説明

湿式短繊維不織布用ショートカット繊維

【課題】コスト的に有利に製造することができるショートカット繊維であり、性能の優れたフィルターやセパレーター用途に好適な、厚みが薄く、通気度の低い湿式短繊維不織布を得ることができる湿式短繊維不織布用ショートカット繊維を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない短繊維であって、短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0、強度が3.0〜8.0cN/dtex、伸度が25〜100%である湿式短繊維不織布用ショートカット繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式短繊維不織布を得るのに適したショートカット繊維であって、特に厚みが薄く、通気度が低く、高性能なフィルター用途に好適に使用することができる湿式短繊維不織布を得ることができる湿式短繊維不織布用ショートカット繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、湿式短繊維不織布はフィルター用基材、電池セパレーターなどの用途に広く用いられている。このような用途において、性能の高いフィルターやセパレーターとするには、厚みが薄く、通気度の低い湿式短繊維不織布が求められている。
【0003】
通気度の低い短繊維不織布を得るには、繊維間の隙間を少なくし、気密性を高くすることが必要である。特許文献1や特許文献2には単糸繊度が0.5dtex以下の細繊度の繊維を用いることにより、単繊維間の空隙を小さくし、気密性を高くした短繊維不織布を得る方法が提案されている。
【0004】
0.5dtex以下の繊維を得るには、単一のポリマーで紡糸、延伸して直接繊維を得る方法と、複数のポリマーを用いた複合繊維で紡糸、延伸を行い、ある程度太い繊維を得た後に割繊することで0.5dtex以下の繊維を得る方法がある。割繊の方法としては、衝撃などで繊維を構成するポリマーを剥離分割して細繊度の繊維を得る機械的割繊と、有機溶媒などで繊維を構成するポリマーの1種を溶媒で溶解し、残った不溶の細繊度の繊維を得る化学的割繊がある。
【0005】
細繊度の繊維を直接得る方法は、紡糸、延伸時に糸切れが発生しやすく、生産性が低下するのでコスト的に不利である。細繊度の繊維を機械的割繊で得る方法は、コスト的には不利ではないが、割繊後に得られた繊維は、相溶性に乏しい複数の繊維が混ざったものとなり、これらの繊維から得られる湿式短繊維不織布は性能の劣るものになりやすい。
【0006】
細繊度の繊維を化学的割繊で得る方法は、紡糸、延伸で得られた繊維の一部を溶媒で溶解除去をするため、得られる細繊度の繊維の量が減り、コスト的に不利である。さらに、溶媒の再生、回収設備が必要となる点でもコスト的に不利であり、また、環境に悪影響を及ぼす危惧もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−151358
【特許文献2】特開2007−208043
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点を解決するものであって、コスト的に有利に製造することができるショートカット繊維であり、性能の優れたフィルターやセパレーター用途に好適な、厚みが薄く、通気度の低い湿式短繊維不織布を得ることができる湿式短繊維不織布用ショートカット繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂からなる繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない短繊維であって、短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0、強度が3.0〜8.0cN/dtex、伸度が25〜100%であることを特徴とする湿式短繊維不織布用ショートカット繊維を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の湿式短繊維不織布用ショートカット繊維は、ショートカット繊維を構成する単繊維の断面が扁平形状であって、その扁平形状がアスペクト比が特定の範囲となるものであり、かつ単糸繊度が0.8〜4.0dtexのものであるため、繊維同士が積層される際には長辺方向が水平となるように載置され、厚みが薄く、通気度が低く、気密性の高い湿式短繊維不織布を得ることができる。さらに、強度、伸度も適切な範囲のものであるので、機械的特性にも優れた湿式短繊維不織布を得ることができる。このような優れた特性を有する湿式短繊維不織布は、性能の高いフィルターやセパレーター用途に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のショートカット繊維の単繊維の断面形状(繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面形状)の一実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明のショートカット繊維から得られる短繊維不織布の厚み方向断面の一実施態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のショートカット繊維は、熱可塑性樹脂からなる繊維束を切断することにより得られたものであり、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等を用いることができる。
【0013】
まず、ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルのいずれであってもよい。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体としたポリエステルであって、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールや、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸、ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン等を共重合していてもよい。
【0014】
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレート、及びこれらの混合物、変性物等を用いることができる。
【0015】
中でも、ポリ乳酸を用いることが好ましく、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0016】
ポリアミドとしては、ポリイミノ−1−オキソテトラメチレン(ナイロン4),ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカナミド(ナイロン11)、ポリラウロラクタミド(ナイロン12)、ポリメタキシレンアジパミド、ポリパラキシリレンデカナミド、ポリビスシクロヘキシルメタンデカナミドを用いることができる。また、これらのポリアミド系重合体を構成しているモノマーを、2種以上共重合させたポリアミド系共重合体や混合物も用いることができる。
【0017】
ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1,ペンテン−1,3−メチルブテン−1,ヘキセン−1,オクテン−1,ドデセン−1,オクタデセン−1等の炭素原子数2〜18の脂肪族α−モノオレフィンを単独で重合させたホモポリオレフィン重合体、又は2種以上を共重合させたポリオレフィン共重合体や混合物も用いることができる。
【0018】
そして、本発明のショートカット繊維は、繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtexであり、湿式短繊維不織布用のものであるため、機械捲縮が付与されていない(ノークリンプ)短繊維である。
【0019】
繊維長は中でも3〜15mmであることが好ましい。繊維長が20mmを超えると、不織布を得る工程での繊維の分散が悪くなり、均斉度に劣った湿式短繊維不織布となる。一方、繊維長を2mm未満にしようとすると、繊維を切断する際の発熱で繊維同士の融着が生じたものとなる。
【0020】
単糸繊度は0.8〜4.0dtexとするものであるが、中でも1.0〜3.5dtexであることが好ましい。単糸繊度が4.0dtexを超えると、得られる湿式短繊維不織布の厚みが大きくなり、また繊維間の隙間が大きくなることから通気性の高い短繊維不織布となる。一方、0.8dtex未満になると、紡糸時に切れ糸が発生しやすくなり、操業性が悪くなるとともに、繊維同士の融着が生じたり、強伸度特性に劣ったものとなる。
【0021】
なお、通常、熱可塑性樹脂からなる繊維を切断することにより短繊維を得る際には、スタフィングボックス法や押込加熱ギア法等により機械捲縮を付与する場合があるが、本発明のショートカット繊維においては、湿式短繊維不織布用のものであるため、機械捲縮を付与しないものとする。
【0022】
そして、本発明のショートカット繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0のものであり、中でも2.0〜5.5であることがより好ましい。本発明のショートカット繊維の単繊維の断面形状の一実施態様を図1に示す。
【0023】
本発明のショートカット繊維は、適度なアスペクト比を有する扁平断面形状のものであるため、湿式短繊維不織布を得る際の抄紙工程において、ウエブを構成する短繊維が積層される際に形状が安定する長辺方向が水平となるように載置される。このため、丸断面形状の繊維や四角や三角等の異形断面の繊維を用いた場合に比べて、単繊維間の空隙が小さくなるとともに、厚みが薄くなり、通気度が低く、気密性の高い短繊維不織布を得ることが可能となる。本発明のショートカット繊維から得られる短繊維不織布の厚み方向断面の一実施態様を図2に示す。
【0024】
アスペクト比が6.0を超えると、長辺の長い扁平度合いの強い糸になるため、紡糸時に切れ糸が発生しやすくなり、操業性が悪くなるとともに、強伸度等の特性や品位が低下する。一方、アスペクト比が1.8未満になると、円形断面に近い形状となり、得られる湿式短繊維不織布の厚みが大きいものとなる。また繊維間の空隙も大きくなることから、通気度の高い、気密性の低い短繊維不織布となる。
【0025】
本発明におけるアスペクト比は以下のようにして測定し、算出するものである。ショートカット繊維より単糸を取り出し、単繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面を、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ VHX−600を使用して撮影し、撮影した断面写真より長辺と短辺の長さを測定し、長辺と短辺の比(長辺/短辺)であるアスペクト比を算出するものである。このとき、1種類のショートカット繊維につき、ランダムに5本の単糸を採取し、それぞれの単糸毎に2枚の断面写真を撮る。計10枚の写真から、長辺と短辺の長さを測定し、それぞれアスペクト比を算出する。そして、n10の平均値とする。
【0026】
そして、本発明のショートカット繊維を用いて湿式短繊維不織布とする際には、接着成分により繊維間が接着されたものとなる。湿式短繊維不織布を得る方法は特に限定するものではないが、接着成分となる溶融成分で構成されたバインダー繊維とともに用いて、ウエブを作成し、熱処理を施すことにより、バインダー繊維を溶融させて本発明のショートカット繊維を接着させることが好ましい。
【0027】
本発明のショートカット繊維とともに用いるバインダー繊維としては、接着成分となる溶融成分のみで構成された全融のバインダー繊維のみならず、溶融成分と非溶融成分からなる複合型のバインダー繊維であってもよい。複合型のバインダー繊維の場合には、芯鞘型、サイドバイサイド型等のものが挙げられる。
【0028】
また、バインダー繊維の溶融成分としては、本発明のショートカット繊維と同じ成分を含有する相溶性の良いものが好ましい。したがって、本発明のショートカット繊維を構成する熱可塑性樹脂の融点より流動開始温度または融点が30℃以上低い熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
さらに、バインダー繊維の単糸繊度は1.0〜3.0dtexであることが好ましい。さらには、1.0〜2.5dtexであることがより好ましい。単糸繊度が3.0dtexを超えると、本発明のショートカット繊維とバインダー繊維とからなるウエブにおいて繊維間の空隙が大きくなり、厚みが大きいものとなる。そして、バインダー繊維を溶融させた後に得られる短繊維不織布も繊維間の空隙が大きく、通気度が高く、厚みの大きいものとなりやすい。、一方、1.0dtex未満のバインダー繊維であると、バインダー繊維を得る際に操業性が悪くなり、品質の劣った繊維となる場合が多く好ましくない。
【0030】
また、繊維長も本発明のショートカット繊維と同様に2〜20mmであるショートカット繊維であることが好ましく、さらには、3〜15mmであることがより好ましい。繊維長が20mmを超えると、短繊維不織布を得る際の繊維の分散が悪くなり、均斉度の低い短繊維不織布となりやすい。一方、繊維長が2mm未満になると、切断時の発熱で繊維同士の融着が生じている場合が多く、やはり短繊維不織布を得る際の繊維の分散が悪くなり、均斉度の低い短繊維不織布となりやすい。
【0031】
本発明のショートカット繊維とバインダー繊維を用いる際の両繊維の混合比率は、質量比(ショートカット繊維/バインダー繊維)で50/50〜90/10の範囲が好ましい。さらには、60/40〜80/20であることがより好ましい。
【0032】
本発明のショートカット繊維及びバインダー繊維を構成する熱可塑性樹脂中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
【0033】
そして、本発明のショートカット繊維は、強度が3.0〜8.0cN/dtexであり、中でも3.5〜7.5cN/dtexであることが好ましい。強度が3.0cN/dtex未満であると、得られる不織布の機械的特性(強度)が劣るものになる。一方、強度が8.0cN/dtexを超えるものを得ようとすれば、高粘度のポリマーを用いる必要があるため、紡糸及び延伸工程の操業性が悪くなり、得られる短繊維の品位が劣るものとなり好ましくない。
【0034】
また、伸度は25〜100%であり、中でも30〜60%であることが好ましい。伸度が25%未満であると、延伸工程での操業性が悪くなり、得られる短繊維の品位が劣るものとなり好ましくない。一方、伸度が100%を超えると、延伸での配向結晶が充分に進んでおらず、熱や圧力の関与で擬似密着が発生しやすくなり、単糸間の密着が生じ、得られる短繊維の品位が劣るものとなりやすい。
【0035】
そして、本発明のショートカット繊維とバインダー繊維を用いて湿式短繊維不織布を得る際には、従来から知られている各種加工法、例えばサーマルスルー法、エアレイド法、抄紙法、スパンレース法などを採用することができるが、分散性がよく、地合が良好な不織布が得られる点から、抄紙法が好ましい。
【0036】
次に、本発明のショートカット繊維の製造方法について一例を用いて説明する。本発明のショートカット繊維が呈する特定のアスペクト比の扁平断面形状は、紡糸時の紡糸孔の形状を工夫し、紡糸速度や延伸倍率、延伸速度等を調整することにより得ることが可能となる。熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる場合について説明する。
まず、通常の溶融紡糸装置を用い、PETを溶融して扁平断面形状の紡糸孔を有する紡糸口金より紡糸する。紡出した糸条を冷却固化させて未延伸糸を得る。そして、得られた未延伸糸を繊維束に集束した後、延伸倍率2〜4倍で延伸し、分散性油剤を付与した後に任意の繊維長に切断してショートカット繊維を得る。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ショートカット繊維の特性値及び湿式短繊維不織布の評価方法は次の通りである。
〔アスペクト比〕
前記の方法で測定し、算出した。
〔単糸繊度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 正量繊度のA法により測定した。
〔繊維長〕
得られたショートカット繊維のサイドビュー写真を撮影し、任意の30本の長さを測定し後、その平均値を撮影倍率で割り返して算出した。
〔強度、伸度〕
切断前の繊維束を用いて、JIS L 1015 引張強さ及び伸び率により測定した。
〔不織布の厚み〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 織物の厚さにより加圧時間10秒、加重23.5kPaの条件で測定した。
200μm未満を合格とした。
〔不織布の通気度〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 通気性のA法により測定した。
100cc/cm/sec未満を合格とした。
〔不織布の機械的特性〕
得られた湿式短繊維不織布を、JIS L 1096 引張強さ及び伸び率のA法によりMD方向(乾燥機のMD方向)の強力を測定した。
50N/5cm巾以上を合格とした。
【0038】
実施例1
融点が256℃、極限粘度(フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した)0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量265g/分、紡糸速度750m/分の条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.3ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.45倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5のショートカット繊維を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、ポリエステルBとして、流動開始温度が110℃、極限粘度0.60のイソフタル酸を40モル%共重合したPETを用いた。両ポリエステルを複合紡糸装置を用いてポリエステルAを芯成分、ポリエステルBを鞘成分とし、芯鞘質量比が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量345g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、丸断面の吐出孔が560個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を12.4ktexの繊維束に集束した後、延伸温度60℃、延伸倍率3.10倍で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mmの短繊維(バインダー繊維)を得た。
〔湿式短繊維不織布〕
得られたショートカット繊維とバインダー繊維とを用い、混率を質量比70/30(ショートカット繊維/バインダー繊維)として、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)にて、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の攪拌羽にて攪拌を行い抄紙し、湿式ウエブとした。そして、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて140℃の温度で熱処理し、バインダー繊維の鞘成分を溶融させて、目付け50g/mの湿式短繊維不織布を得た。
【0039】
実施例2〜4、比較例1〜2
主体繊維の紡糸条件を表1に示すものに変更し、表1に示すアスペクト比の短繊維とした以外は、実施例1と同様にしてショートカット繊維を得た。
さらに、実施例1と同様のバインダー繊維を用い、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0040】
実施例5〜6
ショートカット繊維とバインダー繊維の混率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0041】
実施例7
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量200g/min、紡糸速度1000m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比8)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.6ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.02倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、アスペクト比2.0のショートカット繊維を得た。
次に、実施例1のバインダー繊維を用いて、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0042】
実施例8
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量340g/min、紡糸速度750m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.2ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.42倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5のショートカット繊維を得た。
次に、実施例1のバインダー繊維を用いて、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0043】
実施例9
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量477g/min、紡糸速度650m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.9ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.69倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度3.3dtex、繊維長5mm、アスペクト比5.5のショートカット繊維を得た。
次に、実施例1のバインダー繊維を用いて、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0044】
実施例10〜11、比較例3〜4
実施例1のショートカット繊維を得る際のカット長を変更し、表1に示す繊維長とした以外は実施例1と同様にしてショートカット繊維を得た。
そして、実施例1のバインダー繊維を用いて、実施例1と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0045】
実施例1〜11、比較例1〜4で得られたショートカット繊維及び湿式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、実施例1〜11のショートカット繊維は、アスペクト比が1.8〜6.0の範囲内であり、強度、伸度、単糸繊度、繊維長ともに本発明の範囲内のものであったため、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが薄く、通気度が低く、気密性に優れ、機械的特性にも優れたものであった。
一方、比較例1のショートカット繊維は、アスペクト比が小さかったため、丸断面形状に近いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが大きく、通気度が大きいものであった。比較例2ではアスペクト比を大きくしたため、紡糸時に切れ糸が発生し操業性が悪化した。また、得られたショートカット繊維は強度の低いものとなり、このショートカット繊維より得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。比較例3のショートカット繊維は、繊維長が長かったため、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚みが大きく、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例4のショートカット繊維は、繊維長が短かったため、切断時に繊維同士の融着が発生し、不織布の地合が悪くなり、厚みの大きいものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。
【0048】
実施例12
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点168℃、相対粘度(フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した)1.88であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度220℃、吐出量242g/min、紡糸速度750m/minの条件で未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.15倍、延伸温度60℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の短繊維を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリ乳酸Aとして、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点168℃、相対粘度1.88であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸Bとして、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが89.8/10.2であり、融点130℃、相対粘度1.91であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂を用いた。複合紡糸装置を用い、ポリ乳酸Aを芯成分、ポリ乳酸Bを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度220℃、吐出量335g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数560の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexの繊維束に集束した後、延伸温度55℃、延伸倍率3.0
0倍で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mmの芯鞘型複合短繊維(バインダー繊維)を得た。
〔湿式短繊維不織布〕
得られたショートカット繊維とバインダー繊維とを用い、混率を質量比70/30(ショートカット繊維/バインダー繊維)として、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)にて、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の攪拌羽にて攪拌を行い抄紙し、湿式ウエブとした。そして、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて140℃の温度で熱処理し、バインダー繊維の鞘成分を溶融させて、目付け50g/mの湿式短繊維不織布を得た。
【0049】
実施例13〜15、比較例5〜6
主体繊維の紡糸条件を表2に示すものに変更し、表2に示すアスペクト比の短繊維とした以外は、実施例12と同様にしてショートカット繊維を得た。
さらに、実施例12と同様のバインダー繊維を用い、実施例12と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0050】
実施例16〜17、比較例7〜8
ショートカット繊維とバインダー繊維の混率を表2に示すように変更した以外は、実施例12と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0051】
実施例18
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点168℃、相対粘度1.88であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度220℃、吐出量191g/min、紡糸速度1000m/minの条件で未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比8)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.6ktexのトウに集束した後、延伸倍率2.88倍、延伸温度60℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、アスペクト比2.0の短繊維を得た。
次に、実施例12のバインダー繊維を用いて、実施例12と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0052】
実施例19
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点168℃、相対粘度1.88であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度220℃、吐出量322g/min、紡糸速度750m/minの条件で未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.24倍、延伸温度60℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5の短繊維を得た。
次に、実施例12のバインダー繊維を用いて、実施例12と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0053】
実施例20
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点168℃、相対粘度1.88であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度220℃、吐出量459g/min、紡糸速度650m/minの条件で未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.9ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.55倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、カットして単糸繊度3.3dtex、繊維長5mm、アスペクト比5.5の短繊維を得た。
次に、実施例12のバインダー繊維を用いて、実施例12と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0054】
実施例21〜22
実施例12のショートカット繊維を得る際のカット長を変更し、表2に示す繊維長とした以外は実施例12と同様にしてショートカット繊維を得た。
そして、実施例12のバインダー繊維を用いて、実施例12と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0055】
実施例12〜22、比較例5〜8で得られたショートカット繊維及び湿式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2から明らかなように、実施例12〜22のショートカット繊維は、アスペクト比が1.8〜6.0の範囲内であり、強度、伸度、単糸繊度、繊維長ともに本発明の範囲内のものであったため、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが薄く、通気度が低く、気密性に優れ、機械的特性にも優れたものであった。
一方、比較例5のショートカット繊維は、アスペクト比が小さかったため、丸断面形状に近いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが大きく、通気度が大きいものであった。比較例6ではアスペクト比を大きくしたため、紡糸時に切れ糸が発生し操業性が悪化した。また、得られたショートカット繊維は強度の低いものとなり、このショートカット繊維より得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。比較例7のショートカット繊維は、繊維長が長かったため、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚みが大きく、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例8のショートカット繊維は、繊維長が短かったため、切断時に繊維同士の融着が発生し、不織布の地合が悪くなり、厚みの大きいものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。
【0058】
実施例23
融点が215℃、相対粘度(96%硫酸を溶媒として、濃度1g/dl、温度25.0℃で測定した)が2.50のナイロン6を使用し、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度265℃、吐出量353g/min、紡糸速度1000m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.3ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.45倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5のショートカット繊維を得た。
〔バインダー繊維〕
ポリアミドAとして、融点が250℃、相対粘度が2.57のナイロン66を用い、ポリアミドBとして、融点が141℃、相対粘度が2.55のナイロン6/ナイロン12共重合ポリアミドを用いた。両ポリアミドを複合紡糸装置を用いて、ポリアミドAを芯成分、ポリアミドBを鞘成分とし、芯鞘質量比が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量345g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、丸断面の吐出孔が560個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を12.4ktexの繊維束に集束した後、延伸温度55℃、延伸倍率3.10倍で延伸を行った。その後、分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.7dtex、繊維長5mmの短繊維(バインダー繊維)を得た。
〔湿式短繊維不織布〕
得られたショートカット繊維とバインダー繊維とを用い、混率を質量比70/30(ショートカット繊維/バインダー繊維)として、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シ−トマシン)にて、ポリエーテルとポリエーテルエステルアミドを主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の攪拌羽にて攪拌を行い抄紙し、湿式ウエブとした。そして、湿式ウエブを回転式乾燥機(熊谷理機工業製)にて150℃の温度で熱処理し、バインダー繊維の鞘成分を溶融させて、目付け50g/mの湿式短繊維不織布を得た。
【0059】
実施例24〜26、比較例9〜10
主体繊維の紡糸条件を表3に示すものに変更し、表3に示すアスペクト比の短繊維とした以外は、実施例23と同様にしてショートカット繊維を得た。
さらに、実施例23と同様のバインダー繊維を用い、実施例23と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0060】
実施例27〜28
ショートカット繊維とバインダー繊維の混率を表3に示すように変更した以外は、実施例23と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0061】
実施例29
融点が215℃、相対粘度が2.50のナイロン6を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度265℃、吐出量200g/min、紡糸速度1000m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比8)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.6ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.02倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度1.1dtex、繊維長5mm、アスペクト比2.0のショートカット繊維を得た。
次に、実施例23のバインダー繊維を用いて、実施例23と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0062】
実施例30
融点が215℃、相対粘度が2.50のナイロン6を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度260℃、吐出量340g/min、紡糸速度750m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比10)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.2ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.42倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度2.2dtex、繊維長5mm、アスペクト比3.5のショートカット繊維を得た。
次に、実施例23のバインダー繊維を用いて、実施例23と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0063】
実施例31
融点が215℃、相対粘度が2.50のナイロン6を、通常の紡糸装置を用い、紡糸温度260℃、吐出量476g/min、紡糸速度650m/minの条件で紡糸し、未延伸糸を得た。このとき、紡糸口金として、扁平断面(アスペクト比12)の吐出孔が602個穿孔されたものを用いた。得られた未延伸糸を13.9ktexの繊維束に集束した後、延伸倍率3.69倍、延伸温度65℃で延伸を行った。その後、分散油剤を付着量が0.2質量%となるように付与した後、カットして単糸繊度3.3dtex、繊維長5mm、アスペクト比5.5のショートカット繊維を得た。
次に、実施例23のバインダー繊維を用いて、実施例23と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0064】
実施例32〜33、比較例11〜12
実施例23のショートカット繊維を得る際のカット長を変更し、表3に示す繊維長とした以外は実施例23と同様にしてショートカット繊維を得た。
そして、実施例23のバインダー繊維を用いて、実施例23と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
【0065】
実施例23〜33、比較例9〜12で得られたショートカット繊維及び湿式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3から明らかなように、実施例23〜33のショートカット繊維は、アスペクト比が1.8〜6.0の範囲内であり、強度、伸度、単糸繊度、繊維長ともに本発明の範囲内のものであったため、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが薄く、通気度が低く、気密性に優れ、機械的特性にも優れたものであった。
一方、比較例9のショートカット繊維は、アスペクト比が小さかったため、丸断面形状に近いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は、厚みが大きく、通気度が高いものとなった。比較例10ではアスペクト比を大きくしたため、紡糸時に切れ糸が発生し操業性が悪化した。また、得られたショートカット繊維は強度の低いものとなり、このショートカット繊維より得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。比較例11のショートカット繊維は、繊維長が長かったため、得られた湿式短繊維不織布は地合が悪くなり、厚さが厚く、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。比較例12のショートカット繊維は、繊維長が短かったため、切断時に繊維同士の融着が発生し、不織布の地合が悪くなり、厚さの大きいものとなり、通気度が大きく、機械的特性にも劣るものであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる繊維長が2〜20mm、単糸繊度が0.8〜4.0dtex、機械捲縮が付与されていない短繊維であって、短繊維を構成する単繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した断面が扁平断面形状を呈しており、長辺と短辺の長さの比であるアスペクト比(長辺/短辺)が1.8〜6.0、強度が3.0〜8.0cN/dtex、伸度が25〜100%であることを特徴とする湿式短繊維不織布用ショートカット繊維。


【図1】
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【図2】
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