説明

温熱指標検知システム

【課題】 屋外または戸外の一定区域の温熱指標を監視し、熱中症予防に繋がる情報を表示し得る温熱指標検知システムを提供する。
【解決手段】 監視対象となる区域の適当な個所に、黒球温度を測定する温度センサと気温を測定する温度センサの少なくともいずれかと湿度センサを有する測定部1a、1b、1cを少なくとも1箇設置し、離れた場所に設置した表示装置2に、測定値を送信し、測定値をリアルタイムで視認可能とする他、温熱指標が一定値を超えたり、超えることが予測されたりした場合、警告を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定区域内の、温度と湿度を検知し、熱中症を予防するための情報を提供する機能を具備した温熱指標検知システムに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりにより、ジョッギングやウオーキングなどの、手軽に取り組むことが可能な運動や、屋内外で実施できる運動が盛んに行なわれている。このような運動は、環境などを考慮して、適正に行なわないと、特に夏季においては、熱中症を発症する可能性がある。熱中症は、高温多湿の環境が主な原因となって、起こる症状の総称で、熱失神、熱疲労、熱痙攣、熱射病に大別され、症状が重篤になると死亡に至る場合もある。
【0003】
このような暑熱障害の予防を目的に、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)と称する温熱指標が、1950年代にアメリカで提唱されている。これは、乾球温度、湿球温度、黒球温度により、次式で算出され、温湿環境を的確に評価でき、この数値が一定値を超えた場合に運動を止めるのが望ましいとされている。
(1)屋外で日射がある場合
WBGT=(湿球温度)×0.7+(黒球温度)×0.2+(乾球温度)×0.1
(2)室内で日射のない場合
WBGT=(湿球温度)×0.7+(黒球温度)×0.3
【0004】
ここで黒球温度とは、直径が150mm、平気放射率が0.95の艶消し黒色球の中心に位置する温度計の示す温度と定義され、周囲からの熱輻射の影響を観測するために用いられる。そして特許文献1には、黒球温度、気温、湿度を測定するセンサを備え、WBGTを表示し得る温熱指標測定装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、この測定装置によれば、測定装置が置かれた場所、即ち、限られた測定点だけの温熱指標が測定可能であり、例えば学校などの体育館のような一定区域内の温熱指標を監視するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2003−114284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、屋外または戸外の一定区域の温熱指標を監視し、熱中症予防に繋がる情報を表示し得る温熱指標検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題の解決のため、一定区域内の温熱指標を同時に測定して視認可能な状態とするとともに、温熱指標の動向により、適宜警告を発するシステムを検討した結果なされたものである。
【0010】
即ち、本発明は、黒球温度を測定する温度センサと気温を測定する温度センサの少なくともいずれかと湿度センサを有し、一定区域内に少なくとも1箇設置された測定部と、前記測定部で測定した測定値及び前記測定値から得られる温熱指標を表示するための表示装置とを具備してなる温熱指標検知システムにおいて、前記表示装置には、前記測定部が接続され、前記温熱指標が予め設定された数値を超えた場合に、警報を発する機能が設けられてなることを特徴とする、温熱指標検知システムである。
【0011】
また、本発明は、黒球温度を測定する温度センサと気温を測定する温度センサの少なくともいずれかと湿度センサを有し、一定区域内に少なくとも1箇設置された測定部と、前記測定部で測定した測定値及び前記測定値から得られる温熱指標を表示するための表示装置と、前記測定と温熱指標を一定時間毎に記録するための記憶装置とを具備してなる温熱指標検知システムにおいて、前記表示装置及び前記記憶装置には、前記測定部が接続され、前記記憶装置に記憶された測定値の経時変化から、一定時間内に前記温熱指標が予め設定された数値を超えることが予測される場合に、警報を発する機能が設けられてなることを特徴とする、温熱指標検知システムである。
【0012】
また、本発明は、前記温熱指標が、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)であることを特徴とする、前記の温熱指標検知システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定部を設置した一定区域内の温悦指標をリアルタイムで監視でき、温熱指標が設定値を超えたり、設定値を超えそうになったりした場合、適宜警告を発し、当該区域内で、運動競技などを行なっている人が、熱中症に罹るのを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明に係る温熱指標検知システムの一例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に具体的な図に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る温熱指標検知システムの一例を模式的に示す図である。図1において、は、測定部、2は表示装置、3はコンピュータである。
【0016】
測定部1a、1b、1cには、黒球温度、気温、湿度を測定するセンサが内蔵され、それぞれの測定値は、無線または有線で、表示装置2またはコンピュータ3の少なくともいずれかに送信する。表示装置2は、黒球温度、気温、湿度を適宜表示する機能を有し、内蔵するマイクロコンピュータを用いて、各測定値から算出される温熱指標を表示することが可能である。従って、例えば体育館のような施設内の適当な個所に測定部を設置し、と当該施設の利用者の視認が容易な場所に表示装置を設置しておけば、当該施設内の温熱指標の現在値、経時変化、傾向などを的確に把握できる。
【0017】
また、表示装置2に、文字表示や音声や警告音を発する機能を組み込んでおくことにより、温熱指標が予め設定した数値を超えた場合に、当該施設の利用者に警告を発することができる。さらに表示装置2に、マイクロコンピュータの他に、一定時間毎に温熱指標を記憶する機能を搭載させ、さらに、温熱指標の経時変化の記憶値から、温熱指標が危険域に到達するか否かを予測するプログラムをインストールしておくことにより、警告を発することが可能であり、熱中症への予防措置が的確に実施できる
【0018】
警告を発する具体的な方法として、警告音や文字表示の内容の他に、文字の表示色を危険の度合に対応させる手段が有用である。例えば、危険のレベルを(1)危険(2)厳重警戒(3)警戒(4)注意(5)安全の5段階に設定し、それぞれ文字の表示色を、紫、赤、橙、黄、緑とすることで、視覚的に危険のレベルを検知できるようにすることが可能である。
【0019】
なお、前記の機能は、図1における表示装置2に内蔵されたマイクロコンピュータや規則装置を用いて実現できる他、表示装置2には測定値の表示と警告発信の機能だけを付与しておいて、図1に示したように、別途に準備したコンピュータ3を用いることでも実現できる。
【0020】
以上に説明したように、本発明によれば、運動を行なう際に、運動のための利用区域の環境を反映した、熱中症予防に関する情報を、リアルタイムで提供できる温熱指標検知システムの提供が可能となり、無理な運動による障害を未然に防止できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0020】
1a,1b,1c 測定部
2 表示装置
3 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒球温度を測定する温度センサと気温を測定する温度センサの少なくともいずれかと湿度センサを有し、一定区域内に少なくとも1箇設置された測定部と、前記測定部で測定した測定値及び前記測定値から得られる温熱指標を表示するための表示装置とを具備してなる温熱指標検知システムにおいて、前記表示装置には、前記測定部が接続され、前記温熱指標が予め設定された数値を超えた場合に、警報を発する機能が設けられてなることを特徴とする、温熱指標検知システム。
【請求項2】
黒球温度を測定する温度センサと気温を測定する温度センサの少なくともいずれかと湿度センサを有し、一定区域内に少なくとも1箇設置された測定部と、前記測定部で測定した測定値及び前記測定値から得られる温熱指標を表示するための表示装置と、前記測定と温熱指標を一定時間毎に記録するための記憶装置とを具備してなる温熱指標検知システムにおいて、前記表示装置及び前記記憶装置には、前記測定部が接続され、前記記憶装置に記憶された測定値の経時変化から、一定時間内に前記温熱指標が予め設定された数値を超えることが予測される場合に、警報を発する機能が設けられてなることを特徴とする、温熱指標検知システム。
【請求項3】
前記温熱指標は、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の温熱指標検知システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−37495(P2012−37495A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187617(P2010−187617)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(305043272)株式会社サーモポート (2)