説明

温度測定用センサ

【課題】 耐電圧性および熱応答性が良好で、断線の生じ難い温度測定用センサを得る。
【解決手段】 測温部27は、伝導熱に応じたレベルの測定信号に変換する測温素子と測定信号を出力するリード線29とを有する。ケーブル31は、測温部27のリード線29に接続され測定信号を外部へ出力する。合成樹脂製チューブ37は、測温部27が挿入され測温部27からケーブル31端部までを被覆する。外被覆部39は、耐蝕性および耐熱性合成樹脂からなり、測温部27にあってリード線29の導出方向とは反対の先端側から合成樹脂製チューブ37全体およびケーブル31の端部を被覆、溶着される。合成樹脂製チューブ37は、外被覆部39より溶融温度が少なくとも1.2倍以上の熱可塑性の耐熱性合成樹脂、又は熱硬化性の耐熱性合成樹脂から成型されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度測定用センサに係り、例えば、半導体ウエハを製造する装置の薬品温度を測定する温度測定用センサの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
温度測定用センサ1としては、詳細な図示はしないが、先端を密閉した金属シースの内部先端に測温部(温度センサ)を収納するとともに、その金属シースをふっ素樹脂製チューブで被せたふっ素樹脂でコーティング処理した構成が知られている。
【0003】
このような温度測定用センサ1は、例えば図5に示すように、薬液3を溜めた容器5内に挿入し、薬液3の温度に応じた電気信号を出力してその温度を測定するようになっている。なお、図5中の符号7は容器5の蓋体、符号9は温度測定用センサ1の蓋体7への接続具である。
【0004】
ところが、そのような温度測定用センサ1は、耐腐食性が良好ではあるが、金属シースを有するために折り曲げにくいとか、温度変化に対する応答性が悪いといった難点があった。
【0005】
そこで、図6に示すように、測温部11のリード線13にケーブル15の芯線17を接続し、リード線13と芯線17を絶縁チューブ19で被覆するとともに、測温部11およびケーブル15全体をふっ素樹脂チューブ21内に収納した構成が提案されている。
【0006】
実開昭63−72534号公報(特許文献1)の線状温度センサは、図6の構成に該当するものである。
【0007】
すなわち、この特許文献1は、熱溶着可能で熱収縮性のある合成樹脂製チューブ内に熱電対を構成する一対の金属細線が複数対収容され、夫々の対の温接点がそのチューブ内において直線的に間隔を保持して狭持されるとともに、そのチューブの先端が熱封着されてなり、小容器内の液体平均温度等を同時に測定できるようにしたものである。
【0008】
また、図7に示すように、測温部11のリード線13にケーブル15の芯線17を接続し、リード線13および芯線17を含めて測温部11およびケーブル15全体外周に、溶融したふっ素樹脂によって円柱状の外被覆部23を形成した構成も提案されている。
【0009】
特許第3613089号公報(特許文献2)の温度測定用センサは、図7の構成に該当する。
【0010】
この特許文献2は、耐蝕性および熱可塑性を有するとともに弾性変形が可能な合成樹脂製のチューブの先端部の内部に、後方に向かってリード線が接続された測温素子を実質的に介在物なしに直接に挿入し、そのチューブの先端部を外部から加熱して部分的に溶融させることにより、そのチューブの先端部内に測温素子を直接に融着して固定するとともに、そのチューブの先端部を閉じて測温素子を含む測温部を構成し、その測温部を目的の測温位置に位置させるようにしたものである。
【特許文献1】実開昭63−72534号公報
【特許文献2】特許第3613089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した図6(特許文献1)の構成では、先端を溶着封止したふっ素樹脂チューブ21に測温部11を入れた構造となっているが、測温部11と樹脂チューブ21の間に空気層が介在することから、温度変化に対する応答性が悪いという問題がある。
【0012】
他方、上述した図7(特許文献2)の構成では、測温部11、リード線13および芯線17がふっ素樹脂の外被覆部23で溶着封止されるから、内部に空気層がなくて応答性の低下を抑えることが可能であるが、高温の被測定物を測定する際、ふっ素樹脂からなる外被覆部23の熱膨張と内部のリード線13の熱膨張率の違いに起因し、温度測定用センサ1を低温から高温の温度雰囲気中に放置すると、リード線13が断線し易くなる問題点がある。
【0013】
しかも、一般にふっ素樹脂は帯電し易く、外部に帯電した静電気が内部のリード線13および芯線17との間で放電すると、外被覆部23にピンホールが生じてリード線13および芯線17等が腐食する心配もある。
【0014】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、断線や腐食が生じ難く、測定温度の応答性も良好で、構成の簡単な温度測定用センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのような課題を解決するために本発明の請求項1に係る温度測定用センサは、伝導熱に応じたレベルの測定信号に変換する測温素子とこれから測定信号を出力するリード線とを有する測温部と、この測温部のリード線に接続され測定信号を外部へ出力するケーブルと、その測温部が挿入されこの測温部、およびリード線とケーブルとの接続部を少なくとも被覆する耐電圧性の合成樹脂製チューブと、耐蝕性および耐熱性合成樹脂からなり、その測温部にあってリード線の導出方向とは反対の先端側からそれら合成樹脂製チューブ全体およびケーブルの端部を被覆するようこれらに溶着された外被覆部とを具備し、その合成樹脂製チューブは、その外被覆部より溶融温度が少なくとも1.2倍以上の熱可塑性の耐熱性合成樹脂、又は熱硬化性の耐熱性合成樹脂から成型されて構成されている。
【0016】
本発明の請求項2に係る温度測定用センサは、上記合成樹脂製チューブが、そのケーブルの端部にも挿入されてこれを被覆する構成を有している。
【0017】
本発明の請求項3に係る温度測定用センサは、上記外被覆部がふっ素樹脂からなり、上記合成樹脂製チューブがポリイミド樹脂からなる構成も可能である。
【0018】
本発明の請求項4に係る温度測定用センサは、上記外被覆部が、溶融された耐蝕性および耐熱性合成樹脂により、それら合成樹脂製チューブ全体およびケーブルに付着されて柱状に成型されてなる構成も可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る温度測定用センサでは、上記測温部やこのリード線等が耐電圧性の合成樹脂製チューブに挿入され、その測温部にあってリード線の導出方向とは反対の先端側から外被覆部が、合成樹脂製チューブ全体およびケーブルの端部を被覆するようこれらに溶着され、その合成樹脂製チューブが、その外被覆部より溶融温度が少なくとも1.2倍以上の熱可塑性の耐熱性合成樹脂、又は熱硬化性の耐熱性合成樹脂から成型されているので、合成樹脂製チューブを薄くしても耐電圧性および熱伝導を確保することが可能であるうえ、上記測温部およびこのリード線とケーブルの接続部が合成樹脂製チューブとの間で相対的に変位可能となり、耐食性および測定温度応答性が良好で、リード線等の断線やピンホールの発生も防止可能である。
【0020】
本発明の請求項2に係る温度測定用センサでは、上記合成樹脂製チューブがそのケーブルの端部にも挿入されてこれを被覆するから、機械的強度がより良好になる。
【0021】
本発明の請求項3に係る温度測定用センサは、上外被覆部がふっ素樹脂からなり、その合成樹脂製チューブがポリイミド樹脂からなるから、特に、断線や腐食の防止が確実で、測定温度の応答性も一層良好になる。
【0022】
本発明の請求項4に係る温度測定用センサでは、上記外被覆部が、溶融された耐蝕性および耐熱性合成樹脂により、それら合成樹脂製チューブ全体およびケーブルに付着されて柱状に成型されてなるから、構造および製造が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1および図2は本発明に係る温度測定用センサ25の実施の一形態を示す縦断面図および要部正面図である。
【0025】
図1において、測温部27は、伝導熱に応じたレベルの測定信号に変換する測温素子(内部に隠れて見えない。)と、これから測定信号を出力するリード線29とを有する公知のものであり、細長い柱状にモールド成形されてなり、一方の端面部から2本のリード線29が突出している。測温素子は、熱電対、測温抵抗体その他従来公知の温度センサである。
【0026】
リード線29には従来公知のケーブル31の2本の芯線33が、例えば銀ロウ付けされており、一方のリード線29およびこれに接続された芯線33が絶縁チューブ35に挿通されて絶縁被覆されており、測温部27からケーブル31を介して測定信号が外部へ出力されるようになっている。
【0027】
測温部27、リード線29、ケーブル31のリード線29側の端部は、耐電圧性の良好な合成樹脂、例えばポリイミド樹脂から予め細長い筒型に成形された合成樹脂製チューブ37内に挿入され、測温部27からケーブル31の外周が合成樹脂製チューブ37内壁に当接している。
【0028】
すなわち、合成樹脂製チューブ37は、測温部27全体、リード線29並びにケーブル31のリード線29全体、およびケーブル31のリード線29側の端部が挿入可能な内径を有し、それらを被覆している。
【0029】
合成樹脂製チューブ37およびケーブル31のリード線29側の端部は、耐蝕性および耐熱性合成樹脂、例えばふっ素樹脂からなる外被覆部39によって被覆、溶着されている。
【0030】
すなわち、外被覆部39は、測温部27にあってリード線29の導出方向とは反対の先端側からそれら合成樹脂製チューブ37全体およびケーブル31の端部を、被覆、溶着している。
【0031】
外被覆部39は、例えば、溶融されたふっ素樹脂中に合成樹脂製チューブ37全体およびケーブル31ごと浸けることにより、それら合成樹脂製チューブ37全体およびケーブル31に溶融ふっ素樹脂を付着させ、図示しない成形型によって円柱状に成型されて形成されている。
【0032】
そして、合成樹脂製チューブ37は、外被覆部39より溶融温度が少なくとも1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上の熱可塑性の耐熱性合成樹脂、又は熱硬化性の耐熱性合成樹脂、例えばポリイミド樹脂から形成されている。
【0033】
そのため、ポリイミド樹脂は、12kV/0.006mm程度の耐電圧性を有するとともに耐熱性も良好であるから、ポリイミド樹脂から合成樹脂製チューブ37が形成されれば、これを薄く形成しても、耐電圧性および熱応答性を良好に維持可能であるうえ、測温部27等に当接するのみで溶着されないから、合成樹脂製チューブ37に対する測温部27やリード線29等のスライド変位も確保される。
【0034】
このような温度測定用センサ25は、上述した図5に示すように、薬液3を溜めた容器5内に挿入し、薬液3の温度に応じた電気信号をケーブル31を介して出力し、薬液3の温度を測定する。
【0035】
このように構成された本発明の温度測定用センサ25は、伝導熱に応じたレベルの測定信号に変換する測温素子とこれから測定信号を出力するリード線29とを有する測温部27と、この測温部27のリード線29に接続され測定信号を外部へ出力するケーブル31と、その測温部27が挿入されこれら測温部27からケーブル31端部までを被覆する耐電圧性の合成樹脂製チューブ37と、耐蝕性および耐熱性合成樹脂(ふっ素樹脂)の外被覆部39からなり、その測温部27にあってリード線29の導出方向とは反対の先端側からそれら合成樹脂製チューブ37全体およびケーブル31の端部を被覆するようこれらに溶着された外被覆部39とを具備し、その合成樹脂製チューブ37は、その外被覆部39より溶融温度が少なくとも1.2倍以上の熱可塑性の耐熱性合成樹脂、又は熱硬化性の耐熱性合成樹脂(ポリイミド樹脂)から成型されている。
【0036】
そのため、合成樹脂製チューブ37は、これを薄く形成しても、耐電圧性および熱応答性も良好であるうえ、測温部27に対するスライド変位が確保されるから、リード線29の断線も生じ難いし、外被覆部39に帯電した静電気がリード線29および芯線33等との間で放電し難く、外被覆部23にピンホールが生じ難くてリード線29および芯線33等が腐食する心配もない。
【0037】
すなわち、熱応答性に影響を与え易い外被覆部39の厚みを変更せずに、測温部27との間に薄い合成樹脂製チューブ37を介在させるだけで、良好な耐電圧性および熱応答性の確保が可能である。
【0038】
しかも、上記外被覆部39が、溶融された耐蝕性および耐熱性合成樹脂により、それら合成樹脂製チューブ37全体およびケーブル31に付着されて柱状に成型されてなるから、製造も簡単である。
【0039】
図3は、従来の特許文献1、2の構造および本発明の温度測定用センサ25について、各々ほぼ同一寸法に構成し、室温から沸騰水に浸漬させた時のセンサの指示値の応答を比較したときの応答比較特性である。
【0040】
これによれば、特許文献1の構造よりは、本発明の温度測定用センサ25の方が応答時間が早く、応答性も良好であり、特許文献2とほぼ同じ特性を示していることが分かる。
【0041】
また、図4は、従来の特許文献2の構造および本発明の温度測定用センサ25について、断線しやすさを確認したものであり、室温→260℃→室温の温度サイクルを繰返したとき、断線した時の温度変化の繰返し回数を示したものである。
【0042】
これによれば、本発明センサの温度測定用センサ25は、特許文献2の構成よりは、昇温降下に対して著しく断線し難いことが分かる。
【0043】
ところで、上述した本発明の温度測定用センサ25では、その測温部27が挿入されこれら測温部27からケーブル31端部までを合成樹脂製チューブ37で被覆したが、測温部27およびリード線29とケーブル31の芯線33との接続部を少なくとも被覆すれば、本発明の目的達成が可能である。
【0044】
また、合成樹脂製チューブ37は、耐電圧性が良好な合成樹脂であって、外被覆部39より溶融温度が少なくとも1.2倍以上の熱可塑性合成樹脂、又は硬化後は溶け難い熱硬化性合成樹脂が好適する。具体的には、上述したポリイミド樹脂(PI)の他、例えばポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)等が好ましいであろう。
【0045】
さらに、外被覆部39もふっ素樹脂に限らず、耐蝕性および耐熱性合成樹脂であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る温度測定用センサの実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る温度測定用センサの要部正面図である。
【図3】本発明に係る温度測定用センサの特性図である。
【図4】本発明に係る温度測定用センサの特性図である。
【図5】本発明および従来の温度測定用センサの使用例を示す断面図である。
【図6】従来の温度測定用センサの構成を示す縦断面図である。
【図7】従来の温度測定用センサの別の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1、25 温度測定用センサ
3 薬液
5 容器
7 蓋体
9 接続具
11、27 測温部(温度センサ)
13、29 リード線
15、31 ケーブル
17、33 芯線
19、35 絶縁チューブ
21 ふっ素樹脂チューブ
37 合成樹脂製チューブ
23、39 外被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導熱に応じたレベルの測定信号に変換する測温素子とこれから前記測定信号を出力するリード線とを有する測温部と、
この測温部の前記リード線に接続され前記測定信号を外部へ出力するケーブルと、
前記測温部が挿入されこの測温部、および前記リード線と前記ケーブルとの接続部を少なくとも被覆する耐電圧性の合成樹脂製チューブと、
耐蝕性および耐熱性合成樹脂からなり、前記測温部にあって前記リード線の導出方向とは反対の先端側から前記合成樹脂製チューブ全体および前記ケーブルの端部を被覆するようこれらに溶着された外被覆部と、
を具備し、
前記合成樹脂製チューブは、前記外被覆部より溶融温度が少なくとも1.2倍以上の熱可塑性の耐熱性合成樹脂、又は熱硬化性の耐熱性合成樹脂から成型されてなることを特徴とする温度測定用センサ。
【請求項2】
前記合成樹脂製チューブは、前記ケーブルの端部にも挿入されてこれを被覆する請求項1記載の温度測定用センサ。
【請求項3】
前記外被覆部はふっ素樹脂からなり、前記合成樹脂製チューブはポリイミド樹脂からなる請求項1又は2記載の温度測定用センサ。
【請求項4】
前記外被覆部は、溶融された前記耐蝕性および耐熱性合成樹脂が、前記合成樹脂製チューブ全体および前記ケーブルに付着されて柱状に成型されてなる請求項1〜3いずれか1記載の温度測定用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175257(P2010−175257A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14982(P2009−14982)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000250317)理化工業株式会社 (27)