説明

温度可変光センサ素子

【課題】酸化亜鉛を備えた、新規な機能を有する光学素子の提供。
【解決手段】少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段が、励起光照射時の温度に依存して異なる発光スペクトルを示すことを特徴とする温度可変光センサ素子;少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段の発光強度が、励起光照射時の温度の上昇に伴い増大することを特徴とする温度可変光センサ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段を備えた、温度可変光センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、通常は白色の粉末であるが、高純度なものは透明で導電性を有することから、透明電極の材料として利用可能である。その一方で、バンドギャップが3.37eV程度のワイドバンドギャップ半導体としての性質も有する。そして、毒性が低く且つ入手も容易であるため、例えば、白色顔料、紫外線遮断用の化粧品、医薬品等の原料としても汎用されている。
【0003】
一方、結晶サイズをナノメートルレベルにまで小さくしたナノ粒子は、量子サイズ効果により、可視領域において発光する性質を有し、発光素子としての応用が期待されている。そこで、酸化亜鉛についても、ナノ粒子を発光素子へ応用する種々の試みが為されており(例えば、特許文献1参照)、環境への負荷が小さく且つ安価な発光素子として、今後、様々な分野でさらに重要なものになってくると考えられ、その開発が大きく期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−87756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、酸化亜鉛を備えた発光素子については、これまでに光学素子としての特性について十分な検討が為されたとは言えず、光学素子としての可能性について、まだ検討の余地が多く残されているのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、酸化亜鉛を備えた、新規な機能を有する光学素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明の第一の発明は、少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段が、励起光照射時の温度に依存して異なる発光スペクトルを示すことを特徴とする温度可変光センサ素子を提供する。
また、本発明の第二の発明は、少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段の発光強度が、励起光照射時の温度の上昇に伴い増大することを特徴とする温度可変光センサ素子を提供する。
本発明の温度可変光センサ素子においては、励起光照射時の温度に依存して、前記発光スペクトルにおけるピークの位置がシフトすることが好ましい。
本発明の温度可変光センサ素子においては、不活性ガス又はアンモニアガス共存下で加熱処理された酸化亜鉛を含有することが好ましい。
本発明の温度可変光センサ素子においては、前記発光手段が、さらに窒化ガリウム又は二酸化チタンを含有することが好ましい。
本発明の温度可変光センサ素子においては、前記発光手段として、前記酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛が、水又は水溶性の液体中に分散された分散液、あるいは該分散液を塗布及び乾燥してなる層を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸化亜鉛を備えた、新規な機能を有する光学素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1におけるZnO粉末についての測定データを示す図であり、(a)はSEM像の撮像データ、(b)はX線回折パターンである。
【図2】実施例1のZnO粉末の発光スペクトルにおける検出ピークの波長と測定時の温度との関係を示すグラフである。
【図3】参考例1におけるGaN粉末についての測定データを示す図であり、(a)はSEM像の撮像データ、(b)はX線回折パターンである。
【図4】参考例1におけるGaN粉末の発光強度と測定時の温度との関係を示すグラフである。
【図5】参考例2におけるGaN粉末の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例2におけるZnO粉末についての測定データを示す図であり、(a)は測定時の温度ごとの発光スペクトルの測定結果、(b)はピークの波長と測定時の温度との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図7】実施例3におけるNH加熱処理済みGaN−ZnO粉末の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例4におけるNH加熱処理済みTiO−ZnO粉末のSEM像の撮像データであり、(a)は加熱処理温度が300℃、(b)は加熱処理温度が400℃、(c)は加熱処理温度が500℃の場合の撮像データである。
【図9】実施例4におけるNH加熱処理済みTiO−ZnO粉末の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)は加熱処理温度が300℃、(b)は加熱処理温度が400℃、(c)は加熱処理温度が500℃の場合の、発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例5におけるN加熱処理済みTiO−ZnO粉末の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)は加熱処理温度が300℃、(b)は加熱処理温度が400℃、(c)は加熱処理温度が500℃の場合の、発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図11】実施例6〜7における、インクで印刷した二次元コードの平面図である。
【図12】実施例6〜7における、測定時の温度が25℃の場合の、インク1〜4使用時の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例6のTiO−ZnO含有インクを使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)はインク1、(b)はインク2の場合のグラフである。
【図14】実施例7のZnO含有インクを使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)はインク3、(b)はインク4の場合のグラフである。
【図15】実施例8におけるN加熱処理済みTiO−ZnO粉末の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図16】実施例6におけるNH加熱処理済みZnO粉末の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図17】実施例10におけるインク2を使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図18】実施例11におけるインク4を使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の温度可変光センサ素子は、少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段が、励起光照射時の温度に依存して異なる発光スペクトルを示すことを特徴とする。
また、本発明の温度可変光センサ素子は、少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段の発光強度が、励起光照射時の温度の上昇に伴い増大することを特徴とする。
本発明は、酸化亜鉛(以下、ZnOと略記する)の発光スペクトルが、励起光照射時における温度に依存して変化する、又はその発光強度が、励起光照射時の温度の上昇に伴い増大するという特性を利用して、温度可変光センサ素子として構成したものである。
【0011】
ZnOは、例えば、半導体分野で通常使用されるもので良く、純度が99.9%以上のものが好ましく、99.99%以上のものがより好ましい。そして、酸化亜鉛の結晶の大きさ(平均粒径)は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。そして、1μm未満のナノ粒子でも良い。
【0012】
ZnOは、加熱処理されたものでも良い。この場合、不活性ガス又はアンモニアガス共存下で加熱処理された酸化亜鉛が好ましい。前記不活性ガスは、通常使用されるもので良く、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスや窒素(N)ガスが好ましく、Nガスがより好ましい。
加熱処理時の温度は、目的に応じて適宜選択すれば良いが、150〜650℃であることが好ましく、250〜550℃であることがより好ましい。このような範囲とすることで、励起光照射時の温度に依存した発光スペクトルの変化が一層明りょうとなる。
ZnOの加熱処理時の時間は、温度に応じて適宜調整すれば良いが、例えば、加熱温度が上記範囲内である場合には、通常0.5〜2時間程度で良い。
【0013】
例えば、NHガス共存下でZnOを加熱処理した場合、NHガスのH(水素)が活性化され、これによりZnO中のO(酸素)が還元されると考えられる。この時の特に好ましい加熱処理温度は、450〜550℃である。
このようにZnOを、高活性なガスの共存下で加熱処理することにより、O(酸素)の空孔欠陥の量を変化させ、発光スペクトルを一層明りょうに変化させることが可能になると考えられる。
【0014】
発光手段としては、前記ZnO以外に、さらに窒化ガリウム(以下、GaNと略記する)又は二酸化チタン(以下、TiOと略記する)を含有したものも、好ましいものとして例示できる。
この場合、GaNは、半導体分野で通常使用されるもので良く、純度が99.9%以上のものが好ましい。TiOは、例えば、市販品を使用できる。
【0015】
ZnO及びGaNを併用する場合には、「ZnOのモル数:GaNのモル数」は7:3〜3:7であることが好ましく、6:4〜4:6であることがより好ましい。
また、ZnO及びTiOを併用する場合には、「ZnOのモル数:TiOのモル数」は7:3〜3:7であることが好ましく、6:4〜4:6であることがより好ましい。
例えば、GaN又はTiOをZnOと併用した場合でも、NHガス共存下でZnOを加熱処理すると、上記と同様にZnO中のO(酸素)が還元されると考えられる。
【0016】
本発明において、発光手段は、本発明の効果を妨げない範囲内において、前記ZnO、GaN及びTiO以外に、その他の成分を含有していても良い。その他の成分は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0017】
励起光照射時における発光手段の温度は、発光手段の構成や目的に応じて適宜調整すれば良い。通常は、15〜120℃であることが好ましく、20〜100℃であることがより好ましい。このような範囲とすることで、温度ごとの発光スペクトルや発光強度の変化が一層明りょうとなる。
【0018】
発光手段は、その温度を目的に応じて任意に調節できるようにされていれば良く、その形態は特に限定されない。例えば、ZnO、必要に応じてGaN、TiO、前記その他の成分(以下、これらをまとめてZnO等と略記する)が、粉末の状態であるものでも良いし、ZnO等が分散液中に分散された状態のものでも良く、ZnO等の一部又は全部が溶液中に溶解された状態のものでも良い。さらに、前記分散液又は溶液を塗布及び乾燥してなる層の中に、ZnO等が含有された状態のものでも良い。
【0019】
前記分散液又は溶液の液体成分は、水又は水溶性の液体であることが好ましい。そして、該水溶性の液体は、アルコールであることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。
【0020】
前記分散液又は溶液を塗布及び乾燥してなる層を、基材上に形成することで、本発明の素子の取り扱い性を一層向上させることができ、用途を飛躍的に拡大できる。例えば、前記分散液又は溶液中に、さらに染料、顔料、バインダ等を含有させてインクとし、これを使用して文字やパターンを形成することも可能である。
【0021】
前記分散液又は溶液を塗布する基材の材質は、目的に応じて任意に選択でき、各種樹脂類、金属類、合金類、紙類、木材類等、公知のものから選択すれば良い。また、基材の形状も目的に応じて任意に選択でき、板状、ブロック状、球状、棒状、又はこれら形状の二種以上が組み合わされてなる複合形状等、いずれでも良く、さらにこれらに限定されるものではない。
【0022】
また、インクとする場合には、インク中の前記その他の成分として、先に挙げたもの以外に、さらに樹脂、着色剤、充填剤、溶剤、各種安定剤などが挙げられるが、これらは、特にその種類が限定されるものではなく、従来のインク組成物で使用されているものであれば、そのまま使用できる。
樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれもが使用でき、例えば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ウレタン系樹脂、ポリカーボネイト、環化ゴム、塩化ゴム、塩素化ポリオレフィン樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などを単独で又は混合して使用できる。
着色剤としては、各種染料、顔料などが使用できる。添加剤としては、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤などが使用できる。
インク中における前記ZnO等の含有量は、インク中の固形分全量に対して0.005〜10質量%とされ、0.005質量%未満では発光強度が低すぎてその検出が困難になり、10質量%を超えると印刷適性が悪くなる。
また、インクは透明であることが好ましく、無色透明であることがより好ましい。ただし、ZnO等の配合量によっては、若干白濁することもある。
【0023】
発光手段の温度を調節する温調手段は、特に限定されず、通常使用されるヒータ等で良い。ヒータとしては、取り扱い性及び汎用性に優れるものとして、ペルチェ素子を備えたものが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0024】
発光手段に励起光を照射する励起手段は、レーザ光源等、公知のものから目的に応じて任意に選択できる。
【0025】
発光手段は、適切な条件を選択することで、励起光照射時に、温度に依存して異なる発光スペクトルを示す。すなわち、フォトルミネッセンス(以下、PLと略記する)のスペクトルは、温度依存性を示す。ここで、「発光スペクトルが異なる」とは、「ピークパターンの変化及びピーク位置(波長)のシフトのいずれか一以上が生じる」ことを指す。これは、発光手段に含有されるZnO等の励起光照射時における発光スペクトルに、温度依存性があることによる。また、ZnO等の加熱処理の有無や方法の違い等に基づく状態の違いによっても、さらに異なる発光スペクトルを示す。
【0026】
例えば、ZnOを単独で使用した場合と、GaN又はTiOと併用した場合とでは、加熱処理の有無によらず、励起光照射時の条件が同じでも、異なる発光スペクトルを示すことがある。
また、上記のいずれの場合においても、加熱処理時の温度等の条件が異なると、励起光照射時の温度が同じでも、異なる発光スペクトルを示すことがある。そして、特定のピークについて、励起光照射時の温度の上昇に伴って、強度を大きくできることがある。これまでに知られている発光素子では、励起光照射時に温度の上昇に伴って発光強度が減少して消光してしまうので、上記知見は新規なものである。
さらに、上記のいずれの場合においても、発光スペクトルの複数のピークの内、特定のピークだけ波長をシフトさせたり、強度を変化させたりできることがある。
このように、本発明は、発光スペクトルの温度依存性を利用して、発光手段を温度可変光センサとして機能させるものである。
【0027】
本発明において、発光手段及び温調手段は、例えば、一体に構成されていても良いし、別々に構成されたものが、適宜組み合わされて配置されるようになっていても良い。好ましいものとしては、発光手段が基材上に保持され、該基材が温調手段に接触して又は接触せずに近傍に配置されるようになったものが例示できる。
そして、発光手段が基材上に保持されたもので好ましいものとしては、ZnO等を含有する分散液又は溶液、好ましくはインクにより、基材上に文字やパターンが形成されたものが例示できる。このようなものは、基材に特有の情報を付与したメモリ素子として好適である。
【0028】
本発明の温度可変光センサ素子は、さらに、発光手段の発光スペクトルを検出する検出手段を備えることが好ましい。前記検出手段は、公知のもので良く、例えば、CCDカメラ等の光シグナルを検出する手段と、検出した光シグナルのスペクトルを解析する手段とを備えたものが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明は、前記発光手段の発光素子としての機能を利用して、光通信用のデバイスに適用できる。さらに、それにとどまらず、例えば、発光手段の発光スペクトルを、異なる複数の温度で検出することにより、複数種類の発光スペクトルを取得し、これら発光スペクトルにおけるピークパターン、ピーク強度又は谷部強度の組み合わせから、基材に特有の情報を高精度に取得できるので、情報識別用のセンサとして特に好適である。
【実施例】
【0030】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
<ZnO粉末の発光スペクトルの測定(1)>
ZnO粉末(高純度化学社製、純度99.999%)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用してSEM像を撮像し、さらにX線回折(XRD)測定を行った。結果を図1に示す。図1のうち、(a)は撮像データ、(b)はX線回折パターンである。
【0032】
次いで、温調手段としてヒータを使用し、ZnO粉末の温度を変化させながら、該粉末にレーザを照射して発光スペクトルを測定した。測定には、He−Cdレーザ(波長325nm)を使用し、レーザスポットを直径1mmとし、検出手段として電荷結合素子(CCD)を使用して行った。その結果、波長390nm付近にピークが観測され、これは測定時の温度に依存して波長がシフトした。検出されたピークの波長と測定時の温度との関係を図2に示す。
図2から明らかなように、波長390nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴って長波長側へシフトすることが確認できた。
【0033】
[参考例1]
<GaN粉末の発光スペクトルの測定(1)>
GaN粉末(高純度化学社製、純度99.99%)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用してSEM像を撮像し、さらにX線回折(XRD)測定を行った。結果を図3に示す。図3のうち、(a)は撮像データ、(b)はX線回折パターンである。なお、Ga(純度99.99%)をNH雰囲気下、850℃で加熱処理することにより、別途GaN粉末を調製(調製品)し、これについてもX線回折パターンを測定したので、図3(b)にあわせて示す。
図3(b)から明らかなように、上記の別途調製したGaN粉末は、市販品と同様の回折パターンを示したことから、市販品と同様の品質であることが確認できた。なお、双方の回折パターンは強度が異なるが、これは測定に供した粉末の量の違いに基づくものである。
【0034】
次いで、ZnO粉末に代わりGaN粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に発光スペクトルを測定した。この時の発光強度と測定時の温度との関係を図4に示す。
図4に示すように、発光強度は、測定温度の上昇に伴って大きくなる領域と小さくなる領域とがあった。また、発光スペクトルから、波長390nm付近及び670nm付近にピークが観測された。波長390nm付近のピークは測定温度の上昇に伴って強度が小さくなった。これは、温度の上昇に伴って、欠陥準位に捕獲される電子の確率が上昇したことによるものと考えられる。一方、波長670nm付近にピークが観測されたのは、欠陥によるものと考えられる。
【0035】
なお、図1(a)及び図3(a)より、ZnO粉末の粒子の大きさは1μm以下、GaN粉末の粒子の大きさは5μm程度であることが確認できた。また、ZnO粉末の結晶形は六方晶であるのに対し、GaN粉末の結晶形は一般的に言われている六方晶ではなく、ZnO粉末の方が、結晶性が良好であることが確認できた。図1(b)及び図3(b)より、X線回折パターンにおけるピークの半値幅は、GaN粉末よりもZnO粉末の方が狭いことからも、ZnO粉末の方が、結晶性が良好であることが明らかである。
【0036】
[参考例2]
<GaN粉末の発光スペクトルの測定(2)>
試料ホルダに大きさが5mm×5mmのカーボンテープを貼付し、これにGaN粉末(高純度化学社製、純度99.99%)を塗布した。そして、温調手段としてヒータを使用し、GaN粉末の温度を25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃の8通りに調節し、それぞれの場合について、GaN粉末にレーザを照射して発光スペクトルを測定した。測定は、He−Cdレーザ(波長325nm)を使用し、レーザスポットを直径1mmとし、検出手段として電荷結合素子(CCD)を使用して行った。測定結果を図5に示す。
【0037】
図5に示すように、波長500nm〜900nmに、空孔欠陥に起因するブロードなピークが観測された。波長400nm付近でも発光が観測されたが、空孔欠陥に起因するピークの強度よりも微小だった。また、測定温度に依存して発光強度が変化したが、ピークのシフトは観測されなかった。
【0038】
[実施例2]
<ZnO粉末の発光スペクトルの測定(2)>
試料ホルダに大きさが5mm×5mmのカーボンテープを貼付し、これにZnO粉末(高純度化学社製、純度99.999%)を塗布した。そして、温調手段としてヒータを使用し、ZnO粉末の温度を26℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃及び95℃の7通りに調節し、それぞれの場合について、ZnO粉末にレーザを照射して発光スペクトルを測定した。測定は、He−Cdレーザ(波長325nm)を使用し、レーザスポットを直径1mmとし、検出手段として電荷結合素子(CCD)を使用して行った。その結果、波長390nm付近にピークが観測され、これは測定時の温度に依存して波長がシフトした。測定結果を図6に示す。図6のうち、(a)は測定時の温度ごとの発光スペクトルの測定結果、(b)はピークの波長と測定時の温度との関係をそれぞれ示すグラフである。
【0039】
図6から明らかなように、波長390nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴って長波長側へシフトすることが確認できた。そのシフト量は、例えば、26℃と95℃との間で4nmであった。また、70℃と95℃との間では、ピークのシフト量はわずかであった。
【0040】
[実施例3]
<NH加熱処理したGaN−ZnO粉末の発光スペクトルの測定>
GaN粉末に代わり、1気圧のNHガス雰囲気下、550℃で5時間加熱処理したGaN−ZnO粉末を使用したこと以外は、参考例2と同様に発光スペクトルを測定した。測定結果を図7に示す。なお、ZnO粉末
としては実施例1と同じもの、GaN粉末としては参考例2と同じものをそれぞれ使用した。
【0041】
GaN−ZnO粉末の発光スペクトルは、GaN及びZnOの両方の発光スペクトルを反映したものであったが、GaNの発光強度が小さいため、図7では、これが明確には認められない。
一方、図7から明らかなように、波長780nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴い、強度に大きな差は生じなかったが、長波長側へシフトし、そのシフト量は、例えば、25℃と70℃との間で6.8nmであった。
【0042】
[実施例4]
<NH加熱処理したTiO−ZnO粉末の発光スペクトルの測定>
TiO−ZnO粉末(TiOのモル数:ZnOのモル数=1:1)を、1気圧のNHガス雰囲気下で300℃(実施例4−1)、400℃(実施例4−2)又は500℃(実施例4−3)でそれぞれ1時間加熱処理した。TiO粉末としては、高純度化学社製の純度99.99%のものを使用し、ZnO粉末としては、実施例1と同じものを使用した。次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)の試料ホルダに、大きさが5mm×5mmのカーボンテープを貼付し、これに前記NH処理済みTiO−ZnO粉末を塗布した。そして、温度25℃、加速電圧5.0KV、倍率10000倍の条件で、前記NH処理済みTiO−ZnO粉末のSEM像を撮像した。取得した撮像データを図8に示す。図8のうち(a)は加熱処理温度が300℃、(b)は加熱処理温度が400℃、(c)は加熱処理温度が500℃の場合の撮像データである。
【0043】
図8から明らかなように、粉末の形状に、温度による差は認められなかった。ただし、加熱処理温度が300℃及び400℃の場合には、粉末の色に大差は無くいずれも銀白色であったが、加熱処理温度が500℃の場合には、粉末の色が銀灰色であり、顕著に変色していた。
【0044】
次いで、エネルギー分散X線分光(EDX)測定装置を使用して、前記NH処理済みTiO−ZnO粉末の元素濃度を測定し、組成を分析した。分析結果を表1に示す。
表1から明らかなように、加熱処理温度が300℃の場合よりも400℃及び500℃の場合の方が、Ti、Znの濃度が顕著に減少しており、かつN、Oの濃度が顕著に増加していた。
【0045】
【表1】

【0046】
次いで、試料ホルダに大きさが5mm×5mmのカーボンテープを貼付し、これに前記NH加熱処理済みTiO−ZnO粉末を塗布した。そして、温調手段としてヒータを使用し、前記粉末の温度を25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃の8通りに調節し、それぞれの場合について、前記粉末にレーザを照射して発光スペクトルを測定した。測定は、He−Cdレーザ(波長325nm)を使用し、レーザスポットを直径1mmとし、検出手段として電荷結合素子(CCD)を使用して行った。測定結果を図9に示す。図9のうち(a)は加熱処理温度が300℃、(b)は加熱処理温度が400℃、(c)は加熱処理温度が500℃の場合の、発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。なお、加熱処理温度によらず、NH処理済みTiO−ZnO粉末の塗布量を一定とすることはできなかったため、加熱処理温度ごとに発光ピークの波長を比較することにした。
【0047】
図9から明らかなように、加熱処理温度によって発光スペクトルが異なっており、特に、加熱処理温度が500℃の場合と、300℃及び400℃の場合とでは大きな違いが認められた。具体的には以下の通りである。
【0048】
加熱処理温度が300℃の場合、波長550nm付近、630nm付近及び713nm付近にそれぞれピークが観測された。波長550nm付近のピークは、ZnOのO(酸素)の空孔欠陥に起因するものである。
一方、加熱処理温度が400℃の場合、波長543nm付近及び730nm付近にそれぞれピークが観測された。波長543nm付近のピークは、上記と同様にO(酸素)の空孔欠陥に起因するものである。このように、630nm付近にはピークが認められない点で、加熱処理温度が300℃の場合と異なっていた。
ただし、300℃及び400℃のいずれの温度においても、測定温度の上昇に伴い、各ピークの強度は小さくなった。
また、300℃及び400℃のいずれの温度においても、波長600nm付近には、発光スペクトルの谷が観測されたが、ピーク強度に対するこの谷部分の発光強度の相対的な大きさは、300℃の場合の方が400℃の場合よりも大きかった。
【0049】
これらに対して、加熱処理温度が500℃の場合には、O(酸素)の空孔欠陥に起因する波長540nm付近のピークは、測定時の温度上昇に伴い、強度が大きくなった。さらに、波長570nmよりも長波長側にはピークが観測されなかった。したがって、300℃及び400℃の場合に観測された、波長600nm付近の発光スペクトルの谷も観測されなかった。そして、加熱処理温度が500℃の場合に、粉末が顕著に変色していた。
【0050】
[実施例5]
<N加熱処理したTiO−ZnO粉末の発光スペクトルの測定(1)>
TiO−ZnO粉末を、NHガス雰囲気下に代え、Nガス雰囲気下で加熱処理したこと以外は、実施例4と同様にTiO−ZnO粉末の発光スペクトルを測定した。測定結果を図10に示す。図10のうち(a)は加熱処理温度が300℃、(b)は加熱処理温度が400℃、(c)は加熱処理温度が500℃の場合の、発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【0051】
図10から明らかなように、加熱処理温度によって発光スペクトルが異なっており、特に、加熱処理温度が400℃の場合と、300℃及び500℃の場合とでは大きな違いが認められた。具体的には以下の通りである。
【0052】
加熱処理温度が300℃の場合、波長540nm付近、622nm付近及び714nm付近にそれぞれピークが観測された。波長540nm付近のピークは、ZnOのO(酸素)の空孔欠陥に起因するものである。そして、この時の発光スペクトルは、実施例4の加熱処理温度が300℃の場合と同様のパターンであった。
一方、加熱処理温度が500℃の場合、波長540nm付近、620nm付近及び716nm付近にそれぞれピークが観測された。波長540nm付近のピークは、上記と同様にO(酸素)の空孔欠陥に起因するものである。そして、この時の発光スペクトルは、上記の加熱処理温度が300℃の場合と同様のパターンであった。
また、加熱処理温度が300℃の場合には、測定温度の上昇に伴い、概ね各ピークの強度は小さくなったが、加熱処理温度が500℃の場合には、特に波長540nm付近のピークで、測定温度の上昇に伴い、ピークの強度が増大する温度範囲の存在が認められた。
【0053】
これらに対して、加熱処理温度が400℃の場合には、波長545nm付近及び703nm付近にそれぞれピークが観測された。波長545nm付近のピークは、ZnOのO(酸素)の空孔欠陥に起因するものである。また、波長703nm付近のピークは、上記の加熱処理温度が300℃及び500℃の場合の714nm付近及び716nm付近のピークよりも低波長側であり、実施例4の加熱処理温度が300℃及び400℃の場合の波長713nm付近及び730nm付近のピークよりも、同様に低波長側であった。各ピークの強度は、加熱処理温度が300℃の場合と同様に、測定温度の上昇に伴い概ね小さくなった。
また、300℃、400℃及び500℃のいずれの温度においても、波長600nm付近に発光スペクトルの谷が観測されたが、ピーク強度に対するこの谷部分の発光強度の相対的な差は、400℃の場合が300℃及び500℃の場合よりも大きかった。
【0054】
[実施例6〜7]
<TiO−ZnO含有インク及びZnO含有インクの発光スペクトルの測定(1)>
以下に示すTiO−ZnO含有インク(実施例6、二種類:インク1〜2)及びZnO含有インク(実施例7、二種類:インク3〜4)を調製し、これらを使用して図11に示す二次元コードを紙上に印刷した。図11は、インクで印刷した二次元コードの平面図であり、黒塗り部分が印刷部である。なお、TiO−ZnO粉末としては、実施例4で使用したものと同じものを使用し、ZnO粉末としては、実施例1で使用したものと同じものを使用した。
【0055】
(インクの調製)
以下の組成から成るインク1〜4を調製した。
硝化綿(SNPE社製 S1/4(N.V.70%)) 25質量部
可塑剤(大日本インキ社製 エポホイザーW−100EL) 6質量部
可塑剤(大日本インキ社製 モノホイザーATBC) 1質量部
酢酸エチル 30質量部
トルエン 30質量部
イソプロピルアルコール 7質量部
ZnO粉末、又はTiO−ZnO粉末 1〜2質量部
なお、ZnO粉末、又はTiO−ZnO粉末の含有量は、インク1〜4において、以下の通りとした。
インク1:TiO−ZnO粉末を1質量部
インク2:TiO−ZnO粉末を2質量部
インク3:ZnO粉末を1質量部
インク4:ZnO粉末を2質量部
【0056】
次いで、前記二次元コードを試料ホルダに貼付し、温調手段としてヒータを使用して、前記二次元コードの温度を25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃の8通りに調節し、それぞれの場合について、図11に示す切り出しシンボルの1mm角部位に、レーザを照射して発光スペクトルを測定した。測定は、He−Cdレーザ(波長325nm)を使用し、レーザスポットを直径1mmとし、検出手段として電荷結合素子(CCD)を使用して行った。測定結果を図12〜14に示す。図12は、実施例6〜7における、測定時の温度が25℃の場合の、インク1〜4使用時の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。また、図13は、実施例6のTiO−ZnO含有インクを使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)はインク1、(b)はインク2の場合のグラフである。また、図14は、実施例7のZnO含有インクを使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)はインク3、(b)はインク4の場合のグラフである。
【0057】
図12から明らかなように、インク1〜4の発光スペクトルは、いずれも同様のパターンを示し、波長390nm付近及び785nm付近に鋭いピークが観測された。また、波長450〜700nmにはブロードなピークが観測された。波長390nm付近における発光強度は、実施例7のZnO含有インクの方が、実施例6のTiO−ZnO含有インクよりも大きく、インク4が最も大きかった。このように、インク1〜4の発光スペクトルが同様のパターンであることから、TiO−ZnOとZnOとは発光機構が同じであると推測された。
【0058】
また、図13から明らかなように、実施例6のTiO−ZnO含有インクを使用した場合、(a)インク1及び(b)インク2のいずれにおいても、波長785nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴い、強度に大きな差は生じなかったが、長波長側へシフトし、そのシフト量は、例えば、25℃と70℃との間で12.3nmであった。これに対して、その他のピークは、測定温度の上昇に伴う明確なシフトは観測されなかった。なお、図13(a)及び(b)のいずれにおいても、波長880nm付近にピークが観測され、図13(b)では特にその強度が大きいが、これは、レーザ光源を切り替えた時に生じた光軸のずれに起因するノイズである。
【0059】
また、図14から明らかなように、実施例7のZnO含有インクを使用した場合、(a)インク3においては、実施例6と同様に、波長785nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴い、強度に大きな差は生じなかったが、長波長側へシフトし、そのシフト量は、例えば、25℃と70℃との間で12.3nmであった。これに対して、その他のピークは、測定温度の上昇に伴う明確なシフトは観測されなかった。一方、(b)インク4においても、インク3と同様の結果が得られたが、波長785nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴う長波長側へシフト量が、例えば、25℃と70℃との間で7.8nmであった。
【0060】
[実施例8]
<N加熱処理したTiO−ZnO粉末の発光スペクトルの測定(2)>
実施例6で使用したTiO−ZnO粉末を使用し、そのNガス雰囲気下での加熱処理の温度を500℃のみとし、発光スペクトル測定時の温度の下限値を、25℃に代わり26℃としたこと以外は、実施例5と同様にTiO−ZnO粉末の発光スペクトルを測定した。測定結果を図15に示す。
【0061】
図15から明らかなように、発光スペクトルのピークの位置は、図12〜13に示す実施例6のTiO−ZnO含有インクの場合と同様であった。一方、TiO−ZnO粉末を加熱処理することで、実施例6と比較すると、波長550nm付近のピークは、その他のピークよりも強度が大きくなった。また、波長780nm付近のピークは、測定温度が高い場合には、観測されなかった。
【0062】
[実施例9]
<NH加熱処理したZnO粉末の発光スペクトルの測定>
NH加熱処理したTiO−ZnO粉末に代わり、1気圧のNHガス雰囲気下、500℃で1時間加熱処理したZnO粉末を使用したこと以外は、実施例4と同様に発光スペクトルを測定した。測定結果を図16に示す。なお、ZnO粉末としては、実施例1と同じものを使用した。
【0063】
図16から明らかなように、発光スペクトルのピークの位置とその測定温度によるシフトの様子は、図12及び14に示す実施例7のZnO含有インクの場合と同様であった。一方、ZnO粉末を加熱処理することで、実施例7と比較すると、波長700nm付近のピークの強度が大きくなった。
【0064】
一方、図15〜16から明らかなように、実施例8及び9の発光スペクトルは、互いに対称的なパターンを示した。実施例8では、加熱処理を不活性ガスであるNガス雰囲気下で行ったのに対し、実施例9では高活性なNHガス雰囲気下で行っており、これに起因するO(酸素)の空孔欠陥の量の違いが、このような発光スペクトルの違いに反映されていると推測される。
【0065】
[実施例10〜11]
<TiO−ZnO含有インク及びZnO含有インクの発光スペクトルの測定(2)>
実施例6におけるインク2を使用して、図11に示す二次元コードを、紙に代わり、カーボン薄膜を積層した紙の紙面上に印刷したこと以外は、実施例6と同様に、8通りの温度で発光スペクトルを測定した(実施例10)。なお、カーボン薄膜を積層した紙は、通常の紙とは異なり、電荷を逃がす効果を有するので、発光スペクトルの測定精度を向上させることが期待できるものである。
また、実施例7におけるインク4を使用して、図11に示す二次元コードを、紙に代わり、カーボン薄膜を積層した紙の紙面上に印刷したこと以外は、実施例7と同様に、8通りの温度で発光スペクトルを測定した(実施例11)。
測定結果を図17〜18に示す。図17は、実施例10のTiO−ZnO含有インク(インク2)を使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフであり、図18は、実施例11のZnO含有インク(インク4)を使用した場合の発光スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【0066】
図17から明らかなように、実施例10のインク2を使用した場合の発光スペクトルは、図13(b)に示す、実施例6のインク2を使用した場合の発光スペクトルと、同様のピーク位置を示した。ただし、図13(b)で観測された波長880nm付近のノイズは観測されなかった。
また、実施例6の場合と同様に、波長780nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴い、強度に大きな差は生じなかったが、長波長側へシフトし、そのシフト量は、例えば、25℃と90℃との間で14nm(783.5nm−769.5nm)であった。これに対して、その他のピークは、測定温度の上昇に伴う明確なシフトは観測されなかった。
【0067】
一方、図18から明らかなように、実施例11のインク4を使用した場合の発光スペクトルは、図14(b)に示す、実施例7のインク4を使用した場合の発光スペクトルと、同様のピーク位置を示した。
また、実施例7の場合と同様に、波長785nm付近のピークは、測定温度の上昇に伴い、強度に大きな差は生じなかったが、長波長側へシフトし、そのシフト量は、例えば、25℃と90℃との間で11nm(794.7nm−783.7nm)であった。これに対して、その他のピークは、測定温度の上昇に伴う明確なシフトは観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、光通信用のデバイス、情報識別用のセンサ等、発光素子としての機能を利用する技術分野全般に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段が、励起光照射時の温度に依存して異なる発光スペクトルを示すことを特徴とする温度可変光センサ素子。
【請求項2】
少なくとも酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛を含有する発光手段と、該発光手段の温度を調節する温調手段と、該発光手段に励起光を照射する励起手段とを備え、前記発光手段の発光強度が、励起光照射時の温度の上昇に伴い増大することを特徴とする温度可変光センサ素子。
【請求項3】
励起光照射時の温度に依存して、前記発光スペクトルにおけるピークの位置がシフトすることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度可変光センサ素子。
【請求項4】
不活性ガス又はアンモニアガス共存下で加熱処理された酸化亜鉛を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度可変光センサ素子。
【請求項5】
前記発光手段が、さらに窒化ガリウム又は二酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度可変光センサ素子。
【請求項6】
前記発光手段として、前記酸化亜鉛又は加熱処理された酸化亜鉛が、水又は水溶性の液体中に分散された分散液、あるいは該分散液を塗布及び乾燥してなる層を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度可変光センサ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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