説明

温水洗浄便座装置

【課題】便座やケーシングに付着した水を散らすことが可能な温水洗浄便座装置を提供する。
【解決手段】便座ボックス10の取付基部13の内部に、超音波振動装置20,20が設置されている。便座21内に、超音波振動装置21,21及び着座センサ22が設置されている。臀部洗浄スイッチが操作された場合には、着座者が便座2から離座して着座センサ22が着座を非検知となった後に、超音波振動装置20,21が作動する。超音波振動装置20,21が作動すると、便座2及び便座ボックス10が振動し、臀部洗浄時に便座2や便座ボックス10に付着した水滴が散らされる。即ち、便座2や便座ボックス10に付着した大きい水滴は洋風便器1の便鉢内に流れ落ち、細かい水滴は平たく広がって蒸発し易くなる。これにより、便座2及び便座ボックス10が早期に乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座の着座者に向って温水を噴出するための洗浄ノズルを有する温水洗浄便座装置に係り、詳しくは、洋風便器の上部後面に設置されたケーシングや便座に付着した水を散らすための振動装置を備えた温水洗浄便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄ノズルを備えた温水洗浄便座装置は既に広く用いられている。
【0003】
また、この洗浄ノズルからの温水の噴射によって濡れた着座者の臀部を乾燥するために、送風ファン及びエアヒータからなる温風乾燥装置を、この温水洗浄便座装置に備えることも広く知られている。
【0004】
特開平5−137668号には、この温風乾燥装置による臀部の乾燥時間を短縮するために、便座内に機械振動手段を設けることが記載されている。便座に人体が着座した状態でこの機械振動手段を作動させると、着座者に付着した水滴が振動によって振り落とされる。
【特許文献1】特開平5−137668号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄ノズルから温水を噴射させて臀部を洗浄するに際し、着座位置が悪く、便座開口の隙間ができて便座の上方側へ温水が飛散して便座ボックスやロータンクなどのケーシングないし便座に付着することがある。この場合、この付着水が次に使用する着座者や着座者の衣類等を濡らすなどの問題がある。
【0006】
上記の温風乾燥装置は、臀部を乾燥させるものであり、便座やケーシングの付着水を乾燥させる効果はほとんどない。
【0007】
上記の特開平5−137668号の機械振動手段は、人体に付着した水滴を振り落とすものであり、便座やケーシングの付着水を振り落とすものではない。また、同号では便座に人体が着座した状態で機械振動手段を作動させるため、機械振動手段によって発生した振動が人体によって吸収されてしまい、便座やケーシングに付着した水を振り落とす効果が微弱となる。
【0008】
本発明は上記の問題点を解消し、便座やケーシングに付着した水を散らすことが可能な温水洗浄便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の温水洗浄便座装置は、洋風便器の上部後面に設置されたケーシングと、該ケーシングに上下方向回動可能に取り付けられた便座と、該便座の着座者に向って温水を噴出するための洗浄ノズルと、を有する温水洗浄便座装置において、該ケーシングに振動を与えることにより、該ケーシングに付着した水を散らすための振動装置を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の温水洗浄便座装置は、請求項1において、該振動装置は、該洗浄ノズルによる臀部洗浄を実行した後であって着座者の離座後に作動するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3)の温水洗浄便座装置は、便座と、該便座の着座者に向って温水を噴出するための洗浄ノズルと、該便座に設けられた、該便座に振動を与えて便座付着水を散らすための振動装置と、を有する温水洗浄便座装置であって、該振動装置は、該洗浄ノズルによる臀部洗浄を実行した後であって着座者の離座後に作動するものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の温水洗浄便座装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記振動装置は、該便蓋が閉蓋した後に作動するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項5の温水洗浄便座装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記洋風便器が設置された室内の人体を検知する人体検知センサが設けられており、前記振動装置は、該人体検知センサが人体不検知となった後に作動するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)の温水洗浄便座装置にあっては、振動装置を作動させ、ケーシングに振動が与えられると、該ケーシングに付着した水が散らされる。即ち、該ケーシングに付着した大きい水滴は便鉢に流れ落ち、細かい水滴は平たく広がって蒸発し易くなる。これにより、ケーシングが早期に乾燥する。
【0015】
請求項2の通り、振動装置は、該洗浄ノズルによる臀部洗浄を実行した後であって着座者の離座後に作動するものとしてもよい。このように着座者の離座後に振動装置を作動させる場合、振動装置の振動が便座に伝わり易くなり、便座に付着した水を散らすことも可能となる。
【0016】
本発明(請求項3)の温水洗浄便座装置にあっては、洗浄ノズルによる臀部洗浄を実行した後であって着座者の離座後に、便座に設けられた振動装置が作動するため、振動装置による振動が人体によって吸収されることがない。このため、便座に付着した水が良好に散らされる。
【0017】
請求項4の通り、振動装置は、便蓋が閉蓋した後に作動するものであってもよい。この場合、便座やケーシングの付着水が、振動によってトイレルーム内に飛散することが防止される。
【0018】
請求項5の通り、洋風便器が設置された室内の人体を検知する人体検知センサが設けられており、振動装置は、該人体検知センサが人体不検知となった後に作動するものであってもよい。この場合にも、振動装置による振動が着座者によって吸収されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る温水洗浄便座装置を備えた洋風便器の斜視図、第2図は第1図の便座ボックスの斜視図である。
【0020】
洋風便器1の後部上面に便座ボックス10が設置されており、便座2及び便蓋3がこの便座ボックス10に対し上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0021】
便座ボックス10の前面11の下半側が前方に張り出して張出部12となっている。この張出部12の上面は傾斜面12aとなっている。この傾斜面12aに、略半円筒形の取付基部13が突出している。
【0022】
この取付基部13内には、便座2をモータによって回動させる便座回動装置(図示略)と、便蓋3をモータによって回動させる便蓋回動装置(図示略)が設置されている。これら便座回動装置及び便蓋回動装置の駆動軸14a,14bが、取付基部13の第2図における左端面13a及び右端面13bから突出しており、これら駆動軸14a,14bに便座2及び便蓋3が取り付けられている。
【0023】
この取付基部13の側周面13cのうち前方を指向する部分の内面側に、超音波振動装置20が設置されている。
【0024】
また、便座ボックス10内には、洗浄ノズル15、臀部の温風乾燥ファン(図示略)、制御装置(図示略)等が設けられている。
【0025】
この洋風便器1の側方のトイレルーム壁面にリモコン(図示略)が設置されている。このリモコンの前面には、臀部洗浄スイッチ、温風乾燥スイッチ、洗浄や温風乾燥等の作動をストップさせる停止スイッチ等が設けられている。また、リモコンの上面には、便座2を開閉させるための便座スイッチ、便蓋3を開閉させるための便蓋スイッチ、洋風便器1の便鉢内を洗浄する便鉢洗浄スイッチが設けられている。
【0026】
上記の制御装置は、リモコンからのスイッチ信号に基づき、洗浄ノズル15、温風乾燥装置、便座回動装置、便蓋回動装置、便鉢に水道水を供給する給水管に備えられた電磁弁等の動作を制御するように構成されている。また、この制御装置は、着座センサ22からの信号に基づいて、超音波振動装置20,21の動作を制御するように構成されている。
【0027】
次に、このように構成された温水洗浄便座装置の動作例について説明する。
【0028】
使用者が便座2に着座すると、着座センサ22が着座を検知する。
【0029】
着座センサ22が着座を検知している状態で着座者が臀部洗浄スイッチを操作すると、洗浄ノズル15が前進し、その噴出口から臀部に向って温水が噴出する。停止スイッチを操作すると、臀部洗浄が停止する。次いで、温風乾燥スイッチを操作すると、臀部に向って温風が送風される。停止スイッチを操作すると、温風が停止する。便鉢洗浄スイッチを操作すると、所定時間だけ便鉢内に水道水が供給され、便鉢内が洗浄される。
【0030】
このように臀部洗浄スイッチが操作された場合にあっては、着座者が便座2から離座して着座センサ22が着座を非検知となった後に、超音波振動装置20,21が作動する。ここで、着座センサ22が非検知となってから超音波振動装置20,21が作動するまでの時間は、1〜20秒、特に5〜10秒程度が好ましい。なお、この作動するまでの時間は、リモコンのスイッチ操作等によって調整し得るようにしてもよい。
【0031】
また、超音波振動装置20,21の作動継続時間は10秒〜2分、特に10秒〜30秒程度が好ましい。なお、リモコンに超音波振動装置のON−OFFスイッチを設ける等により、この超音波振動装置20,21のON、OFFを切替可能としてもよい。
【0032】
これら超音波振動装置20,21が作動すると、便座2及び便座ボックス10が振動し、臀部洗浄時に便座2や便座ボックス10に付着した水滴が散らされる。即ち、便座2や便座ボックス10に付着した大きい水滴は洋風便器1の便鉢内に流れ落ち、細かい水滴は平たく広がって蒸発し易くなる。これにより、便座2及び便座ボックス10が早期に乾燥する。
【0033】
なお、超音波振動装置20,21の作動中にトイレルームへの人の入室が検知されたり、着座センサが着座を検知した場合には、超音波振動装置20,21を停止してもよい。また、超音波振動装置20,21が作動中であることを表示する光又は音声表示手段を設けてもよい。
【0034】
本実施の形態にあっては、着座センサ22を設置したが、これに代えて又はこれと共に、トイレルーム内の人体を検知する人体検知センサを便座ボックス10やリモコンに設置してもよい。この場合、臀部洗浄スイッチが操作され、且つ人体検知センサが人体不検知となった後に、超音波振動装置20,21が作動するようにするのが好ましい。
【0035】
また、便蓋3が起立しているかどうかを検知する便蓋状態検知センサを便座ボックス10内に設置しておき、臀部洗浄スイッチが操作され、且つ便蓋3が閉蓋した後に、超音波振動装置20,21が作動するようにしてもよい。この場合、上記の人体検知センサを便座ボックス10やリモコンに設置しておき、人体検知センサがトイレルーム内の人体を非検知となった後に、便蓋3が自動的に閉蓋するように構成されていることが好ましい。この便蓋状態検知センサは、リミットスイッチ等であってもよく、便蓋回動装置のモータの回転位相を検知するエンコーダであってもよい。
【0036】
第3図は別の実施の形態に係る温水洗浄便座装置を備えた洋風便器の斜視図である。第3図の温水洗浄便座装置はロータンクカバーを備えたものである。
【0037】
洋風便器31の後部上面にロータンクカバー32が設置されており、このロータンクカバー32の前面から前方に突出する張出部32aに対して、便座33及び便蓋34が上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0038】
この張出部32a内には、便座33をモータによって回動させる便座回動装置(図示略)と、便蓋34をモータによって回動させる便蓋回動装置(図示略)が設置されている。
【0039】
ロータンクカバー32内には、、ロータンク(図示略)、おしり洗浄ノズル35、ビデ洗浄ノズル36の他、図示は省略するが、これら洗浄ノズル35,36に温水を供給するための温水タンク、臀部の温風乾燥ファン、制御装置等が設けられている。
【0040】
上記の張出部32a内に、超音波振動装置40が設置されている。
【0041】
便座33内に、超音波振動装置41と、着座センサ42が設置されている。
【0042】
この洋風便器31の側方のトイレルーム壁面にリモコン(図示略)が設置されている。
【0043】
このように構成されたロータンクカバー型の温水洗浄便座装置にあっても、上記第1図及び第2図の温水洗浄便座装置と同様にして動作し、便座33及び張出部32aが早期に乾燥するようになる。
【0044】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、上記の実施の形態では便座と便座ボックス又はロータンクカバーの両方に超音波振動装置を設置したが、いずれか一方に設置してもよい。なお、第1図〜第3図では、便座と、便座ボックス又はロータンクカバーの各々に、2個の超音波振動装置を設置したが、1個又は3個以上設置してもよい。また、便蓋にも超音波振動装置を取り付け、同様に動作させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態に係る温水洗浄便座装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【図2】第1図の便座ボックスの斜視図である。
【図3】別の実施の形態に係る温水洗浄便座装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1,31 洋風便器
2,33 便座
3,34 便蓋
10 便座ボックス
20,21,40,41 超音波振動装置
22,41 着座センサ
32 ロータンクカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風便器の上部後面に設置されたケーシングと、該ケーシングに上下方向回動可能に取り付けられた便座と、該便座の着座者に向って温水を噴出するための洗浄ノズルと、を有する温水洗浄便座装置において、
該ケーシングに振動を与えることにより、該ケーシングに付着した水を散らすための振動装置を備えたことを特徴とする温水洗浄便座装置。
【請求項2】
請求項1において、該振動装置は、該洗浄ノズルによる臀部洗浄を実行した後であって着座者の離座後に作動するものであることを特徴とする温水洗浄便座装置。
【請求項3】
便座と、該便座の着座者に向って温水を噴出するための洗浄ノズルと、該便座に設けられた、該便座に振動を与えて便座付着水を散らすための振動装置と、を有する温水洗浄便座装置であって、
該振動装置は、該洗浄ノズルによる臀部洗浄を実行した後であって着座者の離座後に作動するものであることを特徴とする温水洗浄便座装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記振動装置は、該便蓋が閉蓋した後に作動するものであることを特徴とする温水洗浄便座装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記洋風便器が設置された室内の人体を検知する人体検知センサが設けられており、
前記振動装置は、該人体検知センサが人体不検知となった後に作動するものであることを特徴とする温水洗浄便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−155884(P2009−155884A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334578(P2007−334578)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】