説明

湖沼の深層水の浄化装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、湖沼、ダム等の深層で太陽光が届かない部分に太陽光を当てて水棲植物等を繁茂させ、その炭酸同化作用によって酸素を供給し、水質の浄化を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の水質の浄化装置や浄化方法としては大型のポンプで水を攪拌あるいは循環させて曝気する方法や水を吸み上げてアオコ等を分離除去することが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、上述のような従来技術では、水を動かしたり、アオコ等をろ過分離するのにポンプやろ過装置等を必要とし、イニシャルコストおよびランニングコストが高価である。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、浄化のためのエネルギーとして無限の太陽エネルギーを用いることを特長とするものであって、その要旨とするところは、湖沼等の近傍に集光器を設置し、その集光器の反射板の反射焦点部に、光ファイバーケーブルの基端を臨ませるとともに、その光ファイバーケーブルの他端を水中に導入して、その先端を水中に設置した投光器の反射鏡の点に光ファイバーケーブルの源を臨ませたものである。
【0005】上述の陸上に設置する集光器と、水中に設ける投光器とは、一対としてもよいが、水中で広範囲の投光を考えると水中の投光器を複数として分散配置すると効果的である。すなわち、陸上では大型の集光器の設置は比較的容易であるが、水中で大型の投光器を設置することは、困難であるとともに、水中では光の透過性が悪いからである。
【0006】
【発明の実施の形態】この発明に係る装置は、上述のように構成してあり、集光器で集めた太陽光で光ファイバーケーブルの基端を照らすことにより、その太陽光は光ファイバーケーブルによって投光器の光源に送られ、投光器の反射鏡によって分散されて水中を照射することができる。
【0007】すなわち、集光器で集めた太陽光で光ファイバーケーブルの集束上端を照らして、その光ファイバーケーブルで送った光を投光器の光源部分で発光させ、投光器の反射鏡で分散させて深層水を照らすようにしたものである。そして、このようにして送った太陽光によって、深層水を照射し、該層部における植物等を繁茂させ、炭酸同化作用をさせるもので、植物が富栄養分を吸収すると同時に酸素を放出し、周辺の水を浄化するものである。
【0008】上記の説明で明らかなように、この発明では、上記のような装置を設置すれば、以後の浄化のための運転は無限にある太陽エネルギーを利用するので、駆動エネルギーを必要とせず、運転費として、集光器や投光器等の保守管理費のみで足りるものである。尚、集投光装置は、固定するも移動できるようにするも自由である。以下、図面に基づいて、この発明を具体的に説明する。
【0009】
【実施例】図1は、この発明に係る装置の設置例の概略を示すもので、図中符号Aは、湖沼等の近傍に設置した集光器、Bは湖沼等の水中に設置した投光器、Cは、集光器Aと投光器Bとの間に配設した光ファイバーケーブルである。
【0010】この光ファイバーケーブルCの基端は、集光器Aの反射鏡1の焦点Fに臨ませてあり、その他端は、湖沼中に導入して投光器Bの反射鏡2の焦点に光ファイバーケーブルCの光源Lを臨ませてある。図2〜図4R>4は、集光器Aの集光形式を示すものであり、図2では、反射鏡1の焦点部に副反射鏡1aを設けて集光した光で光ファイバーケーブルCの基端を照らすようにしている。図3に示すものでは、凸レンズ1bを用いて反射光を集光しており、図4では、反射鏡1での集光で光ファイバーケーブルCの基端を直接照射するようにしている。
【0011】次に、図5〜図7は、投光器Bの各種の投光形式を示すものであり、図5では、反射鏡2の光源部に副反射鏡2aを設けて、光ファイバーケーブルCで送ってきた光を反射鏡2に向けて水中を照射するようにしている。図6では、凹レンズ2bを用いており、図7では、光ファイバーケーブルCの先端の発光を反射鏡2に直接あてて、水中を照らすようにしている。
【0012】さらに、図8および図9に示す集光器Aおよび投光器Bは、反射鏡1および2を保護するためのガラスカバー3にワイパー4を設けている。符号5は、その駆動モーターであり、その駆動電流は太陽電池を用いてもよい。
【0013】この発明に係る装置は、上述のように構成してあり、集光器Aで集光した太陽光は、光ファイバーケーブルCによって投光器Bに送られ、この投光器Bの反射鏡2で拡散して深層水を照射することができる。この照射によって、該深層水において植物性プランクトンや水棲植物が繁茂し、炭酸同化作用等によって深層水に酸素が補給され、該深層水を浄化することができる。
【0014】すなわち、湖沼等の深層水では、太陽光がとどかず、特に、湖沼等のように水がよどんで流動しない場所では、酸素不足等によって急速に水が腐敗したのであるが、この発明は、このような部位に太陽光を照射することによって水棲植物の繁茂等によって、酸素を発生補給し、従来の曝気と同様の作用によって汚水を浄化し、且つ、停滞した深層水が腐敗するのを防止できるものである。
【0015】特に、この発明では、上述のようにして浄化するのに、無限にある太陽光を用いるので、一度設置すれば、以後は保守管理のみでランニング費用は殆どゼロであり、その運転操作も集光器および投光器の曇りを防止する程度で極めて簡単である。また、自然の太陽光を利用するものであるので、二次的公害の発生のおそれも全くないものである。
【0016】また、実施に当たっては、大量の貯水を有する湖沼等も浄化の対象となるので、このような場合、図10に示すように、建設の容易な大型の集光器に対して、投光器を複数台配設し、これら投光器を分散配置すれば、光の透過し難い水中での照射上も製作上も有利である。この場合、太陽光を送るのが、可撓性を有する光ファイバーケーブルなので、所望の場所に自由に設置することができる。
【0017】
【発明の効果】このように、この発明に係る浄化装置は、浄化するに当って無限の太陽エネルギーを利用するので、装置を設置すればランニングコストとして装置の保守管理のみで足り、特に、太陽光と云う自然エネルギーであるので従来の装置や方法に比較して二次的公害は皆無と云えるもので、水質浄化上極めて利用価値の高いものである。また、光の伝達手段に可撓性を有する光ファイバーケーブルを用いているので、投光器を所望の場所に簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る浄化装置を設置した状態の概略の側面図である。
【図2】この発明に係る浄化装置の集光器の模式側面図である。
【図3】同じく、集光器の他の実施例の模式側面図である。
【図4】同じく、集光器の他の実施例の模式側面図である。
【図5】同じく、投光器の模式側面図である。
【図6】同じく、投光器の他の実施例の模式側面図である。
【図7】同じく、投光器の他の実施例の模式側面図である。
【図8】同じく、設置した状態の集光器の模式側面図である。
【図9】同じく、設置した状態の投光器の模式側面図である。
【図10】同じく、集光器および投光器の配置例を示す平面図である。
【符号の説明】
A 集光器
B 投光器
C 光ファイバーケーブル
F 焦点
L 光源
1,2 反射鏡
3 ガラスカバー
4 ワイパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 湖沼の近傍に集光器Aを設置し、その集光器Aの反射鏡1の反射焦点F部に光ファイバーケーブルCの基端を臨ませるとともに、その光ファイバーケーブルCの他端を水中に導入してその先端を水中に設置した投光器Bの反射鏡2の焦点に光ファイバーケーブルC光源Lを臨ませ、集光器A及び投光器Bにはガラスカバー3を設け、該ガラスカバー3にはワイパー4を設け沼の深層水の浄化装置。
【請求項2】 上記集光器Aの反射鏡1の焦点Fに基端を臨ませた光ファイバーケーブルCの他端側の集束が複数本に分割され、その分割束のそれぞれが水中に設置された複数個の投光器Bの反射鏡2の焦点に光ファイバーケーブルCの光源Lを臨ませてある請求項1記載の湖沼の深層水の浄化装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】特許第3355938号(P3355938)
【登録日】平成14年10月4日(2002.10.4)
【発行日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−178641
【出願日】平成8年6月18日(1996.6.18)
【公開番号】特開平10−492
【公開日】平成10年1月6日(1998.1.6)
【審査請求日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【参考文献】
【文献】特開 平4−45729(JP,A)
【文献】特開 昭57−48391(JP,A)
【文献】特開 昭63−129934(JP,A)