説明

測定器及び測定システム

【課題】 現在の測定器の設定値が、そのユーザ自身が更新した値であるか、または他から変更されてしまったかどうかを、全設定値を調べることなく、一見して知ることができる測定器及び測定システムを実現する。
【解決手段】 アクセスにより設定値を更新する測定器において、
前記設定値の更新に応じて変わる設定番号をカウントして保持する設定番号カウント手段と、
前記設定値更新が実行される毎に前記設定番号をインクリメント又はディクリメントする設定処理手段と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスにより設定値を更新する測定器及びネットワークを介してこの測定器にアクセスする外部機器よりなる測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部機器よりアクセスして設定値を更新する測定器に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平7−128094号公報
【0004】
図3は、従来の測定システムの構成例を示す機能ブロック図である。1は測定器であり、自身のキースイッチ入力手段11及びフロッピー(登録商標)ディスク2等のメディアのインターフェースを備えている。
【0005】
測定器1はイーサネット(登録商標)で代表される汎用通信バス3に接続され、この汎用通信バスを介してPC等の外部機器41,42,…4nからの通信コマンドにより渡される設定値S1,S2,…Snにより外部より設定値が更新される。外部機器からの更新に対して、測定器1は外部機器に更新された設定値を返信する。
【0006】
ユーザは、外部機器からの出力コマンドにより、測定器に設定してある設定値を、通信バスを通して読み出すことができる。ユーザは、測定器にあるキースイッチを操作して、測定器に設定値を設定できる。ユーザは、測定器に設定値を保存してあるメディアのファイルを読み込ませて、測定器に設定値を設定できる。設定値を表示できる画面を持つ測定器の場合、ユーザは、設定値を測定器本体の画面に表示することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の測定システムの構成では、次のような問題点がある。
(1)測定器に対して複数のユーザが、通信バス,キースイッチ,メディア等から設定値の変更が可能である場合、夫々のユーザは、現在の測定器の設定値が自分が設定した設定値であるかどうか一見してわからない。
【0008】
例えば、外部機器41,42,…4nが測定器本体に対して、S1,S2,…Snの順に通信コマンドを送信した場合、測定器の設定値は、設定値S1→設定値S2→…設定値Snとなる。従って、最終的な測定器の設定値は設定値Snとなる。従って、各外部機器が、測定器の設定値が自分が設定した値と同じであるかどうかは、出力コマンドを送信して、測定器の現在の設定値を読み出して確認するしかない。
【0009】
(2)外部機器側で測定器本体の持つ設定値と同じイメージを保持してあるような場合、測定器に外部機器を接続して設定を行い、その後、外部機器をはずして、別の外部機器を接続して設定値を更新する。再び元の外部機器を接続すると、元の外部機器は、測定器の設定値が自分が保持している測定器の設定値と同じかどうかは、出力コマンドを送信し、測定器の全設定値を読み出して確認するしかない。
【0010】
従って本発明が解決しようとする課題は、現在の測定器の設定値が、そのユーザ自身が更新した値であるか、または他から変更されてしまったかどうかを、全設定値を調べることなく、一見して知ることができる測定器及び測定システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明の構成は次の通りである。
(1)アクセスにより設定値を更新する測定器において、
前記設定値の更新に応じて変わる設定番号をカウントして保持する設定番号カウント手段と、
前記設定値更新が実行される毎に前記設定番号をインクリメント又はディクリメントする設定処理手段と、
を備えたことを特徴とする測定器。
【0012】
(2)前記設定値は、ネットワークを介して接続される外部機器からのアクセスにより更新されることを特徴とする(1)に記載の測定器。
【0013】
(3)前記設定値は、外部メディアからのアクセスにより更新されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の測定器。
【0014】
(4)前記設定値は、キースイッチからのアクセスにより更新されることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の測定器。
【0015】
(5)前記設定処理手段は、前記外部機器からの参照コマンドに対して前記設定番号を前記外部機器に返信することを特徴とする(2)乃至(4)のいずれかに記載の測定器。
【0016】
(6)前記設定処理手段は、前記外部機器よりのコマンドで前記設定番号カウント手段のカウント値をリセットすることを特徴とする(2)乃至(5)のいずれかに記載の測定器。
【0017】
(7)ネットワークを介して接続される外部機器と、この外部機器からのアクセスにより設定値を更新する測定器よりなる測定システムにおいて、
前記測定器は、前記設定値の更新に応じて変わる設定番号をカウントして保持する設定番号カウント手段と、前記設定値更新が実行される毎に前記設定番号をインクリメント又はディクリメントする設定処理手段と、
を備え、
前記外部機器は、前回更新時に前記測定器から返信された前記設定番号と今回参照時に返信された前記設定番号の一致を判断する比較手段を備える、
ことを特徴とする測定システム。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
(1)ユーザが外部機器より測定器の設定値を更新させる前に、測定器の現在の設定番号を読み出し、その値を前回の設定動作を実行したときの設定番号と比較することで、値が変化していれば測定器の設定が変更されたことがわかり、値が同じであれば前回と設定が同じことがわかる。
【0019】
設定番号を参照することにより、ユーザは、設定値が変更されたか否かを、全設定値を参照することなく知ることができる。即ち、設定番号を参照することにより、ユーザは、測定器の設定状態が自分の設定した通りの状態に成っているか否かを容易に知ることができ、ユーザの予期しない設定状態で、測定器を動作させることがない。
【0020】
(2)設定番号の変化で測定器の設定の変更の有無がわかるため、設定番号が変化したときのみ、ユーザは測定器の設定を確認すればよい。例えば、外部機器から通信により測定器に設定を行なおうとした場合は、まずは設定番号を読み出して、その値が変化したときのみ測定器の全設定値を読み出して確認すればよいので、通信回線の利用率が少なく済み、通信回線の速度が遅くてもトラフィックを軽減することができる。
【0021】
(3)外部機器から通信バスを介して設定を行う場合、外部機器から複数の設定をする途中で別の外部機器から設定動作の要求があった場合に、設定した通信コマンド数と設定番号を比較することで、値が変化していれば、測定器の設定中に他の外部機器からの設定があったことがわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明を適用した測定システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。図3で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付し、説明を省略する。以下、本発明の特徴部につき説明する。
【0023】
100は本発明が適用された測定器である。キースイッチ入力手段101、メディアインターフェース102、通信インターフェース103は、図3で示した従来測定器1と共通の構成要素である。
【0024】
104は、設定処理手段であり、キースイッチ入力手段101からのキー入力、外部メディアインターフェース102を介した外部メディア2からの設定入力を受けて設定値保持手段105の設定値を更新する。
【0025】
更に、通信インターフェース103を介して外部機器からの通信コマンドによる設定入力を受け、設定値保持手段105の設定値を更新すると共に、出力コマンドにより更新された設定値を外部機器に返信する。106は、保持された設定値の表示手段である。
【0026】
107は、設定番号カウント手段である。設定処理手段104は、外部機器からの設定により設定値の更新が正常に終了すると更新された設定値を外部機器に返信すると共にこの設定番号カウント手段107のカウント値を+1インクリメントし、そのインクリメントされたカウント値を外部機器に返信する。
【0027】
設定番号は、電源オフ時にも保持されるメモリ上に置かれる(電池でバックアップされるSRAM等)。設定番号を保持するメモリの大きさ(サイズ)は、いくつでもよい。但し、設定番号に+1の動作を行い、その値がメモリが表せる値の最大値を超えてしまった場合は、設定番号は0に初期化される。
【0028】
図2は、設定処理手段104による信号処理の手順を示すフローチャートである。定周期処理がスタートとすると、ステップS1で設定値更新がチェックされる。更新の場合はステップS2で更新処理を実行し、ステップS3で更新処理の正常終了がチェックされ、正常終了であればステップS4で設定番号カウント値を+1インクリメントして処理を終了する。
【0029】
設定処理手段104は、キースイッチ入力による設定では、ある設定単位ごとに設定を行うので、1個の設定単位が正常終了すると、設定番号カウント手段107のカウント値を+1インクリメントする。メディアからの設定では、ある設定単位ごとに設定を行うので、読み込んだ設定値ファイル中の正常終了した設定単位個数分設定番号を増加させる。
【0030】
設定処理手段104は、外部機器からの参照コマンドを取得した時には、設定番号カウント手段107の現在のカウント値を外部機器に返信する。更に設定処理手段104は、
キースイッチ入力又は外部機器からの指令を受けて設定番号カウント手段107のカウント値をゼロにリセットさせる。設定番号をリセットさせる機能を追加することにより、設定番号の変化が「0」または「それ以外の数値」によって表されるため、設定の変更がわかりやすくなる。
【0031】
400は、本発明が適用された外部機器であり、複数の外部機器の1台の構成を代表して説明する。401は通信インターフェースであり、汎用通信バス3を介して測定器100と通信する。
【0032】
402は、コマンド処理手段であり、設定手段403からの設置値の更新要求を受け通信コマンドにより設定値を測定器100に渡し、出力コマンドにより更新された設定値の返信を受けて表示手段404に現在設定値を表示する。
【0033】
コマンド処理手段402は、出力コマンドで更新された設定値の返信を受け取ると共に設定番号カウント手段107のカウント値の返信を受け、前回カウント値保持手段405にラッチ保持させる。
【0034】
コマンド処理手段402は、前回の設定値更新から所定の時間経過して新たに設定値更新を実行するに先立って、参照コマンドを測定器1に渡すことで、設定処理手段104は設定番号カウント手段107の現在のカウント値を取得して外部機器400に返信する。
【0035】
コマンド処理手段402は、返信されたカウント値を今回カウント値保持手段406にラッチ保持させる。前回カウント値保持手段405の保持値と今回カウント値保持手段406の保持値とは表示手段404により比較表示される。
【0036】
比較の結果前回と今回の保持値が一致していれば、所定期間前の設定更新の実行から現在まで他の外部機器による測定器100に対する設定更新は実行されていないことがわかる。不一致であれば所定期間前の設定更新の実行から現在までに他の外部機器による測定器100に対する設定更新が既に実行されていることがわかる。
【0037】
外部機器から複数の設定更新を実行をする途中で、別の外部機器から設定更新の要求があった場合には、設定した通信コマンド数と返信された設定番号カウント値とを比較することで、値が増加していれば、測定器の設定中に他の外部機器からの設定があったことがわかる。
【0038】
本発明の測定システムでは、次の手順を実行する。
(1)測定器に接続している外部機器は、設定値を送信する前に、設定番号を読み出す。
(2)外部機器から複数の設定値を送信し、測定器に設定値を更新する。
(3)外部機器は、測定器の設定番号カウント値を読み出し、あらかじめ読み出していた設定番号カウント値と比較する。
【0039】
比較の結果次のことがわかる
(1)設定番号カウント値の増加分が、自分が送信した設定コマンド個数分と同じであれば、測定器の状態は自分が設定した通りの状態である。
(2)設定番号カウント値の増加分が、自分が送信した設定コマンド個数分と同じでなければ、測定器の状態は、自分が設定した通りの状態とはなっていない。その理由は、設定がエラーになってしまったか、あるいは他のユーザが設定をしている間に割り込んで設定を更新したかである。
【0040】
以上説明した実施形態では、通信バスとして汎用通信バスを示したが、シリアル通信バス、専用通信バスによる回線でもよい。この通信バスに接続する外部機器は、汎用のPCに限定されるものではなく、設定動作(設定コマンドによる設定)が実行でき、設定番号が読み出せるものであれば何でもよい。
【0041】
測定器に備える設定番号カウント手段107は設定番号の更新により+1インクリメントする実施形態を示したが、あらかじめ初期値をプリセットしておき、設定番号の更新により−1ディクリメントする形態を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を適用した測定システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】設定処理手段104による信号処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】従来の測定システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
2 メディア
3 汎用通信バス
100 測定器
101 キースイッチ入力手段
102 外部メディアインターフェース
103 通信インターフェース
104 設定処理手段
105 設定値保持手段
106 表示手段
107 設定番号カウント手段
400 外部機器
401 通信インターフェース
402 コマンド処理手段
403 設定手段
404 表示手段
405 前回カウント値保持手段
406 今回カウント値保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスにより設定値を更新する測定器において、
前記設定値の更新に応じて変わる設定番号をカウントして保持する設定番号カウント手段と、
前記設定値更新が実行される毎に前記設定番号をインクリメント又はディクリメントする設定処理手段と、
を備えたことを特徴とする測定器。
【請求項2】
前記設定値は、ネットワークを介して接続される外部機器からのアクセスにより更新されることを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記設定値は、外部メディアからのアクセスにより更新されることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定器。
【請求項4】
前記設定値は、キースイッチからのアクセスにより更新されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の測定器。
【請求項5】
前記設定処理手段は、前記外部機器からの参照コマンドに対して前記設定番号を前記外部機器に返信することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の測定器。
【請求項6】
前記設定処理手段は、前記外部機器よりのコマンドで前記設定番号カウント手段のカウント値をリセットすることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の測定器。
【請求項7】
ネットワークを介して接続される外部機器と、この外部機器からのアクセスにより設定値を更新する測定器よりなる測定システムにおいて、
前記測定器は、前記設定値の更新に応じて変わる設定番号をカウントして保持する設定番号カウント手段と、前記設定値更新が実行される毎に前記設定番号をインクリメント又はディクリメントする設定処理手段と、
を備え、
前記外部機器は、前回更新時に前記測定器から返信された前記設定番号と今回参照時に返信された前記設定番号の一致を判断する比較手段を備える、
ことを特徴とする測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−153722(P2006−153722A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346471(P2004−346471)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】