説明

湿式処理装置

【課題】帯状基板の上面の一部の変色等、処理異常が発生を防止し、帯状基板の処理工程の歩留まりを向上させることを低減することができる湿式処理装置を提供する。
【解決手段】帯状基板2上の表面処理をするための処理液体3aを貯留するとともに、帯状基板2の搬入口6と、帯状基板2の搬出口7と、搬入口6と搬出口7の間で、かつ処理液体3aの液中に配置された移送ローラ11と、を有する処理槽4を有する湿式処理装置1において、移送ローラ11と搬出口7の間で、かつ帯状基板2の上部に配置され、処理液体3aと同一種類の液体3bを噴出する噴出パイプを有することを特徴とする湿式処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムをはじめとする帯状基板等、被めっき材の表面を液体にてそのフィルム表面の処理を施す、または、めっき処理を施す湿式処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の湿式処理装置の構成は以下のようになっていた。
すなわち、帯状基板上の表面処理をするための処理液体を貯留するとともに、前記帯状基板の搬入口と、前記帯状基板の搬出口と、前記搬入口と前記搬出口の間で、かつ前記処理液体の液中に配置された移送ローラとを有するものとなっていた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1や下記特許文献2に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−162122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例における課題は、帯状基板が処理槽で湿式処理(たとえば無電界めっき)後に、処理槽内の処理液体より引き上げられた際、帯状基板の上面に処理液が残存し、そのことによって、帯状基板の上面に一部に変色等、処理異常が発生していた。
すなわち、上記従来例においては帯状基板の上面に一部に変色等、処理異常のため、この帯状基板の処理工程の歩留まりが悪化していた。
【0005】
そこで、本発明は、帯状基板の上面に残存した処理液を落とすことによって、帯状基板の処理工程の歩留まりを向上させることを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そしてこの目的を達成するために本発明は、帯状基板上の表面処理をするための処理液体を貯留するとともに、前記帯状基板の搬入口と、前記帯状基板の搬出口と、前記搬入口と前記搬出口の間で、かつ前記処理液体の液中に配置された移送ローラと、を有する処理槽を有する湿式処理装置において、前記移送ローラと前記搬出口の間で、かつ前記帯状基板の上部に配置され、前記処理液体と同一種類の液体を噴出する噴出パイプを有する、ことを特徴とする湿式処理装置。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明は、前記移送ローラと前記搬出口の間で、かつ前記帯状基板の上部に配置され、前記処理液体と同一種類の液体を噴出する噴出パイプを設けることによって、帯状基板の上面に残存した処理液を落とすことができる。
【0008】
すなわち、本発明においては、前記移送ローラと前記搬出口の間で、かつ前記帯状基板の上部に配置され、前記処理液体と同一種類の液体を噴出する噴出パイプを設けることによって、帯状基板の上面に残存した処理液を落とすことができ、帯状基板の上面の一部の変色等、処理異常が発生を防止することができたので、その結果として、帯状基板の処理工程の歩留まりを向上させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置の構成を示す斜視図
【図2】図1の破線B−Bの断面図
【図3】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置を用いた表面処理システムで製造する金属薄膜基板の構成図
【図4】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置を用いた表面処理システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に述べる実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
〔1〕実施の形態1
[湿式処理装置の構成]
図1は本実施形態の湿式処理装置1の構成を示す斜視図を示すものである。また、図2は、図1の破線B−Bの断面図を示すものである。なお、図1、図2の矢印Aは、帯状基板2が移動する方向(すなわち、搬入や搬出される方向)を示すものである。
【0012】
図1、図2に示すように、湿式処理装置1は、帯状基板2上の表面処理をするための処理液体3aを貯留する処理槽4を配置している。また、処理槽4は、帯状基板2が搬入される側の壁面である搬入側壁面5に搬入口6と、帯状基板2が搬入される側の壁面である搬出側壁面7に搬出口8を配置している。
【0013】
また、搬入口6の外側には、帯状基板2を矢印Aの方向に搬入する搬入ローラ9、及び、搬出口8の処理槽5の外側には、帯状基板2を矢印Aの方向に搬出するための搬出ローラ10、処理槽4内の処理液体3aの液中に、帯状基板2を移送させるための移送ローラ11を配置している。
【0014】
また、図1、図2に示すように、搬入口6、移送ローラ11、搬出口8が一直線上に配置していないのは、帯状基板2が処理槽4内部の処理液体3a中に滞在する時間(すなわち、帯状基板2の処理時間)を稼ぎ、湿式処理装置1をより小型にする事により、後述する湿式処理装置1を用いた表面処理システム13(後述の図3)の設置面積を狭くし、設備投資に対する生産効率を上げるためである。
【0015】
そこで、移送ローラ11と搬出口8の間で、かつ帯状基板2の上部に配置され、処理液体3aと同一種類の液体3bを噴出する噴出パイプ12を配置している。
【0016】
ここで、本実施形態においては、この噴出パイプ12から噴出される処理液体3aと同一種類の液体3bの濃度は、処理液体3aの濃度は10%薄いものを用いた。また、本実施形態においては、この噴出パイプ12から噴出される処理液体3aと同一種類の液体3bの温度は、処理液体3aの温度と同一の温度のものを用いた。
【0017】
このような構成にすることによって、噴出パイプ12を、移送ローラ11と搬出口8の間で、かつ帯状基板2の上部に配置し、処理液体3aと同一種類の液体3bを噴出することによって、帯状基板2の上面に残存した処理液を落とすことができ、その結果として、帯状基板の処理工程の歩留まりを向上させることを低減することができる。
【0018】
また、実施形態における処理液体3aと、処理液体3aと同一種類の液体3bの温度は同一のものを用い、濃度は異なるものを用いたが、処理槽4と噴出パイプ12との間に循環装置を設置することによって、処理液体3aを循環させて噴出パイプ12から噴出させる(すなわち、処理液体3aと同一種類の液体3bとを全く同一とする)としてもよい。このように、理液体3aを循環させて噴出パイプ12から噴出させることによって、処理槽4内部の処理液体3aの濃度、温度等の状態をより安定化させることができ、その結果、湿式処理装置1をもちいた製造工程の管理がより容易にすることが出来る。
【0019】
また、処理液体と同一種類の液体3bが、帯状基板2が処理液体2の液面から出る境界線(図1中のC−C線、図2のCに相当)に噴出されることがより好ましい。
ここで、この湿式処理装置1による液体処理の例としては、(1)帯状基板2上のアルカリ処理、(2)帯状基板2上の湿式めっき法によるニッケルリン(Ni−P)薄膜の形成等、様々な液体処理に適応可能である。
【0020】
また、この湿式処理装置1で使用される処理液体3aとしては、用途(液体処理の種類)に応じて選択される。例えば、前述(1)帯状基板2上のアルカリ処理の場合は、アルカリ水溶液(水酸化カリウム等)を用い、(2)帯状基板3上の湿式めっき法によるニッケルリン(Ni−P)薄膜の形成の場合は無電界ニッケルリンめっき液を用いればよい。
【0021】
また、帯状基板2は、特に限定されず、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(POLYETHYLENE TEREPHTHALATE、略称PET)、樹脂シート等が挙げられる。
【0022】
また、本実施形態においては、搬入ローラ9と搬出ローラ10は、処理槽4の外側に配置しているが、搬入ローラ9と搬出ローラ10は、処理槽4の内側に設置してもよい。
【0023】
[実施例:湿式処理装置を用いた表面処理システム]
図3は、実施の形態1における湿式処理装置を用いた表面処理システムで製造する金属薄膜基板の構成図を示すものである。本実施形態におけるは帯状基板2として帯状のポリイミド基板14を用いた。なお、本実施の形態においては、金属薄膜版15は、ポリイミド基板14の両面に表面処理層16を形成し、更に、表面処理層16上(両面)にニッケルリン(NI−P)層17を形成している。
図4は、実施の形態1における湿式処理装置を用いた表面処理システムの構成図を示すものである。
【0024】
ロール状に巻かれた巻出しロール18から搬出された帯状のポリイミド基板14が、脱脂槽19、アルカリ処理槽20、触媒槽21、還元槽22、無電界ニッケルリンめっき槽23、乾燥槽24にて処理を施され、図3に示す金属薄膜基板15が形成される。その後、この金属薄膜基板15は、巻取りロール25にロール状に巻き取られる。
【0025】
ここで、洗浄槽26は、前述の脱脂槽19、アルカリ処理槽20、触媒槽21、還元槽22、無電界ニッケルリンめっき槽23、乾燥槽24の間に配置され、それぞれのところで、ポリイミド基板14の表面を純水にて洗浄する工程である。
【0026】
また、図4中のS1は前処理工程、S2は表面処理層形成工程、S3はニッケルリン層形成工程、S4は乾燥工程を示し、それぞれ液体処理に関しては、後述する。
【0027】
また、本実施の形態1において、図1に示す湿式処理装置は、図3中の無電界ニッケルリンめっき槽23に用いられている。
【0028】
以上が実施の形態1における湿式処理装置を用いた表面処理システム13の構成である。なお、本実施の形態においては、図3に示すように、ポリイミド基板14帯状基板3に相当)の両面に薄膜形成(液体処理した場合に相当)を行なった例を示している。
【0029】
それでは、以下に、図4中のS1、S2、S3、S4に関して説明する。
【0030】
(S1:前処理工程)
ステップS1においては、脱脂槽19にてポリイミド基板14表面(本実施の形態においては両面)に付着している異物及び油分などを除去する。
【0031】
(S2:表面処理工程)
次に、ポリイミド基板14の表面処理を行い、そのポリイミド基板14上に表面処理層を形成する。まず、ポリイミド基板14の表面を、アルカリ処理槽20にて、アルカリ性水溶液にポリイミド基板15の表面を浸ける。このアルカリ処理槽20によって、ポリイミド基板2表面のイミド環がアルカリ加水分解し、カルボン酸が生成される。
【0032】
その後、ポリイミド基板14を、触媒槽21に貯留された金属触媒を含む水溶液に浸漬させる。ニッケルリンめっきの触媒となり得るものならどのような触媒を用いても良いが、特にパラジウム触媒が好ましく用いられる。触媒付与工程における触媒の濃度、処理時間、温度等の諸条件は、適宜変更可能である。このことにより、触媒が、ポリイミド基板15の表面に付与される。
【0033】
さらに、ポリイミド基板14を、還元槽22に貯留された、ポリイミド基板14の表面に付与された金属触媒を還元させる還元剤に浸漬させる。このことにより、アルカリ処理層に付与された触媒が還元される。還元処理溶液における還元剤の濃度、処理時間、温度等の諸条件は適宜変更可能である。
【0034】
以上のように、この表面処理工程によって、表面処理層16が形成される。
【0035】
(S3:ニッケルリン層形成工程)
次に、ポリイミド基板14上(両面)の表面処理層16上(両面)に、無電界めっき法によってニッケルリン層17を形成する。
【0036】
以上のように、このニッケルリン形成工程によって、ニッケルリン層17が形成される。
【0037】
(S4:乾燥工程)
次に、ポリイミド基板14上(両面)の表面処理層16上(両面)にニッケルリン層17(両面)に形成された金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)を、乾燥槽24にて、金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)上の水分を除去する(すなわち乾燥させる)。本実施の形態においての乾燥条件は、乾燥槽24の内部の温度(乾燥温度)を120℃、乾燥時間を2分とした。
【0038】
この乾燥工程が必要な理由は、金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)を巻取りロール25にてロール状に巻き取るため、表面に水分が残っている場合は、その後の工程(例えば、金属薄膜基板14上に、銅薄膜を形成する工程)にて、ロール上の金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)が、帯状にするのを困難になることを防止するためと、更に、ニッケルリン層17の表面の酸化防止のためである。
【0039】
以上が本発明の一実施形態である湿式処理装置1を用いた表面処理システム13の一実施例である。
【0040】
本発明は、移送ローラ11と搬出口8の間で、かつ帯状基板2の上部に配置され、処理液体3aと同一種類の液体3bを噴出する噴出パイプを設けることによって、帯状基板の上面に残存した処理液を落とすことができる。
【0041】
すなわち、本発明においては、移送ローラ11と搬出口8の間で、かつ帯状基板2の上部に配置され、前記処理液体と同一種類の液体を噴出する噴出パイプを設けることによって、帯状基板の上面に残存した処理液を落とすことができ、帯状基板の上面の一部の変色等、処理異常が発生を防止することができるので、その結果として、帯状基板の処理工程の歩留まりを向上させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の積層板の製造方法によれば、湿式処理装置、たとえば、携帯電話等、電子機器に用いられるフレキシブルプリント基板(FPC)を製造するための湿式めっき装置等に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 湿式処理装置
2 帯状基板
3a 処理液体、3b 処理液体3aと同一の液体
4 処理槽
5 搬入側壁面
6 搬入口
7 搬出側壁面
8 搬出口
9 搬入ローラ
10 搬出ローラ
11 移送ローラ
12 噴出パイプ
13 表面処理システム
14 ポリイミド基板
15 金属薄膜基板
16 表面処理層
17 ニッケルリン層
18 ロール
19 脱脂槽
20 第一のアルカリ処理槽
21 触媒槽
22 還元槽
23 無電界ニッケルリンめっき槽
24 乾燥槽
25 ロール
26 洗浄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状基板上の表面処理をするための処理液体を貯留するとともに、前記帯状基板の搬入口と、前記帯状基板の搬出口と、前記搬入口と前記搬出口の間で、かつ前記処理液体の液中に配置された移送ローラと、を有する処理槽を有する湿式処理装置において、
前記移送ローラと前記搬出口の間で、かつ前記帯状基板の上部に配置され、前記処理液体と同一種類の液体を噴出する噴出パイプを有する、
ことを特徴とする湿式処理装置。
【請求項2】
前記同一種類の液体が、前記処理槽に貯留された処理液体を循環させた前記処理液体であることを特徴とする請求項1に記載の湿式処理装置。
【請求項3】
前記処理液体と同一種類の液体が、前記帯状基板が前記処理液の液面から出る境界線に噴出されることを特徴とする請求項1に記載の湿式処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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