導率を有する腋下は、別個のより低いレンジのC、Eの値を使用する。
【0089】
一実施例では、AおよびBを決定するために、Cの値の各々に対し、定数の3つの固定された例を構成し、Eを1の値に設定し、これを変えない。図9は、本実施例におけるA、BおよびCパラメータの決定を示している。プロセッサは、関連するAおよびBパラメータと共に15個のCの値の各々を選択し、各々に対する合計二乗誤差を得る。予想される温度を計算するために、式10では最低の誤差を有する関連するAおよびBパラメータと共にCの値を使用する。
【0090】
図9および図10は、モデル温度曲線を実際の温度測定データポイントに正確に適合させる本発明の一実施例を示す。図9には、種々の曲線が示されている。これら曲線のいずれも、図10に示された実際の温度測定データポイント126に適用されている。図10には、所定のパラメータAi、Bi、Ciを有するモデル曲線128が、データポイントに適合している状態が示されている。誤差e1〜e6、すなわちデータポイントとモデル曲線との差が決定され、合計二乗誤差が取り込まれる。
【0091】
一実施例では、このモデル曲線のSSEが最小である場合、これをこの測定の温度データに対するモデル曲線として使用する。当業者に周知のように、最小二乗推定ルーチンを使用することもできる。
【0092】
別の実施例では、最小SSEを発生するCの2つの値を決定できる。これら2つの値から、Cの中間値を決定し、この中間値に対し、SSEを計算する。このSSEが、最初の2つの双方のSSEの値未満である場合に、これを使用するか、またはSSEが許容可能なスレッショルドより低下するか、またはその減少を停止するまで、このプロセスを繰り返す。
【0093】
組織との接触の検出、予測のスタートおよび再スタート
総予測時間を予測するための組織との接触を検出する時間限度は、予測に先立ち、ティシューコンタクトスレッシュホールド(TissueContactThreshold)温度を越えるための最終未処理温度サンプルの時間(100ms)として定義される。このサンプルを、TCサンプルと称すことにする。
【0094】
プレディクトスタートディレイ(PredictStartDelay)サンプル(未処理サンプル)の後、予測サンプル(SOP)のスタートが生じる。TCに従うサンプルがティシューコンタクトスレッシュホールド(TissueContactThreshold)以下となった場合、TC値をリセットし、予測を中止し、リセットし、予測スタート遅延を再スタートする。従って、SOPのインデックス値を次のように定義する。
【数17】
図8および図11の例では、未処理温度122がティシューコンタクトスレッシュホールド(TissueContactThreshold)112より下に低下したことに起因し、第1TC120をリセットする。その後、関連する相対的インデックス=1を有する最終TC124を見ける。サンプルのプレディクトスタートディレイ(PredictStartDelay)118の後で、スタートプレディクション(StartPrediction)114のサンプルが発生し、このサンプルは第1TADの第1サンプルとなる。
【0095】
組織との接触の検出がなされない場合
予測が完了する前にある点で組織との接触がなくなることがある。最大TADの値よりもプリセットしたマージンだけ小さいTADサンプルが生じたときに、このような条件が検出される。
【0096】
図12は、予測技術で使用される温度センサに対する温度応答のグラフライン130の図に結合されたデータフロー図を示す。グラフライン内でドットとして示されている温度サンプル132は、この実施例においては、100ミリ秒ごとに取り込んだものである。インターバル134の間で、ヒーターはセンサの温度を組織接触スレッショルド130よりも一般に約1°F(≒0.5℃)低い目標余熱温度、この場合94°F(34.4℃)までにする。
【0097】
図11には、組織接触スレッショルドを7回横断するグラフラインが示されている。スタート遅延138により、組織接触スレッショルドが交差する7番目の時間142までには、TAD計算処理140は行われない。
【0098】
スタート遅延動作は予測処理が開始する前の少なくともあるインターバル(一般に0.5秒)の間、サンプリングされた温度は、組織接触スレッショルドよりも高く留まらなければならないようにすることによって、予測プロセスの早期の介しを防止している。この条件が満たされても、サンプリングされた温度が組織接触スレッショルドよりも低下した場合、予測プロセスはアボートされ、サンプリングされた温度が再び上記のような組織接触スレッショルドを越えるかどうかの判断を、サンプリングが再開する。サンプリングされた温度が1分の間、組織接触スレッショルドを越えない場合、モードは、関連する音響の通知と共に連続モニタステートへ移行され、ディスプレイインジケータに変わる。
【0099】
サンプリングされたデータが、必要とされる時間の間、組織接触スレッショルドを一旦越えると、第1ウィンドー144内、更に第1ウィンドー144から温度予測を行うことができない場合、次のウィンドー内で、点線で示されているTAD値を計算する。「現在のウィンドーからの予測温度」146、SSE148、CQI150、FSSE152、最終ウィンドー154および組織との接触がなくなること156の機能は、上記のようなTAD値からすべて実行される。図12には、これら機能に対する論理が示されている。
【0100】
現在のウィンドーからの予測を使用し、これを提示するか、またはウィンドーを1つのTAD値だけ進ませなければならないかどうかの制御を行うのに、論理ANDゲート162が使用される。詳細に説明すれば、162の出力が真であり、現在の予測をディスプレイするには3つの比較の結果のすべてが、真でなければならない。3つの入力は、次のように形成されている。SSEは、SSEスレッショルド160と比較(158)され、CQIは、CQIスレッショルド166と比較(164)され、ウィンドーの傾き168は、ウィンドースロープ(Windowslope)スレッショルド172と比較(170)される。これら3つの比較演算子158、164および170の出力は、ANDゲート162の入力として示される。
【0101】
最終ウィンドーに到達した場合、そのウィンドーの予測をディスプレイするか、または連続モニタステートへの移行が生じたかどうかを判断するために、異なる組のルールが適用される。送信ゲート184を介して、最終ウィンドーにより発生された予測のユーザーディスプレイへの伝達を制御するために、論理ANDゲート178が使用される。詳細に説明すれば、ゲート178の出力が真であり、このことによって、送信ゲート184が予測をディスプレイ196に送ることができるようにするためには、2つの比較の結果の双方が真でなければならない。FSSE152は、FSSEスレッショルド176に対するコンパレータ174によりテストされ、最終ウィンドーのステート154は真であるか、偽であるかが評価され、この論理信号はANDゲート178にも送られる。
【0102】
測定機器の作動ステートを連続モニタステート188に移行させるような、いくつかの論理状態が生じ得る。真になったときの論理ORゲート186は、連続モニタステート188への移行を生じさせる。このゲートの入力は、ANDゲート182の出力を含み、この入力は、2つの論理信号(一方は最終ウィンドー論理154からのものであり、他方は、コンパレータ174の反転出力180からのものである)を受信する。論理は、次のテストを実行する。すなわち、FSSEがFSSEスレッショルドよりも大であり、かつ最終ウィンドーが予測のために現在使用中であれば、連続モニタステートへ移行するとのテストを実行する。
【0103】
論理ORゲート186への別の入力は、安全性および信頼性テストを含み、これらのテストは、ウェルからプローブが引き出された直後に、異常な初期プローブ温度であるかどうかのチェック(190)、ヒーターの制御ロジックが適当な温度上昇を行うことができないこと(192)、および最終ウィンドーからの予測が、許可されたレンジ外にあるかとの判断(194)を含む。
【0104】
現在のウィンドー146から予測された温度をディスプレイ196に示すためのゲート195も示されている。しかしながら、このことを行う前に、SSE、CQIおよびウィンドースロープ(WindowSlope)のすべてが許容可能であることを示すANDゲート162からの入力信号が存在していなければならない。別の特徴では、インバータ198にANDゲート162の出力が提供され、インバータ198は、予測ウィンドー200を前進させるための信号を提供する。
【0105】
上記のように、被験者の体温を正確に予測するためのシステムおよび方法が提供される。温度データ曲線の近似は使用しない。その代わりに、温度データ曲線に実際の曲線を適合させ、その結果、高い精度を得ている。非線形のマルチパラメータモデル曲線を温度測定データに適合させる。とりあえず、特定の温度測定データ自身に応じて多数のパラメータを選択し、モデル曲線を特定の温度状況に適合させ、モデル曲線を極めて正確にする。ヒーター効果、極めて高い温度を受けた被験者および組織と接触しなくなったことから生じる、誤って導かれたデータを使用することを回避するためのセーフガードが提供されている。この解決方法は、処理パワーが限られているプロセッサによって実行でき、更に平衡状態が生じる前に被験者の体温を正確に予測できる。
【0106】
以上で本発明のいくつかの形態を図示し、説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の変形を行うことが可能であることも明らかである。従って、本発明は、特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
【符号の説明】
【0107】
42 センサおよびヒーター
70 増幅器
72 アナログ−デジタル変換
74 デジタル論理回路
82 電源
80 ヒーターの電源
76 メモリのソフトウェアアルゴリズム
78 ユーザーインターフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義で温度計の改良に関し、より詳細には、複数の患者測定サイトから、正確な温度測定値を短時間で得るための電子予測式温度計に関する。
【0002】
病院および医者のオフィスのような医療分野では、温度を測定し、測定した温度をディスプレイする感温デバイスにより、患者の体温を測定することが、一般的なやり方である。このようなデバイスは、温度に応答する水銀柱を内蔵するガラス球温度計であり、水銀柱は、較正された温度目盛りの近くで膨張したり、収縮したりする。一般に、ガラス式温度計を患者に挿入し、温度計の温度が患者の体温で安定できるようになるまで、十分な時間インターバルだけ放置し、その後、医療要員によって、温度を読み取るために取り外される。この時間インターバルは、通常2分〜9分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガラス球温度計などを使用する従来の温度測定方法は、多くの大きな問題を生じやすい。温度測定にはかなりの時間を要し、年齢や病弱のために、必要な時間だけ体温計を体に挿入したまま、適正に保持しておくことができない患者にとっては、体温測定をするのに、比較的長時間の測定サイクルの間、医療要員が物理的にそばに付き添っていなければならないので、注意を他の仕事に向けることができなくなる。更に、ガラス球温度計は、読み取りが容易ではないので、特に不十分な照明の下では、または急を要するような読み取り時には、人為的な誤差が生じやすい。
【0004】
従来、直接読み取り電気式温度計測器と組み合わせて作動するようになっている温度検出プローブを使用することにより、ガラス球温度計のこれら欠陥を最小にするか、または解消するよう、種々の努力がなされてきた。ある解決方法では、プローブの端部に、サーミスタのような電子式感温デバイスを取り付け、このデバイスを患者に挿入する。特定の状態に応じ、デバイスの電圧または電流の変化がモニタされ、出力信号が安定したときに、温度がデジタルフォームでディスプレイされる。このことは、一般に、直接読み取り方法と称される。この方法によると、測定された温度の読み取りミスによる誤差が発生する可能性は小さくなるが、安定した温度表示に達するには、依然として、比較的長い時間がかかる。代表的な触接読み取り方法またはモードでは、温度表示を得るには、どこでも3分〜5分が必要である。
【0005】
電子温度計の固有の特徴は、温度計が触れた体の温度を瞬時に測定できないことである。そのため、温度計が表示する温度が、測定される実際の体温を表示するまで、かなりの時間がかかる。この時間の遅れは、体の表面から温度センサまでの熱の流れを阻害する測定システムの種々の要因によって生じるものである。この要因の一部として、センサの先端、体の皮膚および組織、および測定対象の間の汚染を防止するためのセンサの先端に取り付けられた衛生カバーを挙げることができる。
【0006】
上記欠陥を克服する1つの試みとして、プローブが患者との平衡状態に達する前に、患者の温度の直接デジタル表示を得るために、予測または推定回路に結合された感温電子プローブを使用する方法がある。測定時間中、患者の体温が大幅に変化しないことを想定するこの解決方法では、電子温度計の熱安定時に患者に広がる温度を、測定温度から予測し、熱安定に達する前に、この温度をディスプレイする。従来の多くのデバイスでは、ある時間にわたり、測定温度をモニタし、その微分値を計算し、患者の温度を予測するように、この微分値を処理することによって、温度の予測が行われている。
【0007】
最終的な安定した温度を予測することによって作動する電子温度計を用いた場合、利点として、熱安定状態に達する前に、温度測定を完了し、測定にかかる時間を短縮できることを挙げることができる。そのため、全測定時間にわたって、患者がプローブを正しい位置に保持しない危険性は低減され、医療要員の付き添い時間が短くてすむ。別の利点として、体温はダイナミックであり、従来の水銀ガラス式温度計による測定のための2分〜8分の間で、大幅に変化するので、短時間の測定は、よりタイムリーな診断情報を提供できることが挙げられる。しかし、かかる温度計の欠点は、データの処理および解析を正確に実行しなければ、温度を予測する精度が顕著に低下することである。
【0008】
予測タイプの処理および温度測定を使用する電子温度計は、感温トランスジューサとして、サーミスタを備えていることがある。このサーミスタは、極めてゆっくりと生じる温度変化の最終増分量と共に、漸近的に最終安定温度に接近するが、温度変化の主要部分は、比較的急速に生じる。図1は、かかる温度応答を示している。代表的なサーミスタにおける測定時間22と温度24の関数としてプロットされた測定温度20のグラフが示されている。
【0009】
上で説明したように、サーミスタが示す温度20は、測定中の被験者の実際の体温TF26に対して、時間が遅らせられる。この時間遅れは、測定された温度ライン20と被験者の実際の温度ライン26とを比較することによって理解できる。スタート時間t0から測定が進むにつれ、温度は、時間t0からt1の間で、TRからT1まで急速に高くなる。表示された温度の増加レートは、時間t1とt2との間で小さくなり、温度ラインは、時間がより長くなるにつれ、漸近的に安定化温度TF26に徐々に接近する傾向がある。
【0010】
上で説明したように、本発明は、測定の初期の時間、例えば時間t1とt2との間で収集された温度データを解析し、最終温度TFを予測できるシステムに関するものである。従来、初期の、より急速な温度変化をモニタし、この温度変化からデータを抽出し、サーミスタが実際に組織の温度で安定化するまでの長時間、その時間でサーミスタに接触する組織の実際の温度を推定する試みがなされてきた。
【0011】
サーミスタが患者との平衡状態に到達する前に、組織の温度をより急速に推定するために実施されている従来の方法は、応答の初期において、データポイントからサーミスタのデータポインにトをサンプリングし、サーミスタの応答のカーブ形状を予測することである。このカーブの形状から、カーブの漸近線、従って安定化温度を推定できる。より簡単なシステムを例として、この原理を説明するために、図2に示すような等しくない温度の2つの体に関係する熱伝達について検討する。一方の体は、熱質量が大きく、他方は熱質量が小さく、時間=0において、互いに接触した状態に置かれている。時間が進むにつれ、小さい熱質量、および大きい熱質量の温度は、安定化温度と称される温度と平衡状態となる。このプロセスを示す式は、次のとおりである。
【数1】
ここで、T(t)は、時間を関数とするより小さい方の体の温度、
TFは、システムの安定化温度、
TRは、小さい方の体の初期温度、
tは、時間、
τは、システムの時定数である。
【0012】
この関係から、温度Tが、時間tにおける2つのポイントで既知であるとき、例えば時間t1においてT1であり、時間t2においてT2であるとき、次の式2を適用することによって、安定化温度TFを予測できる。
【数2】
【0013】
更に、式1が示すタイプの簡単な一次熱伝達システムに対して、温度の第1時間微分の自然対数は、次のように、−1/τに等しい傾きを有する直線となる。
【数3】
および
【数4】
ここで、
【数5】
であり、ここで、K=TR、TFおよびτに依存する定数、
T’=温度の第1微分、
T”=温度の第2微分である。
【0014】
従来の技術は、温度平衡曲線の解析に対し、この簡単な一次の関係を適用したものであった。ある場合には、サーミスタのメーカーが設定したサーミスタの時定数を活用していた。しかしながら、これらの技術のいずれも、温度応答曲線を正確にモデル化できないということを認識していなかった。その理由は、患者の組織および血管系と衛生プローブカバー、センサおよびプローブのステムとの複雑な熱力学的な相互作用によって、応答曲線が決定されるからである。
【0015】
温度計を、体の組織、例えば患者の口に接触させると、応答曲線はその組織に対するプローブの物理的な配置、特定組織の熱伝達特性、プローブと組織とを分離する衛生プローブカバー34(図2)、および図3に示すようなプローブの検出先端とシャフト36を通過する熱伝達により、応答曲線は影響を受ける。図3におけるこれらファクター36の各々は、サーミスタからの熱の流れに影響し、各々は熱抵抗および熱容量を含む異なる熱力学的質を有する。生物学的ファクター38も、サーミスタに対する熱の流れに影響し、患者の間で、特に年齢および体の組成と共に大幅に変化する。
【0016】
構造体の空間的な幾何学的形状と組み合わされたこれらファクターは、サーミスタで検出される温度が、サーミスタ単独のアプリオリに工場で供給されるサーミスタの時定数を使って得られるような簡単なモデルから予測できるよりも、より複雑な特性曲線により、表わされる。
【0017】
従来の推定技術は、皮膚接触に従う温度上昇は指数曲線(いわゆるニュートン加熱)に従うとの仮定に依存していた。図2に示すように、センサを加熱するのに、熱の無限で、かつ良好に撹拌されたソースを利用できるという条件下で、このモデルは正確となる。比熱を有し、初期温度「TW(0)」を有する水の大きいソース30内に浸漬された温度センサまたはプローブ32に、プローブカバー34が取り付けられており、このプローブは、熱質量Mおよび初期温度TP(0)を有する。このプローブカバーは、熱抵抗Rを有し、これら理想的な条件下では、水の浴からプローブまでの熱の流れは、次の簡単な式によって制御される。
【数6】
【0018】
任意の時間におけるプローブ温度の微分方程式を解くと、水に浸漬した後の任意の時間tにおけるプローブ温度に関し、次の方程式が得られる。
【数7】
【0019】
熱上昇の時定数は、主として、プローブの熱質量と、プローブカバーの熱抵抗であるRの積Mによって決定される。
【0020】
体の一部、例えば口または腋下に接触するように配置された温度プローブの加熱に対し、このような単純なモデルを適用することは、プローブの中間領域における組織の有限熱容量および皮下層でスタートし、内部の構造まで進む組織の連続する層の熱抵抗を考慮していない。
【0021】
特にプローブの温度が上昇するにつれ、プローブに接触している中間領域からの熱が除去されているので、プローブに熱が達するには、別の熱エネルギーが、より多くの組織を通過しなければならない。従って、このようなリモート熱エネルギーは、より近くの領域から、プローブ内に流れ込んだ熱エネルギーよりも時定数が長い。
【0022】
任意の時間tにおいて、現在の値と最終値との間には、次の式で示すような温度差が生じる。
【数8】
従って、式2が予測する温度の変化レートが、時間内の任意のポイントにおいて、温度変化の一定比率のままに留まることを考慮することにより、体の沿い機内の複雑な熱伝導をモデル化するための、式2の限界について理解できると思う。
【0023】
従って、安定温度を予測でき、一次のモデルとは異なり、測定下の体、および測定システム自身の双方の、変化する熱の流れ特性に適合できる測定システムに対するニーズが生じている。安定温度を示す、可能性のある温度上昇曲線を生じるのに、実時間で解かれる同時方程式の組を使用する予測技術が、従来提案されている。成功するには、かかる技術は、上昇曲線の形状に適当に近似できるよう、かなりの数の係数を有する方程式を使用しなければならない。実際には、使用できる項の数が限定されているので、かかる解決方法の精度には限界がある。更に、極めて簡単な小電力のマイクロプロセッサ回路を、サーミスタで使用するとき、かかる方程式を計算によって解くことは、簡単なことではない。
【0024】
更に、メーカーは、極めて複雑で高度な医療装置を開発できるが、このコストの問題も、常に念頭に入れなければならないことにも注目すべきである。メーカーは、広範な種々の患者に利用できるように、医療機器のコストを、できるだけ低く維持しようと努力している。計算をより高速で実行し、より多くの回数、計算を実行できるようにするためには、より大型のプロセッサを設け、計算速度がより高速であり、メモリサイズがより大きい温度計を利用することとなるが、これには、コストの問題が生じる。このような処理パワーの増加は、実質的に温度計のコストを上げ、従って、多くの患者が入手できないことになる。
【0025】
その代わりに、当業者であれば、コスト的に効率的であるが、健全かつ、正確で、高速で実行できるアルゴリズムを使用することにより、複雑な温度データ処理によって、患者の体温を、正確かつ高速で予測できる温度計を要望すると思う。
【0026】
1つの温度計で、患者の口内、直腸内および腋下部分で体温を測定できる温度計が求められていることも、よく知られている。体温測定に利用するために、これらサイトのうちの1つ以上を使用できない特定の患者との間で、種々の要因が作用することがある。従って、これら3つのすべてのサイトで測定できる温度計は、別々のサイトに対して、異なる温度計を探さなければならない場合に比して、利点を有することになる。患者の腋下部で体温を測定することは、口および直腸部で測定することと大幅に異なることを認識しなければならない。
【0027】
多くの場合、腋下部に対するプローブの温度応答は、口および直腸部とは大きく異なる。この部分は、脂肪組織の下方の層を有する粘液のない皮下組織から構成されているという事実のために、腋下に位置するプローブの温度応答の曲率は、口および直腸サイトの曲率よりもかなり平坦的である(曲線100は、口部における代表的な曲線であり、曲線102は腋下部における代表的な曲線である図6を参照されたい)。
【0028】
従来の予測可能な温度計測技術は、電子温度計測技術を大きく前進させたが、当業者は、測定条件および測定下の被験者特性が測定と測定との間で変化する測定プロセスの早期ステージにおいて、安定温度を予測できる電子温度計に対するニーズがまだあると認識している。更に、多数の測定サイト、例えば口、直腸、および腋下部のすべてにおける患者の体温を測定し、予測できる単一温度計に対するニーズが存在することも認識されている。更に、比較的簡単で、安価な回路を有する、正確な医療用温度計に対するニーズもある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、簡単に言えば、測定プロセスの初期段階において、被験者の体温を予測することにより、被験者の体温を測定するための温度計および方法を提供するものである。本発明の温度計および方法は、モデル曲線をモニタされた温度データと合致させるように、多数のパラメータを含む非線形モデルを適合させるものである。これらのパラメータは、温度上昇曲線の初期部分において、予測プロセスの結果得られるモデル曲線からパラメータが選択され、センサ、すなわち被験者の平衡温度が予測される。このように、予測プロセスは、温度計のプローブの熱特性だけでなく、被験者の解剖学的部分、および生理学的特性に対して適合可能であり、比較的少ないデータ収集、およびデータ処理で済み、センサの平衡温度の正確な予測を行うことができる。
【0030】
詳細な特徴として、パラメータのうちの1つ、すなわち、曲率インデックスCが、選択された解剖学的サイトに対して、適当な値のレンジにわたって評価される。本発明に係わる温度計システムおよび方法の適応可能な特性により、1つの温度計で、患者の多数の部分の測定をすることができる。
【0031】
他の特徴によれば、センサは、被験者の体温の検出に応答して、温度信号を発生し、この温度信号は、時間と共に変化する。選択された第1の時間フレームにわたって、プロセッサは温度信号をモニタし、第1時間フレームの温度サンプルの選択された特徴的サブセットを決定し、モニタされた温度信号の特性のパラメータに適合する非線形曲線の一組の計算に基づいて、かつモデル曲線に基づいて、モデル温度曲線を、提供または適合させ、被験者の体温を予測する。より詳細な特徴として、プロセッサは、センサが被験者の体温に達するまでの時間から、第1の時間フレームを選択し、パラメータに適合する非線形曲線を使用し、被験者の体温の予測を計算するために、モデル曲線を提供する。
【0032】
別の、より詳細な特徴によれば、プロセッサはモデル曲線とモニタされた温度データとを比較し、その差がスレッショルドを越えなければ、プロセッサは、モデル曲線から被験者の体温を予測し、これをディスプレイする。
【0033】
別のより詳細な特徴によれば、プロセッサは、選択された領域に対して決定されたモデルパラメータを使用し、選択されたモデルパラメータの線形関数であるオフセット項を計算する。
【0034】
更に別の詳細な特徴によれば、オフセット項を計算するのに使用されるモデルパラメータは曲率パラメータに関係している。
【0035】
別のより詳細な特徴によれば、プロセッサは選択された予測ウィンドーのスタート前に時間遅延を使用し、選択されたモデルパラメータの線形関数であるオフセット項を計算する。
【0036】
さらに別の特徴によれば、プロセッサは、選択された第1時間フレームの非線形曲線適合と所定の完全性基準とを比較し、第1フレームからの予測温度が完全性基準を満たしていない場合、プロセスは、被験者の体温の計算から、第1時間フレームを排除する。
【0037】
別の特徴によれば、プロセッサは、モニタされた温度データの特性と完全性基準とを比較し、モニタされた温度データの特性が完全性基準を満たしていない場合、プロセッサは被験者の体温を予測するためにこれらデータを使用しない。
【0038】
更に別の詳細な特徴によれば、完全性基準のうちの1つは、モニタされた温度データの曲率の質を含む。
【0039】
更に別の詳細な特徴によれば、完全性基準の別の基準は、モニタされた温度データの傾き限度を含む。
【0040】
更に別の特徴によれば、モニタされた温度データが完全性基準を満たさない場合、プロセッサは完全性基準と比較するために、モニタされた温度データの別のウィンドーを選択する。
【0041】
更に別の特徴によれば、プロセッサは、被験者の体温を測定する際に、選択された第1時間フレームが排除された場合に、第2の選択された時間フレームにわたって温度信号をモニタする。
【0042】
更にプロセッサは、1つの特徴によれば、第1時間フレームの後に生じる第2時間フレームを選択し、別の特徴によれば、プロセッサは、第1時間フレームにオーバーラップする第2時間フレームを選択する。
【0043】
別の特徴によれば、プロセッサは、被験者の体温の決定から前の時間フレームが排除された場合に、複数の選択された異なる時間フレームにわたって、温度信号をモニタし、モニタされる複数の時間フレームの数を、センサが被験者の体温に達する前の所定時間内の時間フレームの数に制限する。
【0044】
別の特徴によれば、プロセッサは、センサが被験者の体温の検出を開始するスタート時間を決定し、プロセッサは、スタート時間後生じる温度信号を含むように、第1時間フレームを選択する。
【0045】
より詳細な特徴によれば、プロセッサは、センサからの温度信号の現在の値を計算することにより、被験者の体温をセンサが検出していると判断し、現在の値が、組織接触スレッショルド温度を越えていると、計算に基づきスタート時間を設定する。
【0046】
本発明の特徴を例示する添付図面を参照して、次の詳細な説明を読めば、本発明の上記以外の特徴および利点が明らかとなると思う。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】患者に接触している温度プローブ内に取り付けられたサーミスタセンサの温度平衡を示すサーミスタセンサデバイスの代表的な漸近応答曲線のグラフである。
【図2】平衡状態に達するための第1温度と第2温度との間の熱の流れを示す、流体が第1温度よりも高い第2温度となっている大きな流体浴内に浸漬されている、第1温度を有する小さい物体の図である。
【図3】内部器官によって生じ、主要血管およびその他の組織を通り、プローブカバーおよびその他のデバイスを通って広がり、最後にサーミスタに到達するが、サーミスタから空気、ハンドルを通り、更にサーミスタから熱を伝えるデバイスおよびその他のものを通ってプローブシャフト、更にはオペレータにも流れる熱を示す、患者の体温を測定するプロセスの熱流図である。
【図4】2つのプローブ、プローブカバー、ディスプレイおよび被験者の体温を測定するのに有効な入力手段を有するポータブル体温計の正面図である。
【図5】平衡状態に達する前に得られた温度データを分析することに基づき、患者の体温を予測することにより、システムの温度センサと患者との最終平衡状態前に、患者の体温を決定するための、本発明の原理に従ったシステムのブロック図である。
【図6】本発明の様相に係わる、体温を予測し、ディスプレイするための温度データ収集および処理を示すフローチャートである。
【図7】口内および直腸内測定サイトにおける温度測定のための曲率を示すサーミスタセンサデバイスの応答曲線例、および腋下サイトにおける応答ラインの曲率が口内、直腸内サイトにおける応答ラインの曲率よりも小さいことを示す、腋下サイトにおける温度測定のための第2ラインを示すグラフである。
【図8】被験者の体温を予測するための、本発明の様相に係わる、組織接触スレッショルド、予測スタート遅延、予測スタートおよび予測完了ポイントを示す温度のグラフである。
【図9】モデル曲線をデータ曲線に適合させ、限度内で適合したときに被験者の体温を予測するために、被験者のためのデータ曲線と共に使用すべき所定のAi、BiおよびCiパラメータの異なる組によって形成されたモデル温度曲線の一組である。
【図10】モデル温度曲線を実際に測定されたデータポイントに適合させ、モデル曲線がデータに許容できる程度に適合したかどうかを判断する際に使用すべき、実際のデータポイントの各々とモデル曲線との間の差を決定する曲線を示す図である。
【図11】予測において使用される最終組織接触ポイントを示すと共に、予測スタート遅延および予測サンプルのスタートを示す、図8の温度グラフの各大部分である。
【図12】本発明の様相に係わる方法の特徴に係わるデータフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次の説明では、異なる図面中における同様の、または対応する要素を示すのに、同様な符号を使用している。
【0049】
図4には、本発明の新規な特徴を含む電子温度計40の一実施例が示されている。この電子温度計は、温度計の本体46に、導線44で接続された患者の体の所定の部分の温度を検出するためのプローブ42を備えている。このプローブは、本体の保管用ウェル48から取り出すようになっており、温度計の本体は、電気部品および温度計の電源を含み、更に温度の値、およびエラーメッセージ、またはアラームメッセージをディスプレイするためのディスプレイ50と、第1入力デバイス52をも有する。この入力デバイス52は、この場合、ディスプレイの下に位置するオンオフスイッチとなっている。
【0050】
温度測定中にサイトの特性を検討するのに、サイトおよび温度データを処理するための方法を、より適切に選択できるよう、本体の正面パネル56には、MODEスイッチ54も設けられている。一実施例では、このMODEスイッチは、FAST ORAL(高速口内測定)、FAST AXILLARY(高速腋下測定)、FAST RECTAL(高速直腸内測定)を選択するようになっている。温度計には、第2プローブ58も含まれており、この第2プローブは、本体のウェル60内に挿入された保管位置に示されている。
【0051】
本発明によれば、患者の口内温度、および腋下温度を測定するために、1つのプローブを使用し、直腸内温度測定をするのに、別のプローブを使用するようになっている。患者に接触する前に、プローブを覆うように取付けられる衛生カバー62も示されている。
【0052】
図5に示すブロック図は、本発明の態様における温度計40の一実施例の主要な電子部品を示している。温度センサ42は、測定中に検出される温度に応答して、温度信号を発生する。患者とプローブのセンサとの間には、プローブカバー62も存在する。温度センサとしてサーミスタを使用する場合、信号は、サーミスタの抵抗を示す。従って、検出された温度を示すアナログ電圧となっている。
【0053】
温度を表示するこれらの信号は、増幅器70によって増幅され、アナログ−デジタルコンバータ72により、更に処理ができるよう、デジタル状に変換される。アナログ−デジタルコンバータは、デジタル化された電圧信号を受信し、この信号を処理して、被験者の温度を決定するプロセッサ74に接続されている。その後、信号データを分析できるよう、アルゴリズムと共に、温度および時間信号データを、メモリ76が記憶するようになっている。
【0054】
信号が一旦処理されると、プロセッサは、予測された安定温度をディスプレイするために、ディスプレイ78へ信号を送る。プローブは、ヒーター電源80によって制御されるヒーターデバイスを含んでいる。プローブが本体のウェルから引き抜かれた場合、プロセッサは、ヒーター電源をオンにすることにより、プローブの温度を設定ポイントまで上昇させるよう、プローブのヒーターを制御する。この設定ポイントは、一般に93°F(33.9℃)であるが、別の温度を選択することもできる。
【0055】
スイッチを付勢すると、温度計の温度測定機能が無能化される。このスイッチは、プローブを取り外すと、自動的に測定が可能となるように、プローブの保管ウェブ内に位置していることが好ましい。種々の部品の電力要求を満たすために、電源82が設けられている。図を明瞭にするために、電源と部品との間の特定の接続は示されていないが、当業者であれば、かかる接続については理解できると思う。
【0056】
図5の特定の実施例には、電子予測温度計が示されているが、この温度計は、単に本発明を説明するためのものにすぎない。メモリ76は、実際には多数のメモリデバイスを含むことができる。プロセッサ74は、多数のプロセッサを含むことができ、ユーザーインターフェース78は、多数のスイッチまたはディスプレイを含むことができる。当業者であれば、図5について種々の変形が可能であることは明らかであると思う。
【0057】
次に図6を参照する。図6には、本発明の様相に係わる方法の一実施例の一般的な機能(タスク)が、これらの間で流れるデータと共に示されている。このタスクは、同時に実行してもよいし、またはシーケンスで実行してもよい。図示されている一部のタスクは、システムが実行する特定の測定中に実行されなくてもよい。データフローは、付勢シーケンスを意味するものではなく、この図では、制御および付勢については示されていない。
【0058】
温度計のシステムを初期化し(90)、温度センサからのデータの発生が開始される。十分な温度サンプル(データ)が取得されると、このサンプルは、フィルタにかけられる(92)。このフィルタリングは、実現されるフィルタのタイプ、順序、およびモデルに応じて決まる。あるケースでは、簡単なボックスカー平均/分割器が使用される。他の、より複雑なフィルタを使用することもできる。次に、予測温度94を計算する際に、プロセッサによりフィルタにかけられた温度データが使用される。予測された温度の受け入れ可能な計算を行うと、この温度がディスプレイされる。
【0059】
次に、3つの口内サイト、直腸内サイト、および腋下サイトの各々に対し、温度予測をするための手段の一般化された実施例について説明する。選択されたサイトのオペレータによる選択により、そのサイトで使用するための制御パラメータをスレッショルドの選択された組が決定される。
【0060】
ABCE非線形のマルチパラメータ曲線の適合予測の概観
組織接触に続いて生じる、フィルタにかけられた温度サンプル(ウィンドー)のシーケンス(図8参照)に、非線形のマルチパラメータモデル(式9)を適合することにより、(センサが患者の温度と平衡状態に対すると予想される時間のような)将来の所定の時間における温度の推定または予測を実行する。
【数9】
ここで、
Tfit(n・τ)は、特定の時間t=n・τ°Fにおける温度の推定値、
nは、「予測スタート」のための条件を満たす第1サンプルにおいて、0に初期化された整数のサンプルインデックス、
τは、サンプル当たりの秒数(sec)、
Aは、「オフセット」パラメータ(°Fまたは℃)、
Bは、「スパン」または「レンジ」パラメータ(°Fまたは℃)、
Cは、「曲率」または「平衡レート」パラメータ(sec−1)、
Eは、温度データの曲線に良好に適合させるためにモデル曲線の曲率を非線形に変えるために使用できる「タイムワープ」ファクター(無単位)である。
【0061】
第1ウィンドー内で行われる適合が、予測のための基準を満たさない場合、1つの測定サンプル(10個のサンプルの平均値の2分の1、下記のTAD計算の詳細を参照)だけ前方に、ウィンドーをスライドし、モデルパラメータを再計算する。
【0062】
CおよびEの多数の離散値の各々に対し、線形最小二乗最適化方法を使ってモデルパラメータ(A、B)を計算する。モデル曲線の値およびウィンドーデータ要素の値の間の差として測定された最小の(合計二乗誤差)を得るA、B、CおよびEの解を、そのウィンドーに対してそれぞれAm、Bm、CmおよびEmとする。この値は、所定のスレッショルド未満であり、他の曲率の質(下記に説明するCQI)および傾き条件(下記に説明するウィンドースロープ)が、このウィンドー内で満たされた場合、下記の式10を使って温度を予測するのにパラメータABCを使用する。
【数10】
ここで、
D(Cm)は、曲率調節ファクター、
D(T)は、時間調節ファクター、
Doは、オフセット定数、
wは、予測スタートが生じてから経過した秒数、
n・τは、温度を推定すべきときの予測スタート点に対する将来の秒数である。
【0063】
図10の実施例では、Cmに対する指数E(式9参照)は、1に設定されていることが理解できると思う。しかし、別の実施例では、温度データの曲率に、モデル曲線をより正確に適合させるために、1以外の値にこの指数を設定できる。温度データは時間に依存している。すなわち、各データポイントは時間内の離散的ポイントで取り込んだものである。
【0064】
温度データ「曲線」を示すために、データポイントを相互に接続すると、かかる曲線は一方の軸線として時間を有し、従って、時間曲線と見なすことができる。この指数Eは、温度/時間データの曲率により正確に一致するよう、モデル曲線の曲率を非線形に変えるので、タイムワープファクターと称されている。その理由は、この指数は、時間的な意味でモデル曲線を変えるからである。データ曲線により正確に一致するように、指数Uを変えるには、より長い処理時間とパワーを必要とすることになる。
【0065】
式10で得られるモデル曲線は、組織との接触により暖められたときのプローブの温度のレートを予測するものである。この設計をするには、口内、直腸内、および腋下における熱伝達の差に起因し、腋下の測定と比較した口内、直腸内測定に対しては、Cの値を大きくしなければならない。図7には、おおまかな比較が示されている。グラフライン100は、口内部および直腸部に対する温度応答の代表的な形状を示す。グラフライン102は、腋下部に対する温度応答の代表的な形状を示す。口内部および直腸内部に対する曲率は、腋下部の曲率よりもより大きくなることが明らかである。腋下モード対口内/直腸内モードでも、一部の制御パラメータおよびスレッショルドは異なる。これらの差については後述する。
【0066】
更に、一旦ファクターの種々の値を決定する(A、B、CおよびD)と、平衡温度の予測値を決定するために、n・τの時間を入力できる。一例として、口内および直腸測定に対しては、108秒の値を入力することができ、一方、腋下の測定に対しては、300秒の値を入力できる。式10(Tpredict)を解くと、平衡温度が得られる。
【0067】
ファクターD(C)、D(w)およびD0は、E項を固定したときに、部分的に生じ得る予測値におけるわずかなシステム上の誤差を補償するものである。D(C)は、次の形態の線形調節である。
【数11】
ここで、
Cslopeは、定数、
Cは、最小合計二乗誤差に関連する推定値、
D(w)も、同じく次のような形態となっている。
【数12】
ここで、
wは、現在のウィンドーを評価したときの、予測スタートから経過した時間(秒)であり、
D0は、D(w)およびD(C)のバイアス効果だけでなく、集団研究で統計的に観察されるわずかなシステム上のオフセットを除くのに使用される定数である。
【0068】
使用されるCの値およびD項の値のレンジは、ランダムに選択された広範な被験者の集団の実際の温度テストに基づいて選択されたものである。実際の温度テストに基づき、これら値のすべては、このような広範な被験者の集団に対する温度の予想性能を最適にするために設定されたものである。しかし、当業者に明らかなように、他の被験者の集団によるテスト結果に応じて、これらの値は変わり得る。測定された実際のデータに応じ、D項の一部またはすべては、値0に進み得ることにも留意すべきである。
【0069】
更に、モデルの曲率を制御するために、式9におけるC項に対する指数Eを使用した場合、D項は必要でないことがあり、0に設定できる。式10の場合のように、指数Eを1にセットしたときのモデル曲線の形状をある程度補償するためにD項が使用される。指数Eを1にセットし、線形のD項を使用するこの実施例は、プロセッサに対する要求を下げ、正確な予測結果を生じさせることが分かっている。
【0070】
推定された温度が、高低の予測限度外にある場合、計測機器は、自動的に連続モニタリングステートに移行する。この連続モニタステートは、温度計が患者の応じを予測せず、その代わりに、患者の温度と平衡状態となるまで、単にアクティブなままであるステートのことである。選択される解剖学的サイト、接触、流体結合および加えられる圧力に応じ、この測定には3分〜8分かかる。
【0071】
図8は、予測プロセスの代表的な温度プロフィル、およびキーとなる特徴を示す。プローブ42を、計測器のウェル48(図4参照)から外すと、プローブは、室温周辺温度となる。プローブのヒーター電源80(図5参照)を付勢(110)すると、プローブの温度は、プローブヒーターによりターゲット設定点まで変化するが、特にプローブにプローブカバー62が取り付けられていない場合、数度オーバーシュートし、振動する。次に、プローブカバーをプローブに取り付け、カバーと共にプローブを組織に接触させると、温度は設定ポイントから上昇し、組織接触スレッショルド112を越え、ヒーターをシャットオフする。
【0072】
組織接触スレッショルドを越える未処理(100ms)の温度を検出し、その後、モードに応じた固定された時間の遅延を行うことにより、予測スタートの決定を行う。未処理温度が予測スタート状態に達する前に、組織接触スレッショルドより低下した場合、この遅延時間を延長する。
【0073】
予測スタート64に対する基準を満たす未処理サンプルでスタートし、ブロック内の10の未処理温度サンプルを平均し、フィルタにかけられたサンプルのアレイ(ウィンドー)116を生じさせるように記憶する。10のかかる各平均値を、TAD(温度平均および分割)と称す。TADの値が記録された最大TAD値よりも、1°F(≒0.5℃)だけ小さい場合、組織接触の損失が生じていると仮定するので、計測ステートを連続モニタステートに変える。
【0074】
曲率質インデックス(CQI)およびウィンドーの傾きの値を計算するのに、各ウィンドー内のEADサンプルを使用する。これらの値が、合計二乗誤差(SSE)と共に予測を示すために指定された基準のすべてを満たさなければならない。この基準が満たされなかった場合、次のウィンドーを次のように形成する。推定ウィンドーに各連続する秒に対するTAD値を加算し、個々の成功したウィンドー予測を発生するか、または最大数のウィンドー(MaxNum Windows)に達するまで、最も旧いTAD値を除く。
【0075】
最終ウィンドーに達し、それらのSSE、CQI、およびウィンドーの傾きの値が、特性されたスレッショルドに達しなかった場合、最終ウィンドーのSSEを、スレッショルドFSSEとを比較する。この比較に成功した場合、最終ウィンドーからの予測を行い、成功しなかった場合、計測を連続モニタステートに変える。他の方法で合格した予測に対して、予測された温度が高低予測限度外にある場合、計測は、自動的に連続モニタステートに変わる。
【0076】
他のいくつかの条件は、予測から連続モニタステートへの移行を廃止できる。これら条件はヒーターを制御し、サーミスタの故障に関して、プローブをモニタするソフトウェアールーチンによって設定される。図2は、これら条件の完全性に関して示しており、これについては、本明細書の他の場所において説明する。
【0077】
温度平均および分割(TAD処理)
計測器は、温度プローブ増幅器70(図5)からの電圧をサンプリングし、この値を100ミリ秒のインターバルでデジタル変換する。効率およびノイズ抑制をするために、100ミリ秒(未処理)のサンプルを、簡単なボックス化平均分割器(式13)であらかじめフィルタリングし、1秒のインターバルで、「温度平均され、分割された」または「TAD」サンプルを発生する。
【数13】
ここで、
Nは、TADサンプルの数/ウィンドーであり、第1TADの第1サンプルは予測スタート遅延118以後のサンプルである。次に、予測スタート遅延は、904°F(34.4℃)を第1サンプルが越えることによってスタートする。スタート遅延期間中、未処理温度が組織接触スレッショルドよりも低下した場合、予測スタート遅延タイマーがリセットされる。
【0078】
予測ウィンドーサンプル選択
熱平衡曲線は、いくつかのソースから生じたアーティファクトを頻繁に含んでいる。本発明に係わるシステムおよび方法は、入力データを最適に選択することにより、アーティファクトの効果を回避するように試みている。組織に接触した最初の数秒内で、プローブ加熱の残留効果が平衡曲線の形状に影響し得る。計測器具からプローブを除いた後に、プローブが組織にすぐに接触すればするほど、これらの作用がより生じやすい。プローブカバーの位置/または皮膚によるカバーの圧縮の変化は、組織をカバーとの間の熱抵抗を変える。この変化は、熱平衡曲線の形状および平衡温度の大きさの双方に影響する。
【0079】
ノイズソースの効果を緩和するために、アルゴリズムは、各々が固定された数のTADサンプルから成る時間ウィンドーからの多数の推定値を計算する(図2のブロック図を参照)。特定ウィンドーからの推定値が、予測に適しているかどうか、または測定ウィンドーを次に入力されるTAD値に対して進めなければならないか(スライドしなければならないか)どうかを判断するために、3つの計量値を計算する。
【0080】
1.第1の合否の目安はウィンドーの合計二乗誤差(SSE)(式14)である。許可された最終ウィンドーに達する場合、最終ウィンドーのSSE値を使用して予測をディスプレイすべきかどうか、または信頼性のある予測をできないときに計測が連続モニタステートに移行しなければならないかどうかを判断する。
【数14】
【0081】
2.第2の合否の目安は、曲率の質インデックス(CQI)である。この目的は、温度曲線を正常な下向きの凹状形状(図1参照)から変位させるようなウィンドーTADデータ内のアーティファクトを検出することにある。ウィンドーの第3TADからスタートし、これら曲率を決定するために、3つの各TAD値を評価する。
【0082】
一実施例では、一連の3つのポイントのうちの第2ポイントは、第1ポイントおよび第3ポイントの平均値以上の値を有していなければならない。そうでない場合、CQIは、受け入れできないものと見なされる。ウィンドー内のTADの3つのうちのいずれもが、曲率の基準を満たすことができない場合、ウィンドーは予測に使用できず、アルゴリズムは、ウィンドーを1ステップ(1つのTAD)だけ前進させなければならない。
【数15】
ここで、
wは、1からNum Windowsまでの推定ウィンドーのインデックス、
Nは、ウィンドー当たりのTADの数であり、
TADインデックスは、1からNum Windowsまで変化する。
【0083】
「ifPOSITIVE」演算子は、右側の括弧内の値が正である場合、これを合計に加えることを示していることに留意されたい。この値が負である場合、この値は合計に加えない。即座にディスプレイされた予測を発生するために、所定のウィンドーからの推定値を使用するためには、各ウィンドーに対するCQI値は、CQIスレッシュホールド(Threshold)以下でなければならない。
【0084】
3.第3の合否の目安は、ウィンドーの傾き(WindowSlope)であり、この傾きは、各ウィンドー内の最初のTADと最後のTADの差として単に計算される。この値が、限度のスロープスレッシュホールド(SlopeThreshould)を越えた場合、次のウィンドーを選択しなければならないか、最終ウィンドーを評価しなければならない。
【数16】
ここで、NumTADは、ウィンドー内のTADサンプルの数である。
【0085】
極めて高体温、例えば104°F(40℃)の患者の場合、ウィンドースロープ(WindowSlope)は、極めて有効であることが分かっている。多くのケースでは、かかる患者の温度データ曲線は、当初曲線高い傾きを有し、プロセッサに患者の実際の温度よりもかなり高い温度を予測させる。WindowSlopeの特徴によれば、傾きが過度に大きく、生じ得る高体温の患者を示している場合、プロセッサは、データの次のウィンドーを待つことになる。次のデータは、患者の体温データがより兆候的であるポイントに近似し、予測が正確となる。
【0086】
一実施例において、ウィンドーが迅速な予測のための基準を満たさない場合、LastWindowに達すると、別の機会が提供される。最終ウィンドーのSSEと、ファイナルウィンドースクエアースレッシュホールド(FinalWindowSquareThreshold)とが比較される。この基準が満たされた場合、最終ウィンドーに対する予測を計算する。
【0087】
推定処理
推定値を発生するために、必要とされるTADサンプルを取得し、発生させることにより、推定ウィンドーを完成しなければならない。次に、適合パラメータA、BおよびCだけでなく、合否の目安、SSE、CQI、およびWindowSlopeを決定するために、TADサンプルを処理する。
【0088】
最小二乗推定方法(LSE)を使って、AおよびBを決定する。式9の非線形性に起因し、C、Eの各値に対する合計二乗誤差を計算し、最小合計二乗誤差(SSE)を生じる対応するAおよびBと共に、C、Eの値を探すことにより、CおよびEを決定しなければならない。特定の体のサイトに対する可能な値の有限レンジから、C、Eを選択すれば十分であることが分かっている。口と直腸は、C、Eの値の1つのレンジを使用するのに十分類似し、かつ比較的高い熱伝導率を有するが、より低い熱伝導率を有する腋下は、別個のより低いレンジのC、Eの値を使用する。
【0089】
一実施例では、AおよびBを決定するために、Cの値の各々に対し、定数の3つの固定された例を構成し、Eを1の値に設定し、これを変えない。図9は、本実施例におけるA、BおよびCパラメータの決定を示している。プロセッサは、関連するAおよびBパラメータと共に15個のCの値の各々を選択し、各々に対する合計二乗誤差を得る。予想される温度を計算するために、式10では最低の誤差を有する関連するAおよびBパラメータと共にCの値を使用する。
【0090】
図9および図10は、モデル温度曲線を実際の温度測定データポイントに正確に適合させる本発明の一実施例を示す。図9には、種々の曲線が示されている。これら曲線のいずれも、図10に示された実際の温度測定データポイント126に適用されている。図10には、所定のパラメータAi、Bi、Ciを有するモデル曲線128が、データポイントに適合している状態が示されている。誤差e1〜e6、すなわちデータポイントとモデル曲線との差が決定され、合計二乗誤差が取り込まれる。
【0091】
一実施例では、このモデル曲線のSSEが最小である場合、これをこの測定の温度データに対するモデル曲線として使用する。当業者に周知のように、最小二乗推定ルーチンを使用することもできる。
【0092】
別の実施例では、最小SSEを発生するCの2つの値を決定できる。これら2つの値から、Cの中間値を決定し、この中間値に対し、SSEを計算する。このSSEが、最初の2つの双方のSSEの値未満である場合に、これを使用するか、またはSSEが許容可能なスレッショルドより低下するか、またはその減少を停止するまで、このプロセスを繰り返す。
【0093】
組織との接触の検出、予測のスタートおよび再スタート
総予測時間を予測するための組織との接触を検出する時間限度は、予測に先立ち、ティシューコンタクトスレッシュホールド(TissueContactThreshold)温度を越えるための最終未処理温度サンプルの時間(100ms)として定義される。このサンプルを、TCサンプルと称すことにする。
【0094】
プレディクトスタートディレイ(PredictStartDelay)サンプル(未処理サンプル)の後、予測サンプル(SOP)のスタートが生じる。TCに従うサンプルがティシューコンタクトスレッシュホールド(TissueContactThreshold)以下となった場合、TC値をリセットし、予測を中止し、リセットし、予測スタート遅延を再スタートする。従って、SOPのインデックス値を次のように定義する。
【数17】
図8および図11の例では、未処理温度122がティシューコンタクトスレッシュホールド(TissueContactThreshold)112より下に低下したことに起因し、第1TC120をリセットする。その後、関連する相対的インデックス=1を有する最終TC124を見ける。サンプルのプレディクトスタートディレイ(PredictStartDelay)118の後で、スタートプレディクション(StartPrediction)114のサンプルが発生し、このサンプルは第1TADの第1サンプルとなる。
【0095】
組織との接触の検出がなされない場合
予測が完了する前にある点で組織との接触がなくなることがある。最大TADの値よりもプリセットしたマージンだけ小さいTADサンプルが生じたときに、このような条件が検出される。
【0096】
図12は、予測技術で使用される温度センサに対する温度応答のグラフライン130の図に結合されたデータフロー図を示す。グラフライン内でドットとして示されている温度サンプル132は、この実施例においては、100ミリ秒ごとに取り込んだものである。インターバル134の間で、ヒーターはセンサの温度を組織接触スレッショルド130よりも一般に約1°F(≒0.5℃)低い目標余熱温度、この場合94°F(34.4℃)までにする。
【0097】
図11には、組織接触スレッショルドを7回横断するグラフラインが示されている。スタート遅延138により、組織接触スレッショルドが交差する7番目の時間142までには、TAD計算処理140は行われない。
【0098】
スタート遅延動作は予測処理が開始する前の少なくともあるインターバル(一般に0.5秒)の間、サンプリングされた温度は、組織接触スレッショルドよりも高く留まらなければならないようにすることによって、予測プロセスの早期の介しを防止している。この条件が満たされても、サンプリングされた温度が組織接触スレッショルドよりも低下した場合、予測プロセスはアボートされ、サンプリングされた温度が再び上記のような組織接触スレッショルドを越えるかどうかの判断を、サンプリングが再開する。サンプリングされた温度が1分の間、組織接触スレッショルドを越えない場合、モードは、関連する音響の通知と共に連続モニタステートへ移行され、ディスプレイインジケータに変わる。
【0099】
サンプリングされたデータが、必要とされる時間の間、組織接触スレッショルドを一旦越えると、第1ウィンドー144内、更に第1ウィンドー144から温度予測を行うことができない場合、次のウィンドー内で、点線で示されているTAD値を計算する。「現在のウィンドーからの予測温度」146、SSE148、CQI150、FSSE152、最終ウィンドー154および組織との接触がなくなること156の機能は、上記のようなTAD値からすべて実行される。図12には、これら機能に対する論理が示されている。
【0100】
現在のウィンドーからの予測を使用し、これを提示するか、またはウィンドーを1つのTAD値だけ進ませなければならないかどうかの制御を行うのに、論理ANDゲート162が使用される。詳細に説明すれば、162の出力が真であり、現在の予測をディスプレイするには3つの比較の結果のすべてが、真でなければならない。3つの入力は、次のように形成されている。SSEは、SSEスレッショルド160と比較(158)され、CQIは、CQIスレッショルド166と比較(164)され、ウィンドーの傾き168は、ウィンドースロープ(Windowslope)スレッショルド172と比較(170)される。これら3つの比較演算子158、164および170の出力は、ANDゲート162の入力として示される。
【0101】
最終ウィンドーに到達した場合、そのウィンドーの予測をディスプレイするか、または連続モニタステートへの移行が生じたかどうかを判断するために、異なる組のルールが適用される。送信ゲート184を介して、最終ウィンドーにより発生された予測のユーザーディスプレイへの伝達を制御するために、論理ANDゲート178が使用される。詳細に説明すれば、ゲート178の出力が真であり、このことによって、送信ゲート184が予測をディスプレイ196に送ることができるようにするためには、2つの比較の結果の双方が真でなければならない。FSSE152は、FSSEスレッショルド176に対するコンパレータ174によりテストされ、最終ウィンドーのステート154は真であるか、偽であるかが評価され、この論理信号はANDゲート178にも送られる。
【0102】
測定機器の作動ステートを連続モニタステート188に移行させるような、いくつかの論理状態が生じ得る。真になったときの論理ORゲート186は、連続モニタステート188への移行を生じさせる。このゲートの入力は、ANDゲート182の出力を含み、この入力は、2つの論理信号(一方は最終ウィンドー論理154からのものであり、他方は、コンパレータ174の反転出力180からのものである)を受信する。論理は、次のテストを実行する。すなわち、FSSEがFSSEスレッショルドよりも大であり、かつ最終ウィンドーが予測のために現在使用中であれば、連続モニタステートへ移行するとのテストを実行する。
【0103】
論理ORゲート186への別の入力は、安全性および信頼性テストを含み、これらのテストは、ウェルからプローブが引き出された直後に、異常な初期プローブ温度であるかどうかのチェック(190)、ヒーターの制御ロジックが適当な温度上昇を行うことができないこと(192)、および最終ウィンドーからの予測が、許可されたレンジ外にあるかとの判断(194)を含む。
【0104】
現在のウィンドー146から予測された温度をディスプレイ196に示すためのゲート195も示されている。しかしながら、このことを行う前に、SSE、CQIおよびウィンドースロープ(WindowSlope)のすべてが許容可能であることを示すANDゲート162からの入力信号が存在していなければならない。別の特徴では、インバータ198にANDゲート162の出力が提供され、インバータ198は、予測ウィンドー200を前進させるための信号を提供する。
【0105】
上記のように、被験者の体温を正確に予測するためのシステムおよび方法が提供される。温度データ曲線の近似は使用しない。その代わりに、温度データ曲線に実際の曲線を適合させ、その結果、高い精度を得ている。非線形のマルチパラメータモデル曲線を温度測定データに適合させる。とりあえず、特定の温度測定データ自身に応じて多数のパラメータを選択し、モデル曲線を特定の温度状況に適合させ、モデル曲線を極めて正確にする。ヒーター効果、極めて高い温度を受けた被験者および組織と接触しなくなったことから生じる、誤って導かれたデータを使用することを回避するためのセーフガードが提供されている。この解決方法は、処理パワーが限られているプロセッサによって実行でき、更に平衡状態が生じる前に被験者の体温を正確に予測できる。
【0106】
以上で本発明のいくつかの形態を図示し、説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の変形を行うことが可能であることも明らかである。従って、本発明は、特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
【符号の説明】
【0107】
42 センサおよびヒーター
70 増幅器
72 アナログ−デジタル変換
74 デジタル論理回路
82 電源
80 ヒーターの電源
76 メモリのソフトウェアアルゴリズム
78 ユーザーインターフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体温の検出に応答し、時間と共に変化する温度信号を発生するセンサと、
ディスプレイと、
プロセッサとを備え、
このプロセッサは、
前記温度信号をモニタし、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させ、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較し、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度データの特性と完全性基準とを比較し、前記モニタされた温度データの特性が前記完全性基準を満たさない場合に、前記プロセッサは前記被験者の体温を予測するのに、前記モニタされた温度データを使用しないようになっており、
前記予測された温度を前記ディスプレイに提供し、前記ディスプレイは前記予測された温度を表示することを特徴とする被験者の体温を測定するための温度計。
【請求項2】
前記完全性基準のうちの1つが、前記モニタされた温度データの曲率の質を含む、請求項1記載の温度計。
【請求項3】
前記曲率の質は、下向きに凹状となっていない温度の推定に際して使用できると見なされた実際の温度データに基づく曲線の一部の存在により決定される、請求項2記載の温度計。
【請求項4】
前記完全性基準のうちの1つは、前記モニタされた温度データの傾きの限度を含む、請求項1記載の温度計。
【請求項5】
前記曲線の限度は、最大の傾きの限度を含む、請求項4記載の温度計。
【請求項6】
被験者の体温の検出に応答し、時間と共に変化する温度信号を発生するセンサと、
ディスプレイと、
プロセッサとを備え、
このプロセッサは、
前記温度信号をモニタし、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させ、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較し、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度信号の曲率の質と曲率のスレッショルドとを比較し、前記曲率の質が前記曲率のスレッショルドを越えた場合に、前記プロセッサは、前記曲率の質の比較のための根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を前記ディスプレイに提供し、前記ディスプレイは前記予測された温度を表示することを特徴とする被験者の体温を測定するための温度計。
【請求項7】
被験者の体温の検出に応答し、時間と共に変化する温度信号を発生するセンサと、
ディスプレイと、
プロセッサとを備え、
このプロセッサは、
前記温度信号をモニタし、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させ、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較し、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
更に前記モニタされた温度信号の傾きと傾きスレッショルドとを比較し、前記傾きが前記傾きスレッショルドを越えた場合に、前記プロセッサは、前記傾きの比較の根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を前記ディスプレイに提供し、前記ディスプレイは前記予測された温度を表示することを特徴とする被験者の体温を測定するための温度計。
【請求項8】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを備え、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記非線形曲線の適合と所定の完全性基準とを比較するステップを更に含み、前記前記曲線の適合から予測された温度が前記完全性基準を満たしていない場合に、前記被験者の体温の予測から前記モニタされた温度データを除き、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項9】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを備え、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記非線形曲線の適合と所定の完全性基準とを比較するステップを更に含み、前記前記曲線の適合から予測された温度が前記完全性基準を満たしていない場合に、前記被験者の体温の予測から前記モニタされた温度データを除き、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項10】
前記完全性基準のうちの1つが、前記モニタされた温度データの曲率の質を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記曲率の質は、下向きに凹状となっていない温度の推定に際して使用できると見なされた実際の温度データに基づく曲線の一部の存在により決定されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記完全性基準のうちの1つは、前記モニタされた温度データの傾きの限度を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記曲線の限度は、最大の傾きの限度を含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを含み、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度信号の曲率の質と曲率のスレッショルドとを比較するステップを含み、前記曲率の質が前記曲率のスレッショルドを越えた場合に、前記曲率の質の比較のための根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項15】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを含み、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度信号の傾きと、傾きスレッショルドとを比較するステップを含み、前記傾きが、前記傾きスレッショルドを越えた場合に、前記傾きの比較の根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項16】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを含み、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項17】
前記曲率インデックスは、測定サイトに適した値の族に限定されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項1】
被験者の体温の検出に応答し、時間と共に変化する温度信号を発生するセンサと、
ディスプレイと、
プロセッサとを備え、
このプロセッサは、
前記温度信号をモニタし、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させ、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較し、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度データの特性と完全性基準とを比較し、前記モニタされた温度データの特性が前記完全性基準を満たさない場合に、前記プロセッサは前記被験者の体温を予測するのに、前記モニタされた温度データを使用しないようになっており、
前記予測された温度を前記ディスプレイに提供し、前記ディスプレイは前記予測された温度を表示することを特徴とする被験者の体温を測定するための温度計。
【請求項2】
前記完全性基準のうちの1つが、前記モニタされた温度データの曲率の質を含む、請求項1記載の温度計。
【請求項3】
前記曲率の質は、下向きに凹状となっていない温度の推定に際して使用できると見なされた実際の温度データに基づく曲線の一部の存在により決定される、請求項2記載の温度計。
【請求項4】
前記完全性基準のうちの1つは、前記モニタされた温度データの傾きの限度を含む、請求項1記載の温度計。
【請求項5】
前記曲線の限度は、最大の傾きの限度を含む、請求項4記載の温度計。
【請求項6】
被験者の体温の検出に応答し、時間と共に変化する温度信号を発生するセンサと、
ディスプレイと、
プロセッサとを備え、
このプロセッサは、
前記温度信号をモニタし、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させ、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較し、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度信号の曲率の質と曲率のスレッショルドとを比較し、前記曲率の質が前記曲率のスレッショルドを越えた場合に、前記プロセッサは、前記曲率の質の比較のための根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を前記ディスプレイに提供し、前記ディスプレイは前記予測された温度を表示することを特徴とする被験者の体温を測定するための温度計。
【請求項7】
被験者の体温の検出に応答し、時間と共に変化する温度信号を発生するセンサと、
ディスプレイと、
プロセッサとを備え、
このプロセッサは、
前記温度信号をモニタし、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させ、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較し、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
更に前記モニタされた温度信号の傾きと傾きスレッショルドとを比較し、前記傾きが前記傾きスレッショルドを越えた場合に、前記プロセッサは、前記傾きの比較の根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を前記ディスプレイに提供し、前記ディスプレイは前記予測された温度を表示することを特徴とする被験者の体温を測定するための温度計。
【請求項8】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを備え、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記非線形曲線の適合と所定の完全性基準とを比較するステップを更に含み、前記前記曲線の適合から予測された温度が前記完全性基準を満たしていない場合に、前記被験者の体温の予測から前記モニタされた温度データを除き、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項9】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを備え、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記非線形曲線の適合と所定の完全性基準とを比較するステップを更に含み、前記前記曲線の適合から予測された温度が前記完全性基準を満たしていない場合に、前記被験者の体温の予測から前記モニタされた温度データを除き、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項10】
前記完全性基準のうちの1つが、前記モニタされた温度データの曲率の質を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記曲率の質は、下向きに凹状となっていない温度の推定に際して使用できると見なされた実際の温度データに基づく曲線の一部の存在により決定されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記完全性基準のうちの1つは、前記モニタされた温度データの傾きの限度を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記曲線の限度は、最大の傾きの限度を含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを含み、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度信号の曲率の質と曲率のスレッショルドとを比較するステップを含み、前記曲率の質が前記曲率のスレッショルドを越えた場合に、前記曲率の質の比較のための根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項15】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを含み、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記モニタされた温度信号の傾きと、傾きスレッショルドとを比較するステップを含み、前記傾きが、前記傾きスレッショルドを越えた場合に、前記傾きの比較の根拠を形成するデータに基づき、被験者の体温の予測をしないようになっており、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項16】
被験者の体温を検出するステップと、
被験者の体温の検出に基づき、時間と共に変化する温度信号を発生するステップと、
前記温度信号をモニタするステップと、
形状が変化する非線形のマルチパラメータモデル温度曲線を前記モニタした温度信号に適合させるステップと、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号とを比較するステップとを含み、
前記モデル温度曲線と前記モニタした温度信号との差がスレッショルドを越えない場合に、前記モデル曲線に基づき、被験者の体温を予測し、
前記予測された温度を表示するステップを含むことを特徴とする被験者の体温を測定するための方法。
【請求項17】
前記曲率インデックスは、測定サイトに適した値の族に限定されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−22010(P2012−22010A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240002(P2011−240002)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【分割の表示】特願2008−504210(P2008−504210)の分割
【原出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(507271514)ケアフュージョン 303 インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【分割の表示】特願2008−504210(P2008−504210)の分割
【原出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(507271514)ケアフュージョン 303 インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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