説明

湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤

【課題】塩化ビニルシート等の化粧シートに対する密着性に優れ、接着工程後に短時間で強度が発現する湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】イソシアネート末端ウレタンプレポリマー100重量部に対して、エポキシ基含有シランカップリング剤を0.2〜2重量部、前記(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤を0.2〜2重量部含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩化ビニルシート等の化粧シートに対する密着性に優れ、接着工程後に短時間で強度が発現する湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
合板、MDF、パーティクルボード等の木質基材やケイカル板等の無機基材に化粧シートを貼り合わせることにより製造される化粧材は、壁面パネル、ドア、窓枠、家具等に使用されており、従来は主にエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンが用いられてきた。近年、反応性ホットメルト接着剤は生産性に優れることや、樹脂分が100%のため基材が接着剤中の水分を吸収して反りが発生するおそれがないこと等が評価され、化粧シートのラミネート加工においても使用されるようになっている。
【0003】
化粧シートには塩化ビニルシート、ポリオレフィンシート、ポリエステルシート等が用いられているが、これらは濡れ性が低い難接着性の基材であるため、反応性ホットメルト接着剤の設計にあたり、密着性を重視する必要がある。しかしながら、密着性を重視した設計とすると初期接着力は低下する傾向にあるため、ラミネート加工後に切断などの次工程を行うまでの養生時間を長くする必要があり、化粧シートへの密着性と短時間の養生でも次工程が可能な初期接着力の高さを両立させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1には化粧シート被覆用の反応性ホットメルト接着剤組成物が開示されており、48時間養生後の剥離試験で基材破壊となることが開示されているが、より短時間で次工程を行いたいとの要望に十分に応えられるものではない。
【特許文献1】特開平11-71565号公報
【特許文献2】特開2003-336030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、塩化ビニルシート等の化粧シートに対する密着性に優れ、接着工程後に短時間で強度が発現する湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明になる湿気硬化型ホットメルト型接着剤は、塩化ビニルシート等の化粧シートに対する密着性に優れ、接着工程後に短時間で強度が発現するため、ラミネート加工後に切断などの次工程を行うまでの養生時間を短縮できるため、ラミネート化粧材の生産性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、ポリオール組成物と、多官能イソシアネート化合物とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有する。ポリオール組成物は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等からなる。ポリエステルポリオールとしては、さらに結晶性ポリ
エステルポリオール、非晶性ポリエステルポリオール、液状ポリエステルポリオールに分類される。
【0009】
結晶性ポリエステルポリオールは、X線回折によって明瞭な結晶構造が確認でき、ガラス転移点と融点を有するポリエステルポリオールである。結晶性ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、ドデカン二酸等が挙げられ、ジオールとしてはエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0010】
非晶性ポリエステルポリオールは、X線回折により明瞭な結晶構造が確認されず、ガラス転移温度のみを有するポリエステルポリオールである。非晶性ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸としてはアジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、ジオールとしてはネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0011】
液状ポリエステルポリオールは、常温で液状のポリエステルポリオールである。液状ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、ドデカン二酸等が挙げられ、ジオールとしてはエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0012】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得るため、前記ポリオール組成物(A)との反応に用いる多価イソシアネート化合物(B)としては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類等が挙げられる。中でも湿気硬化性、安全面等の点から、4,4’−MDIやそのカルボジイミド変性体であるカルボジイミド変性MDIが好ましく用いられる。また、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基とポリエステルポリオールに含まれる水酸基の当量比率NCO/OHは1.5〜2.5であることが望ましい。この範囲内であれば、溶融装置内で長時間加熱溶融状態にあっても顕著な増粘がなく、硬化反応時の二酸化炭素による発泡が少ない。また、未反応の多官能イソシアネート化合物の揮発による作業環境への影響が少ない。
【0013】
エポキシ基含有シランカップリング剤は分子内にアルコキシシリル基などの反応性シリル基およびエポキシ基を有する化合物である。具体的には2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー100重量に対して、0.2〜2重量部用いることが好ましい。
【0014】
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤は分子内にアルコキシシリル基などの反応性シリル基およびアクリロイル基を有する化合物である。具体的には3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー100重量に対して、0.2〜2重量部用いることが好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤に代えて、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランのような他の不飽和基含有シランカップリング剤を用いても本願発明の効果は得られない。
【0015】
本発明における湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、前記イソシアネート末端ウレ
タンプレポリマー以外にも、必要に応じて粘着付与樹脂、触媒、造核剤、着色剤、老化防止剤等を添加することができる。粘着付与樹脂としては、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。触媒としては、3級アミン系、錫系の触媒が挙げられる。造核剤としてはパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。なお、低温下における硬化性を向上させるためには、触媒や造核剤の添加が有効である。
【0016】
本発明の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は各種用途に用いることができるが、塩化ビニルシート等の化粧シートに対する密着性に優れ、接着工程後に短時間で強度が発現することから、合板、MDF、パーティクルボード等の木質基材やケイカル板等の無機基材に塩化ビニルシート、ポリオレフィンシート、ポリエステルシート等の化粧シートをラミネート加工する用途に特に適している。
【0017】
以下、実施例、比較例に基づき本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0018】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの合成
分子量が2000であり、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールから構成される結晶性ポリエステルポリオール 200重量部、分子量が3000であるポリプロピレングリコール 80重量部、分子量が50000であるポリカプロラクトンジオール 50重量部、アミン触媒であるDMDEE(三井化学ファイン社製、商品名)0.4重量部を攪拌装置、温度制御装置、真空ポンプを取り付けたセパラブルフラスコに入れ、120℃、減圧下で2時間攪拌し、脱水した。次に、多官能イソシアネート化合物としてミリオネートMT(4、4’−MDI、日本ポリウレタン工業社製、商品名)13重量部(NCO/OH=0.5)、およびミリオネートMTL(カルボジイミド変性MDI、日本ポリウレタン工業社製、商品名)50重量部(NCO/OH=2.0)を加え、100℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌して反応させることによってイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。
【0019】
実施例1
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー393重量部に対して、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン3重量部を添加混合することにより、実施例1の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を得た。ブルックフィールド社製デジタル粘度計(型式:DVI−I+)を用いて、120℃における溶融粘度(10rpm)を測定したところ、15000mPa・sであった。また、基材に50g/m塗布した後に30秒毎に指触でタックの有無を確認したところ、タックが感じられなくなるまでの時間(タックフリータイム)は180秒であった。
【0020】
比較例1〜9
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー393重量部に対して、表1記載の配合にてシランカップリング剤を添加混合することにより、同様に比較例1〜9の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を得た。また、同様に溶融粘度とタックフリータイムを測定した。
【0021】
試験評価方法
120℃に設定したロールコーターを用いて湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を溶融し、150mm×150mm×t12mmのパーチクルボードに50g/m塗布した。塗布後、オープンタイム1分以内に塩化ビニルシート(試薬による濡れ性34mN/m)を貼り合わせ、微圧ロールプレスを用いて線圧2kgf/cmで圧締することにより試験体を作製した。
得られた試験体を23℃雰囲気下で静置し、接着後15分後、30分後、1時間後、24時間後にそれぞれ25mm幅で180°はく離試験を行い、強度および破壊状態を確認した。なお、破壊状態におけるAfは界面はく離、Bfは材料破壊を示し、Bf20/Af80は20%が材料破壊であり、80%が界面はく離であったことを示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示されるように、エポキシ基含有シランカップリング剤およびアクリロイル基含有シランカップリング剤を含有する実施例1においては、接着30分後に最終強度に近い接着強度を示し、全面材料破壊となった。一方、各比較例においては接着30分後では十分な強度が得られておらず、界面はくりとなる部分が見られた。また、概ね材料破壊となるのは接着後1時間以上を要していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー100重量部に対して、前記エポキシ基含有シランカップリング剤を0.2〜2重量部、前記(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤を0.2〜2重量部含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
化粧シートのラミネート加工に用いられることを特徴とする請求項1または2記載の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。

【公開番号】特開2011−225635(P2011−225635A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93774(P2010−93774)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】