説明

湯桶

【課題】使用前後は、容器本体を傾倒させて自立床置き可能とし、容器内部や容器接地部に付着残留した液体の乾燥を促進させる湯桶を提供する。
【解決手段】本体部20の側壁部22に、側壁部22の開口側から底部21に至る方向に突出した支持部5は、支持部5を水平面7に接地させた場合、底部21と側壁部22とがなす角度をθとするとき、底部21と水平面7とがなす角度θは、θよりも小さくなるように設定され、底部21が水平方向に対して交差するように、本体部20を水平面に対して傾倒させて自立可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯桶や洗面器等として使用される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室用として使用される湯桶や洗面器は、一般的に、略逆円錐形状を成し、その小径側に底部を持ち、その大径側が開口した容器である。容器の使用前後は、開口側を上に向けた状態か、開口側を下に向けた状態で床面に置かれる。しかし、開口側を上に向けて置いた状態では、容器内部の底に液体が残ったまま排出されず、水垢や雑菌等の派生を伴い不衛生であった。また、開口側を下に向けて置いた状態では、容器内部に残った液体が蒸発し難く、また、開口側周縁が接地するため、容器内部や開口側周縁の水垢や雑菌等の派生を免れ得なかった。
【0003】
このような不具合に対して、容器の一部を支持台としての機能を持つ形状とし、この支持部を接地させることで、容器を横向き、または、傾倒立に自立可能とし、容器内部に残る液体の排出を促すものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−37190公報
【特許文献2】特開平11−299622公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、容器側壁部の一部を平面形状とし、容器の使用前後は、その平面部を接地させて容器を横向きに自立床置させ得るものである。しかし、この平面部を接地させて床置した場合、床との接触面積が大きいため、平面部の接地面への液体の付着が多く、平面部に水垢や雑菌が派生しやすいという問題があった。
また、容器を横向きに自立床置させた場合でも、容器内周の側壁部の平面部は、横臥の状態であり、容器内部に残った液体の排出効果は十分ではなかった。
【0006】
特許文献2は、容器の取手の一部に平面部を設け、この平面部を接地させることで、容器本体の開口側を下向きに傾倒立可能とするものである。容器本体を傾倒立させて床置した場合、容器内部に残った液体の排出効果は十分であるが、取手は半弧状であるため、この実施例のように、容器としてサイズの小さい部類であるコップとしては特に問題は生じないものの、浴室用の湯桶のように、多くの液体を汲む必要のある容器の場合には、手で掴む位置が容器本体と離れているため、容器を水平に保つため手に発生する力が大きくなり、液体の汲み上げが困難となる。また、同様の理由で、取手周辺の強度や剛性の確保も困難であるといった問題があった。
【0007】
本発明は、容器側壁部にリブ状の支持部を備え、この支持部を接地させることで、接地面積を少なくして容器本体が自立可能に床置され、容器へ付着する液体の量を低減させると共に、付着した液体の排出を促進させることを特徴とする容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)と(2)に記載の容器を提供する。
【0009】
(1)容器側壁部の外周面に、容器開口側から容器底側に至る方向に突出する支持部を隣接させて複数設け、この支持部を水平面に対して接地させることで、容器底部が水平面に対して交差するように容器を自立可能とし、容器底部と容器側壁部とがなす角度をθとするとき、容器底部と水平面とのなす角度がθよりも小さくなるように前記本体部を支持する容器。
【0010】
この容器によれば、容器を自立床置した場合、容器側壁部の内周面の床に近い部位の面は、容器開口側が容器底部よりも低く傾斜させられ、容器内部に残留する液体は、重力の作用により容器開口側から排出される。
【0011】
また、この支持部の付加は、容器本体の中心軸の方向に型抜きをする二つの型による容器の成型を妨げない。
【0012】
(2)前記支持部は、前記容器側壁部の外周面に、前記中心軸に対して180度対称に形成された、前記(1)に記載の容器。
【0013】
この容器によれば、複数の容器を重ねた場合、容器本体の中心軸が同軸に合わさるようにして、隣接する容器との間に空間を確保しつつ、安定して容器を重ねることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器を自立床置することで、容器内部に残留する液体の排出が促進され、同時に、床との接地面積が少なくなることで、接地部へ付着する液体が少なくなるため、容器に発生する水垢やカビを抑制することができる。また、複数の容器を、その中心軸を同軸に合わせ、伏せて重ね置きする場合、容器内部に残留する液体の排出を阻害しない。また、支持部の付加によって、容器本体の剛性が高まるため、容器本体の強度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る斜視図。
【図2】図1の底面図。
【図3】支持部を水平面に接地した状態の、図2のA−A断面図。
【図4】手で持った状態の、図2のA−A部分断面図。
【図5】成型する状態の、図2のB−B断図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る底面図。
【図7】複数の容器を重ねた状態の、図6のC−C断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、容器1は、円板状の底部21と環状の側壁部22とを1体に有し、側壁部22の一端が開口している本体部20と、側壁部22の外周面に、本体部20の開口側から底部21に至る方向に突出して形成された一対の支持部5によって構成されている。
また、側壁部22の開口側の周縁には環円状フランジ3が形成され、底部21の外側面には環状の脚4が形成されている。
【0018】
容器1は、主に浴室用の洗面器や湯桶等として使用される。側壁部22は、底部21から側壁部22の開口側に向かうほど拡径する略逆円錐台状に形成されている。
【0019】
図2に示すように、支持部5は、側壁部22の外周面の半径方向に延出し、複数の支持部5が隣接して設けられている。また、複数の支持部5は、同一形状に形成されており、支持部5を下向きにして水平面7に接地させる場合、複数の支持部5は、水平面7に同時に接地する。
【0020】
図3に示すように、支持部5の側壁側稜線51は、側壁部22の開口側から底部21に向かうに従って、本体部20の中心線Oに近づくよう設定されている。支持部5を下向きにして水平面7に接地させる場合、底部21と側壁部22とがなす角度をθとするとき、底部21と水平面7とのなす角度θは、底部21と側壁部22とがなす角度θよりも小さくなるように設定されている。
【0021】
前述を換言すると、支持部5を下向きにして水平面7に接地させる場合、容器1の重心Wが重力として作用する垂線Vは、支持部5の開口側接地部53と、支持部5の底側接地部54とを結ぶ線分と直交する状態となるように、支持部5が形成されている。したがって、支持部5を下向きにして水平面7に接地させる場合、本体部20は、底部21が水平方向に対して交差するように自立可能に床置される。
【0022】
支持部5を下向きにして水平面7に接地させた状態に於いて、側壁部22の開口側から底部21に至る方向に形成される支持部5の側壁側稜線51は、水平面7に対して凹形状に形成されている。その場合、側壁側稜線51は、開口側接地部53と、底側接地部54は接地するが、その中間部は、水平面7との間に隙間が形成され接地しない。よって、支持部5を下向きにして水平面7に接地させる場合、接地面積は少なくなり、接地部の近傍に付着する液体は少なくなると共に、通気性も確保されるため、接地部の近傍に付着した液体の乾燥が促進される。
【0023】
また、図4に示すように、フランジ3の上縁から支持部5の底面側稜線52にかけて手Hで掴む場合、手Hは底面側稜線52によって安定に保持されるため、液体の入った容器1の汲み上げが容易になる。
【0024】
また、支持部5は、側壁部22の開口側から底部21に向かって側壁部22に突出したリブとしての役割を持つ形状として形成されているため、本体部20の剛性が高まり、本体部20の内部に液体を入れて容器1を汲み上げる場合、本体部20の変形が抑制され、本体部20の強度や耐久性が向上する。または、支持部5の付加によって本体部20の剛性が高まる分、本体部20の肉厚を薄くして軽量化を図ることも可能である。支持部5の付加によって本体部20の剛性が高まることを利用して、本体部1の直径や深さを大きくし、汲み上げ可能な液体の量を増加させることも可能である。
【0025】
図5に示すように、前述した支持部5の形状によれば、支持部5の側壁側稜線51は、側壁部22の開口側から底部21に向かうに従って、本体部20の中心線Oに近づくよう設定されているため、容器1は、矢印Dの方向に型抜きされる下型8と、矢印Eの方向に型抜きされる上型9とによって成型される。容器1を成型する場合、下型8と上型9とは、共に中心線Oの方向に型抜きすることが可能であり、下型8と上型9の二つの型のみで成型することが可能であるため、製造コストの増加を防ぐことが可能である。
[第2の実施の形態]
次に、図6と図7を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。図6に示すように、第2の実施の形態では、側壁部22の外周面に隣接して突出している複数の支持部5が、中心軸Oに対して180度対称の位置にも設けられている。また、フランジ3には、穴6が備えられている。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態について説明したものと共通する構成要素については、共通する符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0026】
図7に示すように、この実施例によれば、複数の容器1を重ねる場合、それぞれの本体部20の中心軸Oが同軸に重ね合わさり、側壁部22の内周面には、隣接する容器1の複数の底面側稜線52、または、複数の底側接地部54と、中心軸Oに対して対象に接触するため、複数の容器1を安定に重ね合わせることができる。その場合、隣接する本体部20同士の間には、空間を確保することができるため、本体部20の内部に残留した液体の乾燥が促進される。尚、図7に示すように、底部21を上向きにして複数の容器1を重ねる場合、本体部20の内部に残留した液体の排出を阻害せず、フランジ3に流れ落ちてくる液体は、穴6から排出される。
【符号の説明】
【0027】
1…容器
20…本体部
21…底部
22…側壁部
3…フランジ
4…脚
5…支持部
51…側壁側稜線
52…底面側稜線
53…開口側接地部
54…底側接地部
6…穴
7…水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の底部、及び前記底部と共に液体の収容空間を形成する環状の側壁部を一体に有する本体部と、前記側壁部の外周面に突出して形成され、水平面に対して前記本体部を自立可能に支持する一対の支持部とを備え、前記側壁部は、前記底部から開口側に向かうに従って直径が大きくなる円錐台形状を成し、 前記一対の支持部のそれぞれは、前記水平面に接触する複数の接触部と、前記複数の接触部の間に形成された凹部とを有し、前記底部と前記側壁部とがなす角度をθとするとき、前記底部と前記水平面とのなす角度がθよりも小さくなるように前記本体部を支持する湯桶。
【請求項2】
前記支持部の稜線は、前記本体部の開口側から前記底部に向かうに従って、前記本体部の中心軸に近づく形状に形成された、請求項1に記載の湯桶。
【請求項3】
前記支持部は、前記本体部の中心軸に対して対称に形成された、請求項1乃至2の何れか1項に記載の湯桶。
【請求項4】
前記湯桶は、前記開口側の周縁にフランジを備え、前記支持部の大部分は、前記フランジ部の直径を超えることのない範囲に設定された、請求項1乃至3の何れか1項に記載の湯桶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94524(P2013−94524A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242087(P2011−242087)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(711007781)