説明

湿式塗装ブース循環水の気泡による浮上分離浄化方法

【課題】塗料滓を溶剤と不粘着化させた塗料クズとに分離させて液面へと浮上分離浄化方法とその回収方法及び微生物を用いてヘキサン値、BOD値、COD値などを生分解処理する排水処理方法を提供する。
【解決手段】湿式塗料ブース内の循環水中16Aの塗料滓をアルカリイオン水性洗浄剤固有のきめ細かな気泡9を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤7と不粘着化させた塗料クズ6とに個別に分離させて液面へと浮上分離させることによって、塗料滓を効率良く回収できる。又、この浄化された循環水を一旦別タンクに一定量を引き抜いて有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を24時間〜7日間掛けて行うか、又は、既設の廃水処理設備に排出して有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式塗装ブースにおける塗装工程で、湿式塗装ブース内の循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化させた塗料クズを液面へと個別に浮上分離させて、溶剤と不粘着化した塗料クズとを別々に回収する塗料滓の浮上分離浄化方法と浄化された循環水を有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブ用いてヘキサン値、BOD値、COD値などを生分解処理させて排水する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、各種金属製品、樹脂製品などに水を使う湿式塗装ブースが各業界分野で多く用いられているが、湿式塗装ブース内の循環水に塗料ミストが取り込まれる。塗料ミストは循環水槽に設けられた回収槽に集められるが、それが循環水槽内の底に沈殿するために定期的な清掃を強いられ清掃費が甚大になっていた。そこで塗装ミストの処理方法に関してこれまでに強アルカリ性洗剤、界面活性剤、凝集剤及びマイクロバブル発生装置などを用いて塗装ミストの粘着性をなくして液面へ浮上させて回収してきた。
【0003】
【特許文献1】特開2004−223492号公報(10頁)
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1などのような従来の塗料ミストの浮上分離方法では、塗料滓に比重の小さな微粒子を接触付着させて積極的に且つ確実に塗料滓の液面への浮上を促し、塗料滓を効率的に回収分離できるようにした浮上分離方法と塗料滓の粘着性をなくすために界面活性剤又はその含有液で湿潤させた気泡を浮上分離方法であるが、微粒子の径がマイクロメートル(μm)からナノメートル(nm)の気泡を発生させる装置などを用いて浮上分離させる方法では、湿式塗装ブースの循環水槽内に気泡を発生させる装置の設置や塗料滓の粘着性をなくすための界面活性剤又はその含有液の使用や注入装置の設置などが必要となり、湿式塗装ブースの改造工事が発生してかなりの費用の負担が起こる。また、浮上分離させた後の塗料滓の回収方法や浄化方法などが明確化されていない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するもので、単に湿式塗装ブースの循環水槽内にアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の濃度が2%〜3%になるように注入することによって循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化させた塗料クズとに気泡分離させて液面へと浮上分離させて溶剤と不粘着化した塗料クズを別々に回収する塗料滓の浮上分離回収浄化方法と浄化された循環水を有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いてヘキ値、BOD値、COD値などを生分解処理させて排水する方法を提供することを目的とする。
【発明が解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、水を原料としてイオン化させた水に少量のメタケイ酸ナトリウムを添加した製品アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の特長である固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で塗料ミストを液面へと気泡分離させると共に強力な洗浄力とメタケイ酸ナトリウムの強力な防錆膜の働きによって湿式塗装ブース内の壁面、配管中、ベンチュリーブース内、排気ファンなどに付着した塗料ミストの洗浄及び再付着の防止を行うことができる。また、湿式塗装ブースの循環水槽内にアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の濃度が2%〜3%になるように注入することによって循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に気泡分離させて液面へと浮上分離させる。
【0007】
請求項1の発明のごとく、請求項2は、塗装工程の前処理工程として脱脂洗浄工程に使用されているアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の廃液を湿式塗装ブースの循環水槽内に再利用することによって請求項1と同等の作用を得る事ができる。請求項3のごとく、湿式塗装ブースの循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に気泡分離させて液面へと浮上分離させて溶剤は油水分離装置ユーテック(旭化成せんい(株)製)などで回収する方法と油吸着剤C−マット((株)ユウホウ製)などを用いて溶剤の上に乗せ吸着させて回収する。また、不粘着化させた塗料クズは、スクリーン式固液分離装置(ツルミポンプ製)などの固液分離装置を用いて回収する。
請求項4のごとく、湿式塗装ブースの循環水として用いているアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の成分中には、ヘキサン値、BOD値、COD値などを全く含んでいないので浄化する循環水の水質に影響を及ぼす事なく溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に浮上分離回収し、浄化された循環水からは、カルボン酸といわれる有機酸を多く検出することができる。その内訳は蟻酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸・乳酸・吉草酸等であるが、その発生原因の多くは塗料中に含まれる物質が循環水中で加水分解や有機酸発酵などにより生成されると考えられる。浄化された循環水の水質を分析した結果、ヘキサン値、BOD値、COD値などが次第に悪化していく現象を図4のデーター1で判る。図5のデーター1−1では、循環水400lを別タンクに引き抜き後に塗装前処理工程で使用されている脱脂用アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の廃液400lを循環水に補充し、引き抜いた循環水400lを微生物生分解処理を24時間行なったデーターである。図6のデーター1−2では、図5のデーター1−1の微生物生分解処理を更に7日間行なったデーターである。図7のデーター1−3では、循環水の原水と微生物生分解処理を7日間行なって水質浄化の低減度を比較したデーターである。又、13ヶ月間に及んだこれらの試験データーから有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理すればヘキサン値、BOD値、COD値を低減させて水質汚濁防止法などの放流水の水質基準をクリアーして下水道などに排出することができる事が判った。これらの事から、この浄化された循環水を一旦別タンクに一定量を引き抜いて有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を24時間〜7日間掛けて行うか、又は、既設の廃水処理設備に排出して有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理行えばヘキサン値、BOD値、COD値などを低減させて下水道などに排出することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のごとく、本発明により塗料滓をアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化させた塗料クズとに個別に分離させて液面へと浮上分離させることによって、塗料滓を効率良く回収できる。また、浄化された循環水は一旦別タンクに一定量を引き抜いて有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブ微生物を用いてヘキサン値、BOD値、COD値などを生分解処理する事ができるので水質基準をクリアーさせて放流水を下水道などに排出することができる一体型の湿式塗装ブース循環水の浄化システムが提供され、低コストで、しかも地球温暖化対策など環境への負荷を大幅に低減することが可能となり極めて有益となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、塗料滓をアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化させた塗料クズと個別に分離させて液面へと浮上分離浄化方法とその回収方法及び微生物を用いてヘキサン値、BOD値、COD値などを生分解処理して放流水の水質基準をクリアーさせて下水道などに排出する方法について詳述べする。
(1)実施形態1
湿式塗装ブースの循環水槽内にアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の濃度が2%〜3%になるように注入することによって湿式塗装ブース備え付けの循環ポンプ13を稼動させることでアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で塗料ミストをこの気泡に包み込み液面へと気泡分離させると共に強力な洗浄力とメタケイ酸ナトリウムの強力な防錆膜の働きによって湿式塗装ブース内の壁面、配管中、ベンチュリーブース内、排気ファンなどに付着した塗料ミストの洗浄及び再付着の防止をする。循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓は、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに分かれるので個別に回収し浄化できる。
【0010】
本発明の塗料滓をアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に浮上分離させた回収方法は例えば次のように行なわれる。不粘着化した塗料クズは、残飯の回収などに良く用いられているスクリーン式固液分離装置(ツルミポンプ製)などを循環水槽内16Aに設置して回収カゴ23に集積させて回収する。
【0011】
溶剤については、循環水槽内16Aに設置したスクリーン式固液分離装置(ツルミポンプ製)などで不粘着化した塗料クズを集積回収中にスクリーンバー18の目から通過した溶剤を循環水槽内17Bに浮上油回収フロート24を設置し旭化成せんい(株)製(ユーテック)27などの油水分離装置を用いて回収する方法と一般的に広範囲で認知されている油吸着材を使用する。例えば、C−マット((株)ユウホウ製)などを用いて浮上している溶剤の上に乗せ吸着させて回収する。
【0012】
浄化された循環水を一旦別タンクに一定量を引き抜いて有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を24時間〜7日間掛けて行うか、又は、既設の廃水処理設備に排出して有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を行えばヘキサン値、BOD値、COD値などを低減させて下水道などに排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、地球規模で問題化している環境対策をこれまで個別分野として扱われてきた浄化剤・回収方法・バイオ処理方法の一体型の湿式塗装ブース循環水の浄化システムを実現したものである。塗料滓の回収浄化をアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化させた塗料クズとに個別に分離させて液面へと浮上分離させることによって、塗料滓を効率良く回収できる。又、浄化された循環水は有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブ微生物を用いてヘキサン値、BOD値、COD値などを生分解処理させる事ができるので下水道などに排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の塗料滓の浮上分離浄化方法で、それに使用する湿式塗装ブースの説明断面図である。
【図2】循環水槽内の塗料滓にアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)を注入し循環後に溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に浮上する様子を表した説明断面図である。
【図3】循環水槽内の塗料滓が溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に浮上分離し、その不粘着化した塗料クズを回収する一体型の湿式塗装ブース循環水の浄化システムの説明断面図である。
【図4】浄化された循環水からは、カルボン酸といわれる有機酸を多く検出することができる。その内訳は蟻酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸・乳酸・吉草酸等であるが、その発生原因の多くは塗料中に含まれる物質が循環水中で加水分解や有機酸発酵などにより生成されると考えられる水質分析データー1である。
【図5】塗装前処理工程の脱脂洗浄工程に使用されているアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の廃液を湿式塗装ブースの循環水槽内に再利用した循環水400lを別タンクに引き抜き後に塗装前処理工程で使用されている脱脂用アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の廃液400lを循環水に補充し、引き抜いた循環水400lを微生物生分解処理を24時間行なった水質分析データー1−1である。
【図6】浮上分離させて溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に回収し浄化された循環水を図5のデーター1−1の微生物生分解処理を更に7日間行なったデーター1−2である。
【図7】循環水の原水と微生物生分解処理を7日間行なって水質浄化の低減度を比較したデーター1−3である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式塗装ブース循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に気泡分離させて液面へと浮上分離浄化方法。
【請求項2】
塗装前処理工程の脱脂洗浄工程に使用されているアルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)の廃液を湿式塗装ブースの循環水槽内に再利用することによって湿式塗装ブース循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に気泡分離させて液面へと浮上分離浄化方法。
【請求項3】
湿式塗装ブース循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとに個別に気泡分離させて液面へと浮上分離して発生した溶剤と不粘着化した塗料クズを回収する方法。
【請求項4】
湿式塗装ブース循環水の浮上分離浄化方法で浄化した循環水に塗料ミストが取り込まれてなる塗料滓を、アルカリイオン水性洗浄剤(特願2008−155953)固有のきめ細かな気泡を湿式塗装ブースのベンチュリーの機能によって超微粒子化した気泡で溶剤と不粘着化した塗料クズとを液面へと個別に浮上分離させて回収し浄化された循環水を一旦別タンクに一定量を引き抜いて有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を24時間〜7日間掛けて行うか、又は、既設の廃水処理設備に排出して有機物の分解能力に優れたバイオ生剤マイクローブを用いて生分解処理を行えばヘキサン値、BOD値、COD値などを低減させて下水道などに排出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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