説明

温度調整装置、基板貼り合せ装置および半導体装置の製造方法

【課題】基板貼り合せ装置において、トッププレートおよび基板ホルダ等の外周部が輻射により放熱して冷えると、トッププレートおよび基板ホルダの中心部が凸形状となり、トッププレートと基板ホルダとの接触熱抵抗が変化して、外周部がより冷える不安定状態になる。
【解決手段】一対の基板ホルダを間に挟んで、一対の基板ホルダの間に重ね合せられた複数の基板を保持する一対のステージと、ステージにおいて基板ホルダを保持する領域を加熱または冷却するホルダ温度調整部と、基板ホルダよりも外周側を加熱または冷却する外周温度調整部とを備える温度調整装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整装置、基板貼り合せ装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路が形成された2枚のウエハを、接合すべき電極同士が接触するように重ね合わせて、加圧および加熱を行いながら当該2枚のウエハを接合するウエハ接合装置が記載されている。ここで、ウエハは、ウエハを保持したウエハホルダを挟持する上下トッププレートが加熱されてその熱伝導によって加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−49066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ウエハ接合装置において、加熱された上下トッププレートからの熱伝導によりウエハ等が加熱される場合には、互いに接していないトッププレートの外周部、およびウエハホルダの外周部が輻射により放熱して冷えるおそれがある。外周部が冷えると、ウエハ面内の温度分布が不均一になって、安定なウエハ接合ができなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、一対の基板ホルダを間に挟んで、一対の基板ホルダの間に重ね合せられた複数の基板を保持する一対のステージと、ステージにおいて基板ホルダを保持する領域を加熱または冷却するホルダ温度調整部と、基板ホルダよりも外周側を加熱または冷却する外周温度調整部とを備える温度調整装置が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様においては、上記温度調整装置と、一対のステージを加圧して複数の基板を貼り合せる加圧装置とを備える基板貼り合せ装置が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様においては、回路パターンが周期的に複数形成された複数の基板を用意する段階と、複数の基板を重ね合せて保持した一対の基板ホルダを、一対のステージの間に挟む段階と、ステージにおいて一対の基板ホルダを保持する領域を加熱する段階と、一対の基板ホルダよりも外周側を加熱する段階と、一対の基板ホルダを介して加熱された一対の基板を取り出して個片化する段階とを備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施態様である基板貼り合せ装置100の構成を概略的に示す。
【図2】基板貼り合せ装置100により基板を接合する状態を示す。
【図3】下ステージに係る温度調整装置を概略的に示す。
【図4】ロボットアームにより基板および基板ホルダを下ステージに載置する過程を概略的に示す。
【図5】上下ステージにより基板および基板ホルダを保持する状態を示す。
【図6】下ステージに係る温度調整装置の他の実施態様を概略的に示す。
【図7】基板貼り合せ装置300の構造を概略的に示す。
【図8】基板貼り合せ装置400の構造を概略的に示す。
【図9】半導体装置の製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、一実施態様である基板貼り合せ装置100の構成を概略的に示す。基板貼り合せ装置100は、気密室110と、温度調整装置120と、加圧装置190とを備える。温度調整装置120および加圧装置190は、気密室110の内部に収納され、設置される。
【0012】
温度調整装置120は、上ステージ130と、下ステージ140と、上ホルダ温度調整部150と、下ホルダ温度調整部160と、上外周温度調整部170と、下外周温度調整部180とを有する。上ステージ130は、上トッププレート132を含み、下ステージ140は、下トッププレート142を含む。
【0013】
上ステージ130は、気密室110の天板に固定される。下ステージ140は、加圧装置190の昇降部192の上部に取り付けられる。下ステージ140は、昇降部192の昇降に伴って、上ステージ130に対して近接および離間することができる。上トッププレート132は、上ステージ130の下面に設けられ、下トッププレート142は、下ステージ140の上面に設けられる。
【0014】
上ステージ130および下ステージ140は、上トッププレート132および下トッププレート142を介して、一対の基板ホルダを間に挟んで、当該一対の基板ホルダの間に重ね合わせられた複数の基板を上下方向から保持する。基板貼り合せ装置100に装填される基板は、単体のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板、セラミックス基板等の他、それらに素子、回路、端子等が形成されたものであってよい。装填された基板が、既に複数のウエハを積層して形成された積層基板である場合もある。
【0015】
加圧装置190は、昇降部192と、ベース194とを有する。ベース194は、気密室110の底板に設置される。ベース194は、シリンダー部分を含む。昇降部192は、ベース194のシリンダー部分と結合するピストン部分を有する。昇降部192は、外部からの制御信号により上下昇降する。
【0016】
図2は、基板貼り合せ装置100により基板を接合する状態を示す。接合すべき2枚の基板204は、基板貼り合せ装置100とは別途設けられるアライナーにより、接合すべき電極同士が接触するように位置合せされて重ね合わせられる。さらに、当該2枚の基板204は、2枚の基板ホルダ202により、位置ずれが起こらないように例えば基板ホルダ202の一方の磁石と他方の磁性体の結合により、仮接合された状態で保持される。以下、この状態にある基板および基板ホルダを「基板−基板ホルダユニット」と称する。基板−基板ホルダユニットを下トッププレート142に載置した後、昇降部192を上昇させると、図2のように、上トッププレート132および下トッププレート142により基板−基板ホルダユニットを挟む状態になる。
【0017】
加圧装置190は、加圧制御信号に従って、昇降部192を上昇させ、上トッププレート132および下トッププレート142を介して、2枚の基板204に所定の圧力を加えて、本接合する。加圧することにより、2枚の基板204の間に接合すべき電極同士を均一に接触させることができ、均一な接合が実現できる。
【0018】
温度調整装置120は、上ステージ130の中に設けられた上ホルダ温度調整部150、下ステージ140の中に設けられた下ホルダ温度調整部160、上ホルダ温度調整部150よりも外周側に配された上外周温度調整部170、および、下ホルダ温度調整部160よりも外周側に配された下外周温度調整部180を有する。温度調整装置120の加熱により、接合する2枚の基板204における電極接合面を活性化することができ、電極同士を確実に接合することができる。さらに、温度調整装置120の積極的な冷却により、基板−基板ホルダユニットの温度がロボットアームにより取り出せる温度になるまでの時間が短縮され、接合後の基板を取り出して次の基板を迅速に投入できるので、生産のスループットを向上することができる。
【0019】
上ホルダ温度調整部150は、基板ホルダ202を保持する領域である上トッププレート132を加熱又は冷却する。同様に、下ホルダ温度調整部160は、基板ホルダ202を保持する領域である下トッププレート142を加熱又は冷却する。上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160は、上トッププレート132および下トッププレート142を介して、上トッププレート132および下トッププレート142により保持される基板−基板ホルダユニットを加熱又は冷却する。
【0020】
上外周温度調整部170は、上ステージ130の外周から、上トッププレート132に接する基板ホルダ202の外周を覆うように下方に延伸する。これにより上外周温度調整部170は、基板ホルダ202よりも外周側を加熱又は冷却することができる。
【0021】
下外周温度調整部180は、下ステージ140の外周から、下トッププレート142に接する基板ホルダ202の外周を覆うように上方に延伸する。下外周温度調整部180は、基板ホルダ202よりも外周側を加熱又は冷却することができる。
【0022】
気密室110は、温度調整装置120および加圧装置190を外部に対して気密に収容する。気密室110において、その天板に上ステージ130が固定され、その底板に加圧装置190のベース194が固定される。気密室110は、加圧装置190により基板に加圧する場合に、装置の反力により変形すること防ぐ目的で、高剛性材料により形成される。気密室110は、基板の貼り合せ過程において一定の真空度に保たれる。これにより基板204の酸化を防ぎ、基板204の汚染を低減できる。
【0023】
気密室110の壁は、断熱材から形成される。よって、温度調整装置120により基板を加熱する場合に、外部への熱輻射が遮断され、ロボットアーム等周辺に存在する装置、機器への悪影響を防ぎ、高精度に基板の貼り合せを実現できる。
【0024】
図3は、下ステージ140に係る温度調整装置120を概略的に示す。下ステージ140の中に設けられる下ホルダ温度調整部160は、加熱部162と、冷却部164と、ヒートコントローラHT1を有する。
【0025】
加熱部162は、ヒートコントローラHT1によって、温度センサーが検知した温度に基づいて出力する熱量を制御しながら、下トッププレート142を加熱する。加熱部162は、下トッププレート142を介して、熱伝導により下トッププレート142に配置される基板−基板ホルダユニットを加熱する。加熱部162として、ニクロム線、カンタル線、白金線、炭化珪素、カーボン等で構成されるヒーターが例示できる。
【0026】
冷却部164は、温度制御されながら、下トッププレート142を冷却する。冷却部164は、下トッププレート142を介して、熱伝導により下トッププレート142に配置される基板−基板ホルダユニットを冷却する。冷却部164として、図3に示すように、チラーCL1等で構成される冷却手段が例示できる。
【0027】
下外周温度調整部180は、延伸部182と、加熱部184と、冷却部186と、ヒートコントローラHT2とを有する。延伸部182は、下ステージ140の外周から、下トッププレート142に接する基板ホルダ202の外周を覆うように上方に延伸する。加熱部184および冷却部186は、延伸部182の中に設けられる。
【0028】
加熱部184は、ヒートコントローラHT2によって、温度センサーが検知した温度に基づいて出力する熱量を制御しながら、下トッププレート142の外周側、および下トッププレート142に配置される基板−基板ホルダユニットの外周側を加熱することができる。加熱部184の加熱により、下トッププレート142、基板ホルダ202および基板204の外周部から外部への熱輻射による温度降下を防ぐことができる。よって、下トッププレート142、基板ホルダ202および基板204の内部の温度分布の均一化を図れる。加熱部184は加熱部162と同様にニクロム線等のヒーターであってよい。
【0029】
図3に示すように、下外周温度調整部180の加熱部184と下ホルダ温度調整部160の加熱部162は、それぞれヒートコントローラHT1、TH2により独立に温度制御されてよい。または、下外周温度調整部180の加熱部184は、下ホルダ温度調整部160の加熱部162と同一のヒートコントローラHT1により温度制御されてもよい。
【0030】
冷却部186は、温度制御されながら、下トッププレート142の外周側、下トッププレート142に配置される基板−基板ホルダユニットの外周側を冷却することができる。冷却部186は冷却部164と同様にチラーCL1等であってよい。
【0031】
上ステージ130に係る温度調整装置120は、一部の形状およびサイズが異なる以外に、基本構造において下ステージ140に係る部分と同じであるので、その説明を省略する。
【0032】
上ステージ130と下ステージ140により保持される基板−基板ホルダユニットが、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160の加熱部162だけによって加熱される場合には、上トッププレート132および下トッププレート142に接する熱伝導により加熱される基板−基板ホルダユニットの上下面と外周面の加熱速度が異なる。これに対し本実施形態によれば、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180の加熱部184を設けることにより、加熱および加圧過程における基板−基板ホルダユニットの温度分布の均一性が図れる。
【0033】
同様に、上ステージ130と下ステージ140により保持される基板−基板ホルダユニットが、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160の冷却部164だけによって冷却される場合には、上トッププレート132および下トッププレート142に接する熱伝導により冷却される基板−基板ホルダユニットの上下面と外周面の冷却速度が異なる。これに対し本実施形態によれば、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180の冷却部186を設けることにより、冷却過程における基板−基板ホルダユニットの温度分布の均一性が図れる。
【0034】
図4は、ロボットアーム210により基板−基板ホルダユニットを下ステージ140に載置する過程を概略的に示す。基板−基板ホルダユニットは、ロボットアーム210により、基板貼り合せ装置100に投入される。その後、加圧および加熱されることにより、複数の基板204の接合が行われる。下ステージ140は、ロボットアーム210と下ステージ140との間で基板−基板ホルダユニットを受け渡す場合に、基板ホルダ202を仮置きするリフトピン144を有する。
【0035】
図4に示すように、基板−基板ホルダユニットを受け取ることを目的として、まずリフトピン144が基板ホルダを受け渡す位置に上昇する。ロボットアーム210が、基板−基板ホルダユニットを搬入して、リフトピン144に仮置きする。
【0036】
上記基板−基板ホルダユニットの受け渡しが支障なく行われるように、下外周温度調整部180の延伸部182は、リフトピン144の基板ホルダを受け渡す位置より低い高さを有する。上外周温度調整部170と下外周温度調整部180との間は、ロボットアーム210による上記基板−基板ホルダユニットの受け渡しが支障にならない程度の間隔がある。
【0037】
図5は、上ステージ130および下ステージ140により基板−基板ホルダユニットを保持する状態を示す。ロボットアーム210が退避した後に、リフトピン144が降下して、基板−基板ホルダユニットが下トッププレート142に載置される。図5のように、昇降部192が上昇して、基板−基板ホルダユニットを上トッププレート132に当接させる。この状態では、上外周温度調整部170と下外周温度調整部180は、上ステージ130および下ステージ140の外周において、重なり合う。これにより、上トッププレート132、下トッププレート142および基板−基板ホルダユニットの外周部からの熱輻射を遮断できる。
【0038】
図6は、下ステージ140に係る温度調整装置120の他の実施態様を示す。図3に示す温度調整装置120に比して、下外周温度調整部180の加熱部184は、延伸部182の内部だけでなく、下トッププレート142における基板ホルダ202を保持する領域の外周部を含んで、それよりも外側まで加熱できるように設けられている点において異なる。これにより、下ステージ140において、下ホルダ温度調整部160の加熱部162が配置されていない部分まで加熱部184による加熱ができる。従って、トッププレートおよび基板−基板ホルダユニットの外周部の温度降下をより効果的に防止することができる。
【0039】
図7は、他の実施態様である基板貼り合せ装置300の構造を概略的に示す。基板貼り合せ装置300は、図1に示す基板貼り合せ装置100に比して、外周温度調整部の構造だけが異なる。基板貼り合せ装置300は、アクチュエータ302と、外周温度調整部304とを有する。
【0040】
アクチュエータ302は、天板に固定される。アクチュエータ302は、駆動部が外周温度調整部304に連結され、外周温度調整部304を上下に移動させて、位置調整をすることができる。
【0041】
外周温度調整部304は、筒状を有し、上ステージ130および下ステージ140およびこれらに保持される基板−基板ホルダユニットを外周から囲むように配置される。外周温度調整部304は、上トッププレート132、下トッププレート142および基板−基板ホルダユニットの外周面からの輻射熱が気密室110の内壁に届かないように、その輻射熱を遮断するのに十分な上下の幅を有する。外周温度調整部304は、基板貼り合せ装置100の下外周温度調整部180(又は上外周温度調整部170)と同様に、加熱部と冷却部とを有する。外周温度調整部304は、上トッププレート132、下トッププレート142および基板−基板ホルダユニットを外周部から加熱又は冷却することができる。外周温度調整部304は、基板貼り合せ装置100の下外周温度調整部180等と同様の効果を有する。
【0042】
図8は、さらに他の実施態様である基板貼り合せ装置400の構造を概略的に示す。基板貼り合せ装置400は、図7に示す基板貼り合せ装置300に比して、外周温度調整部の構造だけが異なる。基板貼り合せ装置400は、アクチュエータ402と、外周温度調整部404とを有する。アクチュエータ402は、アクチュエータ302と同じ構成を有してよい。
【0043】
外周温度調整部404は、基板−基板ホルダユニットに向き、輻射熱を反射できる内周面406を有する。内周面406は、例えば、金メッキされた鏡面であってよい。外周温度調整部404は、反射する輻射熱が効率よく上トッププレート132、下トッププレート142および基板−基板ホルダユニットに集中できるような曲面の反射面を有する。このような構造により、基板−基板ホルダユニット等からの輻射熱のほとんどが基板−基板ホルダユニットに反射されるので、効果的に基板−基板ホルダユニットの外周部の温度降下を防ぐことができる。
【0044】
外周温度調整部404は、更に加熱部を有してよい。外周温度調整部404は、加熱部により上トッププレート132、下トッププレート142および基板−基板ホルダユニットを外周部から加熱することができる。その加熱により、上記反射面では補うことのできない熱の遺失を補償できる。
【0045】
さらに基板を接合することにより、3次元積層半導体装置を製造する生産ラインにおいて、気密室110とは別個の気密室に冷却装置を設けて、基板−基板ユニットを冷却してもよい。この場合に、上記基板貼り合せ装置100、300、400は、基板冷却装置としても兼用できる。すなわち、基板貼り合せ装置100、300、400から、温度調整装置における加熱部が除去された構成を、基板冷却装置に用いてもよい。
【0046】
図9は、基板貼り合せ装置100を用いて3次元積層半導体装置を製造する製造方法のフローチャートを示す。当該製造方法は、接合すべき基板を用意する段階S010と、複数の基板を仮接合してステージに設置する段階S020と、基板に加圧する段階S030と、ホルダ温度調整部による加熱を開始する段階S040と、外周温度調整部による加熱を開始する段階S050と、基板を接合する段階S060と、ホルダ温度調整部による加熱を停止する段階S070と、外周温度調整部による加熱を停止する段階S080と、ホルダ温度調整部による冷却を開始する段階S090と、外周温度調整部による冷却を開始する段階S100と、基板を取り出す段階S110とを備える。
【0047】
まず、接合すべき基板を用意する(S010)。段階S010において、回路パターンが周期的に複数形成され、互いに接合することにより3次元積層半導体装置が形成できる複数の基板を用意する。ウエハに回路パターンを形成し、パッシベーションした後、表面に接合電極を形成して、接合用基板とする。
【0048】
次に、複数の基板を仮接合してステージに設置する(S020)。段階S020において、接合すべき一対の基板204は、別途設けられるアライナーにより、接合すべき電極同士が接触するように位置合せされて重ね合わせられ、一対の基板ホルダ202により、位置ずれが起こらないように仮接合される状態で保持される。即ち、基板−基板ホルダユニットが組みあがる。
【0049】
図4に示すように、リフトピン144が基板ホルダを受け渡す位置に上昇して、ロボットアーム210が、基板−基板ホルダユニットを搬入して、リフトピン144に仮置きする。ロボットアーム210が退避した後に、リフトピン144が降下して、基板−基板ホルダユニットが下トッププレート142に載置される。
【0050】
次に、基板に加圧する(S030)。段階S030において、昇降部192が上昇して、基板−基板ホルダユニットを上トッププレート132に当接させ、上ステージ130と下ステージ140の間に挟む。加圧装置190は、加圧制御信号に従って、昇降部192を更に上昇させ、上トッププレート132および下トッププレート142を介して、2枚の基板204に所定の圧力を加える。この加圧により、2枚の基板204の間に接合すべき電極同士が均一に接触することができ、基板の均一な貼り合せが実現できる。
【0051】
次に、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160による基板204の加熱を開始する(S040)。段階S040において、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160は、それぞれ上ステージ130および下ステージ140における基板ホルダ202を保持する領域を加熱する。即ち、上トッププレート132および下トッププレート142を加熱する。
【0052】
そして、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180による加熱を開始する(S050)。段階050において、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180は、基板ホルダ202よりも外周側を加熱する。この段階では、上外周温度調整部170と下外周温度調整部180は、上ステージ130および下ステージ140の外周において、重なり合い、トッププレートおよび基板−基板ホルダユニットの外周部による熱輻射を遮断することができる。同時に、上外周温度調整部170と下外周温度調整部180は、外周部からトッププレートおよび基板−基板ホルダユニットを加熱するので、上トッププレート132、下トッププレート142、基板ホルダ202および基板204において、均一な温度分布が得られる。基板204は、ヒートコントローラにより温度制御されながら、所定の温度まで加熱される。この場合に、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180は、基板−基板ホルダユニットの外周が内部と同じ温度になるような熱量で加熱する。例えば、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180は、基板−基板ホルダユニットから距離が離れている分だけ、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160よりも大きい熱量で加熱する。
【0053】
基板を本接合する(S050)。段階S050において、温度を制御しながら、一定時間に渡って、基板204に定所の圧力を加えることによって、基板の本接合を行う。加熱が本接合する2枚の基板204における電極接合面を活性化することができるので、電極同士が確実に接合することができる。
【0054】
段階S070において、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160による加熱を停止する(S070)。基板−基板ホルダユニットが、外周部に比べて、上トッププレート132および下トッププレート142に挟まれた上下面からの自然温度降下が遅いので、外周温度調整部より先にホルダ温度調整部の加熱を停止することにより、基板−基板ホルダユニットの温度分布の均一性が図りやすくなる。
【0055】
上外周温度調整部170および下外周温度調整部180による加熱を停止する(S080)。
【0056】
上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160による基板の冷却を開始する(S090)。段階S090において、上ホルダ温度調整部150および下ホルダ温度調整部160は、それぞれ上ステージ130および下ステージ140における加熱された基板ホルダ202を保持する領域を冷却する。即ち、上トッププレート132および下トッププレート142を冷却する。基板−基板ホルダユニットが、外周部に比べて、上トッププレート132および下トッププレート142に挟まれた上下面からの自然温度降下が遅いので、外周温度調整部より先にホルダ温度調整部の冷却を開始することにより、基板−基板ホルダユニットの温度分布の均一性を図る。
【0057】
上外周温度調整部170および下外周温度調整部180による基板の冷却を開始する(S100)。段階S110において、上外周温度調整部170および下外周温度調整部180は、基板ホルダ202よりも外周側を冷却する。外周温度調整部の冷却により、基板−基板ホルダユニットの外周面からの輻射熱が、効率よく外周温度調整部に吸収され散熱できるので、冷却過程における基板−基板ホルダユニットの温度分布の均一性が図れる。
【0058】
基板を取り出す(S110)。段階S110において、加圧装置190の昇降部192が降下して、基板204に加えた圧力を解除する。昇降部192が更に降下して、ロボットアーム210により基板−基板ホルダユニットを出し入りできる位置で停止する。ロボットアーム210は、基板貼り合せ装置100から基板−基板ホルダユニットを取り出す。本接合された基板が基板ホルダ202から分離され、個片化されて、3次元積層半導体装置が完成する。
【0059】
また、基板を本接合した後、基板貼り合せ装置100において、基板−基板ホルダユニットをロボットアームが搬送できる温度まで冷却してから、基板−基板ホルダユニットを取り出して、別途設けられる基板冷却装置に搬入して、室温近傍まで冷却してもよい。当該基板冷却装置においても、上記の温度調整装置が設けられ、基板204および基板ホルダ202における温度分布の均一性を維持しながら、迅速に基板−基板ホルダユニットを冷却することができる。3次元積層半導体装置の生産ラインの構成および生産スループット等を考慮して、いずれかの冷却方法を選択すればよい。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0062】
100 基板貼り合せ装置、110 気密室、120 温度調整装置、130 上ステージ、132 上トッププレート、140 下ステージ、142 下トッププレート、144 リフトピン、150 上ホルダ温度調整部、160 下ホルダ温度調整部、170 上外周温度調整部、180 下外周温度調整部、190 加圧装置、192 昇降部、194 ベース、202 基板ホルダ、204 基板、210 ロボットアーム、162 加熱部、164 冷却部、182 延伸部、184 加熱部、186 冷却部、300 基板貼り合せ装置、302 アクチュエータ、304 外周温度調整部、400 基板貼り合せ装置、402 アクチュエータ、404 外周温度調整部、406 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板ホルダを間に挟んで、前記一対の基板ホルダの間に重ね合せられた複数の基板を保持する一対のステージと、
前記ステージにおいて前記基板ホルダを保持する領域を加熱または冷却するホルダ温度調整部と、
前記基板ホルダよりも外周側を加熱または冷却する外周温度調整部と
を備える温度調整装置。
【請求項2】
前記外周温度調整部は、前記一対のステージの少なくとも一方の外周から前記基板ホルダの前記外周を覆うように延伸する延伸部、および、前記延伸部に設けられた発熱部を有する請求項1に記載の温度調整装置。
【請求項3】
前記一対のステージの少なくとも一方は他方に対して近接および離間し、
前記外周温度調整部は、前記一対のステージの両方に配され、
前記一対のステージが前記一対の基板ホルダを挟むべく近接した場合に、前記一対のステージの前記一方の前記延伸部と、前記一対のステージの前記他方の前記延伸部とが重なり合う請求項2に記載の温度調整装置。
【請求項4】
前記一対のステージの少なくとも一方は、前記基板ホルダを仮置きするリフトピンを有し、
前記延伸部は、前記リフトピンが前記基板ホルダを仮置きする高さよりも低い請求項2または3に記載の温度調整装置。
【請求項5】
前記延伸部において前記基板ホルダに向いた内周面は、輻射を反射する請求項2から4のいずれかに記載の温度調整装置。
【請求項6】
前記ホルダ温度調整部による加熱または冷却が開始された後に、前記外周温度調整部による加熱または冷却が開始される請求項1から5のいずれかに記載の温度調整装置。
【請求項7】
前記ホルダ温度調整部による加熱が停止された後に、前記外周温度調整部による加熱が停止される請求項1から6のいずれかに記載の温度調整装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の温度調整装置と、
前記一対のステージを加圧して前記複数の基板を貼り合せる加圧装置と
を備える基板貼り合せ装置。
【請求項9】
前記温度調整装置および前記加圧装置を外部に対して気密に収容する気密室をさらに備える請求項8に記載の基板貼り合せ装置。
【請求項10】
回路パターンが周期的に複数形成された複数の基板を用意する段階と、
一対の基板を仮接合して保持した一対の基板ホルダを、一対のステージの間に挟む段階と、
前記ステージにおいて前記一対の基板ホルダを保持する領域を加熱する段階と、
前記一対の基板ホルダよりも外周側を加熱する段階と、
前記一対の基板ホルダを介して加熱された一対の基板を取り出して個片化する段階と
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ステージにおいて加熱された前記一対の基板ホルダを保持する領域を冷却する段階と、
加熱された前記一対の基板ホルダよりも外周側を冷却する段階と、
をさらに備える請求項10に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−54745(P2011−54745A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202029(P2009−202029)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)