説明

温度可変型低温度校正装置

【課題】本発明は、冷却液や低温寒剤を用いずに、シース型温度計を任意の温度において基準温度計との比較により校正する装置を開発することにより、従来の校正装置では対応できていない90K〜170K、あるいは、77K以下の温度範囲での校正を可能にすることを目的とする。
【解決手段】本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、冷凍機及びヒーターにより一定の温度に保持され、高熱伝導率の材料から形成される比較校正ブロックを真空ジャケット内に設け、該比較校正ブロック内に基準温度計を取り付ける基準温度計収納部及び被校正温度計を真空ジャケット外から導入パイプを介して挿入する挿入孔を設け、導入パイプに熱交換ガスを充填してなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温度を測定する温度計を校正する装置、特に90K〜170Kあるいは77K以下の温度範囲で校正を行うことができる温度可変型低温度校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に温度センサーを有し、全長が数十cmの長いシースを持ったシース型温度計の低温度における校正は、国際温度目盛(現在の温度標準である国際温度目盛は1990年に定められた1990年国際温度目盛である。)の条件をみたす白金抵抗温度計の校正の場合には、国際温度目盛の温度定点である、水の三重点273.16K、水銀の三重点234.3156K、アルゴンの三重点83.8058Kなどを実現してそれに対して校正し、これら温度定点間の任意温度については、これら温度定点での校正値から国際温度目盛が定める方法で補間することにより行うことができる。
【0003】
これに対し、前記の国際温度目盛の条件を満たさない、例えば、工業用のシース型温度計の校正の場合は、温度定点に対する校正だけでは温度定点の間の任意温度での校正を補間により行うことが出来ない。このため、上記国際温度目盛の条件をみたし国際温度目盛が定める方法に従い校正済みの温度計(以下、「基準温度計」と呼ぶ。)と校正対象となる温度計(以下、「被校正温度計」と呼ぶ。)をある任意温度に保持されている温槽に一緒に浸漬して比較する方法(以下、比較して校正することを「比較校正」と呼ぶ。)によりその任意温度での校正を行っている。
【0004】
従来の比較校正では、図4(a)に示すように、アルコールやシリコンオイルなどの冷却液を使った温槽により任意温度での校正が行われている。しかし、低温では冷却液の粘性の増加や固化が起こるために使用できる温度の下限が制限されてしまう。現在市販されている比較校正装置ではその下限は170K程度である。
そのため、170Kより低い温度での校正を行うためには、図4(b)に示すように、液化ガスを寒剤とした温槽を用いるが、例えば液化酸素や液化窒素を用いた大気開放型の温槽では、酸素の沸点(90.197K)、窒素の沸点(77.352K)など、使用する寒剤の性質によって決まる温度だけに校正温度が限定されてしまう。また、液化ガスの圧力を変化させることにより温度を変化させる校正装置も考案されているが、これも寒剤の物理的な性質により変化できる温度範囲が制限される。さらに、温度を上昇させるためには液化ガスを高圧にすることから安全性の面からも課題がある。
従って、90K〜170K、あるいは、77K以下の温度範囲での校正を行うための冷却液や液体寒剤等を用いないより操作が容易な装置の考案が強く望まれている。
また、従来の校正装置では、比較校正の前後で装置から基準温度計を取り出し、その性能を確認するために国際温度目盛の温度定点を実現する装置などに取り付け、温度計の安定度を確認する必要があった。基準温度計の性能に大きな影響を与える主要な原因のひとつに、その取り付け、取り外しの際の振動が挙げられる。このため、基準温度計を校正装置から取り外すことなく、校正している最中に性能を確認できる校正装置を考案することも課題の一つである。
【0005】
【特許文献1】特許第3465402号公報
【特許文献2】特開2004−317193号公報
【特許文献3】特許第2990276号公報
【非特許文献1】P. Bloembergen, G. Bonnier and H. Ronsin, "An International Intercomparison of Argon Triple Point Calibration Facilities, Accommodating Long-stem Thermometers" Metrologia 27 (1990) pp.101-106.
【非特許文献2】G. Furukawa, "Argon triple point apparatus with multiple thermometer wells" in Temperature: Its Measurement and Control in Science and Industry, Vol. 6, Part 1, American Institute of Physics, (1992) pp. 265-299.
【非特許文献3】S. L. Pond, "Argon Triple-Point Apparatus for SPRT Calibration", in Temperature: Its Measurement and Control in Science and Industry, Vol. 7, Part 1, American Institute of Physics, (2002) pp. 203-208.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、シース型温度計を比較校正するための従来の校正装置は、アルコールやシリコンオイルなどの冷却液や液体窒素などの低温寒剤を用いていたが、この手法では使用する寒剤の性質によって決まる温度だけに校正温度が限定されてしまうという問題点を有していた。
また、従来の比較校正装置では、比較校正の前後で装置から基準温度計を取り出し、その性能を確認するために国際温度目盛の温度定点を実現する装置などに取り付け、温度計の安定度を確認する必要があったが、その取り付け、取り外しの際の振動が基準温度計の性能に大きな影響を与える主要な原因のひとつに挙げられていた。
【0007】
本発明は、上記した冷却液や低温寒剤を用いずに、シース型温度計を任意の温度において基準温度計との比較により校正する装置を開発することにより、従来の校正装置では対応できていない90K〜170K、あるいは、77K以下の温度範囲での校正を可能にすることを目的とする。
また、基準温度計を装置に装着した状態で校正装置が稼動している間に、基準温度計の性能を確認できる機能を有した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、
(1)本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、冷凍機及びヒーターにより一定の温度に保持され、高熱伝導率の材料から形成された比較校正ブロックを真空ジャケット内に設け、該比較校正ブロック内に基準温度計を取り付ける基準温度計収納部及び被校正温度計を真空ジャケット外から導入パイプを介して挿入する挿入孔を設け、導入パイプに熱交換ガスを充填してなることを特徴としている。
(2)また、本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、上記(1)において、比較校正ブロックの被校正温度計の挿入側及び反挿入側にそれぞれ校正済みの温度計または基準温度計を収納する収納部を設けることを特徴としている。
(3)また、本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、上記(1)又は(2)において、真空ジャケット内の比較校正ブロックを外側に位置する第一等温シールド及び内側に位置する第二等温シールドで覆うとともに、第一等温シールド内に熱交換ガスを導入可能とすることを特徴としている。
(4)また、本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、高熱伝導率の材料から形成され、温度制御が可能な温度可変ブロックを導入パイプの中間に取り付けることを特徴としている。
(5)また、本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、上記(4)において、比較校正ブロックの被校正温度計の挿入方向の温度を均一化するように温度可変ブロックの温度制御を行うようにすることを特徴としている。
(6)また、本発明の温度可変型低温度比較校正装置は、上記(1)乃至(5)のいずれかにおいて、比較校正ブロックにサンプルスペースを設け、該サンプルスペースに国際温度目盛で定められた定点物質、又は二次定点物質を充填するようにしたことを特徴としている。上記の「二次定点物質」とは、本明細書においては、窒素やキセノンなど、その相転移点の温度が国際温度目盛に基づく温度測定により求められた物質を指す。
【0009】
上記(1)においては、冷凍機とヒーターのパワーを制御することにより一定の温度に保持され基準温度計が取り付けられた銅などの熱伝導率が高い材料からなる比較校正ブロックに、熱交換ガス、例えばHeなどの希ガスで満たしたステンレスなどの熱伝導率が比較的低い材料からなる導入パイプを通して、室温から被校正温度計を差し込める比較校正装置にすることで、従来の冷却液や液体寒剤を用いた校正装置では対応できていない90K〜170K、あるいは、77K以下の温度範囲での校正を可能にできる。
【0010】
上記(3)においては、真空ジャケット内の比較校正ブロックを外側に位置する第一等温シールド及び内側に位置する第二等温シールドで覆うとともに、第一等温シールド内に熱交換ガスを導入可能とすることにより、第一等温シールド内を目標温度へ素早く到達させることができる。
【0011】
上記(4)(5)においては、被校正温度計が挿入される導入パイプ及びその内部の熱交換ガスの導入パイプ軸方向の温度勾配が、比較校正ブロックの温度均一化の障害になるが、温度制御が可能な銅などの熱伝導率の高い材料からなる温度可変ブロックを導入パイプの途中に取り付け、導入パイプ及びその内部の熱交換ガスの導入パイプ軸方向の温度勾配を制御することで、比較校正ブロックの温度の均一化を実現する。また、逆に強制的に導入パイプ内にその軸方向の温度勾配が生るように温度可変ブロックの温度を制御することにより、導入パイプ及びその内部の熱交換ガスの温度勾配が校正へ与える影響も評価できるようになる。
【0012】
上記(2)(5)においては、比較校正ブロックの被校正温度計の挿入側及び反挿入側にそれぞれ校正済みの温度計又は基準温度計を設置し、温度可変ブロックの温度制御を行うことにより、比較校正ブロックの被校正温度計の挿入方向の温度を均一化することができる。
【0013】
上記(6)においては、比較校正ブロックにサンプルスペースを設け、そこにアルゴンなどの国際温度目盛で定められている定点物質や、窒素、キセノンなどの二次定点物質を入れ、校正装置が稼動中に温度定点を実現することで、基準温度計を取り外すことなくその性能を容易に確認できる。また、被校正温度計に対しても、温度定点の実現により値を確認できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)アルコールやシリコンオイルなどの冷却液を用いないため、原理的には被校正温度計を挿入する導入パイプに満たしている熱交換ガスが液化する温度まで校正の温度の下限を下げることが可能である。熱交換ガスとしてアルゴンを用いれば87K、ネオンを用いれば27K、ヘリウムを用いれば4Kが下限温度になる。
(2)従来シース型温度計の校正が困難であった90K〜170K、あるいは、77K以下の温度範囲で任意の温度での校正が可能になる。
(3)被校正温度計を挿入する導入パイプの軸方向の温度勾配を制御することにより、導入パイプ及びその内部の熱交換ガスの温度勾配による校正への影響を抑制することが可能になる。
(4)基準温度計の性能を、比較校正装置に装着した状態で、装置を稼動中に、確認することが可能になる。従来は基準温度計の性能は校正装置停止後でないと確認できなかったが、校正装置の稼働中に確認することが可能になり、校正の信頼度を上げることができる。また、被校正温度計に対しても、温度定点の実現により値を確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る温度可変型低温度比較校正装置の最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明に係る温度可変型低温度比較校正装置を説明するための正面概略図であり、また、図2は、図1の比較校正ブロックを説明する斜視図である。
温度可変型低温度比較校正装置は、主として、冷却を行うための冷凍機8、被校正温度計3が挿入自在な導入パイプ5を熱交換ガスで充填するためのチャンバー7、温度計を校正するための比較校正ブロック1が装着されている真空ジャケット22から構成されている。
図1においては、円筒形をした金属製の真空ジャケット22の上部にチャンバー7及び冷凍機8が設けられ、真空ジャケット22の下部中央に真空空間に囲まれて円柱形をした比較校正ブロック1が設置されている。真空ジャケット22には、真空チャンバー排気口20が設けられ、図示しない真空ポンプにより排気されるようになっている。
導入パイプ5は、その下端が、図2に示すように比較校正ブロック1に穿設された複数の被校正温度計挿入孔102に嵌入され、その上端がチャンバー7に接続されている。
比較校正ブロック1は、銅などの熱伝導率の高い材料で形成され、また、導入パイプ5は、ステンレスなどの熱伝導率が比較的低い材料で形成されている。銅で形成された比較校正ブロック1は、アルゴンの三重点温度近傍、及び、水銀の三重点温度近傍において高い温度安定性を示すことが知られている。
【0017】
被校正温度計3は、チャンバー7から室温の状態で導入パイプ5に挿入可能である。
被校正温度計3のセンサー部分の全長は最大50mmであるので、校正の信頼性を確保するために、被校正温度計3の比較校正ブロック1への侵入長はセンサー長の2倍以上の長さ(100mm以上)である。また、導入パイプ5の直径は想定している被校正温度計3が入るようにφ15mm程度であり、室温部にある導入パイプ5への被校正温度計3の温度計導入口6から、比較校正ブロック1の被校正温度計挿入孔102底部までの長さは400mm程度である。
【0018】
比較校正ブロック1には、図1及び図2に示すように、基準温度計2及び校正済みの参照用温度計16と被校正温度計3のセンサー部分が鉛直方向で中心が同じ位置になるように基準温度計2及び校正済みの参照用温度計16を収納する収納部103が設けられている。
基準温度計としては国際温度目盛に従って校正された白金抵抗温度計を用い、その形状としては、シース型抵抗温度計あるいは全長約50mm程度のカプセル型抵抗温度計のどちらを用いても良い。カプセル型抵抗温度計を用いる場合は、比較校正ブロックの下部から挿入する。図1にはカプセル型を基準温度計2とした例を示す。
なお、シース型抵抗温度計を用いる場合は、被校正温度計と同様に導入パイプ5を通して比較校正ブロック1の被校正温度計挿入孔102に挿入するものであるが、その場合にはシース型抵抗温度計が挿入された挿入孔が基準温度計収納部となる。
【0019】
被校正温度計3が挿入される導入パイプ5内に熱交換ガスを充填させるために、被校正温度計3の上部全体をチャンバー7で覆い、チャンバー7内の気体を熱交換ガスに置換できる構造にする。チャンバー7には、熱交換ガスを導入あるいは排気するための熱交換ガス導入排気口19が設けられている。また、チャンバー7内から被校正温度計3の信号を取り出せるようにチャンバー7に被校正温度計用コネクター17を設ける。
【0020】
真空ジャケット22内の比較校正ブロック1は第一等温シールド10と第二等温シールド11により覆われている。第一等温シールド10は熱伝導金属部材9により冷凍機8と接触することで冷却される。第一等温シールド10内を目標温度へ素早く到達させるために熱交換ガスを導入できるように、第一等温シールド10と第二等温シールド11との間に空間23を設け、該空間23と真空ジャケット22に設けられた熱交換ガス導入排気口21とを接続して熱交換ガスを導入・排気可能とする。熱交換ガスが校正に影響を与える際には、目標温度に到達後に熱交換ガスを図示しない真空ポンプにより排気する。第一等温シールド10及び第二等温シールド11は、銅、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料で形成されるものであり、第一等温シールド10はガス遮断性を有するが、第二等温シールド11はガス透過性を有するように形成されている。
【0021】
第二等温シールド11は第一等温シールド10と熱伝導金属部材24により接続されることで冷却される。そして、比較ブロック1は第二等温シールド11と熱伝導金属部材25により接続されることで冷却される。
比較校正を行う時は、比較校正ブロック1の温度が目的の温度になるように、それに取り付けられたヒーター26の加熱により制御する。ヒーター26による加熱が大きくなることが比較校正ブロック1の温度均一性と校正に影響を与えるのを防ぐために、第二等温シールド11の温度をそれに取り付けているヒーター27の加熱により制御し、比較校正ブロック1の熱流出を抑制する。冷凍機8の冷却による温度の振動を緩和させ、校正に影響を与えないように第一等温シールド10の温度をそれに取り付けているヒーター28の加熱により制御する。
真空ジャケット22には、第一等温シールド内温度計及びヒーター用の信号コネクタ18が設けられている。また、第一等温シールド、第二等温シールド及び比較校正ブロックには、図示しないが温度制御用の温度計が取り付けられている。
【0022】
比較校正ブロック1には被校正温度計3を挿入する導入パイプ5内の熱交換ガスにより大きな熱流入が入る。この熱流入が比較校正ブロック1の温度均一性と校正に与える影響を比較校正ブロック1の上部にとりつけた校正済みのカプセル型温度計4と下部に取り付けている、例えばカプセル型の基準温度計(あるいは校正済み温度計)2との温度差により観測できるような構造になっている。また、導入パイプ5の上端付近に第一温度可変ブロック12を、第一等温シールド10と第二等温シールド11の間の空間23に第二温度可変ブロック13を設け、導入パイプ5内からの熱流入が校正へ与える影響を抑制するように、両方の温度可変ブロック12、13の温度を制御する。このため、第一温度可変ブロック12及び第二温度可変ブロック13を熱伝導率の高い材料で形成し、熱伝導金属部材9に接続するとともに、それぞれにヒーター29、30及び温度計31、32を取り付けておく。真空ジャケット22には、真空チャンバー内温度計及びヒーター用の信号コネクタが設けられているが図示は省略する。
【0023】
上記のように導入パイプ5からの熱流入や比較校正ブロック1の温度均一性が最適に制御された状態で、比較校正ブロック1に取り付けられた基準温度計2と被校正温度計3の値を比較して、被校正温度計3の校正を行う。
【0024】
図2に示すように、比較校正ブロック1は、円柱形の物体に、温度計を取り付けるための複数の孔が円柱の軸に平行方向に穿設された構造である。
図2には、比較校正ブロック1のほぼ中心軸位置に1個、その中心軸位置を囲む等距離の位置に4個、合計5個の被校正温度計挿入孔102が穿設されている様子が示されている。被校正温度計挿入孔102には、上記した導入パイプ5がそれぞれ嵌入される。
また、比較校正ブロック1の下部に、比較校正ブロック1の中心軸から等距離の位置に基準温度計2と1つ以上の校正済みの参照用温度計16を取り付けるための挿入孔からなる収納部103が穿設されている。さらに、比較校正ブロック1の上部に、校正済み温度計4を取り付けるための挿入孔からなる収納部104が穿設されている。
基準温度計2及び参照用温度計16と被校正温度計3のセンサー部分とが鉛直方向で中心が同じ位置になるように被校正温度計挿入孔102、基準温度計2及び参照用温度計16を収納する収納部103が設けられている。
基準温度計2と参照用温度計16が示す温度を比較することで、基準温度計2が安定しているか確認するとともに、比較校正ブロック1の円周方向の温度分布を評価することができる。
【0025】
比較校正ブロック1には、図1及び図2に示すように、その中心軸位置の被校正温度計挿入孔102を囲むようにしてサンプルスペース14が穿設されており、比較校正ブロック1底部に設けられたサンプル導入密封口15からアルゴンなどの国際温度目盛で定められている定点物質や、窒素、キセノンなどの二次定点物質をあらかじめ密封し、温度定点を実現することで基準温度計2を取り外すことなく校正装置が稼動中にその性能を確認することが可能である。
【産業上の利用の可能性】
【0026】
アルコールやシリコンオイルなどの冷却液を用いていないことから、170Kよりも低い温度領域でシース型温度計に対し任意温度での比較校正が可能であり、また、液化窒素ガスなどの液体寒剤を用いていないことから装置の安全性が高くなり、装置の操作も比較的容易になり、校正の負担を軽減することができることから、食品産業、医薬品医療産業、などで商品の製造、品質管理のための170K以下での利用が可能である。また、これらの食品産業、医薬品医療産業において安全管理を保証するために、シース型温度計に対し170K以下の任意温度での校正が要求されており、本発明はその要求に応えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る温度可変型低温度比較校正装置を説明するための正面概略図である。
【図2】図1の比較校正ブロックを説明する斜視図である。
【図3】従来技術を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 比較校正ブロック
2 基準温度計
3 被校正温度計
4 校正済み温度計
5 導入パイプ
6 温度計導入口
7 チャンバー
8 冷凍機
9 熱伝導金属部材
10 第一等温シールド
11 第二等温シールド
12 第一温度可変ブロック
13 第二温度可変ブロック
14 サンプルスペース
15 サンプル導入密封口
16 参照用温度計
17 被校正温度計用コネクタ
18 第一等温シールド内温度計及びヒーター用の信号コネクタ
19 熱交換ガス導入排気口
20 真空チャンバー排気口
21 熱交換ガス導入排気口
22 真空ジャケット
23 第一等温シールドと第二等温シールドとの間の空間
24 熱伝導金属部材
25 熱伝導金属部材
26 ヒーター
27 ヒーター
28 ヒーター
29 ヒーター
30 ヒーター
31 温度計
32 温度計
101 比較校正ブロック本体
102 被校正温度計挿入孔
103 基準温度計、参照用温度計の収納部
104 校正済み温度計収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機及びヒーターにより一定の温度に保持され、高熱伝導率の材料から形成された比較校正ブロックを真空ジャケット内に設け、該比較校正ブロック内に基準温度計を取り付ける基準温度計収納部及び被校正温度計を真空ジャケット外から導入パイプを介して挿入する挿入孔を設け、導入パイプに熱交換ガスを充填してなることを特徴とする温度可変型低温度比較校正装置。
【請求項2】
比較校正ブロックの被校正温度計の挿入側及び反挿入側にそれぞれ校正済みの温度計または基準温度計を収納する収納部を設けることを特徴とする請求項1記載の温度可変型低温度比較校正装置。
【請求項3】
真空ジャケット内の比較校正ブロックを外側に位置する第一等温シールド及び内側に位置する第二等温シールドで覆うとともに、第一等温シールド内に熱交換ガスを導入可能とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の温度可変型低温度比較校正装置。
【請求項4】
高熱伝導率の材料から形成され、温度制御が可能な温度可変ブロックを導入パイプの中間に取り付けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の温度可変型低温度比較校正装置。
【請求項5】
比較校正ブロックの被校正温度計の挿入方向の温度を均一化するように温度可変ブロックの温度制御を行うようにすることを特徴とする請求項4記載の温度可変型低温度比較校正装置。
【請求項6】
比較校正ブロックにサンプルスペースを設け、該サンプルスペースに国際温度目盛で定められた定点物質、又は二次定点物質を充填するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の温度可変型低温度比較校正装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−232651(P2007−232651A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56860(P2006−56860)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】