説明

温度測定装置および温度センサ

【課題】被測定流体の圧力変化などによって保護管に引張力や押し込み力が作用しても、リード線に負荷がかかることがなく、また、液漏れなどが生ずることのない温度測定装置を提供すること。
【解決手段】保護管の内部に収容されたセンサ部と、センサ部と電気的に接続されたリード線と、を有する温度センサと、被測定流体の流路が形成された管継手本体と、を少なくとも備え、管継手本体に形成されている挿入孔に温度センサの保護管が挿入され、保護管が流路内に露出するように、温度センサが管継手本体に取り付けられている温度測定装置であって、温度センサの保護管には、伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材の一端側が接続されており、筒状部材に保護管から導出されたリード線が遊挿されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置および温度センサに関し、詳しくは、例えば、半導体製造時においてシリコンウェハなどを洗浄するために用いられる薬液や純水などの流体の温度を測定するための温度測定装置および温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体製造工程では、シリコンウェハの表面に付着した酸化物や不純物などを取り除くために、洗浄工程が実施されている。この洗浄工程では、例えばフッ酸,硝酸,塩酸,リン酸,フッ硝酸,硫酸,アンモニアなどからなる薬液を用いて、シリコンウェハの表面から酸化物を取り除いたり、純水を用いて、シリコンウェハの表面から不純物を取り除いたりすることが行なわれる。
【0003】
薬液や純水の洗浄能力は、その温度によって大きく変化する。このため、洗浄工程においては、温度測定装置などを用いて薬液や純水などの流体の温度を適切に管理する必要がある。
【0004】
図11は、このような半導体製造工程における洗浄工程で用いられる従来の温度測定装置を側面から示した概略断面図である。図12は、従来の温度センサを側面から示した概略断面図である。
【0005】
この従来の温度測定装置100は、図11に示したように、その内部に薬液や純水などの被測定流体が流れる流路130Aが形成された管状の管継手本体130に、温度センサ110が取り付けられることで構成されている。
【0006】
温度センサ110は、図12に示したように、有底筒状の保護管114の内部に収容されたセンサ部112と、このセンサ部112と電気的に接続された3本のリード線116,116,116と、を有している。センサ部112およびリード線116は、保護管114の内部に注入された樹脂製の充填材125などよって、保護管114の内部に固定されている。また、3本のリード線116,116,116は、シールド線120によって被覆された状態で保護管114の開口端114aから導出されて、例えば不図示の表示機器などに接続されている。
【0007】
また、図11に示したように、温度センサ110の保護管114は、取付継手132の中央部に形成されている挿入孔132aに挿入されている。この取付継手132は、その一端側が管継手本体130と螺合によって固定されているとともに、この取付継手132の他端側には、スリーブ124を介してナット134が螺合されており、これにより、シール性を確保しつつ、保護管114が取付継手132に固定されるようになっている。
【0008】
そして、図11に示したように、この温度センサ110は、その保護管114が管継手本体130の流路130A内に露出した状態となるように、管継手本体130に固定されている。なお、この図11に示した状態において、保護管114の先端は流路130Aの内周面とは当接していない。すなわち保護管114は、いわゆる片持ち梁構造で、管継手本体130と固定されている。
【0009】
このようにして構成される従来の温度測定装置100は、管継手本体130の流路130Aを流れる被測定流体の温度を、保護管114を介してセンサ部112で検知し、その温度データを電気抵抗などの形で、リード線116を介して不図示の表示機器などに伝達されるようになっている。
【0010】
このような従来の温度測定装置100における温度センサ110の取付構造については、例えば、特許文献1などに開示されている。また、この従来の温度センサ110の保護管114は、特許文献2などに開示されているように、耐薬液性に優れたPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂などの合成樹脂から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平1−54599号公報
【特許文献2】特開2001−83018号公報
【特許文献3】特開平10−149893号公報
【特許文献4】特開2009−58270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述したような温度測定装置100にあっては、保護管114が流路130Aの内部に露出する構造であるため、被測定流体の流体力やその圧力変化などによって、保護管114が流路130Aの方向に引っ張られたり、逆に取付継手132の方向へ押し込まれたりすることがある。そして、保護管114にこのような引張力や押し込み力が作用した場合には、リード線116のセンサ部112との接続部(図中のA部)に負荷がかかり、リード線116の破断の原因となることがあった。
【0013】
また、保護管114にこのような引張力や押し込み力が作用すると、保護管114のスリーブ124との当接部分(図中のB部)にも負荷がかかり、保護管114とスリーブ124との間に隙間が形成され、シール性が失われて液漏れが生ずることがあった。
【0014】
また、上述した従来の温度測定装置100は、取付継手132およびナット134を用いて保護管114を管継手本体130に固定する構造であり、図11に示したように、保護管114が管継手本体130の外側に大きく突出するように構成されている。このように、保護管114が管継手本体130の外側に大きく突出していると、この突出している部分から被測定流体以外の温度が伝達されてしまい、温度センサ110の測定精度が低下するとの問題があった。また、保護管114が管継手本体130の外側に大きく突出するように構成されていると、温度測定装置100の小型化が難しいとの問題があった。
【0015】
また、半導体製造時に用いられる薬液や純水は、概して電気抵抗率が高いため、このような流体を流路130Aに流すと、保護管114などに静電気が帯電してしまう。そして、保護管114に静電気が帯電すると、センサ部112で検知される温度データに誤差が生ずるため、上述した従来の温度測定装置100においては、上述した構成の他に、例えば静電気を放電するための静電気除去装置(例えば特許文献3)を別途設置するなどの対策を講ずる必要があり、半導体製造装置のコスト高を招くとの問題があった。
【0016】
また、保護管114には商用電源などからも電源ノイズが伝播するため、上述した従来の温度測定装置100においては、上述した構成の他に、例えばノイズ減衰器(例えば特許文献4)によってノイズを除去するなどの対策を講ずる必要があり、温度測定装置100の大型化や半導体製造装置のコスト高を招くとの問題があった。
【0017】
本発明はこのような現状に鑑みなされた発明であって、被測定流体の圧力変化などによって保護管に引張力や押し込み力が作用しても、リード線に負荷がかかることがなく、また、液漏れなどが生ずることのない温度測定装置を提供することを目的としている。
【0018】
また本発明は、保護管の長さを出来るだけコンパクトにすることで、測定精度の低下を防ぐとともに、装置の小型化が可能となる温度測定装置を提供することを目的とする。
また本発明は、保護管に帯電した静電気や電源ノイズなどを簡単な構造で効果的に除去することができる温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の温度測定装置は、
保護管の内部に収容されたセンサ部と、該センサ部と電気的に接続されたリード線と、を有する温度センサと、
被測定流体の流路が形成された管継手本体と、を少なくとも備え、
前記管継手本体に形成されている挿入孔に前記温度センサの保護管が挿入され、前記保護管が前記流路内に露出するように、前記温度センサが前記管継手本体に取り付けられている温度測定装置であって、
前記温度センサの保護管には、伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材の一端側が接続されており、該筒状部材に前記保護管から導出されたリード線が遊挿されていることを特徴とする。
【0020】
このように構成されていれば、筒状部材に遊挿されたリード線は、空間的に余裕のある状態で筒状部材に保持されるため、保護管に引張力や押し込み力が作用した場合であっても、リード線のセンサ部との接続部に過度の負荷がかかるのを防止することができる。
【0021】
また、保護管が伸縮および屈曲自在な筒状部材と接続されているため、保護管に引張力や押し込み力が作用した場合であっても、その引張力や押し込み力が筒状部材の変形によって吸収されるため、保護管に過度の負荷がかかることも防止することができる。
【0022】
また、上記発明において、
前記リード線が遊挿されている筒状部材は、前記管継手本体の外側において屈曲した状態で固定されていることが望ましい。
【0023】
このように、リード線が遊挿されている筒状部材を屈曲させて固定すれば、リード線に適度な遊び(弛み)を簡単に与えることができるため、簡単な構造で、リード線のセンサ部との接続部に負荷がかかるのを防止することができるようになる。
【0024】
また、筒状部材を屈曲した状態で固定することで、温度測定装置を小型化することも可能となる。
上記発明において、
前記筒状部材が導電性の材料によって形成されているとともに、
前記保護管と前記筒状部材とが電気的に接続されていることが望ましい。
【0025】
このように構成されていれば、保護管に帯電した静電気や電源ノイズなどを、筒状部材を介して除去することができるため、簡単な構造で、保護管に帯電した静電気や電源ノイズなどを除去することが可能となる。
【0026】
この際、上記発明において、
前記筒状部材の他端側には、この筒状部材の他端側から導出されたリード線を被覆するシールド線の一端側が接続され、該シールド線のシールドと前記筒状部材とが電気的に接続されているとともに、
前記シールド線の他端側には、該シールド線のシールドと電気的に接続されるように、アース線が接続されていることが望ましい。
【0027】
このように構成されていれば、保護管に帯電した静電気や電源ノイズなどを、筒状部材およびシールド線を介してアース線によって除去することができるため、より簡単な構造で、保護管に帯電した静電気や電源ノイズなどを除去することが可能となる。
【0028】
また、上記発明において、
前記管継手本体の挿入孔に挿入された前記温度センサの保護管が、前記管継手本体の外側に突出しないように構成されていることが望ましい。
【0029】
このように、保護管が管継手本体の外側に突出しないように構成することで、必要最小限の長さからなるコンパクトな保護管とすることができる。よって、保護管の長さが長いことに起因する測定精度の低下を防ぐことができるとともに、温度測定装置を小型することが可能となる。
【0030】
また、上記発明において、
前記管継手本体の内周面には凹部が形成されており、
前記管継手本体の挿入孔に挿入された前記保護管の先端が、前記凹部に嵌挿されるように構成されていることが望ましい。
【0031】
このように構成されていれば、挿入孔に挿入された保護管は、その両端が支持された状態で管継手本体に固定されるため、被測定流体の圧力変化などに伴って保護管に作用する引張力や押し込み力そのものを小さく抑えることができる。
【0032】
また、上記発明において、
前記管継手本体の挿入孔には、前記保護管と周状に当接するシール部材が装着されていることが望ましい。
【0033】
このように構成されていれば、保護管に引張力や押し込み力が作用して保護管が変位した場合であっても、保護管と周状に当接するシール部材によって液漏れを防ぐことができる。
【0034】
また、上記発明において、
前記伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材がコイルスプリングであることが望ましい。
【0035】
上述した本発明の温度測定装置における筒状部材としては、汎用のコイルスプリングを好適に用いることができる。
また、上記発明において、
前記温度センサの保護管が、炭素を主成分とした材料から形成されていることが望ましく、
この際、前記炭素を主成分とした材料が、アモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかであることが望ましい。
【0036】
このように、保護管が炭素を主成分とした材料、特に、アモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかから形成されていれば、被測定流体として薬液を用いた場合であっても、保護管が腐食することがなく、所望の測定精度を長期間維持することができる。また、温度応答性に優れるため、高い精度の温度測定装置とすることができる。
【0037】
また、炭素を主成分とした材料は電気伝導性に優れるため、保護管に帯電した静電気や電源ノイズを効果的に除去することが可能となる。
また、本発明の温度センサは、
保護管の内部に収容されたセンサ部と、
前記センサ部と電気的に接続されたリード線と、
屈曲自在に形成された筒状部材と、を少なくとも備えた温度センサであって、
前記保護管には前記筒状部材の一端側が接続されるとともに、
前記保護管から導出されたリード線が、前記筒状部材に遊挿されていることを特徴とする。
【0038】
このような温度センサであれば、上述した本発明の温度測定装置に用いられる温度センサとして、特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の温度測定装置によれば、被測定流体の圧力変化などによって保護管に引張力や押し込み力が作用しても、リード線に負荷がかかることがなく、リード線の断線などの問題は生じない。また、液漏れなどが生ずることもない。
【0040】
また、本発明の温度測定装置によれば、保護管の長さを出来るだけコンパクトにすることができるため、測定精度の低下を防ぐとともに、装置の小型化が可能となる。
また、本発明の温度測定装置によれば、保護管に帯電した静電気や電源ノイズなどを簡単な構造で効果的に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の温度測定装置を側面から示した概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の温度センサを側面から示した概略断面図である。
【図3】図3は、図2のA部を拡大して示した概略断面図である。
【図4】図4の(a)は、図2のa−a線における断面図、図4の(b)は、図2のb−b線における断面図である。
【図5】図5は、本発明のシールド線の一端側に形成されているシールド露出部の形成方法を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明のシールド線の他端側に形成されているシールド部の形成方法を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の温度センサの組み立て方法を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の温度センサの組み立て方法を説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の管継手本体を側面から示した断面図である。
【図10】図10は、本発明の温度測定装置の組み立て方法を説明するための図である。
【図11】図11は、従来の温度測定装置を側面から示した概略断面図である。
【図12】図12は、従来の温度センサを側面から示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の温度測定装置を側面から示した概略断面図である。図2は、本発明の温度センサを側面から示した概略断面図である。図3は、図2のA部を拡大して示した概略断面図である。図4の(a)は、図2のa−a線における断面図、図4の(b)は、図2のb−b線における断面図である。
【0043】
本発明の温度測定装置および温度センサは、例えば、半導体製造時において、シリコンウェハなどを洗浄するために用いられる薬液や純水などの被測定流体の温度を測定するために用いられるものである。
【0044】
図1に示したように、本発明の温度測定装置1は、管継手本体30に温度センサ10が取り付けられることで構成されている。
以下、本発明の温度測定装置1および温度センサ10を説明するにあたり、先ず、温度センサ10について詳細に説明するとともに、次いで温度測定装置1について詳細に説明するものとする。
<温度センサ10>
本発明の温度センサ10は、図2に示したように、有底筒状の保護管14の内部に収容されたセンサ部12と、このセンサ部12と電気的に接続された3本のリード線16,16,16と、を有している。
【0045】
保護管14は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂などの合成樹脂や、ステンレス,チタンなどの金属によって形成することも可能であるが、炭素を主成分とした材料から形成されていることが好ましく、特に、アモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかであることが好ましい。炭素を主成分とした材料は、耐薬液性に優れるとともに、温度応答性にも優れるため、保護管14をこのような炭素を主成分とした材料から形成すれば、被測定流体として薬液を用いた場合であっても、所望の測定精度を長期間維持することができるとともに、温度応答性に優れた高精度の温度センサ10とすることができる。
【0046】
また、炭素を主成分とした材料は電気伝導性に優れるため、後述するように、保護管14に帯電した静電気や電源ノイズを効果的に除去することが可能となる。
センサ部12は、保護管14を介して被測定流体の温度を検知する部分であり、例えば熱電対や白金抵抗素子などから構成されている。センサ部12で検知された被測定流体の温度は、例えば電気抵抗などの形で、リード線16を介して、別途に配置される不図示の表示機器などに伝達されるようになっている。
【0047】
なお、図1において、センサ部12には3本のリード線16,16,16が電気的に接続されているが、本発明において、リード線16の本数は特に限定されるものではない。
そして、上述したセンサ部12およびリード線16は、図2に示したように、保護管14の内部に注入された樹脂製の充填材25などによって、保護管14の内部に固定されている。
【0048】
また、図2に示したように、保護管14の開口端14aには、伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材18の一端側が接続されている。この筒状部材18は、その内部に保持されるリード線16を保護するために用いられるものである。
【0049】
本実施形態において、この保護管14と筒状部材18とは、筒状部材18の一端側の内部に保護管14の開口端14aが圧入されることで接続されている。この際、後述するように、筒状部材18が導電性の材料によって形成されていれば、筒状部材18と保護管14とは、電気的にも接続された状態で接続される。
【0050】
そして、図2に示したように、保護管14の開口端14aから導出されているリード線16は、上述した筒状部材18に遊挿されている。ここで遊挿とは、空間的に余裕のある状態に挿入することを意味する。本発明において、筒状部材18は、図2に示したように、3本のリード線16,16,16が挿入されても、その内周面とリード線16との間に所定の隙間dが形成されるように、十分に余裕のある内径に形成されている。そして、筒状部材18に遊挿されたリード線16は、筒状部材18の内部において空間的に余裕のある状態で保持されている。
【0051】
本発明において、このような伸縮および屈曲自在な筒状部材18としては、例えば汎用のコイルスプリングを好適に用いることができる。また、筒状部材18の材料は、特に限定されるものではないが、例えばステンレスや、りん青銅、ベリリウム銅などの導電性の材料によって形成されていることが好ましい。このように、筒状部材18が導電性材料によって形成されていれば、後述するように、保護管14に帯電した静電気や電源ノイズなどを簡単に除去することが可能となる。
【0052】
また、図2に示したように、筒状部材18の他端側には、シールド線20の一端側が接続されている。このシールド線20は、図4の(a)に示したように、例えばPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂などからなる絶縁性の外被20aの内側に、編組された銅線からなる導電性のシールド20bが形成された2重構造となっている。
【0053】
そして、このシールド線20によって、筒状部材18の他端側から導出された3本のリード線16,16,16を被覆することで、リード線16に電源ノイズが混入するのを防止している。
【0054】
また、図2および図3に示したように、シールド線20の一端側には、シールド20b´が露出したシールド露出部24が形成されている。このシールド露出部24は、図5に示したように、シールド線20の一端側の外被20aを切除し、その切除した外被20aの内側にあるシールド20b´を外側に折り返すことで形成されている。
【0055】
したがって、図4の(b)に示したように、このシールド露出部24の断面構造は、外被20aを挟んでその内側にシールド20b、その外側にシールド20b´が積層された3重構造に形成されている。また、図3に示したように、このシールド露出部24の内側のシールド20bと外側のシールド20b´とは、シールド線20の一端部において連続しており、電気的にも接続された状態となっている。
【0056】
そして、このシールド露出部24を筒状部材18の他端側の内部に圧入することで、シールド露出部24の外側のシールド20b´と筒状部材18の内周面とが当接し、筒状部材18の他端側とシールド線20の一端側とが電気的にも接続した状態で接続されている。
【0057】
また、図2および図3に示したように、シールド線20の他端側には、シールド部26が形成されている。このシールド部26は、図6に示したように、シールド線20の他端側の外被20aを切除し、その切除した外被20aの内側にあるシールド20bを捩ることで形成されている。
【0058】
そして、このシールド20bには、アース線22の一端側が電気的に接続している。そして、このアース線22の他端側は、例えば不図示の地面などに接地されている。
このようにして構成される本発明の温度センサ10は、例えば、図7および図8に示すように組み立てられる。すなわち先ず、リード線16を被覆したシールド線20を用意し、そのリード線16とセンサ部12とを電気的に接続した状態で接続する。また、シールド線20の一端側には、上述したようにシールド露出部24を形成するとともに、その他端側には、上述したようにシールド部26を形成する。そして、このシールド部26にアース線22の一端側を電気的に接続した状態で接続する。
【0059】
そして、図7に示したように、筒状部材18の内部にセンサ部12およびリード線16を挿通させるようにして、センサ部12の先端側から筒状部材18を装着する。この際、上述したように、リード線16は筒状部材18の内部に遊挿されており、筒状部材18の内部において空間的に余裕のある状態で保持されている。そして、この筒状部材18の他端側の内部にシールド線20のシールド露出部24を圧入して、筒状部材18とシールド線20とを電気的に接続した状態で接続する。
【0060】
次に、図8に示したように、保護管14の開口端14aからセンサ部12およびリード線16の一部を保護管14の内部に挿入する。そして、保護管14の開口端14aを筒状部材18の一端側の内部に圧入して、筒状部材18と保護管14とを接続する。
【0061】
そして最後に、保護管14の内部に樹脂製の充填材25などを注入し、センサ部12およびリード線16を保護管14の内部に固定することで、本発明の温度センサ10が組み立てられる。
【0062】
このようにして構成される本発明の温度センサ10は、筒状部材18に遊挿されたリード線16が、空間的に余裕のある状態で筒状部材18に保持されるため、保護管14に多少の変位が生じた場合であっても、リード線16には大きな引張力や押し込み力が作用しない構造になっている。このため、後述するように、保護管14に引張力や押し込み力が作用した場合であっても、リード線16のセンサ部12との接続部には過度の負荷がかからないようになっている。
【0063】
また、保護管14とシールド線20との間が伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材18によって接続されているため、図2に示したように、この筒状部材18を例えば略直角方向に屈曲することも可能である。したがって、このような温度センサ10にあっては、リード線16が遊挿されている筒状部材18を屈曲させることで、リード線16に適度な遊び(弛み)を簡単に与えることができるとともに、後述する温度測定装置1を小型化することも可能となる。
<温度測定装置1>
次に、本発明の温度測定装置1について詳細に説明する。
【0064】
本発明の温度測定装置1は、上述したように、管継手本体30に上述した温度センサ10が取り付けられることで構成されている。
図9は、本発明の管継手本体を側面から示した断面図である。
【0065】
図9に示したように、管継手本体30の内部には、被測定流体の流路である流路30Aが形成されている。また、管継手本体30には、その外周面から流路30Aに連通する挿入孔32が形成されている。そして、この挿入孔32に上述した温度センサ10の保護管14が挿入されることで、温度センサ10が管継手本体30に取り付けられる。
【0066】
なお、本発明において管継手本体30の材料は特に限定されないが、例えばPFAなどの耐薬液性に優れる合成樹脂によって形成することができる。
また、図9に示したように、上述した挿入孔32は、大径部32a、中径部32b、および小径部32cの径が異なる3つの部分から構成されており、外周面から流路30Aに向かって段々とその径が小さくなるように形成されている。
【0067】
そして、図1に示したように、この挿入孔32に保護管14が挿入され、温度センサ10が管継手本体30に取り付けられた状態において、上述した中径部32bには、Oリングなどの環状のシール部材36が装着されるとともに、上述した大径部32aには、このシール部材36を固定するための環状のシール押さえ部材38が装着されている。
【0068】
この際、図10に示したように、上述したシール部材36およびシール押さえ部材38を予め保護管14に装着した状態で、保護管14をその先端側から挿入孔32へと挿入することで、シール部材36およびシール押さえ部材38を、挿入孔32の所定の位置に簡単に装着することができる。そして、シール押さえ部材38および保護管14の上に、例えば固定板28などの固定部材を配置し、この固定板28と管継手本体30とをネジ29によってネジ止めすることで、温度センサ10を管継手本体30に固定することができる。
【0069】
また、図1に示したように、管継手本体30の外周面には、その側面に開口部40aが形成されたカバー部材40が配置されている。このカバー部材40は、例えば外部にある腐食性ガスなどから、筒状部材18およびこの内部に保持されているリード線16を保護するために配置されるものであり、管継手本体30から突出している筒状部材18を覆うようにして配置されている。また、カバー部材40の開口部40aの外側には、筒状部材18に接続するシールド線20を保持するケーブル固定部材42が装着されている。
【0070】
この際、管継手本体30から突出している筒状部材18は、略直角方向に屈曲した状態となっている。このように、筒状部材18が略直角に屈曲した状態になっていれば、その中に遊挿されているリード線16は、適度に遊び(弛み)を持った弛緩した状態で筒状部材18に保持されることとなる。
【0071】
なお、本発明において、筒状部材18の屈曲角度は特に限定されないが、屈曲角度が直角に近いほど、筒状部材18の中に遊挿されているリード線16が、適度に遊び(弛み)を持った弛緩した状態で筒状部材18に保持されることとなるため、好ましいものである。また、ここで「略直角」との意味は、伸縮および屈曲自在な部材を屈曲させるにあたり、おおよそ直角に屈曲しているとみなせる程度の状態を意味し、おおよそ90度に対して±10度ぐらいの幅を有しているものである。
【0072】
そして、筒状部材18の他端側がカバー部材40の開口部40a内に位置し、筒状部材18の他端側に接続するシールド線20が、上述したケーブル固定部材42によって固定されることで、管継手本体30から突出している筒状部材18が、略直角方向に屈曲された状態で固定されている。
【0073】
このようにして構成される本発明の温度測定装置1は、流路30Aを流れる被測定流体の温度を、保護管14の内部に収容されているセンサ部12で検知し、その温度データを電気抵抗などの形で、リード線16を介して、不図示の表示機器などに伝達するように構成されている。
【0074】
この際、本発明の温度測定装置1は、上述したように、リード線16が筒状部材18の内部において、適度に遊び(弛み)を持った弛緩した状態で保持されている。したがって、被測定流体の流体力や圧力変化などによって保護管14に引張力や押し込み力が作用し、保護管14に多少の変位が生じた場合であっても、リード線16に大きな引張力や押し込み力が作用しない構造になっている。よって、リード線16のセンサ部12との接続部に負荷がかかることがなく、リード線16が破断するのを防止することができるようになっている。
【0075】
なお、上述した温度測定装置1において、リード線16が筒状部材18に遊挿されていれば、リード線16が筒状部材18の内部において空間的に余裕のある状態で保持されるため、筒状部材18が屈曲されていなくても、リード線16の破断防止にある程度の効果は期待できる。しかしながら、上述した温度測定装置1のように、筒状部材18がある程度の角度で屈曲、好ましくは略直角に屈曲されていれば、リード線16が筒状部材18の内部において、適度に遊び(弛み)を持った弛緩した状態で保持されるため、リード線16の破断防止により大きな効果を奏するものである。
【0076】
また、本発明の温度測定装置1では、上述したように、保護管14が伸縮および屈曲自在な筒状部材18と接続されているため、保護管14に引張力や押し込み力が作用した場合であっても、その引張力や押し込み力を筒状部材18の変形によって吸収することができるようになっている。このため、保護管14に過度の負荷がかかるのを防止できるようになっている。
【0077】
またこの際、上述したように、管継手本体30の挿入孔32に環状のシール部材36が装着されていれば、このシール部材36と保護管14とが周状に当接するため、保護管14に多少の変位が生じた場合であっても、保護管14と挿入孔との間から薬液や純水などの被測定流体が漏れるのを防ぐことができる。
【0078】
また、本発明の温度測定装置1では、上述したように、流路30Aの内周面に形成されている凹部34に、挿入孔32に挿入された保護管14の先端が嵌挿されている。したがって、挿入孔32に挿入された保護管14は、その両端が支持された状態で管継手本体30に固定されるため、被測定流体の圧力変化などに伴って保護管14に作用する引張力や押し込み力そのものを小さく抑えることができるように構成されている。
【0079】
また、本発明の温度測定装置1では、上述したように、筒状部材18が略直角方向に屈曲した状態で固定されているため、従来の温度測定装置100と比べて装置の小型化を図ることができるようになっている。
【0080】
さらに、図1に示したように、挿入孔32に挿入された保護管14が、管継手本体30の外側に突出しないように構成することで、温度測定装置1の更なる小型化を図ることが可能となる。
【0081】
すなわち、図11などに示した従来の温度測定装置100にあっては、取付継手132とナット134によって保護管114を管継手本体130に固定する構造であったため、保護管114は必然的に管継手本体130の外側に突出せざるを得なかった。これに対して、本発明の温度測定装置1では、取付継手やナットなどを用いずとも、保護管14を管継手本体30に固定することができるため、保護管14が管継手本体30の外側に突出しないように構成することが可能である。
【0082】
また、保護管14が管継手本体30の外側に突出しないように構成することで、保護管14に被測定流体以外の温度が伝達されて、測定精度が低下するとの問題を回避することも可能となる。
【0083】
また、本発明の温度測定装置1では、上述したように、筒状部材18が導電性の材料によって形成されているとともに、保護管14と筒状部材18とが電気的に接続されている。また、筒状部材18の他端側には、シールド線20のシールド露出部24が電気的に接続されているとともに、シールド線20の他端側のシールド部26には、アース線22が電気的に接続されている。したがって、保護管14に帯電した静電気や電源ノイズなどを、筒状部材18およびシールド線20を介してアース線22によって簡単に除去することができるようになっている。
【0084】
よって、本発明の温度測定装置1においては、従来の温度測定装置100のように静電気除去装置やノイズ減衰器などを別途設置する必要がなく、半導体製造装置の低コスト化や、温度測定装置1の小型化を図ることが可能である。
【0085】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0086】
1 温度測定装置
10 温度センサ
12 センサ部
14 保護管
14a 開口端
16 リード線
18 筒状部材
20 シールド線
20a 外被
20b,20b´ シールド
22 アース線
24 シールド露出部
25 充填材
26 シールド部
28 固定板
29 ネジ
30 管継手本体
30A 流路
32 挿入孔
32a 大径部
32b 中径部
32c 小径部
34 凹部
36 シール部材
38 シール押さえ部材
40 カバー部材
40a 開口部
42 ケーブル固定部材
100 温度測定装置
110 温度センサ
112 センサ部
114 保護管
114a 開口端
116 リード線
120 シールド線
124 スリーブ
125 充填材
130 管継手本体
130A 流路
132 取付継手
132a 挿入孔
134 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護管の内部に収容されたセンサ部と、該センサ部と電気的に接続されたリード線と、を有する温度センサと、
被測定流体の流路が形成された管継手本体と、を少なくとも備え、
前記管継手本体に形成されている挿入孔に前記温度センサの保護管が挿入され、前記保護管が前記流路内に露出するように、前記温度センサが前記管継手本体に取り付けられている温度測定装置であって、
前記温度センサの保護管には、伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材の一端側が接続されており、該筒状部材に前記保護管から導出されたリード線が遊挿されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記リード線が遊挿されている筒状部材が、前記管継手本体の外側において屈曲した状態で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記筒状部材が導電性の材料によって形成されているとともに、
前記保護管と前記筒状部材とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記筒状部材の他端側には、この筒状部材の他端側から導出されたリード線を被覆するシールド線の一端側が接続され、該シールド線のシールドと前記筒状部材とが電気的に接続されているとともに、
前記シールド線の他端側には、該シールド線のシールドと電気的に接続されるように、アース線が接続されていることを特徴とする請求項3に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記管継手本体の挿入孔に挿入された前記温度センサの保護管が、前記管継手本体の外側に突出しないように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記管継手本体の内周面には凹部が形成されており、
前記管継手本体の挿入孔に挿入された前記保護管の先端が、前記凹部に嵌挿されるように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の温度測定装置。
【請求項7】
前記管継手本体の挿入孔には、前記保護管と周状に当接するシール部材が装着されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の温度測定装置。
【請求項8】
前記伸縮および屈曲自在に形成された筒状部材がコイルスプリングであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の温度測定装置。
【請求項9】
前記温度センサの保護管が、炭素を主成分とした材料から形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の温度測定装置。
【請求項10】
前記炭素を主成分とした材料が、アモルファスカーボン,炭化ケイ素,グラファイト,ダイヤモンドライクカーボンのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の温度測定装置。
【請求項11】
保護管の内部に収容されたセンサ部と、
前記センサ部と電気的に接続されたリード線と、
屈曲自在に形成された筒状部材と、を少なくとも備えた温度センサであって、
前記保護管には前記筒状部材の一端側が接続されるとともに、
前記保護管から導出されたリード線が、前記筒状部材に遊挿されていることを特徴とする温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−225739(P2012−225739A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92907(P2011−92907)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)