説明

温度制御および電子識別システムを備えたドッキングステーション

温度制御されたドッキングステーションを用いた例示的手術用システムが、開示されている。手術用システムは、位置範囲内を選択的に移動可能な関節アームを備える。処置を実行するときに用いられるアイテムを受け取るためのトレイは、関節アームに取り付けられる。ドッキングステーションは、該ドッキングステーションを選択的に加熱するための加熱要素と、ドッキングステーションの温度をモニターするための温度センサと、ドッキングステーションに配置された物品に関連する情報を収集するように構成された読み取り器とを有する。また、手術用システムは、加熱要素、温度センサ、および読み取り器に操作可能に連結されたコントローラを備える。コントローラは、温度センサおよび/または読み取り器から受信した信号に応じて、加熱要素の熱出力を調整するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月17日に出願された米国仮出願シリアルNO.12/640,427に基づく優先権を主張するものである。この米国仮出願の内容は、この参照により本稿に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
人間の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を伝達し、水晶体により画像を網膜上に合焦させることによって、視覚を提供するように機能する。合焦された画像の品質は、眼の寸法および形状、ならびに角膜および水晶体の透明性を含む、多くの要因に依存する。
【0003】
外傷または疾患によって、水晶体の透明性の低下が引き起こされた場合、視覚は、網膜に到達する光が減少することにより劣化する。眼の水晶体におけるこのような欠陥は、医学的には白内障(cataract)として知られている。このような症状に対する一般的に認知された治療は、水晶体を外科的に除去し、人工の眼内水晶体(IOL)によって水晶体の機能を代替させることである。
【0004】
白内障水晶体を治療するための一つの認知された方法は、水晶体超音波乳化吸引術(phacoemulsification)と呼ばれる、外科的手法によって水晶体を除去することである。この処置の間は、前嚢に開口が形成され、薄い水晶体超音波乳化吸引術用切断チップが、白内障水晶体の内部に挿入されて超音波振動する。振動する切断チップは、水晶体が眼の外に吸引され得るように、水晶体を液化または乳化させる。罹患した水晶体は、一度除去されて、IOLに置換される。
【0005】
IOLは、一般的に、眼内注射カートリッジのような挿入用の装置またはデバイスを用いてインプラントされる。このような挿入用の装置またはデバイスは、外傷を低減して施術後の回復を促進するように、眼の微小な開口を通して水晶体が移送されるように、該水晶体を丸め、折り畳み、または構成する。IOLを移送するためのインジェクターは、典型的には、中空の挿入チューブまたはカニューレ(cannula)を有するカートリッジ、およびハンドピースを用いており、折り畳まれたIOLは、押し棒を用いることによって、挿入チューブまたはカニューレ内を移送される。カートリッジは、樹脂のような廃棄可能な材料によって構成され、ハンドピースと結合する準備が整うまで無菌のパッケージ内に保持される。あるインジェクターは、カートリッジを用いずに動作し、且つ再使用可能である。IOLは、分離されて保管可能であり、移送の前にインジェクターまたはカートリッジの負荷チャンバーに送られ得る。典型的には、負荷チャンバーは、最初に、例えば粘弾性媒体または眼科用粘弾性デバイス(OVD)のような液体またはジェルによって、部分的に満たされる。潤滑粘弾性は、IOLがインジェクターを通過することを容易とする。粘弾性物質は、注射器に予め装填される。この注射器は、典型的には、薄いカニューレチップを有し、粘弾性物質は、このカニューレチップ内を通過して、IOLインジェクター内の負荷チャンバーに移送される。
【0006】
IOLは、IOLインジェクター内に、折り畳まれた状態で配置される。IOLは、患った水晶体を除去するために用いられたものと同じ微小な開口を通して、眼内に挿入される。IOLインジェクターのチップは、上記開口内に挿入され、水晶体が眼内に移送される。
【0007】
IOLは、様々な材料から製造可能であり、特殊な特徴を示すポリマーを含む。これらの特徴によって、水晶体が折り畳み可能となり、水晶体が眼内に移送されたときに、眼内にて適切な形状に展開することが可能となる。これらの水晶体を形成するために用いられるポリマーは、温度依存の傾向を示す特徴を備える。ポリマーを加熱することによって、IOLをより容易に圧縮し、折り畳むことが可能となる。これにより、IOLを微小な開口に適切に挿入することが可能となる。より微小な開口とすることは、早期治療を促進し、患者に対する外傷をより低減するので、望ましい。
【0008】
IOLを製造するために用いられるポリマーの温度特性は、水晶体のインプラントプロセスに対して重要な影響をもたらす場合がある。あるポリマーに関しては、比較的に狭い温度範囲において、硬度または粘度の変化が生じる。例えば、より低い温度においては、ポリマーは、脆弱となり、折り畳まれた場合に破損してしまう可能性がある。また、より高い温度においては、ポリマーは、粘着性となり、形状を保持する能力を失ってしまう可能性がある。したがって、IOLを物理的に完全な状態に維持するために、ポリマーを特定の温度範囲内に維持することが有効である。
【0009】
実際上、ある外科医は、例えばオートクレーブの外側部、または幼児のお尻拭きを暖めるための装置を用いて、IOLを手動で加熱する手段を用いる。しかしながら、このような加熱は、制御不可能であって、IOLを最適な温度に加熱することが困難である。上記したように、人工の水晶体を製造するために用いられるポリマーは、温度に対して敏感である。したがって、より正確な温度制御が、望ましい結果をもたらすことを容易とすることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】温度制御されたドッキングステーションを用いた例示的眼科手術用コンソールの前方斜視図である。
【図2】眼科手術用コンソールのトレイ組み立て体に取り付けられたドッキングステーションの平面図であって、トレイ組み立て体は例示的な位置範囲に示されている。
【図3】図1のドッキングステーションおよびトレイ組み立て体の一部の部分断面図である。
【図4】図1に示す例示的眼科手術用コンソールの回路図である。
【図5】手術用コンソールを支持するための例示的カートの前方斜視図であって、ドッキングステーションが、カートに連結されたトレイに取り付けられている状態を示す。
【図6】図5に示す例示的カートの前方斜視図であって、眼科手術用コンソールがカートに取り付けられた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明および図面を参照して、開示されたシステムおよび方法の一例となるアプローチを詳細に説明する。図面は、ある可能性のあるアプローチを示しているが、この図面は、必ずしも拡大縮小する必要はなく、ある特定の特徴は、本開示内容をより有利に図示および説明するために、誇張され、除外され、または部分的に分割され得る。さらに、ここで説明された記載は、包括的とする意図があるもの、または、特許請求の範囲を、図面および以下の詳細な説明に開示された形状および構成そのものに限定あるいは規制する意図があるものではない。
【0012】
図1および図2を参照して、例えば罹患した眼の水晶体を除去するための水晶体超音波乳化吸引術のような、様々な眼科処置を行うための例示的眼科手術用コンソール20が、図示されている。手術用コンソール20は、該コンソールがある位置から他の位置に容易に移動可能とするための、付加的な一体的カート22を備える。手術用コンソール20は、関節支持アーム26に取り付けられたトレイ24を備え得る。トレイ24は、様々な道具、装備、装置、ハンドピース、および消耗品を、外科手術の間に一時的に保管するためのトレイ表面28を有し得る。支持アーム26の端部30は、コンソールのハウジジング32に可動に連結され得る。支持アーム26は、広範な処置を容易にするために、図2に示されているように、調整可能な高さおよび位置の望ましい範囲内においてトレイを選択的に移動可能とする、様々なジョイント組み立て体を有し得る。トレイ24は、トレイの外周端36から外方に延びるトレイ位置決めハンドル34を有し得る。トレイ支持アーム26のロックを解除するためのリリースハンドル38は、容易なアクセスのために、トレイ位置決めハンドル34の内部に配置されている。
【0013】
トレイ24は、一以上の温度制御されたドッキングステーション40、42および44を有し得る。ドッキングステーションは、利便性が高く、容易にアクセス可能な、眼内水晶体の挿入システムの様々なコンポーネントを一時的に貯蔵するための容器を提供する。このようなコンポーネントとしては、例えば、挿入カートリッジ、挿入ハンドピース、眼内水晶体(IOL)、および、眼のキャビティー内にIOLを挿入する前に、粘弾性材料を挿入カートリッジに与えるための注射器がある。ドッキングステーションは、挿入システムのコンポーネントを、水晶体の挿入システムのパフォーマンスを最適化するために選択された温度範囲内で暖めるように、選択的に操作され得る。
【0014】
ドッキングステーション40、42および44は、特定のアプリケーションに適合するための様々な構成を用い得る。説明のために、ドッキングステーション40、42および44の各々は、同様の概略構成を備えるように示されている。実際上は、各ドッキングステーションの構成は、他のドッキングステーションのそれぞれと同様でもよいし、異なっていてもよい。ドッキングステーション40、42および44の各々は、同様の概略構成を備えるように示されているので、ドッキングステーションは、ドッキングステーション40に関して説明するものとする。しかしながら、この説明は、残る二つのドッキングステーション42および44にも適用可能であるべきものである。
【0015】
図1〜図3を参照して、ドッキングステーション40は、概してカップ状である凹型構造を有している。この凹型構造は、側壁46、および該側壁46に接続された底壁48を含む。側壁46および底壁48は、眼内水晶体の挿入システムの様々なコンポーネントを受け取るための内部キャビティー50を、少なくとも部分的に画定している。内部キャビティー50は、適正なドッキングステーション40が各コンポーネントに対して容易に識別され得るように、例えばOVD注射器または水晶体カートリッジのような特定のコンポーネントの形状に概して従うように、形成され得る。挿入システムのコンポーネントは、底壁48の反対側に配置された、概して開口している開口端52を通して、受容される。ドッキングステーション40は、該ドッキングステーションを、トレイ24を貫通する開口54内に配置することによって、トレイ24に取り付けられ得る。ドッキングステーション40は、ドッキングステーションを開口54内に配置するためにトレイ24の一部と係合するフランジ56を含み得る。図示された例示的構造においては、ドッキングステーションをトレイ24に対して保持するために、重力を利用する。また、ドッキングステーション40をトレイ24に連結するために、例えば接着剤、ねじ、リベット、クリップのような、より恒久的な取り付け構造を用いてもよい。また、トレイ24およびドッキングステーション40の材料組成によっては、焼き、ハンダ、溶接のような恒久的な取り付け構造を用いてもよい。
【0016】
引き続き図3を参照して、ドッキングステーション40は、該ドッキングステーション40の側壁46および底壁48を選択的に加熱するための加熱要素58も含み得る。ドッキングステーション40の全体に均一に熱を分配することを容易とするために、側壁46および底壁48は、熱伝導性が比較的に高い材料から構成されてもよい。温度センサ60は、ドッキングステーション40の温度を監視するために用いられ得る。
【0017】
図4を参照して、手術用コンソール20は、中央演算処理装置(CPU)62を備え得る。CPU62は、コンピュータプログラムに含まれている命令を格納するための一以上のメモリ64、および、上記命令を実行するための一以上のプロセッサ66を有し得る。各プロセッサ66は、当業者に知られている多くのコンピュータオペレーティングシステムの内のいずれを用いてもよい。このコンピュータオペレーティングシステムとしては、Microsoft Windows(登録商標)オペレーティングシステム、Unixオペレーティングシステム(例えば、カリフォルニア州メンロパークのSun Microsystems社によって提供されているSolaris(登録商標)オペレーティングシステム、ニューヨーク州アーモンクのInternational Buisiness Machinesによって提供されているAIX UNIXオペレーティングシステム、および、Linuxペレーティングシステムが含まれ得る。しかしながら、オペレーティングシステムは、これらに限定されるものではない。コンピュータで実行可能な命令は、様々なプログラミング言語および/または当業者に知られている技術を使用して作られたコンピュータプログラムから、コンパイルされ、または読み取られる。このコンピュータプログラムとしては、Java(登録商標)、C、C++、Visual Basic、Java Script、Perl等の単体または組み合わせが含まれ得るが、これに限定されない。一般的には、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)は、例えばメモリやコンピュータ読み取り媒体等から命令を受け取り、これらの命令を実行する。これにより、プロセッサは、本稿に記載された一以上の処理を含む、一以上の処理を実行する。このような命令および他のデータは、公知である様々なコンピュータ読み取り媒体を用いて記録および送信され得る。
【0018】
手術用コンソール20は、コンピュータによって読み取られ得るデータ(例えば命令)の提供に関わる有形媒体を含む、コンピュータ読み取り媒体68を備え得る。このような媒体は、非限定的に不揮発性媒体および揮発性媒体を含む、多くの形態を取り得る。不揮発性媒体としては、例えば、光学的または磁気的なディスク、および、他の持続性のメモリを含む。揮発性媒体としては、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含み、DRAMは、典型的には主メモリを構成する。このような命令は、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む一以上の送信媒体によって送信される。これら送信媒体は、プロセッサに結合されたシステムバスを有する。送信媒体は、無線周波数(RF)および赤外線(IR)のデータ通信中に生じる、音波、光波、電磁放射を含む、または搬送する。コンピュータ読み取り媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、可撓性ディスク、ハードディスク、磁気テープ、他のいずれの磁気媒体、CD−ROM、DVD、他のいずれの光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔パターンを有する他のいずれの物理的媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH−EEPROM、他のいずれのメモリーチップあるいはカートリッジ、搬送波、または、コンピュータが読み取り可能な他のいずれの媒体を含む。
【0019】
また、手術用コンソール20は、様々な種類のデータの記録、アクセス、および検索をするための様々な種類のメカニズムを含む、種々のデータベースまたはデータストアも備え得る。このようなデータベースまたはデータストアとして、階層型データベース、ファイルシステムにおけるファイルセット、専用のフォーマットのアプリケーションデータベース、関係型データベース管理システム(Relational Database Management System:RDBMS)等を含む。このようなデータベースまたはデータストアのそれぞれは、一般的に、例えば上記したものの内の一つのコンピュータオペレーティングシステムを用いるコンピュータ装置に含まれており、公知のように、一以上の様々な方法のいずれかで、ネットワークを介してアクセスされる。ファイルシステムは、コンピュータオペレーティングシステムからアクセス可能であってもよく、様々なフォーマットで記録されたファイルを含んでいてもよい。RDBMSは、上記したPL/SQL言語のような、記録された処理を生成し、格納し、編集し、および実行するための言語に加えて、公知の構造化クエリ言語(Structured Query Language:SQL)を一般的に用いる。
【0020】
引き続き図4を参照して、ドッキングステーション40の操作温度は、加熱要素60の熱出力を調整することによって、選択的に制御され得る。例えば、加熱要素60は、コネクタ70を介してCPU62に操作可能に連結される。ドッキングステーション40の温度を監視するために用いられる温度センサ60も、コネクタ72を介してCPU62に操作可能に連結される。温度センサは、ドッキングステーション40の温度を示す信号を、CPU62に送信し得る。温度センサ60から受信した信号に応じて、CPU62は、加熱要素58の熱出力およびドッキングステーション40の温度を制御するように、加熱要素58へのパワー入力を調整し得る。
【0021】
引き続き図4を参照して、ドッキングステーション40、42および44は、それぞれ、各ドッキングステーションの温度を個別に制御可能とするために、別々の加熱要素58および温度センサ60を有してもよい。各加熱要素58および温度センサ60は、単一の共有されたプロセッサ66に、操作可能に連結される(図4に示すように)。または、個々のドッキングステーションの加熱要素58および温度センサ60は、それぞれに設けられた個別のプロセッサ66に、操作可能に連結される。各プロセッサ60は、それぞれのドッキングステーション40、42および44に関連付けられた各加熱要素58の熱出力を、選択的に制御するように構成されていてもよい。
【0022】
再度、図1を参照して、眼内水晶体の挿入システムの様々なコンポーネントは、使用に先立ってコンポーネントの無菌状態を確保するために、パック74に収容され得る。パック74は、例えばOVDのような単一のコンポーネント、または、コンポーネントの複合体を含み得る。パック74は、例えば外部バーコードのような識別デバイス76を含み、この識別デバイス76は、パック74の内容物を識別する。識別デバイス76は、例えば数例を挙げると、無線自動識別(Radio Frequency Identification:RFID)、磁気ストライプ、光学文字認識(Optical Character Recognition:OCR)といった、他のタイプの自動識別およびデータキャプチャー技術を用いてもよい。識別デバイス76は、例えばバーコードまたは光学デバイスとともにパック74の外部に配置されてもよいし、あるいは、例えばRFIDまたは磁気装置とともにパック74の内部に配置されてもよい。識別デバイス76は、他の情報と同様に、パック74に収容されたコンポーネントを識別するデータで符号化され得る。図3および図4も参照して、ドッキングステーション40は、識別デバイス76に格納されているデータを捕捉することが可能な読み取り器78を備え得る。用いられる技術に拠って、読み取り器78は、バーコードリーダー、CCDカメラ、CMOSセンサ、無線センサ、磁界センサ、または、他の適切なセンサであってもよい。読み取り器78は、コネクタ80を介してCPU62に操作可能に連結される。パック74がドッキングステーション40に配置された場合、読み取り器78は、識別デバイス76を検知し、識別デバイス76に格納されたデータを収集するように処理を実行し、CPU62にデータを送信する。CPU62は、適切なソフトウェアの制御の下、工場またはユーザがプログラム可能な設定を用いつつ、ドッキングステーション40の動作温度を、パック76内のコンポーネントと一致するように自動的に調整するために、そのデータを用いる。収集されたデータは、他の様々な目的のために用いられる。その目的としては、例えば、ドッキングステーションに配置された特定のIOLおよび特定のOVDの温度制御の最適化、ドッキングステーションのIOLが、特定の患者に対して選択されたIOLに対応していることの確認、IOLと、対応する挿入カートリッジとの間の摩擦を最小化するためのIOL−OVDの適合の最適化、パワーインジェクターを用いている場合における、最適な挿入速度および力のパラメータの決定、在庫管理および/または料金請求機能の入力としての利用、および、電子医療記録への入力としての利用が、挙げられる。識別デバイス76および読み取り器78は、種々の適切な電気的、磁気的、および光学的装置のうちのいずれであってもよい。
【0023】
また、コンポーネントの温度を管理することに加えて、CPU62は、患者管理および外科処置の制御に関連する様々な機能のために、コンポーネントに関するデータを利用してもよい。例えば、CPU62は、コンポーネントが、患者に施されるべき外科処置を記した患者データと適合していることを確認してもよい。他の実施例において、CPU62は、カートリッジが、外科処置用に選択された挿入ハンドピースと置換可能であることを確認するといったように、IOL用の挿入システムとコンポーネントとの置換性を確認してもよい。
【0024】
図1においては、ドッキングステーション40、42および44が一体的に設けられたトレイ24と、関節支持アーム26とが、統合されたカート22も備える手術用コンソール20に連結されている状態が示されている。トレイとアームの組み立て体は、手術用コンソールと一体的な一部材として構成されていないカートに取り付けられていてもよい。図5および図6に示されているように、トレイ82は、関節支持アーム86によって、手術用カート84に取り付けられ得る。図6に示すように、手術用カート84は、手術用コンソール88を支持するように構成され得る。トレイ82は、様々な道具、装備、装置、ハンドピース、および消耗品を、外科手術の間に一時的に保管するためのトレイ表面90を有し得る。支持アーム86の端部92は、手術用カート84に可動に連結され得る。支持アーム86は、調整可能な高さおよび位置の望ましい範囲内においてトレイを選択的に移動させることを可能とする、様々なジョイント組み立て体を有し得る。
【0025】
トレイ82は、温度制御された一以上のドッキングステーション94、96および98を有し得る。ドッキングステーション94、96および98は、水晶体の挿入システムのパフォーマンスを最適化するために、選択された温度範囲において挿入システムのコンポーネントを選択的に暖めるように、操作可能である。ドッキングステーション94、96および98は、図1〜図4に示すドッキングステーション40、42および44と同様に構成され、且つ、同様の特徴を有していてもよい。例えば、ドッキングステーションは、図3に示すように、概してカップ状である凹型構造を有し得る。ドッキングステーション94、96および98は、トレイ24に取り付けられたドッキングステーション40、42および44と同様の方法で、トレイ82に取り付けられてもよい。
【0026】
ドッキングステーション94、96および98は、例えば図3に示す加熱要素58のような、ドッキングステーションを選択的に加熱するための加熱要素を含み得る。各ドッキングステーションは、ドッキングステーションの温度を監視するための温度センサ60を含み得る。
【0027】
手術用カート84は、図4に示すように、CPU62を備え得る。CPU62は、温度センサ60から受信した信号に少なくとも一部は基づいて、加熱要素58の動作を選択的に制御するためのものである。代替的には、CPUは、手術用コンソール88(図6を参照のこと)の内部に一体的に組み込まれてもよい。手術用コンソール88が手術用カート84上に設置される場合、手術用カート84は、加熱要素58と温度センサ60を手術用コンソール88に連結するために、適切なターミナルを備え得る。CPU62は、手術用コンソール20に関して上記にて説明したものと同様に構成され、且つ、同様の特徴を有し得る。
【0028】
ドッキングステーション94、96および98は、例えば、識別デバイス76(図1を参照のこと)に格納されているデータを捕捉可能な読み取り器78(図3および図4を参照のこと)のような、読み取り器を備え得る。手術用コンソール88が手術用カート84上に設置される場合、読み取り器78は、手術用コンソール88のCPUに操作可能に連結され得る。読み取り器は、読み取り器78に関して上記に説明したものと実質的に同じ方法で、動作してもよい。例えば、パック74がドッキングステーションの一つに配置された場合、読み取り器は、パックに組み込まれた識別デバイスを検知し、識別デバイスに格納されたデータを収集するように処理を実行する。そして、データは、手術用コンソール88のCPUに送信される。CPUは、ドッキングステーション94、96および98の動作温度を、パック74に収容されたコンポーネントと一致するように自動的に調整するために、そのデータを用いる。
【0029】
再度図1を参照して、トレイ24にドッキングステーションを設置することに加えて、または、トレイ24にドッキングステーションを設置することの代替として、ドッキングステーションは、手術用コンソールの一体的な一部材として構成されてもよい。例えば、図1は、ドッキングステーション100、102、および104が手術用コンソール20のハウジング32から延びている状態を示している。ドッキングステーションを手術用コンソールに一体的に統合することは、図5および図6に示すように手術用コンソールとカートとが分離して設けられている場合において、特に有効となり得る。ドッキングステーション100、102、および104は、図1〜図4に示すように、ドッキングステーション40、42および44と同様に構成され、且つ、同様の特徴を有していてもよい。例えば、各ドッキングステーションは、加熱要素58と、ドッキングステーションの温度を監視するための温度センサ68とを含み得る。加熱要素および温度センサは、CPU62に操作可能に連結される。CPU62は、温度センサから受信した信号に少なくとも一部は基づいて、加熱要素の熱出力を制御する。ドッキングステーション100、102、および104は、図3および図4に示された読み取り器78のように、ドッキングステーションに配置されたアイテムに関する情報を収集するための読み取り器を備え得る。
【0030】
ここで説明されたドッキングステーションが広範なアプリケーションを有することを、理解されよう。前述した形態は、いくつかの実用上のアプリケーションと同様に、方法および装置の基本的性質を説明するために選ばれて説明されたものである。前述の説明は、本技術分野の知識を有する他の者が、考慮された特定の使用に適合するように様々な構造で、且つ、様々な修正を施して、方法および装置を利用することを可能とする。特許法の条項に一致して、開示されたドッキングステーションの動作の原理およびモードが、説明され、例示的構造として図示された。
【0031】
本方法および装置の範囲が、以下の特許請求の範囲によって規定されることを意図している。しかしながら、開示されたドッキングステーションが、その概念または範囲から逸脱することなく、特に説明および図示されたものの他の形態として実用化され得るものであることが、理解されるべきである。当業者は、本稿で説明された構造に対する様々な代替構造が、以下の特許請求の範囲に定義されている概念または範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲の実用化において用いられ得るということを理解すべきである。開示されたドッキングステーションの範囲は、上記した説明に関してではなく、その代わりに、特許請求の範囲に与えられた権利に相当する範囲全体に沿って、添付の特許請求の範囲に関して決定されるべきである。本稿で説明した技術における将来的な開発が行われるであろうこと、および、開示されたシステムおよび方法が、このような将来の実施例に組み込まれるであろうことが、予測され、且つ、意図される。さらには、本稿において反対の定義が明確に示されていない場合、特許請求の範囲にて用いられている言葉は、これらの最も広範な合理的構造と、当業者によって理解されるこれらの通常の意味とが与えられることを意図している。特に、特許請求の範囲が、反する限定を明確に引用していない場合、“a”、“the”、“said”等のような単体の冠詞の使用は、一以上の指し示された要素を引用するものとして読まれるべきものである。以下の特許請求の範囲が装置の範囲を定義すること、ならびに、これら特許請求の範囲内における方法や装置、およびこれらに相当するものが、特許請求の範囲に包含されることを、意図している。要するに、装置は、修正および変更が可能であって、以下の特許請求の範囲によってのみ、限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置範囲内を選択的に移動可能な関節アームと、
前記関節アームに取り付けられ、処置を実行するときに用いられるアイテムを受け取るための面を有するトレイと、
前記トレイに取り付けられ、ドッキングステーションを選択的に加熱するための加熱要素を有する少なくとも一つのドッキングステーションと、を備える、手術用システム。
【請求項2】
前記加熱要素に操作可能に連結されるコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記加熱要素の熱出力を選択的に制御するように操作することができる、請求項1に記載の手術用システム。
【請求項3】
前記コントローラは、手術用コンソールと一体である、請求項2に記載の手術用システム。
【請求項4】
前記ドッキングステーションの温度を検出するための温度センサをさらに備え、
前記温度センサは、前記コントローラに操作可能に連結され、前記ドッキングステーションの温度を示す信号を前記コントローラに送信するように構成される、請求項2に記載の手術用システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記温度センサから受信した信号に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、請求項4に記載の手術用システム。
【請求項6】
前記ドッキングステーションは、該ドッキングステーションに配置された物品に関連する情報を収集するように構成された読み取り器を有する、請求項1に記載の手術用システム。
【請求項7】
前記読み取り器に操作可能に連結されたコントローラをさらに備え、
前記読み取り器は、前記ドッキングステーションに配置された前記物品から収集されたデータを表す信号を前記コントローラに送信するように構成される、請求項6に記載の手術用システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記加熱要素に操作可能に連結され、前記読み取り器から受信した信号に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、請求項7に記載の手術用システム。
【請求項9】
前記ドッキングステーションの温度を検出するための温度センサをさらに備え、
前記温度センサは、前記コントローラに操作可能に連結され、前記ドッキングステーションの温度を示す信号を前記コントローラに送信するように構成され、
前記コントローラは、前記温度センサから受信した信号に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、請求項8に記載の手術用システム。
【請求項10】
ハウジングを有する手術用コンソールと、
前記ハウジングに取り付けられ、ドッキングステーションを選択的に加熱するための加熱要素を有する少なくとも一つのドッキングステーションと、を備える、手術用システム。
【請求項11】
前記手術用コンソールは、前記加熱要素に操作可能に連結されるコントローラを有し、
前記コントローラは、前記加熱要素の熱出力を選択的に制御するように操作することができる、請求項10に記載の手術用システム。
【請求項12】
前記ドッキングステーションの温度を検出するための温度センサをさらに備え、
前記温度センサは、前記コントローラに操作可能に連結され、前記ドッキングステーションの温度を示す信号を前記コントローラに送信するように構成される、請求項11に記載の手術用システム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記温度センサから受信した信号に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、請求項12に記載の手術用システム。
【請求項14】
前記ドッキングステーションは、該ドッキングステーションに配置された物品に関連する情報を収集するように構成された読み取り器を有する、請求項10に記載の手術用システム。
【請求項15】
前記手術用コンソールは、前記読み取り器に操作可能に連結されたコントローラを有し、
前記読み取り器は、前記ドッキングステーションに配置された前記物品から収集されたデータを表す信号を前記コントローラに送信するように構成される、請求項14に記載の手術用システム。
【請求項16】
前記コントローラは、前記加熱要素に操作可能に連結され、前記読み取り器から受信した信号に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、請求項15に記載の手術用システム。
【請求項17】
前記ドッキングステーションの温度を検出するための温度センサをさらに備え、
前記温度センサは、前記コントローラに操作可能に連結され、前記ドッキングステーションの温度を示す信号を前記コントローラに送信するように構成され、
前記コントローラは、前記温度センサから受信した信号に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、請求項16に記載の手術用システム。
【請求項18】
コントローラを有する手術用コンソールと、
手術用デバイスを受け取るように構成されたドッキングステーションと、
前記ドッキングステーションに連結され、且つ、前記コントローラに操作可能に連結された加熱要素と、
前記ドッキングステーションに取り付けられ、且つ、前記コントローラに操作可能に連結され、前記ドッキングステーションの温度を示す信号を前記コントローラに送信するように構成された温度センサと、
前記ドッキングステーションに取り付けられ、且つ、前記コントローラに操作可能に連結され、前記ドッキングステーションに配置された物品から収集した情報を示す信号を送信するように構成された読み取り器と、を備え、
前記コントローラは、前記温度センサから受信した信号、および前記読み取り器から受信した信号のうちの少なくとも一方に応じて、前記加熱要素の熱出力を選択的に調整するように構成される、手術用システム。
【請求項19】
前記手術用コンソールに連結され、位置範囲内を選択的に移動可能な関節アームと、
前記関節アームに取り付けられ、処置を実行するときに用いられるアイテムを受け取るための面を有するトレイと、をさらに備え、
前記ドッキングステーションは、前記トレイに取り付けられる、請求項18に記載の手術用システム。
【請求項20】
前記ドッキングステーションは、前記手術用コンソールに取り付けられる、請求項18に記載の手術用システム。
【請求項21】
前記コントローラは、さらに、患者に施されるべき外科処置を示すデータを受信し、前記読み取り器によって前記物品から収集された情報が前記外科処置と適合していることを確認するように構成されている、請求項18に記載の手術用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−514139(P2013−514139A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544535(P2012−544535)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/057032
【国際公開番号】WO2011/075264
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.Linux
3.UNIX
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)