説明

温度定点セル、温度定点装置及び温度計校正方法

【課題】銅点を越える温度域での定点を実現し、放射温度計、熱電対、その他の高温域で使用されるあらゆる温度計の校正の高精度化を達成する。
【解決手段】炭素を成分とするるつぼと、このるつぼに封入された定点物質とから温度定点るつぼ4が構成されており、この定点物質は、炭素と炭素化合物の包晶組織であり、この温度定点るつぼ4を炉内に設置し周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の温度定点るつぼ4の温度を温度計にて測定し、測定された温度変化状態から温度計9を校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、放射温度計や熱電対等、1000℃を越える高温域で使用される温度計の校正に必要となる温度定点セルおよび温度定点実現装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度計を校正する際、常温域以上では金属の凝固点もしくは融点が温度の定義定点として採用され、その実現手段として定点セルが用いられている。これらは通常、純金属を鋳込んだグラファイト製のるつぼであり、その内部の温度を温度計で測定し、定点セルを温度可変の炉の内部に置き環境温度を昇温、降温させたときのセルの温度変化を観測し、液相・固相が共存する状態では融解の潜熱により温度変化がなくなることを利用して温度計の校正を行う(非特許文献1参照)。
【0003】
定義定点の最高温度は1085℃の銅点であり、銅点より高温域では外挿により目盛りが定義されている。銅点以上の温度域での目盛りの維持には銅点以下で定点校正された放射温度計を利用するか、リボン電球と呼ばれるタングステンリボンをフィラメントとする電球の放射輝度と電流の特性に目盛りを移して行われている。
【0004】
銅点より高温域で定点を実現する試みとして、パラジウム(凝固点1550℃)や白金(1770℃)の凝固点を実現する試みが行われ、アルミナ製るつぼを用いて溶解することで定点を測定した例が報告されている(非特許文献2、3参照)。
【0005】
また、るつぼ材料としてタングステンを用い、その中でアルミナを溶解し、2050℃でのその融解・凝固を放射温度計で観測、定点とする試みも報告されている(非特許文献4参照)。
【0006】
熱電対の校正においては、銅点(1085℃)あるいは金点(1064℃)での校正に加えて、パラジウムワイヤ法による校正が行われている。これは、熱電対の先端に純金属のパラジウムワイヤを挿入し、加熱炉で昇温し、ワイヤが融解するときの融解プラトーを観測する方法である。
【0007】
一方、共晶を温度定点として用いることは、金属−金属共晶では試みられてきた。グラファイト製るつぼに、銅−銀共晶、あるいは銅−アルミ共晶を鋳込み、その溶解、凝固を観測することで定点を実現する報告がされている(非特許文献5参照)。
【0008】
さらに、金属−炭素共晶を定点物質として用い、グラファイトるつぼを用いることを可能にする温度値点セルが示されている(特許文献1参照)。これにより1100℃から2500℃までの間に複数の温度定点が実現される。
【0009】
そして、金属炭化物−炭素共晶を定点物質として用い、グラファイトるつぼを用いることを可能にする温度値点セルが示されている(特許文献2参照)。これにより2500℃から3200℃までの間に複数の温度定点が実現される。
【非特許文献1】(社)日本電気計測器工業界編「新編温度計の正しい使い方」、第7章、日本工業出版社(1997年発行)
【非特許文献2】Quinn,T.J.,Chandler, T.R.D.:Temperature,Its Measurement and Control in Science and Industry, Plumb, H.H. (ed.), Vol. 4, Part 1, p.295, Pittsburgh:Instrument Society of America (1972),
【非特許文献3】Coates, P.B.., Chandler, T.R.D.,Andrews, J.W., High Temperature and High Pressure, Vol. 15, p.573 (1983)
【非特許文献4】Sakate,H.,Sakuma,F.,Ono,A.,Metrologia,Vol32, p.129, (1995)
【非特許文献5】伊藤、計測自動制御学会論文集、19巻、12号、p.978 (1983))
【特許文献1】特許2987459号
【特許文献2】特許3404531号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のグラファイトを用いて純金属を鋳込んだ定点るつぼは、1085℃の銅点が再高温度となっている。これは、より高温の融点をもつ金属をグラファイトるつぼで溶解した場合、グラファイトが金属中に溶出し金属の純度が下がり、凝固点降下をもたらすためである。
【0011】
銅点以上の定点セルがないため、温度定点を校正器物とする標準供給は1085℃の銅点までであり、亜鉛点から銅点まで4定点を用いて400℃から1100℃までの補間目盛はJCSSで供給されているが、現在は定点補間の目盛をより高温に補外することは行われていない。
【0012】
したがって、銅点以上の温度目盛の標準供給は高精度の放射温度計を校正器物として用い、銅点での温度定点校正および温度計の光学特性評価などにより補外に目盛を設定している、そのため、精密な特性評価を行うなど、大変な労力を伴う一方、外挿に依存することには変わらないため、得られる設定精度も2000℃で1℃程度である。
【0013】
また、リボン電球は、リボンの放射率が1でないため、測定する波長により補正が必要となり、高精度の利用は困難であったほか、2000℃以上ではリボンのタングステンの蒸発が生じるため不活性ガス封入で使用する必要があり、そのため対流により安定な特性が得られなかった。
【0014】
アルミナ製るつぼでパラジウム点あるいは白金点を実現しようとする試みは、短期の測定には利用可能であるものの、繰り返し使用するにはアルミナが熱衝撃に弱く脆いために、るつぼが割れるという問題が生じ実用性に欠ける。
【0015】
パラジウムワイヤ法による熱電対の校正は、再現性が1℃程度しか得られないこと、および一番近い定点の銅点でさえ500℃近く離れているために内挿精度が劣化することから、十分な精度が得られていない。
【0016】
タングステンるつぼでアルミナを溶解する方法は、タングステンの加工性が悪く横型のるつぼに溶融アルミナを封じ込めることが困難であること、タングステンの放射率が低いため、放射率が1に近い黒体空洞が形成できず、十分な精度が得られないこと等の点で実現の可能性が低い。
【0017】
金属−金属共晶を用いる方法は、銅点よりも低い温度域で定点の数を増やすことを目的としており、銅点以上で同方法を用いた場合、グラファイトの溶出による凝固点降下は免れないため、定点は実現しない。
【0018】
金属−炭素共晶を用いる方法は、1400℃から2300℃の温度域では全て高価な貴金属の合金を定点物質としており、より安価な物質が望ましい。
【0019】
金属炭化物−炭素共晶を用いる方法の場合は、例えば、2750℃付近の温度ではチタン炭化物−炭素共晶点があるが、セルの製作に必要とされるチタン粉末は大気中の酸素と窒素と反応性が高く、引火し易く危険である。また、同じ理由から高純度のチタン粉末も製作が困難で入手できない。
【0020】
さらに、金属−炭素共晶および金属炭化物−炭素共晶を用いる方法の場合、凝固した組織は二つの層が層状あるいはフレーク状に入り組んだ構造を形成し、融解および凝固時のエネルギー平衡に組織の大きさが影響をもたらし、平坦なプラトーが得られない。(N. Sasajima, Y. Yamada, P. Bloembergen and Y. Ono, Proc. TEMPMEKO 2004, p.195 (2005)
【0021】
本発明は、上記従来技術の問題点を克服し、銅点を越える温度域での定点を実現するためになされたもので、放射温度計、熱電対、その他の高温域で使用されるあらゆる温度計の校正の高精度化を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題を解決するために、炭素を成分とするるつぼと、該るつぼに封入された定点物質とからなる温度定点セルであって、前記定点物質は、炭化物と炭素の包晶組織であることを特徴とする温度定点セルを提供する。
【0023】
本発明は上記課題を解決するために、温度定点セルを内部に設置し、該温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの温度変化を温度計にて測定する炉を備えた温度定点装置であって、前記温度定点セルが炭素を成分とするるつぼと、前記るつぼに封入され、炭化物と炭素の包晶組織である定点物質とから成ることを特徴とする温度定点装置を提供する。
【0024】
本発明は上記課題を解決するために、温度定点セルを内部に設置し、該温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの放射光強度変化を照度計または放射計にて測定する炉を備えた温度定点装置であって、前記温度定点セルが炭素を成分とするるつぼと、前記るつぼに封入され、炭化物と炭素の包晶組織である定点物質とから成ることを特徴とする温度定点装置を提供する。
【0025】
本発明は上記課題を解決するために、炭素を成分とするるつぼと、該るつぼに封入され、炭化物と炭素の包晶組織である定点物質とから成る温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの温度を温度計にて測定し、測定された温度変化状態から前記温度計を校正することを特徴とする温度計校正方法を提供する。
【0026】
前記炭化物は、マンガン、クロム、アルミニウム、プルトニウム、シリコン又はタングステンの炭化物であることが好ましい。
【0027】
前記温度計は、放射温度計または熱電対であること好ましい。
【発明の効果】
【0028】
上記解決手段を特徴とする本発明によると、温度計の校正手段の欠如や目盛りの不確かさのために十分な精度が得られなかった高温域で温度校正精度が向上する点、産業上および科学技術上の顕著な効果が生じる。これをさらに、説明すると次のとおりである。
【0029】
(1)従来、銅点の1085℃より外挿に依存していたために十分な精度が得られていなかった高温域での放射温度計、熱電対、その他の温度計の校正が内挿で行えるようになるため、精度が著しく向上する。
【0030】
(2)従来、温度目盛りの維持に用いられてきた標準リボン電球を用いることなく、定点と放射温度計で目盛りの維持が可能になる。
(3)内挿で校正できるため、従来のような高精度標準放射温度計の精密な特性評価も不要となり、校正作業が著しく簡単化され、温度目盛りの供給体系の整備が進む。
【0031】
(4)高精度の温度計校正を目的に開発されてきた金属−炭素共晶に比べ、1400℃から2500℃の温度域で極めて安価に定点セルを製作することが可能になる。
(5)2500℃より高温域では、高純度金属粉末の入手が困難で金属炭化物−炭素共晶点の精度が得られていなかったが、高純度タングステン粉末は容易に入手可能でこれを利用したWC−C包晶点により高精度定点が実現できる。
【0032】
(6)熱電対の校正にあたってはパラジウムワイヤ法が不要になる。
(7)今後高温用熱電対の開発にあたって、安定性や個体差等の特性評価を高精度で行うことが可能になり、熱電対の特性改善にも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明に係る温度定点セル、温度定点装置及び温度計校正方法の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0034】
本発明では、定点セルとしてグラファイト製のるつぼに純物質と炭素を混ぜ、炭化物を形成、その包晶点における融解・凝固の相平衡の温度再現性を温度定点として用いる構成を特徴とする。

【0035】
本発明の温度計校正方法では、上記定点セルを温度可変電気炉の中に設置し、その内部の温度を被校正温度計で測定し、環境温度を昇温、降温させたときのセルの温度変化を観測し、液相・固相が共存する状態では融解の潜熱により温度変化がなくなることを利用して温度計の校正を行う。
【0036】
本発明において用いる定点材料としては、炭素と包晶を形成する炭素化合物を用いる。包晶を形成する金属合金は数多く存在するが、その中で、一方の物質が炭素である場合をここでは扱う。さらに、金属と炭素の化合物には包晶を形成する場合が多くあるが、ここでは二種類の炭素化合物間の包晶は扱わず、炭素と包晶を形成する炭素化合物のみ扱う。具体的には、マンガン、クロム、アルミニウム、プルトニウム、シリコン又はタングステンの炭素化合物を利用する。
【0037】
金属−炭素共晶による温度定点と金属炭化物−炭素共晶による温度定点と併せて、本発明の定点温度を図1に示す。なお、この図中、金属−炭素共晶と金属炭化物−炭素共晶の温度値は山田、計測と制御、第42巻、11号p.918(2003年発行)による。現在の1990年国際温度目盛(ITS-90)の定義定点は右側下に示すように銅点の1085℃が最も高温である。金属−炭素共晶と金属炭化物−炭素共晶の温度定点はその上に示す1153℃から3185℃までに存在する。本発明の包晶点はその左側に示す、WC-C、SiC-C、Al4C3-C、Cr3C2-C、Mn7C3-Cである。これ以外にbPuC2とCの包晶点も2300℃付近に存在するが、その温度値は不明であり、図1には示していない。また、以下に示すように、本発明の包晶点セルは包晶点にて一回目の凝固をしたあとも液相がセル内に残存し、より低温の炭素化合物間の共晶点または包晶点で第2回目の凝固を示すものがある。この温度値も併せて図2の左側に示してある(WC1-x−WC共晶点、Pu2C3−bPuC2包晶点、Cr7C3−Cr3C2共晶点、PuC−Pu2C包晶点、Si-SiC共晶点、eMn−Mn7C3包晶点)。
【0038】
本発明に係る金属−炭素共晶の相図の一例として、クロムと炭素の相図を図2に示す。図2中、純クロムの凝固点が1863℃にあるのに対し、本発明で定点として用いる炭素化合物Crと炭素の包晶点は1811℃、組成比37%(炭素の原子パーセント)にあることがこの図より分かる。
【0039】
Crは、包晶点より高温では存在することが出来ないので、昇温しようとすると固体のグラファイトと、包晶点組成の炭素を含む液体クロムに分離する。逆に、炭素で飽和状態にある液体クロムを冷却すると、初晶グラファイトを析出しながら包晶点に到達し、1811℃以下にわずかでも冷却すると、先に析出した初晶グラファイトやるつぼ炭素と反応し、固体のCrが形成される。
【0040】
このように包晶点で一つ目の融解・凝固が生じる(Chalmers著、岡本・鈴木共訳、「金属の凝固」、丸善、P.207)。その際、潜熱が吸収・放出され、温度変化曲線に平坦なプラトーが観測される。
【0041】
さらに、包晶点での凝固が進み炭素化合物がグラファイト表面を覆うとグラファイトが液相と接することがなくなるため、包晶点での凝固が終了する。しかし、金属の一部は依然液相にあり、冷却するに伴いさらにCrを析出しながら、Cr−Cr共晶点(温度1727℃、組成比32.6%炭素の原子パーセント)に到達し、ここで完全に固体になる。このように共晶点で二つ目の融解・凝固が生じる。ここでも、潜熱が吸収・放出され、温度変化曲線に平坦なプラトーが観測される。
【0042】
一つ目の融点である包晶点を超えると、るつぼ材料であるグラファイトはわずかながら溶出するが、再度温度を下げると余分なグラファイトは析出するため、凝固点に至るときには元の組成比に戻っている。そのため、再現性の良い溶解・凝固プラトーが観測される。
【0043】
本発明によれば、るつぼ材料と同じグラファイトと炭素化合物の包晶を用いているため、本質的にるつぼ材料が不純物となり得ず、凝固点降下は生じない。また、グラファイトを用いているため、アルミナるつぼを用いた場合のようなるつぼ耐久性の問題もない。
【0044】
そして、予め炭素を加えて包晶を形成する炭素化合物の組成比で溶解すればるつぼからの溶出はわずかであり、溶解によるるつぼの耐久性劣化も生じない。また、放射率の高いグラファイトをるつぼ材料として用いているため、十分放射率の高い黒体空洞が容易に形成でき、放射温度計の校正にも適している。
【0045】
これらの定点で校正された温度計は、2776℃の高温域まで内挿で校正されるため、校正精度が著しく向上する。また、これらの定点のどれかを用いてそこより外挿で校正されたとしても、銅点より高温で校正されているため、外挿精度は従来の方法に比べ著しく向上する。
【0046】
定点物質には高価な貴金属を必要とせず、しかも高純度の粉末が安価で安定に入手可能である。また、一つの温度定点セルで二つの融解・凝固点温度が温度参照点として使用可能であり、温度計の校正に必要とされる定点の種類が少なくて済むため、設備が少なくて済むばかりでなく、校正に要する手間も削減される。
【実施例1】
【0047】
本発明の実施例1を図3に示す。図3(a)に示すように、グラファイト製のるつぼ1の中にクロムに40原子パーセント炭素を添加して、Cr−炭素包晶2を鋳込んだ定点セル4が、図3(b)に示すような横型温度可変電気炉の中に装填されている。
【0048】
温度可変炉はグラファイト製炉心管5およびそれを覆う断熱材7からなり、炉心管に電流を流すことにより加熱される。炉内部全体が真空引きされた後不活性ガス雰囲気におかれている。定点セルの片端には黒体空洞3が形成されており、炉の外部に設けた被校正放射温度計6で石英ガラス10の窓越しに黒体空洞3の放射光を捉え、定点セル2の温度を測定する。なお、被校正放射温度計6は被校正放射計、あるいは被校正照度計でもかまわない。
【0049】
また、炉の他端からは別の放射温度計9により炉内温度がモニタされ、出力信号が加熱電流の制御装置に入力されている。定点セル2の周りには温度分布の均一性を高め、炉心管と定点セルの電気的絶縁を向上する目的でグラファイト製断熱材8が挿入されている。
【0050】
実施例1における被校正放射温度計の出力を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)において、それぞれ第1および第2の融解・凝固のプラトーが観測され、定点校正が可能であることが分かる。
【実施例2】
【0051】
本発明の実施例2を図5に示す。グラファイト製るつぼの中にマンガンに30原子パーセント炭素を添加して、Mn−炭素包晶を鋳込んだ定点セル4が縦型温度可変電気炉の中に装填されている。温度可変炉はアルミナ製炉心管11およびそれを囲むヒータエレメント12、さらにそれを囲む断熱材7で構成され、炉心管内部は真空引きされた後不活性ガス雰囲気におかれている。
【0052】
定点セルの上部には空洞13が設けられ、アルミナ製保護管14を介して被校正熱電対15がその中に挿入されている。また、炉の下部からは別の熱電対16が炉内に挿入され、炉の温度をモニタし、出力信号がヒータの制御装置に入力されている。定点セルの周りの温度分布の均一性を高めるため、ヒータは上部、中部、下部の3ゾーンに分けて制御されている。
【0053】
実施例2のR型熱電対を校正時の出力を図6に示す。融解・凝固のプラトーが観測され、定点校正が可能であることが分かる。
【0054】
以上、本発明に係る温度定点セル、温度定点装置及び温度計校正方法の最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、以上のような構成であるから、放射温度計や熱電対等、1000℃を越える高温域で使用される温度計の校正に必要となる温度定点セルおよび温度定点を実現する装置として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】

【図1】本発明に使用される炭化物−炭素包晶の定点温度と、従来から使用されてきた純金属定点、金属−炭素共晶点、金属炭化物−炭素共晶点温度の相図である。
【図2】本発明に使用される炭化物−炭素の相図の一例
【図3】本発明の実施例1を説明する図である。
【図4】実施例1による被校正温度計出力例を示す図である。
【図5】本発明の実施例2を説明する図である。
【図6】実施例2による被校正温度計出力例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 グラファイト製のるつぼ
2 金属−炭素共晶
3 黒体空洞
4 温度定点るつぼ
5 グラファイト製炉心管
6 モニタ用放射温度計
9 被校正放射温度計
10 石英ガラス
11 アルミナ製炉心管
12 ヒータエレメント
15 被校正熱電対
16 モニタ用熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を成分とするるつぼと、該るつぼに封入された定点物質とからなる温度定点セルであって、前記定点物質は、炭化物と炭素の包晶組織であることを特徴とする温度定点セル。
【請求項2】
温度定点セルを内部に設置し、該温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの温度変化を温度計にて測定する炉を備えた温度定点装置であって、
前記温度定点セルが炭素を成分とするるつぼと、前記るつぼに封入され、炭化物と炭素の包晶組織である定点物質とから成ることを特徴とする温度定点装置。
【請求項3】
温度定点セルを内部に設置し、該温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの放射光強度変化を照度計または放射計にて測定する炉を備えた温度定点装置であって、
前記温度定点セルが炭素を成分とするるつぼと、前記るつぼに封入され、炭化物と炭素の包晶組織である定点物質とから成ることを特徴とする温度定点装置。
【請求項4】
炭素を成分とするるつぼと、該るつぼに封入され、炭化物と炭素の包晶組織である定点物質とから成る温度定点セルの周囲温度を上昇または下降せしめ、その時の前記温度定点セルの温度を温度計にて測定し、測定された温度変化状態から前記温度計を校正することを特徴とする温度計校正方法。
【請求項5】
前記炭化物は、マンガン、クロム、アルミニウム、プルトニウム、シリコン又はタングステンの炭化物であることを特徴とする請求項1記載の温度定点セル。
【請求項6】
前記炭化物は、マンガン、クロム、アルミニウム、プルトニウム、シリコン又はタングステンの炭化物であることを特徴とする請求項2記載の温度定点装置。
【請求項7】
前記温度計は、放射温度計または熱電対であることを特徴とする請求項2記載の温度定点装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−225485(P2007−225485A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48256(P2006−48256)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】