説明

温水洗浄便座

【課題】 温水洗浄便座に装備される洗浄ノズルの表面を超撥水性、撥油性にすることにより、洗浄時の汚水、汚物が洗浄ノズル表面に付着しにくく、且つクリーニングに使用する洗浄水の量を削減することを課題とする。
【解決手段】 洗浄ノズルの表面にV字型の溝15aを一方向に連続した形状をした撥水層を形成することによって、ノズル表面の撥水性、撥油性を向上させた。さらに一方向に連続したV字型溝の方向が洗浄ノズルの軸方向に平行となるよう配置し、洗浄ノズル表面に付着する汚れが溝方向に伝わって便器内に落ちやすくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄ノズルの外表面の撥水性および撥油性を向上させることで、洗浄ノズル表面の汚れを除去しやすい温水洗浄便座に関する。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄便座の肛門部および女性局部を洗浄する洗浄用ノズルは、ケーシングの収納位置から洗浄位置まで往復動作するノズルロッドを備え、その先端に洗浄水を噴出させるための吐水穴を有するノズルヘッドを設けている。このようなノズル装置では、洗浄のときにはノズルヘッド部分が人体の局部に接近して洗浄水を噴射するため、洗浄の際に汚水や汚物を浴びやすい。そのため、洗浄動作の前または後に、局部洗浄用の洗浄水をノズルヘッド部分に噴射し、これによって汚れを流し落とすといったクリーニングが行われている。
【0003】
このようなノズルヘッド部分のクリーニングにおいて付着した汚れが除去されやすいよう、特許文献1また特許文献2に記載されているような、ノズルヘッド部分表面に撥水層を有する温水洗浄便座が提案されている。
【0004】
【特許文献1】実開平4−77676号公報
【特許文献2】特開2001−132055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、節電、節水といった省エネルギーを実現する温水洗浄便座に対する顧客ニーズが高まり、使用される洗浄水の量を削減しなければならないといった課題が生じている。この課題を達成する一手段として、洗浄動作の前または後に行うノズルヘッド部分のクリーニングに使用する洗浄水の量を削減する必要がある。
【0006】
本発明は、洗浄ノズル表面に撥水性を付与させることにより、洗浄時の汚水、汚物が洗浄ノズル表面に付着しにくく、且つクリーニングに使用する洗浄水の量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、洗浄水を噴出する吐水穴を有し、待機位置と使用位置との間で移動可能な洗浄ノズルと、待機位置にある前記洗浄ノズルを収納するケーシングとを備えてなる温水洗浄便座において、前記洗浄ノズルの表面に、略一方向に連続した溝を複数条設けることで前記洗浄ノズルの表面を撥水層となしたことを特徴とする。こうすることで、洗浄ノズル表面の撥水性および撥油性が向上し、洗浄ノズル表面に付着する汚れが少なくなるとともに、付着した汚れがクリーニング時に取れ易くなる。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明によれば、前記複数条の溝の凸部および凹部の頂角を60°以上80°以下、且つ溝のピッチを1μm以上2mm以下としたので、洗浄ノズル表面に高い撥水性が付与され、洗浄ノズル表面に付着する汚れがより少なくなるとともに、付着した汚れがクリーニング時に容易に取れ易くなる。また、洗浄動作後のクリーニング時に使用する洗浄水の流量を低減することができる。
【0009】
上記目的を達成するために請求項3記載の発明によれば、前記溝の方向が洗浄ノズルの軸方向に平行となるよう配置したので、洗浄ノズル表面に付着する汚れが溝方向に伝わって便器内に落ちやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗浄ノズル表面に複数条の溝を略一方向に連続させて形成して撥水層としたことにより、洗浄ノズル表面に付着する汚れが少なくなるとともに、洗浄動作の前または後に行うノズルヘッド部分のクリーニングに使用する洗浄水の量を削減できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の洗浄ノズルは、3つの洗浄水水路を有する洗浄水水路部と、洗浄水水路部の外側を覆うノズルカバーから構成され、ノズルカバーの外表面露出部は3つの洗浄水吐水口以外の穴、切り欠き、接合部の無いなめらかな形状になっており、ノズルクリーニングにてノズルカバーの外表面露出部の汚れを細部に渡り残すこと無く除去することが可能な構造になっている。
【0013】
また、洗浄水水路部は外側のノズルカバーにより覆われ外観に露出しないため、洗浄水水路部を樹脂の射出成形で製造する場合においては、ヒケ、ウエルド、シルバ−等の外観品質上の制約がなく洗浄水路等の設計自由度が増す。用いられる樹脂は、特に限定はなく、アクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PFEP)テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、などがあるが、アクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂(ABS)が収縮率が小さく、高精度で成形できるため、好適に使用される。
【0014】
また、ノズルカバーを着脱可能にすることで賃貸住宅等に設置された温水洗浄便座の洗浄ノズルを住人が変る都度、交換して簡単にリフレッシュすることが可能である。
【0015】
ノズルカバーの樹脂材料としては、特に限定はなく、アクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタ−ル樹脂(POM)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PFEP)テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、などを使用することができるが、ポリプロピレン樹脂(PP)が安価でかつ耐薬品性に優れるため、好適に使用される。
【0016】
次に、本発明の洗浄ノズルにおいて、ノズルカバー表面がV字型の溝を略一方向に連続させて基材に撥水層を設けることで、ノズルカバー表面の撥水性および撥油性が向上し、表面に付着する汚れを非常に少なくすることができる。また、このV字型の溝をノズルの軸方向へ平行となるよう配置することによって、局部洗浄時の汚水が溝方向に伝わって便器内へ排出されやすくなる。さらに、洗浄動作後のクリーニング時に使用する洗浄水の流量を低減することができる。
【0017】
ノズルカバー表面のV字型溝の形状は、凸部および凹部の頂角が60°以上80°以下、溝のピッチが1μm以上2mm以下であることが好ましい。凸部および凹部の頂角が60°未満であると表面の物理的な磨耗性に劣るため、洗浄ノズルの清掃時に溝の形状が破壊されやすく、80°以上であると超撥水性の効果が得られにくく、ノズルカバー表面の防汚効果が薄くなる。また、溝のピッチが1μm未満であると溝の形成が製造上困難となり、2mm以上であると超撥水性の効果が得られにくく、ノズルカバー表面の防汚効果が薄くなる。
【0018】
このノズルカバー表面のV字型溝の形状を有する撥水層は、樹脂フィルムの設置によって得ることができる。樹脂フィルムは撥水性がよいポリプロピレン樹脂が主体であることを特徴とし、その設置方法はノズルカバーの外表面に接着されてもよいし、インサート成形されてもよい。
【0019】
上記樹脂フィルムには、必要に応じ、無機顔料、有機顔料等の着色剤、抗菌剤、その他滑剤、熱安定剤、光安定剤、無機フィラー剤等の添加剤を混入することができる。
【0020】
また、樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、一般に、1〜274μm、好ましくは10〜200μmである。
【0021】
次に、樹脂フィルムをノズルカバーの外表面へ取付ける方法として、まずは、両面テープもしくは接着剤にて接着する方法が挙げられる。両面テープについては既知のものが使用できる。また、接着剤しては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンブチルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系のものがあるがこれに限定するものではない。
【0022】
また、樹脂フィルムをノズルカバー外表面にインサート成形させてもよく、その方法は、樹脂フィルムをキャビティ金型側に設置して、型締め後通常の射出成形によって行うことができる。樹脂フィルムをキャビティ金型へ設置する方法としては、人間の手によって設置してもよいし、ロボットによって設置してもよい。上記の製造方法によって、樹脂フィルムが外表面へ設置されたノズルカバーを得ることができる。
【0023】
本発明における温水洗浄便用便座において、ノズルカバー表面の撥水層はシリコ−ン樹脂またはフッ素樹脂が使用される。使用されるシリコーンレジンとしては、例えばメチルフェニルシリコーンレジン、ジフェニルシリコーンレジン等のシリコーンレジン、およびそれらの変性樹脂としてアルキッド変性、ポリエステル変性、エポキシ変性、アクリル変性、フェノール変性、ウレタン変性、メラミン変性等の変性シリコーンレジン等、公知のものが制限なく使用されるが、特に無溶剤型シリコーン樹脂が好ましい。上記無溶剤型シリコーン樹脂の代表的なものを具体的に例示すれば、両端、あるいは、両末端および鎖中に、ビニル基を有する直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシキサンの混合物に白金触媒を添加した該組成物などが挙げられる。また、使用されるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(PFEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)等、公知のものが制限なく使用される。
【0024】
ノズルカバー表面の撥水層には抗菌剤を添加配合することもできる。添加する抗菌剤としては、無機系抗菌剤として、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀等、または銀、銅、亜鉛、錫を担持したゼオライト、あるいは銀、銅、亜鉛、錫を担持したシリカゲルなどが挙げられるが、これに限定するものではない。配合割合については基材樹脂100重量部に対し、0.1重量部未満では抗菌性が認められず、5重量部を越えると着色や劣化など樹脂組成物の特性を著しく損う。したがって、0.3〜3重量部であることが望ましい。また、有機系抗菌剤として、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどイミダゾール誘導体、シクロフルアニドなどN−ハロアルキルチオ系化合物、10、10’−オキシビスフェノキサアルシンなどフェニルエーテル誘導体、セシルジメチルエチルアンモニウムブロミドなど第4級アンモニウム塩および2、3、5、6テトラコロル−4−(メチルスルホニル)ピリジンなどスルホン誘導体などが挙げられるが、これに限定するものではない。配合割合については、有機系防かび剤については、基材樹脂100重量部に対し、0.02重量部未満では防かび性はほとんどなく、5重量部を越えるとブルームするなど不具合が発生する。したがって、0.05〜1重量部の範囲であることが望ましい。
【0025】
本発明の洗浄ノズルを温水洗浄便座内に複数搭載する場合は、並列に複数搭載してもよいし、段組にして複数搭載してもよい。また、1本搭載する場合は、温水洗浄便座内の中央に搭載してもよいし、中央から離れたところに洗浄ノズルをある角度をもって搭載することもできる。
【0026】
以上、表面に撥水層を設けた洗浄ノズルを、洗浄水の水路を構成する洗浄水水路部にノズルカバーを被せた構成を基に説明したが、洗浄水水路部がそのまま表面に露出する形態の洗浄ノズルにおいても、勿論本発明を適用できる。
その場合、撥水層は、洗浄水水路部の表面に持たせる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の洗浄ノズルを内蔵した温水洗浄便座を示す斜視図である。
図1において、衛生洗浄装置のケーシング1には便座2及び便蓋3をそれぞれ開閉自在に取り付けている。ケーシング1の内部には局部洗浄のための洗浄ノズル装置4と洗浄水の供給配管系及び洗浄後の乾燥のための温風乾燥装置等が収納され、温水洗浄便座の動作は操作用リモコン5などによって行われる。
【0029】
図2は、本発明の洗浄ノズルをケーシング内に配置した場合の側面断面図を示す。図2において、洗浄ノズル装置4は、ケーシング1内に固定されるフレーム6と、その上面を摺動面として往復動作する洗浄ノズル7を備え、この洗浄ノズル7は洗浄水水路部8とノズルカバー9と洗浄水を噴出する洗浄水吐水口10を設けたものである。そして、洗浄ノズル7の基端側には、洗浄水を洗浄水水路に供給するための供給口11a,11bを2か所に設けている。洗浄ノズル7は、ケーシング1に配置したモータ12の出力軸に連接され、図示の収納位置及び二点鎖線で示す位置までの間をストローク動作する。
【0030】
洗浄ノズル7がその収納位置にあるときに洗浄水吐水口10全体を覆うクリーニングキャップ13をフレーム6の先端に設ける。このクリーニングキャップ13は、洗浄水吐水口10の少なくとも上方及び側方を覆う断面形状を持ち、洗浄水吐水口10から洗浄水を放出させたときにクリーニングキャップ13の内周壁に当たって跳ね返った水で洗浄水吐水口10がある洗浄ノズル7の先端をクリーニング可能とする。
【0031】
図3は、本発明のノズルカバーの外表面に設置する樹脂フィルムの構成の一実施例を示す断面図である。図3において、樹脂フィルム14は撥水層15と樹脂層16から構成されている。樹脂層16は、一方向に連続したV字型の溝15aが複数条形成されている。その結果、ノズルカバー9の外表面が高い撥水性を呈することとなり、その結果、表面の防汚性が著しく向上し、汚物を付着しにくくすることができる。
【0032】
図4は、本発明のノズルカバーの外表面に前述した樹脂フィルム14を設けた場合の一実施例を示す断面図である。図4において、ノズルカバー9の外表面には、一方向に連続したV字型の溝15aが形成された撥水層を付与した樹脂フィルム14が設けられている。さらに、ノズルカバー外表面に形成される溝15aは、溝15aの方向が洗浄ノズル7の軸方向に平行となるように(すなわち、ノズルカバーの長手方向に)形成されている。こうすることで、洗浄ノズル表面に付着する汚れが溝方向に伝わって、洗浄時に汚れが便器内に落ちやすくなる。
【0033】
図5は、本発明の洗浄ノズルの1実施例を示す構成図である。図5において、洗浄ノズル7は、洗浄水水路を有する単一若しくは複数の部品から成る洗浄水水路部8と、その外側を覆うノズルカバー9から構成される。ノズルカバー9は洗浄水水路部8を覆う筒体で、表面にV字型の溝15aを設けた撥水層15を備えている。また、洗浄水水路部8の洗浄水水路から供給された洗浄水を吐水する洗浄水吐水口10のみを外表面露出部に有し、切欠き、接合部等が無い。
V字型の溝15aは、洗浄ノズル7の長手方向に、すなわち洗浄ノズル7の先端から他端にかけて直線的に形成されている。このため、このクリーニングキャップ13内で洗浄水吐水口10から洗浄水を放出させたときには、クリーニングキャップ13の内周壁に当たって跳ね返った水は、溝15aに沿って洗浄ノズル7の表面を先端方向に移動して便器に排出される。よって、洗浄ノズル7をクリーニングする水が洗浄ノズル7上を移動するので、クリーニング用の水量を少なく抑えることができる。
【0034】
図6は、本発明のノズルカバーの外表面に樹脂フィルムをインサート成形によって得る方法の1実施例を示す工程図である。図6において、樹脂フィルム14は、キャビティ金型17内に人間の手もしくはロボットによって設置される。ノズルカバー9の成形は、コア金型18を型締めした後、通常の射出成形によって行うことができる。このようにして、ノズルカバー9の外表面に樹脂フィルム14が設置された成形品が得られる。
【0035】
図7は、本発明の洗浄ノズル装置をケーシング内に配置した第1の実施例の斜視図である。図7において、本発明の洗浄ノズルを設置した洗浄ノズル装置4をケーシング1内に複数搭載した。
【0036】
図8は、本発明の洗浄ノズル装置をケーシング内に配置した第2の実施例の斜視図を示す。図8において、本発明の洗浄ノズルを設置した洗浄ノズル装置4をケーシング1内に1本搭載した。
【0037】
以下、本発明の実施例と、比較例とを対比する。
(実施例)
図3に示すようなノズルカバーの外表面に設置する樹脂フィルムにおいて、凸部、凹部の頂角が65°、溝のピッチが50μmであるV字型の溝を一方向に連続して形成されている樹脂層にフルオロアルキルシラザンを2cc滴下し、スピンコーターにて1500rpmで10秒スピンコートし、撥水層を形成した。この樹脂フィルムを図4で示すような構成にするため、エポキシ樹脂からなる接着剤でノズルカバー外表面に接着した。
【0038】
(比較例1)
図3に示すようなノズルカバーの外表面に設置する樹脂フィルムにおいて、表面が平滑である樹脂層にフルオロアルキルシラザンを2cc滴下し、スピンコーターにて1500rpmで10秒スピンコートし、撥水層を形成した。この樹脂フィルムを図4で示すような構成にするため、エポキシ樹脂からなる接着剤でノズルカバー外表面に接着した。
【0039】
(比較例2)
図3に示すようなノズルカバーの外表面に設置する樹脂フィルムにおいて、表面が平滑であるフィルム材料に、直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシキサンの混合物で撥水層を形成した。この樹脂フィルムを図6で示すようなインサート成形により、ノズルカバー外表面に接着した。
【0040】
上記実施例および比較例について、以下の評価を実施した。
(接触角測定)
接触角計(共和界面科学社製CX−150型)を用いて、内径0.1mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コートされたマイクロシリンジから約1μlの水滴もしくはオレイン酸を滴下し、滴下直後の接触角を測定した。
実施例における溝と垂直な方向から見た水の接触角は159°、オレイン酸の接触角は126°であった。
比較例1における水の接触角は110°、オレイン酸の接触角は83°であった。比較例2における水の接触角は103°、オレイン酸の接触角は78°であった。
したがって、実施例の方が撥水性、撥油性が高く、表面に汚水や汚物が付着しにくいことがわかる。
【0041】
(汚水の落ちやすさの評価)
実施例および比較例1、比較例2で作成したノズルカバーを図2で示すような洗浄ノズル装置に設置した。オレイン酸(和光純薬製)を上からノズルカバー表面に垂らし、付着させた。次に、表面に付着したオレイン酸が目視で無くなったと確認できるまで、ノズルクリーニングを行い、使用した洗浄水の量を測定した。
実施例における洗浄水の使用量は5mlであった。
比較例1における洗浄水の使用量は20mlであり、比較例2における洗浄水の使用量は25mlであった。
したがって、実施例の方が洗浄水の使用量が少なく、クリーニングに使用する洗浄水の量を削減することができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の洗浄ノズル装置を内臓した温水洗浄便座の斜視図を示す。
【図2】本発明の洗浄ノズル装置をケーシング内に配置した場合の側面断面図を示す。
【図3】本発明のノズルカバーの外表面に設置する樹脂フィルムの一実施例の断面模式図を示す。
【図4】本発明のノズルカバーの外表面に超撥水層を形成した場合の一実施例の断面模式図を示す。
【図5】本発明の洗浄ノズルの一実施例の構成図を示す。
【図6】本発明のノズルカバーの外表面に樹脂フィルムをインサート成形によって得る方法の一実施例の工程概略図を示す。
【図7】本発明の洗浄ノズル装置をケーシング内に配置した第1の実施例の斜視図を示す。
【図8】本発明の洗浄ノズル装置をケーシング内に配置した第2の実施例の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 ケーシング
2 便座
3 便蓋
4 洗浄ノズル装置
5 操作用リモコン
6 フレーム
7 洗浄ノズル
8 洗浄水水路部
9 ノズルカバー
10 洗浄水吐水口
11a、11b 供給口
12 モータ
13 クリーニングキャップ
14 樹脂フィルム
15 撥水層
15a 溝
16 樹脂層
17 キャビティ金型
18 コア金型



【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を噴出する吐水穴を有し、待機位置と使用位置との間で移動可能な洗浄ノズルと、待機位置にある前記洗浄ノズルを収納するケーシングとを備えてなる温水洗浄便座において、前記洗浄ノズルの表面に、略一方向に連続した溝を複数条設けることで前記洗浄ノズルの表面を撥水層となしたことを特徴とする温水洗浄便座。
【請求項2】
請求項1に記載の温水洗浄用便座において、前記複数条の溝の凸部および凹部の頂角を60°以上80°以下、且つ溝のピッチを1μm以上2mm以下としたことを特徴とする温水洗浄用便座。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水洗浄便座において、前記溝の方向が洗浄ノズルの軸方向に平行となるよう配置したことを特徴とする温水洗浄便座。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−307522(P2006−307522A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130996(P2005−130996)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】