説明

湿式潤滑剤の特性測定方法及び特性測定装置

【課題】湿式潤滑剤の潤滑特性の測定試験を実際の使用条件に近い条件で行えるようにし、湿式潤滑剤の潤滑特性の測定精度を向上させる。
【解決手段】回転体2の外周面に湿式潤滑剤4を介して摩擦部材3を押し付けて荷重を負荷し、回転体2を回転させつつ負荷荷重を順次増加させて、回転体2に作用するトルクをトルク測定手段52により測定する。同時に、回転体2から発生するAE波(弾性波)をAE波測定手段60により測定して、制御装置40及びPC63により波形解析し、その波形の変化等に基づいて、回転体2の表層に生じた微小な変化を測定して回転体2の摩耗を判別する。これにより、回転体2に発生した初期摩耗等の摩耗を検出し、その検出結果とトルクの変化に基づき、湿式潤滑剤4の潤滑特性を把握する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスチールワイヤの伸線加工時等に使用される湿式潤滑剤の潤滑特性を測定する特性測定方法及び装置に関し、特に、潤滑特性の測定精度を向上させた湿式潤滑剤の特性測定方法及び特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線材、例えばスチールコードの製造に際しては、素線(スチールワイヤ)を、引き抜きダイス(線材の外径仕上げ用工具)(以下、ダイスという)により伸線し、所定の外径に形成する伸線加工が行われている。
【0003】
図4は、この線材の伸線加工について説明するための模式図であり、線材(ここではスチールワイヤ)及びダイスを断面で示す。
伸線加工に使用されるダイス80は、図示のように、線材90を通して伸線するための略円形状の貫通孔81を有する。この貫通孔81は、線材90の入口側(図では左側)の一端部の直径が、伸線前の線材90Aが挿入可能な直径に形成され、そこから他端部側に向かって徐々に縮径しつつダイス80内の略中間部まで延びて線材90の仕上げ径まで縮径し(縮径部81A)、そこから線材90の出口側(図では右側)の他端部まで略同じ直径で延びる(仕上げ部81B)ように形成されている。
【0004】
伸線加工時には、線材90を、所定の速度でダイス80の貫通孔81内を通して引き抜き(図の矢印S)、伸線前の線材90Aに縮径部81Aで荷重を負荷して、その直径に合わせて絞るように伸線し、仕上げ部81Bにより、伸線後の線材90Bを所定の外径に形成する。その間、線材90には、比較的大きな荷重が負荷され、この高圧状態で連続して高速で加工される。
【0005】
そのため、このような伸線加工時には、線材90とダイス80(貫通孔81)との間の滑り等をよくするため、各種の潤滑剤が使用されており、中でも、取り扱いの容易性や性能の高さ等から、例えば水溶性の潤滑剤等の湿式潤滑剤が広く普及している。この湿式潤滑剤は、線材90とダイス80との焼付きやダイス80の摩耗を防止して、伸線加工を円滑化し、又はダイス80の寿命を長くする等、重要な役割を有しており、従って、その線材90との相性や潤滑効果の程度等の潤滑特性を把握することは、操業上極めて重要である。
【0006】
そこで、従来から、このような湿式潤滑剤中で、伸線加工する線材90に対応するサンプル部材を用いて摩擦試験を行い、予め潤滑特性を測定して湿式潤滑剤を評価することが行われている(特許文献1参照)。
【0007】
図5は、このような従来の潤滑特性の測定に使用される装置の一例を示す要部模式図であり、図では、説明のために各部を分解して示している。
この特性測定装置100は、図示のように、比較的小径な略円柱状(ピン状)のサンプル部材(サンプルピン)110を下端に装着して回転させる回転軸101と、サンプル部材110を回転軸101に固定するロックピン102と、サンプル部材110を挟み付けて所定の荷重を負荷するための一対の挟付部材(ここではV溝が形成された円柱状ブロック)103とを備えた、いわゆるファレックス試験機である。
【0008】
この特性測定装置100で湿式潤滑剤の試験を行うときには、回転軸101に固定されたサンプル部材110と、これをV溝部で挟み付ける挟付部材103とを、容器に収容された評価対象の湿式潤滑剤中(図示せず)に浸漬してサンプル部材110を回転させ、その負荷荷重を徐々に増加させる。その間のサンプル部材110に作用するトルクと負荷荷重、及び直径の変化等を、トルクメータやロードセル、及び変位センサ等の測定手段(図示せず)により測定し、その測定結果に基づいて、湿式潤滑剤中でのサンプル部材110と挟付部材103の摩擦係数や焼付荷重、及びサンプル部材110の摩耗量や摩耗状態等を測定して湿式潤滑剤の潤滑特性を把握する。
【0009】
ところが、近年、このような湿式潤滑剤は、高性能化に伴い成分組成等が非常に複雑化しており、上記した従来の特性測定装置100では、その潤滑特性を充分に、かつ精度よく測定して評価するのが難しくなっている。特に、この特性測定装置100では、サンプル部材110の摩耗に関して、トルクの変化や直径の変化等から摩耗状態及び摩耗量等を測定するため、その測定結果は、主にサンプル部材110の直径の変化等に結びつく凝着摩耗等の、負荷荷重が比較的大きくなってから発生する明確な測定が可能な摩耗に関するものに限定されている。即ち、この特性測定装置100では、試験開始直後等の摩耗初期にサンプル部材110の表層に生じる微小な変化を測定できず、負荷荷重が低いときにも発生するアブレッシブ摩耗等の、主に摩耗初期に発生する摩耗量としての測定が困難な初期摩耗を検出するのが難しい等、サンプル部材110の摩耗を正確に検出して把握できないという問題がある。
【0010】
また、この特性測定装置100では、サンプル部材110が比較的小径であり、その外周面(摩擦面)の回転速度を速くするのが難しい等、湿式潤滑剤の試験時に、例えば上記した伸線加工(図4参照)に対応する高速、高圧の摩擦状態を再現できず、実際の使用時(加工時)の摩擦条件に近い条件での試験が行えないため、その潤滑特性に関する各測定結果の正確性が低くなることがある。特に、サンプル部材110に作用するトルクは、試験条件により比較的大きな影響を受けるため、トルクの変化等から測定される摩擦係数や焼付荷重等が不正確となり、湿式潤滑剤の潤滑特性の測定精度及び、それらに基づく湿式潤滑剤の評価精度も低くなる傾向がある。
【0011】
その結果、この従来の特性測定装置100では、湿式潤滑剤の評価結果と、それを実際に伸線加工等に使用したときの使用結果(評価結果)とが一致しないことがある等、潤滑特性を、実際の使用に対応して、充分な精度で正確に測定して評価できないことがあり、伸線加工等の湿式潤滑剤を使用した加工や生産等に不都合が生じる恐れがある。
【0012】
【特許文献1】特開平5−223811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、湿式潤滑剤の潤滑特性の測定試験を実際の使用条件に近い条件で行えるようにし、潤滑特性に関する測定結果の正確性を高めるとともに、その際に発生する摩耗をより正確に検出し、湿式潤滑剤の潤滑特性の測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、湿式潤滑剤の潤滑特性を測定する湿式潤滑剤の特性測定方法であって、軸線周りに回転する回転体の外周面に湿式潤滑剤を介して摩擦部材を接触させて摩擦する工程と、前記摩擦部材を前記回転体に押し付けて荷重を負荷し、該負荷荷重を順次増加させる工程と、前記摩擦部材との間の摩擦により前記回転体に作用するトルクの変化を測定する工程と、前記回転体又は摩擦部材から発生するAE波を連続して測定する工程と、該測定したAE波を解析する工程と、該AE波の解析結果に基づいて、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の発生を検出する工程と、を有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された湿式潤滑剤の特性測定方法において、前記回転体の前記摩擦部材が接触する外周面の直径を10〜50cmに形成し、該回転体を2000〜5000rpmの回転数で回転させることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された湿式潤滑剤の特性測定方法において、前記摩耗の発生を検出する工程は、前記測定したAE波の波形に基づき、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の種類を判別して検出することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載された湿式潤滑剤の特性測定方法において、前記摩耗の発生を検出する工程では、少なくとも前記回転体又は摩擦部材の初期摩耗を検出することを特徴とする。
請求項5の発明は、湿式潤滑剤の潤滑特性を測定する湿式潤滑剤の特性測定装置であって、軸線周りに回転可能な回転体と、該回転体を回転させる回転駆動手段と、前記回転する回転体の外周面に前記湿式潤滑剤を介して接触して摩擦する摩擦部材と、該摩擦部材を前記回転体に押し付けて荷重を負荷し、かつ該負荷荷重を変更可能な荷重負荷変更手段と、前記摩擦部材との間の摩擦により前記回転体に作用するトルクを測定するトルク測定手段と、前記回転体又は摩擦部材から発生するAE波を測定するAE波測定手段と、該測定したAE波を波形解析し、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の発生を検出する波形解析手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載された湿式潤滑剤の特性測定装置において、前記回転体は、前記摩擦部材が接触する外周面の直径が10〜50cmに形成され、前記回転駆動手段は、前記回転体を2000〜5000rpmの回転数で回転させることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載された湿式潤滑剤の特性測定装置において、前記波形解析手段は、前記測定したAE波の波形に基づき、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の種類を判別して検出することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載された湿式潤滑剤の特性測定装置において、前記波形解析手段により、少なくとも前記回転体又は摩擦部材の初期摩耗を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、湿式潤滑剤の潤滑特性の測定試験を実際の使用条件に近い条件で行うことができ、潤滑特性に関する測定結果の正確性が高まるとともに、その際に発生する摩耗をより正確に検出でき、湿式潤滑剤の潤滑特性の測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の湿式潤滑剤の特性測定装置(摩擦試験装置)は、例えば伸線加工に使用される水溶性の潤滑剤等の湿式潤滑剤の潤滑特性を測定して評価するためのものであり、上記した従来の特性測定装置100(図5参照)と同様に、測定対象の湿式潤滑剤を介して、加工等する部材の材質等に対応するサンプル部材の摩擦試験を行い、その潤滑特性の測定等に使用される。
【0017】
図1は、本実施形態の湿式潤滑剤の特性測定装置の要部を模式的に示す概略構成図である。
この特性測定装置1は、図示のように、軸線周りに回転可能な回転体2と、その外周面の所定位置に接触して摩擦する摩擦部材3と、を備えており、摩擦部材3を、回転する回転体2の外周面に湿式潤滑剤4を介して接触させて摩擦し、その潤滑特性に関して各種の測定を行う。
【0018】
従って、この特性測定装置1は、回転体2を回転させる回転駆動手段10と、摩擦部材3を回転体2に押し付ける荷重負荷変更手段20と、湿式潤滑剤4を収容する収容槽30と、装置各部に接続されて特性測定装置1全体の制御や摩耗量の算出等を行う制御装置40と、各種の測定を行う複数の測定手段50、51、52、60等を備えている。
【0019】
ここで、本実施形態では、回転体2を、外周面が所定の直径の略円盤状に形成するとともに、その全体又は少なくとも摩擦部材3が接触する外周面を、例えば伸線加工等される実際の加工部材に対応した材質等により形成し、回転体2を摩耗等の測定対象であるサンプル部材にしている。また、この特性測定装置1では、回転体2の摩擦部材3が接触する外周面の直径を比較的大径(ここでは10〜50cm)に形成し、その外周面に実際の加工部材の表面処理(例えば、メッキや熱処理等)と同じ処理を施す等して、外周面の表面を実際の加工部材の表面と略同じ状態に形成している。一方、この回転体2と接触する摩擦部材3は、例えば超硬合金等の硬度及び耐摩耗性等が高い材料からなり、略円盤状や板状等のブロック状に、かつ回転体2側の一端面が、その外周面と略均等に接触するよう平坦かつ円滑な面に形成されている。
【0020】
回転駆動手段10は、湿式潤滑剤4中で回転体2を軸線周りに所定速度(回転数)で回転(図の矢印R)させるための回転駆動機構であり、軸線周りに回転可能な回転軸11と、回転軸11の一端部(図では紙面奥側の端部)に固定されたプーリ12と、回転数(速度)が変更及び調節可能なモータ13と、モータ13及び制御装置40に接続された速度コントローラ14と、モータ13の回転軸の先端部に固定されたプーリ15と、各プーリ12、15間に架け渡された無端状の伝動ベルト16と、を有する。
【0021】
回転軸11は、ベアリング等の軸受け部材を介して支持手段(図示せず)により回転自在に支持されるとともに、回転体2を、固定手段(図示せず)により略同芯状に固定して支持し、回転体2と共に軸線周りに回転する。速度コントローラ14は、制御装置40により制御され、そこからの制御信号等に基づいてモータ13をコントロールして所定速度(回転数)で回転させる。このモータ13の回転力は、プーリ15、伝動ベルト16、及びプーリ12を介して回転軸11に伝達され、回転軸11及び回転体2を軸線周りに所定の回転数(回転速度)で回転させる。なお、本実施形態では、回転駆動手段10は、回転体2を、比較的高速度である2000〜5000rpm(revolutions per minute)の範囲内の回転数で回転させるようになっている。
【0022】
荷重負荷変更手段20は、摩擦部材3を保持して回転体2の外周面に押し付けて所定の荷重を負荷(図の矢印P)し、かつ負荷荷重を変更可能に構成され、一端側(図では左端側)に摩擦部材3を固定するプレッシャーロッド21と、その他端側(図では右端側)に配置された駆動手段22と、を有する。
【0023】
プレッシャーロッド21は、略円柱状をなし、駆動手段22から回転体2の軸芯に向かって、かつ、回転体2の半径方向と略平行になるように設けられている。また、プレッシャーロッド21は、その回転体2側の先端部に摩擦部材3を固定して支持し、摩擦部材3の一方の面(摩擦面)を回転体2の外周面に対向して配置する。
【0024】
駆動手段22は、プレッシャーロッド21を長手方向(図では左右方向)に変位させて、その先端部に固定された摩擦部材3を回転体2の外周面に接近及び離間させ、かつ、摩擦部材3を回転体2に所定の力で押し付けるための、例えば油圧式や空気圧式のピストン・シリンダ機構等の駆動源等からなる。
【0025】
この荷重負荷変更手段20では、駆動手段22として、油圧式のピストン・シリンダ機構を使用し、そのピストンロッド22Aの先端にプレッシャーロッド21を取り付け、油圧によりピストンロッド22Aをシリンダ22Bから出し入れして摩擦部材3を上記のように移動させる。また、この荷重負荷変更手段20では、シリンダ22Bに制御弁23を介してポンプ等からなる油圧源(図示せず)を接続するとともに、制御弁23を制御装置40に接続し、制御装置40からの制御信号等により制御弁23を制御してシリンダ22Bからピストンロッド22Aに作用する圧力を調節する。このようにして、ピストンロッド22Aに所定の油圧を作用させて、プレッシャーロッド21を介して摩擦部材3を回転体2の外周面に押し付けて所定の荷重を負荷し、摩擦部材3を押し付ける力を変化させて、その負荷荷重を変更制御する。
【0026】
また、本実施形態の特性測定装置1では、この荷重負荷変更手段20の各部に、荷重測定手段50、変位測定手段51、及びトルク測定手段52を設けている。荷重測定手段50は、駆動手段22(ピストンロッド22A)の先端とプレッシャーロッド21との間に設けられた、ロードセルや半導体圧力センサ等の圧力センサ等からなり、駆動手段22とプレッシャーロッド21との間に作用する圧力を測定して、摩擦部材3から回転体2に負荷されている荷重を測定する。変位測定手段51は、例えばプレッシャーロッド21上の収容槽30の側面と離れた位置に取り付けられ、収容槽30の側面との間の距離の変化を測定して摩擦部材3の変位量(回転体2の直径の変化量)等を測定するものであり、レーザ式や渦電流式の変位センサ等からなる。
【0027】
トルク測定手段52は、摩擦部材3との間の摩擦により回転体2に作用するトルクを測定するものであり、ここでは、荷重負荷変更手段20のプレッシャーロッド21に取り付けられている。このトルク測定手段52は、回転体2と摩擦部材3との間に生じる摩擦力により、回転体2の回転方向に回転しようとする荷重負荷変更手段20(プレッシャーロッド21)の回転を止めつつ、摩擦部材3及びプレッシャーロッド21に作用する同方向の力を測定するロードセル等からなり、これにより、回転体2に作用する回転(摩擦)トルクを測定する。
【0028】
収容槽30は、回転体2と摩擦部材3等が収容可能な大きさに形成されて所定量の湿式潤滑剤4を収容し、回転体2と摩擦部材3の少なくとも接触部を、湿式潤滑剤4中に浸漬して、それらを湿式潤滑剤4を介して接触させる。また、収容槽30は、その荷重負荷変更手段20側の側面に、プレッシャーロッド21が長手方向に移動可能に挿入される貫通孔を有するが、それらの間にはパッキンやオーリング等のプレッシャーロッド21を移動させつつ液体の漏れを防止するシール部材が設けられ、収容槽30から湿式潤滑剤4が流出するのが防止されている。同様に、回転駆動手段10の回転軸11も、収容槽30の他の側面に形成された貫通孔に、シール部材等を介して回転可能に挿入されている。更に、この収容槽30には、図示は省略するが、湿式潤滑剤4の温度を測定する温度センサと、湿式潤滑剤4の温度を所定温度に維持する温度維持手段と、温度センサの測定結果に基づき温度維持手段の温度を調節する温度調節器等が設けられており、これらにより湿式潤滑剤4の温度を一定温度に維持して、恒温状態で試験が行えるようになっている。
【0029】
制御装置40は、例えば、各種のデータ処理や解析、演算等を行うマイクロプロセッサ(MPU)等の演算処理手段42や、各種プログラムを格納したROM、処理のための一時的なデータの保存等を行うRAM等の記憶手段43等を備えたマイクロコンピュータ41、及び上記した各部等の外部機器との接続のためのインターフェース44等からなる。この制御装置40は、インターフェース44を介して接続された各部との間で、湿式潤滑剤4の試験に必要な駆動・停止指令等の各種データを送受信し、上記した回転体2の回転数や、摩擦部材3から回転体2に負荷される荷重の変更等を含む装置全体の制御を行う。
【0030】
また、この制御装置40は、上記した各測定手段50、51、52が、アンプ(図示せず)等を介してインターフェース44に接続されており、それらから出力されたトルク等の各測定データを受信し、その記憶や所定の解析プログラムに基づく演算処理等を実行して、湿式潤滑剤4の評価等に用いられる各種データの算出等を行う。例えば、制御装置40は、変位測定手段51が測定した変位量に基づき、回転体2の直径の変化量を求めて、その摩耗量を算出し、トルク測定手段52により回転体2に作用するトルク及び、その変化を測定し、その測定結果に基づいて、回転体2と摩擦部材3との間の摩擦力を求める。また、制御装置40は、それら各結果と荷重測定手段50の測定結果から、湿式潤滑剤4中での回転体2と摩擦部材3の、負荷荷重に対する摩擦力の変化や摩擦係数を求め、或いは、トルクが急激に変化するときの荷重から焼付荷重を算出等する。
【0031】
更に、この特性測定装置1では、制御装置40に、荷重負荷変更手段20のプレッシャーロッド21に取り付けた、アコースティックエミッション波(本発明ではAE波という)を測定するAEセンサであるAE波測定手段60を、プリアンプ61、電源ユニット62等を順次介して接続している。AE波は、固体が変形や破壊等するときに、内部組織や構造の微小変化等に伴って歪エネルギーが解放され、それにより弾性振動の波が生じるアコースティックエミッション現象により発生する弾性波であり、ここでは、回転体2が摩耗等するときに発生するAE波を、AE波測定手段60により測定する。即ち、摩擦部材3と回転接触する回転体2から発生した摩耗等に伴うAE波は、摩擦部材3及びプレッシャーロッド21を介してAE波測定手段60に伝達し、これをAE波測定手段60により測定して電気信号に変換する。この信号は、プリアンプ61に出力されて増幅処理やフィルタリング処理によるノイズ成分の除去等が行われた後、電源ユニット62等を介して制御装置40に出力される。
【0032】
制御装置40は、このAE波測定手段60が測定したAE波のデータを収集して記憶するとともに、所定の波形解析プログラム等に基づいて演算処理を行い、回転体2に発生した摩耗を判別して検出する。即ち、この制御装置40は、測定したAE波を波形解析して回転体2の摩耗の発生を検出する波形解析手段でもあり、ここでは、主に、回転体2への負荷荷重に対するAE波の波形に基づき、回転体2の摩耗を検出して判別し、少なくとも回転体2の初期摩耗の発生を検出する。
【0033】
ここで、本発明において、回転体2の初期摩耗とは、例えば試験開始後の比較的初期(摩耗初期)等の負荷荷重が低いときにも発生するアブレッシブ摩耗等、摩耗初期に発生して回転体2の直径や摩擦トルクの変化等に大きく結びつかない摩耗であり、主に摩耗初期に回転体2の表層に生じる微小な変化(摩耗現象)のことである。
【0034】
また、この特性測定装置1では、各種の波形解析プログラムを備えたPC(パーソナルコンピュータ)63を、インターフェース44を介して制御装置40に接続しており、AE波の測定結果をPC63に出力して、より詳細なAE波の波形解析等を行うようになっている。このPC63では、例えば測定したAE波のグラフ数値化や、波形成分の周波数の算出及び回転体2に発生した摩耗の種類の判別、又はAE波のフィルタリング処理等による主要な波形成分の抽出等を行う。このように、PC63は、上記した制御装置40と同様に、測定したAE波を波形解析して回転体2の摩耗を検出する波形解析手段であり、以下では、これらをまとめて波形解析手段という。
【0035】
次に、以上説明した特性測定装置1による、湿式潤滑剤4の潤滑特性の測定試験の手順等について説明するが、以下の各手順等は、制御装置40により、所定のプログラムや予め設定された条件等に基づいて、接続された各部を所定のタイミングで作動させる等、装置各部を連動して作動させて実行される。
【0036】
試験は、まず、収容槽30内で、回転体2と摩擦部材3を、それぞれ回転軸11及びプレッシャーロッド21に取り付けて固定し、駆動手段22によりプレッシャーロッド21を移動させて、摩擦部材3を回転体2の外周面の所定位置に接触させる。続いて、収容槽30内の湿式潤滑剤4の量を調節する等して、回転体2と摩擦部材3の少なくとも接触部を湿式潤滑剤4中に浸漬し、恒温状態で試験する場合には、それらが一定温度になるまで待機する。
【0037】
次に、モータ13を回転させて回転軸11及び回転体2を所定の回転数(ここでは、2000〜5000rpm)で軸線周りに回転させ、回転体2を、湿式潤滑剤4を介して摩擦部材3と回転接触させて摩擦を開始した後、荷重負荷変更手段20(駆動手段22)により摩擦部材3を回転体2に押し付けて所定の荷重を負荷する。続いて、荷重負荷変更手段20により摩擦部材3を回転体2に徐々に強く押し付け、回転する回転体2に負荷する摩擦部材3による荷重を予め設定された速度で順次増加させ、この荷重の増加を、所定の荷重やトルクに達するまで、又は所定時間が経過するまで続行する。
【0038】
以上の回転体2の回転開始時から、回転体2に作用するトルクをトルク測定手段52により連続して測定する等、各測定手段50、51、52による測定を連続して行い、それら各測定結果に基づいて、回転体2に作用するトルクや摩擦力の変化、摩擦係数、焼付荷重、及び回転体2の直径の変化量(摩耗量)等を測定する。同時に、回転体2から発生するAE波を、AE波測定手段60により連続して測定し、測定したAE波を波形解析手段により解析して、その解析結果に基づいて、回転体2の摩耗の発生を検出する。
【0039】
図2は、この回転体2に負荷される荷重の変化(図2A)と、その間に測定したAE波の波形(図2B)の例を示す線図(グラフ)であり、それぞれ図2A、Bの横軸は試験開始からの経過時間、図2Aの縦軸は荷重、図2Bの縦軸は検出したAE波の強さ(振幅の大きさ、単位V)である。また、図3は、図2BのAE波の一部を拡大して示す線図であり、それぞれ図3Aは図2BのXで示す範囲を、図3Bは図2BのYで示す範囲を、主に横軸方向に拡大して示している。なお、図2B及び図3A、3Bの縦軸は、AE波をRMS値(Root Mean Square値、平均2乗値)で示している。
【0040】
ここでは、図2Aに示すように、回転体2に負荷する荷重を、試験開始から直線的に増加させ、時間の経過とともに徐々に大きくなるようにして試験を行ったときの例を示す。その際、AE波は、図2Bに示すように、試験開始後の比較的初期には、局部的に大きくなる(図のS)ものの、全体としては同程度の小さな振幅で細かく変化し、その後、大きな振幅のものが連続して発生(図のG)するように変化している。
【0041】
波形解析手段は、このAE波の波形やその変化等に基づき、波形解析により回転体2の表層に生じた微小な変化を検出(測定)し、AE波が大きくなるピーク位置及びその間隔等から、回転体2に発生した摩耗を判別して少なくとも前記初期摩耗を検出する。具体的には、波形解析手段は、AE波に所定値以上の変化(波形変化)が生じた場合に、回転体2に摩耗が発生したと判定し、その大きなAE波の発生が、図3Aに示すように、試験開始後の比較的初期(低荷重時)であり単独的(図のS)なもの(所定間隔(時間)を隔てて複数回発生したものを含む)であるときに、アブレッシブ摩耗等の初期摩耗であると判別する。また、波形解析手段は、このAE波の最初の大きな変化に続いて、又は、このような変化が生じずに、図3Bに示すように、大きなAE波が連続的に短い間隔で発生(図のG)した場合には、回転体2に大きな摩耗が発生したと判定し、その摩耗が、回転体2の直径の変化等に結びつき、変位測定手段51による摩耗量としての測定が可能な凝着摩耗等であると判別する。
【0042】
なお、この摩耗の検出に加えて、波形解析手段(PC63)により、例えばAE波のピーク位置等の特定の波形部分(成分)の周期(秒)やその逆数である周波数(Hz)を算出し、その算出値やAE波の波形を、予め記憶した各種の摩耗現象に対応する特徴的なAE波の周波数や波形等と比較する等して、回転体2に発生した摩耗の種類を判別するようにしてもよい。また、各ピーク位置の振幅(信号の大きさ)や変化量から回転体2に発生した摩耗の種類を判別し、例えば信号が大きい(例えば0.4〜0.5V程度)ときには凝着摩耗等が発生し、信号が小さい(例えば0.10〜0.15V程度)ときには初期摩耗が発生した等と判別してもよい。更に、この振幅や変化量及び、大きな波形変化の数や発生時間等から、発生した初期摩耗や凝着摩耗等の程度(大きさ)を判定し、例えば小さなAE波が単独で発生したときには軽度の初期摩耗が、逆に、そのAE波が大きいときには重度の初期摩耗が発生したと判定し、或いは、大きなAE波が連続して長時間(多数回)発生したときには大きな凝着摩耗等が発生したと判定するようにしてもよい。
【0043】
以上説明した試験時に、この特性測定装置1では、回転体2の直径及び回転数を比較的大きくして、その外周面(摩擦面)の回転速度を従来に比べて速くする。また、回転体2の直径及び回転数を適切に設定して、その外周面に摩擦部材3を押し付けて荷重を負荷し、例えば伸線加工(図4参照)に対応する高速、高圧の摩擦状態等、実際の湿式潤滑剤4の使用時(加工時)の摩擦条件に近い条件を再現する。このようにして、回転体2の外周面に湿式潤滑剤4を介して摩擦部材3を接触させて摩擦しつつ各測定を行い、少なくとも回転体2に作用するトルクの変化を測定するとともに、AE波の波形解析による回転体2に発生した摩擦(特に初期摩耗)を検出する。
【0044】
従って、本実施形態によれば、湿式潤滑剤4の潤滑特性の測定試験を、実際の使用時の使用条件(摩擦条件等)に近い条件で行えるため、その潤滑特性に関する各測定結果と実際の使用時における特性との差が小さくなり、各測定結果の正確性を高めることができる。特に、試験条件により比較的大きな影響を受ける回転体2に作用するトルクを、実際の加工に対応した条件で測定できるため、その変化等から測定される摩擦係数や焼付荷重等の正確性を効果的に高めることができ、湿式潤滑剤4の潤滑特性の測定精度及び、それらに基づく湿式潤滑剤4の評価精度を向上させることができる。
【0045】
また、この特性測定装置1では、AE波の波形解析により、従来は測定が困難であった試験開始後の比較的初期や低荷重時の回転体2の表面状態の変化等、試験中に回転体2の表層に生じる微小な変化を測定でき、その摩耗をより正確に検出して把握することができる。これにより、摩耗量としての測定が困難なアブレッシブ摩耗等の初期摩耗の発生を精度よく検出できるとともに、回転体2の他の摩耗や表面状態変化等に関しても、より正確に把握できるため、湿式潤滑剤4の潤滑特性を適切かつ精度よく測定して評価でき、湿式潤滑剤4の評価精度を更に向上させることができる。その結果、湿式潤滑剤4の評価結果と実際の使用による評価結果との差を小さくすることができ、伸線加工等の湿式潤滑剤4を使用した加工や生産等に不都合が生じるのを抑制することができる。
【0046】
ここで、回転体2の摩擦部材3が接触する外周面の直径は、10〜50cmに形成するのが望ましく、その回転数は、2000〜5000rpmの範囲内に設定するのが望ましい。このようにすることで、上記した実際の伸線加工時に発生する高速、高圧の摩擦状態をより正確に再現できる等、湿式潤滑剤4(特に、伸線加工に使用される湿式潤滑剤4)の試験条件と実際の使用条件とを更に近づけることができ、試験時の各測定結果の正確性を一層高めることができる。
【0047】
また、この特性測定装置1では、回転体2と摩擦部材3を、収容槽30内の湿式潤滑剤4に浸漬して試験を行ったが、回転体2と摩擦部材3は、湿式潤滑剤4を介して接触していればよく、従って、例えば、それらの接触部に向かって湿式潤滑剤4を連続して供給するようにしてもよい。
【0048】
更に、AE波測定手段60は、荷重負荷変更手段20のプレッシャーロッド21(図1参照)以外に、例えば駆動手段22のピストンロッド22A等の荷重負荷変更手段20の他の位置や、回転手段10の回転軸11等、回転体2からのAE波を測定可能な他の位置に取り付けてもよい。加えて、この特性測定装置1では、AE波測定手段60にプリアンプ61と電源ユニット62を順次接続したが、プリアンプ61と電源ユニット62を、又は、それらと制御装置40とを一体化してもよく、或いは、制御装置40にPC63の機能を付加して、それらを一体に構成してもよい。
【0049】
なお、本実施形態では、略円盤状の部材を回転体2としたが、回転体2は、略円柱状や円筒状等、摩擦部材3と回転接触可能な外周形状を有する他の形状のものであってもよい。また、回転体2と摩擦部材3の材質等を本実施形態と逆にして、摩擦部材3を加工部材等に対応するサンプル部材にしてもよい。この場合には、回転体2を摩擦する摩擦部材3が摩耗するため、AE波測定手段60により摩擦部材3から発生するAE波を測定し、波形解析手段により摩擦部材3の摩耗の発生を検出することになる。
【0050】
更に、本実施形態では水溶性の湿式潤滑剤4を評価する場合を例に採り説明したが、この特性測定装置1は、例えばグリース類やオイル類等の他の湿式潤滑剤4の潤滑特性の測定にも使用できる。
【0051】
(潤滑特性の測定試験)
本発明の効果を確認するため、以上説明したようにして回転体2のトルクの変化及びAE波による初期摩耗を測定又は検出して湿式潤滑剤4(潤滑特性)を評価し、湿式潤滑剤4の実際の使用(この試験では伸線加工)による評価結果、及び従来のファレックス試験機(特性測定装置100、図5参照)を用いた試験による評価結果と比較した。
【0052】
この特性測定装置1を用いた試験では、回転体2として高炭素鋼にブラスメッキしたものを、摩擦部材3としてWC(タングステンカーバイド)、Diaをそれぞれ使用し、それらを接触させて順次負荷荷重を増加(図2A参照)させて、トルク及びAE波を測定した。また、測定したトルクの変化から、湿式潤滑剤4を介した回転体2と摩擦部材3の摩擦係数を測定し、測定したAE波を波形解析して回転体2の初期摩耗を検出して、それらに基づき湿式潤滑剤4を評価(以下、実施例による評価という)した。
【0053】
一方、従来のファレックス試験機では、略円柱状のサンプル部材110(図5参照)を回転体2と、挟付部材103を摩擦部材3と、それぞれ同様の材質等により形成し、湿式潤滑剤4中で、回転するサンプル部材110を一対の挟付部材103で挟み付けて荷重を負荷し、負荷荷重を順次増加させて試験及び各種測定を行った。これにより、サンプル部材110の摩耗量(直径変化)、トルク、及び焼付荷重を測定し、それらに基づいて、従来と同様に湿式潤滑剤4の総合的な評価(以下、総合評価という)を判定した。同時に、従来のファレックス試験機に本実施形態と同様のAE波測定手段60を取り付け、同様にしてサンプル部材110の摩耗の発生を検出して、その検出結果に基づいて湿式潤滑剤4を評価(以下、従来のAE評価という)した。
【0054】
また、以上の各試験では、湿式潤滑剤4として、実機(伸線加工機)での使用による評価結果(以下、実機伸線性という)が異なる4種類(水準)のもの(以下、潤滑剤1〜4という)を使用し、各試験結果を実機伸線性と対比した。
【0055】
表1に、各試験による評価結果と実機伸線性の結果を示すが、この表では、潤滑特性が極めて良好であると判定したものを二重丸印で、良好のものを丸印で、中程度のものを三角印で、悪いものをバツ印で、それぞれ示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、潤滑剤1(潤滑特性)は、従来の摩耗量、トルク及び焼付荷重による評価が良好であり、総合評価は良好と判定され、従来のAE評価では極めて良好と判定された。これに対し、潤滑剤1の実機伸線性は極めて良好であり、従来のAE評価と一致し、総合評価と同傾向であった。一方、潤滑剤1の実施例による評価は極めて良好と判定され、実機伸線性と一致していた。
【0058】
潤滑剤2は、従来の摩耗量、トルク及び焼付荷重による評価が良好であり、総合評価は良好と判定されたが、従来のAE評価では悪いと判定された。これに対し、潤滑剤2の実機伸線性は悪く、従来のAE評価とは一致したが、総合評価とは異なる結果となった。一方、潤滑剤2の実施例による評価は悪いと判定され、実機伸線性と一致していた。
【0059】
潤滑剤3は、トルクによる評価が悪く、摩耗量及び焼付荷重による評価が中程度であるため、総合評価は悪いと判定されたが、従来のAE評価では中程度と判定された。これに対し、潤滑剤3の実機伸線性は中程度であり、従来のAE評価とは一致したが、総合評価とは異なる結果となった。一方、潤滑剤3の実施例による評価は中程度と判定され、実機伸線性と一致していた。
【0060】
潤滑剤4は、焼付荷重による評価が悪いが、摩耗量及びトルクによる評価が中程度であるため、総合評価は中程度と判定され、従来のAE評価でも中程度と判定された。これに対し、潤滑剤4の実機伸線性は良好であり、これらは異なる結果となった。一方、潤滑剤4の実施例による評価は良好と判定され、実機伸線性と一致していた。
【0061】
このように、実施例による評価では、従来の評価方法(総合評価)では困難である湿式潤滑剤4の実際の使用に対応した評価が可能であり、従来のAE評価よりも潤滑特性をより正確に測定・評価でき、その精度が極めて高くなることが分かった。
【0062】
以上の結果から、本発明により、湿式潤滑剤4の潤滑特性の測定試験を実際の使用条件に近い条件で行うことができ、潤滑特性に関する測定結果の正確性が高まるとともに、その際に発生する摩耗をより正確に検出でき、湿式潤滑剤4の潤滑特性の測定精度を向上できることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態の湿式潤滑剤の特性測定装置の要部を模式的に示す概略構成図である。
【図2】回転体に負荷される荷重の変化と、その間に測定したAE波の波形の例を示す線図である。
【図3】図2BのAE波の一部を拡大して示す線図である。
【図4】線材の伸線加工について説明するための模式図である。
【図5】従来の湿式潤滑剤の潤滑特性の測定に使用される装置の一例を示す要部模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・湿式潤滑剤の特性測定装置、2・・・回転体、3・・・摩擦部材、4・・・湿式潤滑剤、10・・・回転駆動手段、11・・・回転軸、12・・・プーリ、13・・・モータ、14・・・速度コントローラ、15・・・プーリ、16・・・伝動ベルト、20・・・荷重負荷変更手段、21・・・プレッシャーロッド、22・・・駆動手段、23・・・制御弁、30・・・収容槽、40・・・制御装置、41・・・マイクロコンピュータ、42・・・演算処理手段、43・・・記憶手段、44・・・インターフェース、50・・・荷重測定手段、51・・・変位測定手段、52・・・トルク測定手段、60・・・AE波測定手段、61・・プリアンプ、62・・・電源ユニット、63・・・PC(パーソナルコンピュータ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式潤滑剤の潤滑特性を測定する湿式潤滑剤の特性測定方法であって、
軸線周りに回転する回転体の外周面に湿式潤滑剤を介して摩擦部材を接触させて摩擦する工程と、
前記摩擦部材を前記回転体に押し付けて荷重を負荷し、該負荷荷重を順次増加させる工程と、
前記摩擦部材との間の摩擦により前記回転体に作用するトルクの変化を測定する工程と、
前記回転体又は摩擦部材から発生するAE波を連続して測定する工程と、
該測定したAE波を解析する工程と、
該AE波の解析結果に基づいて、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の発生を検出する工程と、
を有することを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載された湿式潤滑剤の特性測定方法において、
前記回転体の前記摩擦部材が接触する外周面の直径を10〜50cmに形成し、該回転体を2000〜5000rpmの回転数で回転させることを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された湿式潤滑剤の特性測定方法において、
前記摩耗の発生を検出する工程は、前記測定したAE波の波形に基づき、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の種類を判別して検出することを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載された湿式潤滑剤の特性測定方法において、
前記摩耗の発生を検出する工程では、少なくとも前記回転体又は摩擦部材の初期摩耗を検出することを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定方法。
【請求項5】
湿式潤滑剤の潤滑特性を測定する湿式潤滑剤の特性測定装置であって、
軸線周りに回転可能な回転体と、
該回転体を回転させる回転駆動手段と、
前記回転する回転体の外周面に前記湿式潤滑剤を介して接触して摩擦する摩擦部材と、
該摩擦部材を前記回転体に押し付けて荷重を負荷し、かつ該負荷荷重を変更可能な荷重負荷変更手段と、
前記摩擦部材との間の摩擦により前記回転体に作用するトルクを測定するトルク測定手段と、
前記回転体又は摩擦部材から発生するAE波を測定するAE波測定手段と、
該測定したAE波を波形解析し、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の発生を検出する波形解析手段と、
を備えたことを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載された湿式潤滑剤の特性測定装置において、
前記回転体は、前記摩擦部材が接触する外周面の直径が10〜50cmに形成され、前記回転駆動手段は、前記回転体を2000〜5000rpmの回転数で回転させることを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された湿式潤滑剤の特性測定装置において、
前記波形解析手段は、前記測定したAE波の波形に基づき、前記回転体又は摩擦部材の摩耗の種類を判別して検出することを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載された湿式潤滑剤の特性測定装置において、
前記波形解析手段により、少なくとも前記回転体又は摩擦部材の初期摩耗を検出することを特徴とする湿式潤滑剤の特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−151691(P2008−151691A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341068(P2006−341068)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)