測定装置
【課題】大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、使用する測定装置全体を小型化する。
【解決手段】捕集した抗原をカタラーゼにより標識された抗体と反応させて抗原抗体複合体を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された抗原抗体複合体に対し過酸化水素を反応させて当該抗原抗体複合体の濃度に応じた酸素を発生させる酸素発生手段と、前記酸素発生手段により発生した酸素を測定する測定手段とを具備する測定装置として測定用チップ8を挿入した測定器3を用いる。酸素の測定には例えば酸素電極を用いる。
【解決手段】捕集した抗原をカタラーゼにより標識された抗体と反応させて抗原抗体複合体を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された抗原抗体複合体に対し過酸化水素を反応させて当該抗原抗体複合体の濃度に応じた酸素を発生させる酸素発生手段と、前記酸素発生手段により発生した酸素を測定する測定手段とを具備する測定装置として測定用チップ8を挿入した測定器3を用いる。酸素の測定には例えば酸素電極を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー原因物質の濃度に関係した測定を行う測定装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症をはじめとするアレルギー症の患者数は毎年、増加の一途をたどっている。アレルギー発症を適切に予防するためには、アレルギーの原因物質である抗原が大気中にどの程度含まれているかを測定することが有効である。例えば、大気中に高濃度の抗原が測定された場合に、マスクなどを装着して抗原に接触しないようにすることで、アレルギー患者等はアレルギー発症を予防する。ところで、一般に花粉予報は、特定の測定地点のデータに基づいて、きわめて広い範囲に対する警告を行うことが多い。しかし、大気中の気流の状況など、局所的な要因が影響するので、患者周辺の実際の花粉量は、花粉予報と乖離する場合がある。アレルギー発症を予防するには、患者周辺における抗原の濃度を正確に測定しなければならないため、周囲の抗原濃度を測定する測定装置が必要である。このような測定装置の技術として、特許文献1には、外部環境から取り込まれた粒子からアレルゲンタンパク質をキャリア液中に抽出して、アレルゲンタンパク質を検出する検出用チップを用いた測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−69997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術において、反応部に形成された抗原抗体複合体の検出を、装置本体内に設けた検出手段で行っているが、標識として蛍光材料を用いているため、検出手段に設けた紫外線光源から紫外線を、反応部の抗原抗体複合体に照射し、標識である蛍光材料から発光される蛍光を検出手段に設けたディテクターにより検出することで、抗原の有無、抗原の量を測定している。このように光学系を検出に用いると、抗体−抗原反応はマイクロチップで行っても検出は従来の大型機械で行うこととなり、測定装置の可搬性はなくなる。
そこで、本発明は、大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、使用する測定装置全体を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本願の請求項1に係る測定装置は、捕集した抗原をカタラーゼにより標識された抗体と反応させて抗原抗体複合体を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された抗原抗体複合体に対し過酸化水素を反応させて当該抗原抗体複合体の濃度に応じた酸素を発生させる酸素発生手段と、前記酸素発生手段により発生した酸素を測定する測定手段とを具備することを特徴とする。
また、本願の請求項2に係る測定装置は、請求項1に記載の態様において、前記酸素発生手段は、酸素の発生に際して磁場を作用させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、光学系の検出装置を使用する場合に比較して、測定装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る抗原測定システムを表す外観図である。
【図2】抗原測定システムの全体構成を表すブロック図である。
【図3】測定用チップを表す外観図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】検出部の構成の概略を示す断面図である。
【図6】図3のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】図4のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】検出部における溶存酸素濃度と磁場発生の有無の関係を示す図である。
【図10】毛細管現象を用いて内部の液を搬送することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.構成
(1)全体構成
図1は、本発明に係る抗原測定システム9を表す外観図である。抗原測定システム9は、測定器3と測定用チップ8を含む。ユーザは、測定用チップ8を測定器3の開口部30に挿入してアレルギーの原因物質である抗原(以下、単に抗原という)の測定を行う。この開口部30は、測定用チップ8を挿入すると、この測定用チップ8に設けられた吸引口20(図3参照)が外部空間に接し、かつ、検出部16(図4参照)が測定器3の筐体で覆われた状態で測定用チップ8を固定するように構成されている。測定器3は、測定結果を表示する表示部32と、ユーザによる測定器3への操作を受け付ける操作部33とを備えている。表示部32は、7セグメントディスプレイやドットマトリックスディスプレイなどにより測定値を表示する表示手段である。操作部33は各種の指示を入力するための操作ボタンを備えており、ユーザによる操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を供給する。なお、本実施形態において測定器3の筐体は、110mm×50mm×20mmの直方体であり、測定用チップ8は、20mm×5mm×0.5mmの板状体であるが、これらのサイズは様々に設計し得る。
【0009】
図2は、抗原測定システム9の全体構成を表すブロック図である。同図は、抗原測定システム9による測定が、測定用チップ8を測定器3に挿入した状態で行われることを示している。測定器3には、上述した表示部32と操作部33に加えて、制御部31、駆動部34、測定部35および磁場発生部36が備えられている。制御部31は、制御回路であるCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの記憶装置とを備えている。制御部31のCPUは、ROMに記憶されているブートローダやEEPROMに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより測定器3の各部を制御する。
【0010】
駆動部34は制御部31によって制御され、測定器3の開口部30に挿入された測定用チップ8を機械的に押圧する装置である。この押圧力を発生させる駆動源は種々のものを用いることができる。例えば、押圧する部材はゴムなどの弾性体でできた袋状をしており、この部材の内部空洞に注入する空気の量により、この部材の形状を変化させて押圧力を発生させる。また、ソレノイドなどの電磁的機構により押圧力を発生させてもよい。
【0011】
測定部35は、制御部31により制御され、測定用チップ8により捕集された抗原の量を測定する。測定用チップ8には樹脂膜型酸素濃度計が供えられており、この樹脂膜型酸素濃度計により示される電流値が抗原の量に対応しているため、測定部35は、この電流値を測定する。磁場発生部36は、コイル等を含み、制御部31により制御されて検出部16に予め定めた強度の磁場を発生させる。
【0012】
(2)測定用チップの構成
図3は、測定用チップ8を表す外観図である。測定用チップ8は、透明な樹脂等を成型した2枚の板を重ね合わせた構造である。図3(a)に示すように、下方側にはチップ基板層1があり、このチップ基板層1の上方にチップ吸引層2が重ねて張り合わされている。チップ吸引層2の上方側の面には、吸引口20が設けられている。そして、チップ吸引層2の側面側には、排出口23が設けられている。測定用チップ8は、吸引口20から大気を吸引して、排出口23から排出する。大気と同伴して搬送される粒子は、測定用チップ8の内部に捕集される。この粒子には抗原が付着している。図3(b)には、この測定用チップ8を排出口23のある側面側から見た様子が示されており、同図に示したIV−IV線とVI−VI線は、後述する図4および図6の断面図の観察方向を表す。
【0013】
(3)チップ基板層の構成
図4は、図3のIV−IV線矢視断面図である。すなわち、図4にはチップ基板層1の断面が示されている。同図に示す溶媒タンク11は、2mm×2mm×0.25mmの空洞であり、1μLの容量を有している。この溶媒タンク11には、粒子や抗原および未反応の抗体等を搬送する溶媒として蒸留水が封入されている。溶媒供給路181は、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、溶媒供給路181は、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、溶媒供給路181は、測定器3の駆動部34による押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0014】
抗体タンク11aは、1mm×1mm×0.25mmの空洞であり、0.25μLの容量を有している。この抗体タンク11aには、カタラーゼで標識された抗体(以下、カタラーゼ標識抗体という)を含んだ蒸留水が封入されている。
【0015】
なお、カタラーゼ標識抗体は以下のようにして生成する。まず、アミン基にチオール反応性を持つマレイミド基を結合させて転換反応を行い、抗体にチオール基を生じさせて抗体に対してDTT(dithiothreitol)処理を行う。そして、抗体が最初の状態から持つジスルフィド結合を還元させる。その後、チオール基とマレイミド基によるカップリング反応を行って標識が結合される。
【0016】
抗体供給路181aは、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、抗体供給路181aは、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、抗体供給路181aは、測定器3の駆動部34により押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0017】
過酸化水素水タンク11bは、1mm×1mm×0.25mmの空洞であり、0.25μLの容量を有している。この過酸化水素水タンク11bには、過酸化水素水が封入されている。過酸化水素水供給路181bは、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、過酸化水素水供給路181bは、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、過酸化水素水供給路181bは、測定器3の駆動部34による押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0018】
溶媒供給ポンプ12は、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、溶媒供給路181が開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、溶媒供給ポンプ12の内部空間の容量が変化する。これにより溶媒供給ポンプ12の内部空間の圧力が溶媒タンク11よりも負圧になり、溶媒供給ポンプ12は、溶媒タンク11に封入された溶媒を反応室13へ搬送する。すなわち、溶媒供給ポンプ12は、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときの溶媒の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0019】
抗体供給ポンプ12aは、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、抗体供給路181aが開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、抗体供給ポンプ12aの内部空間の容量が変化する。これにより抗体供給ポンプ12aの内部空間の圧力が抗体タンク11aよりも負圧になり、抗体供給ポンプ12aは、抗体タンク11aに封入されたカタラーゼ標識抗体を含んだ溶媒(ここでは蒸留水)を反応室13へ搬送する。すなわち、抗体供給ポンプ12aは、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときのカタラーゼ標識抗体を含んだ蒸留水の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0020】
過酸化水素水供給ポンプ12bは、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、過酸化水素水供給路181bが開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、過酸化水素水供給ポンプ12bの内部空間の容量が変化する。これにより過酸化水素水供給ポンプ12bの内部空間の圧力が過酸化水素水タンク11bよりも負圧になり、過酸化水素水供給ポンプ12bは、過酸化水素水タンク11bに封入された過酸化水素水を反応室13へ搬送する。すなわち、過酸化水素水供給ポンプ12bは、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときの過酸化水素水の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0021】
反応室13は、上述したチップ吸引層2に設けられた吸引口20の直下に設けられた円筒状の空間である。反応室13の大きさは直径1mmで深さ50μmであるから、反応室13の容量は、約0.039μLである。この反応室13において、いわゆるELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法が行われる。具体的には、この反応室13は、大気に含まれる粒子に付着した抗原と反応する抗体(以下、固相化抗体という)が予め固定されている固相の面(以下、固相面という)を底に備えている。この固相面に固定された固相化抗体は蒸留水等を反応室13に流してもほとんどが固相面から剥がれず移動しない。また、この固相化抗体はカタラーゼで標識されていないから、過酸化水素と接触しても過酸化水素から酸素を発生させない。溶液排出路182,182a,182bは、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能する。溶液排出路182および溶液排出路182aが開となったときに、反応室13に満たされた溶液は送液ポンプ150へ供給される。溶液排出路182および溶液排出路182bが開となったときに、反応室13に満たされた溶液は第2廃液ポンプ152へ供給される。
【0022】
送液ポンプ150は、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、溶液排出路182および溶液排出路182aを通過した溶液を、送液路183を介して検出部16に搬送する。図5は、検出部16の構成の概略を示す断面図である。同図に示すように、検出部16は、3つのマイクロチャネル16a,16b,16cで構成されている。中央のマイクロチャネル16bは、溶媒の通路として機能するマイクロチャネル16a,16cに挟まれており、その外縁は樹脂膜で形成され、その両端は閉じられている。マイクロチャネル16a,16cのそれぞれの一端は送液路183と接続されており、送液ポンプ150から送液された溶媒は、この送液路183を通ってマイクロチャネル16bの閉じられた一端により、矢線D51方向と矢線D52方向に分けられる。矢線D51方向に流れた溶媒はマイクロチャネル16aを通過し、この溶媒に溶存している酸素は矢線D53方向にマイクロチャネル16bの樹脂膜を透過する。同様に、矢線D52方向に流れた溶媒はマイクロチャネル16cを通過し、この溶媒に溶存している酸素は矢線D54方向にマイクロチャネル16bの樹脂膜を透過する。マイクロチャネル16bの内部には水酸化カリウムや塩化カリウム等の電解液が封入されているほか、金または白金等で構成される作用電極と、銀−塩化銀等で構成される対極(電極)が挿入されている。両方の電極により電圧が印加されると、樹脂膜を透過した酸素が作用電極上で還元反応を起こし、酸素濃度に比例した電流が作用電極と対極をつなぐ外部回路に流れる。作用電極と対極はそれぞれ測定用チップ8の表面に設けられた端子(図示せず)に接続されており、測定器3の測定部35と接続する。そして、測定部35は、上述した酸素濃度に比例した電流を自身の回路に流し、これを測定することで、酸素濃度を特定する。すなわち、マイクロチャネル16bとこれに挿入された電極は、樹脂膜型酸素濃度計を構成する。
【0023】
第1廃液ポンプ151も、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、第1廃液路184も、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能する。第1廃液路184が開けられ、第1廃液ポンプ151が駆動することにより、検出部16に満たされた溶液は廃液タンク17に送液される。また、第2廃液ポンプ152も、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、第2廃液路185も、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能する。第2廃液路185が開けられ、第2廃液ポンプ152が駆動することにより、溶液排出路182および溶液排出路182bを通過した溶液は廃液タンク17に送液される。
【0024】
(4)チップ吸引層の構成
図6は、図3のVI−VI線矢視断面図である。すなわち、図6にはチップ吸引層2の断面図が示されている。上述したように、チップ基板層1のうち、チップ吸引層2の吸引口20の直下には旋回翼21が設けられており、この旋回翼21の下方のチップ基板層1には、反応室13が設けられている。反応室13からは、排出口23へ繋がる流路が設けられている。
【0025】
吸引ポンプ22は、反応室13から排出口23までの流路の間に設けられている。この吸引ポンプ22は、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能する。吸引ポンプ22が反応室13の内部の気体を排出口23に向けて排出することにより、反応室13の内部は吸引口20近傍の周辺大気よりも負圧になり、吸引口20から反応室13へ流れる気流が発生する。なお、この気流の流速は、様々な値に設計することができるが、本実施形態においては、1〜10L/分である。
【0026】
上述したとおり、チップ吸引層2には、吸引口20から反応室13までの間に旋回翼21が設けられている。旋回翼21は、チップ吸引層2またはチップ基板層1の少なくともいずれか一方によって固定された軸と、この軸を中心として回転可能に取り付けられたファンを備えている。このファンは複数の翼を有しており、各翼は軸方向に対して垂直でも平行でもなく、所定の角度で傾斜している。これにより、吸引口20から反応室13へ向かう気流が発生すると、旋回翼21は、これに伴って回転するため、発生した気流を旋回させる。吸引ポンプ22により発生した気流の流路において、旋回翼21は反応室13の固相面よりも上流に設けられているので、反応室13の固相面には、旋回翼21で旋回させられた気流があたる。
【0027】
2.動作
本発明に係る抗原測定システム9の動作を説明する。抗原測定システム9の動作は主に「吸引工程」「第1洗浄工程」「反応工程」「第2洗浄工程」「酸素発生工程」「搬送工程」「測定工程」「排出工程」の8つの工程で構成されている。以下に、各工程について図を用いて説明する。なお、図7は、図4のVII−VII線矢視断面図である。また、図8は、図4のVIII−VIII線矢視断面図である。
【0028】
(1)吸引工程の動作
まず、測定器3の開口部30に測定用チップ8を挿入すると、測定器3の制御部31は、溶媒供給路181、抗体供給路181a、過酸化水素水供給路181b、および溶液排出路182が全て閉塞するように、駆動部34を駆動させる。そして、これら全てが閉塞すると、制御部31は、駆動部34により吸引ポンプ22に対向する押圧部(図示せず)を駆動する。これにより、吸引ポンプ22の容量が変動し、吸引口20から反応室13へ向かう気流が発生する。この発生した気流に伴って、旋回翼21が回転するので、反応室13の内部の気体は旋回する。そして、旋回した気体は反応室13の固相面にあたった後、排出口23から排出される。制御部31は、吸引ポンプ22にこの動作を行わせ、所定時間が経過すると吸引ポンプ22を停止させる。これにより、反応室13の底の固相面に固定された固相化抗体には、吸引した大気に含まれる粒子に付着した抗原が反応し、抗原抗体複合体を形成する。以上が吸引工程の動作である。
【0029】
(2)第1洗浄工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181が開通し、かつ、溶液排出路182aが閉塞状態に保たれるように、駆動部34を駆動させる。溶媒供給路181が開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて溶媒供給ポンプ12に対向する位置に配置された押圧部341(図7に図示)を動かすことにより溶媒供給ポンプ12を作動させる。溶媒供給ポンプ12により、溶媒タンク11に封入されている溶媒が溶媒供給路181を通って反応室13に流れ込む。そして、流れ込んだ溶媒は、反応室13内部の未反応の抗原と粒子を分散する。そして、その後、制御部31は、溶媒供給路181を閉塞させ、かつ、溶液排出路182,182b、および第2廃液路185を開通させるように、駆動部34を駆動させる。溶液排出路182,182b、および第2廃液路185が開通すると、制御部31は、駆動部34により第2廃液ポンプ152を駆動させ、反応室13内部のきょう雑物(粒子等)を含んだ溶媒を廃液タンク17に搬送する。これにより、反応室13の内部のきょう雑物は減少し、固相面に固定された固相化抗体と反応した抗原抗体複合体が残る。以上が第1洗浄工程の動作である。
なお、第1洗浄工程で洗い流されるきょう雑物には未反応の抗原が含まれている場合があるが、反応室13の内部に残留する抗原抗体複合体に含まれる抗原に比べて洗い流される未反応の抗原が多いと、空気中に含まれる抗原の濃度を正確に測定することが困難になる。そこで、収集されると予想される最大の抗原量に対する当量よりも多量の固相化抗体を、反応室13の固相面に固定化しておくことが望ましい。具体的には、反応室13の固相面に或る量の固相化抗体を固定化し、これと反応し得る抗原の当量を算出する。そして、空気中に含まれ得る最大の抗原濃度を予測し、この抗原濃度と吸引する空気量の積から吸引する抗原量を算出する。この吸引する抗原量が、固相化抗体と反応し得る抗原の当量を十分に下回るように、空気の吸引量を決定すればよい。ここで、「十分に下回る抗原量」とは、例えば、抗原−抗体反応が、過剰な固相化抗体の存在下における擬一次反応と見做せる程度の量であり、例えば、固相化抗体と反応し得る抗原の当量に対して10%以下などである。なお、空気の吸引量は、例えば吸引時間で調節すればよい。また、吸引時間と空気中の抗原濃度との相関を示す校正曲線を作成し、例えば、校正曲線の外挿などにより大気中の抗原の総存在量を算出してもよい。
【0030】
(3)反応工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、過酸化水素水供給路181b、および溶液排出路182が閉塞し、抗体供給路181aが開通するように、駆動部34を駆動させる。抗体供給路181aが開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて抗体供給ポンプ12aに対向する位置に配置された押圧部341(図示せず)を動かすことにより抗体供給ポンプ12aを作動させる。抗体供給ポンプ12aにより、抗体タンク11aに封入されているカタラーゼ標識抗体を含んだ溶媒が抗体供給路181aを通って反応室13に流れ込む。そして、流れ込んだ溶媒に含まれたカタラーゼ標識抗体は、反応室13内部に残留している抗原抗体複合体と反応する。ここで、カタラーゼ標識抗体は反応室13内部に残留している抗原抗体複合体に比較して過剰に供給されるため、この反応は抗原抗体複合体の濃度に比例する擬一次反応となる。そして、十分な反応時間を経た後、抗原抗体複合体に含まれる抗原のほぼ全ては、カタラーゼ標識抗体とも反応してカタラーゼにより標識される。以上が反応工程の動作である。
【0031】
(4)第2洗浄工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181が開通し、かつ、溶液排出路182aが閉塞状態に保たれるように、駆動部34を駆動させる。そして、反応室13を溶媒タンク11に封入されている溶媒で洗浄する第2洗浄工程を行う。第2洗浄工程は第1洗浄工程と動作が同じであるため、説明を省略する。これにより、反応室13は洗浄され、残留していた未反応のカタラーゼ標識抗体はほとんどが廃液タンク17へ搬送される。
【0032】
(5)酸素発生工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、抗体供給路181a、および溶液排出路182が閉塞し、過酸化水素水供給路181bが開通するように、駆動部34を駆動させる。過酸化水素水供給路181bが開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて過酸化水素水供給ポンプ12bに対向する位置に配置された押圧部341(図示せず)を動かすことにより過酸化水素水供給ポンプ12bを作動させる。過酸化水素水供給ポンプ12bにより、過酸化水素水タンク11bに封入されている過酸化水素水が過酸化水素水供給路181bを通って反応室13に流れ込む。そして、流れ込んだ過酸化水素水は、反応室13内部に残留している抗原抗体複合体を標識するカタラーゼと反応する。ここで、過酸化水素水は反応室13内部に残留している抗原抗体複合体に比較して過剰に供給されており、第2洗浄工程で未反応のカタラーゼ標識抗体は反応室13に残留していないため、この反応は反応室13に残留しているカタラーゼの濃度に比例する擬一次反応となる。そして、十分な反応時間を経た後、抗原抗体複合体を標識するカタラーゼの濃度に比例した酸素が発生し、溶媒に溶解する。また、このとき制御部31は、磁場発生部36を制御し、磁場発生部36に備えられたコイルに電流を流す。
【0033】
図9は、検出部16における溶存酸素濃度と磁場発生の有無の関係を示す図である。同図に示すように、時間が経過すると磁場を作用させない場合(図中において、「磁場なし」と表記)には溶存酸素濃度(mg/l)が低下するのに対し、磁場を作用させた場合(図中において、「磁場あり」と表記)には溶存酸素濃度に上昇傾向が認められ、濃度低下は少ない。このため、磁場を作用させた場合には、磁場を作用させない場合に比較して検出限界が向上する。以上が酸素発生工程の動作である。
【0034】
(6)搬送工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、抗体供給路181a、過酸化水素水供給路181b、溶液排出路182bおよび第1廃液路184を閉塞し、かつ、溶液排出路182、182aおよび送液路183とが開通するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、駆動部34を駆動させて送液ポンプ150に対向する位置に配置された押圧部343(図8に図示)を動かすことにより、送液ポンプ150を作動させる。これにより送液ポンプ150は、反応室13の内部に満たされている溶液を検出部16へと搬送する。以上が搬送工程の動作である。
【0035】
(7)測定工程の動作
次に、制御部31は、第1廃液路184と送液路183が閉塞するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、測定部35により樹脂膜型酸素濃度計により示される電流値を測定する。具体的には、制御部31は、測定部35により検出部16のマイクロチャネル16bに挿入された2つの電極に流れる電流の電流値を測定する。制御部31は、測定した電流値に応じて予め定められた値に基づいて、溶媒中の溶存酸素濃度を測定する。この溶存酸素濃度は、抗原抗体複合体のほぼ全てを標識したカタラーゼの濃度に対応しており、カタラーゼの濃度は、抗原の濃度と対応しているため、これらの対応関係に基づいて制御部31は、測定した溶存酸素濃度から抗原濃度を算出する。そして算出した抗原濃度を表示部32に表示させる。以上が測定工程の動作である。
【0036】
(8)排出工程の動作
次に制御部31は、第1廃液路184が開通するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、駆動部34を駆動させて第1廃液ポンプ151に対向する位置に配置された押圧部344(図8に図示)を動かすことにより、第1廃液ポンプ151を作動させる。これにより第1廃液ポンプ151は、検出部16の内部に満たされている溶液を廃液タンク17へと搬送する。そして、制御部31は、所定時間に亘り、第1廃液ポンプ151を作動させ続けた後、これらを停止する。これにより、検出部16に残っていた溶液が廃液タンク17に移される。以上が排出工程の動作である。
【0037】
以上により、樹脂膜型酸素濃度計により示される電流値を測定し、溶媒中の溶存酸素から抗原の量が測定されるため、使用する装置全体は小型化される。また、磁場を作用させることにより溶存酸素濃度を上昇させるので、抗原濃度測定の検出限界が向上する。
【0038】
3.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
3−1.変形例1
上述の実施形態においては、抗原抗体複合体を生成して固相に固定し、カタラーゼ標識抗体を用いて抗原を標識し、過酸化水素を反応させることで抗原濃度に応じた酸素を発生させ、発生させた酸素濃度を測定することで抗原濃度を特定したが、抗原そのものではなく、抗原を付着させている抗原担体である粒子の濃度を測定し、その結果から抗原濃度を推測してもよい。ここで、抗原担体である粒子には様々なものが考えられるが、植物の花粉が一般的である。そして、発明者は抗原の濃度と抗原担体である粒子の種類との関係を調査した結果、花粉のように粒子中にデンプンを多く含むもの程、抗原が付着しやすいという知見を得た。そこで、捕集した粒子のデンプン濃度を測定することで、抗原の濃度を推測してもよい。
【0039】
また、この場合、デンプン濃度は、粒子とヨウ素溶液とを混合させて、ヨウ素デンプン反応を生じさせてこの混合液に比色を行うことで、定量化すればよい。この混合液は、得られたヨウ素デンプン複合体に応じた色を呈するからである。
また、ヨウ素あるいはデンプンにイオン物質を結合させてもよい。例えば、測定用チップ8は、イオン物質を蓄積するタンクと、このイオン物質を反応室13に供給するポンプと、反応室13から検出部16までの溶液排出路182に対して、溶液排出路182bから溶液排出路182aに向けての電位を生じさせる電位発生装置とを具備する。そして、測定用チップ8は、粒子に含まれるデンプンにイオン物質を供給して結合させた後、粒子とヨウ素溶液とを混合させてヨウ素デンプン反応を生じさせる。その後、イオン化されたヨウ素デンプン複合体を溶液排出路182に流し、これに対し電位発生装置により電位をかける。ヨウ素デンプン複合体はイオン化されているため電位の方向に濃縮される。したがって、ヨウ素デンプン複合体は、検出部16側へ濃縮される。
また、ヨウ素デンプン複合体の色の変化を測定する場合、蛍光を検出する方法と比較してより強い強度の光情報が得られる。したがって、一般のCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を用いてデンプン濃度を定量することで、抗原濃度を推測してもよい。
また、捕集の際に反応室13を加湿してもよい。例えば、反応室13に捕集した粒子に水蒸気等を接触させることで粒子が加湿されると、この粒子に含まれるデンプンが糊状になる。したがって、糊状になったデンプンを含む粒子は、反応室13の底面等に吸着され、吸引ポンプ22により発生した気流により外部に排出されにくくなる。これにより測定対象の捕集効率が向上する。
【0040】
3−2.変形例2
上述の変形例1のように粒子を捕集する場合には、反応室13の底面等に粒子を吸着させることで捕集効率が向上するが、粒子を吸着させるために反応室13の内部に電荷を与えてもよい。例えば、反応室13の底面に粒子の電荷と反対の電荷を与えると、電荷を与えない場合と比較して、粒子は反応室13の底面に吸着されやすくなる。そして、粒子の洗浄工程において、電荷をオフにすることにより、粒子は反応室の底面から離れやすくなる。これにより、捕集された粒子のハンドリングが容易になる。
なお、この底面は導電性のシールにより構成されていてもよい。この場合には、捕集後にシールをはがすことにより、シールに吸着された粒子が測定される。そして、反応室13に残留する粒子を洗い流す洗浄工程が不要となる。この場合、シールをはがした後、新たなシールを貼ることで、測定用チップ8は繰り返し使用される。
【0041】
3−3.変形例3
また、粒子を捕集する場合には、反応室13の底面に微細な突起を設けてもよい。例えば、反応室13の底面に1μm以下の突起を設け、大気とともに粒子を捕集すると、1μm以下の粒子が反応室13の底面に吸着され、1μmを超える粒子は外部に排出されやすくなる。これにより、捕集したい大きさの粒子を捕集する選択効率が向上する。このような微細突起の製造方法は種々の方法が考えられるが、以下に説明するような自己組織化メカニズムを用いることが好ましい。高分子膜の上に金属薄膜をスポット状に塗布する。そして、これに電荷をかけると溶液中の金属イオンは針状に析出する。このように析出した金属イオンは結晶化した微小なウイスカーとなって反応室13の底面において突起となる。
【0042】
3−4.変形例4
上述の実施形態においては、溶媒タンク11に封入された溶媒を反応室13へ搬送する溶媒供給ポンプ12等には、押圧されることにより変形し、その変化する容量に応じて内部の液を搬送する、いわゆるダイヤフラムポンプが用いられていたが、内部の液を搬送するには種々のものを用いることができる。例えば、毛細管現象を利用して液を搬送してもよい。図10は、毛細管現象を用いて内部の液を搬送することを説明するための図である。図10(a)に示すように、反応室13に溶媒を流入させる入口には、開閉弁13iが、反応室13の内部の溶液を溶液排出路182に排出させる出口には、開閉弁13oがそれぞれ設けられている。ここで、溶液排出路182の直径は溶媒が毛細管現象を起こすのに十分なほど細く形成されているので、開閉弁13iを閉とし、開閉弁13oを開とするだけで、外力なしで反応室13に満たされた溶液は、溶液排出路182に生じる毛細管現象により溶液排出路182に流れ出す。
【0043】
ここで、開閉弁13iまたは開閉弁13oの構成を、開閉弁13oの例を挙げて説明する。図10(b)に示す加熱ヒーター13o1は、制御部31によって制御され、予め定めた熱量を発生させ周囲を加熱する。形状記憶樹脂13o2は、加熱ヒーター13o1により加熱されて所定の温度を超えると、図10(c)に示すように、予め記憶された形状に変形する。この変形により、形状記憶樹脂13o2は図に示す縦の方向に延びるが、加熱ヒーター13o1が剛体であるため、加熱ヒーター13o1と反対側にある溶液排出路182を押圧する。これにより、溶液排出路182は変形して液が流れない状態となる。すなわち、開閉弁13oは閉となる。
【0044】
3−5.変形例5
上述の実施形態においては、測定用チップ8と測定器3は別々の構成であったが、測定用チップ8に測定部35等を設けて、これらを一体としてもよい。特に、上述の実施形態のように、酸素電極によって酸素濃度を測定し抗原濃度を特定する場合には、光学系により測定された光の強度によって抗原濃度を特定する場合に比べて、使用する構成は小さいため、測定部を測定用チップ8に含ませることが容易である。
【0045】
3−6.変形例6
上述の実施形態においては、測定器3に磁場発生部36が備えられていたが、測定器3は磁場発生部を有していなくてもよい。この場合、測定器3は、図9に示す「磁場なし」の溶存酸素濃度を測定する。
【0046】
3−7.変形例7
上述の実施形態においては、反応室13の固相面に固相化抗体を固定化し、これに抗原を反応させていたが、吸引された抗原を固相化抗体に反応させることなく、カタラーゼ標識抗体に反応させてもよい。具体的には、例えば、反応室13の変わりに抗原捕集室13a(図示せず)を設け、溶液排出路182と溶液排出路182aとの間に、きょう雑物を取り除くために開口0.5μmのフィルター(図示せず)を設ける。これにより、0.5μmよりも大きいきょう雑物は、溶液排出路182bを通って廃液タンク17に導かれ、0.5μmよりも小さい抗原は溶液排出路182aに導かれる。そして、溶液排出路182aと送液ポンプ150との間に反応室13b(図示せず)を設け、この反応室13bに、抗体タンク11aからカタラーゼ標識抗体が流れ込むように抗体供給路181aを接続する。これにより、反応室13bに集められた抗原に対して流し込まれたカタラーゼ標識抗体が反応し、抗原抗体複合体が生成する。生成した抗原抗体複合体は、送液ポンプ150、送液路183を通って検出部16に蓄積される。この検出部16には、過酸化水素水タンク11bから過酸化水素水が流れ込むように過酸化水素水供給路181bを接続する。そして、検出部16において、過酸化水素と抗原抗体複合体とを接触させることにより、抗原抗体複合体に含まれるカタラーゼ標識抗体と過酸化水素とを反応させ、これによって発生する酸素の量を測定部35により測定すればよい。
【0047】
ここで、検出部16における酸素濃度の検出感度を上昇させるために、反応室13bで生成した抗原抗体複合体を濃縮することが望ましい。これは例えば、以下のようにして行えばよい。反応室13bから排出される液を通す送液路183の出口を、この送液方向と垂直な方向に広げ、一方の端に検出部16を接続し、他方の端に廃液タンク17を接続する。そして、抗原抗体複合体が検出部16に濃縮されるように送液方向と垂直な方向に電場をかければよい。例えば、抗原抗体複合体は、一般にマイナスに帯電するので、上述した電場のプラス側に検出部16を接続すれば、検出部16に抗原抗体複合体が濃縮され易い。なお、捕集した抗原の量は、廃液タンク17に導かれた液の量と検出部16に導かれた液の量とをそれぞれ測定することで算出した濃縮率と、測定された酸素濃度とから算出すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1…チップ基板層、11…溶媒タンク、11a…抗体タンク、11b…過酸化水素水タンク、12…溶媒供給ポンプ、12a…抗体供給ポンプ、12b…過酸化水素水供給ポンプ、13…反応室、13i…開閉弁、13o…開閉弁、13o1…加熱ヒーター、13o2…形状記憶樹脂、150…送液ポンプ、151…第1廃液ポンプ、152…第2廃液ポンプ、16…検出部、16a,16b,16c…マイクロチャネル、17…廃液タンク、181…溶媒供給路、181a…抗体供給路、181b…過酸化水素水供給路、182,182a,182b…溶液排出路、183…送液路、184…第1廃液路、185…第2廃液路、2…チップ吸引層、20…吸引口、21…旋回翼、22…吸引ポンプ、23…排出口、3…測定器、30…開口部、31…制御部、32…表示部、33…操作部、34…駆動部、35…測定部、36…磁場発生部、8…測定用チップ、9…抗原測定システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー原因物質の濃度に関係した測定を行う測定装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症をはじめとするアレルギー症の患者数は毎年、増加の一途をたどっている。アレルギー発症を適切に予防するためには、アレルギーの原因物質である抗原が大気中にどの程度含まれているかを測定することが有効である。例えば、大気中に高濃度の抗原が測定された場合に、マスクなどを装着して抗原に接触しないようにすることで、アレルギー患者等はアレルギー発症を予防する。ところで、一般に花粉予報は、特定の測定地点のデータに基づいて、きわめて広い範囲に対する警告を行うことが多い。しかし、大気中の気流の状況など、局所的な要因が影響するので、患者周辺の実際の花粉量は、花粉予報と乖離する場合がある。アレルギー発症を予防するには、患者周辺における抗原の濃度を正確に測定しなければならないため、周囲の抗原濃度を測定する測定装置が必要である。このような測定装置の技術として、特許文献1には、外部環境から取り込まれた粒子からアレルゲンタンパク質をキャリア液中に抽出して、アレルゲンタンパク質を検出する検出用チップを用いた測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−69997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術において、反応部に形成された抗原抗体複合体の検出を、装置本体内に設けた検出手段で行っているが、標識として蛍光材料を用いているため、検出手段に設けた紫外線光源から紫外線を、反応部の抗原抗体複合体に照射し、標識である蛍光材料から発光される蛍光を検出手段に設けたディテクターにより検出することで、抗原の有無、抗原の量を測定している。このように光学系を検出に用いると、抗体−抗原反応はマイクロチップで行っても検出は従来の大型機械で行うこととなり、測定装置の可搬性はなくなる。
そこで、本発明は、大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、使用する測定装置全体を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本願の請求項1に係る測定装置は、捕集した抗原をカタラーゼにより標識された抗体と反応させて抗原抗体複合体を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された抗原抗体複合体に対し過酸化水素を反応させて当該抗原抗体複合体の濃度に応じた酸素を発生させる酸素発生手段と、前記酸素発生手段により発生した酸素を測定する測定手段とを具備することを特徴とする。
また、本願の請求項2に係る測定装置は、請求項1に記載の態様において、前記酸素発生手段は、酸素の発生に際して磁場を作用させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、光学系の検出装置を使用する場合に比較して、測定装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る抗原測定システムを表す外観図である。
【図2】抗原測定システムの全体構成を表すブロック図である。
【図3】測定用チップを表す外観図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】検出部の構成の概略を示す断面図である。
【図6】図3のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】図4のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】検出部における溶存酸素濃度と磁場発生の有無の関係を示す図である。
【図10】毛細管現象を用いて内部の液を搬送することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.構成
(1)全体構成
図1は、本発明に係る抗原測定システム9を表す外観図である。抗原測定システム9は、測定器3と測定用チップ8を含む。ユーザは、測定用チップ8を測定器3の開口部30に挿入してアレルギーの原因物質である抗原(以下、単に抗原という)の測定を行う。この開口部30は、測定用チップ8を挿入すると、この測定用チップ8に設けられた吸引口20(図3参照)が外部空間に接し、かつ、検出部16(図4参照)が測定器3の筐体で覆われた状態で測定用チップ8を固定するように構成されている。測定器3は、測定結果を表示する表示部32と、ユーザによる測定器3への操作を受け付ける操作部33とを備えている。表示部32は、7セグメントディスプレイやドットマトリックスディスプレイなどにより測定値を表示する表示手段である。操作部33は各種の指示を入力するための操作ボタンを備えており、ユーザによる操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を供給する。なお、本実施形態において測定器3の筐体は、110mm×50mm×20mmの直方体であり、測定用チップ8は、20mm×5mm×0.5mmの板状体であるが、これらのサイズは様々に設計し得る。
【0009】
図2は、抗原測定システム9の全体構成を表すブロック図である。同図は、抗原測定システム9による測定が、測定用チップ8を測定器3に挿入した状態で行われることを示している。測定器3には、上述した表示部32と操作部33に加えて、制御部31、駆動部34、測定部35および磁場発生部36が備えられている。制御部31は、制御回路であるCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの記憶装置とを備えている。制御部31のCPUは、ROMに記憶されているブートローダやEEPROMに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより測定器3の各部を制御する。
【0010】
駆動部34は制御部31によって制御され、測定器3の開口部30に挿入された測定用チップ8を機械的に押圧する装置である。この押圧力を発生させる駆動源は種々のものを用いることができる。例えば、押圧する部材はゴムなどの弾性体でできた袋状をしており、この部材の内部空洞に注入する空気の量により、この部材の形状を変化させて押圧力を発生させる。また、ソレノイドなどの電磁的機構により押圧力を発生させてもよい。
【0011】
測定部35は、制御部31により制御され、測定用チップ8により捕集された抗原の量を測定する。測定用チップ8には樹脂膜型酸素濃度計が供えられており、この樹脂膜型酸素濃度計により示される電流値が抗原の量に対応しているため、測定部35は、この電流値を測定する。磁場発生部36は、コイル等を含み、制御部31により制御されて検出部16に予め定めた強度の磁場を発生させる。
【0012】
(2)測定用チップの構成
図3は、測定用チップ8を表す外観図である。測定用チップ8は、透明な樹脂等を成型した2枚の板を重ね合わせた構造である。図3(a)に示すように、下方側にはチップ基板層1があり、このチップ基板層1の上方にチップ吸引層2が重ねて張り合わされている。チップ吸引層2の上方側の面には、吸引口20が設けられている。そして、チップ吸引層2の側面側には、排出口23が設けられている。測定用チップ8は、吸引口20から大気を吸引して、排出口23から排出する。大気と同伴して搬送される粒子は、測定用チップ8の内部に捕集される。この粒子には抗原が付着している。図3(b)には、この測定用チップ8を排出口23のある側面側から見た様子が示されており、同図に示したIV−IV線とVI−VI線は、後述する図4および図6の断面図の観察方向を表す。
【0013】
(3)チップ基板層の構成
図4は、図3のIV−IV線矢視断面図である。すなわち、図4にはチップ基板層1の断面が示されている。同図に示す溶媒タンク11は、2mm×2mm×0.25mmの空洞であり、1μLの容量を有している。この溶媒タンク11には、粒子や抗原および未反応の抗体等を搬送する溶媒として蒸留水が封入されている。溶媒供給路181は、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、溶媒供給路181は、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、溶媒供給路181は、測定器3の駆動部34による押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0014】
抗体タンク11aは、1mm×1mm×0.25mmの空洞であり、0.25μLの容量を有している。この抗体タンク11aには、カタラーゼで標識された抗体(以下、カタラーゼ標識抗体という)を含んだ蒸留水が封入されている。
【0015】
なお、カタラーゼ標識抗体は以下のようにして生成する。まず、アミン基にチオール反応性を持つマレイミド基を結合させて転換反応を行い、抗体にチオール基を生じさせて抗体に対してDTT(dithiothreitol)処理を行う。そして、抗体が最初の状態から持つジスルフィド結合を還元させる。その後、チオール基とマレイミド基によるカップリング反応を行って標識が結合される。
【0016】
抗体供給路181aは、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、抗体供給路181aは、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、抗体供給路181aは、測定器3の駆動部34により押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0017】
過酸化水素水タンク11bは、1mm×1mm×0.25mmの空洞であり、0.25μLの容量を有している。この過酸化水素水タンク11bには、過酸化水素水が封入されている。過酸化水素水供給路181bは、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、過酸化水素水供給路181bは、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、過酸化水素水供給路181bは、測定器3の駆動部34による押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0018】
溶媒供給ポンプ12は、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、溶媒供給路181が開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、溶媒供給ポンプ12の内部空間の容量が変化する。これにより溶媒供給ポンプ12の内部空間の圧力が溶媒タンク11よりも負圧になり、溶媒供給ポンプ12は、溶媒タンク11に封入された溶媒を反応室13へ搬送する。すなわち、溶媒供給ポンプ12は、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときの溶媒の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0019】
抗体供給ポンプ12aは、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、抗体供給路181aが開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、抗体供給ポンプ12aの内部空間の容量が変化する。これにより抗体供給ポンプ12aの内部空間の圧力が抗体タンク11aよりも負圧になり、抗体供給ポンプ12aは、抗体タンク11aに封入されたカタラーゼ標識抗体を含んだ溶媒(ここでは蒸留水)を反応室13へ搬送する。すなわち、抗体供給ポンプ12aは、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときのカタラーゼ標識抗体を含んだ蒸留水の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0020】
過酸化水素水供給ポンプ12bは、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、過酸化水素水供給路181bが開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、過酸化水素水供給ポンプ12bの内部空間の容量が変化する。これにより過酸化水素水供給ポンプ12bの内部空間の圧力が過酸化水素水タンク11bよりも負圧になり、過酸化水素水供給ポンプ12bは、過酸化水素水タンク11bに封入された過酸化水素水を反応室13へ搬送する。すなわち、過酸化水素水供給ポンプ12bは、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときの過酸化水素水の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0021】
反応室13は、上述したチップ吸引層2に設けられた吸引口20の直下に設けられた円筒状の空間である。反応室13の大きさは直径1mmで深さ50μmであるから、反応室13の容量は、約0.039μLである。この反応室13において、いわゆるELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法が行われる。具体的には、この反応室13は、大気に含まれる粒子に付着した抗原と反応する抗体(以下、固相化抗体という)が予め固定されている固相の面(以下、固相面という)を底に備えている。この固相面に固定された固相化抗体は蒸留水等を反応室13に流してもほとんどが固相面から剥がれず移動しない。また、この固相化抗体はカタラーゼで標識されていないから、過酸化水素と接触しても過酸化水素から酸素を発生させない。溶液排出路182,182a,182bは、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能する。溶液排出路182および溶液排出路182aが開となったときに、反応室13に満たされた溶液は送液ポンプ150へ供給される。溶液排出路182および溶液排出路182bが開となったときに、反応室13に満たされた溶液は第2廃液ポンプ152へ供給される。
【0022】
送液ポンプ150は、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、溶液排出路182および溶液排出路182aを通過した溶液を、送液路183を介して検出部16に搬送する。図5は、検出部16の構成の概略を示す断面図である。同図に示すように、検出部16は、3つのマイクロチャネル16a,16b,16cで構成されている。中央のマイクロチャネル16bは、溶媒の通路として機能するマイクロチャネル16a,16cに挟まれており、その外縁は樹脂膜で形成され、その両端は閉じられている。マイクロチャネル16a,16cのそれぞれの一端は送液路183と接続されており、送液ポンプ150から送液された溶媒は、この送液路183を通ってマイクロチャネル16bの閉じられた一端により、矢線D51方向と矢線D52方向に分けられる。矢線D51方向に流れた溶媒はマイクロチャネル16aを通過し、この溶媒に溶存している酸素は矢線D53方向にマイクロチャネル16bの樹脂膜を透過する。同様に、矢線D52方向に流れた溶媒はマイクロチャネル16cを通過し、この溶媒に溶存している酸素は矢線D54方向にマイクロチャネル16bの樹脂膜を透過する。マイクロチャネル16bの内部には水酸化カリウムや塩化カリウム等の電解液が封入されているほか、金または白金等で構成される作用電極と、銀−塩化銀等で構成される対極(電極)が挿入されている。両方の電極により電圧が印加されると、樹脂膜を透過した酸素が作用電極上で還元反応を起こし、酸素濃度に比例した電流が作用電極と対極をつなぐ外部回路に流れる。作用電極と対極はそれぞれ測定用チップ8の表面に設けられた端子(図示せず)に接続されており、測定器3の測定部35と接続する。そして、測定部35は、上述した酸素濃度に比例した電流を自身の回路に流し、これを測定することで、酸素濃度を特定する。すなわち、マイクロチャネル16bとこれに挿入された電極は、樹脂膜型酸素濃度計を構成する。
【0023】
第1廃液ポンプ151も、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、第1廃液路184も、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能する。第1廃液路184が開けられ、第1廃液ポンプ151が駆動することにより、検出部16に満たされた溶液は廃液タンク17に送液される。また、第2廃液ポンプ152も、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、第2廃液路185も、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能する。第2廃液路185が開けられ、第2廃液ポンプ152が駆動することにより、溶液排出路182および溶液排出路182bを通過した溶液は廃液タンク17に送液される。
【0024】
(4)チップ吸引層の構成
図6は、図3のVI−VI線矢視断面図である。すなわち、図6にはチップ吸引層2の断面図が示されている。上述したように、チップ基板層1のうち、チップ吸引層2の吸引口20の直下には旋回翼21が設けられており、この旋回翼21の下方のチップ基板層1には、反応室13が設けられている。反応室13からは、排出口23へ繋がる流路が設けられている。
【0025】
吸引ポンプ22は、反応室13から排出口23までの流路の間に設けられている。この吸引ポンプ22は、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能する。吸引ポンプ22が反応室13の内部の気体を排出口23に向けて排出することにより、反応室13の内部は吸引口20近傍の周辺大気よりも負圧になり、吸引口20から反応室13へ流れる気流が発生する。なお、この気流の流速は、様々な値に設計することができるが、本実施形態においては、1〜10L/分である。
【0026】
上述したとおり、チップ吸引層2には、吸引口20から反応室13までの間に旋回翼21が設けられている。旋回翼21は、チップ吸引層2またはチップ基板層1の少なくともいずれか一方によって固定された軸と、この軸を中心として回転可能に取り付けられたファンを備えている。このファンは複数の翼を有しており、各翼は軸方向に対して垂直でも平行でもなく、所定の角度で傾斜している。これにより、吸引口20から反応室13へ向かう気流が発生すると、旋回翼21は、これに伴って回転するため、発生した気流を旋回させる。吸引ポンプ22により発生した気流の流路において、旋回翼21は反応室13の固相面よりも上流に設けられているので、反応室13の固相面には、旋回翼21で旋回させられた気流があたる。
【0027】
2.動作
本発明に係る抗原測定システム9の動作を説明する。抗原測定システム9の動作は主に「吸引工程」「第1洗浄工程」「反応工程」「第2洗浄工程」「酸素発生工程」「搬送工程」「測定工程」「排出工程」の8つの工程で構成されている。以下に、各工程について図を用いて説明する。なお、図7は、図4のVII−VII線矢視断面図である。また、図8は、図4のVIII−VIII線矢視断面図である。
【0028】
(1)吸引工程の動作
まず、測定器3の開口部30に測定用チップ8を挿入すると、測定器3の制御部31は、溶媒供給路181、抗体供給路181a、過酸化水素水供給路181b、および溶液排出路182が全て閉塞するように、駆動部34を駆動させる。そして、これら全てが閉塞すると、制御部31は、駆動部34により吸引ポンプ22に対向する押圧部(図示せず)を駆動する。これにより、吸引ポンプ22の容量が変動し、吸引口20から反応室13へ向かう気流が発生する。この発生した気流に伴って、旋回翼21が回転するので、反応室13の内部の気体は旋回する。そして、旋回した気体は反応室13の固相面にあたった後、排出口23から排出される。制御部31は、吸引ポンプ22にこの動作を行わせ、所定時間が経過すると吸引ポンプ22を停止させる。これにより、反応室13の底の固相面に固定された固相化抗体には、吸引した大気に含まれる粒子に付着した抗原が反応し、抗原抗体複合体を形成する。以上が吸引工程の動作である。
【0029】
(2)第1洗浄工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181が開通し、かつ、溶液排出路182aが閉塞状態に保たれるように、駆動部34を駆動させる。溶媒供給路181が開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて溶媒供給ポンプ12に対向する位置に配置された押圧部341(図7に図示)を動かすことにより溶媒供給ポンプ12を作動させる。溶媒供給ポンプ12により、溶媒タンク11に封入されている溶媒が溶媒供給路181を通って反応室13に流れ込む。そして、流れ込んだ溶媒は、反応室13内部の未反応の抗原と粒子を分散する。そして、その後、制御部31は、溶媒供給路181を閉塞させ、かつ、溶液排出路182,182b、および第2廃液路185を開通させるように、駆動部34を駆動させる。溶液排出路182,182b、および第2廃液路185が開通すると、制御部31は、駆動部34により第2廃液ポンプ152を駆動させ、反応室13内部のきょう雑物(粒子等)を含んだ溶媒を廃液タンク17に搬送する。これにより、反応室13の内部のきょう雑物は減少し、固相面に固定された固相化抗体と反応した抗原抗体複合体が残る。以上が第1洗浄工程の動作である。
なお、第1洗浄工程で洗い流されるきょう雑物には未反応の抗原が含まれている場合があるが、反応室13の内部に残留する抗原抗体複合体に含まれる抗原に比べて洗い流される未反応の抗原が多いと、空気中に含まれる抗原の濃度を正確に測定することが困難になる。そこで、収集されると予想される最大の抗原量に対する当量よりも多量の固相化抗体を、反応室13の固相面に固定化しておくことが望ましい。具体的には、反応室13の固相面に或る量の固相化抗体を固定化し、これと反応し得る抗原の当量を算出する。そして、空気中に含まれ得る最大の抗原濃度を予測し、この抗原濃度と吸引する空気量の積から吸引する抗原量を算出する。この吸引する抗原量が、固相化抗体と反応し得る抗原の当量を十分に下回るように、空気の吸引量を決定すればよい。ここで、「十分に下回る抗原量」とは、例えば、抗原−抗体反応が、過剰な固相化抗体の存在下における擬一次反応と見做せる程度の量であり、例えば、固相化抗体と反応し得る抗原の当量に対して10%以下などである。なお、空気の吸引量は、例えば吸引時間で調節すればよい。また、吸引時間と空気中の抗原濃度との相関を示す校正曲線を作成し、例えば、校正曲線の外挿などにより大気中の抗原の総存在量を算出してもよい。
【0030】
(3)反応工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、過酸化水素水供給路181b、および溶液排出路182が閉塞し、抗体供給路181aが開通するように、駆動部34を駆動させる。抗体供給路181aが開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて抗体供給ポンプ12aに対向する位置に配置された押圧部341(図示せず)を動かすことにより抗体供給ポンプ12aを作動させる。抗体供給ポンプ12aにより、抗体タンク11aに封入されているカタラーゼ標識抗体を含んだ溶媒が抗体供給路181aを通って反応室13に流れ込む。そして、流れ込んだ溶媒に含まれたカタラーゼ標識抗体は、反応室13内部に残留している抗原抗体複合体と反応する。ここで、カタラーゼ標識抗体は反応室13内部に残留している抗原抗体複合体に比較して過剰に供給されるため、この反応は抗原抗体複合体の濃度に比例する擬一次反応となる。そして、十分な反応時間を経た後、抗原抗体複合体に含まれる抗原のほぼ全ては、カタラーゼ標識抗体とも反応してカタラーゼにより標識される。以上が反応工程の動作である。
【0031】
(4)第2洗浄工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181が開通し、かつ、溶液排出路182aが閉塞状態に保たれるように、駆動部34を駆動させる。そして、反応室13を溶媒タンク11に封入されている溶媒で洗浄する第2洗浄工程を行う。第2洗浄工程は第1洗浄工程と動作が同じであるため、説明を省略する。これにより、反応室13は洗浄され、残留していた未反応のカタラーゼ標識抗体はほとんどが廃液タンク17へ搬送される。
【0032】
(5)酸素発生工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、抗体供給路181a、および溶液排出路182が閉塞し、過酸化水素水供給路181bが開通するように、駆動部34を駆動させる。過酸化水素水供給路181bが開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて過酸化水素水供給ポンプ12bに対向する位置に配置された押圧部341(図示せず)を動かすことにより過酸化水素水供給ポンプ12bを作動させる。過酸化水素水供給ポンプ12bにより、過酸化水素水タンク11bに封入されている過酸化水素水が過酸化水素水供給路181bを通って反応室13に流れ込む。そして、流れ込んだ過酸化水素水は、反応室13内部に残留している抗原抗体複合体を標識するカタラーゼと反応する。ここで、過酸化水素水は反応室13内部に残留している抗原抗体複合体に比較して過剰に供給されており、第2洗浄工程で未反応のカタラーゼ標識抗体は反応室13に残留していないため、この反応は反応室13に残留しているカタラーゼの濃度に比例する擬一次反応となる。そして、十分な反応時間を経た後、抗原抗体複合体を標識するカタラーゼの濃度に比例した酸素が発生し、溶媒に溶解する。また、このとき制御部31は、磁場発生部36を制御し、磁場発生部36に備えられたコイルに電流を流す。
【0033】
図9は、検出部16における溶存酸素濃度と磁場発生の有無の関係を示す図である。同図に示すように、時間が経過すると磁場を作用させない場合(図中において、「磁場なし」と表記)には溶存酸素濃度(mg/l)が低下するのに対し、磁場を作用させた場合(図中において、「磁場あり」と表記)には溶存酸素濃度に上昇傾向が認められ、濃度低下は少ない。このため、磁場を作用させた場合には、磁場を作用させない場合に比較して検出限界が向上する。以上が酸素発生工程の動作である。
【0034】
(6)搬送工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、抗体供給路181a、過酸化水素水供給路181b、溶液排出路182bおよび第1廃液路184を閉塞し、かつ、溶液排出路182、182aおよび送液路183とが開通するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、駆動部34を駆動させて送液ポンプ150に対向する位置に配置された押圧部343(図8に図示)を動かすことにより、送液ポンプ150を作動させる。これにより送液ポンプ150は、反応室13の内部に満たされている溶液を検出部16へと搬送する。以上が搬送工程の動作である。
【0035】
(7)測定工程の動作
次に、制御部31は、第1廃液路184と送液路183が閉塞するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、測定部35により樹脂膜型酸素濃度計により示される電流値を測定する。具体的には、制御部31は、測定部35により検出部16のマイクロチャネル16bに挿入された2つの電極に流れる電流の電流値を測定する。制御部31は、測定した電流値に応じて予め定められた値に基づいて、溶媒中の溶存酸素濃度を測定する。この溶存酸素濃度は、抗原抗体複合体のほぼ全てを標識したカタラーゼの濃度に対応しており、カタラーゼの濃度は、抗原の濃度と対応しているため、これらの対応関係に基づいて制御部31は、測定した溶存酸素濃度から抗原濃度を算出する。そして算出した抗原濃度を表示部32に表示させる。以上が測定工程の動作である。
【0036】
(8)排出工程の動作
次に制御部31は、第1廃液路184が開通するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、駆動部34を駆動させて第1廃液ポンプ151に対向する位置に配置された押圧部344(図8に図示)を動かすことにより、第1廃液ポンプ151を作動させる。これにより第1廃液ポンプ151は、検出部16の内部に満たされている溶液を廃液タンク17へと搬送する。そして、制御部31は、所定時間に亘り、第1廃液ポンプ151を作動させ続けた後、これらを停止する。これにより、検出部16に残っていた溶液が廃液タンク17に移される。以上が排出工程の動作である。
【0037】
以上により、樹脂膜型酸素濃度計により示される電流値を測定し、溶媒中の溶存酸素から抗原の量が測定されるため、使用する装置全体は小型化される。また、磁場を作用させることにより溶存酸素濃度を上昇させるので、抗原濃度測定の検出限界が向上する。
【0038】
3.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
3−1.変形例1
上述の実施形態においては、抗原抗体複合体を生成して固相に固定し、カタラーゼ標識抗体を用いて抗原を標識し、過酸化水素を反応させることで抗原濃度に応じた酸素を発生させ、発生させた酸素濃度を測定することで抗原濃度を特定したが、抗原そのものではなく、抗原を付着させている抗原担体である粒子の濃度を測定し、その結果から抗原濃度を推測してもよい。ここで、抗原担体である粒子には様々なものが考えられるが、植物の花粉が一般的である。そして、発明者は抗原の濃度と抗原担体である粒子の種類との関係を調査した結果、花粉のように粒子中にデンプンを多く含むもの程、抗原が付着しやすいという知見を得た。そこで、捕集した粒子のデンプン濃度を測定することで、抗原の濃度を推測してもよい。
【0039】
また、この場合、デンプン濃度は、粒子とヨウ素溶液とを混合させて、ヨウ素デンプン反応を生じさせてこの混合液に比色を行うことで、定量化すればよい。この混合液は、得られたヨウ素デンプン複合体に応じた色を呈するからである。
また、ヨウ素あるいはデンプンにイオン物質を結合させてもよい。例えば、測定用チップ8は、イオン物質を蓄積するタンクと、このイオン物質を反応室13に供給するポンプと、反応室13から検出部16までの溶液排出路182に対して、溶液排出路182bから溶液排出路182aに向けての電位を生じさせる電位発生装置とを具備する。そして、測定用チップ8は、粒子に含まれるデンプンにイオン物質を供給して結合させた後、粒子とヨウ素溶液とを混合させてヨウ素デンプン反応を生じさせる。その後、イオン化されたヨウ素デンプン複合体を溶液排出路182に流し、これに対し電位発生装置により電位をかける。ヨウ素デンプン複合体はイオン化されているため電位の方向に濃縮される。したがって、ヨウ素デンプン複合体は、検出部16側へ濃縮される。
また、ヨウ素デンプン複合体の色の変化を測定する場合、蛍光を検出する方法と比較してより強い強度の光情報が得られる。したがって、一般のCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を用いてデンプン濃度を定量することで、抗原濃度を推測してもよい。
また、捕集の際に反応室13を加湿してもよい。例えば、反応室13に捕集した粒子に水蒸気等を接触させることで粒子が加湿されると、この粒子に含まれるデンプンが糊状になる。したがって、糊状になったデンプンを含む粒子は、反応室13の底面等に吸着され、吸引ポンプ22により発生した気流により外部に排出されにくくなる。これにより測定対象の捕集効率が向上する。
【0040】
3−2.変形例2
上述の変形例1のように粒子を捕集する場合には、反応室13の底面等に粒子を吸着させることで捕集効率が向上するが、粒子を吸着させるために反応室13の内部に電荷を与えてもよい。例えば、反応室13の底面に粒子の電荷と反対の電荷を与えると、電荷を与えない場合と比較して、粒子は反応室13の底面に吸着されやすくなる。そして、粒子の洗浄工程において、電荷をオフにすることにより、粒子は反応室の底面から離れやすくなる。これにより、捕集された粒子のハンドリングが容易になる。
なお、この底面は導電性のシールにより構成されていてもよい。この場合には、捕集後にシールをはがすことにより、シールに吸着された粒子が測定される。そして、反応室13に残留する粒子を洗い流す洗浄工程が不要となる。この場合、シールをはがした後、新たなシールを貼ることで、測定用チップ8は繰り返し使用される。
【0041】
3−3.変形例3
また、粒子を捕集する場合には、反応室13の底面に微細な突起を設けてもよい。例えば、反応室13の底面に1μm以下の突起を設け、大気とともに粒子を捕集すると、1μm以下の粒子が反応室13の底面に吸着され、1μmを超える粒子は外部に排出されやすくなる。これにより、捕集したい大きさの粒子を捕集する選択効率が向上する。このような微細突起の製造方法は種々の方法が考えられるが、以下に説明するような自己組織化メカニズムを用いることが好ましい。高分子膜の上に金属薄膜をスポット状に塗布する。そして、これに電荷をかけると溶液中の金属イオンは針状に析出する。このように析出した金属イオンは結晶化した微小なウイスカーとなって反応室13の底面において突起となる。
【0042】
3−4.変形例4
上述の実施形態においては、溶媒タンク11に封入された溶媒を反応室13へ搬送する溶媒供給ポンプ12等には、押圧されることにより変形し、その変化する容量に応じて内部の液を搬送する、いわゆるダイヤフラムポンプが用いられていたが、内部の液を搬送するには種々のものを用いることができる。例えば、毛細管現象を利用して液を搬送してもよい。図10は、毛細管現象を用いて内部の液を搬送することを説明するための図である。図10(a)に示すように、反応室13に溶媒を流入させる入口には、開閉弁13iが、反応室13の内部の溶液を溶液排出路182に排出させる出口には、開閉弁13oがそれぞれ設けられている。ここで、溶液排出路182の直径は溶媒が毛細管現象を起こすのに十分なほど細く形成されているので、開閉弁13iを閉とし、開閉弁13oを開とするだけで、外力なしで反応室13に満たされた溶液は、溶液排出路182に生じる毛細管現象により溶液排出路182に流れ出す。
【0043】
ここで、開閉弁13iまたは開閉弁13oの構成を、開閉弁13oの例を挙げて説明する。図10(b)に示す加熱ヒーター13o1は、制御部31によって制御され、予め定めた熱量を発生させ周囲を加熱する。形状記憶樹脂13o2は、加熱ヒーター13o1により加熱されて所定の温度を超えると、図10(c)に示すように、予め記憶された形状に変形する。この変形により、形状記憶樹脂13o2は図に示す縦の方向に延びるが、加熱ヒーター13o1が剛体であるため、加熱ヒーター13o1と反対側にある溶液排出路182を押圧する。これにより、溶液排出路182は変形して液が流れない状態となる。すなわち、開閉弁13oは閉となる。
【0044】
3−5.変形例5
上述の実施形態においては、測定用チップ8と測定器3は別々の構成であったが、測定用チップ8に測定部35等を設けて、これらを一体としてもよい。特に、上述の実施形態のように、酸素電極によって酸素濃度を測定し抗原濃度を特定する場合には、光学系により測定された光の強度によって抗原濃度を特定する場合に比べて、使用する構成は小さいため、測定部を測定用チップ8に含ませることが容易である。
【0045】
3−6.変形例6
上述の実施形態においては、測定器3に磁場発生部36が備えられていたが、測定器3は磁場発生部を有していなくてもよい。この場合、測定器3は、図9に示す「磁場なし」の溶存酸素濃度を測定する。
【0046】
3−7.変形例7
上述の実施形態においては、反応室13の固相面に固相化抗体を固定化し、これに抗原を反応させていたが、吸引された抗原を固相化抗体に反応させることなく、カタラーゼ標識抗体に反応させてもよい。具体的には、例えば、反応室13の変わりに抗原捕集室13a(図示せず)を設け、溶液排出路182と溶液排出路182aとの間に、きょう雑物を取り除くために開口0.5μmのフィルター(図示せず)を設ける。これにより、0.5μmよりも大きいきょう雑物は、溶液排出路182bを通って廃液タンク17に導かれ、0.5μmよりも小さい抗原は溶液排出路182aに導かれる。そして、溶液排出路182aと送液ポンプ150との間に反応室13b(図示せず)を設け、この反応室13bに、抗体タンク11aからカタラーゼ標識抗体が流れ込むように抗体供給路181aを接続する。これにより、反応室13bに集められた抗原に対して流し込まれたカタラーゼ標識抗体が反応し、抗原抗体複合体が生成する。生成した抗原抗体複合体は、送液ポンプ150、送液路183を通って検出部16に蓄積される。この検出部16には、過酸化水素水タンク11bから過酸化水素水が流れ込むように過酸化水素水供給路181bを接続する。そして、検出部16において、過酸化水素と抗原抗体複合体とを接触させることにより、抗原抗体複合体に含まれるカタラーゼ標識抗体と過酸化水素とを反応させ、これによって発生する酸素の量を測定部35により測定すればよい。
【0047】
ここで、検出部16における酸素濃度の検出感度を上昇させるために、反応室13bで生成した抗原抗体複合体を濃縮することが望ましい。これは例えば、以下のようにして行えばよい。反応室13bから排出される液を通す送液路183の出口を、この送液方向と垂直な方向に広げ、一方の端に検出部16を接続し、他方の端に廃液タンク17を接続する。そして、抗原抗体複合体が検出部16に濃縮されるように送液方向と垂直な方向に電場をかければよい。例えば、抗原抗体複合体は、一般にマイナスに帯電するので、上述した電場のプラス側に検出部16を接続すれば、検出部16に抗原抗体複合体が濃縮され易い。なお、捕集した抗原の量は、廃液タンク17に導かれた液の量と検出部16に導かれた液の量とをそれぞれ測定することで算出した濃縮率と、測定された酸素濃度とから算出すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1…チップ基板層、11…溶媒タンク、11a…抗体タンク、11b…過酸化水素水タンク、12…溶媒供給ポンプ、12a…抗体供給ポンプ、12b…過酸化水素水供給ポンプ、13…反応室、13i…開閉弁、13o…開閉弁、13o1…加熱ヒーター、13o2…形状記憶樹脂、150…送液ポンプ、151…第1廃液ポンプ、152…第2廃液ポンプ、16…検出部、16a,16b,16c…マイクロチャネル、17…廃液タンク、181…溶媒供給路、181a…抗体供給路、181b…過酸化水素水供給路、182,182a,182b…溶液排出路、183…送液路、184…第1廃液路、185…第2廃液路、2…チップ吸引層、20…吸引口、21…旋回翼、22…吸引ポンプ、23…排出口、3…測定器、30…開口部、31…制御部、32…表示部、33…操作部、34…駆動部、35…測定部、36…磁場発生部、8…測定用チップ、9…抗原測定システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕集した抗原をカタラーゼにより標識された抗体と反応させて抗原抗体複合体を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された抗原抗体複合体に対し過酸化水素を反応させて当該抗原抗体複合体の濃度に応じた酸素を発生させる酸素発生手段と、
前記酸素発生手段により発生した酸素を測定する測定手段と
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記酸素発生手段は、酸素の発生に際して磁場を作用させる
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項1】
捕集した抗原をカタラーゼにより標識された抗体と反応させて抗原抗体複合体を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された抗原抗体複合体に対し過酸化水素を反応させて当該抗原抗体複合体の濃度に応じた酸素を発生させる酸素発生手段と、
前記酸素発生手段により発生した酸素を測定する測定手段と
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記酸素発生手段は、酸素の発生に際して磁場を作用させる
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−59096(P2011−59096A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273953(P2009−273953)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(399008210)松栄電子工業株式会社 (5)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(399008210)松栄電子工業株式会社 (5)
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