説明

温度分布検出システム及び検出体

【課題】単純でない形状を有する空間の温度分布を検出することが可能な温度分布検出システム及びかかる検出システムに用いられる検出体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる温度分布検出システムに用いられる検出体は、移動体を移動自在に保持するガイドレールと、ガイドレールを連結してガイドレールとともに閉じた枠体を形成し、自身の両側に接続されたガイドレールの相互になす角度を所定の角度に設定する連結部と、両端がそれぞれ異なる移動体に接続され、温度に応じて赤外線を放射する紐状の熱受容体と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線カメラによって撮影した画像に基づいて空間の温度分布を検出する温度分布検出システムおよびその検出システムに用いられる検出体に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の温度分布を検出する手段の一つとして、物体から放射される赤外線を赤外線カメラにより検出する方法がある。空間の温度分布を測定する場合には、空間に存在する気体の温度分布を赤外線カメラにより測定して行うことが考えられる。しかし、気体は、赤外線放射率が小さいため、気体を赤外線カメラにより直接的に測定することは困難である。そこで、気体の熱が伝達される媒体を空間内に設置し、この媒体から放射される赤外線を赤外線カメラによって測定することにより、空間の温度分布を検出する方法が用いられることがある。
【0003】
このような熱受容体としての媒体を利用した空間の温度分布の検出方法として、例えば特許文献1には、熱容量の小さい材料で形成され、温度分布を測定すべき空間に設置された複数の検知板と、その検知板の温度を測定する赤外線放射温度計とを備えた、建物内部等の温度分布測定装置が開示されている。かかる装置によれば、空間の温度分布が読み取り誤差なく、簡単かつ迅速に測定できるとしている。
【0004】
同じく熱受容体としての媒体を利用して空間の温度分布を検出する方法として、特許文献2には、温度変化のある空間内に挿入可能で熱流の影響を無視できる形状を有する受熱材を配置し、その受熱材の温度を赤外線カメラによって計測する温度場の温度計測装置において、空間内に挿入される受熱材は、表面が黒色の細線である温度場の温度測定装置が開示されている。かかる装置によれば、従来温度センサで計測していた温度場の計測よりも極めて迅速にかつ簡便に計測することが可能となったとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−100339号公報
【特許文献2】特開平11−6770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の検知板や特許文献2の受熱材は、その配置があらかじめ固定されており、配置の変更ができない。従って、例えば、冷蔵ショーケースの前面の温度分布の検出のように、単純でない形状を有する空間の温度分布を検出する場合には、検出対象の空間の形状にあわせて、検知板や受熱材の配置をフレキシブルに調整することができず、的確な測定ができないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑み、単純でない形状を有する空間の温度分布を検出することが可能な温度分布検出システム及びかかる検出システムに用いられる検出体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる温度分布検出システムに用いられる検出体の代表的な構成は、移動体を移動自在に保持するガイドレールと、ガイドレールを連結してガイドレールとともに閉じた枠体を形成し、自身の両側に接続されたガイドレールの相互になす角度を所定の角度に設定する連結部と、両端がそれぞれ異なる移動体に接続され、温度に応じて赤外線を放射する紐状の熱受容体と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、連結部を中心として、その両側に接続されたガイドレールの相互になす角度を調整することにより、温度分布を検出すべき空間の形状にあわせて枠体の形状を変更できる。さらに移動体を移動させて、移動体に接続された紐状の熱受容体の位置を変更して、熱受容体相互の間隔や熱受容体の傾きなどをフレキシブルに調整することにより、温度分布を検出すべき空間の形状にあわせて熱受容体を的確に配置できる。従って、単純でない形状を有する空間であっても、その温度分布を的確に検出することができる。
【0010】
ここで、移動体とは、ガイドレールに沿って移動する部材であり、移動の方法としては、例えば摺動や回動があるが、これに限られるものではない。また、熱受容体を紐状とするのは、例えば、面状とするのに比べて、熱受容体の周囲からの熱の伝達経路が少なくなり、空間の温度分布の特徴が捉えやすくなるためである。紐状であれば、検出対象の空間における気流の流れを阻害することもなく、温度分布の検出における検出体の影響を極力小さくすることができる。
【0011】
上記の熱受容体は、炭素を含有したシリコンゴムであるとよい。炭素は、例えば、炭素粉末やカーボンナノチューブの形態でシリコンゴムに含有可能である。シリコンゴムは弾性が高いため、シリコンゴムを熱受容体に使用することにより、熱受容体の柔軟性を増加させ、熱受容体を伸び縮み可能とすることができる。このため、ガイドレールと連結部により形成された枠体の形状にあわせて、熱受容体を紐状に保ったまま、熱受容体の長手方向の長さを変更可能とすることができるため、温度分布を検出すべき空間への熱受容体の配置をより的確に行うことができる。
【0012】
また、シリコンゴムは、熱伝導率が小さいため、これを紐状の熱受容体に使用する場合は、熱受容体の長手方向の熱の伝導が小さくなる。従って、空間の各位置における温度をより正確に表すことができる。さらに、シリコンゴムは、耐熱性に優れ、入手が容易な点でも熱受容体の素材として好適である。
【0013】
炭素は熱放射性に優れており、赤外線カメラで撮影した場合に、空間の温度分布をより正確に捉えることができる。従って、炭素をシリコンゴムに含有させることにより、シリコンゴムの小さい熱伝導率と相俟って、空間の温度分布をより的確に検出することが可能となる。
【0014】
上記の熱受容体は、弾性体を介して移動体に張架されるとよい。弾性体を介することにより、熱受容体の張力を適切に保持することができ、熱受容体の弛みを抑えることができる。従って、空間の温度分布を熱受容体の長手方向に直線的に測定することができるため、温度分布の把握が容易になる。
【0015】
上記の熱受容体は、移動体に接続された巻き取り部に巻き取り自在に収められ、巻き取り部から繰り出されて移動体に接続されるとよい。空間の温度分布を測定するときに熱受容体を巻き取り部から繰り出し、測定終了時には熱受容体を巻き取り部に収めることにより、熱受容体をコンパクトに収納でき、熱受容体の運搬などの扱いが容易になる。
【0016】
本発明にかかる検出体を備える温度分布検出システムとして構成してもよい。かかる温度分布検出システムの代表的な構成は、赤外線を撮影可能な赤外線カメラを備えたカメラシステムと、赤外線カメラでの撮影を簡易化するために用いられる検出体とを備え、検出体は、移動体を移動自在に保持するガイドレールと、ガイドレールを連結してガイドレールとともに閉じた枠体を形成し、自身の両側に接続されたガイドレールの相互になす角度を所定の角度に設定する連結部と、両端がそれぞれ異なる移動体に接続され、温度分布を検出すべき空間に配置されて、温度に応じて赤外線を放射する紐状の熱受容体と、からなり、カメラシステムは、赤外線カメラによって熱受容体を撮影可能であることを特徴とする気体温度分布検出システムとすることができる。
【0017】
かかる構成によれば、温度分布を検出すべき空間の形状にあわせて空間に配置された熱受容体を赤外線カメラによって撮影することにより、単純でない形状を有する空間であっても、その温度分布を的確に検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、単純でない形状を有する空間の温度分布を的確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の実施の形態における温度分布検出システム用検出体の概略外観図である。(b)は温度分布検出システム用検出体の側面図であり、(a)のA矢視図である。(c)は温度分布検出システム用検出体の折り畳んだ状態を説明する図である。
【図2】ガイドレールと連結部の構造を説明する図である。
【図3】ガイドレールと移動体の構造を説明する図である。
【図4】熱受容体と移動体との接続部を説明する図である。
【図5】巻き取り部を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態における温度分布検出システムの適用例を説明する図である。
【図7】熱受容体の直径と赤外線カメラによる撮影画像の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明にかかる温度分布検出システムおよびかかる検出システムに用いられる検出体の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1(a)は、本発明の実施の形態における温度分布検出システム用検出体の概略外観図である。図1(b)は、温度分布検出システム用検出体の側面図であり、(a)のA矢視図である。温度分布検出システム用検出体(以下、適宜、「検出体」という)10は、移動体11、移動体11が移動するガイドレール12、ガイドレール12を連結して接続する連結部13、および移動体11にその両端を接続された熱受容体14とから構成される。
【0022】
温度分布検出システム用検出体10は、ガイドレール12と、ガイドレール12を連結する連結部13により、閉じた枠体が形成される。連結部13を介して隣り合うガイドレール12は、その連結部13を中心として、相互になす角度を所定の角度に設定される。例えば、図1(a)の実線で示すように、枠体全体を枠体の外側に凸に形成することもできるし、点線で示すように、枠体の一部を枠体の内側に凸に形成することもできる。
【0023】
図1(c)は、温度分布検出システム用検出体の折り畳んだ状態を説明する図である。連結部13はその両側に接続されたガイドレール12の相互になす角度を所定の角度に設定可能なため、図1(c)に示すように、枠体をコンパクトに折り畳むことができる。このとき、移動体11や熱受容体14は、枠体に取り付けられたままとしてもよいし、枠体から取り外すことができるようにしてもよい。
【0024】
図2は、ガイドレールと連結部の構造を説明する図である。図2(a)は、ガイドレール12の端部と連結部13の概略拡大図であり、図2(b)は、図2(a)のB矢視図である。図2に示すように、ガイドレール12同士の連結は、例えば、それぞれのガイドレール12の端部に孔をあけ、この端部を相互に重ね合わせ、重ね合わされた端部の孔に、軸が円筒形状の留め具を連結部13として嵌め込むことにより、ガイドレール12が相互になす角度を所定の角度に固定させることができる。ガイドレール12や連結部13は、例えばアルミ材で形成されると軽量のため、扱いが容易になる。ガイドレール12の長さはすべて同じでもよいし、長さが異なってもよい。すべて同じ長さとすると、製作が容易になる。ガイドレール12の長さは、例えば、30cmから50cm程度にすると、比較的大きな空間の温度分布の検出に適する。
【0025】
図3は、ガイドレールと移動体の構造を説明する図である。図3(a)、(b)ともに、ガイドレール12を、ガイドレール12の長手方向に直交する面で切断した断面図である。図3(a)に示すように、ガイドレール12は、例えば、枠体の内側に向く面に、長手方向に沿って溝が形成されており、この溝に沿ってガイドレール12を長手方向に自在に移動可能な移動体11を保持している。移動体11は、図3(a)に示すように、例えば2つの四角形を接して並べた断面形状を有しており、ガイドレール12の溝を摺動することができる。ガイドレール12に沿って移動可能なように、移動体11は、車輪を備えていてもよい。また、移動体11は、ガイドレール12上の任意の位置で固定されるように、ストッパを備えているとよい。ストッパは、例えば、移動体11をガイドレール12に押し付ける機構を有するものとしたり、ガイドレール12上で移動体11の前後に挿入されて移動体11の移動を阻止するピン形状の部材とすることができる。
【0026】
図3(b)に示すように、ガイドレール12を磁性体で構成し、移動体11を磁石で構成して、磁性体が磁石に磁力吸着される性質を利用することにより、移動体11をガイドレール12上の任意の位置に配置可能としてもよい。かかる構成によれば、移動体11の移動を阻止するストッパなどの部材を別に設ける必要がないため、検出体10の構造を簡単にすることができる。なお、図3(a)、(b)では、熱受容体14は移動体11に直接接続されているが、熱受容体14の移動体11への接続は、後述するように、弾性体15を介するなどしてもよい。
【0027】
図4は、熱受容体と移動体との接続部を説明する図である。図4に示すように、熱受容体14は、例えば、その端部に先端が円環形状の熱受容体接続部42を有し、この熱受容体接続部42が弾性体15の一方のフック状の先端部分に接続され、弾性体15の他方のフック状の先端部分が、移動体11に設けられた把手形状の移動体接続部41に接続される。移動体接続部41は孔を設けた形状とし、その孔に、弾性体15のフック状の先端部分が係止されることにより、弾性体15が移動体接続部41に接続されてもよい。移動体接続部41を鉤ネジ状に形成することにより、弾性体15と接続されてもよい。熱受容体14と移動体11との接続部に弾性体15を用いることにより、弾性体15の張力を利用して熱受容体14の弛みを抑えることができ、熱受容体14の長手方向について空間の直線的な温度分布を測定することができる。
【0028】
図5は、巻き取り部を説明する図である。図5に示すように、熱受容体14は、巻き取り部16に巻き取り自在に収められていてもよい。熱受容体14は、空間の温度分布を測定するときに巻き取り部16から繰り出され、熱受容体接続部42により移動体接続部41に接続される。巻き取り部16は、巻き取り部接続部43により移動体接続部41に接続される。測定終了時には、熱受容体14は巻き取り部の中心軸に巻回して収納される。
【0029】
巻き取り部16は、バネなどの巻き取り方向への付勢部材を有することにより、熱受容体14を容易に巻き取り可能にしたり、巻き取りの制動部材を有することにより、熱受容体14の繰り出しを所定の位置で停止することができる。かかる構成により、熱受容体14をコンパクトに収納することができるため、熱受容体14の運搬などの扱いを容易にすることができる。また、熱受容体14の移動体11への接続を容易にすることができる。なお、巻き取り部接続部43は、弾性体15を介して移動体接続部41に接続されていてもよい。弾性体15を介することにより、熱受容体14の弛みを抑えることができる。
【0030】
熱受容体14をどの移動体11に接続するかは任意であり、温度分布を検出すべき空間の形状に合わせて熱受容体14を的確に配置するために、適切な接続を選択することができる。熱受容体14は、紐状であり、かつその断面は丸の形状であるとよい。紐状の形状は、熱受容体14の周囲からの熱の伝達経路を少なくすることができ、空間の温度分布の特徴を捉えやすい。また、周囲の気流の流れを阻害することがないため、温度分布の検出における熱受容体14の影響を極力小さくできる。断面を丸の形状とするのは、周囲から熱受容体14への熱の伝達率が高くなるため、空間の温度分布の特徴をより正確に表しやすくなるからである。なお、熱受容体14は、空間の温度分布の測定中に一定の形状を保つことが可能であれば、温度分布の検出が可能であるため、紐状以外の形状でもよい。
【0031】
熱受容体14は、熱伝導率が小さい材質が望ましく、例えば、シリコンゴムやナイロンが用いられる。熱伝導率が小さい方が、熱受容体14の長手方向の熱の伝導が少なくなるため、空間の温度分布の特徴をより正確に表しやすくなるからである。シリコンゴムやナイロンは耐熱性が高い点でも熱受容体14に好適である。
【0032】
シリコンゴムは高い弾性を有するため、熱受容体14として用いた場合に、シリコンゴム自体の張力により、熱受容体14の弛みを抑えることができる点でも優れている。これにより、熱受容体14の長手方向について、空間の温度分布を直線的に測定することができる。ナイロンや弾性の足りない材質を熱受容体14に用いる場合は、熱受容体14の端部にゴムやバネなどの弾性体を接続して移動体11に張架することにより、シリコンゴムと同じように空間の直線的な温度分布を測定することが可能となる。
【0033】
熱受容体14は、シリコンゴムに炭素粉末やカーボンナノチューブを含有させるとさらによい。炭素は熱放射性に優れる。これを粉末やカーボンナノチューブの形態で、シリコンゴムに含有させることにより、シリコンゴム中に炭素が散在し、シリコンゴムの熱伝導率の小さい点と、炭素の熱放射率の高い点をともに生かすことができる。炭素を含有したシリコンゴムの熱受容体14を赤外線カメラ21で撮影することにより、空間の温度分布の特徴をより正確に捉えることができる。なお、赤外線放射率などの物理的特性や入手の容易さに応じて、熱受容体14として適した素材を選択することが可能である。
【0034】
コンパクトに折り畳まれた温度分布検出システム用検出体10は、温度分布を検出すべき空間に運ばれ、そこで、連結部13を中心として、その両側に接続されたガイドレール12の相互になす角度を調整して所定の角度に設定することにより、空間の形状に合わせて枠体の形状が形成される。そして、移動体11をガイドレール12に沿って移動させ、適当な位置で必要に応じてストッパを用いて移動体を固定することにより、空間の温度分布に適した位置に、熱受容体14を配置する。これにより、単純でない形状を有する空間であっても、その空間の温度分布の検出に適する位置に熱受容体14を配置することができる。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態における温度分布検出システムの適用例を説明する図である。冷蔵ショーケースの前方の空間の温度分布を検出する例を示している。温度分布検出システム30は、検出体10とカメラシステム20とからなる。カメラシステム20は、赤外線を撮影可能な赤外線カメラ21と、赤外線カメラ21に接続され、赤外線カメラ21で撮影した画像を表示する表示装置22とから構成される。表示装置22は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)を用いることができるが、赤外線カメラ21に内蔵されていてもよい。
【0036】
図6に示すように、冷蔵ショーケース40は、断面がコの字状の場合がある。このような冷蔵ショーケース40の前方の空間の温度分布を検出するために、温度分布検出システム用検出体10は、冷蔵ショーケース40の前方の空間の温度分布の検出に適した形状に枠体が形成されて配置される。ガイドレール12に保持される移動体11を適宜移動して、移動体11に接続された熱受容体14相互の間隔や熱受容体14の傾きなどをフレキシブルに調整することにより、熱受容体14は空間の温度分布の検出に適した位置に配置される。なお、検出体10は、ガイドレール12の材質を適切に選択することにより自立可能とすることができるし、支持部材を設けて枠体を支持することにより、検出体10を垂直に配置することもできる。
【0037】
冷蔵ショーケース40から流れ出る冷たい空気は、検出体10に備えられた熱受容体14を冷却し、熱受容体14は、その温度に応じて赤外線を放射する。熱受容体14を撮影可能に配置された赤外線カメラ21により熱受容体14が撮影され、赤外線カメラ21による画像は表示装置22に送られる。表示装置22に表示された画像から、冷蔵ショーケース40の前方の空間の温度分布を検出することができる。従って、冷蔵ショーケース40の前方の空間のような単純でない形状の空間であっても、その温度分布を的確に検出することができる。
【0038】
図7は、熱受容体の直径と赤外線カメラによる撮影画像の関係を説明する図である。図7は、赤外線カメラ21の撮像面を示しており、一辺がK(μm)の正方形の一マスは赤外線カメラ21の一画素に相当し、この画素は行方向と列方向に複数並んでいる。斜線部は、赤外線カメラ21で撮影された熱受容体14の画像である。画素の大きさは一般に9μm程度であり、使用する赤外線カメラ21のレンズと熱受容体14までの距離や、赤外線カメラ21の焦点距離などにより、被写体である熱受容体14が赤外線カメラ21のレンズに結像する大きさが決まる。
【0039】
図7に示すように、一画素の大きさがK(μm/pixel)の場合、紐状の熱受容体14の直径をDとし、この熱受容体14の赤外線カメラ21の撮像面における直径d(μm)をd=nK(μm)で表すと、nが2以上になるように熱受容体14の直径を決定することが好ましい。一般に、一つの画素において、その画素の全体を熱受容体14の像が占めない場合は、単位画素における受光面積を十分に確保できないため、赤外線カメラ21は熱受容体14の温度を実際の温度よりも低く捉えてしまい、空間の温度分布の検出が不正確になる。
【0040】
すなわち、各画素において、図7のウ列の画素のように画素全体が熱受容体14の像で占められているか、ア列の画素のように、画素に熱受容体14の像がまったく存在しない場合には、赤外線カメラ21は熱受容体14の温度を正確に捉えるため問題はないが、イ列やエ列の画素のように、画素が部分的に熱受容体14の像に占められている場合は、赤外線カメラ21は熱受容体14の温度を実際の温度よりも低く捉えてしまう。
【0041】
図7に示すように熱受容体14の長手方向と画素の一辺が平行な位置関係にあるときは、nが2未満の場合は、撮影された熱受容体14の像が画素全体を占めるような画素がまったく存在しない場合が生じ、空間の温度分布の検出が不正確になりうる。従って、温度分布を正確に検出するために、熱受容体14の像の直径dは画素の一辺の長さKよりも十分に大きいことが望ましく、少なくともnは2以上であることが必要である。
【0042】
赤外線カメラ21の撮像面における熱受容体14の直径dを熱受容体14の実際の直径Dに変換するには、例えば、あらかじめ、赤外線カメラ21から所定の距離にある所定の物体を撮影するなどにより、赤外線カメラ21からの距離と物体の大きさの関係を表す換算テーブルを作成しておいて、このテーブルを用いて変換すればよい。
【0043】
一方、熱受容体14の直径が大きいと、熱受容体14の体積に対する表面積の割合が低下し、かつ熱受容体14の熱容量が大きくなるため、空間の温度変化に対する熱受容体14の応答性が低下する。また、熱受容体14の直径が大きいほど、熱受容体14が空間の気流の妨げになり、空間の本来の温度分布を測定することができない。従って、応答性を確保し、かつ空間の本来の温度分布を測定するとの観点からは熱受容体14の直径は小さい方が望ましい。
【0044】
上述の通り、検出の正確性と温度変化に対する応答性などを考慮すると、nは2以上にするのが好ましい。図7には、nが2の場合を示している。すなわち、熱受容体14の直径が一画素の一辺の長さの2倍である場合は、図7に示すように熱受容体14の長手方向と画素の一辺が平行な位置関係にあるときは、ウ列の画素のように、一画素の全体を熱受容体14が占める画素が必ず存在するので、空間の温度分布を十分正確に検出することができる。なお、熱受容体14にシリコンゴムなどの弾性の高い材料を使用する場合は、熱受容体14が伸びて、熱受容体14の実際の直径Dが最も小さくなるときにnが所定の値以上になるように、熱受容体14の直径を決定する。
【0045】
なお、nが√5以上であれば、熱受容体14の長手方向と画素の一辺の方向の位置関係にかかわらず、一画素のすべてを熱受容体14が占める画素が必ず存在するので、空間の温度分布検出の正確性を増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は,赤外線カメラによって撮影した画像に基づいて空間の温度分布を検出する温度分布検出システムおよびその検出システムに用いられる検出体として利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…温度分布検出システム用検出体
11…移動体
12…ガイドレール
13…連結部
14…熱受容体
15…弾性体
16…巻き取り部
20…カメラシステム
21…赤外線カメラ
22…表示装置
30…温度分布検出システム
41…移動体接続部
42…熱受容体接続部
43…巻き取り部接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を移動自在に保持するガイドレールと、
前記ガイドレールを連結して前記ガイドレールとともに閉じた枠体を形成し、自身の両側に接続された前記ガイドレールの相互になす角度を所定の角度に設定する連結部と、
両端がそれぞれ異なる前記移動体に接続され、温度に応じて赤外線を放射する紐状の熱受容体と、
を備えたことを特徴とする温度分布検出システム用検出体。
【請求項2】
前記熱受容体は、炭素を含有したシリコンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の温度分布検出システム用検出体。
【請求項3】
前記熱受容体は、弾性体を介して前記移動体に張架されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度分布検出システム用検出体。
【請求項4】
前記熱受容体は、前記移動体に接続された巻き取り部に巻き取り自在に収められ、前記巻き取り部から繰り出されて前記移動体に接続されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度分布検出システム用検出体。
【請求項5】
赤外線を撮影可能な赤外線カメラを備えたカメラシステムと、前記赤外線カメラでの撮影を簡易化するために用いられる検出体とを備え、
前記検出体は、移動体を移動自在に保持するガイドレールと、
前記ガイドレールを連結して前記ガイドレールとともに閉じた枠体を形成し、自身の両側に接続された前記ガイドレールの相互になす角度を所定の角度に設定する連結部と、
両端がそれぞれ異なる前記移動体に接続され、温度分布を検出すべき空間に配置されて、温度に応じて赤外線を放射する紐状の熱受容体と、からなり、
前記カメラシステムは、前記赤外線カメラによって前記熱受容体を撮影可能であることを特徴とする温度分布検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−17612(P2011−17612A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162306(P2009−162306)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】