説明

温度制御装置

【課題】金型等の対象物の、任意部位の温度を簡易に測定して温度制御することができる温度制御装置を提供する。
【解決手段】金型11の画像データ2aを得るサーモビュア2を備え、コンピュータ3は予め定められた金型11の最適温度分布画像中に所定の関心領域を設定するとともに、画像データ2a内の上記関心領域に対応する画像領域の温度分布と上記関心領域の最適温度分布との差を温度差分として演算する。コンピュータ3は、算出された温度差分が、閾値を越えるか否かに応じて冷却手段の冷却量を変更して金型11の必要部の温度を最適温度に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度制御装置に関し、特に、金型各部の温度を適正に制御するのに好適に使用できる温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形時のはりつき等の不具合を回避し、成形品の形状寸法精度を維持する等のために成形用金型の温度を適正に維持する必要があり、例えば特許文献1には、金型を加熱するカートリッジヒータと温度測定用の熱電対を設けた温度制御装置が示されている。
【特許文献1】特開2005−111700
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の温度制御装置は、温度測定に熱電対を使用しているために、金型への設置に手間を要するとともに、測定部位を簡易に変更することができないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、金型等の対象物の、任意部位の温度を簡易に測定して温度制御することができる温度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、対象物(11)の温度分布画像(2a)を得る赤外線撮像手段(2)と、予め定められた対象物(11)の最適温度分布画像中に所定の関心領域(X)を設定する関心領域設定手段(3)と、前記温度分布画像内の前記関心領域(X)に対応する画像領域の温度分布と前記関心領域(X)の最適温度分布との差を温度差分として演算する温度差分演算手段(3、ステップ105)と、閾値を設定する閾値設定手段(3)と、前記対象物(11)の、前記関心領域(X)に対応した部分に設けられた加熱手段ないし冷却手段と、前記算出された温度差分が、前記閾値を越えるか否かに応じて前記加熱手段ないし冷却手段の加熱量ないし冷却量を変更して前記対象物部分の温度を最適温度に維持する温度制御手段(3)とを備えている。
【0006】
本発明においては、赤外線撮像手段を使用することにより対象物の温度を簡易に測定できるとともに、関心領域設定手段によって対象物の温度測定部位を簡易かつ任意に変更して、当該部位の温度制御を良好に行うことができる。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の温度制御装置によれば、金型等の対象物の、任意部位の温度を簡易に測定して温度制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1には温度制御装置のハード構成を示す。図1において、加工設備1には金型11が含まれており、撮像手段たるサーモビュア2が金型11に向けて設置されている。そして、金型11表面の温度分布に応じた情報を有する画像データ2aが、サーモビュア2から、温度制御手段を構成するコンピュータ3に入力されている。コンピュータ3は後述する手順で冷却出力値3aを得ると、これを、冷却手段を構成するシーケンサ4に出力する。シーケンサ4は上記冷却出力値3aに応じて、金型11の、後述する関心領域に対応する各部分へ冷却水を供給するための冷却水供給バルブ(図示略)の開度を変更するような制御指令信号4aを加工設備1に対し出力する。
【0010】
一方、加工設備1からは所定のタイミング信号1aが出力され、これはシーケンサ4を介してコンピュータ3に入力される。コンピュータ3はタイミング信号1aに基づいて所定のタイミングでサーモビュア2に対して撮影信号3aを出力する。撮影信号3aを受け取ると、サーモビュア2はこの時に得られた上記画像データ2aをコンピュータ3へ出力する。
【0011】
図2には、温度制御を開始するのに先立って関心領域の設定を行うためのコンピュータ3のディスプレイ画面を示す。画面上には温度制御対象である金型11表面の、最適温度分布を濃淡で示した(実際には色温度のカラー画像である)マスタ画像が表示されており、マスタ画像上にマウスを使用して適当な大きさの矩形の関心領域Xを設定する。各関心領域Xには、設定された順に自動的に番号が付され、本実施形態では10個まで設定することができる。
【0012】
図3には、さらに他の設定を行うためのコンピュータのディスプレイ画面を示す。図3において、上記画面の設定領域Aは「トリガー1」〜「トリガー4」の有効無効をチェックマークの入力の有無によって設定する領域である。この「トリガー1」〜「トリガー4」を適宜選択することで、一定周期で出力される上記タイミング信号1aに基づいて、撮影信号3aをサーモビュア2へ出力するタイミングが決定される。
【0013】
ディスプレイ画面の設定領域Bは、既述のようにマスタ画像上で設定された複数の上記関心領域Xの、各々の有効無効をチェックマークの入力の有無によって設定する領域である。
【0014】
ディスプレイ画面の設定領域Cでは、有効となった各関心領域Xについて、マスタ画像(図2)における当該関心領域Xの平均温度と、画像データ2aにおける当該関心領域Xに対応する画像領域の平均温度との差を温度差分として、当該温度差分のレベルを各枠51内に設定するとともに、設定された温度差分レベルを上記温度差分が超えたときの冷却出力値3aを各枠内52に設定する。なお、当該設定領域Cにおける「基準温度」は各温度差分レベルのオフセット量を設定するものである。
【0015】
以下、図4を参照しつつ、コンピュータ3における温度制御手順を説明する。図4において、タイミング信号3aの入力を確認し(ステップ101)、適宜選択された上記「トリガー1」〜「トリガー4」のタイミングで撮影信号3aをサーモビュア2へ出力する(ステップ102)。そして、この時サーモビュア2で得られた画像データ2a(図5)を入力して(ステップ103)、既述のように予め有効設定(図3)された各関心領域X(図2)に対応する画像データ2a中の画像領域の平均温度を演算する(ステップ104)。次に、算出された各画像領域の平均温度と、各画像領域に対応するマスタ画像の関心領域Xの平均温度との差を、各画像領域Y(図6)について温度差分として算出する(ステップ105)。
【0016】
ステップ106では、算出された上記各画像領域Yの平均温度が異常閾値を越えたか否か判定し、越えている場合には温度異常として設備停止指令信号3b(図1)を出力する(ステップ107)。これにより、シーケンサ4を介して加工設備1が停止させられる。ステップ106で平均温度が異常閾値以下であれば、各関心領域に相当する金型11部分を判定して(ステップ108)、当該金型11部分の温度を最適温度にすべく、上記算出された温度差分と温度差分レベル(図3参照)を比較してこれに応じた冷却出力値3aを出力する(ステップ109)。シーケンサ4は冷却出力値3aに応じて、当該関心領域に相当する金型11部分へ冷却水を供給するための冷却水供給バルブの開度を変更する制御指令信号4aを出力する。
【0017】
以上の処理手順が、選択された上記「トリガー1」〜「トリガー4」のタイミングで繰り返され、金型11各部の温度が最適温度に維持される。なお、本発明の制御対象は金型に限られない。この場合は、冷却出力値3aや冷却手段に代えて、あるいはこれに加えて、加熱出力値や加熱手段を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】温度制御装置のハード構成を示すブロック図である。
【図2】関心領域が設定されたマスタ画像を表示するコンピュータのディスプレイ画面の正面図である。
【図3】種々の設定を行うためのコンピュータのディスプレイ画面の正面図である。
【図4】コンピュータにおける処理手順を示すフローチャートである。
【図5】サーモビュアで得られた画像データを表示するコンピュータのディスプレイ画面の正面図である。
【図6】各関心領域に対応する各領域について温度差分が算出された画像データを表示するコンピュータのディスプレイ画面の正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…加工設備、11…金型(対象物)、2…サーモビュア(赤外線撮像手段)、2a…画像データ(温度分布画像)、3…コンピュータ(関心領域設定手段、温度差分演算手段、閾値設定手段、温度制御手段)、X…関心領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の温度分布画像を得る赤外線撮像手段と、予め定められた対象物の最適温度分布画像中に所定の関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記関心領域に対応する前記温度分布画像内の領域の温度分布と前記関心領域の最適温度分布との差を温度差分として演算する温度差分演算手段と、閾値を設定する閾値設定手段と、前記対象物の、前記関心領域に対応した対象物部分に設けられた加熱手段ないし冷却手段と、前記関心領域に対応する画像領域について算出された温度差分が、前記閾値を越えるか否かに応じて前記加熱手段ないし冷却手段の加熱量ないし冷却量を変更して前記対象物部分の温度を最適温度に維持する温度制御手段とを備える温度制御装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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