説明

温水洗浄便座

【課題】抗菌剤により水タンク内の雑菌の繁殖を抑制し、安心して使用できる洗浄水を供給することができながらも、抗菌剤の消耗時の補給を容易に行う。
【解決手段】洗浄水を貯留する水タンク3に、温水ヒータ26及びサーミスタ27を設け制御回路12により、洗浄水の温度が使用者により設定された設定温度を保つように制御する。水タンク3の底部の排水口38を開閉可能に塞ぐ栓部材39に、カートリッジ式除菌装置35を組込む。カートリッジ式除菌装置35を、格子状のケース内に、徐溶性ガラス固溶体からなるブロック状の多数個の除菌剤を収容して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水を貯留する水タンクと、この水タンクから供給される洗浄水を人体の尻部分に向けて噴射する洗浄ノズルとを備えてなる温水洗浄便座に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温水洗浄便座は、洋式便器に設置され、用便後に洗浄ノズルから洗浄水を噴射して使用者の尻部分(肛門や女性の局部)を洗浄する機能を備えている。この温水洗浄便座では、数回分相当量の水(洗浄水)を貯留する水タンクを備えると共に、この水タンクにヒータを取付け、設定された温度、例えば体温程度に水タンク内の水を加熱し、温水化しておくものが一般的である。
【0003】
ところが、水タンク内の水は、たとえ清浄な上水が供給されるものであっても、加熱により塩素が蒸発するため、僅かに含まれていた雑菌類(緑膿菌やセラチア菌等)が繁殖し、汚染されることが指摘されている。この場合、健康な人には問題ない程度であるももの、尻に病気や傷があるような場合には、注意が必要となる。そこで、例えば特許文献1には、温水洗浄便座において、給水配管途中や水タンク内に、殺菌性の銀イオンを発生させる金属イオン発生装置を設けて、雑菌の繁殖を防止することが開示されている。また、別の例として、例えば特許文献2には、水タンク内に、除菌成分が水中に徐々に溶け出すようにした除菌剤を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336856号公報
【特許文献2】特開2008−121303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、金属イオン発生装置が、アノードに銀電極を用いた電気分解によって殺菌性の銀イオンを発生させる構成となっているため、装置が大掛かりとなって高価、大型となる等の不具合がある。これに対し、特許文献2の水タンク内に除菌剤を設ける構成では、比較的安価で簡易に実施することができる。しかし、この特許文献2の構成では、水タンク内の抗菌剤が消耗して効果がなくなった際の、補給や交換についての考慮がなされておらず、改善の余地が残されている。
【0006】
即ち、この種の抗菌剤は、水中に徐々に溶け出すものが採用され、かなりの長寿命となっているが、抗菌剤の消耗の度合は、洗浄の使用頻度によって異なってくる。家庭のトイレなどの使用頻度が比較的低い場合には、抗菌剤の消耗が比較的遅い事情があるのに対し、公共的なトイレなどの使用頻度が高い場合には、抗菌剤は早期に消耗する。抗菌剤が消耗した(寿命に達した)場合には、補給や交換が必要となるが、水タンクは、使用者が容易に取外せるように設けられていなかった。また、補給の必要がない程度の多量の抗菌剤を設けておくことも考えられるが、これでは、コストや配設スペースが大きくなると共に、使用頻度が低い場合に無駄が大きくなる不都合が生ずる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、抗菌剤により水タンク内の雑菌の繁殖を抑制し、安心して使用できる洗浄水を供給することができながらも、前記抗菌剤の消耗時の補給を容易に行うことができる温水洗浄便座を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の温水洗浄便座は、洗浄水を貯留する水タンクと、この水タンクから供給される洗浄水を人体の尻部分に向けて噴射する洗浄ノズルとを備えるものにおいて、前記水タンクに、徐溶性ガラス固溶体からなる除菌剤をケース内に収容してなり、前記除菌剤の抗菌成分が該水タンク内の水に徐々に溶け出すように構成されたカートリッジ式除菌装置が、外部からの着脱が可能に取付けられているところに特徴を有する。
【0009】
これによれば、洗浄水を貯留する水タンクにカートリッジ式除菌装置が取付けられることにより、除菌剤の抗菌成分が水タンク内の水に徐々に溶け出していき、水タンク内の雑菌の繁殖が抑制される。このとき、カートリッジ式除菌装置は、外部から取外すことが可能なので、抗菌剤の消耗時等において、水タンクから取外して抗菌剤の補給、あるいは全体の交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温水洗浄便座によれば、水タンクに、カートリッジ式除菌装置を外部から着脱可能に取付ける構成としたので、抗菌剤により水タンク内の雑菌の繁殖を抑制し、安心して使用できる洗浄水を供給することができながらも、抗菌剤の消耗時の補給を容易に行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、温水洗浄便座の外観を示す斜視図
【図2】本体に設けられる給水の経路を概略的に示す図
【図3】制御回路を中心とした電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】栓部材及びカートリッジ式除菌装置が水タンクの排水口部分に取付けられている様子を示す概略的な縦断面図
【図5】カートリッジ式除菌装置及び栓部材の分解斜視図
【図6】洗浄水の不使用時に制御回路が実行する制御の手順を示すフローチャート
【図7】本発明の他の実施例を示すもので、図4相当図
【図8】栓部材と一体化されたカートリッジ式除菌装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1ないし図6を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係る温水洗浄便座1の外観を示しており、図2は、温水洗浄便座1の給水経路の概略構成を示している。更に、図3は、温水洗浄便座1の電気的構成を概略的に示している。
【0013】
ここで、図1に示すように、温水洗浄便座1の本体2は、洗浄水を貯留する水タンク3(図2参照)等を内部に有して構成され、洋式便器Lの上面後部に取付けられている。この本体2の前部には、便座4が開閉可能に取付けられていると共に、その便座4の上面を塞ぐための蓋5が開閉可能に取付けられている。前記便座4には、線ヒータからなる便座ヒータ6(図3にのみ図示)が組込まれている。また、便座4の後部に位置して、使用者の着座を検出する赤外線センサからなる人感センサ7が設けられている。
【0014】
さらに、前記本体2の前部には、便座4の下側に位置して、洗浄ノズル8が設けられている。詳しい図示や説明は省略するが、この洗浄ノズル8は、使用者のお尻(肛門)を洗うためのお尻用ノズルと、女性の局部を洗うためのビデ用ノズルとを含んで構成されている。このとき、洗浄ノズル8は、図2、図3に示すノズル駆動モータ9を駆動源とする移動機構によって、使用位置と退避位置との間で前後に移動するように構成されている。尚、本実施例では、ノズル洗浄チューブ34(図2参照)や吐出口が設けられ、洗浄ノズル8に対して洗浄水を噴射して洗浄することが可能に構成されている。
【0015】
図1に示すように、前記本体2の左側部には、コントロールパネル10が設けられている。このコントロールパネル10の表面部には、各種操作スイッチ11が操作可能に設けられていると共に、表示ランプやリモコンセンサ等が設けられている。詳しい説明は省略するが、前記各種操作スイッチ11には、お尻スイッチ、ビデスイッチ、停止スイッチ、噴出圧調整キー、洗浄水温度設定キー、便座温度設定キー、ノズル洗浄スイッチ、脱臭スイッチ等が含まれる。このコントロールパネル10の内部(裏面側)には、全体を制御する制御回路12(図3参照)等を実装した回路基板等の電装品が設けられている。
【0016】
また、図1に示すように、本体2内(水タンク3)には、上水道の水が、給水分岐栓13及び便座給水管14を介して供給されるようになっている。給水分岐栓13の他方の出口は、給水管15を介して、便器L内を洗浄する水を貯留するための図示しないロータンクに接続されている。尚、本体2には、電源線16及びプラグ17を介して商用電源が与えられ、またアース線18を介して接地される。
【0017】
次に、図2を参照しながら、前記本体2に設けられる給水の経路について述べる。上記した水タンク3には、一定量(洗浄動作数回分相当量)の洗浄水が溜められると共に、その洗浄水を設定された温度(例えば人の体温程度)に加熱して温水化される。前記便座給水管14の先端部は、ホース連結部19に接続され、水道水が供給される。ホース連結部19に供給された水は、減圧弁20で適切な水圧に調整される。その後、給水用電磁弁21が開放されることによって、給水ホース22を介して水タンク3に供給される。
【0018】
前記水タンク3には、該水タンク3内の水位を検出するフロートスイッチ23が設けられており、図3に示すように、その検出信号が制御回路12に入力される。制御回路12は、フロートスイッチ23からの信号に応じて、水タンク3内の水位が予め定められた規定水位になるように、給水用電磁弁21を開閉制御する。尚、水タンク3には、上限水位を超えた水を便器L内に排出するオーバーフロー管24が設けられている。また、水タンク3の内圧が異常に上昇したときに圧力を放出する過圧安全弁25も設けられている。
【0019】
そして、水タンク3には、内部の洗浄水を設定温度に調整するための水温調整装置が設けられる。この水温調整装置は、水タンク3内に加熱手段たる例えばシーズヒータ等の温水ヒータ26を設けると共に、水タンク3内の洗浄水の温度を検知する温度検知装置としてのサーミスタ27を設けて構成され、制御回路12の制御を含めて実現される。この場合、図3に示すように、サーミスタ27の温度検知信号が制御回路12に入力され、制御回路12は、洗浄水の温度が設定温度を保つように、温水ヒータ26を制御する。
【0020】
尚、前記設定温度は、例えば常温(20℃)から45℃以下の範囲で使用者が設定することができる。また、本実施形態では、前記サーミスタ27は、水タンク3のうち、図で左側の底部寄り部分(後述する排水口(栓部材)の近傍)に位置して設けられている。前記温水ヒータ26部分には、サーモスタット28及び温度ヒューズ29が設けられ、過熱時の安全確保が図られている。
【0021】
上記のように水タンク3に貯留され設定温度の温水とされた洗浄水は、流量調節バルブ30及びエアポンプ31(図3にのみ図示)の駆動により、前記洗浄ノズル8に供給されて噴射されるようになっている。このとき、流量調節バルブ30には、エアホース31aを介してエアポンプ31が接続されており、水タンク3内の洗浄水は、空気が混合された状態で洗浄ノズル8から噴射される。
【0022】
前記流量調節バルブ30は、洗浄水の噴出圧力の調整を行うと共に、洗浄水の流路を、お尻洗浄チューブ32(お尻用ノズル)、ビデ洗浄チューブ33(ビデ用ノズル)、ノズル洗浄チューブ34(吐出口)の三者のいずれかに切替える機能を備えている。これにより、お尻洗浄モード、ビデ洗浄モード、ノズル洗浄モードの3種類の洗浄モードの実行が可能とされている。
【0023】
図3は、温水洗浄便座1における、前記制御回路12を中心とした電気的構成を概略的に示している。制御回路12は、コンピュータ(CPU)を主体として構成され、前記コントロールパネル10の操作スイッチ11の操作信号が入力されると共に、人感センサ7、フロートスイッチ23、サーミスタ27からの信号が入力されるようになっている。そして、制御回路12は、それら入力信号に基づいて、前記便座ヒータ6、駆動モータ9、給水用電磁弁21、温水ヒータ26、流量調節バルブ30、エアポンプ31を制御し、洗浄ノズル8による洗浄動作などを行うようになっている。
【0024】
さて、前記水タンク3には、該水タンク3内部における雑菌の繁殖を抑制するための、カートリッジ式除菌装置35が設けられる。図4及び図5に示すように、このカートリッジ式除菌装置35は、プラスチック製のケース36内に、ブロック状(砕片状)の多数個の除菌剤37を収容して構成されるのであるが、本実施例では、図2にも示すように、水タンク3の底部に設けられた排水口38を開閉可能に塞ぐ栓部材39に組込まれて設けられている。
【0025】
即ち、前記水タンク3の下部である底部のうち、図2で左側部位には、排水口38が設けられている。この排水口38は、例えばメンテナンスのために、便器Lから本体2を取外したり移動させたりする時などにおいて、水を排出して水タンク3内を空にするために設けられる。図4に示すように、この排水口38は、内周面に雌ねじ部38aを有した形態で設けられている。
【0026】
前記栓部材39は、図4及び図5に示すように、径大な円板状をなすつまみ部39aと、その上面部に突出する径小な雄ねじ部39bとを一体的に有している。さらに、雄ねじ部39bの上端面の中央部には、円形の嵌合凹部39cが形成されている。この栓部材39は、前記排水口38の雌ねじ部38aに対し、雄ねじ部39bを下方からねじ込むことにより、排水口38を着脱可能に塞ぐように構成されている。このとき、栓部材39のつまみ部39aの上面には、リング状のパッキン40が設けられており、このパッキン40が水タンク3の外底面の排水口38の周囲に密着することにより、排水口38と栓部材39との間が液密にシールされる。
【0027】
これに対し、前記カートリッジ式除菌装置35のケース36は、前記排水口38(雌ねじ部38a)の内径よりもやや小さい外径寸法を有し、下面部(底部)に下方に突出した径小な口部36aを有する円筒容器状(ボトル状)をなしている。これと共に、ケース36の外周面が格子状(網目状)とされることにより、多数個の透孔36bを有した通水性のあるものとされている(図4では透孔36bを模式的に示す)。このケース36の口部36aの外径寸法は、前記栓部材39の嵌合凹部39cの内径寸法に対応し、嵌合可能に構成されている。前記口部36aの外周面には、Oリング41が嵌め込まれる溝が設けられている。
【0028】
前記除菌剤37は、抗菌性を呈する金属元素、例えば銀を均一に含んだリン酸系ガラス(又はホウ酸系ガラス)等の徐溶性ガラス固溶体からなり、前記ケース36の口部36aを通過(内部への詰め込み)可能で、透孔36b(網目)よりも十分に大きいブロック状(砕片状)をなしている。また、この除菌剤37は、例えば少量のコバルト元素が含まれていることにより、ブルーに着色されている。尚、この抗菌剤37に関しては、本出願人の先の出願に係る特開2008-121303号公報などに詳しい。
【0029】
カートリッジ式除菌装置35は、ケース36内に多数個の除菌剤37を収容した状態で、ケース36の口部36aの外周にOリング41を配し、その口部36aを前記栓部材39の嵌合凹部39cに押込んで嵌合させることにより、栓部材39に取外し可能に取付けられる。そして、カートリッジ式除菌装置35を排水口38から水タンク3内に差込むようにしながら、栓部材39を排水口38に取付けることによって、カートリッジ式除菌装置35は、水タンク3に外部からの着脱が可能に取付けられる。
【0030】
この状態では、カートリッジ式除菌装置35が、水タンク3内の水に浸り、除菌剤37の除菌成分(銀イオン)が徐々に溶け出すようになっている。またこのときには、カートリッジ式除菌装置35は、上記した温度検知装置たるサーミスタ27の近傍に位置して設けられることになる。尚、水タンク3(排水口38)からの栓部材39及びカートリッジ式除菌装置35の取外し、並びに、栓部材39からのカートリッジ式除菌装置35(ケース36)の取外しの作業も、容易に行うことができることは勿論である。
【0031】
そして、本実施例では、後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、前記制御回路12は、そのソフトウエア構成(制御プログラムの実行)により、水タンク3内の洗浄水が使用されない状態が一定時間(第1の設定時間)以上(例えば2〜3日)継続した場合に、洗浄水の設定温度を自動で低下させる制御を行う。更に、制御回路12は、水タンク3内の洗浄水が使用されない状態が上記第1の設定時間より長い所定時間(第2の設定時間)以上(例えば1週間)継続した場合には、次に洗浄水を使用する際に、最初は人体には用いずに洗浄ノズル8の洗浄に利用し、その後に通常の利用に戻すような制御を実行する。この場合、例えば水タンク3内の20%程度の洗浄水を、洗浄ノズル8の洗浄に利用することができる。
【0032】
次に、上記構成の作用について、図6も参照しながら説明する。上記構成の温水洗浄便座1においては、水タンク3内の水は、たとえ清浄な上水が供給されるものであっても、温水ヒータ26により加温されることにより、僅かに含まれる雑菌類(緑膿菌やセラチア菌等)が繁殖する虞がある。ところが、本実施例では、洗浄水が貯留される水タンク3内に、ケース36内に除菌剤37を収容したカートリッジ式除菌装置35が設けられている。これにより、除菌剤37の除菌成分(例えば銀イオン)が、水タンク3内の洗浄水に徐々に溶け出していくので、水タンク3内の雑菌の繁殖を抑制することができ、常に清浄な洗浄水を提供することができる。
【0033】
この場合、カートリッジ式除菌装置35に用いられている除菌剤37は、徐溶性ガラス固溶体から構成されていることにより、長期間(例えば数年〜10年程度)の継続使用が可能であるが、使用を継続すると、遂には消耗が進んで交換が必要となる状態に至る。このとき、カートリッジ式除菌装置35は、外部から取外すことが可能なので、抗菌剤37の消耗時等において、水タンク3から容易に取外して新しいカートリッジ式除菌装置35に交換する(あるいは抗菌剤37を補給する)ことができる。
【0034】
本実施例では、カートリッジ式除菌装置35は、栓部材39に組込まれて設けられるので、栓部材39の開閉動作によって、カートリッジ式除菌装置35に着脱も行うことができ、カートリッジ式除菌装置35の交換(着脱)の作業を使用者でも容易に行うことができる。カートリッジ式除菌装置35を別途に設ける場合と異なり、排水口38をカートリッジ式除菌装置35の取付用の穴と兼用できるので、水タンク3に別途に穴を開ける必要も無く、構成を簡単に済ませることができる。
【0035】
ここで、上記した除菌剤37は、洗浄水の温度によって抗菌成分の溶け方、つまり抗菌剤濃度が変動する事情があり、洗浄水の温度が高くなるほど抗菌成分の水への溶解性が大きくなる。ところが、本実施例では、カートリッジ式除菌装置35を、洗浄水の温度制御用のサーミスタ27の近傍に位置して設けるようにしている。これにより、カートリッジ式除菌装置35の周辺の洗浄水の温度が、設定温度でほぼ一定に保たれるようになる。従って、洗浄水中の抗菌剤濃度をほぼ一定に保つことができ、安定した除菌性能を得ることができると共に、抗菌剤37の寿命も安定させることができる。
【0036】
ところで、上記温水洗浄便座1においては、公共のトイレか一般家庭用のトイレか等によって使用頻度が異なり、使用頻度が比較的低い例えば家庭用トイレの場合には、洗浄水を長期間(例えば数日間)使用しないケースも生ずる。このとき、特に洗浄水の設定温度が比較的高い場合には、抗菌剤37の抗菌成分が必要以上に水タンク3内に溶け出してしまう虞がある。つまり、長時間に渡って洗浄水の使用がない場合には、水タンク3内に残留する雑菌がほとんど死滅するので、洗浄水中の抗菌成分の濃度をそれ以上高める必要はない。
【0037】
また、長時間に渡って洗浄水の使用がなく、洗浄水中の抗菌成分の濃度が比較的高くなっていると、特に除菌剤37がリン酸カルシウムを含む場合に洗浄水のpHが下がり、その洗浄水を洗浄に使用すると、例えば肛門部分に炎症がある人では、刺激となる虞がある。そこで、本実施例では、そのような不都合を解消するために、制御回路12は、洗浄水の不使用時において、図6のフローチャートで示される手順で制御を行う。
【0038】
即ち、ステップS1で、洗浄ノズル8による洗浄動作(洗浄水の使用)を確認した後、ステップS2にて計時動作を実行(開始)する。ステップS3では、洗浄水の不使用状態のまま、第1の設定時間(例えば2,3日)が経過したかどうかが判断される。連続不使用時間が、第1の設定時間以内であれば(ステップS3にてNo)、ステップS2にて、計時動作が継続される。尚、図示はされていないが、このステップS2、S3のループの途中で洗浄の動作(洗浄水の使用)があった場合には、計時動作がクリア(リセット)される。
【0039】
連続不使用時間が、第1の設定時間を越えた場合には(ステップS3にてYes)、次のステップS4にて、洗浄水の設定温度を強制的に低下させる制御が行われる。この場合、例えば、設定温度が最低温度(20℃)まで低下される。この時点では、水タンク3内の洗浄水中の抗菌成分の濃度が十分に高くなっており、水タンク3内に残留する雑菌がほとんど死滅している。従って、設定温度が強制的に低下されることによって、以降は、抗菌剤37の抗菌成分が必要以上に水タンク3内に溶け出して高濃度となってしまうことを抑制することができ、その分、抗菌剤37の寿命を高めることができる。
【0040】
次のステップS5では、引続き計時動作が継続され、次のステップS6では、洗浄水の不使用時間が、第2の設定時間(例えば1週間)を越えたかどうかが判断される。連続不使用時間が、第2の設定時間以内であれば(ステップS6にてNo)、ステップS5にて、計時動作が継続される。この場合も、図示はしていないが、このステップS5、S6のループの途中で洗浄の動作(洗浄水の使用)があった場合には、計時動作がクリア(リセット)されると共に、設定温度が元に戻される。
【0041】
そして、連続不使用時間が、第2の設定時間を越えた場合には(ステップS6にてYes)、その後は、ステップS7以降の処理が実行される。この処理では、使用者の便座4への着座が人感センサ7により監視される(ステップS7)。そして、着座が検知されたときには(ステップS7にてYes)、ステップS8にて、洗浄水の設定温度が元に戻されると共に、ステップS9にて、水タンク3内の洗浄水の一部(20%程度)を、ノズル洗浄チューブ34を介して吐出口から噴出させ、洗浄ノズル8を洗浄するノズル洗浄の動作が実行される。
【0042】
この後、ステップS10にて、水タンク3内への水(水道水)の補充が行われ、洗浄水の抗菌剤は希釈される。ステップS11にて、使用者の操作に基づいて、お尻洗浄又はビデ洗浄動作が実行される。これにて、水タンク3内において抗菌剤濃度が比較的高くなっている洗浄水の一部が、まず洗浄ノズル8の洗浄に利用され、その後、抗菌剤濃度をそれより低下させた状態、つまり使用者に刺激のない洗浄水で、局部洗浄が行われることになる。従って、水タンク3内の洗浄水を無駄にすることもなく、抗菌剤濃度が高い洗浄水を尻部分の洗浄に使用せずに済ませることができる。
【0043】
このように本実施例によれば、洗浄水を貯留する水タンク3にカートリッジ式除菌装置35を取付けるようにしたので、抗菌剤37により水タンク3内の雑菌の繁殖が抑制され、安心して使用できる洗浄水を供給することができる。そして、抗菌剤37が消耗した(寿命に達した)場合には、カートリッジ式除菌装置35を外部から取外して、カートリッジ式除菌装置35の交換(抗菌剤37の補給)を容易に行うことができるという優れた効果を得ることができる。抗菌剤37の補給が可能であることにより、カートリッジ式除菌装置35自体を小型で済ませることができ、また抗菌剤37を無駄なく使用できることは勿論である。
【0044】
特に本実施例では、カートリッジ式除菌装置35を、水タンク3の排水口38を開閉可能に塞ぐ栓部材39に組込むように構成したので、水タンク3の構造が簡単に済み、カートリッジ式除菌装置35の着脱作業を使用者が容易に行うことができる。さらに、洗浄水の温度制御用のサーミスタ27をカートリッジ式除菌装置35の近傍に配置したので、カートリッジ式除菌装置35の周辺を一定の設定温度に保つことができ、除菌剤37の洗浄水に溶け出す濃度を一定にして、安定した除菌性能を得ることができる。
【0045】
また、本実施例では、水タンク3内の洗浄水が使用されない状態が一定時間(第1の設定時間)以上継続した場合には、設定温度を自動で低下させるようにしたので、抗菌剤37の寿命を長くすることができる。さらに、水タンク3内の洗浄水が使用されない状態が第2の設定時間以上継続した場合に、次に洗浄水を使用する際には、人体には用いず、洗浄ノズル8の洗浄に利用するような制御が行われるので、抗菌剤37の濃度が比較的高くなった洗浄水を尻部分の洗浄に使用せずに済ませながら、無駄なく利用できるといった利点も得ることができる。
【0046】
図7及び図8は、本発明の他の実施例を示すもので、カートリッジ式除菌装置51及び栓部材52の構成が、上記一実施例と異なっている。即ち、この実施例においても、図7に示すように、水タンク3の底部に、雌ねじ部38aを有する排水口38が設けられ、その排水口38を開閉可能に塞ぐ栓部材52が設けられる。図8にも示すように、この栓部材52は、径大な円板状をなすつまみ部52aと、その上面部に突出する径小な雄ねじ部52bとを一体的に有している。つまみ部52aの上面には、リング状のパッキン40が設けられる。
【0047】
一方、カートリッジ式除菌装置51は、図7、図8に示すように、上下両面が開口すると共に、外周壁が多数の透孔53aを有する格子状(網目状)とされた円筒状をなすケース53内に、多数個の除菌剤54が収容されて構成される。図8に示すように、前記ケース53の上面開口部には、やはり網目状の蓋55が開閉可能に設けられ、該蓋55の開閉によって、除菌剤54の収容(補給)が可能とされている。
【0048】
前記除菌剤54は、やはり、抗菌性を呈する金属元素、例えば銀を均一に含んだリン酸系ガラス(又はホウ酸系ガラス)等の徐溶性ガラス固溶体からなり、前記透孔53a(網目)よりも十分に大きいブロック状(砕片状)をなしている。このとき、除菌剤54は、金属酸化物が含まれることによって着色されている。この着色用の金属酸化物として、例えば酸化コバルト、酸化第一鉄、酸化マンガンを採用することができ、夫々、濃紺、緑、茶褐色の色を呈する。
【0049】
そして、前記ケース53の下端部は、前記栓部材52の雄ねじ部52bの上面部に対し、一体的に接続された形態に設けられている。このとき、図7に示すように、栓部材52の中心部には、つまみ部52aから雄ねじ部52bにかけて、雄ねじ部52bの上壁部を除いて、下面が開放した中空部52cが設けられている。そして、雄ねじ部52bの上壁部分に、中空部52cに面して透明性のある円形の窓材56が設けられている。この窓材56は、ケース53の底面を構成することになる。この窓材56としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂等の透明プラスチックや、ガラスなどを採用することができる。
【0050】
このように構成されたカートリッジ式除菌装置51は、栓部材52を排水口38に取付けることによって、水タンク3内に外部からの着脱が可能に取付けられる。この取付状態では、カートリッジ式除菌装置51は、水タンク3内の水に浸り、除菌剤54の除菌成分(銀イオン)が徐々に溶け出すことにより、水タンク3内の雑菌の繁殖が抑制され、安心して使用できる洗浄水を供給することができる。
【0051】
そして、抗菌剤54が消耗した(寿命に達した)場合には、カートリッジ式除菌装置51を栓部材52と共に、水タンク3から取外し、蓋55を開けて抗菌剤54を補給し、蓋55を閉めた後、再びカートリッジ式除菌装置51を栓部材52と共に水タンク3に装着することができる。この場合、水タンク3に対するカートリッジ式除菌装置51の着脱の作業を、外部から使用者が容易に行うことができる。
【0052】
このとき、本実施例では、栓部材52に、カートリッジ式除菌装置51のケース53内の除菌剤54を外部から透視可能とする窓材56が設けられているので、使用者は、栓部材52(カートリッジ式除菌装置51)を水タンク3に付けたままで、いちいち取外すことなく、外部からケース53の内部の除菌剤54の消耗の様子を目視にて確認することができる。従って、時期を誤ることなく除菌剤54の補給を行うことができる。また、除菌剤54が着色されていることにより、除菌剤54を目視にて確認する際に、より見やすくすることができる。
【0053】
尚、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような拡張、変更が可能である。即ち、上記各実施例では、水タンク3の底部に排水口38(栓部材39,52)を設けるようにしたが、水タンクの下部側面に排水口を設け、栓部材ひいてはカートリッジ式除菌装置を横向きに設ける構成としても良い。また、水タンクに対し、排水口38(栓部材39,52)とは別の位置にカートリッジ式除菌装置を設けるようにしても良い。栓部材自体を透明材料から構成して、カートリッジ式除菌装置のケース内部を透視可能としても良い。
【0054】
更には、カートリッジ式除菌装置の構成としても、例えばケースの形状や栓部材に対する取付構造等について、様々な変形が可能であることは勿論である。また、除菌剤の種類、着色のための材料、制御における設定時間や温度等の具体的数値などについても、一例を示したに過ぎず、各種の変更が可能である。その他、温水洗浄便座の具体的な構成についても種々の変更が可能であり、例えば、洗浄ノズル8は、お尻用ノズルとビデ用ノズルとの2つを備える構成としたが、1個のノズルの位置や角度を変更することにより、両ノズルを兼用させる構成としても良い等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は温水洗浄便座、2は本体、3は水タンク、8は洗浄ノズル、12は制御回路、26は温水ヒータ(水温調整装置)、27はサーミスタ(温度検知装置)、30は流量調節バルブ、31はエアポンプ、34はノズル洗浄チューブ、35,51はカートリッジ式除菌装置、36,53はケース、37,54は除菌剤、38は排水口、39,52は栓部材、56は窓材を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯留する水タンクと、この水タンクから供給される洗浄水を人体の尻部分に向けて噴射する洗浄ノズルとを備えてなる温水洗浄便座において、
前記水タンクには、徐溶性ガラス固溶体からなる除菌剤をケース内に収容してなり、前記除菌剤の抗菌成分が該水タンク内の水に徐々に溶け出すように構成されたカートリッジ式除菌装置が、外部からの着脱が可能に取付けられていることを特徴とする温水洗浄便座。
【請求項2】
前記水タンクの下部には、排水口が設けられていると共に、その排水口を開閉可能に塞ぐ栓部材が設けられ、
前記カートリッジ式除菌装置は、前記栓部材に組込まれて設けられることを特徴とする請求項1記載の温水洗浄便座。
【請求項3】
前記栓部材には、前記カートリッジ式除菌装置のケース内の除菌剤を外部から透視可能とするための透明性のある窓材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の温水洗浄便座。
【請求項4】
前記除菌剤は、着色されていることを特徴とする請求項3記載の温水洗浄便座。
【請求項5】
温度検知装置による前記水タンク内の洗浄水の温度検知に基づいて、前記洗浄水を設定温度に制御する水温調整装置が設けられ、
前記カートリッジ式除菌装置は、前記温度検知装置の近傍に位置して設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の温水洗浄便座。
【請求項6】
前記水温調整装置は、前記水タンク内の洗浄水が使用されない状態が一定時間以上継続した場合には、前記設定温度を自動で低下させることを特徴とする請求項5記載の温水洗浄便座。
【請求項7】
前記水タンク内の洗浄水が使用されない状態が所定時間以上継続した場合に、次に洗浄水を使用する際には、人体には用いず、前記洗浄ノズルの洗浄に利用することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の温水洗浄便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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